説明

殺虫方法及び殺虫装置

【課題】安全性が高く、かつ殺虫時に噴霧した場所を汚すことのない清潔性に優れた殺虫方法及び殺虫装置を提供する。
【解決手段】石油系溶剤としての脂肪族系炭化水素と、噴射剤としてのLPガス及びCOとを圧縮状態で混合し、この混合物を害虫に向けて噴射して害虫表面の油脂を除去して害虫を駆除することで、安全性が高く、かつ殺虫時に噴霧した場所を汚すことのない清潔性に優れた殺虫方法を実現すると共にかかる殺虫方法を実施可能な殺虫装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性が高く、殺虫時に噴霧した場所を汚すことのない清潔性に優れた殺虫方法及び殺虫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴキブリや蠅、蚊などの害虫を殺虫する殺虫方法や殺虫剤は広く知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
ここで、特許文献1に記載のスプレー式殺虫缶は、缶内に殺虫剤と噴霧剤を混入し、例えばゴキブリなどの害虫に向けて缶内の殺虫剤を噴霧して害虫駆除を行うようになっている。また、この特許文献1に記載のスプレー式殺虫缶に使用されるような殺虫剤としては、特許文献2の請求項1及び請求項2に記載の化学物質が使用されている。
【特許文献1】特開平10−191861号公報(2‐3頁、図1)
【特許文献2】特開平7−69805号公報(2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献2に記載された殺虫に有効とされる化学物質を含んだ殺虫剤を特許文献1に記載のスプレー式殺虫缶で例えばゴキブリなどの害虫に噴霧すると以下のような問題点が生じていた。
【0005】
第1の問題点としては、例えばこのようなスプレー式殺虫缶を用いて、床にいるゴキブリなどの害虫に殺虫剤を噴霧すると、その噴霧中、ゴキブリは動かなくなるまでの間に床を広範囲に亘って動き廻るため、床全体に殺虫成分としての有害物質が付着してしまい、ゴキブリを駆除した後もその殺虫成分が床全体に付着したままとなる。
【0006】
そのため、床に広範囲に亘って付着した殺虫成分を雑巾やティッシュなどで丹念に拭取らなければならない。特にまだ歩行できず這うだけの乳幼児がいる家庭や、室内犬や猫などの室内ペットがいる家庭では、上述のような殺虫成分の拭取りが不十分であると、床が滑り易くなったり、このような床に付着した殺虫成分を含んだ有害物質を乳幼児やペットが舐めてしまったり乳幼児の皮膚やペットの毛に付着してしまったりするおそれがあり、衛生上及び安全上の問題が生じている。
【0007】
一方、壁を這うゴキブリなどの害虫にスプレー式殺虫缶の殺虫剤を噴霧する場合、害虫を駆除した後に壁の殺虫剤を噴霧した部分に殺虫成分を含む化学物質が付着して、例えば壁材が壁紙で覆われている場合に壁紙が化学的に変色したままとなり、この変色した部分をきれいにすることができず外観上見栄えが悪くなってしまうこともある。そして、殺虫剤によって広範囲に亘って壁紙が変色してしまうと、壁紙を全て張り直す必要も生じる。
【0008】
本発明の目的は、安全性が高く、殺虫時に噴霧した場所を汚すことのない清潔性に優れた殺虫方法及び殺虫装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明にかかる殺虫方法は、
石油系溶剤としての脂肪族系炭化水素と、噴射剤としてのLPガス及びCOを圧縮状態で混合し、
この混合物を害虫に向けて噴射して害虫表面の油脂を除去し、害虫を駆除することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の殺虫装置は、
内部の封入物を外部に噴射する噴射ノズルを備えた密閉容器と、
前記密閉容器内に圧縮状態で封入された石油系溶剤としての脂肪族系炭化水素と、
前記密閉容器内に圧縮状態で封入された噴射剤としてのLPガス及びCOと有し、
前記密閉容器内に封入され混合された前記石油系溶剤と噴射剤を、前記噴射ノズルを介して害虫に向けて局所的に噴射して害虫表面の油脂を除去し、害虫を駆除することを特徴としている。
【0011】
このような殺虫装置を用いた殺虫方法を実施することで、以下のような特有の作用を生じる。
【0012】
具体的には、本発明による殺虫装置は、従来のスプレー式殺虫缶のように噴霧液としてのいわゆる殺虫成分からなる化学物質を含まず、脱脂に効果のある石油系溶剤としての脂肪族系炭化水素を噴射剤としてのLPガス及びCOを介して害虫に噴射することによって、害虫表面の油脂を一気に取り除き害虫を迅速かつ確実に駆除することができる。
【0013】
また、いわゆる従来のスプレー式殺虫缶のように殺虫成分を含む化学物質を用いておらず、脱脂に効果のある石油系溶剤としての脂肪族系炭化水素のみを用いて殺虫するようになっているので、害虫駆除時に従来のような有害な殺虫成分を床や壁に付着させることがない。
【0014】
即ち、殺虫後には石油系溶剤としての脂肪族系炭化水素は気化して大気中に拡散するので、害虫駆除後に床や壁にシミなどとなって残ることがない。このように、本発明によると、石油系溶剤としての脂肪族系炭化水素を用いることによって、安全性が高く、衛生的に優れた殺虫方法を実施することができる。
【0015】
また、従来のスプレー式殺虫缶のようにスプレー時に不快な臭いを感じることなく、害虫を駆除することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、安全性が高く、殺虫時に噴霧した場所を汚すことのない清潔性に優れた殺虫方法及び殺虫装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態にかかる殺虫方法及び殺虫装置について図面に基づいて説明する。図1は、この殺虫方法を実施するにあたって使用する殺虫装置であるスプレー式殺虫缶1を示している。このスプレー式殺虫缶1は、公知のスプレー式殺虫缶と同様にスプレー缶本体10とスプレー缶本体10の上部に取り付けられた噴射ノズル11と、噴射ノズル11の噴射孔12に取り付けられた長さの長い噴射チューブ13とを有している。
【0018】
缶本体10の内部には、石油系溶剤と噴射剤とが圧縮状態で充填されている。この石油系溶剤と噴射剤の割合は、本実施形態の場合、石油系溶剤が504ml、噴射剤が336ml、即ち3:2の割合となっている。尚、石油系溶剤には脂肪族系炭化水素の1つであるパラフィン系炭化水素が使用されている。ここで、パラフィン系炭化水素は安全性の高い飽和脂肪族炭化水素である。噴射剤としては、LPガス及びCOが使用されている。尚、図1において、石油系溶剤を黒い四角の粒子として模式的に表わし、噴射剤を白い丸の粒子として模式的に示している。
【0019】
尚、図1に示す缶本体10の長さは、通常のスプレー式殺虫缶と同等の長さであるが、この全長をより長くしてスプレー缶全体を細長くし、内部により多くの脂肪族系炭化水素であるパラフィン系炭化水素と噴射剤であるLPガス及びCOを圧縮状態で封入しても良い。また、スプレー缶本体10の構造及び材質並び噴射チューブ13及び噴射ノズル11の構造及び材質は、公知のスプレー式殺虫缶本体と噴射チューブ及び噴射ノズルと同等の構成及び材質が使用されているので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0020】
本発明の一実施形態にかかる殺虫装置1がこのような構成を有することで、以下のような作用効果を発揮する。
【0021】
最初に例えばゴキブリなどの害虫(以下、害虫を代表的に「ゴキブリ」とする)が床を這っている時に、このスプレー式殺虫缶1を取り出してチューブ13の先端をゴキブリに近づけてスプレー式殺虫缶内の脂肪族形炭化水素をゴキブリの表面に勢い良く噴射する。その結果、スプレー缶内の噴射剤を介して同じくスプレー缶内の脂肪族系炭化水素がチューブの先端からゴキブリに勢い良く吹付けられ、ゴキブリの表面全体に脂肪族系炭化水素が吹付けられる。これによって、ゴキブリの表面の油脂分などを全て除去するので、表面上の油脂分を失ったゴキブリは動き廻ることができなくなり、これを簡単に駆除することができる。
【0022】
また、本実施形態にかかるスプレー式殺虫缶は、いわゆる従来のスプレー式殺虫缶のように殺虫成分を含む化学物質を殺虫缶内部に含んでおらず、石油系溶剤としての脂肪族系炭化水素のみをLPガス及びCOの噴射剤を介して噴き掛けて殺虫するようになっているので、害虫駆除時に従来のような有害な殺虫成分を床や壁に付着させることがない。
【0023】
即ち、殺虫後には石油系溶剤としての脂肪族系炭化水素が気化して大気中に拡散するので、床や壁に有害物質を残すことなく害虫を駆除できると共に、安全性の高い脂肪族系炭化水素が拡散することによって、衛生的にゴキブリを駆除することができる。
【0024】
具体的には、従来のスプレー式殺虫缶を用いて床を這うゴキブリに殺虫剤を噴霧すると、駆除するまでの間にゴキブリが床を広範囲に亘って逃げ廻るため、床全体に殺虫成分としての有害物質が付着してしまい、ゴキブリを駆除した後もその殺虫成分が床全体に付着したままとなる。
【0025】
従って、床に広範囲に亘って付着した殺虫成分を雑巾やティッシュなどで丹念に拭取らなければならない。特に、まだ歩行できず這うだけの乳幼児がいる家庭や、室内犬や猫などの室内ペットがいる家庭では、上述のような拭取りが不十分であると、このような床に付着した殺虫成分を含んだ有害物質を乳幼児やペットが舐めてしまったり、乳幼児の皮膚やペットの毛にこのような有害物質が付着したりするおそれがあり、衛生上及び安全上の問題が生じる。
【0026】
しかしながら、本実施形態のような有害な殺虫成分を含まないスプレー式殺虫缶を用いると、ゴキブリの表面全体の油脂分を脂肪族系炭化水素で脱脂してこのゴキブリを駆除することができる。また、この脂肪族系炭化水素は揮発性を有して噴射剤と共に空気中に拡散するので、床に付着したままとなることはなく床に有害な残留物が付着した際の上述したような問題が生じることはない。従って、本実施形態にかかるスプレー式殺虫缶を用いることで家庭内において安全にかつ衛生的に害虫のみを駆除することが可能となり、かつその後の床の清掃などの面倒な後始末を行わずに済む。
【0027】
また、従来のスプレー式殺虫缶を用いて壁を這うゴキブリを駆除する場合、ゴキブリを駆除した後に、殺虫剤を噴射した部分に殺虫成分を含む化合物が付着してしまう。例えば、壁材が壁紙で覆われている場合に従来のスプレー式殺虫缶を用いると、壁紙が化学的に変色したままとなってこの変色部分をきれいにすることができず、外観上見栄えが悪くなってしまうこともある。しかしながら、本実施形態に係るスプレー式殺虫缶を用いることでゴキブリの表面全体の油分を脱脂することでゴキブリを簡単に駆除できると共に、このスプレー式殺虫缶に含まれる脂肪族系炭化水素が揮発性を有しているので、ゴキブリに噴射した後に噴射剤と共に脂肪族系炭化水素も空気中に拡散して壁紙などに付着したままとなることはない。従って、従来のように壁紙が変色したりして美観を著しく損なうような不具合はない。
【実施例】
【0028】
以下、本発明に係る殺虫方法及びこれに用いられる殺虫装置の有用性を立証する各種評価試験を行ったので、その評価試験結果について説明する。なお、その評価試験において、本発明の一実施形態にかかる殺虫装置(スプレー式殺虫缶)を本実施例として用い、通常の殺虫剤を化学成分として含んだスプレー式殺虫缶を比較例として用いた。具体的には、本実施例のスプレー式殺虫缶は、内容量が840mlの内、石油系溶剤としてパラフィン系炭化水素を504ml含み、残りの噴射剤としてのLPガス及びCOを336ml含んでいる。即ち、パラフィン系炭化水素と噴射剤との体積比は3:2となっている。
【0029】
最初に第1の評価試験としてクリアケースにゴキブリを入れ、ゴキブリには本実施例及び比較例のスプレー式殺虫缶の内容物がそれぞれ直接かからないように噴射した。そして、ゴキブリが動かなくなるまでの時間を本実施例及び比較例について別々に計測した。その結果、本実施例の場合、噴射時間を約3秒、ゴキブリの数を2匹としたところ、噴射した際の噴煙はなく、噴射約35秒後にゴキブリの動きが止まった。
【0030】
一方、比較例の場合、噴射時間を約3秒、ゴキブリの数を1匹としたところ、噴射中に噴煙が生じると共に、約1分6秒後にゴキブリの動きが一旦止まったが、のち多少動きがあるように見えた。以上の結果から、本実施例の方が比較例に比べてより半分近くの時間でゴキブリを確実に駆除できることが分かった。
【0031】
続いて、第2の評価試験について説明する。この評価試験では、第1の評価試験に用いたクリアケースの底面に室内のカーペットや絨毯に見立てた布製のキッチンペーパーを敷き、このペーパー上に害虫としてのゴキブリを放し、本実施例に関するスプレー式殺虫缶と比較例に関する従来のスプレー式殺虫缶とをそれぞれ使用して害虫としてのゴキブリの駆除の効果並びにその他の付加的な効果について調べた。
【0032】
図3の評価試験結果に示すように、噴射時間については、本実施例及び比較例とも約3秒間ゴキブリに直接かからないように噴射し、それぞれ約1分間計測して、その間のゴキブリの動きを観察した。また、害虫としてのゴキブリの数は、本実施例及び比較例とも1匹ずつとした。
【0033】
その結果、本実施例のスプレー式殺虫缶の内容物を噴射した場合、約49秒でゴキブリの動きが止まったが、比較例のスプレー式殺虫缶の内容物を噴射した場合、約1分経たなければゴキブリの動きが止まらなかった。そして、10分後に本実施例のスプレー式殺虫缶の内容物を噴射したゴキブリを容器外側から刺激してみたところ動きが全くなかったが、比較例のスプレー式殺虫缶の内容物を噴射したゴキブリの場合、容器外側から観察してみると、刺激する以前に手や足に動きが見てとれた。
【0034】
更に噴射20分経過後には、絨毯に見立てたキッチンペーパーに付着した本実施例のスプレー式殺虫缶の噴射物は揮発して乾いており、かつゴキブリも完全に動かなくなっていた。一方、比較例のスプレー式殺虫缶の内容物を噴射したところ、噴射20分経過後であっても絨毯に見立てたキッチンペーパーは湿っていてキッチンペーパーの色が変色していることが分かった。また、ゴキブリには多少の動きが見られた。
【0035】
そして、噴射して1時間経過した後に再び調べてみたところ、絨毯に見立てたキッチンペーパーに付着した本実施例のスプレー式殺虫缶の噴射物は揮発して完全に乾いており、かつゴキブリも完全に動かなくなっていた。一方、比較例のスプレー式殺虫缶を用いた場合では、絨毯に見立てたキッチンペーパーには殺虫成分が残っていると共に、ゴキブリの手足はまだ動いていた。
【0036】
続いて、第3の評価試験について説明する。この第3の評価試験は、フローリングの床を害虫であるゴキブリが這い廻る場合を想定し、直径約100cmの略円形をなすダンボールを用いて室内の床面に柵を作り、這い廻ったゴキブリに本実施例及び比較例のスプレー式殺虫缶をそれぞれ噴射する評価試験を行った。この場合、本実施例及び比較例とも、スプレー式殺虫缶を強く噴射するとゴキブリ自体が飛んでいってしまうのでゴキブリに直接吹きかかるように少しずつ噴射した。なお、ゴキブリの動きにバラツキがあると考えられるのでゴキブリをそれぞれ数匹ずつ使用し、評価試験を数回行ってその結果をその都度記録した。
【0037】
本実施例のスプレー式殺虫缶を用いた場合、図4の評価試験結果に示すように、3匹のゴキブリを害虫として使用し、スプレー式殺虫缶の内容物を3回に分けて噴射したところ、約1分弱でゴキブリの動きが鈍くなり、害虫駆除の様子を噴射後早い時間で計測できた。また、柵の部分にかかった噴射物が乾燥して消え去る様子を確認でき、フローリングの床面は変色しなかった。
【0038】
一方、比較例のスプレー式殺虫缶を用いた場合、2匹のゴキブリを害虫として使用し、2回に分けて殺虫剤をゴキブリに直接吹きかかるように噴射したところ、ゴキブリの動きを止めるのに本実施例よりも多くの時間を要すると共に殺虫剤を噴射すると噴煙が舞い上がり息苦しさを感じた。また、床面に付着した殺虫成分の汚れが肉眼で確認でき、柵としてのダンボールを外してしばらく経った後も、フローリングの床面に付着したまま、本実施例のスプレー式殺虫缶を用いた場合のように乾燥して消え去るようなことはなかった。
【0039】
また、本実施例のスプレー式殺虫缶を用いた場合、殺虫剤特有の不快な臭いを感じなかった。一方、比較例のスプレー式殺虫缶の場合、上述した息苦しさを感じると共に殺虫剤独特の不快な臭いを強く感じた。
【0040】
続いて、第4の評価試験について説明する。この第4の評価試験においては、図5の評価試験結果に示すように、上述した評価試験とは異なり屋外にいる他の害虫を用いた評価試験を行った。
【0041】
まず、最初に芋虫について評価試験を行った。芋虫は、植木などについて葉を食べるなどの害虫であるが、本実施例のスプレー式殺虫缶の内容物を噴射したところ、芋虫は約1分で動かなくなった。なお、この芋虫が付く様々な植木で評価試験を行い、本実施例のスプレー式殺虫缶を使用した場合にこれらの植木が枯れるかどうかを調べたところ、ランタナなどの油分をもつ観葉植物では葉の変色や黒ずみなどが確認された程度で、ポトスやシダなどの観葉植物では葉が変色したり、枯れたりすることはなかった。これは、本実施例が比較例のように殺虫成分を含まず揮発性の高い単なる脂肪族系炭化水素と噴射剤からなるためであると考えられる。
【0042】
続いて、蜘蛛を選んで評価試験を行った。本実施例において小さい蜘蛛に本実施形態のスプレー式殺虫缶の内容物を噴射したところ、約5秒で動かなくなり、手の平程の大きな蜘蛛の場合は、ゴキブリを駆除したときのように本実施例にかかるスプレー式殺虫缶の内容物を何度も細かく噴射し、ゴキブリ以上に素早い蜘蛛の動きを約1分で止めることができた。
【0043】
続いて、第5の評価試験について説明する。第5の評価試験では、本実施例における速乾性(乾き具合)の評価試験を行った。この条件としては、図6の評価試験結果に示すように、気温22.9℃、天候は晴れ、風が無風の状態で絨毯やカーペットを模したペーパータオルに本実施例のスプレー式殺虫缶の内容物を噴射した。この場合、本実施例のスプレー式殺虫缶の内容物では57秒で素早く乾いてペーパータオルにシミなどの残留物が残ることなく、噴射前と同一の美観を保つことができた。続いて、気温27℃、天候は曇り、風が微風(梅雨時の状態を想定)の状態で絨毯やカーペットを模したペーパータオルに本実施例のスプレー式殺虫缶の内容物を噴射したところ、8分10秒で完全に乾き、ペーパータオルにシミなどの残留物が残らず、噴射前と同一の美観を保つことができた。
【0044】
続いて、第6の評価試験について説明する。第6の評価試験は、図7の評価試験結果に示すように、害虫として蚊及び蠅を用いた。そして、それぞれを例えばゴミ袋などの密閉された容器の中に閉じ込めて本実施例のスプレー式殺虫缶の内容物を噴射したところ、蚊及び蠅の双方とも確実に駆除することができた。一方、屋外、室内などの広いエリアにおいて本実施例のスプレー式殺虫缶の内容物を蚊や蠅に噴射したところ、蚊一匹については約3秒ほどで駆除することができ、蠅については約5秒ほどで駆除することができた。尚、蚊より蠅の方が本実施例のスプレー式殺虫缶の内容物を噴射した際に動きが鈍くなるため駆除し易かった。
【0045】
以上の評価試験の結果から、本実施例にかかるスプレー式殺虫缶の場合、殺虫剤としての化学物質が入っていない為、体が小さく、動きが早い蚊などの害虫を屋外にて大量に仕留めることは困難であるが、室内などの狭い空間においては、テーブルなどに噴射物が誤ってかかってしまっても噴射物である脂肪族系炭化水素が揮発性を有する為、最低限の簡単な洗浄を行うだけで食器を再び使うことが可能となり、従来のスプレー式殺虫缶を用いて食器付近にいる害虫を駆除する場合のように食器を丹念に洗浄する必要がないことが分かった。
【0046】
以上説明したように、本実施例及び比較例に関するスプレー式殺虫缶の使用中は、害虫めがけて誰もが必死に噴射しようとするので、その後の比較例における殺虫成分が害虫駆除後に床や壁などに付着したままとなり、床を這う乳幼児や室内ペットなどに衛生上悪影響を与えると共に、床面がぬるつくことによって滑って怪我をするのを防止したり、このぬるつきによる不快感をなくしたりするために雑巾がけなどを念入りに行い床掃除を必要とするが、本実施例のスプレー式殺虫缶の場合、噴射物をなす脂肪族系炭化水素からなる石油系溶剤が揮発するため、そのような床掃除を行う必要がなく使い勝手の点でも非常に優れていることが立証できた。
【0047】
また、従来のスプレー式殺虫缶のようにスプレー時に不快な臭いを感じることなく、害虫を駆除することができる。
【0048】
特に、脂肪族系炭化水素がオレフィン系炭化水素になって、噴射剤のLPガス及びCOからなり、合計の内容量が840mlで脂肪族炭化水素と噴射剤との体積比が504:336=3:2の場合、害虫駆除の効果が高いことが分かった。
【0049】
なお、本発明に使用する脂肪族系炭化水素はパラフィン系炭化水素に限定されず、他のあるアルカンであるメタン系炭化水素や、エチレン系水素、オレフィン炭化水素からなるアルケンや、アセチレン系炭化水素からなるアルキンに関しても、本発明の実施態様に関して例えば有機溶剤中毒予防規則等で問題を生じないのであれば、適用可能である。また、本発明は上述したようにゴキブリや蚊、蠅、蜘蛛など室内における害虫や芋虫や蛾等の屋外にいる害虫駆除に広く適用可能であるが、室内にいる害虫を駆除する際は、本発明を実施した後に窓等を開けて十分な換気を行うのがより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施例にかかる殺虫装置について概略的に示した構成図である。
【図2】本発明にかかる第1の評価試験結果を示す表である。
【図3】本発明にかかる第2の評価試験結果を示す表である。
【図4】本発明にかかる第3の評価試験結果を示す表である。
【図5】本発明にかかる第4の評価試験結果を示す表である。
【図6】本発明にかかる第5の評価試験結果を示す表である。
【図7】本発明にかかる第6の評価試験結果を示す表である。
【符号の説明】
【0051】
1 スプレー式殺虫缶
10 缶本体
11 噴射ノズル
12 噴射孔
13 噴射チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油系溶剤としての脂肪族系炭化水素と、噴射剤としてのLPガス及びCOを圧縮状態で混合し、
この混合物を害虫に向けて噴射して害虫表面の油脂を除去し、害虫を駆除することを特徴とする殺虫方法。
【請求項2】
内部の封入物を外部に噴射する噴射ノズルを備えた密閉容器と、
前記密閉容器内に圧縮状態で封入された石油系溶剤としての脂肪族系炭化水素と、
前記密閉容器内に圧縮状態で封入された噴射剤としてのLPガス及びCOと有し、
前記密閉容器内に封入され混合された前記石油系溶剤と噴射剤を、前記噴射ノズルを介して害虫に向けて局所的に噴射して害虫表面の油脂を除去し、害虫を駆除することを特徴とする殺虫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−23970(P2009−23970A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190205(P2007−190205)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(507245995)有限会社LIBERTY (1)
【Fターム(参考)】