説明

毎日の注射頻度より少ないインスリン注射での真性糖尿病の治療

【課題】持続型作用プロファイルを持つ、インスリン誘導体を提供する。
【解決手段】親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基に結合した側鎖を有し、持続型作用プロファイルを持つ、インスリン誘導体。効果的な投薬量のインスリン誘導体を、24時間よりも長い間隔で投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真性糖尿病及び高血糖症、特にインスリン依存性真性糖尿病の治療にとりわけ有用な新規なインスリン投与計画に関する。インスリンの投与及びインスリンは、持続作用プロファイルを有するアナログを新規の投薬計画で使用することを含む。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病は適切な代謝調節(主として糖血症調節であるが、インスリン治療が有益な他の代謝パラメータを含む)を確立するためにインスリン治療をしばしば必要とする。インスリン治療の確立された実務は、入手可能な治療指針に記載されているように、場合によっては他の治療様式と併用して、一日当たり一回又はそれ以上の回数、インスリン剤を投与することである。静脈内及び皮下インスリン注入もまた臨床実務において使用されている。
【0003】
広く使用されているインスリン治療の選択肢の一つは、患者のインスリン必要量を全体的に又は部分的に補うために、基礎インスリンとも称される持効型インスリン剤を投与することである。持効型インスリンは一日当たり一回又はそれ以上の頻度で投与され、1型及び2型双方の糖尿病並びにインスリンを必要とする疾患状態の他の形態(任意の原因の高血糖症)に使用されている。
【0004】
現在、1型糖尿病も2型糖尿病も、糖尿病の治療はいわゆる強化インスリン療法に益々依存してきている。この治療法では、患者は、基礎インスリン必要量を補うために持効型インスリンの一日一又は二回の注射を含む複数回の毎日のインスリン注射に、食事に関連したインスリン必要量を補うための速効型インスリンのボーラス注射が補填された治療を受ける。
【0005】
糖尿病及び高血糖症の管理における現在の実務は、例えば次のものに記載されている:
− IDF Clinical Guidelines Task Force. Global Guideline for Type 2 Diabetes. Brussels: International Diabetes Federation, 2005, http://www.idf.org/webdata/docs/IDF%20GGT2D.pdf
− IDF Clinical Guidelines Task Force. Guideline for Management of PostMeal Glucose. Brussels: International Diabetes Federation, 2007, http://www.idf.org/webdata/docs/Guideline_PMG_final.pdf
− D. M. Nathan, J. B. Buse, M. B. Davidson, E. Ferrannini, R. R. Holman, R. Sherwin, and B. Zinman. Management of hyperglycemia in type 2 diabetes: a consensus algorithm for the initiation and adjustment of therapy: update regarding thiazolidinediones: a consensus statement from the American Diabetes Association and the European Association for the Study of Diabetes. Diabetes care 31 (1):173-175, 2008,
【0006】
基礎インスリンアナログ及びその特性並びに現在の臨床的使用に関する概説はとりわけ次のものに見出すことができる:
− T. Heise and T. R. Pieber. Towards peakless, reproducible and long-acting insulins. An assessment of the basal analogues based on isoglycaemic clamp studies. Diabetes Obes Metab 9 (5):648-659, 2007
− A. H. Barnett. A review of basal insulins. Diabet Med 20 (11):873-885, 2003。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】治験薬投与後の時間に対してプロットしたグルコース注入速度を示す。
【図2】治験薬投与後の時間に対してプロットした血糖値を示す。
【図3】治験フロー
【発明の説明】
【0008】
本発明は、増加した間隔でインスリンを投与することによって糖尿病と高血糖症を治療することができるという驚くべき知見に基づいている。例えば、24時間より長い間隔でも満足できる糖尿病治療計画が達成されることが実証された。多くの利点が、かかる単純化された治療計画から直接得られる:
毎日の投与より少ない投与でよいので患者にとって簡便性が改善される
週の一部における毎日二回より少ない投与は簡便性を更に改善する
改善された簡便性は患者のコンプライアンスを潜在的に改善し、患者の長期の治療成績を最終的に改善する
投与装置が毎日より少ない回数使用されるならば、針や装置の補助成分の消費が少なくなるため治療コストがより低くなりうる。
【0009】
その最も一般的な態様では、本発明は、効果的な投薬量の天然に生じるインスリン又はインスリンアナログのインスリン誘導体を、それを必要とする患者に投与することを含むインスリン投与が有益である症状又は疾患の治療方法に関し、ここで上記インスリン誘導体は持続型作用プロファイルを示し、上記投薬量は24時間よりも長い間隔で投与される。
【0010】
本発明はまたここで検討された治療方法においてのかかるインスリン誘導体の使用に関し、本発明はまたここに検討された疾患及び症状の治療のための薬学的組成物の調製におけるかかるインスリン誘導体の使用にも関する。
【0011】
本方法の主たるターゲットである疾患及び症状は真性糖尿病(1又は2型)あるいは高血糖症によって特徴付けられる他の症状であるが、例えば糖尿病前症、耐糖能障害、メタボリックシンドローム、肥満症、カヘキシー、インビボβ細胞減少/死滅、過剰な食欲、及び炎症のような、インスリンの代謝効果が臨床的関連性を有している代謝疾患及び症状一般にもまた興味がある。これらのタイプの症状の全ては、該疾患/症状を有している患者における安定した代謝状態が有益であることが知られ又は信じられている。
【0012】
とにかく、インスリン投与が介在するあらゆる治療計画は、本教示の実施によって修正することができ、これは、かかる治療法が持続型作用プロファイルのインスリン、インスリンアナログ又はそれらの何れかの誘導体をここに提供した教示に従って投与することを含むことを意味する。
【0013】
発明の治療計画
本発明は患者の都合に合わせて最も良好に使用される。従って、特定の投与間隔は、投薬量が毎日より少ない頻度で投与されるここに開示される投薬計画を可能にするために十分に長い作用プロファイルを示す各インスリン剤に対して探求される。よって、最終の使用態様は製品の効能と患者の素質及び好みの双方に依存する。これは、如何なるインスリンの効果も個々の患者のインスリン必要性及びインスリンの薬力学的作用に対する感受性と最後にはまた与えられた状況下での患者の好みにも依存するためである。これらの条件は、より長い期間(年)でも毎日の点からでも、経時的に変化しうる。
【0014】
しかしながら、本発明は一般的な投薬計画の多くの実施態様を提供する。
本発明の方法の一実施態様では、投薬量は少なくとも36時間の間隔で投与される。本発明の方法の一実施態様では、投薬量は少なくとも42時間の間隔で投与される。該間隔は、とりわけ、使用されるインスリン、アナログ又は誘導体の持続作用の期間に依存して、更に長くなりうる。よって、ある実施態様では、上記投薬量は少なくとも48時間の間隔で投与され、他の実施態様では、上記投薬量は少なくとも96時間の間隔で投与され、更に別の一実施態様では、上記投薬量は少なくとも120時間の間隔で投与される。
【0015】
他の実施態様では、上記投薬量は少なくとも144時間の間隔で投与されるが、本発明ではより長い間隔を用いることができ、これは、上記投薬量が少なくとも168時間の間隔で投与されうることを意味し、最大限336時間と長い間隔さえも本発明の実施態様を構成する。
【0016】
ある実施態様では上記投薬量は最大限312時間の間隔で投与される。
他の実施態様では上記投薬量は最大限288時間の間隔で投与される。
また別の実施態様では上記投薬量は最大限264時間の間隔で投与される。
更なる実施態様では上記投薬量は最大限240時間の間隔で投与される。
また別の更なる実施態様では、上記投薬量は最大限216時間の間隔で投与される。
一実施態様は、上記投薬量が最大限192時間の間隔で投与されることを必要とし、他の実施態様は、上記投薬量が最大限168時間の間隔で投与されることを必要とする。
【0017】
本発明の一連の実施態様では、投薬量は規則的な間隔で投与される。例えば、これら実施態様の一つでは、上記投薬量は一日おきに投与される。これら実施態様の他のものでは、上記投薬量は二日おきに投与され、これら実施態様の更に他のものでは、上記投薬量は三日おきに投与される。他の実施態様は、上記投薬量が四日おきに投与されるもの、上記投薬量が五日おきに投与されるもの、上記投薬量が六日おきに投与されるもの、上記投薬量が14日毎に投与されるものを含むが、しかし、本発明はまた上記投薬量が、7日おき、8日おき、9日おき、10日おき、1一日おき、又は12日おきに投与される実施態様をまた含む。
【0018】
規則的間隔での投与の代替として、投薬量が固定された週日に投与されるのが発明の一実施態様である。これには、固定された毎週の計画を記憶するのは簡単であるという単純な理由により患者の側から見られる利点がある。
よって、一実施態様では、投薬量は固定された3週日に投与される。他の実施態様では、投薬量は、固定された2週日に投与される。
【0019】
一実施態様では、上記固定された週日の何れも互いに近接していない。3週日を含む投与計画では、これは、次の計画が可能であることを意味している:月曜日−水曜日−金曜日;月曜日−水曜日−土曜日;月曜日−木曜日−土曜日;火曜日−木曜日−土曜日;火曜日−木曜日−土曜日;及び火曜日−金曜日−日曜日。
固定された2週日を使用する実施態様では、これらは、2及び3の他の週日だけ離れているより特定の実施態様によるものであり、つまり次の計画が可能である:月曜日−木曜日; 月曜日−金曜日;火曜日−金曜日;火曜日−土曜日;水曜日−土曜日;水曜日−日曜日;及び木曜日−日曜日。
【0020】
請求項の何れか一項に記載の方法では、他の天然に生じるインスリン、インスリンアナログあるいは天然に生じるインスリン又はインスリンアナログの誘導体は実質的に何も上記患者には投与されない。
【0021】
本発明に有用な持続型作用を有するインスリン
持続型作用プロファイルを有する興味深い誘導体は国際公開第2005/012347号(ノボ・ノルディスク)に開示されており、これらは全て本発明を実施するために特に有用であると考えられ、以下、これらを「’347誘導体」と言う。
【0022】
本発明の方法における’347誘導体の使用
本発明の方法は誘導体が’347誘導体である実施態様を含む。つまり、天然に生じるインスリン又はインスリンアナログの誘導体は、親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基に結合した側鎖を有し、該側鎖は、一般式:
−W−X−Y−Z
[上式中、Wは、
・残基がそのカルボン酸基のうちの一つと共に、親のインスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基と一緒になってアミド基を形成する側鎖中のカルボン酸基を有するα−アミノ酸残基;
・アミド結合を介して一緒に連結されている2、3又は4のα−アミノ酸残基からなる鎖であって、アミド結合を介した該鎖は親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基に連結しており、Wのアミノ酸残基は、Wが側鎖中にカルボン酸基を有するアミノ酸残基を少なくとも一つ有するように、中性側鎖を有するアミノ酸残基及び側鎖中にカルボン酸基を有するアミノ酸残基の群から選択されるものであり;あるいは、
・Xから親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基までの共有結合
であり;
Xは、
・−CO−;
・−COCH(COOH)O−;
・−CON(CHCOOH)CHO−;
・−CON(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO−;
・−CON(CHCHCOOH)CHCHO−;
・−CON(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO−;
・−CONHCH(COOH)(CHNHO−;
・−CON(CHCHCOOH)CHO−;もしくは
・−CON(CHCOOH)CHCHO−であり、
a)Wがアミノ酸残基もしくはアミノ酸残基の鎖であるとき、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基とアミド結合を形成するか、あるいは、
b)Wが共有結合であるとき、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基とアミド結合を形成し;
Yは、
・mが6から32の範囲の整数である−(CH−;
・1、2もしくは3の−CH=CH−基と、鎖中に10から32の範囲の合計数の炭素原子を与えるのに十分な数の−CH−基とを含んでなる二価の炭化水素鎖;
・式−(CH(CH−(該式中、vとwは、vとwの合計が6から30の範囲になるような整数であるか又はそれらの一つはゼロである)の二価の炭化水素鎖
であり;
Zは、
・−COOH;
・−CO−Asp;
・−CO−Glu;
・−CO−Gly;
・−CO−Sar;
・−CH(COOH)
・−N(CHCOOH)
・−SOH;もしくは
・−PO
である]
のものであるものとそのZn2+錯体であり、但し、Wが共有結合でXが−CO−であるとき、Zは−COOHとは異なる。
【0023】
一実施態様では、側鎖−W−X−Y−Zは親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基に結合している。
本発明の他の実施態様では、側鎖−W−X−Y−Zは親インスリンのB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基に結合している。この実施態様のより特定の一態様では、側鎖−W−X−Y−ZはB鎖の28位に存在するLys残基のε−アミノ基に結合している。この実施態様の更により特定の一態様では、側鎖−W−X−Y−ZはB鎖の29位に存在するLys残基のε−アミノ基に結合している。この実施態様の更により特定の態様では、側鎖−W−X−Y−ZはB鎖の30位に存在するLys残基のε−アミノ基に結合している。
【0024】
側鎖−W−X−Y−Zの部分構造Wは共有結合でありうる。あるいは、Wは、側鎖にカルボン酸基を有し全体で4から10の炭素原子を有するα−アミノ酸の残基でありうる。すなわち、Wは遺伝暗号によってコードできるα−アミノ酸の残基でありうる。よって、Wは、例えばα−Asp、β−Asp、α−Glu、及びγ−Gluからなる群から選択されうる。Wの更なる選択肢は例えばα−hGlu及びδ−hGluである。
【0025】
更なる実施態様では、Wは、一つが4から10の炭素原子とカルボン酸基を有し、他方が2から11の炭素原子を有するが遊離カルボン酸基は含まない二つのα−アミノ酸残基からなる鎖である。遊離のカルボン酸基を持たないα−アミノ酸残基は中性のコード可能なα−アミノ酸残基でありうる。この実施態様に係るWの例は、α−Asp−Gly;Gly−α−Asp;β−Asp−Gly;Gly−β−Asp;α−Glu−Gly;Gly−α−Glu;γ−Glu−Gly;Gly−γ−Glu;α−hGlu−Gly;Gly−α−hGlu;δ−hGlu−Gly;及びGly−δ−hGluである。
【0026】
更なる実施態様では、Wは、4から10の炭素原子を独立して有し、共に側鎖にカルボン酸基を有する二つのα−アミノ酸残基からなる鎖である。これらのα−アミノ酸残基の一つ又はそれらの双方がコード可能なα−アミノ酸残基でありうる。この実施態様に係るWの例は、α−Asp−α−Asp;α−Asp−α−Glu;α−Asp−α−hGlu;α−Asp−β−Asp;α−Asp−γ−Glu;α−Asp−δ−hGlu;β−Asp−α−Asp;β−Asp−α−Glu;β−Asp−α−hGlu;β−Asp−β−Asp;β−Asp−γ−Glu;β−Asp−δ−hGlu;α−Glu−α−Asp;α−Glu−α−Glu;α−Glu−α−hGlu;α−Glu−β−Asp;α−Glu−γ−Glu;α−Glu−δ−hGlu;γ−Glu−α−Asp;γ−Glu−α−Glu;γ−Glu−α−hGlu;γ−Glu−β−Asp;γ−Glu−γ−Glu;γ−Glu−δ−hGlu;α−hGlu−α−Asp;α−hGlu−α−Glu;α−hGlu−α−hGlu;α−hGlu−β−Asp;α−hGlu−γ−Glu;α−hGlu−δ−hGlu;δ−hGlu−α−Asp;δ−hGlu−α−Glu;δ−hGlu−α−hGlu;δ−hGlu−β−Asp;δ−hGlu−γ−Glu;及びδ−hGlu−δ−hGluである。
【0027】
更なる実施態様では、Wは4から10の炭素原子を独立して有する三つのα−アミノ酸残基からなる鎖であって、該鎖のアミノ酸残基は、鎖が側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも一の残基を有するように側鎖にカルボン酸基を有する残基及び中性側鎖を有する残基の群から選択される。一実施態様では、アミノ酸残基はコード可能な残基である。
更なる実施態様では、Wは4から10の炭素原子を独立して有する四つのα−アミノ酸残基からなる鎖であって、該鎖のアミノ酸残基は、鎖が側鎖にカルボン酸基を有する少なくとも一の残基を有するように側鎖にカルボン酸基を有する残基及び中性側鎖を有する群から選択される。一実施態様では、アミノ酸残基はコード可能な残基である。
一実施態様では、WはB鎖中のLys残基のε−アミノ基にウレア誘導体を介して連結されうる。
【0028】
側鎖−W−X−Y−Zの部分構造Xは、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基と、又はWが共有結合であるとき、親インスリンのB鎖のN末端α−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基とアミド結合を形成する式−O−の基でありうる。
更なる実施態様では、側鎖の部分構造Xは、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基と、又はWが共有結合であるとき、親インスリンのB鎖のN末端α−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基とアミド結合を形成する式−CH(COOH)O−の基でありうる。
【0029】
更なる実施態様では、側鎖の部分構造Xは、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基と、又はWが共有結合であるとき、親インスリンのB鎖のN末端α−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基とアミド結合を形成する式−CON(CHCOOH)CHO−の基でありうる。
更なる実施態様では、側鎖の部分構造Xは、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基と、又はWが共有結合であるとき、親インスリンのB鎖のN末端α−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基とアミド結合を形成する式−CON(CHCHCOOH)CHO−の基でありうる。
【0030】
更なる実施態様では、側鎖の部分構造Xは、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基と、又はWが共有結合であるとき、親インスリンのB鎖のN末端α−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基とアミド結合を形成する式−CON(CHCOOH)CHCHO−の基でありうる。
更なる実施態様では、側鎖の部分構造Xは、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基と、又はWが共有結合であるとき、親インスリンのB鎖のN末端α−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基とアミド結合を形成する式−CON(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO−の基でありうる。
【0031】
更なる実施態様では、側鎖の部分構造Xは、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基と、又はWが共有結合であるとき、親インスリンのB鎖のN末端α−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基とアミド結合を形成する式−CON(CHCHCOOH)CHCHO−の基でありうる。
更なる実施態様では、側鎖の部分構造Xは、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基と、又はWが共有結合であるとき、親インスリンのB鎖のN末端α−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基とアミド結合を形成する式−CON(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO−の基でありうる。
【0032】
側鎖−W−X−Y−Zの部分構造Yは、式−(CH−(該式中、mは、6から32、8から20、12から20、又は12−16の範囲の整数である)の基でありうる。
他の実施態様では、Yは、1、2又は3の−CH=CH−基と6から32、10から32、12から20、又は12−16の範囲の全数の炭素原子を鎖中に付与するのに十分な数の−CH−基を含む二価炭化水素鎖である。
他の実施態様では、Yは式−(CH(CH−(該式中、v及びwは、vとwの合計が6から30、10から20、又は12−16の範囲であるように整数であるかそれらの一つがゼロである)の二価炭化水素鎖である。
一実施態様では、側鎖−W−X−Y−Zの部分構造Zは−COOHであるが、但し、Wが共有結合であり、Xが−CO−である場合、Zが−COOHとは異なる。
【0033】
他の実施態様では、Zは−CO−Aspである。
他の実施態様では、Zは−CO−Gluである。
他の実施態様では、Zは−CO−Glyである。
他の実施態様では、Zは−CO−Sarである。
他の実施態様では、Zは−CH(COOH)である。
他の実施態様では、Zは−N(CHCOOH)である。
他の実施態様では、Zは−SOHである。
他の実施態様では、Zは−POHである。
【0034】
更なる実施態様では、Wはα−Asp、β−Asp、α−Glu、及びγ−Gluからなる群から選択され;Xは−CO−又は−CH(COOH)COであり;Yは−(CH−(該式中、mは12−18の範囲の整数である)であり、Zは−COOH又は−CH(COOH)である。
【0035】
’347誘導体の、本明細書では親インスリンとも称される、インスリン部分は、天然に生じるインスリン、例えばヒトインスリン又はブタインスリンでありうる。あるいは、親インスリンはインスリンアナログでありうる。
一グループの親インスリンアナログでは、A21位のアミノ酸残基がAsnである。
親インスリンアナログの他のグループでは、A21位のアミノ酸残基はGlyである。このグループのアナログからの特定の例は、GlyA21ヒトインスリン、GlyA21des(B30)ヒトインスリン;及びGlyA21ArgB31ArgB32ヒトインスリンである。
【0036】
親インスリンアナログの他のグループでは、B1位のアミノ酸残基が欠失されている。このグループの親インスリンアナログからの特定の例はdes(B1)ヒトインスリンである。
他のグループの親インスリンアナログでは、B30位のアミノ酸残基が欠失されている。このグループの親インスリンアナログからの特定の例はdes(B30)ヒトインスリンである。
【0037】
他のグループの親インスリンアナログでは、B28位のアミノ酸残基が欠失されている。がAspである。このグループの親インスリンアナログからの特定の例はAspB28ヒトインスリンである。
他のグループの親インスリンアナログでは、B28位のアミノ酸残基がLysであり、B29位のアミノ酸残基がProである。このグループの親インスリンアナログからの特定の例はLysB28ProB29ヒトインスリンである。
【0038】
他のグループの親インスリンアナログでは、B30位のアミノ酸残基がLysであり、B29位のアミノ酸残基がCys、Met、Arg及びLysを除く任意のコード可能なアミノ酸である。一例は、B29位のアミノ酸残基がThrでありB30位のアミノ酸残基がLysであるインスリンアナログである。このグループの親インスリンアナログからの特定の例はThrB29LysB30ヒトインスリンである。
他のグループの親インスリンアナログでは、B3位のアミノ酸残基はLysであり、B29位のアミノ酸残基はGluである。このグループの親インスリンアナログからの特定の例はLysB3GluB29ヒトインスリンである。
【0039】
本発明において有用な’347誘導体の例は次の化合物である:
εB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(HOOC(CH15CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(HOOC(CH17CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(HOOC(CH18CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−Glu−N−(γ−Glu))des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(Asp−OC(CH16CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(Glu−OC(CH14CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(Glu−OC(CH14CO−)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(Asp−OC(CH16CO−)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−α−Glu−N−(β−Asp))des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(Gly−OC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(Sar−OC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;
(NεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−β−Asp)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−α−Glu)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−D−Glu)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(N−HOOC(CH16CO−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−(N−HOOC(CH14CO−IDA)des(B30)ヒトインスリン;
εB29−[N−(HOOC(CH16CO)−N−(カルボキシエチル)−Gly]des(B30)ヒトインスリン;
εB29−[N−(HOOC(CH14CO)−N−(カルボキシエチル)−Gly]des(B30)ヒトインスリン;及び
εB29−[N−(HOOC(CH14CO)−N−(カルボキシメチル)−β−Ala]des(B30)ヒトインスリン。
【0040】
’347誘導体は本質的に亜鉛を含まない化合物の形態又は亜鉛錯体の形態で提供されうる。’347誘導体の亜鉛錯体が提供される場合、2つのZn2+イオン、3つのZn2+イオン又は4つのZn+イオンが各インスリンヘキサマーに結合しうる。インスリン誘導体の亜鉛錯体の溶液はかかる種の混合物を含むであろう。
【0041】
’347誘導体の調製、製剤、薬理作用学及びそれに関連した他の特徴に関する詳細は、出典明示によりここに援用される国際公開第2005/012347号に記載されている。
【0042】
速効型インスリンアナログ
本発明の方法の実施態様は、持続型作用プロファイルを示す天然に生じるインスリン、インスリンアナログ又は誘導体に、速効型の天然に生じるインスリン、インスリンアナログ又は誘導体のより頻繁な投与及び/又は非インスリン抗糖尿病薬の投与が補充されるものを含む。
【0043】
よって、本発明の一実施態様は、上述の任意の適切なインスリン、アナログ又は誘導体(例えばNεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−γ−L−Glu)des(B30)ヒトインスリン=LysB29(Nε−ヘキサデカジノイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン(国際公開第2005/012347号の実施例4))及び速効型インスリンアナログが例えば併用製品として組み合わせて使用されるが別個にまた投与される併用治療を提供する。よって、ここに開示された発明において有用なインスリンに関する詳細を提供する本出願の全ての特定の開示は変更するところは変更して同化合物を速効型インスリンアナログと共に含む併用療法に適用する。典型的には、速効型インスリンはAspB28ヒトインスリン;LysB28ProB29ヒトインスリン及びLysB3GluB29ヒトインスリンからなる群から選択される。併用剤は鈍化(ブランティング(blunting))を示さない。国際公開第2005/012347号に開示されたインスリン誘導体は、出典明示によりここに援用される国際公開第2007/074133号に開示された速効型インスリンアナログと共に製剤化されうる。
【0044】
一実施態様では、本発明は薬学的に許容可能な担体及び添加剤と共にNεB29−(Nα−(HOOC(CH)14CO)−γ−L−Glu)des(B30)ヒトインスリン及びAspB28ヒトインスリンを用いた併用治療を提供する。
本発明に係るインスリン誘導体及び速効型インスリンアナログは、必要ならば、約90/10%;約80/20%、約70/30%、約60/40%、約50/50%、約40/60%、約30/60%、約20/80%又は約10/90%の比で混合することができる。
【0045】
他の組合せ
本発明の方法の一実施態様では、持続型作用プロファイルを示す天然に生じるインスリン、インスリンアナログ又は誘導体の投与に、メトホルミンのような非インスリン抗糖尿病薬の投与が補充される。
【0046】
本発明を以下のパラグラフにまとめる:
特許請求の範囲
1. 効果的な投薬量のインスリン誘導体を、それを必要とする患者に投与することを含むインスリン投与が有益である症状又は疾患の治療のためのインスリン誘導体であって、該インスリン誘導体が持続型作用プロファイルを示し、該投薬量が24時間よりも長い間隔で投与されるインスリン誘導体。
2. 上記投薬量が少なくとも36時間の間隔で投与されるパラグラフ1に記載のインスリン誘導体。
3. 上記投薬量が少なくとも48時間の間隔で投与されるパラグラフ2に記載のインスリン誘導体。
4. 上記投薬量が少なくとも72時間の間隔で投与されるパラグラフ3に記載のインスリン誘導体。
5. 上記投薬量が少なくとも96時間の間隔で投与されるパラグラフ4に記載のインスリン誘導体。
6. 上記投薬量が少なくとも120時間の間隔で投与されるパラグラフ5に記載のインスリン誘導体。
7. 上記投薬量が少なくとも144時間の間隔で投与されるパラグラフ6に記載のインスリン誘導体。
8. 上記投薬量が少なくとも168時間の間隔で投与されるパラグラフ7に記載のインスリン誘導体。
9. 上記投薬量が最大限でも336時間の間隔で投与される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
10. 上記投薬量が最大限でも312時間の間隔で投与される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
11. 上記投薬量が最大限でも288時間の間隔で投与される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
12. 上記投薬量が最大限でも264時間の間隔で投与される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
13. 上記投薬量が最大限でも240時間の間隔で投与される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
14. 上記投薬量が最大限でも216時間の間隔で投与される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
15. 上記投薬量が最大限でも192時間の間隔で投与される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
16. 上記投薬量が最大限でも168時間の間隔で投与される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
17. 上記投薬量が規則的な間隔で投与される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
18. 上記投薬量が一日おきに投与されるパラグラフ17に記載のインスリン誘導体。
19. 上記投薬量が二日おきに投与されるパラグラフ17に記載のインスリン誘導体。
20. 上記投薬量が三日おきに投与されるパラグラフ17に記載のインスリン誘導体。
21. 上記投薬量が四日おきに投与されるパラグラフ17に記載のインスリン誘導体。
22. 上記投薬量が五日おきに投与されるパラグラフ17に記載のインスリン誘導体。
23. 上記投薬量が六日おきに投与されるパラグラフ17に記載のインスリン誘導体。
24. 上記投薬量が14日毎に投与されるパラグラフ17に記載のインスリン誘導体。
25. 投薬量が、固定された週日に投与されるパラグラフ1から16の何れか一に記載のインスリン誘導体。
26. 投薬量が、固定された3週日に投与されるパラグラフ25に記載のインスリン誘導体。
27. 投薬量が、固定された2週日に投与されるパラグラフ25に記載のインスリン誘導体。
28. 上記固定された週日の何れも互いに近接していないパラグラフ26又は27に記載のインスリン誘導体。
29. 上記固定された2週日が2及び3の他の週日だけ離れているパラグラフ27に記載のインスリン誘導体。
30. 持続型作用プロファイルを示す天然に生じるインスリン、インスリンアナログ又は誘導体の投与に、速効型の天然に生じるインスリン、インスリンアナログ又は誘導体のより頻繁の投与及び/又は非インスリン抗糖尿病薬の投与が補充される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
31. 他の天然に生じるインスリン、インスリンアナログあるいは天然に生じるインスリン又はインスリンアナログの誘導体は実質的に何も上記患者には投与されないパラグラフ1から29の何れか一に記載のインスリン誘導体。
32. 持続型作用プロファイルを示す天然に生じるインスリン、インスリンアナログ又は誘導体の投与に、非インスリン抗糖尿病薬の投与が補充されるパラグラフ31に記載のインスリン誘導体。
33. 上記天然に生じるインスリン又は上記インスリンアナログの誘導体が投与され、上記誘導体が、親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基に結合した側鎖を有し、該側鎖が、一般式:
−W−X−Y−Z
[上式中、Wは、
・残基がそのカルボン酸基のうちの一つと共に、親のインスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基と一緒になってアミド基を形成する側鎖中のカルボン酸基を有するα−アミノ酸残基;
・アミド結合を介して一緒に連結されている2、3又は4のα−アミノ酸残基からなる鎖であって、アミド結合を介した該鎖は親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基に連結しており、Wのアミノ酸残基は、Wが側鎖中にカルボン酸基を有するアミノ酸残基を少なくとも一つ有するように、中性側鎖を有するアミノ酸残基及び側鎖中にカルボン酸基を有するアミノ酸残基の群から選択されるものであり;あるいは、
・Xから親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基までの共有結合
であり;
Xは、
・−CO−;
・−COCH(COOH)O−;
・−CON(CHCOOH)CHO−;
・−CON(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO−;
・−CON(CHCHCOOH)CHCHO−;
・−CON(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO−;
・−CONHCH(COOH)(CHNHO−;
・−CON(CHCHCOOH)CHO−;もしくは
・−CON(CHCOOH)CHCHO−であり、
a)Wがアミノ酸残基もしくはアミノ酸残基の鎖であるとき、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基とアミド結合を形成するか、あるいは、
b)Wが共有結合であるとき、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基とアミド結合を形成し;
Yは、
・mが6から32の範囲の整数である−(CH−;
・1、2もしくは3の−CH=CH−基と、鎖中に10から32の範囲の合計数の炭素原子を与えるのに十分な数の−CH−基とを含んでなる二価の炭化水素鎖;
・式−(CH(CH−(該式中、vとwは、vとwの合計が6から30の範囲になるような整数であるか又はそれらの一つはゼロである)の二価の炭化水素鎖
であり;及び
Zは、
・−COOH;
・−CO−Asp;
・−CO−Glu;
・−CO−Gly;
・−CO−Sar;
・−CH(COOH)
・−N(CHCOOH)
・−SOH;もしくは
・−PO
である]
のものであるものとそのZn2+錯体であり、但し、Wが共有結合でXが−CO−であるとき、Zは−COOHとは異なる、先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
34. 側鎖−W−X−Y−Zが親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基に結合しているパラグラフ33に記載のインスリン誘導体。
35. 側鎖−W−X−Y−Zが親インスリンのB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基に結合しているパラグラフ33に記載のインスリン誘導体。
36. Wが共有結合であるパラグラフ33から35の何れか一に記載のインスリン誘導体。
37. Wが4から10の炭素原子を有するα−アミノ酸残基であるパラグラフ33から35の何れか一に記載のインスリン誘導体。
38. Wが、α−Asp、β−Asp、α−Glu、γ−Glu、α−hGlu及びδ−hGluからなる群から選択されるパラグラフ37に記載のインスリン誘導体。
39. Wが、一つが4から10の炭素原子と遊離カルボン酸基を有し、他方が2から11の炭素原子を有するが遊離カルボン酸基は含まない二つのα−アミノ酸残基からなる鎖であるパラグラフ33から35の何れか一に記載のインスリン誘導体。
40. Wが、α−Asp−Gly;Gly−α−Asp;β−Asp−Gly;Gly−β−Asp;α−Glu−Gly;Gly−α−Glu;γ−Glu−Gly;Gly−γ−Glu;α−hGlu−Gly;Gly−α−hGlu;δ−hGlu−Gly;及びGly−δ−hGluからなる群から選択されるパラグラフ39に記載のインスリン誘導体。
41. Wが、4から10の炭素原子を独立して有し、共に遊離カルボン酸基を有する二つのα−アミノ酸残基からなる鎖であるパラグラフ33から35の何れか一に記載のインスリン誘導体。
42. Wが、α−Asp−α−Asp;α−Asp−α−Glu;α−Asp−α−hGlu;α−Asp−β−Asp;α−Asp−γ−Glu;α−Asp−δ−hGlu;β−Asp−α−Asp;β−Asp−α−Glu;β−Asp−α−hGlu;β−Asp−β−Asp;β−Asp−γ−Glu;β−Asp−δ−hGlu;α−Glu−α−Asp;α−Glu−α−Glu;α−Glu−α−hGlu;α−Glu−β−Asp;α−Glu−γ−Glu;α−Glu−δ−hGlu;γ−Glu−α−Asp;γ−Glu−α−Glu;γ−Glu−α−hGlu;γ−Glu−β−Asp;γ−Glu−γ−Glu;γ−Glu−δ−hGlu;α−hGlu−α−Asp;α−hGlu−α−Glu;α−hGlu−α−hGlu;α−hGlu−β−Asp;α−hGlu−γ−Glu;α−hGlu−δ−hGlu;δ−hGlu−α−Asp;δ−hGlu−α−Glu;δ−hGlu−α−hGlu;δ−hGlu−β−Asp;δ−hGlu−γ−Glu;及びδ−hGlu−δ−hGluからなる群から選択されるパラグラフ41に記載のインスリン誘導体。
43. Xが−CO−又は−CH(COOH)CO−であるパラグラフ33から42の何れか一に記載のインスリン誘導体。
44. Xが、
・ −CON(CHCOOH)CHO−;
・ −CON(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO−;
・ −CON(CHCHCOOH)CHCHO−;
・ −CON(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO−
・ −CON(CHCHCOOH)CHO−;又は
・ −CON(CHCOOH)CHCHO−
であるパラグラフ33から43の何れか一に記載のインスリン誘導体。
45. Yが−(CH−(ここで、mが6から32、8から20、12から20又は12−16の範囲の整数である)であるパラグラフ33から44の何れか一に記載のインスリン誘導体。
46. Zが−COOHであるパラグラフ33から45の何れか一に記載のインスリン誘導体。
47. Zが−CH(COOH)であるパラグラフ33から45の何れか一に記載のインスリン誘導体。
48. Zが−N(CHCOOH)であるパラグラフ33から45の何れか一に記載のインスリン誘導体。
49. Zが−SOHであるパラグラフ33から45の何れか一に記載のインスリン誘導体。
50. Zが−POHであるパラグラフ33から45の何れか一に記載のインスリン誘導体。
51. 親インスリンがA21位にAsn又はGlyを有しているパラグラフ33から50の何れか一に記載のインスリン誘導体。
52. 親インスリンがdes(B1)アナログであるパラグラフ33から50の何れか一に記載のインスリン誘導体。
53. 親インスリンがdes(B30)アナログであるパラグラフ33から50の何れか一に記載のインスリン誘導体。
54. 親インスリンのB29位がCys、Met、Arg及びLysを除く任意のコード可能なアミノ酸であり、B30位のアミノ酸がLysであるパラグラフ33から50の何れか一に記載のインスリン誘導体。
55. 親インスリンがB29位にThrを、B30位にLysを有するパラグラフ33から50の何れか一に記載のインスリン誘導体。
56. 親インスリンが、ヒトインスリン;des(B1)ヒトインスリン;des(B30)ヒトインスリン;GlyA21ヒトインスリン;GlyA21des(B30)ヒトインスリン;AspB28ヒトインスリン;ブタインスリン;LysB28ProB29ヒトインスリン;GlyA21ArgB31ArgB32ヒトインスリン;及びLysB3GluB29ヒトインスリンからなる群から選択されるパラグラフ33から50の何れか一に記載のインスリン誘導体。
57. インスリン誘導体が、NεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH15CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH17CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH18CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−Glu−N−(γ−Glu))des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Asp−OC(CH16CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Glu−OC(CH14CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Glu−OC(CH14CO−)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Asp−OC(CH16CO−)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−α−Glu−N−(β−Asp))des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Gly−OC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Sar−OC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;(NεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−β−Asp)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−α−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−D−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(N−HOOC(CH16CO−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(N−HOOC(CH14CO−IDA)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−[N−(HOOC(CH16CO)−N−(カルボキシエチル)−Gly]des(B30)ヒトインスリン;NεB29−[N−(HOOC(CH14CO)−N−(カルボキシエチル)−Gly]des(B30)ヒトインスリン;及びNεB29−[N−(HOOC(CH14CO)−N−(カルボキシメチル)−β−Ala]des(B30)ヒトインスリンからなる群から選択されるパラグラフ33に記載のインスリン誘導体。
58. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
59. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH15CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
60. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
61. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH17CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
62. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH18CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
63. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−Glu−N−(γ−Glu))des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
64. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(Asp−OC(CH16CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
65. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(Glu−OC(CH14CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
66. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(Glu−OC(CH14CO−)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
67. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(Asp−OC(CH16CO−)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
68. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−α−Glu−N−(β−Asp))des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
69. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(Gly−OC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
70. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(Sar−OC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
71. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
72. インスリン誘導体が(NεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−β−Asp)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
73. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−α−Glu)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
74. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−D−Glu)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
75. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
76. NεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン。
77. インスリン誘導体がNεB29−(N−HOOC(CH16CO−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
78. インスリン誘導体がNεB29−(N−HOOC(CH14CO−IDA)des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
79. インスリン誘導体がNεB29−[N−(HOOC(CH16CO)−N−(カルボキシエチル)−Gly]des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
80. インスリン誘導体がNεB29−[N−(HOOC(CH14CO)−N−(カルボキシエチル)−Gly]des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
81. インスリン誘導体がNεB29−[N−(HOOC(CH14CO)−N−(カルボキシメチル)−β−Ala]des(B30)ヒトインスリンであるパラグラフ57に記載のインスリン誘導体。
82. インスリン誘導体が亜鉛錯体の形態であり、各インスリンヘキサマーが2つの亜鉛イオン、3つの亜鉛イオン又は4つの亜鉛イオンに結合するパラグラフ33から57の何れか一に記載のインスリン誘導体。
83. 疾患又は症状が、真性糖尿病又は高血糖症によって特徴付けられる他の症状、糖尿病前症、耐糖能障害、メタボリックシンドローム、肥満症、カヘキシー、インビボβ細胞減少/死滅、過剰食欲、及び炎症からなる群から選択される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
84. 真性糖尿病が1又は2型糖尿病であるパラグラフ83に記載のインスリン誘導体。
85. 真性糖尿病が、経口抗糖尿病薬治療が失敗する2型糖尿病であるパラグラフ83に記載のインスリン誘導体。
86. 持続型作用プロファイルを示す天然に生じるインスリン、アナログ又は誘導体が注射で投与される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
87. インスリン誘導体が、薬学的に許容可能な担体及び/又はビヒクル及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と共に製剤化される先のパラグラフの何れか一に記載のインスリン誘導体。
88. 真性糖尿病又は高血糖症によって特徴付けられる他の症状、糖尿病前症、耐糖能障害、メタボリックシンドローム、肥満症、カヘキシー、インビボβ細胞減少/死滅、過剰食欲、及び炎症の治療のための薬学的組成物の調製におけるインスリン誘導体の使用であって、インスリン誘導体がパラグラフ1−87の何れか一に記載の通りである使用。
【0047】
インスリン、インスリンアナログ又はその誘導体の製剤
天然に生じるインスリン、インスリンアナログ、又は天然に生じるインスリン又はインスリンアナログの誘導体を含む薬学的組成物はここでは「インスリン組成物」と称される。本発明を実施するために、インスリン組成物は、このような治療が必要な患者に非経口的に投与されうる。非経口投与は、シリンジ、場合によってはペン状シリンジにより、皮下、筋肉内又は静脈内注射により実施されうる。あるいは、非経口投与は、輸液ポンプにより実施することもできる。更なる選択肢は、好ましくは特にその目的に対して設計された組成物、粉末又は液体で、インスリン組成物を経鼻的に又は経肺的に投与することである。
【0048】
注射可能なインスリン組成物は、所望する最終生成物が得られるように必要に応じて成分を溶解し混合することを含む製薬工業の一般的技法を使用して調製することができる。よって、一手順では、天然インスリン、アナログ又は誘導体は、調製される組成物の最終容量よりも幾分少ない量の水に溶解される。必要に応じて、等張剤、保存料及びバッファーが添加され、必要ならば、塩酸等の酸、又は必要な水酸化ナトリウム水等の塩基を使用して、溶液のpH値が調節される。最後に、溶液の容量は、所望の濃度の成分が得られるように水を用いて調節される。
【0049】
バッファーは、典型的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ビシン、トリシン、リンゴ酸、コハク酸塩、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はそれらの混合物からなる群から選択される。これらの特定のバッファーの各一が本発明の実施態様で有用な代替物を構成する。
【0050】
本発明の更なる実施態様では、製剤は、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、2−フェノキシエタノール、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、2−フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチオメロサール(thiomerosal)、ブロノポール、安息香酸、イミド尿素、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(chlorphenesine)(3p−クロロフェノキシプロパン−1,2−ジオール)又はそれらの混合物からなる群から選択され得る薬学的に許容可能な保存料を更に含有する。本発明の更なる実施態様では、保存料は、0.1mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在している。本発明の更なる実施態様では、保存料は0.1mg/ml〜5mg/mlの濃度で存在している。本発明の更なる実施態様では、保存料は約5mg/ml〜10mg/mlの濃度で存在している。本発明の更なる実施態様では、保存料は10mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在している。これらの特定の保存料の各一が本発明の別の実施態様を構成する。薬学的組成物中における保存料の使用は当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0051】
本発明の更なる実施態様では、製剤は、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール、アミノ酸(例えば、L−グリシン、L−ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、アルジトール(例えばグリセロール(グリセリン)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール)ポリエチレングリコール(例えばPEG400)、又はそれらの混合物からなる群から選択され得る等張剤を更に含有する。任意の糖、例えば単糖類、二糖類又は多糖類、又は水溶性グルカン類、例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン及びカルボキシメチルセルロース−Naを使用することもできる。一実施態様では、糖添加剤はスクロースである。糖アルコールは、少なくとも一の−OH基を有するC4−C8炭化水素と定義され、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール(galactitol)、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを含む。一実施態様では、糖アルコール添加剤はマンニトールである。上述の糖又は糖アルコールは、個々に又は組合せて使用することができる。糖又は糖アルコールが液状調製物に可溶性であり、本発明の方法を使用して達成される安定化効果に悪影響を与えない限りは、使用量に決まった限界はない。一実施態様では、糖又は糖アルコールの濃度は、約1mg/ml〜約150mg/mlである。本発明の更なる実施態様では、等張化剤は1mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在している。本発明の更なる実施態様では、等張剤は1mg/ml〜7mg/mlの濃度で存在している。本発明の更なる実施態様では、等張剤は8mg/ml〜24mg/mlの濃度で存在している。本発明の更なる実施態様では、等張剤は25mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在している。これらの特定の等張化剤の各一が本発明の別の実施態様を構成する。医薬組成物に等張化剤を使用することは、当業者によく知られている。簡便には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, 1995が参照される。
【0052】
適切な等張剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ジメチルスルホン及びグリセロールであり、典型的な保存料は、フェノール、m−クレゾール、p−ヒドロキシ安息香酸メチル及びベンジルアルコールである。
適切なバッファーの例は、酢酸ナトリウム、グリシルグリシン、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、TRIS(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)及びリン酸ナトリウムである。
【0053】
鼻投与のための組成物は、例えば欧州特許第272097号(ノボノルディスクA/S)に記載されているようにして調製されうる。
【0054】
インスリン含有組成物は、インスリンに対して敏感な状態の治療に使用することができる。よって、それらは、1型糖尿病、2型糖尿病及び重症を負ったヒト及び大手術を受けたヒトにしばしば見られる高血糖症の治療に使用することができる。任意の患者に対して最適な用量レベルは、使用される特定のインスリン、アナログ又は誘導体の効能、年齢、体重、身体的活動性、患者の食事を含む種々の要因、他の薬剤との併用の可能性、及び治療される状態の重篤度に依存するであろう。投与量計画は、投与間隔に関する本教示を考慮しながら、既知のインスリン組成物と同様にして、当業者により、個々の各患者に対して決定されることが推奨される。
【0055】
簡便な場合、インスリン組成物は他のタイプのインスリン、例えばより早い作用の発現を示すインスリンアナログと組み合わせて使用することができる。かかるインスリンアナログの例は、例えば公開番号EP214826(ノボノルディスクA/S)、EP375437(ノボノルディスクA/S)及びEP383472(イーライリリー社)を有する欧州特許出願に記載されている。
【0056】
本発明を、保護の範囲を限定するものと解してはならない次の実施例によって更に説明する。
【0057】
定義
ここで使用される「インスリンアナログ」とは、天然インスリン中に生じる少なくとも一つのアミノ酸残基を欠失させ、及び/又は置換することにより、及び/又は少なくとも一つのアミノ酸残基を付加することによって、天然に生じるインスリン、例えばヒトインスリンの構造から形式的には誘導することができる分子構造を有するポリペプチドを意味する。付加された及び/又は置換されたアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基又は他の天然に生じるアミノ酸残基又は純粋に合成のアミノ酸残基の何れかでありうる。インスリンアナログは、B鎖の28位が、天然Pro残基から、Asp、Lys又はIleの一つに修飾されうるようなものでありうる。他の実施態様では、B29位のLysがProに修飾される。一実施態様では、B30はLysであり得、その場合、B29はCys、Met、Arg及びLys以外の任意のコード可能なアミノ酸でありうる。
【0058】
また、A21位のAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、Tyr又はVal、特にGly、Ala、Ser、又はThr、好ましくはGlyに修飾されうる。更に、B3位のAsnはLys又はAspに修飾されうる。インスリンアナログの更なる例は、des(B30)ヒトインスリン;des(B30)ヒトインスリンアナログ;PheB1が欠失しているインスリンアナログ;A鎖及び/又はB鎖がN末端伸長を有しているインスリンアナログ、及びA鎖及び/又はB鎖がC末端伸長を有しているインスリンアナログである。よって、1又は2のArgが、B1位に付加されていてもよい。
【0059】
本発明の態様では、最大17のアミノ酸が修飾されている。本発明の態様では、最大15のアミノ酸が修飾されている。本発明の態様では、最大10のアミノ酸が修飾されている。本発明の態様では、最大8のアミノ酸が修飾されている。本発明の態様では、最大7のアミノ酸が修飾されている。本発明の態様では、最大6のアミノ酸が修飾されている。本発明の態様では、最大5のアミノ酸が修飾されている。本発明の態様では、最大4のアミノ酸が修飾されている。本発明の態様では、最大3のアミノ酸が修飾されている。本発明の態様では、最大2のアミノ酸が修飾されている。本発明の態様では、1のアミノ酸が修飾されている。
【0060】
ここで使用される「インスリン誘導体」は、例えば一又は複数のインスリン骨格中に側鎖を導入することによって又はインスリン中のアミノ酸残基の基を酸化又は還元することによって又は遊離カルボン酸基をエステル基に転化させるか又は遊離アミノ基又はヒドロキシ基をアシル化することによって、化学的に修飾された天然に生じるインスリン又はインスリンアナログを意味する。
【0061】
「desB30インスリン」、「desB30ヒトインスリン」とは、B30アミノ酸残基を欠く天然インスリン又はそのアナログを意味する。同様に、「desB29desB30インスリン」又は「desB29desB30ヒトインスリン」とは、B29及びB30アミノ酸残基を欠く天然インスリン又はそのアナログを意味する。
【0062】
「B1」、「A1」等とは、それぞれインスリンのB鎖の1位(N末端から数える)のアミノ酸残基及びインスリンのA鎖の1位(N末端から数える)のアミノ酸残基を意味する。特定の位置にあるアミノ酸残基は、例えばB1位のアミノ酸残基がフェニルアラニン残基であることを意味するPheB1としてもまた表されうる。
【0063】
ここで使用される「インスリン」とは、CysA7とCysB7の間と、CysA20とCysB19の間にジスルフィド架橋を、またCysA6とCysA11の間に内部ジスルフィド架橋を有するヒトインスリン、ブタインスリン又はウシインスリンを意味する。
「親インスリン」とは、天然に生じるインスリン、例えばヒトインスリン又はブタインスリンを意味する。あるいは、親インスリンはインスリンアナログでありうる。
【0064】
ここで使用される「ブランティングなし」なる用語は、一製剤に製剤化されたときに速効型インスリンとアシル化インスリンの双方が、速効型インスリン及びアシル化インスリンを別個の製剤で投与した場合の作用プロファイルと同一か又は実質的に同一である作用プロファイルを有していることを意味する。
【0065】
「コード可能なアミノ酸」又は「コード可能なアミノ酸残基」なる表現は、ヌクレオチドのトリプレット(「コドン」)によってコードされうるアミノ酸又はアミノ酸残基を示すために使用される。
hGluはホモグルタミン酸である。
α−Aspは−HNCH(CO−)CHCOOHのL型である。
β−Aspは−HNCH(COOH)CHCO−のL型である。
α−Gluは−HNCH(CO−)CHCHCOOHのL型である。
γ−Gluは−HNCH(COOH)CHCHCO−のL型である。
α−hGluは−HNCH(CO−)CHCHCHCOOHのL型である。
δ−hGluは−HNCH(COOH)CHCHCHCO−のL型である。
β−Alaは−NH−CH−CH−COOHである。
Sarはサルコシン(N−メチルグリシン)である。
【0066】
「側鎖にカルボン酸基を有するアミノ酸残基」なる表現はAsp、Glu及びhGluのようなアミノ酸残基を意味する。アミノ酸はL型又はD型の何れかでありうる。何も特定されていない場合は、アミノ酸残基はL型であると理解される。
「中性側鎖を有するアミノ酸残基」なる表現はGly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Pro、Ser、Thr、Cys、Met、Tyr、Asn及びGlnのようなアミノ酸残基を意味する。
【0067】
本発明に係るインスリン誘導体が「生理学的pH値で可溶性である」と記載されている場合は、インスリン誘導体が生理学的pH値で十分に溶解する注射可能なインスリン組成物を調製するのに使用できることを意味する。このような好ましい溶解度は、インスリン誘導体単独の固有の特性、又はインスリン誘導体と、ビヒクルに含まれる一又は複数の成分との好ましい相互作用の結果の何れかによるものである。
【0068】
次の略語を明細書と実施例において使用した:
IDA: イミノ二酢酸
Sar: サルコシン(N−メチル−グリシン)
Su: スクシンイミジル=2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル
【0069】
本発明を更に以下のパラグラフにまとめる:
1. 効果的な投薬量の天然に生じるインスリン、インスリンアナログ、天然に生じるインスリン又はインスリンアナログの誘導体を、それを必要とする患者に投与することを含むインスリン投与が有益である症状又は疾患を治療する方法であって、上記天然に生じるインスリン、インスリンアナログ、又は誘導体が持続型作用プロファイルを示し、上記投薬量が24時間よりも長い間隔で投与される方法。
2. 上記投薬量が少なくとも36時間の間隔で投与される請求項1に記載の方法。
3. 上記投薬量が少なくとも48時間の間隔で投与される請求項2に記載の方法。
4. 上記投薬量が少なくとも72時間の間隔で投与される請求項3に記載の方法。
5. 上記投薬量が少なくとも96時間の間隔で投与される請求項4に記載の方法。
6. 上記投薬量が少なくとも120時間の間隔で投与される請求項5に記載の方法。
7. 上記投薬量が少なくとも144時間の間隔で投与される請求項6に記載の方法。
8. 上記投薬量が少なくとも168時間の間隔で投与される請求項7に記載の方法。
9. 上記投薬量が最大限でも336時間の間隔で投与される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
10. 上記投薬量が最大限でも312時間の間隔で投与される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
11. 上記投薬量が最大限でも288時間の間隔で投与される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
12. 上記投薬量が最大限でも264時間の間隔で投与される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
13. 上記投薬量が最大限でも240時間の間隔で投与される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
14. 上記投薬量が最大限でも216時間の間隔で投与される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
15. 上記投薬量が最大限でも192時間の間隔で投与される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
16. 上記投薬量が最大限でも168時間の間隔で投与される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
17. 上記投薬量が規則的な間隔で投与される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
18. 上記投薬量が一日おきに投与される請求項17に記載の方法。
19. 上記投薬量が二日おきに投与される請求項17に記載の方法。
20. 上記投薬量が三日おきに投与される請求項17に記載の方法。
21. 上記投薬量が四日おきに投与される請求項17に記載の方法。
22. 上記投薬量が五日おきに投与される請求項17に記載の方法。
23. 上記投薬量が六日おきに投与される請求項17に記載の方法。
24. 上記投薬量が14日毎に投与される請求項17に記載の方法。
25. 投薬量が、固定された週日に投与される請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
26. 投薬量が、固定された3週日に投与される請求項25に記載の方法。
27. 投薬量が、固定された2週日に投与される請求項25に記載の方法。
28. 上記固定された週日の何れも互いに近接していない請求項26又は27に記載の方法。
29. 上記固定された2週日が2及び3の他の週日だけ離れている請求項27に記載の方法。
30. 持続型作用プロファイルを示す天然に生じるインスリン、インスリンアナログ又は誘導体の投与に、速効型の天然に生じるインスリン、インスリンアナログ又は誘導体のより頻繁の投与及び/又は非インスリン抗糖尿病薬の投与が補充される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
31. 他の天然に生じるインスリン、インスリンアナログあるいは天然に生じるインスリン又はインスリンアナログの誘導体は実質的に何も上記患者には投与されない請求項1から29の何れか一項に記載の方法。
32. 持続型作用プロファイルを示す天然に生じるインスリン、インスリンアナログ又は誘導体の投与に、非インスリン抗糖尿病薬の投与が補充される請求項31に記載の方法。
33. 上記天然に生じるインスリン又は上記インスリンアナログの誘導体が投与され、上記誘導体が、親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基に結合した側鎖を有し、該側鎖が、一般式:
−W−X−Y−Z
[上式中、Wは、
・残基がそのカルボン酸基のうちの一つと共に、親のインスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基と一緒になってアミド基を形成する側鎖中のカルボン酸基を有するα−アミノ酸残基;
・アミド結合を介して一緒に連結されている2、3又は4のα−アミノ酸残基からなる鎖であって、アミド結合を介した該鎖は親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基に連結しており、Wのアミノ酸残基は、Wが側鎖中にカルボン酸基を有するアミノ酸残基を少なくとも一つ有するように、中性側鎖を有するアミノ酸残基及び側鎖中にカルボン酸基を有するアミノ酸残基の群から選択されるものであり;あるいは、
・Xから親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基までの共有結合
であり;
Xは、
・−CO−;
・−CH(COOH)O−;
・−N(CHCOOH)CHO−;
・−N(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO−;
・−N(CHCHCOOH)CHCHO−;
・−N(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO−;
・−NHCH(COOH)(CHNHO−;
・−N(CHCHCOOH)CHO−;もしくは
・−N(CHCOOH)CHCHO−であり、
a)Wがアミノ酸残基もしくはアミノ酸残基の鎖であるとき、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基とアミド結合を形成するか、あるいは、
b)Wが共有結合であるとき、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基とアミド結合を形成し;
Yは、
・mが6から32の範囲の整数である−(CH−;
・1、2もしくは3の−CH=CH−基と、鎖中に10から32の範囲の合計数の炭素原子を与えるのに十分な数の−CH−基とを含んでなる二価の炭化水素鎖;
・式−(CH(CH−(該式中、vとwは、vとwの合計が6から30の範囲になるような整数であるか又はそれらの一つはゼロである)の二価の炭化水素鎖
であり;及び
Zは、
・−COOH;
・−CO−Asp;
・−CO−Glu;
・−CO−Gly;
・−CO−Sar;
・−CH(COOH)
・−N(CHCOOH)
・−SOH;もしくは
・−PO
である]
のものであるものとそのZn2+錯体であり、但し、Wが共有結合でXが−CO−であるとき、Zは−COOHとは異なる、先の請求項の何れか一項に記載の方法。
34. 側鎖−W−X−Y−Zが親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基に結合している請求項33に記載の方法。
35. 側鎖−W−X−Y−Zが親インスリンのB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基に結合している請求項33に記載の方法。
36. Wが共有結合である請求項33から35の何れか一項に記載の方法。
37. Wが4から10の炭素原子を有するα−アミノ酸残基である請求項33から35の何れか一項に記載の方法。
38. Wが、α−Asp、β−Asp、α−Glu、γ−Glu、α−hGlu及びδ−hGluからなる群から選択される請求項37に記載の方法。
39. Wが、一つが4から10の炭素原子と遊離カルボン酸基を有し、他方が2から11の炭素原子を有するが遊離カルボン酸基は含まない二つのα−アミノ酸残基からなる鎖である請求項33から35の何れか一項に記載の方法。
40. Wが、α−Asp−Gly;Gly−α−Asp;β−Asp−Gly;Gly−β−Asp;α−Glu−Gly;Gly−α−Glu;γ−Glu−Gly;Gly−γ−Glu;α−hGlu−Gly;Gly−α−hGlu;δ−hGlu−Gly;及びGly−δ−hGluからなる群から選択される請求項39に記載の方法。
41. Wが、4から10の炭素原子を独立して有し、共に遊離カルボン酸基を有する二つのα−アミノ酸残基からなる鎖である請求項33から35の何れか一項に記載の方法。
42. Wが、α−Asp−α−Asp;α−Asp−α−Glu;α−Asp−α−hGlu;α−Asp−β−Asp;α−Asp−γ−Glu;α−Asp−δ−hGlu;β−Asp−α−Asp;β−Asp−α−Glu;β−Asp−α−hGlu;β−Asp−β−Asp;β−Asp−γ−Glu;β−Asp−δ−hGlu;α−Glu−α−Asp;α−Glu−α−Glu;α−Glu−α−hGlu;α−Glu−β−Asp;α−Glu−γ−Glu;α−Glu−δ−hGlu;γ−Glu−α−Asp;γ−Glu−α−Glu;γ−Glu−α−hGlu;γ−Glu−β−Asp;γ−Glu−γ−Glu;γ−Glu−δ−hGlu;α−hGlu−α−Asp;α−hGlu−α−Glu;α−hGlu−α−hGlu;α−hGlu−β−Asp;α−hGlu−γ−Glu;α−hGlu−δ−hGlu;δ−hGlu−α−Asp;δ−hGlu−α−Glu;δ−hGlu−α−hGlu;δ−hGlu−β−Asp;δ−hGlu−γ−Glu;及びδ−hGlu−δ−hGluからなる群から選択される請求項41に記載の方法。
43. Xが−CO−又は−CH(COOH)CO−である請求項33から42の何れか一項に記載の方法。
44. Xが、
・ −N(CHCOOH)CHO−;
・ −N(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO−;
・ −N(CHCHCOOH)CHCHO−;
・ −N(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO−
・ −N(CHCHCOOH)CHO−;又は
・ −N(CHCOOH)CHCHO−
である請求項33から43の何れか一項に記載の方法。
45. Yが−(CH−(ここで、mが6から32、8から20、12から20又は12−16の範囲の整数である)である請求項33から44の何れか一項に記載の方法。
46. Zが−COOHである請求項33から45の何れか一項に記載の方法。
47. Zが−CH(COOH)である請求項33から45の何れか一項に記載の方法。
48. Zが−N(CHCOOH)である請求項33から45の何れか一項に記載の方法。
49. Zが−SOHである請求項33から45の何れか一項に記載の方法。
50. Zが−POHである請求項33から45の何れか一項に記載の方法。
51. 親インスリンがA21位にAsn又はGlyを有している請求項33から50の何れか一項に記載の方法。
52. 親インスリンがdes(B1)アナログである請求項33から50の何れか一項に記載の方法。
53. 親インスリンがdes(B30)アナログである請求項33から50の何れか一項に記載の方法。
54. 親インスリンのB29位がCys、Met、Arg及びLysを除く任意のコード可能なアミノ酸であり、B30位のアミノ酸がLysである請求項33から50の何れか一項に記載の方法。
55. 親インスリンがB29位にThrを、B30位にLysを有する請求項33から50の何れか一項に記載の方法。
56. 親インスリンが、ヒトインスリン;des(B1)ヒトインスリン;des(B30)ヒトインスリン;GlyA21ヒトインスリン;GlyA21des(B30)ヒトインスリン;AspB28ヒトインスリン;ブタインスリン;LysB28ProB29ヒトインスリン;GlyA21ArgB31ArgB32ヒトインスリン;及びLysB3GluB29ヒトインスリンからなる群から選択される請求項33から50の何れか一項に記載の方法。
57. インスリン誘導体が、NεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH15CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH17CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH18CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−Glu−N−(γ−Glu))des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Asp−OC(CH16CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Glu−OC(CH14CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Glu−OC(CH14CO−)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Asp−OC(CH16CO−)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−α−Glu−N−(β−Asp))des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Gly−OC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Sar−OC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;(NεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−β−Asp)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−α−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−D−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(N−HOOC(CH16CO−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(N−HOOC(CH14CO−IDA)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−[N−(HOOC(CH16CO)−N−(カルボキシエチル)−Gly]des(B30)ヒトインスリン;NεB29−[N−(HOOC(CH14CO)−N−(カルボキシエチル)−Gly]des(B30)ヒトインスリン;及び NεB29−[N−(HOOC(CH14CO)−N−(カルボキシメチル)−β−Ala]des(B30)ヒトインスリンからなる群から選択される請求項33に記載の方法。
58. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
59. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH15CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
60. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
61. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH17CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
62. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH18CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
63. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−Glu−N−(γ−Glu))des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
64. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(Asp−OC(CH16CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
65. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(Glu−OC(CH14CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
66. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(Glu−OC(CH14CO−)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
67. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(Asp−OC(CH16CO−)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
68. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−α−Glu−N−(β−Asp))des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
69. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(Gly−OC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
70. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(Sar−OC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
71. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
72. インスリン誘導体が(NεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−β−Asp)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
73. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−α−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
74. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−D−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
75. インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
76. NεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン。
77. インスリン誘導体がNεB29−(N−HOOC(CH16CO−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
78. インスリン誘導体がNεB29−(N−HOOC(CH14CO−IDA)des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
79. インスリン誘導体がNεB29−[N−(HOOC(CH16CO)−N−(カルボキシエチル)−Gly]des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
80. インスリン誘導体がNεB29−[N−(HOOC(CH14CO)−N−(カルボキシエチル)−Gly]des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
81. インスリン誘導体がNεB29−[N−(HOOC(CH14CO)−N−(カルボキシメチル)−β−Ala]des(B30)ヒトインスリンである請求項57に記載の方法。
82. インスリン誘導体が亜鉛錯体の形態であり、各インスリンヘキサマーが2つの亜鉛イオン、3つの亜鉛イオン又は4つの亜鉛イオンに結合する請求項33から57の何れか一項に記載の方法。
83. 疾患又は症状が、真性糖尿病又は高血糖症によって特徴付けられる他の症状、糖尿病前症、耐糖能障害、メタボリックシンドローム、肥満症、カヘキシー、インビボβ細胞減少/死滅、過剰食欲、及び炎症からなる群から選択される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
84. 真性糖尿病が1又は2型糖尿病である請求項83に記載の方法。
85. 真性糖尿病が、経口抗糖尿病薬治療が失敗する2型糖尿病である請求項83に記載の方法。
86. 持続型作用プロファイルを示す天然に生じるインスリン、アナログ又は誘導体が筋肉内注射で投与される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
87. 天然に生じるインスリン、インスリンアナログ又は誘導体が、薬学的に許容可能な担体及び/又はビヒクル及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と共に製剤化される先の請求項の何れか一項に記載の方法。
88. 先の請求項の何れか一項に記載の方法において使用される天然に生じるインスリン、インスリンアナログ、又は天然に生じるインスリンもしくはインスリンアナログの誘導体。
89. 真性糖尿病又は高血糖症によって特徴付けられる他の症状、糖尿病前症、耐糖能障害、メタボリックシンドローム、肥満症、カヘキシー、インビボβ細胞減少/死滅、過剰食欲、及び炎症の治療のための薬学的組成物の調製における天然に生じるインスリン、インスリンアナログ、又は天然に生じるインスリンもしくはインスリンアナログの誘導体の使用であって、治療が請求項1から87の何れか一項に記載の通りである使用。
【実施例】
【0070】
毎日一回未満の頻度でインスリン剤を使用する可能性を示すためには、作用期間がインスリン剤を使用する殆どの患者において十分に長いものでなければならない。臨床使用における作用期間の指標は、単一用量実験条件下、正常血糖クランプ試験で得ることができる(L. Heinemann及びJ. H. Anderson-Jr. Measurement of insulin absorption and insulin action. Diabetes Technol Ther 6 (5):698-718, 2004), 実施例1参照)。
【0071】
インスリン剤の臨床効果を研究するためには、本発明の使用態様を表す条件下で臨床治験が実施されなければならない。承認と登録を得る目的で糖尿病の治療のための化合物を研究する臨床治験は、地域の当局によって提供されるガイドラインを遵守しなければならない(欧州のガイドラインが一例となる:Note for Guidance on Clinical Investigations of Medicinal Products in the Treatment of diabetes Mellitus, EMEA, London, 2002)。
【0072】
十分に長い作用期間を有するインスリンアナログを示す例として、NεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−γ−L−Glu)des(B30)ヒトインスリンに対応するLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン(国際公開第2005/012347号の実施例4;次の「LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン」)を、毎日より少ない頻度の注射後の臨床効果について研究した。
【0073】
実施例1
LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの活性プロファイルと作用期間の研究
方法
1型糖尿病及び2型糖尿病にそれぞれ罹患した患者におけるLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンとインスリングラルギン(IGlar)の活性プロファイルを比較するために、無作為化二重盲検6期間単一施設クロスオーバー治験として研究を実施した。
1型糖尿病の患者での10.4nmol/kgのLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン及び7.2nmol/kgのIGlar、あるいは2型糖尿病の患者での14.0nmol/kgのLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン及び9.6nmol/kgのIGlarの、皮下(s.c.)単一用量投与の異なった列に患者を無作為化した。
【0074】
それぞれの投薬では、来診患者に、治験薬投与前の4−6時間の間、血糖濃度を90mg/dL(5.0mmol/L)のレベルに安定に維持するためにグルコース及びヒト可溶型インスリン(Actrapid(登録商標))の制御された静脈内注入を受けさせた。すなわち、90mg/dL(5.0mmol/L)の標的血糖値で正常血糖クランプ試験を開始した。正常血糖クランプ試験は、最後の30分はグルコース注入なしに血糖値が160mg/dL(8.9mmol/L)を越える濃度まで増加した場合にはより早くしたが、投薬後24時間で終了させた。
【0075】
治験薬投与後の24から30時間の期間、患者は絶食した。この6時間の間、血糖が70mg/dL(3.9mmol/L)近くに又はそれ以下に下がった場合、患者は一回又は複数回の10gの炭水化物の経口投与を受けた。
血清中LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン/血漿中IGlar、及び血糖の測定のための血液試料を、投薬前と投薬後96時間まで採取した。
標準的な安全性評価を実施した。
【0076】
患者数
1型糖尿病の20名の患者と2型糖尿病の18名の患者が治験を完了した。
【0077】
組み入れのための診断及び主要基準
年齢18−69歳(組み入れ)で、グリコシル化血色素(HbA1c)≦10%で、通常はインスリン(≦1.2U/kg/日)で治療された1型糖尿病又は2型糖尿病(≧12ヶ月)の男性。1型糖尿病の患者はインスリン≧12ヶ月で治療され、18−27kg/m(組み入れ)のボディマス指数(BMI)と<0.3nmol/Lの空腹時Cペプチドを有していなければならない。2型糖尿病の患者は、インスリン≧3ヶ月で治療され、22−35kg/m(組み入れ)のBMIと<1.0nmol/Lの空腹時Cペプチドを有していなければならない。
【0078】
試験剤、用量及び投与態様
単一用量(1型糖尿病の患者に10.4nmol/kg及び2型糖尿病の患者に14.0nmol/kg)のLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン,1200nmol/mL,6Zn2+/6のLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンを、1.5mLのカートリッジに入れ、Becton−DickinsonマイクロファインTMシリンジ(1000μL)を使用し付属の針(29G×12.7mm)で大腿に皮下注射した。
【0079】
治療期間
一回の単一用量のLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン及びIGlarを7−2一日の間隔で2つの異なった時期に投与した。
【0080】
基準治療法、用量及び投与態様
単一用量(1型糖尿病の患者に7.2nmol/kgと2型糖尿病の患者に9.6nmol/kg)のIGlar(Lantus(登録商標)),100IU/mL,600nmol/mLを3.0mLのカートリッジに入れ、Becton−DickinsonマイクロファインTMシリンジ(1000μL)を使用し付属の針(29G×12.7mm)で大腿に皮下注射した。
【0081】
評価基準−効能
薬力学:
− 治験薬投与後24時間の正常血糖クランプ試験中における糖注入率(GIR)。
− 血糖濃度。
− 低血糖を避けるために投薬後24から30時間で与えられた経口炭水化物投与の数。
薬物動態:
− LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンか又はIGlarの単一投薬後96時間の血清中LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン/血漿中IGlar濃度
【0082】
主要エンドポイント:
− AUCGIR(0−24時間)、つまり0から24時間のGIR曲線の濃度−時間曲線下の面積(AUC)
【0083】
キーとなる副次的エンドポイント:
− 経口炭水化物投与:低血糖を避けるために投薬後24から30時間で与えられた経口炭水化物投与の数
− 薬物動態(tmax(最大濃度までの時間),終末半減期)
【0084】
治験集団の個体群統計学
20名の1型糖尿病の男性患者と20名の2型糖尿病の男性患者はそれぞれ平均で37歳及び56歳で、平均体重は74kg及び93kgで、平均HbA1cは7.9%及び7.7%で、彼らは21年及び14年の平均糖尿病期間を有していた。
【0085】
キーとなる結果
− クランプ試験終了時に顕著なレベルのGIRが尚も存在していたので、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンのAUCGIR(0−24時間)は全インスリン作用を捕獲しなかった。24時間でのGIRレベルは1型及び2型双方に対してそれぞれおよそ3.5及び2.5mg/kg/分であった。
− 平均GIRmaxは、1型及び2型双方において、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンに対して(4.1及び3.1mg/kg/分)よりもIGlarに対して高かった(5.6及び4.2mg/kg/分)。
− GIRmaxへの平均GIR時間は、1型及び2型集団の間に明らかな差はなく、IGlar(11から13時間)に対してよりもLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン(13から20時間)に対してより長かった。
− 正常血糖クランプ試験後の最初の6時間の間、血糖を70mg/dL(3.9mmol/L)より高く維持するのに必要な経口炭水化物投与の平均数は、1型及び2型においてそれぞれIGlar(6.8及び4.2)よりもLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン(7.6及び8.3)に対してより高いようであった。
− 平均tmaxは、IGlar(11−13時間)に対してよりもLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン(19から26時間)に対して顕著により長かった。
− 平均終末半減期は、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンに対して18から19時間で、IGlarに対して13から25時間であり、1型糖尿病の患者と2型糖尿病の患者において、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンとIGlarの間に差はなかった。
【0086】
キーとなる安全性結果
一般に、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン及びIGlarそれぞれの単一用量投与は、1型糖尿病の患者と2型糖尿病の患者において、良好に許容された。
【0087】
キーとなる結論
LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンは、IGlarと比較して、GIRプロファイル特性(クランプ試験終了時に存在する遅く低いGIRmax及び実質的活性)及び24時間の正常血糖クランプ試験の終了後の最初の6時間において70mg/dL(3.9mmol/L)を越える血糖を維持するのに必要な炭水化物投与の数によって裏付けて、より遅延性の作用プロファイルと、より長い期間の作用を有していたようであった。活性データ(薬力学)に基づく結論は薬物動態データによって裏付けられている。
【0088】
実施例2
月曜、水曜、金曜に投与されたLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの臨床効果の研究
【0089】
キーとなる方法論的要素と結果
経口抗糖尿病薬(OAD)治療に失敗した2型糖尿病の患者において、全てメトホルミンとの併用で、週3回(月曜、水曜、金曜)の2型糖尿病の患者の治療に対してLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの実行性、効能、安全性及び耐容性を評価するための治験を設計した。LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン(900nmol/L濃度)を研究した。LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの長い作用期間(>24時間)のため、メトホルミンとの併用で週三回の注射で患者を十分に制御できると仮定した。
【0090】
主要目的
OAD治療に失敗した2型糖尿病のインスリン治療未経験の患者において、全てメトホルミンとの併用で、週三回(月曜、水曜、金曜)のLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンでの、又は毎日一回のインスリングラルギンでの、16週の治療後のHbA1cに関してグルコース制御性を評価すること。
【0091】
材料と方法
治験は、過去に一又は二種の経口抗糖尿病薬:メトホルミン、SU(又は他のインスリン分泌促進物質、例えばレパグリニド、ナテグリニド)、及びαグルコシダーゼ阻害剤で治療されたインスリン治療未経験の患者で実施した。導入期間の始めに全患者はその現在の糖尿病治療を中止し、2週間のメトホルミンの増量を開始した後に1週間の維持期間をとった。無作為化して、患者は週三回、基礎インスリンLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンを加えるか又は毎日一回インスリングラルギンを加えながらメトホルミンを続けた。
【0092】
平均年齢54歳、平均糖尿病期間6.9年、29.5kg/mの平均BMI、10.2mmol/Lの平均FPG、及び8.7%の平均HbA1cの2型糖尿病の全124名の患者に、双方ともメトホルミンとの併用で、16週の治療期間にわたって、毎日一回のLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン(900nmol/mL)(62名の患者)又は毎日一回のインスリングラルギン(62名の患者)を投与した。
【0093】
効能の結果
HbA1c
治療グループはベースラインから治療の終わりまでの平均HbA1c変化について同様であった(表1及び表2)。


【0094】
低血糖
双方の治療アームに対して、50%を越える患者は低血糖症状の発現を報告しなかった。表3参照。主要な低血糖事象はひとつだけ治験中に報告された。
【0095】

【0096】
インスリン用量

【0097】
結論
OAD治療で失敗した2型糖尿病のインスリン治療未経験の患者において、メトホルミンとの併用で週三回(月曜、水曜、金曜)、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンを用いて16週治療した結果は、メトホルミンとの併用で毎日一回投与したインスリングラルギンに対して観察された結果に匹敵する血糖制御が達成された。
【0098】
実施例3
定常状態クランプ−LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの活性プロファイル及び作用期間の研究。
方法
1型糖尿病患者においてLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン及びインスリングラルギン(IGlar)の活性プロファイルを比較するために、無作為化二重盲検単一施設2期間クロスオーバー治験として研究を実施した。
LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン及びIGlarの皮下(s.c.)複数用量の毎日一回の投与の異なった列に患者を無作為化した。用量は0.57U/kgか又は0.85U/kgのLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン、及び0.4U/kgか又は0.6U/kgのIGlarであった。患者はそれぞれの投薬期間に対して8日間治療した。2つの投薬期間の間に10−20日続く休薬期間があった。
【0099】
各投薬期間の最後の日に、患者に、治験薬投与前の8−4時間の間、血糖濃度を100mg/dL(5.5mmol/L)のレベルに安定に維持するためにグルコース及びヒト可溶型インスリン(Actrapid(登録商標))の制御された静脈内注入を受けさせた。すなわち、100mg/dL(5.5mmol/L)の標的血糖値で正常血糖クランプ試験を開始した。正常血糖クランプ試験は、最後の30分はグルコース注入なしに血糖値が200mg/dL(11.1mmol/L)を越える濃度まで増加した場合にはより早くしたが、投薬後42時間で終了させた。
血清中LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン/血漿中IGlar、及び血糖の測定のための血液試料を、投薬前と投薬後146時間まで採取した。
標準的な安全性評価を実施した。
【0100】
患者の数
21名の患者が治験を完了した。
【0101】
組み入れのための診断及び主要基準
年齢18−69歳(組み入れ)で、グリコシル化血色素(HbA1c)≦10%で、通常はインスリン(≦1.2U/kg/日)で治療された1型糖尿病(≧12ヶ月)の男性又は女性の患者。患者はインスリン≧12ヶ月で治療され、18−28kg/m(組み入れ)のボディマス指数(BMI)と<0.3nmol/Lの空腹時Cペプチドを有していなければならない。
【0102】
試験剤、用量及び投与態様
複数用量の0.57U/kg又は0.85U/kgのLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン,600nmol/ml,LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンを3mlのFlexPen(登録商標)(100DU/ml)カートリッジに入れ、NovoFine(登録商標)30G,8mm針を使用した。
【0103】
治療期間
複数用量のLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン及びIGlarを、10−20日の間隔で、8日(場合によっては+1−5日)続く2つの異なった投薬期間を使用して投与した。
【0104】
基準治療法、用量及び投与態様
複数用量(0.4U/lg又は0.6U/kg)のIGlar(Lantus(登録商標)),100IU/mL,600nmol/mLを3.0mL 3mLのOptiset(登録商標)カートリッジに入れ、PenFine(登録商標)31G,8mmを使用し大腿に皮下注射した。
【0105】
評価基準−効能
薬力学:
− 8回目と最後の投薬日の間の42時間の正常血糖クランプ試験中における糖注入率(GIR)。
− 血糖濃度。
薬物動態:
− LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンか又はIGlarの単一投薬後144時間の血清中LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン/血漿中IGlar濃度
【0106】
主要エンドポイント:
− AUCGIR(0−24時間)、つまり0から24時間のGIR曲線の濃度−時間曲線下の面積(AUC)
【0107】
キーとなる副次的エンドポイント:
− 正常血糖値クランプ期間中の血糖値
− 薬物動態(tmax,終末半減期)
【0108】
治験集団の個体群統計学
1型糖尿病の35名の男性患者と7名の女性患者はそれぞれ平均で40歳で、平均体重は75kgで、平均HbA1cは7.8%で、彼らは21年の平均糖尿病期間を有していた。
【0109】
キーとなる結果
− 24時間の時点で顕著なレベルのGIRが尚も存在していたので、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンのAUCGIR(0−24時間)は全インスリン作用を捕獲しなかった。24時間でのGIRレベルは低用量又は高用量後にそれぞれおよそ2.0及び3.0mg/kg/分であった。インスリングラルギンに対する対応値はおよそ0.8及び1.8mg/kg/分であった。
− 平均GIRmaxは、最も高い用量の後は、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンに対して(それぞれ4.68及び4.02mg/kg/分)よりもIGlarに対して高かった(5.6及び4.2mg/kg/分)が、低い用量後はGIRmaxは等しかった(3.07mg/kg/分)。
− GIRmaxへの平均GIR時間は、IGlar(低用量及び高用量に対してそれぞれ5.0時間及び4.1時間)に対してよりもLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン(低用量及び高用量に対してそれぞれ13.2時間及び6.1時間)に対してより長かった。
− 平均トラフ対ピーク範囲は、インスリングラルギン後よりもLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの場合に少なかった。値は低用量及び高用量後にそれぞれ1.0及び0.7mg/kg/分であった。インスリングラルギンの場合、対応する値は1.6及び1.1mg/kg/分であった。
− グルコース制御喪失までの平均時間は、双方の用量レベルで、グラルギンの場合よりもLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの場合により長かった。これは、低いLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン用量後、およそ40時間で発生し、高いLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン用量後の42時間の時点ではグルコース制御の有意な喪失(10mg/dlより多い血糖の増加として定義)は見られなかった。インスリングラルギン投与後は、低用量及び高用量をそれぞれ投与する場合、およそ24時間及び26時間後にグルコース制御の喪失が発生した。
− 最大濃度(Cmax)までの平均時間は、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンに対してよりもインスリングラルギンに対してより短かった。それぞれ中用量及び高用量後に、インスリングラルギンでは、値は7.2及び6.4時間であり、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンに対する値は9.2及び10.1時間であった。
− 平均終末半減期は、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンに対して25.2時間(95%CI 23から28時間)で、IGlarに対して13.9時間(95%CI 13から15)であった。
【0110】
キーとなる安全性結果
一般に、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン及びIGlarの複数用量投与は、それぞれ1型糖尿病の患者において良好に許容された。
【0111】
キーとなる結論
LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンは、図1に示されるGIRプロファイル特性によって裏付けられているように、IGlarと比較して、より平坦でより持続的な作用プロファイルとより長い作用期間を有しているようであった。該図は、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンが匹敵する用量でより低いGIRmaxを有し、双方の用量レベルでより長いGIRmaxへの時間を有し、少ないトラフ対ピーク範囲を有していることを示している。現在の状況下でのLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの作用期間は、図2に見られるように、およそ40時間又はそれ以上であり、これは、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンがより長い期間にわたって血糖を制御する能力を有していることを示している。活性データ(薬力学)に基づく結論は薬物動態データ(より長いCmaxまでの時間及びより長い終末半減期)によって裏付けられている。
【0112】
実施例4
週三回投与されるLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの臨床効果の研究。1型糖尿病の患者におけるLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン200U/mlの二つの異なった治療計画(毎日一回と毎週三回)における低血糖症発現数及び糖血症変動性を評価する治験。
【0113】
キーとなる方法論的要素と結果
週三回の1型糖尿病の患者の治療に対してLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの実行性、効能、安全性及び耐容性を評価するための治験を設計した。治験は、それぞれ9日からなる2の院内治療期間での単一施設二重盲検クロスオーバー治験であった。LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン(1200nmol/L濃度=200U/ml))を調査した。LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの長い作用期間(>24時間)のため、患者は週三回の注射で十分に制御できると仮定した。
【0114】
主要目的
1型糖尿病の患者において、血糖変動性の点で、週三回のLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの適用性を評価すること。
これは、毎日一回及び週三回、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンを用いて一週間治療する間における低血糖介入の数を比較することによって実施する。
【0115】
材料と方法
診断後≧12ヶ月の1型糖尿病のインスリン治療された(治験前>12ヶ月)患者において治験を実施した。患者を、LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンが毎週三回及び毎日一回注射される2つの可能な治療列の一つに無作為化した。2つの院内治療期間を5−9日の休薬期間によって分離した。LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの毎日一回用量を、治験に入るときに使用した個々の用量によって決定して、治験中、固定した。週三回LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンを使用する場合、注射当たりの用量は毎日一回使用の間に得られた毎週の用量の三分の一であった。LysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンでの治療に、食事インスリンカバーのためのインスリンアスパルト(Novorapid(登録商標))を補充した。
【0116】
参加者の血漿グルコース値を自己モニター手順によって定期的に測定した。低血糖が検出された場合(血漿グルコース≦71mg/dl)、治験員が、血漿グルコースが再び71mg/dlより上に安定化されるまで、炭水化物摂取での介入を行った。治験フローを図3に示す。
平均年齢43歳、平均糖尿病期間18年、26kg/mの平均BMI、及び8.3%の平均HbA1cの全体で18名の男性患者を各治療列(1:1)に無作為化した。
【0117】
キーとなる結果
低血糖事象

【0118】
血漿グルコース
空腹時血漿グルコースは、毎週三回及び毎日一回治療後に同様であり、それぞれ8.05及び7.33mMであった。
【0119】
インスリン用量
毎日のボーラスインスリン全用量は毎週三回及び毎日一回治療後に同様であり、それぞれ27.4及び26.3Uであった。毎週三回の治療中の日ごとの毎日の全ボーラス用量は毎日一回の期間よりも多く、それぞれ41.8及び30.3%であった。
【0120】
結論
1型糖尿病の患者では、毎週三回の基礎インスリンLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンでの7日の固定用量治療は、毎日一回の固定用量の注射計画と比較した場合、低血糖事象の全数に関して有意な差はなかった。空腹時血漿グルコース及び食事のインスリン用量(ボーラス用量)は2つの治療期間において同様であったが、毎日の全ボーラス用量に11.5%の大きな変動が週三回の治療期間で観察された。この高い変動は、2回の治療計画間の基礎インスリンカバーの差による代償的インスリン必要性によって引き起こされている蓋然性が高い。総合して、この治験は、毎週三回のLysB29(Nε−ヘキサデカンジオイル−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリンの使用が1型糖尿病の患者に実施可能であることを示している。
【0121】
ここに引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての文献は、各文献が、出典明示により個々にかつ特に援用され、その全内容がここに記載されているかの如く、その全体が出典明示によりその全内容がここに援用される(法律により許容される最大範囲)。
全ての表題及び副題は、ここでは便宜的に使用され、決して本発明を限定するものと解すべきではない。
ここに提供される任意かつ全ての例、又は例示的言語(例えば「等」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、特に請求項に記載がない限り、本発明の範囲に限定をもたらすものではない。明細書中の如何なる語句も請求項に記載していない要素が本発明の実施に必須であることを示しているものと解すべきではない。
ここでの特許文献の引用及び援用は単に便宜上なされているもので、そのような特許文献の有効性、特許性、及び/又は権利行使性についての見解を反映させるものではない。
この発明は、適用される法律に容認される場合、ここに添付される特許請求の範囲に記載された主題事項のあらゆる変更物及び均等物を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
効果的な投薬量のインスリン誘導体を、それを必要とする患者に投与することを含むインスリン投与が有益である症状又は疾患の治療のためのインスリン誘導体であって、持続型作用プロファイルを示し、上記投薬量が24時間よりも長い間隔で投与されるインスリン誘導体。
【請求項2】
上記投薬量が少なくとも36時間、42時間、48時間、72時間又は96時間の間隔で投与される請求項1に記載のインスリン誘導体。
【請求項3】
投薬量が、規則的な間隔で投与される請求項1又は2に記載のインスリン誘導体。
【請求項4】
投薬量が、固定された週日に投与される請求項1から3の何れか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項5】
投薬量が、固定された3週日に投与される請求項4に記載のインスリン誘導体。
【請求項6】
投薬量が、固定された2週日に投与される請求項4に記載のインスリン誘導体。
【請求項7】
持続型作用プロファイルを示すインスリン誘導体の投与に、速効型の天然に生じるインスリン又はインスリンアナログの投与及び/又は非インスリン抗糖尿病薬の投与が補充される請求項1から6の何れか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項8】
他の天然に生じるインスリン、インスリンアナログあるいは天然に生じるインスリン又はインスリンアナログの誘導体が実質的に何も上記患者に投与されない請求項1から6の何れか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項9】
上記誘導体が、親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基に結合した側鎖を有し、該側鎖が、一般式:
−W−X−Y−Z
[上式中、Wは、
・残基がそのカルボン酸基のうちの一つと共に、親のインスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基と一緒になってアミド基を形成する側鎖中のカルボン酸基を有するα−アミノ酸残基;
・アミド結合を介して一緒に連結されている2、3又は4のα−アミノ酸残基からなる鎖であって、アミド結合を介した該鎖は親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基に連結しており、Wのアミノ酸残基は、Wが側鎖中にカルボン酸基を有するアミノ酸残基を少なくとも一つ有するように、中性側鎖を有するアミノ酸残基及び側鎖中にカルボン酸基を有するアミノ酸残基の群から選択されるものであり;あるいは、
・Xから親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基までの共有結合
であり;
Xは、
・−CO−;
・−COCH(COOH)O−;
・−CON(CHCOOH)CHO−;
・−CON(CHCOOH)CHCON(CHCOOH)CHO−;
・−CON(CHCHCOOH)CHCHO−;
・−CON(CHCHCOOH)CHCHCON(CHCHCOOH)CHCHO−;
・−CONHCH(COOH)(CHNHO−;
・−CON(CHCHCOOH)CHO−;もしくは
・−CON(CHCOOH)CHCHO−であり、
a)Wがアミノ酸残基もしくはアミノ酸残基の鎖であるとき、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、W中のアミノ基とアミド結合を形成するか、あるいは、
b)Wが共有結合であるとき、下線のカルボニル炭素からの結合を介して、親インスリンのB鎖のN末端アミノ酸残基のα−アミノ基又はB鎖中に存在するLys残基のε−アミノ基とアミド結合を形成し;
Yは、
・mが6から32の範囲の整数である−(CH−;
・1、2もしくは3の−CH=CH−基と、鎖中に10から32の範囲の合計数の炭素原子を与えるのに十分な数の−CH−基とを含んでなる二価の炭化水素鎖;
・式−(CH(CH−(該式中、vとwは、vとwの合計が6から30の範囲になるような整数であるか又はそれらの一つはゼロである)の二価の炭化水素鎖
であり;及び
Zは、
・−COOH;
・−CO−Asp;
・−CO−Glu;
・−CO−Gly;
・−CO−Sar;
・−CH(COOH)
・−N(CHCOOH)
・−SOH;もしくは
・−PO
である]
のものであるものとそのZn2+錯体であり、但し、Wが共有結合でXが−CO−であるとき、Zは−COOHとは異なる、請求項1から8の何れか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項10】
インスリン誘導体が、NεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH15CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH17CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH18CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−Glu−N−(γ−Glu))des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Asp−OC(CH16CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Glu−OC(CH14CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Glu−OC(CH14CO−)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Asp−OC(CH16CO−)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−α−Glu−N−(β−Asp))des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Gly−OC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(Sar−OC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−γ−Glu)des(B30)ヒトインスリン;(NεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−β−Asp)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH13CO)−α−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH16CO)−γ−D−Glu)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(N−HOOC(CH16CO−β−D−Asp)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−(N−HOOC(CH14CO−IDA)des(B30)ヒトインスリン;NεB29−[N−(HOOC(CH16CO)−N−(カルボキシエチル)−Gly]des(B30)ヒトインスリン;NεB29−[N−(HOOC(CH14CO)−N−(カルボキシエチル)−Gly]des(B30)ヒトインスリン;及びNεB29−[N−(HOOC(CH14CO)−N−(カルボキシメチル)−β−Ala]des(B30)ヒトインスリンからなる群から選択される請求項1又は9に記載のインスリン誘導体。
【請求項11】
インスリン誘導体がNεB29−(Nα−(HOOC(CH14CO)−γ−L−Glu)des(B30)ヒトインスリンである請求項1又は9に記載のインスリン誘導体。
【請求項12】
疾患又は症状が、真性糖尿病又は高血糖症によって特徴付けられる他の症状、糖尿病前症、耐糖能障害、メタボリックシンドローム、肥満症、カヘキシー、インビボβ細胞減少/死滅、過剰食欲、及び炎症からなる群から選択される請求項1から11の何れか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項13】
真性糖尿病が1又は2型糖尿病である請求項12に記載のインスリン誘導体。
【請求項14】
インスリン誘導体が、薬学的に許容可能な担体及び/又はビヒクル及び/又は希釈剤及び/又は賦形剤と共に製剤化される請求項1から13の何れか一項に記載のインスリン誘導体。
【請求項15】
真性糖尿病又は高血糖症によって特徴付けられる他の症状、糖尿病前症、耐糖能障害、メタボリックシンドローム、肥満症、カヘキシー、インビボβ細胞減少/死滅、過剰食欲、及び炎症の治療のための薬学的組成物の調製におけるインスリン誘導体の使用であって、インスリン誘導体が請求項1から14の何れか一項に記載のものである使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−57671(P2011−57671A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−189156(P2010−189156)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【分割の表示】特願2010−547201(P2010−547201)の分割
【原出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(596113096)ノボ・ノルデイスク・エー/エス (241)
【Fターム(参考)】