説明

毒素産生クロストリジウムディフィシル菌の検出及び特性解析方法

本発明は、サンプル中の毒素産生クロストリジウムディフィシル菌を検出し、特性解析する方法であって、a.前記サンプルが準備されるステップと、b.多重PCRアッセイにおいて、i.前記サンプルが、細胞毒素tcdB遺伝子の有無について解析され、ii.前記サンプルが、tcdC遺伝子の、(a)SEQ ID No. 1のヌクレオチド330からヌクレオチド347までの18bp欠失、(b)SEQ ID No. 1のヌクレオチド301からヌクレオチド336までの36bp欠失、(c)SEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失、(d)SEQ ID No. 1のヌクレオチド313からヌクレオチド366までの54bp欠失、及び(e)SEQ ID No. 1の位置117における単一ヌクレオチド欠失、の1又は複数の有無について解析される、ステップと、を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学及び化学の分野にある。特に、本発明は、分子生物学の分野にある。より具体的には、本発明は、核酸及びリアルタイムPCRの検出の分野にある。最も具体的には、本発明は、毒素産生クロストリジウムディフィシル菌の検出及び特性解析に関する。
【背景技術】
【0002】
クロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)は、クロストリジウム属のグラム陽性菌の種である。クロストリジウムは、嫌気性芽胞形成性桿菌(バチルス)である。クロストリジウムディフィシル(C. difficile)は、抗生物質起因性の下痢(antibiotic-associated diarrhea, AAD)の最も深刻な原因であり、大腸の重度の感染症である偽膜性腸炎を生じさせることがありえ、これは、多くの場合、抗生物質による正常な腸管内菌叢の根絶から生じる。体内に自然に存在するクロストリジウムディフィシル細菌が、過度に成長するようになる:細菌が、重症になりうる腹痛を伴う鼓脹、便秘及び下痢を引き起こしうる毒素を放出するので、過度の成長は有害である。潜在的な症状は、多くの場合、インフルエンザ様症状に似ている。原因となる抗生物質治療の中断は、しばしば治療効果がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
クロストリジウムディフィシル感染症は、特に高齢者の間では、無症状のものから重度に致命的なものまで、重傷度が異なりうる。社会の外来診療の場においてクロストリジウムディフィシル感染症が増大しているが、人々は、最も多くの場合、病院、老人ホーム又は施設において感染している。クロストリジウムディフィシル感染の割合は、2週間までの病院滞在を有する患者の13%であり、4週間より長い病院滞在を有する患者の50%と評価される。クロストリジウムディフィシル大腸炎の頻度及び重傷度は、高いままであり、増大される死亡率と関連するように見える。早期の介入及び積極的な管理が、回復へのキーファクタである。
【0004】
北米で地理的に分散した発生を引き起こしていると言われるCipro(シプロフロキサシン)及びLevaquin(レボフロキサシン)のようなフルオロキノロン抗生物質に対して耐性がある、クロストリジウムディフィシルの新しい高毒性菌の出現が、2005年に報告された(Dial S, Delaney J, Barkun A, Suissa S (2005). "Use of gastric acid-suppressive agents and the risk of community-acquired Clostridium difficile-associated disease". JAMA 294 (23): 2989-95. doi:10.1001/jama.294.23.2989)。
【0005】
2003年6月4日、この細菌の高毒性菌の2つの発生が、カナダのケベック州モントリオール及びアルバータ州カルガリーにおいて報告された。情報源は、死亡数を36と低く及び89と高く示し、また、2003年及び2004年の最初の数ヶ月のうちに1,400件の感染があった。クロストリジウムディフィシル感染症は、2004年後半、ケベックのヘルスケアシステムにおいて問題であり続けた。2005年3月、それは、オンタリオ州トロントに広がり、10人が入院した。
【0006】
同様の発生が、2003年から2005年にかけてイギリスのStoke Mandeville病院で生じた。
【0007】
カナダ及びイギリスの両方の発生は、細菌の毒性がおそらくより強いNAP1/BI/027株に関連するものであった。ケベック株としても知られるこの菌株は、2つのオランダの病院(Harderwijk及びAmersfoort、共に2005年)での流行に関係した。027の増大された毒性を説明する理論は、それが、両方の毒素A及びBの高生産菌であり、特定の抗生物質が、細菌を高生産することを実際に刺激しうることである。
【0008】
芽胞を有する患者プールを解析するとき、無症状である多くの人は、菌を、免疫不全状態であるゆえに増大するレートの下痢及び不健康な結果を受けやすい個人にうつす。上述のクラスタが、臨床的な監視による情報技術の集中により、疾患がどのように拡大するかを理解しようとする伝染病学者に対して課題を示していることは注目すべきことのようである。
【0009】
2006年10月1日、ナショナルヘルスサービスの調査によれば、クロストリジウムディフィシルは、8ヵ月にわたってイギリスのレスターの病院で少なくとも49人を死亡させたといわれている。
【0010】
2006年10月27日、カナダのケベックにおいて9人の死亡が細菌に起因するものであった。
【0011】
2007年2月27日、新しい発生が、オンタリオ州ミシソーガのTrillium Health Centreで確認され、14人が細菌をもつと診断された。細菌は、ケベックのものと同じ菌だった。当局は、クロストリジウムディフィシルが過去2ヵ月における4人の患者の死亡の原因となったかどうかを判断することができなかった。
【0012】
2007年10月、Maidstone and Tunbridge Wells NHS Trustは、2004年4月から2006年9月まで、ケント州のその病院におけるクロストリジウムディフィシルの大発生の対応に関して、保健医療委員会(Healthcare Commission)によって厳しく批判された。その報告において、委員会は、約90人の患者が「明らかに又はおそらく」感染症の結果として死亡したと評価した(保健医療委員会リリース:ヘルスケア監視者は、2007年10月11日に、Maidstone and Tunbridge Wells NHS Trustにおける感染症制御の重大な失敗を見つけた。Daily Telegraphの「Health Secretary intervenes in superbug row」(2007年10月11日)参考)。
【0013】
従って、サンプル中の毒素産生クロストリジウムディフィシル菌の検出及び特性解析の方法のニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者は、サンプル中の毒素産生クロストリジウムディフィシル菌の検出及び特性解析の先駆的な方法を見つけた。利点は、複数の診断提案が1つの単一の方法で対処されることができることである。この方法は、強毒性クロストリジウムディフィシル菌を含むサンプルの同定を可能にする。更に、方法は、非NAP1/BI/027株としてのサンプルのスコアリングを可能にする。更に、サンプルは、NAP1/BI/027株としてスコアリングされることもできる。サンプルは更に、リボタイプ078株としてスコアリングされることができ、又は017株としてスコアリングされることができる。それゆえ、単一アッセイで、上述の同定の全てが、行われることができる。
【0015】
本発明は、サンプル中の毒素産生クロストリジウムディフィシル菌を検出し、特性解析する方法であって、(a)サンプルが準備されるステップと、(b)多重PCRアッセイにおいて、(c)サンプルが、細胞毒素tcdB遺伝子の有無について解析され、(d)サンプルが、tcdC遺伝子中の、(a)SEQ ID No. 1のヌクレオチド330からヌクレオチド347までの18bp欠失、(b)SEQ ID No. 1のヌクレオチド301からヌクレオチド336までの36bp欠失、(c)SEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失、(d)SEQ ID No. 1のヌクレオチド313からヌクレオチド366までの54bp欠失、(e)SEQ ID No. 1の位置117における単一ヌクレオチド欠失、の1又は複数の有無について解析される、ステップと、を含む、方法に関する。
【0016】
本発明は更に、本発明の方法を実施するためのキットであって、(i)細胞毒素tcdB遺伝子、(ii)tcdA遺伝子中の1.8kb欠失、(iii)tcdC遺伝子のSEQ ID No. 1のヌクレオチド330からヌクレオチド347までの18bp欠失、(iv)tcdC遺伝子のSEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失、(v)SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失、を増幅し及び/又は検出するためにプライマ及び/又はプローブと、(vi)バイナリトキシンcdtA/B遺伝子の検出のためのプライマ及び/又はプローブと、を含むキットに関する。
【0017】
「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」は、DNAの相補鎖の同時のプライマ拡張による、特定のDNA配列の生体外増幅の反応を意味する。言い換えると、PCRは、プライマ結合部位によってフランクされるターゲット核酸の複数のコピー又は複製を作る反応であり、かかる反応は、(i)ターゲット核酸を変性させるステップと、(ii)プライマ結合部位に対しプライマをアニールするステップと、(iii)ヌクレオシド三リン酸の存在下で、核酸ポリメラーゼによってプライマを拡張するステップと、の1又は複数の反復を含む。通常、反応は、熱循環器具において各ステップごとに最適化された異なる温度を通じて循環される。特定の温度、各ステップの持続時間及びステップ間の変化のレートは、当業者に良く知られた多くのファクタに依存するものであり、これは、例えばMcPherson他著の文献「PCR: A Practical Approach and PCR2: A Practical Approach」 (IRL Press, Oxford, 1991及び1995)によって例証される。例えば、従来のTaq DNAポリメラーゼを使用するPCRにおいて、二本鎖ターゲット核酸は、90℃より高い温度で変性され、プライマは、50−75℃のレンジの温度でアニールされ、プライマは、72−78℃のレンジの温度で拡張される。
【0018】
「PCR」という語は、これに限定されるものではないが、リアルタイムPCR、入れ子式PCR、定量PCR、多重化PCR、その他を含む反応の派生形式を含む。
【0019】
反応ボリュームは、数百ナノリットル(例えば200nl)から数百マイクロリットルに及ぶ。ここで、好適なボリュームは、10−50マイクロリットルであり、より好適には、1反応チャンバあたり約25マイクロリットルである。
【0020】
「リアルタイムPCR」は、反応が進行するに従って、反応生成物、すなわちアンプリコン、の量が監視されるPCRを意味する。反応生成物を監視するために使用される検出ケミストリが主に異なるリアルタイムPCRの多くの形式があり、それらは、例えばGelfand他による米国特許第5,210,015号(「taqman」);Wittwer他による米国特許第6,174,670号及び第6,569,627号(染料のインターカレート);Tyagi他による米国特許第5,925,517号(分子ビーコン)に記載されている。リアルタイムPCRのための検出ケミストリは、Mackay他による文献「Nucleic Acids Research, 30: 1292-1305 (2002)」において検討されている。リアルタイムPCRにおいて、2温度ステージの反応が、使用されることもでき、その場合、ポリメリゼーション温度は、Scorpionプライマ又はPleiadesプローブのような典型的なハイブリダイゼーションプローブの場合も、アニール温度に等しい。
【0021】
「多重化PCR」は、複数のターゲットシーケンス(又は、単一のターゲットシーケンス及び1又は複数の参照シーケンス)が同じ反応混合物において同時に実施されるPCRを意味し、例えばBernard他による「Anal. Biochem」(273: 221-228 (1999))(2色リアルタイムPCR)を参照されたい。通常、別個の異なるプライマセットが、増幅される各々のシーケンスについて用いられる。一般に、多重PCRのターゲットシーケンスの数は、2乃至10、又は2乃至8、又はより一般には3乃至6のレンジにある。本発明に関して、好適な数は2乃至6である。
【0022】
「定量PCR」は、サンプル又は標本中の1又は複数の特定のターゲットシーケンスの存在量を測定するように設計されたPCRを意味する。定量PCRは、このようなターゲットシーケンスの絶対的定量化及び相対的定量化の両方を含む。定量測定は、別個にアッセイされることができる又はターゲットシーケンスと共にアッセイされることができる1又は複数の参照シーケンスを使用して行われる。参照シーケンスは、サンプル又は標本に対し内生的又は外生的でありえ、後者の場合、1又は複数の競合テンプレートを含みうる。一般的な内生参照シーケンスは、pactin、GAPDH、ミクログロブリン、リボソームRNA等の遺伝子のトランスクリプトのセグメントを含む:定量PCRの技法は、以下の文献に例証されるように、当業者に良く知られている:Freeman他、Biotechniques, 26: 112-126 15 (1999);Becker-Andre他, Nucleic Acids Research, 17: 9437-9447 (1989);Zimmerman他, Biotechniques, 21: 268-279 (1996);Diviacco他, Gene, 122: 3013-3020 (1992);BeckerAndre他, Nucleic Acids Research, 17: 9437-9446 (1989);その他。
【0023】
「プライマ」は、ポリヌクレオチドテンプレートによりデュプレックスを形成するとき、核酸合成の開始ポイントとして作用することができ、拡張されたデュプレックスが形成されるようにテンプレートに沿ってその3'末端から拡張可能である野生型又は合成のオリゴヌクレオチドを意味する。プライマの拡張は、通常、例えばDNA又はRNAポリメラーゼのような核酸ポリメラーゼによって実施される。拡張プロセスにおいて加えられるヌクレオチドのシーケンスは、テンプレートポリヌクレオチドのシーケンスによって決定される。通常、プライマは、DNAポリメラーゼによって拡張される。プライマは、通常、14乃至40ヌクレオチドのレンジ又は18乃至36ヌクレオチドのレンジの長さを有し、プライマは、例えば、単一プライマを使用するリニア増幅反応又は2若しくはそれ以上のプライマを用いるポリメラーゼ連鎖反応のようなさまざまな核増幅反応において用いられる。特定用途のプライマの長さ及びシーケンスを選択する指針は、Dieffenbach著の文献「PCR Primer: A Laboratory Manual, 2nd Edition」(Cold Spring Harbor Press, New York, 2003)によって明らかにされているように、当業者に良く知られている。
【0024】
「サンプル」は、ターゲット核酸の検出又は測定が追求される生物学的、環境的、医学的又は患者ソースからの或る量の物質を意味する。一方では、サンプルは、標本又は培養(例えば微生物培養)を含むことが意図される。他方では、サンプルは、生物学的サンプル及び環境サンプルの両方を含むことが意図される。サンプルは、合成起源の標本を含むことができる。生物学的サンプルは、人間を含む動物、流体、固体(例えば便)又は組織、並びに乳製品、野菜、肉及び肉の副産物のような液体及び固体の食品及び餌製品及び成分、並びに廃棄物でありうる。生物学的サンプルは、これに限らないが、培養物、血液、唾液、脳脊髄液、胸水、精液、ニードル吸引物、その他を含む患者から取得された材料を含みうる。生物学的サンプルは、さまざまな系統の家畜、及びこれに限らないが有蹄類、熊、魚、げっ歯類等を含む野性に返った又は野生の動物の全てから取得されることができる。環境サンプルは、例えば地表物質、土壌、水及び産業サンプルのような環境物質、並びに食品及び乳加工器具、装置、機器、調理具、使い捨て及び非使い捨てのアイテムから取得されるサンプルを含む。これらの例は、本発明に適用可能なサンプルタイプを制限するものとして解釈されるべきでない。「サンプル」及び「標本」という語は、交換可能に使用される。
【0025】
好適な増幅産物が以下の表に示される:












【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による好適なターゲットを示す図。
【図2】本発明による実可能なカートリッジ装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、サンプル中の毒素産生クロストリジウムディフィシル菌を検出し、特性解析する方法であって、(a)サンプルが準備されるステップと、(b)多重PCRアッセイにおいて、(c)サンプルが、細胞毒素tcdB遺伝子の有無について解析され、(d)サンプルが、tcdC遺伝子の、(a)SEQ ID No. 1のヌクレオチド330からヌクレオチド347までの18bp欠失、(b)SEQ ID No. 1のヌクレオチド301からヌクレオチド336までの36bp欠失、(c)SEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失、(d)SEQ ID No. 1のヌクレオチド313からヌクレオチド366までの54bp欠失、(e)SEQ ID No. 1の位置117における単一ヌクレオチド欠失、の1又は複数の有無について解析される、ステップと、を含む方法に関する。
【0028】
任意には、サンプルは、付加的に、エンテロトキシンtcdA遺伝子の1.8kb欠失の有無について解析される。
【0029】
好適には、サンプルは、付加的に、バイナリトキシンcdtA及び/又はcdtBの有無について解析される。
【0030】
本発明による方法の一実施形態において、(i)サンプルが、(a)SEQ ID No. 1のヌクレオチド330からヌクレオチド347までの18bp欠失、(b)SEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失、及び(c)SEQ ID No. 1の位置117の単一のヌクレオチド欠失、のすべてについて解析され、(ii)サンプルが、細胞毒素tcdB遺伝子の有無について解析され、(iii)サンプルが、1.8kb tcdA欠失の有無について解析され、(iv)サンプルが、cdtA/Bバイナリトキシン遺伝子の有無について解析される。
【0031】
好適には、本発明による方法において、(a)tcdB遺伝子配列が存在し、tcdA欠失が無く、SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失が無く、18bp欠失が無く、39bp欠失が無い場合、サンプルは、毒素産生クロストリジウムディフィシルとしてスコアリングされ、(b)tcdB遺伝子配列が存在し、tcdA欠失が無く、SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失が存在し、18b欠失が存在し、cdtA/Bバイナリトキシン遺伝子が存在する場合、サンプルは、リボタイプ027クロストリジウムディフィシル菌としてスコアリングされ、(c)tcdB遺伝子配列が存在し、tcdA欠失が存在し、SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失が無く、18bp欠失が無く、SEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失が無く、cdtA/Bバイナリトキシン遺伝子が無い場合、サンプルは、リボタイプ017クロストリジウムディフィシル菌としてスコアリングされ、(d)tcdB遺伝子配列が存在し、tcdA欠失が無く、SEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失が存在し、cdtA/Bバイナリトキシン遺伝子が存在する場合、サンプルは、リボタイプ078クロストリジウムディフィシル菌としてスコアリングされる。
【0032】
任意には及び付加的に、以下の他のターゲットが解析されることができる。これらは、これに限定されないがtcdCΔ36bp、tcdCΔ54bpのような強毒性と関連するターゲットである。36−bp、39−bp又は54−bp欠失を保持する菌株はすべて、tcdC遺伝子の上流において付加の特定の変異を有し、これは、好適にはアッセイの一部であるトランケート型の非機能的TcdCタンパク質をもたらす。
【0033】
tcdB遺伝子の3'部分の特定の変異が、好適にはアッセイにある非NAP1/BI/027株に対して報告される。
【0034】
好適には、多重PCRアッセイの増幅産物は、60乃至200bpの大きさである。
【0035】
一実施形態において、多重増幅反応は、反応混合物中の蛍光指標の存在下で密閉システムにおいて行われ、蛍光指標は、増幅反応における各アンプリコンの存在及び/又は量に関連する光学的信号を生成し、増幅反応の蛍光指標の光学的信号を監視することができる。
【0036】
本発明による方法において、密閉システムは、ユーザに、上述されたスコアリングの付与を示す光学的出力を与える。
【0037】
好適には、多重PCR増幅は、定量リアルタイムPCRである。リアルタイムPCR(ここでは定量PCR又は定量リアルタイムPCR(qPCR)とも呼ばれる)は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して核酸を増幅し、定量化する方法である。定量リアルタイム逆転写PCR(RT−qPCR)は、RNAからDNAへの、例えばmRNAからcDNAへの、逆転写を更に含む定量リアルタイムPCR方法である。qPCR方法において、増幅された核酸は、それが蓄積するにつれて、定量化される。一般に、二本鎖DNA(エチジウムブロミド又はSYBRグリーンI)とインターカレートする蛍光染料又は相補核酸(例えば蓄積するDNA)とハイブリダイズされると蛍光を発する修飾核酸プローブ(「リポータプローブ」)が、qPCRに基づく方法において定量化のために使用される。特に、蛍光発生プライマ、ハイブリダイゼーションプローブ(例えばLightCyclerプローブ(Roche))、加水分解プローブ(例えばTaqManプローブ(Roche))、又は例えば分子ビーコンのようなヘアピンプローブ、Scorpionプライマ(DxS)、Sunriseプライマ(Oncor)、LUXプライマ(Invitrogen)、Amplifluorプライマ(Intergen)等が、リポータプローブとして使用されることができる。本発明によれば、蛍光性プライマ又はプローブは、例えば蛍光染料がアタッチされた、例えば共有結合によりアタッチされた、プライマ又はプローブでありうる。このような蛍光染料は、例えば、FAM(5−又は6−カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、FITC、IRD-700/800、CY3、CY5、CY3.5、CY5.5、HEX、TET、TAMRA、JOE、ROX、BODIPY TMR、オレゴングリーン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テキサスレッド、ヤキマイエロー、Alexa Fluor、PET Biosearch Blue、Marina Blue、Bothell Blue、CAL Fluor Gold、CAL Fluor Red 610、Quasar 670、LightCycler Red640、Quasar 705、LightCycler Red705等でありうる。特定のリポータプローブは、蛍光消光剤を付加的に含むことができる。
【0038】
本発明の実施形態のために、選択的なプライマが、定量リアルタイム多重PCRにおいて使用されることができる。
【0039】
「プライマ」は、ここで、転写される核酸(「テンプレート」)と相補的であるシーケンスを含むオリゴヌクレオチドに関連する。複製の間、ポリメラーゼは、ヌクレオチドを、テンプレートの個々のヌクレオチドと相補的なプライマの3'末端にアタッチする。
【0040】
本発明の特定の実施形態において、定量リアルタイムPCRのために使用されるポリメラーゼは、好熱菌生体又は耐熱性ポリメラーゼからのポリメラーゼであり、又はサーマス・サーモフィルス(Tth)DNAポリメラーゼ、サーマス・アクアチクス(Taq)DNAポリメラーゼ、サーモトガ・マリティマ(Tma)DNAポリメラーゼ、サーモコックス・リトラリス(Tli)DNAポリメラーゼ、ピロコックス・フリオスス(pfu)DNAポリメラーゼ、ピロコックス・ヴェッセイ(Pwo)DNAポリメラーゼ、ピロコックス・カダカラエンシスKOD DNAポリメラーゼ、サーマス・フィリホルミス(Tfi)DNAポリメラーゼ、スルホロブス・ソルファタリカスDpo4 DNAポリメラーゼ、サーマス・パシフィカス(Tpac)DNAポリメラーゼ、サーマス・エガートソニイ(Teg)DNAポリメラーゼ、サーマス・ブロッキアナス(Tbr)及びサーマス・フラバス(Tfl)DNAポリメラーゼ、を含むグループから選択される。
【0041】
特に、蛍光標識プローブは、FAM、VIC、NED、フルオレセイン、FITC、IRD-700/800、CY3、CY5、CY3.5、CY5.5、HEX、TET、TAMRA、JOE、ROX、BODIPY TMR、オレゴングリーン、ローダミングリーンン、ローダミンレッド、テキサスレッド、ヤキマイエロー、Alexa Fluor及びPETを含むグループから選択される染料によって標識化される。
【0042】
特に、ハイブリダイゼーションプローブは、LightCyclerプローブ(Roche)であり、加水分解プローブは、TaqManプローブ(Roche)である。他の実施形態において、ヘアピンプローブは、分子ビーコン、Scorpionプライマ、Sunriseプライマ、LUXプライマ及びAmplifluorプライマを含むグループから選択される。TaqManプローブが好ましい。
【0043】
本発明は、(i)細胞毒素tcdB遺伝子、(ii)tcdA遺伝子中の1.8kb欠失、(iii)tcdC遺伝子のSEQ ID No. 1のヌクレオチド330からヌクレオチド347までの18bp欠失、(iv)tcdC遺伝子のSEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失、(v)SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失、を増幅し及び/又は検出するためのプライマ及び/又はプローブと、(vi)バイナリトキシンcdtA/B遺伝子の検出のためのプライマ及び/又はプローブと、を含む1又は複数のチャネル又はチャンバを有する密閉システム増幅カートリッジに関する。
【0044】
本発明は、(i)細胞毒素tcdB遺伝子、(ii)tcdA遺伝子中の1.8kb欠失、(iii)tcdC遺伝子のSEQ ID No. 1のヌクレオチド330からヌクレオチド347までの18bp欠失、(iv)tcdC遺伝子のSEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失、(v)SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失、を増幅し及び/又は検出するためのプライマ及び/又はプローブと、(vi)バイナリトキシンcdtA/B遺伝子の検出のためのプライマ及び/又はプローブと、を含む本発明の方法を実施するキットにも関する。
【0045】
本発明の好適な実施形態において、キットは、ポリメラーゼのような酵素、バッファ及び他の成分を付加的に含む。
【0046】
一実施形態において、方法は、試料調製及びリアルタイム多重PCRを実施するために設計されるカートリッジにおいて行われることができる。これらは、密閉多段階核酸増幅反応のシステム、方法及装置であり、前の段階の反応混合物の一部が、次の段階のサンプルとして機能する。本発明は、(i)反応混合物中の蛍光指標の存在下で前記多重反応を増幅するステップであって、蛍光指標は、増幅反応におけるアンプリコンの量に関する光学的信号を生成することが可能である、ステップと、(ii)増幅反応における蛍光指標の光学的信号を監視するステップと、を含む増幅を制御するための上述の方法を提供する。
【0047】
本発明は更に、(i)細胞毒素tcdB遺伝子、(ii)tcdC遺伝子、(iii)SEQ ID No. 1のヌクレオチド330からヌクレオチド347までの18bp欠失、(iv)SEQ ID No. 1のヌクレオチド301からヌクレオチド336までの36bp欠失、(v)SEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失、(vi)SEQ ID No. 1のヌクレオチド313からヌクレオチド366までの54bp欠失、(vii)SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失、を増幅し及び/又は検出するためのプライマ及び/又はプローブを含む1又は複数のチャネル又はチャンバを有する密閉システム増幅カートリッジに関する。このような密閉システムは、例えば国際公開第2006/047777号パンフレットに開示されている。カートリッジは、例えば細胞溶解(リシス)及び/又は核酸抽出のようなサンプル調製用の1又は複数のチャンバを付加的に有することができる。好適には、PCRチャンバは、例えばガラス、水晶又はプラスチックのような光学的に透明な表面を有し、これは、増幅産物のオンライン検出を可能にする。
【0048】
DNAが一旦カートリッジにおいて分離されると、それは、マスターミックスに再溶解(resolubilized)され、それは、カートリッジ内部に凍結乾燥された形で保存される。それから、マスターミックス溶剤中の溶出液のホモジナイズが行われる。空気がチャンバにエントラップされないようにするために、少なくとも3乃至5PCRチャンバ(又はアプリケーションが要求する場合にはサブセット)の充填が、カートリッジにおいて実施される。5より少ないチャンバが、増幅によって必要とされることがあり、ここでは、カートリッジ変形が、使用されることができる。必要な溶出量は、アッセイプロトコルを通じて適応されることができる。増幅の間、アンプリコンが環境中に逃げることができないように、及び空気がチャンバ中に入ることが許されないように、チャンバの密閉が行われる。チャンバの温度循環が行われる。循環は、個別の温度セットポイントに関して、すべてのチャンバの間で同期される。最大で6つの波長における蛍光検出が行われる。検出は、循環中の任意の時点でトリガされることができる。測定データからのCt値、初期濃度、及び最終テスト結果の計算、並びに可能性として付加の較正データの計算が、実施される。テスト結果は、本発明のターゲットのCt値に基づいて生成される。
【0049】
カートリッジは、装置においてPCRを実施する。ここで、標本コンテナ又は更にカートリッジが、コンソールに到着し、ユーザは、指示(オーダー)に関連する識別子(例えばバーコード、紙の指示フォーム上の識別子、その他)を入力する。コンソールは、ローカルコンソールデータベースから関連する指示を取り出す。次に、ユーザは、カートリッジのRFIDタグをスキャンする。カートリッジは、その有効性についてチェックされる(例えば、カートリッジタイプがテストタイプに対応しているか、有効期限等)。カートリッジが有効な場合、それは、コンソールデータベースの指示と関連付けられる。コンソールメインサービスは、器具の利用可能なスロットを要求する。器具制御サブシステムは、ロード均衡を適用した後、利用可能なスロットを返す。カートリッジを挿入するようにユーザに知らせた後、ユーザは、カートリッジを示唆されたスロットに挿入する。器具制御サブシステムは、カートリッジが挿入されたと知らされ、コンソールメインサービスは、カートリッジが指示と関連付けられるかチェックする。カートリッジが指示と関連付けられる場合、レシピデータベースが、指示におけるテストタイプと一致するレシピを取り出すためにアクセスされる。レシピを取り出した後、器具制御サブシステムは、レシピをアップロードし、カートリッジが挿入されたスロットについてテストを始めるように命令される。テストの終了後、テスト結果が、器具制御サブシステムによって受け取られ、以下のステップが実施される:
【0050】
テスト結果が、テスト結果エンジンに渡される。テスト結果エンジンは、コンソールデータベースの結果を記憶する。次に、結果が、外部ISデータ交換サブシステムを通じて外部ISに送られる。ユーザは、テストが終了したことを知らされる。ユーザは、スコアに関する光学的及び/又は音響的出力を得る。
【0051】
図2に示されるように、カートリッジは、6つのモジュールに分割される。モジュールは、以下の段落に詳しく説明される。カートリッジ内のモジュールは、その機能について規定される。カートリッジのすべての機能は、可能な限り多く統合され、最小数の部品によって実現される。全体のプロセスフローは、以下の通りである:オペレータが、手作業により、溶解チャンバをサンプルで満たし、投入蓋を閉じる。カートリッジは、スロットのトレイ上に配置され、トレイが、スロットにロードされる。スロットにロードされると、プロセスが、サンプルを液化し、溶解させることから始まる。これはすべて、例えば溶解チャンバへのHiFUエネルギーによって、行われる。それぞれ異なる試薬が、サンプルに順に添加され、それにより、最終結果が、抽出メンブレンにフラッシされることができる。すべてのこのステップは、便(排泄物)のような高粘性サンプルをも扱うことが可能でるように、1つのチャンバにおいて行われる。更に、ただ1つのインタフェース及びHiFUソースのみが、すべてのプロセスのために必要とされる。チャンバへの試薬の運搬は、流体運搬モジュールによって行われる。このモジュール内で、試薬は、貯蔵寿命の間保存され、リザーバから取り出され、溶解チャンバへ運ばれる。モジュールは、処理されたサンプルを、溶解チャンバから抽出メンブレンを通じて廃棄部まで運搬する。同じようにして、水洗溶解モジュール、流体運搬モジュール、抽出モジュール、廃棄処理モジュール、PCRモジュール、手動サンプル入力、被覆試薬が、扱われ、リザーバから取得され、メンブレンから廃棄部まで運搬される。流体アクチュエーション及び取り扱いを集中化することによって、このサポート機能のためのインタフェースの数及びカートリッジ内のコンポーネントの数が、最小化される。上述の抽出メンブレンは、抽出モジュール内に組み込まれる。このモジュールは、メンブレンを通る良好なフロー及びメンブレンへの良好な熱伝達を確実にする。この熱は、エチルアルコール除去及びDNA溶出のために必要とされる。廃棄処理モジュールは、溶出液を除いて、すべての流体を廃棄部に導くために使用され、これは、流体処理モジュールにおいて用いられるのと同じタイプのバルブによって行われる。これは、同じ機能に関してカートリッジ内で使用されるそれぞれ異なる技法を最小化するため行われる。このモジュールの第2の機能は、抽出メンブレンを通じて溶出液バッファを吸引することである。アクチュエーションは、溶出液の汚染のリスクを最小限にするために、このモジュールによって行われる。流体運搬モジュールが、この機能のためにも使用される場合、このリスクは高くなる。溶出液がPCRチャンバに運搬される前に、まず、マスターミックスが添加されなければならず、DNA含量が、全体のボリュームにわたってホモジナイズされなければならない。これは、このモジュール内で行われる。最後に、流体は、PCRチャンバに運搬される。アクチュエーションは、抽出メンブレンを通じた溶出液運搬のために以前に使用されたのと同じアクチュエータを用いて行われる。圧力駆動される流体運搬が、この運搬機能のためにも選択される。次に、圧力駆動される流体運搬のための機能は、すでにカートリッジ内にある。PCRモジュール内に配置されるPCRチャンバは、空気なしで充填されなければならない。これを確実にするために、脱気メンブレンが、PCRチャンバに行く混合気泡を除去するために、供給チャネル内に配置される。PCRチャンバは、チャンバのジオメトリがボリュームを制限するように作られる。これは、チャンバが1つの供給チャネルから満たされる場合でさえ、チャンバが同じボリュームで満たされることを確実にする。チャンバは、チャンバごとの特定のプライマ及び/又はプローブの任意のクロストークを防ぐために、流体構造内に並列に配置される。更に、充填後脱気フィルタがある。
【0052】
ターゲットのポリヌクレオチド(クロストリジウムディフィシル)を含むサンプル又は標本は、例えば細胞培養物、動物又は人間の組織、患者生検、環境サンプル等を含む本発明に関して使用されるさまざまなソースからのものでありうる。サンプルは、従来の技法を使用して本発明のアッセイのために準備され、これは、一般に、サンプル又は標本が取得されるソースに依存する。サンプル又は標本は、外部要素によるサンプル又は標本の汚染、又はサンプル若しくは標本が危険な成分を含む場合はサンプル又は標本による環境の汚染、の機会を最小限にするように収集される。概して、これは、流体密閉システム内のサンプル収集チャンバに、組織、血液、唾液等の解析用サンプルを直接導入することによって実施される。一般に、サンプルの相互汚染の防止は、例えば注入バルブ又は隔壁のような任意に密閉可能な開口を通じて、サンプル収集チャンバにサンプルを直接注入することによって達成されることができる。一般に、密閉可能なバルブは、サンプル注入の間又は後に潜在的な漏出の脅威を低減するために好ましい。上述したものに加えて、装置/カートリッジのサンプル収集部分は更に、病原菌の中和、標本又はサンプルの安定化、pH調整等のための試薬及び/又は処理を含むことができる。安定化及びpH調整処理は、例えば血液サンプルの凝固を防ぐためのヘパリンの導入、緩衝剤の添加、プロテアーゼの添加、防腐剤等の添加を含みうる。このような試薬は、概して、装置/カートリッジのサンプル収集チャンバ内に保存され、又は別個にアクセス可能なチャンバ内に保存されることができる。試薬は、装置にサンプルを導入する際、サンプルに添加されることができ又はサンプルと混合されることができる。これらの試薬は、使用される特定の試薬の性質及び安定性に依存して、液体の又は凍結乾燥された形で、装置内に組み込まれることができる。
【0053】
ここで、好適なサンプルは、人間又は動物の排泄物である。
【0054】
サンプルについて増幅反応を実行する前に、サンプルに対して1又は複数の試料調製処理を実施することが望ましい。一般に、これらの試料調製処理は、全サンプルからの核酸のような細胞内物質の抽出のような操作を含む。これらのさまざまな処理のうち1又は複数は、本発明によって企図される流体密閉システムに容易に組み込まれることができる。
【0055】
細胞又は他の組織サンプルの全体が解析される実施形態の場合、一般に、さまざまな試料調製処理を続ける前に、細胞、排泄物、血液又は他の身体流体から核酸を抽出することが必要である。従って、サンプル収集に続いて、核酸が、収集した細胞から遊離されて、粗抽出物にされることができる。その後、例えば汚染(DNA結合)タンパク質の変性、精製、濾過、脱塩等の次の動作のためにサンプルを準備するために、付加の処理が続けられる。サンプル細胞からの核酸の遊離及びDNA結合タンパク質の変性は、一般に、化学的、物理的又は電解溶解方法によって実施されることができる。例えば、化学的方法は、一般に、細胞を分断し、核酸を細胞から抽出するために溶解剤を用い、その後、グアニジウムイソチオシアネートのようなカオトロピック塩又は例えば任意の汚染タンパク質及び潜在的な干渉タンパク質を変性させるための尿素による抽出の処理が続く。一般に、化学的抽出及び/又は変性方法が使用される場合、適当な試薬は、別個にアクセス可能なチャンバであるサンプル調製チャンバ内に組み込まれることができ、又は外部から導入されることができる。
【0056】
物理的な方法は、核酸を抽出し、DNA結合タンパクを変性させるために使用されることができる。米国特許第5,304,481号は、細胞メンブレンに穴を開けて、それらの中身を抽出するために、マイクロチャネル内の物理的突起、又はチャンバ若しくはチャネル内の鋭いエッジをもつ粒子の使用について述べている。撹拌のための圧電素子とこのような構造の組み合わせは、溶解のための適切な剪断力を提供することができる。このような素子は、核酸断片に関してより詳しく後述される。例えば細胞溶解を引き起こす制限された断面寸法をもつチャネルを用いる細胞抽出のより従来の方法が、使用されることもできる。代替として、細胞抽出及び汚染タンパク質の変性は、サンプルに交流電流を印加することによって、実施されることができる。より具体的には、細胞のサンプルが、微小管アレイを通じてフローされ、交流電流が、流体フローの両端に印加される。さまざまな他の方法が、細胞溶解/抽出を実施するために本発明の装置内で利用されることができ、例えば、細胞を超音波撹拌にさらし又は細胞を小さい開口に通過させ、それによって、細胞に高い剪断応力を与えて、破裂をもたらすことを含む。
【0057】
抽出に続いて、核酸を、例えば変性タンパク質、細胞メンブレン粒子、塩類等の粗抽出物の他のエレメントから分離することが望ましい。粒状物質の除去は、一般に、濾過、凝集等によって達成される。さまざまなフィルタタイプが、装置に容易に組み込まれることができる。更に、化学的変性方法が使用される場合、次のステップへ進む前にサンプルを脱塩することが望ましいことがある。サンプルの脱塩及び核酸の分離は、一般に、単一のステップで一般に実施されることができ、例えば核酸を固相に結合し、汚染塩類を洗い流すことによって、又はサンプルに対してゲル濾過クロマトグラフィを実施し、塩類を透析膜に通すことによって、又はその他のやり方で、行われる。核酸結合のための適切な固体担体は、例えば、珪藻土、シリカ(すなわちガラスウール)等を含む。当分野においても良く知られている適切なゲル排除媒体が、本発明の装置/カートリッジに容易に組み込まれることもでき、例えばPharmacia及びSigma Chemicalから商業的に入手可能である。
【0058】
分離及び/又はゲル濾過/脱塩は、付加のチャンバにおいて実施されることができ、又は代替として、特定のクロマトグラフィ媒体が、次の反応チャンバにつながるチャネル又は流体通路に組み込まれることができる。代替として、1又は複数の流体通路又はチャンバの内側表面は、例えば荷電基、親和結合基等の所望の精製に適した官能基を提供するために、それ自身誘導体化されることができる。代替として、脱塩方法は、一般に、他のエレメントと比較してDNAの高い電気泳動移動度及び負電荷を利用することができる。電気泳動法が、他の細胞汚染物質及び細片からの核酸の精製において、利用されることもできる。一例において、装置の分離チャネル又はチャンバは、例えば白金電極のような電極をその中に有する2つの別々の「電界」チャネル又はチャンバに流体接続される。2つの電界チャネルは、適当な障壁又は「捕捉メンブレン」を使用して分離チャネルから分離されており、これは、核酸又はその他の大きい分子の通過を可能にすることのなく、流体が通ることを可能にする。障壁は、一般に2つの基本的機能を果たす:第1に、障壁は、核酸を分離チャンバ内の正電極の方へ移動するように保つように働き;第2に、障壁は、電極における電気分解と関連する悪影響が反応チャンバに入り込む(例えば塩接合として作用する)ことを防ぐ。このような障壁は、透析膜、高密度ゲル、PEIフィルタ又は他の適切な材料を含みうる。適当な電界を印加すると、サンプル中に存在する核酸は、正電極の方へ移動し、捕捉メンブレンにトラップされる。メンブレンにかからないサンプル不純物は、適当な流体フローを適用することによって、チャンバから洗い流される。電圧を反転すると、核酸は、実質的により純粋な形で、メンブレンからリリースされる。電界チャネルは、分離チャンバ又はチャネルの同じ又は対向する側又は端部に配置されることができ、処理の最大効率を保証するために、ここに記述される混合エレメントと連携して使用されることができる。更に、粗いフィルタが、障壁にオーバレイされることにより、粒状物質、タンパク質又は核酸による障壁のファウリングを回避し、それによって反復される使用を可能にすることができる。同様の見地において、それらの負電荷による核酸の高い電気泳動移動度は、核酸が速く通過することを可能にしつつ、他の汚染物質のフローを減速させ又は妨害するゲルのショートカラム又はゲルの他の適当なマトリックスを利用することによって、核酸を汚染物質から分離するために利用されることができる。
【0059】
好適な実施形態において、プローブ及び/又はプライマは、以下のようにチャネル又はチャンバ中に分散される:プライマ及びプローブの特定の混合物が、各個別のPCRチャンバに乾燥物質として安定的に保存される。PCRチャンバを、予備混合されたテンプレート/PCRリアクションミックスで充填することにより、保存されたプライマ/プローブは、それらの指示される反応に最適な濃度をもつ均質な溶剤を形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の毒素産生クロストリジウムディフィシル菌を検出し、特性解析する方法であって、
a.前記サンプルが準備されるステップと、
b.多重PCRアッセイにおいて、
i.前記サンプルが、細胞毒素tcdB遺伝子の有無について解析され、
ii.前記サンプルが、tcdC遺伝子の、
a)SEQ ID No. 1のヌクレオチド330からヌクレオチド347までの18bp欠失、
b)SEQ ID No. 1のヌクレオチド301からヌクレオチド336までの36bp欠失、
c)SEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失、
d)SEQ ID No. 1のヌクレオチド313からヌクレオチド366までの54bp欠失、
e)SEQ ID No. 1の位置117における単一ヌクレオチド欠失、
の1又は複数の有無について解析される、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記サンプルが、エンテロトキシンtcdA遺伝子の1.8kb欠失の有無について付加的に解析される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルが、バイナリトキシンcdtA及び/又はcdtBの有無について付加的に解析される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルが、
a.SEQ ID No. 1のヌクレオチド330からヌクレオチド347までの18bp欠失の有無、
b. SEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失の有無、
c.SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失の有無、
d.細胞毒素tcdB遺伝子の有無、
e.1.8kb tcdA欠失の有無、及び
f.cdtA/Bバイナリトキシン遺伝子の有無、
について解析される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
a.前記tcdB遺伝子配列が存在し、tcdA欠失が無く、SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失が無く、18bp欠失が無く、39bp欠失が無い場合、前記サンプルは、毒素産生クロストリジウムディフィシルとしてスコアリングされ、
b.前記tcdB遺伝子配列が存在し、tcdA欠失が無く、SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失が存在し、18bp欠失が存在し、cdtA/Bバイナリトキシン遺伝子が存在する場合、前記サンプルは、リボタイプ027クロストリジウムディフィシル菌としてスコアリングされ、
c.前記tcdB遺伝子配列が存在し、tcdA欠失が存在し、SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失が無く、18bp欠失が無く、SEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失が無く、cdtA/Bバイナリトキシン遺伝子が無い場合、前記サンプルは、リボタイプ017クロストリジウムディフィシル菌としてスコアリングされ、
d.前記tcdB遺伝子配列が存在し、tcdA欠失が無く、SEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失が存在し、cdtA/Bバイナリトキシン遺伝子が存在する場合、前記サンプルは、リボタイプ078クロストリジウムディフィシル菌としてスコアリングされる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記多重増幅反応は、反応混合物中の蛍光指標の存在下で密閉システムにおいて行われ、前記蛍光指標は、前記増幅反応において各アンプリコンの存在及び/又は量に関連する光学的信号を生成し、前記増幅反応において前記蛍光指標の光学的信号を監視することが可能である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記密閉システムは、ユーザに、前記スコアリングの付与を示す光学的出力を与える、請求項5を引用する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記多重PCRアッセイの増幅産物が、60乃至200bpの大きさである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記多重PCR増幅が定量リアルタイムPCRである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルは、人間又は動物の排泄物である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
(i)細胞毒素tcdB遺伝子、
(ii)tcdA遺伝子の1.8kb欠失、
(iii)tcdC遺伝子のSEQ ID No. 1のヌクレオチド330からヌクレオチド347までの18bp欠失、
(iv)tcdC遺伝子のSEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失、
(v)SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失、を増幅し及び/又は検出するためのプライマ及び/又はプローブと、
(vi)バイナリトキシンcdtA/B遺伝子を検出するためのプライマ及び/又はプローブと、
を含む1又は複数のチャネル又はチャンバを有する密閉システム増幅カートリッジ。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキットであって、
(i)細胞毒素tcdB遺伝子、
(ii)tcdA遺伝子の1.8kbの欠失、
(iii)tcdC遺伝子のSEQ ID No. 1のヌクレオチド330からヌクレオチド347までの18bp欠失、
(iv)tcdC遺伝子のSEQ ID No. 1のヌクレオチド341からヌクレオチド370までの39bp欠失、
(v)SEQ ID No. 1の位置117の単一ヌクレオチド欠失、を増幅し及び/又は検出するためのプライマ及び/又はプローブと、
(vi)バイナリトキシンcdtA/B遺伝子を検出するためのプライマ及び/又はプローブと、
を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−528567(P2012−528567A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504107(P2012−504107)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051396
【国際公開番号】WO2010/116290
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】