説明

毛穴の目立ちやすさの鑑別方法及びそれを用いた化粧料の選択法

【課題】角栓除去剤やメークアップ化粧料等の選択、及び肌のアドバイスやカウンセリングの分野において、毛穴の目立ちやすさを的確且つ容易に鑑別できる効果的な技術を提供することを課題とする。
【解決手段】皮膚の毛穴の観察において、皮膚より採取した角層細胞の有核細胞数の出現割合を指標として用いて、有核細胞数の出現割合が高いほど、毛穴が目立ちやすいと鑑別し、さらに、年齢を指標とし、30代までは角栓の存在により毛穴が目立ちやすいと鑑別し、40代以上は毛穴の拡大が維持され目立ちやすいと鑑別することを特徴とする、毛穴の目立ちやすさの鑑別方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛穴の目立ちやすさの鑑別方法に関する。さらに詳しくは、角栓除去剤やメークなどの化粧料の選択及び肌のアドバイスのための毛穴の目立ちやすさの鑑別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、毛穴の目立ちに対する悩みが女性の間で高まっている。毛穴の目立ちは、第三者への美しい印象形成の妨げと同時に化粧崩れの原因でもあり、その凹凸の存在は、メークアップ化粧料等の均一な塗工を妨げ、メークアップ化粧料の化粧映え効果をも損なう。その為、シリカなどの半透明粉体を球状粉体とともに組み合わせて、化粧料に配合し、前記のシリカや球状粉体で毛穴を埋めて、補正する技術が開発されており(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5を参照)、この様な化粧料により対応が図られてきた。この様な化粧料を使用するか否かについては、化粧料をしようとする人の顔面を観察し、毛穴が目立つか否かを判別し、しかる後に、目立つと判別された場合に、この様な化粧料の使用を勧める手順でその使用がアドバイスされている。この為には、対面販売を行うか、毛穴付近の拡大画像と顔全面の画像を入手して、毛穴の目立ちやすさを判別せざるを得ない状況にあった。
【0003】
この様な毛穴の目立ちやすくなる原因としては、毛穴の壁面を構成する角層細胞が皮脂中に存在する不飽和脂質により、不全角化を亢進させ、脱落し、角栓を形成し、この角栓により毛穴が目立ちやすくなると言うメカニズムが提案されており(例えば、特許文献6を参照、毛穴の皮脂や角栓を除く技術としては、例えば、操作性および角栓除去性に優れた水溶性高分子を利用したシート状角栓除去パック剤(例えば、特許文献7参照)、角栓等をマトリックス上に充分に固定した支持体一体型のシート状化粧料(例えば、特許文献8参照)、弾性支持体部と極細繊維製で被覆したエステティック用の洗顔用具(例えば、特許文献9参照)、毛穴を目立たせている毛穴に詰まった角栓を溶解する角栓溶解剤(例えば、特許文献10参照)、不全角化を抑制して毛穴のすり鉢状構造の目立ちを抑える毛穴縮小剤(例えば、特許文献6参照)等が開示されている。
【0004】
このような状況において、ベースメーク料等化粧料の選択、化粧方法及び肌のアドバイス等において、毛穴の目立ちやすさを的確に評価・鑑別する技術開発が重要な課題であった。かような課題に関しては、皮脂量が多い人では毛穴が大きいことや皮脂量は加齢と共にその分泌量が減少する等はよく知られており、本発明者らは、化粧料の選択等のアドバイスやカウンセリングの分野において、皮脂量と毛穴の大きさとの関連性を示す肌特性のマップ及び肌特性の表示方法が有用であることを見いだして特許出願を行っている(例えば、特許文献11参照)。しかし、毛穴の目立ちやすさが角層細胞の有核細胞の出現割合と関係し、毛穴の目立ちやすさを該有核細胞の出現割合の指標を用いて的確に鑑別できることは全く知られていなかった。更に、該有核細胞の出現割合は、ヒトの顔の角層細胞を採取し、皮膚特性を鑑別する鑑別法に於いて、角層細胞の配列規則性などの指標とともに、皮膚バリア機能を鑑別する指標として使用されている(例えば、特許文献12を参照)が、毛穴の目立ちやすさとの関連は全く知られていなかったし、毛穴の目立ちやすさの原因が年代によって異なることも全く知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−349442号公報
【特許文献2】特願2005−225087号公報
【特許文献3】特願2005−225088号公報
【特許文献4】特願2005−225089号公報
【特許文献5】特願2005−225090号公報
【特許文献6】特開2006−327972号公報
【特許文献7】特開平10−245319号公報
【特許文献8】特開2003−012436号公報
【特許文献9】特開2004−329628号公報
【特許文献10】特開2004−075575号広報
【特許文献11】特願2005−144808号公報
【特許文献12】特開2001−13138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような状況下で為されたものであり、角栓除去剤やメークアップ化粧料等の選択、及び肌のアドバイスやカウンセリングの分野において、毛穴の目立ちやすさを的確且つ容易に鑑別できる効果的な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような状況を鑑みて、本発明者らは、角栓除去剤やメークアップ化粧料等の選択、及び肌のアドバイスやカウンセリングの分野において、毛穴の目立ちやすさを的確且つ容易に鑑別できる効果的な技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、皮膚の毛穴の観察において、皮膚より採取した角層細胞の有核細胞数の出現割合を指標として用いて毛穴の目立ちやすさを鑑別できることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
【0008】
(1)顔における毛穴の目立ちやすさの鑑別法であって、顔の皮膚より採取した角層細胞の有核細胞数の出現割合を指標として用いて、有核細胞数の出現割合が高いほど、毛穴が目立ちやすいと鑑別することを特徴とする、毛穴の目立ちやすさの鑑別方法。
(2)さらに、年齢を指標とし、30代までは角栓の存在により、毛穴が目立ちやすいと鑑別し、40代以上は毛穴の拡大が維持され目立ちやすいと鑑別することを特徴とする、(1)に記載の毛穴の目立ちやすさの鑑別方法。
(3)(2)に記載の鑑別法に於いて、30代以下で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、角栓除去用の化粧料の使用を勧めることを特徴とする、化粧料の選択法。
(4)(2)に記載の鑑別法に於いて、40代以上で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、毛穴補正用の化粧料の使用を勧めることを特徴とする、化粧料の選択法。
(5)(2)に記載の鑑別法に於いて、30代以下で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、角栓除去用の化粧料の使用を勧め、40代以上で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、毛穴補正用の化粧料の使用を勧めることを特徴とする、(3)又は(4)に記載の化粧料の選択法。
(6)(1)又は(2)に記載の毛穴の目立ちやすさの鑑別法の、肌のアドバイスのための使用であって、請求項2に記載の鑑別法に於いて、30代以下で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、角栓除去と不全角化の抑制により、毛穴の拡大を予防するお手入れをアドバイスすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の毛穴の目立ちやすさの鑑別法の使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、角栓除去剤やメークアップ化粧料等の選択、及び肌のアドバイスやカウンセリングの分野において、毛穴の目立ちやすさを的確且つ容易に鑑別できる効果的な技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、皮膚の毛穴の観察において、皮膚より採取した角層細胞の有核細胞数の出現割合を指標として用いて、有核細胞数の出現割合が高いほど、毛穴が目立ちやすいと鑑別することを特徴とする、毛穴の目立ちやすさの鑑別方法である。
【0011】
(A)毛穴の目立ちやすさの鑑別方法
毛穴の観察においては、美容上重要である顔面の頬部及び鼻部の皮膚を対象とすることが好ましく(図1参照)、通常は被験者の皮膚を代表する領域を選択し、傷や瘢痕が多い部位は避けることが好ましい。かような対象部位より毛穴画像を取得する手段は、特に制限されない。例えば、カラーデジタル式マイクロスコープ、カラーデジタルカメラ、カラービデオカメラ、及びスキャナー等の機器を用いて行うことができる。このような機器は市販のものであっても良いし、製造したものであっても良い。市販品としては、例えば、株式会社モリテックス製のi−scope及びCCDマイクロスコープ、有限会社フォルテシモのUSBビデオマイクロスコープ、又は株式会社キーエンスのデジタルマイクロスコープ、株式会社ニコンやオリンパス株式会社等のデジカメが好ましく提示できる。
撮影倍率は、撮像に用いる機器によって適した倍率とすればよい。例えば、ビデオマイクロスコープを使用する場合は30〜50倍程度のレンズを用い、対象皮膚に密着させて撮影を行い、得られたデジタル画像をパソコンの画像として、実寸に対し30〜50倍に拡大表示し、毛穴を観察するためのは判別画像とした後、毛穴を判別すればよい。
【0012】
前記パソコンの画像を取り扱う際において、傷、瘢痕やシミ等を処理して毛穴の観察の精度を上げ、或いは後述する毛穴の形状や面積を計測するために、汎用的画像解析用のソフトウェアを用いることが好ましい。かようなソフトウェアとしては、例えば三谷商事(株)WinROOF(登録商標)やAdobe社のAdobePhotoshop(登録商標)、Scion社の「Scion Image」等が例示できる。このような画像処理を施すことによって、毛穴の目立ちやすさの鑑別精度を上げることができる。
【0013】
毛穴の目立ちやすさの鑑別は、かような画像処理等を行って得られた判別画像に対して、以下のようなステップで行って指標を算出すればよい。
ステップ1)第三者を代表するのに適当な3〜5名の評価者を用意し、予め作成した毛穴の目立ちやすさの3〜5段階の基準写真(図2参照)を用い、前記判別画像の毛穴の目立ちやすさの程度を判別する。判別が分かれた場合は、最多値又は平均値でもって判別を行う。
ステップ2)ステップ1で、毛穴が目立つ又はやや目立つと判別された判別画像において、該判別画像中で、肉眼で認められる角栓の数が10個以上(実際の皮膚で8ミリ*8ミリ平方面積当たり)存在する場合は、角栓が目立つ「角栓毛穴」と定義し、同様に10個未満の場合は、「非角栓毛穴」と定義する(図3参照)。
ステップ3)ステップ1で、毛穴の目立ちやすさの指標を、毛穴面積又は毛穴形状の楕円率に置換して判別することもできる。
【0014】
前記角栓とは、鼻の周囲など、皮脂の分泌量の多い部位の毛穴に見られ、スムーズに排出されない皮脂及び剥がれにくくなった角層やうぶ毛が混ざってできた、毛孔を詰まらせている小さな固まりや突起である。かような角栓や後述する不全角化は、毛孔の目立ちのみならず、ニキビ等の種々のトラブルの原因であり、美容上極めて重要な課題である。
【0015】
前記毛穴面積又は毛穴形状の楕円率(比=長径/短径)は、撮像機器より得たパソコン上の判別画像に対して上述した汎用的画像解析用のソフトウェアで一般的な画像処理を行って算出することができる。このような画像処理のプロセスとして、例えば、モノクロ画像変換、フィルター処理、平滑化処理、二値化処理、画像計測処理等を例示できる。
【0016】
(B)角層細胞の有核細胞数の出現割合の指標
正常な皮膚の新陳代謝は約28日周期であるが、種々の内的・外的要因によって皮膚の細胞の分化・増殖が乱れ、角化の速度が異常に速まることにより、核が残ったままの不完全な細胞である有核細胞が皮膚表面に現れる不全角化という現象がある。有核細胞は角化細胞としては未熟な状態であるため、保湿能やバリア機能が劣っている。このため有核細胞数の出現割合は皮膚状態の重要な指標となる。
【0017】
かような有核細胞数の出現割合を評価するには、定法により皮膚よりテープストリッピング法によって採取した後、ゲンチアナバイレットとブリリアントグリーンによって核を染色した角層細胞標本を用いればよい。かような角層細胞標本を顕微鏡で観察を行って有核細胞数を判別してもよいし、或いは上述した毛穴面積等の算出で示したように、一般的な画像処理を行って有核細胞数を算出してもよい。
【0018】
前記(A)毛穴の目立ちやすさの鑑別方法によって求められた毛穴が目立ちやすさの指標と、前記(B)角層細胞の有核細胞数の出現割合の指標とは、正の高い相関関係を有する。したがって、その相関関係を利用することで、被験者の皮膚より採取した角層細胞の有核細胞数の出現割合が調べ、該有核細胞数の出現割合高いほど、被験者の毛穴が目立ちやすいと鑑別することができる。かような鑑別方法を利用することで、例えば、直接被験者の皮膚を観察することなく遠隔的に評価でき、また、角層細胞より得られる皮膚の水分量やバリア機能と併せて、洗浄料やメークアップ化粧料等の選択、及び肌のアドバイスやカウンセリングに至る総合的な情報を的確且つ効果的に提供することができる。この相関性に於いて、年代による差はあまり認められない。
【0019】
毛穴の目立ちやすさの鑑別方法において、さらに、年齢を指標とし、30代までは角栓の存在により、毛穴が目立ちやすいと鑑別し、40代以上は毛穴の拡大が維持され目立ちやすいと鑑別することができる。これは、頬部や鼻部において、10〜20代では角栓が存在することで毛穴が目立ち人の割合が多いが、40代以降では角栓の存在が認められないにも拘わらず、毛穴が目立つ人の割合が多いためである(図4,5参照)。この何れのタイプの毛穴の目立ちやすさも、角層細胞における有核細胞の出現割合の高さと相関していることから、この年代の毛穴の目立ちやすさに対する因子は、有核細胞の出現割合の因子とは独立したものであると考えられる。従って、この2軸を以て、化粧料の選択などに応用することが好ましい。
【0020】
かような鑑別において、30代以下で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、角栓除去用の化粧料の使用を勧めることを望ましい。これは角栓が、前述したように皮脂の分泌量の多い部位の毛穴において皮脂や角片等で毛孔を詰まらせているために、単に毛穴が目立ちやすいだけでなく、ニキビ等の種々の肌トラブルの原因となりやすい。このため、かような角栓を肌に負担なく且つ確実に除去しやすいように処方された角栓除去用の化粧料を使用することが好ましい。
【0021】
また、40代以上で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、毛穴補正用の化粧料の使用を勧めることが望ましい。毛穴の目立ちは、第三者への美しい印象形成の妨げと同時に化粧崩れの原因でもあり、その凹凸の存在は、メークアップ化粧料等の均一な塗工を妨げ、メークアップ化粧料の化粧映え効果をも損なっている。そのため、例えばシリカ等の半透明粉体と球状粉体との組み合わせた、毛穴を補正する機能を有する化粧料を使用することが好ましい。上述したように、30代以下で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に角栓除去用の化粧料の使用を勧め、40代以上で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に毛穴補正用の化粧料の使用を勧めるように、組み合わせて用いることもできる。
【0022】
かような毛穴の目立ちやすさの鑑別法を用いて、肌のアドバイス等を行うことができる。かような肌のアドバイスとしては、例えば、30代以下で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、角栓除去と不全角化の抑制を行って、毛穴の拡大を予防するお手入れを勧める等が好ましく例示できる。
【0023】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれら実施例にのみ限定されないのは言うまでもない。
【実施例1】
【0024】
無作為に選抜した健常な女性被験者248名(10代〜50代、各年代別に約50名)を対象に、顔面部位をクレンジング・洗顔料で洗顔を行った後、頬部及び鼻部(図1参照)を株式会社モリテックス製のi−scopeを用いて撮像した。得られた撮像画像はパソコン状で実寸に対し30倍に表示し、訓練された3名の専門評価者が、予め作成した毛穴の目立ちやすさの3段階の基準写真(図2参照)を対照として、毛穴の目立ちやすさの程度を3段階に判別した。また、毛穴が目立つ又はやや目立つと判別された判別画像において、肉眼で認められる角栓の数が10個以上(実際の皮膚で8ミリ*8ミリ平方面積当たり)存在する場合は「角栓毛穴」とし、10個未満の場合を「非角栓毛穴」と判別した(図3参照)。さらに、Adobe社のAdobePhotoshop(登録商標)を用いて定法によって画像処理及び画像計測処理を施して毛穴面積(単位μm)及び毛穴形状の楕円率(比=長径/短径)も算出した。
【0025】
角栓の有無別を加えた毛穴の目立ちやすさについて、年代別の分布の変化を頬部(図4参照)及び鼻部(図5参照)について示した。また、年代別の毛穴面積(図6参照)及び毛穴形状の楕円率(図7参照)の変化についても示した。これより、毛穴の目立ちやすさの鑑別方法において、30代までは角栓の存在により毛穴が目立ちやすく、40代以上は毛穴の拡大が維持され目立ちやすいことが分かる。
【実施例2】
【0026】
全国の健常な女性被験者1,093,331名(10代〜60代)を対象に、顔面部位をクレンジング・洗顔料で洗顔を行った後、予め作成した毛穴の目立ちやすさの程度の5段階の基準写真に対照に、訓練された専門評価者が頬部を観察して、5段階のスコア化(スコア5:非常に毛穴が目立つ、スコア4:かなり毛穴が目立つ、スコア3:毛穴の目立つは中程度、スコア2:あまり毛穴が目立たない、スコア1:毛穴が目立たない)を行った。同時に、定法によって同部位の皮膚よりテープストリッピング法を用いて角層細胞を採取した後、ゲンチアナバイレットとブリリアントグリーンによって角層細胞を染色し、顕微鏡の拡大角層細胞画像より有核細胞数を算出してその出現割合を判別した。
【0027】
40歳未満及び全年齢における、毛穴スコアと有核細胞の出現割合と関係を検討した(図8及び図9参照)。これより、毛穴の目立ちやすさと皮膚より採取した角層細胞の有核細胞数の出現割合とは正の相関関係を示した。即ち、有核細胞数の出現割合が高いほど、毛穴が目立ちやすいと鑑別できることが分かる。
【0028】
<試験例1>
自社内に構築された、角層細胞標本データベースより、298名の角層細胞標本の中から、その角層細胞の有核細胞数が多く、毛穴が目立つと判別された人を選別し、試験依頼を行い、承諾された、40名の女性被験者(20代〜50代、各年代別12名以上)を年齢構成が同じようになるように3群に分けた。即ち、角栓除去剤(処方1)を使用するA群(12名)、毛穴補正用の下地化粧料(処方2)を使用するB群(12名)、及びC群(16名)で、C群においては、再度角層細胞を採取し、有核細胞の出現確率を鑑別する実施例1の方法で、毛穴の目立ちやすさを鑑別し、30代未満の人で毛穴が目立ちやすいと判別された人に角栓除去剤(C1群、8名)を、40代以上の人で毛穴が目立ちやすいと判別された人に毛穴補正用の化粧料(C2群、5名)を使用させ、それ以外(C3群、3名)であった。しかる後に、A〜C群にファンデーション(処方3)でメークアップを行い、化粧仕上がりを官能評価及び写真撮影によって総合的に5段階(5:良い〜1:悪い)で判定を行い、その結果を表1に示す。
【0029】
表1より、C群は、A及びB群に比べて明らかに化粧仕上がりが良い人の割合が多い。これは、本願発明である毛穴の目立ちやすさの鑑別法に基づいて、角栓除去剤又は毛穴補正用の化粧料を使用した結果、角栓除去がしっかりと行われたり、或いは毛穴が補正され目立たなくなり、メークアップ後に美しい化粧仕上がりに繋がったものと推察され、本願発明である化粧料の選択の的確性を示したものと考えられる。
【0030】
【表1】

【0031】
<試験例2>
試験例1と同様に、自社内に構築された、角層細胞標本データベースより、298名の角層細胞標本の中から、その角層細胞の有核細胞数が観察されない人を選別し、試験依頼を行い、承諾された、40名の女性被験者(20代〜50代、各年代別12名以上)を年齢構成が同じようになるように3群に分けた。即ち、角栓除去剤(処方1)を使用するA群(12名)、毛穴補正用の下地化粧料(処方2)を使用するB群(12名)、及びC群(16名)で、C群においては、再度角層細胞を採取し、有核細胞の出現確率を鑑別する実施例1の方法で、毛穴の目立ちやすさを鑑別し、30代未満の人で毛穴が目立ちにくいと判別された人に角栓除去剤(C1群、10名)を、40代以上の人で毛穴が目立ちにくいと判別された人に毛穴補正用の化粧料(C2群、6名)を使用させた。試験例2と同様に評価してもらった。結果を表2に示す。試験例1、2の結果は、毛穴の目立たない人に於いては角栓除去剤を選択するか、毛穴補正用の化粧料を選択するかは、どちらを選択しても支障のないことを示すものであった。ここにおいて、毛穴が目立つか否かを鑑別することの重要な意義が存することが裏付けられた。更に、毛穴の目立ちやすさの代替指標として、角層細胞における有核細胞の出現割合を用いることの実用性も証明された。
【0032】
【表2】

【0033】
下記に示す処方1に従って、角栓除去剤を作製した。即ち、イ、ロをそれぞれ80℃で加熱、溶解し、イにロを加え、攪拌冷却して角栓除去剤を得た。
<処方1>
成分_____________________________________________質量%
イ)
グリセリン 75
イソペンチルグリコール 5
1,3−ブタンジオール 15
ラウロイルサルコシンイソプロピル 4
カルボマー 0.4
ロ)
水 0.3
トリエタノールアミン 0.3
【0034】
下記に示す処方2に従って、下地化粧料を作製した。即ち、イの成分に、ハの成分を分散させ、これを80℃に温調し、別途80℃に温調しておいたロに撹拌下徐々に加え乳化し、攪拌冷却して油中水乳化剤形の下地化粧料を得た。
<処方2>
成分__________________________________________________質量%
イ)
シクロペンタシロキサン 35
オクタン酸セチル 3
セキスイソステアリン酸ソルビタン 0.5
フェノキシエタノール 0.5
ショ糖脂肪酸エステル 0.5
POEジメチコン共重合体 2
ステアリン酸 0.4
(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー 0.2
ロ)
水 36.28
1,3−ブタンジオール 9
クエン酸ナトリウム 1
クエン酸 0.02
硫酸マグネシウム 0.4
水酸化カリウム 0.4
アスコルビン酸2−グルコシド 2
メチルパラベン 0.3
ハ)
無水珪酸(平均粒径12μm;単分散) 0.5
酸化亜鉛 2
ジステアリルジメチルアンモニウムヘクトライト 2
微粒子二酸化チタン 4
【0035】
下記に示す処方3に従って、ファンデーションを作製した。即ち、イの成分に、ハの成分を分散させ、これを80℃に温調し、別途80℃に温調しておいたロに撹拌下徐々に加え乳化し、攪拌冷却して油中水乳化剤形のファンデーションを得た。
<処方3>
成分__________________________________________________質量%
イ)
水 60
1,3−ブタンジオール 6
メチルパラベン 0.3
キサンタンガム 0.3
トリエタノールアミン 0.2
クエン酸1ナトリウム 0.2
ロ)
シクロメチコン 9.2
フェニルトリメチコン 2
トリメトキシルジメチコン 2
ベヘニルアルコール 2
ペンタステアリン酸ポリグリセリン−10 1
(ジメチコン/メチコン)コポリマー 0.2
プロピルパラベン 0.1
ポリメチルシルセスキオキサン 0.1
(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー 0.3
トコフェロール 0.1
ハ)
酸化チタン 12
酸化鉄 3
無水珪酸(平均粒径12μm;単分散) 0.5
マイカ 0.5
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の毛穴の目立ちやすさを的確に且つ容易に鑑別する技術の提供によって、角栓除去剤やメークアップ化粧料等の選択、及び肌のアドバイスやカウンセリングを効果的に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】顔部位の計測対象領域である頬部及び鼻部を示す図である(図面代用写真)。
【図2】毛穴の目立ちやすさを鑑別するために用いる、部位毎の3段階の基準写真を示す図である(図面代用写真)。
【図3】毛穴の目立ちやすさの鑑別において、角栓の有無の判別のために用いる、部位毎の2段階の基準写真を示す図である(図面代用写真)。
【図4】実施例1の毛穴の目立ちやすさの鑑別結果で、角栓の有無別を加えた頬部における毛穴の目立ちやすさの年代毎の変化を示す図である。
【図5】実施例1の毛穴の目立ちやすさの鑑別結果で、角栓の有無別を加えた鼻部における毛穴の目立ちやすさの年代毎の変化を示す図である。
【図6】実施例1における、頬部の毛穴面積の年代毎の変化を示す図である。
【図7】実施例1における、頬部の毛穴形状の楕円率の年代毎の変化を示す図である。
【図8】実施例2の結果で、40歳未満の女性における毛穴スコアと有核細胞の出現割合との正の相関関係を示す図である。
【図9】実施例2の結果で、全年齢の女性における毛穴スコアと有核細胞の出現割合との正の相関関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔における毛穴の目立ちやすさの鑑別法であって、顔の皮膚より採取した角層細胞の有核細胞数の出現割合を指標として用いて、有核細胞数の出現割合が高いほど、毛穴が目立ちやすいと鑑別することを特徴とする、毛穴の目立ちやすさの鑑別方法。
【請求項2】
さらに、年齢を指標とし、30代までは角栓の存在により、毛穴が目立ちやすいと鑑別し、40代以上は毛穴の拡大が維持され目立ちやすいと鑑別することを特徴とする、請求項1に記載の毛穴の目立ちやすさの鑑別方法。
【請求項3】
請求項2に記載の鑑別法に於いて、30代以下で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、角栓除去用の化粧料の使用を勧めることを特徴とする、化粧料の選択法。
【請求項4】
請求項2に記載の鑑別法に於いて、40代以上で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、毛穴補正用の化粧料の使用を勧めることを特徴とする、化粧料の選択法。
【請求項5】
請求項2に記載の鑑別法に於いて、30代以下で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、角栓除去用の化粧料の使用を勧め、40代以上で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、毛穴補正用の化粧料の使用を勧めることを特徴とする、請求項3又は4に記載の化粧料の選択法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の毛穴の目立ちやすさの鑑別法の、肌のアドバイスのための使用であって、請求項2に記載の鑑別法に於いて、30代以下で毛穴が目立ちやすいと鑑別された人に、角栓除去と不全角化の抑制により、毛穴の拡大を予防するお手入れをアドバイスすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の毛穴の目立ちやすさの鑑別法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−237350(P2008−237350A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79401(P2007−79401)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】