説明

毛穴ひきしめ剤

【課題】 角栓除去シート剤や、角栓除去パック剤等の角栓除去手段を用いて鼻周辺部等の毛穴に生じた角栓を除去した後に起こる毛穴の開きや、開いた毛穴の目立ちを抑えるとともに、高い保湿性、保水性を有することから、角栓除去後の毛穴を保護することができる毛穴ひきしめ剤を提供する。
【解決手段】角栓除去を行った後の毛穴をひきしめるために用いる毛穴ひきしめ剤であって、ムコ多糖類又は前記ムコ多糖類の誘導体を含有することを特徴とする毛穴ひきしめ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角栓除去シート剤や、パック剤等を用いて鼻等の毛穴に生じた角栓を除去した後に起こる毛穴の開きや目立ちを抑えるとともに、毛穴を保護することができる毛穴ひきしめ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、主として鼻周辺部等に生じた角栓を除去することを目的としたシート状の角栓除去用パック剤が多数市場に流通している。しかしながら、このような角栓除去用パック剤を用いた場合、角栓除去後に毛穴が大きく開き、逆に毛穴が目立つことが多かった。
【0003】
このような問題に対し、例えば、特許文献1及び特許文献2には、ひきしめ成分としてハマメリス抽出物やユキノシタ抽出物等を含有した角栓除去用パック剤が開示されている。しかしながら、このようなひきしめ成分を含有する角栓除去用パック剤では、肌のひきしめ効果は認められるものの、毛穴のひきしめ効果については、充分に満足できるものではなかった。
【0004】
また、特許文献3及び特許文献4には、毛穴ひきしめ成分を含むシート状のパック料や、このようなシート状パック料を、角栓除去後に用いる使用方法が開示されているが、このような毛穴ひきしめパック料では、毛穴ひきしめ成分として、アロエ、シャクヤク等の従来のひきしめ成分が用いられていることから、肌のひきしめ効果はあるが、目に見える毛穴のひきしめ効果という点では、依然として充分に満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開平10−152411号公報
【特許文献2】特開平11−35420号公報
【特許文献3】特開2001−19616号公報
【特許文献4】特開2001−19617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、角栓除去シート剤や、パック剤等を用いて鼻等の毛穴に生じた角栓を除去した後に起こる毛穴の開きや目立ちを抑えるとともに、毛穴を保護することが可能な毛穴ひきしめ剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、角栓除去を行った後の毛穴をひきしめるために用いる毛穴ひきしめ剤であって、ムコ多糖類又は上記ムコ多糖類の誘導体を含有する毛穴ひきしめ剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、角栓除去を行った後の毛穴をひきしめる成分として、ムコ多糖類又はその誘導体を用いることにより、従来の毛穴ひきしめ成分では得られなかった、優れた毛穴のひきしめ効果及び毛穴の保護効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の毛穴ひきしめ剤は、ムコ多糖類又はムコ多糖類の誘導体を含有する。
上記ムコ多糖類又はムコ多糖類の誘導体は、従来の毛穴ひきしめ成分と比べて優れた毛穴ひきしめ効果を有し、角栓の除去後の開いた毛穴を目立たなくできるとともに、高い保水性を有することから、角栓除去後の毛穴を保護することができる。
上記ムコ多糖類とは、ヘキソサミンを構成成分とする多糖類のことをいう。上記ムコ多糖
類としては特に限定されないが、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、キチン及びキトサンからなる群より選択される少なくとも1種が好適である。
【0009】
上記ムコ多糖類のなかでは、キトサンを用いることが好ましい。一般に、角栓除去後の毛穴は細菌感染も起こりやすいが、上記ムコ多糖類として抗菌活性を示すキトサンを用いた場合には、角栓除去後の毛穴の細菌感染を防止することができる。
上記キトサンとは、キチンを濃アルカリ溶液等と加熱する等の方法により、40mol/mol%以上の脱アセチル化をすることにより得られるポリ−N−アセチル−D−グルコサミンのことをいう。使用する原料キチンの種類、キトサンの製造方法については特に限定されない。
【0010】
上記キトサンの誘導体としては特に限定されず、例えば、キトサンのグルコサミン残基のアミノ基、−OH基又は−CHOH基がアルキル化、サクシニル化、ヒドロキシアルキル化、アルキルカルボニル化、ヒドロキシアルキルカルボニル化されたもの等が挙げられる。更に、キチンの脱アセチル化されたアミノ基が有機酸や無機酸と塩を形成しているもの等も挙げられる。
【0011】
上記ムコ多糖類の誘導体とは、上記ムコ多糖類における分子内の小部分の変化によって生成される化合物を意味し、例えば、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン硫酸塩等が挙げられる。上記ムコ多糖類又はムコ多糖類の誘導体は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0012】
上記ムコ多糖類の重量平均分子量の好ましい下限は500、好ましい上限は150万である。500未満であると、毛穴ひきしめ効果を充分に発揮できないことがあり、150万を超えると、粘度が高くなりすぎ、製剤化が困難となることがある。
また、その分子量分布についても、特に限定されるものではなく、非常に広い範囲の中で特定の分布だけのもの、又は、広範囲に分布するものも含まれる。
【0013】
本発明の毛穴ひきしめ剤における上記ムコ多糖類又は上記ムコ多糖類の誘導体の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は10重量%である。0.1重量%未満であると、角栓除去後の毛穴ひきしめ効果や保護効果が充分に得られず、10重量%を超えて含有しても、それ以上の効果は期待できず、また、溶解しにくくなることから、製剤化が困難となる。より好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は5重量%である。
【0014】
上記ムコ多糖類又はムコ多糖類の誘導体として、上記キトサン又はその誘導体を用いる場合には、本発明の毛穴ひきしめ剤は、更に、上記キトサン又はその誘導体を水溶化するために酸を含有することが好ましい。
上記酸としては無機酸、有機酸のいずれも用いることができる。
【0015】
上記無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。
上記有機酸としては、例えば、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、乳酸、酪酸、フマル酸、マロン酸、イタコン酸、グルコン酸、グリコール酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。特に、カルボン酸にヒドロキシ基を有する化学構造を持つ脂肪酸であるヒドロキシ酸が好ましい。これらの酸は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0016】
本発明の毛穴ひきしめ剤における上記酸の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は20重量%である。0.1重量%未満であると、キトサン又はその誘導体を充分に水溶化できないことがあり、20重量%を越えると、適用部位によっては皮膚刺激性を示すことがある。より好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は10重量%であ
る。
【0017】
本発明の毛穴ひきしめ剤は、従来よりひきしめ成分として用いられているハマメリス抽出物、ユキノシタ抽出物等の植物抽出液、酸化亜鉛等の収斂剤を1種又は2種以上適宜選択して含有してもよい。これらを含有することにより、皮膚をひきしめ、肌にしっとり感を付与することができる。
【0018】
本発明の毛穴ひきしめ剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、粉末、油分、界面活性剤、増粘剤、有機溶剤、可塑剤、色素、顔料、香料、防腐剤、抗酸化剤等の従来公知の添加剤を含有していてもよい。
【0019】
本発明の毛穴ひきしめ剤の剤形としては特に限定されず、例えば、軟膏剤、クリーム剤又は液剤(ゲル剤、ゾル剤、水溶液剤、アルコール剤、グリセリン・グリコール剤、油剤、懸濁型ローション剤、乳剤型ローション剤、ニス剤、湿布剤、噴霧剤)等が挙げられる。また、シート状の不織布、織布、紙、合成樹脂ネット等にしみこませたり、シート状の不織布等にゲル状の本発明の毛穴ひきしめ剤を塗布して貼付剤の形状としたりする方法等が挙げられる。
【0020】
本発明の毛穴ひきしめ剤を製造する方法としては特に限定されず、例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等のムコ多糖類又はムコ多糖類の誘導体を注射用水等に添加した後、攪拌、溶解することにより、製造することができる。
なお、ムコ多糖類としてキトサンを用いる場合は、乳酸等の酸をキトサンと同時に添加することが好ましい。
【0021】
角栓除去シート剤や、パック剤等を用いて角栓除去を行った後、本発明の毛穴ひきしめ剤を上記角栓除去を行った部位に適用することにより、角栓を除去した後に起こる毛穴の開きや目立ちを効果的に抑えることができるとともに、毛穴を保護することができる。
【0022】
本発明の毛穴ひきしめ剤を用いた毛穴ひきしめ方法において、本発明の毛穴ひきしめ剤を角栓除去を行った部位に適用する方法としても特に限定されず、例えば、手指やへら等の器具を用いた通常の皮膚外用剤塗布方法、ポンプ式、スプレー式、チューブ式容器から直接塗布する方法、毛穴ひきしめ剤をしみこませたシート状の不織布等を貼付する方法等が挙げられる。
【0023】
上記毛穴ひきしめ剤の適用量は、濃度や塗布する部位の状態によるため、特に限定されないが、通常は1日に1〜数回、0.01〜1g/1回程度を適用することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、角栓除去シート剤や、パック剤等を用いて鼻等の毛穴に生じた角栓を除去した後に起こる毛穴の開きや目立ちを抑えるとともに、毛穴を保護することができる毛穴ひきしめ剤を提供することができる。即ち、本発明の毛穴ひきしめ剤は、ムコ多糖類又はムコ多糖類の誘導体を含有することから、角栓除去後に用いた場合に、従来では得られなかった画期的な毛穴ひきしめ、保護効果が得られ、非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
(実施例1〜12)
ムコ多糖類の誘導体としてコンドロイチン硫酸ナトリウム(ナカライテスク社製)、ヒア
ルロン酸ナトリウム(ナカライテスク社製)又はキトサン(和光純薬社製)、及び、酸として乳酸(小堺製薬社製)を表1に示した配合量で注射用水(大塚製薬社製)に添加した後、攪拌、溶解して、毛穴ひきしめ剤を得た。
【0027】
(比較例1、2)
表1に示した配合量のユキノシタ抽出液又はハマメリス抽出液(何れも丸善製薬社製)を添加した以外は、実施例と同様にして毛穴ひきしめ剤を得た。
【0028】
【表1】

【0029】
(評価)
実施例1〜12及び比較例1、2で得られた毛穴ひきしめ剤を、鼻の上に貼付できるような大きさに切り抜いた不織布にしみこませたシートについて、以下の方法により評価を行った。結果を表2に示した。
【0030】
(1)角栓除去後の毛穴ひきしめ、保護効果の評価
各実施例、比較例ごとに6名(男性3名、女性3名)のパネラー(実施例、比較例によってパネラーは重複)に対して、市販の角栓除去シートを使用して角栓を除去した。その後、毛穴が開いた状態であることを確認したうえで、実施例及び比較例の毛穴ひきしめ剤をしみこませたシートを1回貼付し、角栓除去後の毛穴ひきしめ、保護効果の評価を行った。なお、評価は、実施例、比較例の毛穴ひきしめ剤をしみこませたシートを貼付してから、15〜30分の毛穴ひきしめ感について下記の基準で評価し、各人の評価、及び、評価点2又は3を付けた人の割合(有効率)を表2に示した。なお、有効率が高いほど、角栓除去後の毛穴ひきしめ感が高いことを表す。
【0031】
評価点3:著効(高い毛穴ひきしめ効果を感じる)
評価点2:有効(毛穴ひきしめ効果を感じる)
評価点1:どちらともいえない
評価点0:無効(毛穴ひきしめ効果を感じられない)
【0032】
【表2】

【0033】
表2から明らかなように、実施例の毛穴ひきしめ剤は、ムコ多糖類又はその誘導体を含有するため、角栓除去後の毛穴のひきしめ及び毛穴の保護に優れた効果を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、角栓除去シート剤や、パック剤等を用いて鼻周辺部等の毛穴に生じた角栓を除去した後に起こる毛穴の開きや目立ちを抑えるとともに、毛穴を保護することができる毛穴ひきしめ剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角栓除去を行った後の毛穴をひきしめるために用いる毛穴ひきしめ剤であって、
ムコ多糖類又は前記ムコ多糖類の誘導体を含有することを特徴とする毛穴ひきしめ剤。
【請求項2】
ムコ多糖類は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、キチン及びキトサンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の毛穴ひきしめ剤。

【公開番号】特開2006−248926(P2006−248926A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64461(P2005−64461)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】