説明

毛髪処理剤

【課題】短時間の準備で使用することができ、毛髪繊維、特にハリ・コシがない毛髪(損傷毛、細い毛髪等)に対し、短時間で優れたハリ・コシを付与することができる毛髪改質剤及び毛髪改質方法を提供すること。
【解決手段】ウレイド基を有するアルコキシシランを含有する毛髪処理剤、当該毛髪処理剤及び加水分解及び重合反応の促進のための毛髪処理剤からなる毛髪改質剤、並びに当該毛髪改質剤を用いる毛髪改質方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪にハリ・コシを付与する毛髪改質剤、毛髪改質方法及びこれらに用いられる毛髪処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、毛髪の内部に物質を浸透させて毛髪の物性や外観、感触を改質する方法として、アルコキシシランの加水分解で生成したシラノール化合物を毛髪に浸透させ、かつ毛髪内部で重合させる方法が提案されている(特許文献1〜3参照)。これらの方法によれば、毛髪直径を増加させることによって、毛髪、特に、ハリ・コシがない毛髪(損傷毛、細い毛髪等)に対し、ハリ・コシを付与することが可能であり、毛髪のまとまり性向上効果や、くせ毛の矯正効果も得られ、その効果はシャンプーを繰り返しても持続する。しかし、これらの方法には、毛髪へ適用する前の加水分解反応に時間が掛かり、加水分解反応の終了の見極めを行う必要があり、簡便に行うことができないという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開2005-320314号公報
【特許文献2】特開2006-160676号公報
【特許文献3】特開2006-182715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、短時間の準備で使用することができ、毛髪繊維、特にハリ・コシがない毛髪(損傷毛、細い毛髪等)に対し、短時間で優れたハリ・コシを付与することができる毛髪改質剤及び毛髪改質方法を提供することを目的とする。ここで、ハリ・コシを付与するとは、毛髪弾性を向上させることをいう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ウレイド基を有するアルコキシシランを含有する毛髪処理剤では、毛髪に処理剤を浸透させる前の加水分解のための攪拌操作が短時間で済み、これを加水分解して生成させたシラノール化合物を毛髪に塗布して浸透させ、その後、加水分解及び重合反応の促進のための毛髪処理剤を塗布して毛髪内部で重合させれば、毛髪に優れたハリ・コシを付与することができ、また、毛髪への滑らかな感触の付与や、毛髪のまとまり性の向上や、くせ毛の矯正の効果も得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、ウレイド基を有するアルコキシシランを含有する毛髪処理剤を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、次の毛髪処理剤(A)及び(B)からなる毛髪改質剤を提供するものである。
(A) 前記の毛髪処理剤
(B) 加水分解及び重合反応の促進のための毛髪処理剤
【0008】
さらに、本発明は、前記の毛髪改質剤を用い、前記毛髪処理剤(A)を毛髪に塗布した後、前記毛髪処理剤(B)を毛髪に塗布する毛髪改質方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ウレイド基を有するアルコキシシランの加水分解で生成したシラノール化合物を毛髪に浸透させ、毛髪内部で速やかに重合させることにより毛髪直径を増加させることができる。この結果として、毛髪、特に、ハリ・コシがない毛髪(損傷毛、細い毛髪等)に対し、短時間で優れたハリ・コシを付与し、しっかりとした健康的な毛髪に改質することができる。また、ウレイド基を有するアルコキシシランは加水分解が非常に速く、毛髪へ剤を浸透させる前の加水分解のための攪拌操作が著しく軽減されるため、本発明の毛髪処理剤を用いれば、毛髪の改質を短時間に行うことができ、また、従来必要であった加水分解反応の終了の見極めを行う必要がない。さらに、本発明の毛髪処理剤を用いれば、毛髪にハリ・コシ感、ボリューム感の付与効果のみならず、滑らかな感触の付与効果や毛髪のまとまり性向上効果、くせ毛の矯正効果も得られる。これらの効果はシャンプーを繰り返しても持続する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における「毛髪改質」とは、毛髪をハリ・コシやまとまりのある髪質にすることをいう。また、本発明において、「毛髪処理剤(B)」とは、「毛髪処理剤(Ba)」、「毛髪処理剤(Bb)」のいずれをも含むものとする。
【0011】
《毛髪処理剤(A)》
本発明の毛髪処理剤は、ウレイド基を有するアルコキシシランを含有するものであり、加水分解及び重合反応の促進のための毛髪処理剤(B)と組み合わせることにより、毛髪改質剤として使用される。
【0012】
〔ウレイド基を有するアルコキシシラン〕
ウレイド基を有するアルコキシシランとしては、次の一般式(1)で表されるものが好ましい。
【0013】
【化1】

【0014】
〔式中、R1、R3、R4及びR5は、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R2は、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、nは1〜3の整数を示す。〕
【0015】
一般式(1)において、R1、R3、R4及びR5としては、水素原子又は飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1〜6の炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。R2としては、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6の2価炭化水素基、具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、メチル置換テトラメチレン基、ビニレン基等が挙げられる。n個のXは、同一又は異なっていても良く、具体的には、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられ、特に、加水分解反応の反応性等の点から、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
【0016】
ウレイド基を有するアルコキシシランは、保管中の加水分解及び重合を回避するため、使用される直前までは水と分離して保管することが必要である。従って、毛髪処理剤(A)は、ウレイド基を有するアルコキシシランを含有し、水を含有しない第1剤と、水を含有する第2剤とからなる二剤式とすることが好ましい。この第1剤と第2剤を混合して加水分解することにより、ウレイド基を有するアルコキシシランは、重合可能なシラノール化合物となる。
【0017】
ウレイド基を有するアルコキシシランの含有量は、架橋反応による反応性の点から、毛髪処理剤(A)中(二剤式の場合には第1剤と第2剤を合わせた全組成中;以下同じ)の4質量%以上、特に12質量%以上が好ましく、また82質量%以下、特に58質量%以下が好ましい。また、第1剤中のウレイド基を有するアルコキシシランの含有量は、保存安定性の点から、70〜100質量%、更には80〜100質量%、特に90〜100質量%が好ましい。
【0018】
〔水〕
水は、本発明で使用する毛髪処理剤(A)が二剤式の場合には、第1剤に配合されるウレイド基を有するアルコキシシランとは別個に、第2剤に配合され、その含有量は、毛髪を十分に膨潤させ、ウレイド基を有するアルコキシシランの加水分解物であるシラノール化合物を毛髪へ十分浸透させる観点から、毛髪処理剤(A)中の20〜95質量%、特に30〜86質量%が好ましい。
【0019】
〔毛髪処理剤(A)のpH〕
本発明で使用する処理剤(A)においては、ウレイド基を有するアルコキシシランが加水分解したシラノールを毛髪内に浸透させて毛髪内で重合反応をさせるために、重合反応を遅らせる必要がある。このために毛髪処理剤(A)のpH(20℃)を2〜5、特に3〜4に調整するのが好ましい。なお、二剤式の場合には第2剤のpH(20℃)を上記範囲に調整するのが好ましい。
【0020】
〔有機酸〕
毛髪処理剤(A)には、pH調整のため、有機酸を含有させることができる。有機酸としては、pH調整が容易な点から、第1解離指数(pKa1)が4.1〜5.0、特に4.1〜4.7の範囲にある有機酸が好ましい。具体的には、グルタル酸(pKa=4.13,5.01)、アジピン酸(pKa=4.26,5.03)、酢酸(pKa=4.56)、プロピオン酸(pKa=4.67)等を例示することができ、なかでも臭気が少ないアジピン酸が好ましい。
【0021】
有機酸は、本発明で使用する毛髪処理剤(A)が二剤式の場合には、第1剤に配合されるウレイド基を有するアルコキシシランとは別個に、第2剤に配合することが、溶解性、保存安定性の点から好ましい。有機酸の含有量は、重合反応の抑制の点から、毛髪処理剤(A)中の0.001〜5重量%、特に0.001〜1重量%が好ましい。
【0022】
〔その他の成分〕
また、ウレイド基を有するアルコキシシランを毛髪処理剤(A)中に均一に溶解する目的で、メタノール、エタノール等の炭素数1〜3の低級1級アルコール、グリセリン等の水溶性有機溶剤を使用することもできる。その量は、毛髪処理剤(A)を毛髪に塗布した際に、毛髪を十分に膨潤させ、ウレイド基を有するアルコキシシランの加水分解物を十分に浸透させやすくするため、毛髪処理剤(A)中の35質量%以下、特に20質量%以下とすることが好ましい。
【0023】
毛髪処理剤(A)には、その他、界面活性剤、油剤、シリコーン誘導体、カチオン性ポリマー、浸透促進剤、保湿剤、粘度調整剤、香料、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤等を、目的に応じて適宜配合することができる。
【0024】
〔毛髪処理剤(A)の調製〕
毛髪処理剤(A)の形態は、長期間安定である点から、好適には、ウレイド基を有するアルコキシシランを含有する第1剤と、水を含有する第2剤からなるものであるが、使用直前にウレイド基を有するアルコキシシラン、水、及びその他任意成分を混合することによって調製されたものであってもよい。
【0025】
毛髪処理剤(A)を、使用直前にウレイド基を有するアルコキシシラン、水、並びにその他任意成分を混合することによって調製する場合、混合する順序は、特に限定されないが、ウレイド基を有するアルコキシシランは水と混合することによって加水分解及び重合反応が開始するので、これを抑制するため、水とその他任意成分を混合した後にウレイド基を有するアルコキシシランを混合することが好ましい。
【0026】
二剤式毛髪処理剤(A)の第1剤及び第2剤を使用直前に混合することにより、又はウレイド基を有するアルコキシシラン、水、及びその他任意成分を混合することにより、ウレイド基を有するアルコキシシランは加水分解してシラノール化合物となり、毛髪内へ浸透し易くなる。ウレイド基を有するアルコキシシラン及び加水分解物(シラノール化合物)の物性、毛髪内への浸透性の点から、当該アルコキシシランとして一般式(1)中、nが2〜3であるものを使用するのが好ましい。
【0027】
《毛髪処理剤(B)》
毛髪処理剤(B)は、ウレイド基を有するアルコキシシランが加水分解したシラノール化合物の毛髪内での重合を促進させるものであるとともに、加水分解を促進させることもでき、一部加水分解されることなく毛髪内に浸透した場合にも、毛髪内で完全にシラノール化合物に加水分解させ、重合させる役割を有する。毛髪処理剤(B)を用いて加水分解及び重合させることにより、ハリ・コシ付与効果を向上し、また処理時間を短縮することができる。
【0028】
毛髪処理剤(B)としては、次の(Ba)及び(Bb)のいずれかを用いることができる。
【0029】
・毛髪処理剤(Ba):第1解離指数(pKa1)が4.1未満の有機酸又は無機酸を含有し、かつ毛髪処理剤(A)に1:1の質量比で混合した場合の混合物のpHを1〜4とする毛髪処理剤(酸性水溶液)
【0030】
・毛髪処理剤(Bb):単独でのpHが8〜12であり、毛髪処理剤(A)に1:1の質量比で混合した場合の混合物のpHを8〜12とする毛髪処理剤(アルカリ性水溶液)
【0031】
〔毛髪処理剤(Ba):酸性水溶液〕
毛髪処理剤(Ba)を使用する場合、すなわちウレイド基を有するアルコキシシランの加水分解及びその後の重合反応の促進に酸性水溶液を使用する場合、有機酸又は無機酸は、重縮合の反応速度の点から、pKaが4.1未満のものを用いるが、特に3.7以下であるものが好ましく、pKaが1以上、更には2以上、特に3以上であるものが好ましい。なお、ここでいうpKaは、二酸以上の場合には、第1解離指数(pKa1)をいう。このうち有機酸としては、シュウ酸(pKa=1.04,3.82)、マレイン酸(pKa=1.75,5.83)、アスパラギン酸(pKa=1.93,3.70)、サリチル酸(pKa=2.81)、酒石酸(pKa=2.82,3.96)、フマル酸(pKa=2.85,4.10)、クエン酸(pKa=2.90,4.34)、リンゴ酸(pKa=3.24,4.71)、コハク酸(pKa=4.00,5.24)、蟻酸(pKa=3.55)、乳酸(pKa=3.66)等が、無機酸としては、リン酸(pKa=2.15)、塩酸(pKa=-8)等が挙げられる。なかでも、リンゴ酸、乳酸が好ましい。
【0032】
毛髪処理剤(Ba)は、重縮合の反応速度の点から、毛髪処理剤(A)に1:1の質量比で混合した場合の混合物のpHを1〜4とするものを使用し、好ましくは当該pHを2〜4、特に2.5〜3.8とするものを使用する。また、毛髪処理剤(Ba)は、上記pH範囲の緩衝系としてもよい。
【0033】
〔毛髪処理剤(Bb):アルカリ性水溶液〕
毛髪処理剤(Bb)を使用する場合、すなわちウレイド基を有するアルコキシシランの加水分解及びその後の重合反応の促進にアルカリ性水溶液を使用する場合、アルカリとしては、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等のアルカノールアミンなどを使用することができる。
【0034】
毛髪処理剤(Bb)は、重縮合の反応速度の点から、単独でのpHが8〜12であるが、当該pHは8.5〜12、特に9〜10であるのが好ましい。毛髪処理剤(Bb)は、毛髪処理剤(A)に1:1の質量比で混合した場合の混合物のpHを8〜12とするが、当該pHを8.5〜12、特に9〜10とするものが好ましい。また、毛髪処理剤(Bb)は、上記pH範囲の緩衝系としてもよい。
【0035】
〔その他の成分〕
毛髪処理剤(B)には、その他、界面活性剤、油剤、シリコーン誘導体、カチオン性ポリマー、浸透促進剤、保湿剤、粘度調整剤、香料、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤等を、目的に応じて適宜配合することができる。また、油剤と界面活性剤を用いて乳化物にしてもよい。
【0036】
《毛髪改質方法》
以上説明した毛髪改質剤を用いた毛髪の改質は、毛髪処理剤(A)を毛髪に塗布した後、毛髪処理剤(B)を毛髪に塗布することにより行われる。
【0037】
本発明の毛髪改質方法において、毛髪処理剤(A)が二剤式である場合は第1剤及び第2剤を使用直前に混合後、又はウレイド基を有するアルコキシシラン、水、並びにその他任意成分を使用直前に混合後、毛髪に塗布する。二剤式である場合の第1剤と第2剤の混合割合(第1剤/第2剤の質量比)は、好ましくは80/20〜1/99、更に好ましくは60/40〜20/80である。
【0038】
混合された毛髪処理剤(A)を放置すれば、ウレイド基を有するアルコキシシランの加水分解及び重合反応が進むので、30分以内、特に15分以内に、混合された毛髪処理剤(A)を毛髪に塗布することが好ましい。これにより、ウレイド基を有するアルコキシシランの加水分解物を毛髪内に浸透させることができる。塗布する毛髪は、濡れていてもよく、乾いていてもよい。乾燥した毛髪1gに対して、前記毛髪処理剤(A)を、0.5〜3g塗布することが好ましい。塗布する対象は、人の頭髪であってもよく、かつら等の毛髪であってもよい。
【0039】
ウレイド基を有するアルコキシシランの加水分解物を毛髪に十分に浸透させるために、毛髪に塗布しておく時間は、10〜90分、特に20〜60分が好ましい。塗布後一定時間放置することで、ウレイド基を有するアルコキシシランの加水分解物の浸透、及び重合反応を進める。この際、毛髪の乾燥を防ぐためにラップ等で包んでもよく、また毛髪の塗布部を40〜90℃、好ましくは40〜60℃に加温してもよい。
【0040】
毛髪処理剤(A)による処理後、そのまま毛髪処理剤(B)を毛髪に塗布してもよいが、毛髪処理剤(B)の効果を高める点から、毛髪表面に付着している毛髪処理剤(A)をタオル等で拭き取るなどして除去した後に、毛髪処理剤(B)を塗布することが好ましい。この場合において、拭き取り後に毛髪表面に残っている毛髪処理剤(A)の質量に対する毛髪処理剤(B)の塗布量〔毛髪処理剤(B)/毛髪処理剤(A)〕の値を2〜50にするのが好ましく、より好ましくは4〜30、最も好ましくは6〜10である。
【0041】
毛髪処理剤(B)の塗布後、ウレイド基を有するアルコキシシランの加水分解及びシラノール化合物の重合を進めるために放置しておく時間は、1〜60分が好ましく、より好ましくは5〜40分、最も好ましくは10〜20分である。この際、毛髪の乾燥を防ぐためにラップ等で包んでもよく、また塗布部を40〜90℃、好ましくは40〜60℃に加温してもよい。その後はシャンプー等で洗浄し、適宜乾燥すればよい。
【0042】
なお、混合された毛髪処理剤(A)を毛髪に塗布した後、塗布部を加温し、その後毛髪処理剤(B)を塗布し、再度塗布部を加温することが好ましい。
【実施例】
【0043】
実施例1及び比較例1 毛髪処理剤(A)
ウレイドプロピルトリアルコキシシラン〔前記式(1)におけるR2がトリメチレン基であり、R3、R4及びR5が水素原子であり、Xがメトキシ基及びエトキシ基であり、n=3である化合物、以下同様〕のメタノール溶液(GEシリコーン社製 SILQUEST A-1160 メトキシエトキシ混合物)をロータリーエバポレーターによって減圧濃縮して油状物を得た。アジピン酸0.75gを精製水59.27gに溶解したものに、この油状物を40g加え、容器を一定時間手で振って均一に混合させ、表1に示す組成からなる実施例1の毛髪処理剤(A)を調製した。
また、ウレイドプロピルトリアルコキシシランの代わりにメチルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製 LS-1890)を用い、混合をマグネチックスターラーにより行ったほかは同様の方法を行い、比較例1の毛髪処理剤(A)を調製した。
これらの毛髪処理剤(A)の加水分解処理に要した混合時間を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すとおり、実施例1の毛髪処理剤(A)は、加水分解処理に要する時間が比較例1の毛髪処理剤(A)に比して短かった。
【0046】
実施例2〜3及び比較例2〜3 毛髪改質剤
表2に示す毛髪処理剤(A)及び毛髪処理剤(B)からなる毛髪改質剤(実施例2〜3及び比較例2〜3)について、使用後の毛髪のケイ素元素含有量及び毛髪の感触を以下のように調べた。なお、実施例1及び比較例1の毛髪処理剤(A)は、ウレイドプロピルトリアルコキシシラン又はメチルトリエトキシシランを加えてからそれぞれ1分、30分混合したものを用いた。また、表2中の(Ba)及び(Bb)は、それぞれ表3〜4に示す組成からなる重合促進剤(Ba)及び(Bb)を示す。
【0047】
〔毛髪の処理〕
化学処理履歴のないコーカシアンの毛髪で作製した毛束(European Natural 25〜30cm Hair Color No.9/0、Kerling International Haarfabrik GmbH社より入手)5gに毛髪処理剤(A)を10g塗布した後、剤が乾燥しないようにラップで包み、恒温機(50℃)で30分間放置した。毛髪処理剤(A)をタオルで拭き取り、毛髪処理剤(B)を5g均一に塗布した後、剤が乾燥しないようにラップで包み、恒温機(50℃)で15分間放置した。その後シリコーンを含有しないシャンプーで洗い流し、十分に乾燥し、処理毛を得た。
【0048】
〔毛髪のケイ素元素の含有量の定量〕
得られた処理毛に付着及び浸透したケイ素元素の量を定量した。定量は「ICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置(堀場製作所,JY238ULTRACE)」を用いて以下のように行った。
試料0.1gを白金坩堝に採取し、ヒーターで煙が出なくなるまで炭化後、550℃の電気炉に2時間入れ灰化させた。冷却後、残った灰分上にアルカリ融剤(Na2CO3:H3BO3=5:2)1gを加え、950℃電気炉30分でアルカリ溶融し、冷却後、6N塩酸4mLで溶解して純水で50mLにメスアップしたものを試料溶液とした。吸収波長251.612nm、積分時間3秒で3回測定し、その平均値から、検量線を使用してケイ素元素の含有量を以下の計算式を用いて求めた。
【0049】
ケイ素元素の含有量(質量%)=〔ケイ素元素質量(mg)/毛髪質量(g)〕×0.1
【0050】
また、毛髪処理剤(A)と毛髪処理剤(B)とを1:1の質量比で混合し、得られた混合物の20℃におけるpHを測定した。このように求めたpHとケイ素元素の含有量を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
表2に示すとおり、実施例2及び3の毛髪改質剤を用いることにより、毛髪へのケイ素の収着が認められた。
【0055】
〔感触の評価〕
毛髪改質剤で処理して得た処理毛、及び毛髪改質剤による処理を行っていない未処理毛の「滑らかな感触」、「ハリ・コシ感」、「ボリューム感」、「髪のまとまり感」及び「浮き毛、はね毛の少なさ」について、10名のパネラーにより、下記基準に従い5段階評価で官能評価を行った。評価の平均値を算出し、平均値が4.5以上の場合を非常に良好(◎)、3.5以上4.5未満の場合を良好(○)、2.5以上3.5未満の場合を普通(△)、2.5未満の場合を不良(×)と判定した。算出した平均値及び判定結果を表5に示す。
【0056】
(評価基準)
5;良い
4;やや良い
3;普通
2;やや悪い
1;悪い
【0057】
【表5】

【0058】
表5に示すとおり、実施例2及び3の毛髪改質剤を用いることにより、比較例2及び3の毛髪改質剤では得られないような滑らかな感触、ハリ・コシ感、ボリューム感、髪のまとまり感が得られ、浮き毛・はね毛も抑制できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレイド基を有するアルコキシシランを含有する毛髪処理剤。
【請求項2】
ウレイド基を有するアルコキシシランが、次の一般式(1)
【化1】

〔式中、R1、R3、R4及びR5は、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R2は、炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、nは1〜3の整数を示す。〕
で表されるものである請求項1記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
次の毛髪処理剤(A)及び(B)からなる毛髪改質剤。
(A) 請求項1又は2記載の毛髪処理剤
(B) 加水分解及び重合反応の促進のための毛髪処理剤
【請求項4】
毛髪処理剤(B)が、次の毛髪処理剤(Ba)である請求項3記載の毛髪改質剤。
(Ba) 第1解離指数(pKa1)が4.1未満の有機酸又は無機酸を含有し、かつ毛髪処理剤(A)に1:1の質量比で混合した場合の混合物のpHを1〜4とする毛髪処理剤
【請求項5】
毛髪処理剤(B)が、次の毛髪処理剤(Bb)である請求項3記載の毛髪改質剤。
(Bb) 単独でのpHが8〜12であり、毛髪処理剤(A)に1:1の質量比で混合した場合の混合物のpHを8〜12とする毛髪処理剤
【請求項6】
毛髪処理剤(A)が、ウレイド基を有するアルコキシシランを含有する第1剤と、水を含有する第2剤から構成されるものである請求項3〜5のいずれかに記載の毛髪改質剤。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の毛髪改質剤を用い、毛髪処理剤(A)を毛髪に塗布した後、毛髪処理剤(B)を毛髪に塗布する毛髪改質方法。
【請求項8】
毛髪処理剤(A)を毛髪に塗布した後、塗布部を加温する請求項7記載の毛髪改質方法。
【請求項9】
毛髪処理剤(B)を毛髪に塗布した後、塗布部を加温する請求項7又は8記載の毛髪改質方法。

【公開番号】特開2008−150315(P2008−150315A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339550(P2006−339550)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】