説明

毛髪又は頭皮用組成物

【課題】植物生薬など人体にやさしい成分を主体としながら、育毛効果を持ち、円形脱毛症の処置に有効な毛髪用組成物を提供すること。
【解決手段】甘草抽出物、センブリ抽出物又はイチョウ葉抽出物、橙皮抽出物又は陳皮抽出物、卵白抽出物、及び、カルシウム化合物、を含有する毛髪又は頭皮用組成物。本発明の組成物は育毛用のものであり、円形脱毛症の処置に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪又は頭皮用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
円形脱毛症は頭皮に円形の脱毛斑を生ずる病気である。原因は不明であるが、自律神経失調、栄養障害、自己免疫の関与などが指摘されている。非特許文献1では、ストレスが大きな原因とされており、ストレスが血流障害と顆粒球の増加を招き、脱毛を引き起こすものと記載されている。顆粒球が毛根を誤って攻撃する自己免疫疾患の一種であり、ステロイドでは治療できないとも記載されている。
【0003】
ところが、植物生薬など人体にやさしい成分を主体としながら、育毛効果を持ち、円形脱毛症の処置に有効な化粧品や医薬品はこれまで知られていなかった。
【0004】
甘草抽出物を有効成分とする毛髪化粧料が特許文献1で開示されているが、使用時及び使用後の毛髪の感触、特になめらかさを良くすることを目的としたものであり、円形脱毛症の処置や、育毛効果についてはまったく記載されていない。
【特許文献1】特開2004−285018号公報
【非特許文献1】安保徹著、「免疫進化論、自然の条理に根ざした医学を求めて」、株式会社河出書房新社、2006年9月20日、p.47〜48
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、植物生薬など人体にやさしい成分を主体としながら、育毛効果を持ち、円形脱毛症の処置に有効な毛髪又は頭皮用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、特定の植物生薬の抽出物の組合せと、卵白抽出物と、カルシウム化合物を配合した組成物を毛髪又は頭皮に適用すると、育毛効果、及び、円形脱毛症の改善効果が得られることを見出して、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、甘草抽出物、センブリ抽出物又はイチョウ葉抽出物、橙皮抽出物又は陳皮抽出物、卵白抽出物、及び、カルシウム化合物、を含有することを特徴とする毛髪又は頭皮用組成物に関する。
【0008】
当該組成物は、育毛用のものであることが好ましく、また、円形脱毛症の処置に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の毛髪又は頭皮用組成物を毛髪又は頭皮に適用すると、育毛効果や、円形脱毛症の改善効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の毛髪又は頭皮用組成物は、甘草抽出物、センブリ抽出物又はイチョウ葉抽出物、橙皮抽出物又は陳皮抽出物、卵白抽出物、及び、カルシウム化合物、を含有する。
【0011】
甘草、センブリ、イチョウ葉、橙皮、及び陳皮としては特に限定されず、植物生薬としてひろく市販されているものを使用することができる。抽出方法としては特に限定されないが、エタノール水(例えばホワイトリカー)を用いて抽出したもの、すなわちアルコール性抽出液を用いることが好ましい。具体的には、各々の乾燥物を、エタノール水に浸漬して3週間程度放置した後、浸出液を分離すればよい。ここで使用するエタノール水はアルコール度数が35度未満であると腐敗しやすくなるので、35度以上のものを使用することが好ましい。
【0012】
センブリ抽出物とイチョウ葉抽出物については、いずれか一方を使用すればよいが、双方を併用してもよい。ただし、イチョウ葉抽出物はやや異臭があるので、センブリ抽出物のほうが好ましい。また、橙皮抽出物と陳皮抽出物についても、いずれか一方を使用すればよいが、双方を併用してもよい。このうち、橙皮抽出物は匂いが良好であるため好ましい。
【0013】
卵白としては特に限定されないが、茹でた鶏卵の卵白外側を包んでいる薄皮を用いることが特に有効である。抽出方法としては特に限定されないが、上記と同様、エタノール水(例えばホワイトリカー)を用いて抽出したもの、すなわちアルコール性抽出液を用いることが好ましい。具体的には、すりこ木等を用いてゆで卵の薄皮を十分に細かくすりつぶした後、エタノール水に浸漬するか、あるいは、エタノール水に浸漬したゆで卵の薄皮をミキサーにかけて細かくすりつぶすことで、乳白色の液体を得る。この液体を3週間程度放置した後、卵の殻等が混入しないようにペーパータオル等を用いて圧力をかけて絞り出したものを卵白抽出物として使用することができる。
【0014】
カルシウム化合物としては特に限定されないが、水に可溶なカルシウム塩が使用可能である。具体的には、乳酸カルシウムが好ましい。
【0015】
各成分の配合量は、育毛効果が得られる限り特に限定されないが、具体的な実施形態としては、組成物全体に対して、甘草抽出物が3〜5重量%、センブリ抽出物又はイチョウ葉抽出物が2〜3重量%、橙皮抽出物又は陳皮抽出物が4〜6重量%、卵白抽出物が7〜10重量%、カルシウム化合物が2〜3重量%程度であればよい。
【0016】
本発明の毛髪又は頭皮用組成物を製造するには、各抽出物と、カルシウム化合物を混合し、さらにエタノール水と弱酸性の水を用いて希釈すればよい。この際、組成物全体に対するアルコール度数を15度〜20度程度の範囲に調整すると、腐敗が防止され長期間の保存が可能になるため好ましい。
【0017】
本発明の毛髪又は頭皮用組成物は水溶液状のものであるが、乳酸カルシウム等に起因する沈殿物が若干含まれてもよい。
【0018】
本発明の毛髪又は頭皮用組成物は、1日数回、毛髪量がすくない箇所(特に、円形脱毛症を患っているヒトの脱毛部分)の頭皮又は毛髪に適当量を塗布することによって使用できる。このような使用を例えば数週間から数カ月継続すると、顕著に育毛効果が見られる。本発明の毛髪又は頭皮用組成物は、特に、円形脱毛症を処置する際に良好な結果が得られる。
【0019】
本発明の毛髪又は頭皮組成物によって育毛効果が得られる機構は明らかではないが、本発明の組成物が頭皮の血管に作用して、そこで顆粒球が減少しリンパ球が増加することにより血液循環が改善され、血液の滞りがなくなることによるものと考えられる。この作用は、とくに卵白抽出物とカルシウム化合物によるところが大きいものと考えられる。
【0020】
本発明の毛髪又は頭皮用組成物は、医薬品、医薬部外品、又は化粧品のいずれであってもよい。また、本発明の毛髪又は頭皮用組成物は、医薬品や化粧品で通常許容される種々の添加剤を含有するものであってもよい。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
甘草30gをアルコール度数35度のホワイトリカー300ccに浸漬し、3週間放置した後、液体部分を分離して甘草抽出物を得た。
【0023】
センブリ10gをアルコール度数35度のホワイトリカー300ccに浸漬し、3週間放置した後、液体部分を分離してセンブリ抽出物を得た。
【0024】
橙皮30gをアルコール度数35度のホワイトリカー300ccに浸漬し、3週間放置した後、液体部分を分離して橙皮抽出物を得た。
【0025】
約30個の鶏卵から取り出した卵白の薄皮部分を、すりこ木を用いてすり鉢で細かく砕いた後、アルコール度数35度のホワイトリカー300ccに浸漬して乳白色の液体を得た。3週間放置した後、ペーパータオル等を用いて圧力をかけて絞り出したものを、卵白抽出物として使用した。
【0026】
甘草抽出物5cc、センブリ抽出物3cc、橙皮抽出物6cc、卵白エキス10cc、及び乳酸カルシウム3gを混合し、エタノール水及び弱酸性水を加えて120ccに増量して、本発明の組成物を得た。なお、本発明の組成物はアルコール度数を15度に調整した。
【0027】
円形脱毛症を持つ人の頭皮に対して、1日数回、上記の組成物を適用した。この適用は、1日数回適当量を、脱毛している箇所の頭皮に塗擦することによって行った。なお、およそ120cc程度の分量を、1カ月程度で消費する割合で使用した。
【0028】
人によって結果は異なるが、およそ4日〜2カ月程度で脱毛部分において毛髪量が増加する効果が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘草抽出物、
センブリ抽出物又はイチョウ葉抽出物、
橙皮抽出物又は陳皮抽出物、
卵白抽出物、及び、
カルシウム化合物、を含有することを特徴とする毛髪又は頭皮用組成物。
【請求項2】
育毛用である、請求項1に記載の毛髪又は頭皮用組成物。
【請求項3】
円形脱毛症の処置に用いられる、請求項1又は2に記載の毛髪又は頭皮用組成物。

【公開番号】特開2009−249361(P2009−249361A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101791(P2008−101791)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(507394293)
【Fターム(参考)】