説明

毛髪除去剤および毛髪除去方法

【課題】毛髪除去性に優れ、繊維製品の強度低下が極めて低く、短時間で処理できる毛髪除去剤及び毛髪除去方法を提供する。
【解決手段】(A)金属封鎖剤、(B)アルカリ金属水酸化物、および(C)ケイ酸塩を含有してなる毛髪除去剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪除去剤および毛髪除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
おしぼりなどの商業的に使用される繊維製品は、使用後に回収し、洗浄工程を経て、再度利用されている。これらの繊維製品は、使用時に毛髪が付着することが多く、洗浄工程において、手作業での除去工程が必要であった。
【0003】
特に、おしぼりに代表される湿潤状態で出荷される繊維製品は、毛髪が自然に除去される可能性が極めて低いため、手作業での毛髪除去工程を避けることができず、処理効率が非常に低い。
【0004】
これに対し、特許文献1には、洗浄工程において、アルカリ性薬剤単独、またはこれと過酸化物系酸化剤を併用して洗濯することにより、毛髪を除去する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、この方法では、毛髪は目立たなくなるが、完全には除去できないという問題がある。また、薬剤の使用量が多く、繊維の強度を短期間に低下させるため、繊維製品再利用の回数が大幅に減少することがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−48594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、毛髪除去性に優れ、短時間で処理できるため作業性に優れ、しかも繊維製品の強度低下が顕著に抑制される毛髪除去剤及びこれを用いた毛髪除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の毛髪除去剤は、上記の課題を解決するために、(A)金属封鎖剤、(B)アルカリ金属水酸化物、および(C)ケイ酸塩を含有してなるものとする。
【0009】
上記本発明の毛髪除去剤において、(A)金属封鎖剤、(B)アルカリ金属水酸化物、および(C)ケイ酸塩の配合割合は、重量比で、(A)/(B)=4/1〜1/4であり、(A)/(C)=9/1〜1/9であり、かつ(B)/(C)=9/1〜1/9であることが好ましい。
【0010】
本発明の毛髪除去方法は、上記本発明の毛髪除去剤の水溶液を調製し、毛髪が付着した繊維製品をこの水溶液に浸漬する工程を含むものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の毛髪除去剤および毛髪除去方法によれば、洗濯時に、繊維の強度の低下させることなく、効率的に毛髪を除去できる。従って、粘着テープ等による手作業での毛髪除去工程を省くことができ、作業性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.毛髪除去剤
本発明の毛髪除去剤は、上記の通り、(A)金属封鎖剤、(B)アルカリ金属水酸化物、および(C)ケイ酸塩を必須成分として含有する。これらについて、以下に詳述する。
【0013】
(A)金属封鎖剤
本発明の毛髪除去剤は、金属封鎖剤を適量配合することにより、優れた毛髪除去性が得られる。本発明で用いる金属封鎖剤とは、鉄イオン、銅イオンなどの洗浄に悪影響を及ぼす重金属イオンを封鎖する作用を有するキレート剤であり、酸性を示すキレート剤が好ましい。キレート剤としては、例えば、アミノポリカルボン酸、ホスホン酸またはホスホノカルボン酸、リン酸、有機酸、ポリカルボン酸、アミノ酸等と、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、若しくはアルカノールアミン塩等が挙げられる。これらの中でも、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸が好適に用いられる。これら金属封鎖剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
(B)アルカリ金属水酸化物
アルカリ金属水酸化物も、適量配合することにより、毛髪除去性を向上させる。アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられ、これらアルカリ金属水酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
(C)ケイ酸塩
ケイ酸塩は、適量配合することによって、繊維の脆化防止性向上に寄与する。ケイ酸塩の例としては、メタケイ酸ナトリウムなどのメタケイ酸塩、オルトケイ酸ナトリウムなどのオルトケイ酸塩、ポリリン酸ナトリウムなどのリン酸塩が挙げられ、中でも、安価であり、取扱いも容易であることから、メタケイ酸ナトリウムなどのメタケイ酸塩が好ましい。これらケイ酸塩も、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
上記(A)金属封鎖剤、(B)アルカリ金属水酸化物、および(C)ケイ酸塩の配合割合(以下、いずれも重量比)は、毛髪除去性が優れる点から、(A)/(B)=4/1〜1/4が好ましく、3/2〜2/3がより好ましい。また、やはり毛髪除去性が優れる点から、(A)/(C)=9/1〜1/9が好ましく、4/1〜4/3がより好ましい。さらに、繊維の脆化防止性が優れる点から、(B)/(C)=9/1〜1/9が好ましく、4/1〜4/3がより好ましい。
【0017】
(D)漂白剤及びその他の成分
本発明の毛髪除去剤には、上記以外の成分として、過酸化水素などの酸素系漂白剤、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系漂白剤を必要に応じて使用することができる。漂白剤を使用する場合のその使用量は、特に限定されないが、通常は10〜50重量%程度である。
【0018】
なお、漂白剤は本発明の毛髪除去剤に配合してもよく、毛髪除去剤の水溶液を調製する際に添加することもできる。
【0019】
また、本発明の目的を離れない範囲であれば、再汚染防止剤、抗菌剤、蛍光剤等の繊維用洗浄剤に通常含まれる添加物を含有させることもできる。
【0020】
本発明の毛髪除去剤は、上記(A)〜(C)成分、及び必要に応じて使用される漂白剤等の他の添加物を混合することにより得られる。
【0021】
2.毛髪除去方法
本発明の毛髪除去方法は、上記各成分からなる本発明の毛髪除去剤を水に溶解させて水溶液にして使用する。水溶液の上記(A)〜(C)成分の濃度は、(A)〜(C)各成分の総量(固形分)で0.01〜2重量%が好ましく、0.1〜1重量%がより好ましい。
【0022】
本発明の毛髪除去方法は、毛髪が付着した繊維製品を上記本発明の毛髪除去剤の水溶液に浸漬する工程を含み、必要に応じて、浸漬したまま静置してもよく、撹拌や振とう等の機械的処理を加えてもよい。
【0023】
浸漬の際の水溶液の温度は特に限定されず、10〜80℃の低〜中温度域でも優れた毛髪除去効果が得られるが、タンパク質であることから、40〜70℃が好ましい。撹拌洗浄又は浸漬する時間は、特に限定されないが、実用性を考えると20〜30分間程度が好ましい。
【0024】
浸漬工程後は繊維製品を絞り、水で十分にすすぐのが好ましい。すすぎの後は、繊維製品の使用目的等に応じて乾燥し、あるいは湿潤状態のまま次の工程に供すればよい。
【0025】
本発明により毛髪除去対象物は特に限定されないが、典型的には、おしぼり、モップ、マットなどのダストコントロール用製品、シーツ・シーツカバーなどのリネン製品などの繊維製品が該当する。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、特に言及しない限り、配合量等は重量基準とする。
【0027】
[実施例1〜7、比較例1〜6]
(A)金属封鎖剤、(B)アルカリ金属水酸化物、(C)ケイ酸塩、および、必要に応じて(D)酸素系漂白剤または塩素系漂白剤を水に溶解し、各成分が表1に記載の濃度で含まれる毛髪除去剤の水溶液を調製し、表に示した所定の温度に調整した。表1に示した各使用薬剤の詳細は以下の通りである。
【0028】
(A)金属封鎖剤
ニトリロ三酢酸(商品名:キレスト3NTA、キレスト(株)製)
エチレンジアミン四酢酸(商品名:キレスト2D、キレスト(株)製)
(B)アルカリ金属水酸化物
水酸化ナトリウム
水酸化カリウム
(C)ケイ酸塩
メタケイ酸ナトリウム(商品名:メタケイ酸ソーダ5水塩、石田化学工業(株)製)
オルトケイ酸ナトリウム(商品名:オルソケイ酸ソーダ、石田化学工業(株)製)
(D)その他の成分
酸素系漂白剤:35重量%過酸化水素水
塩素系漂白剤:12重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液
【0029】
ターゴトメーター(商品名:ターゴトメーター 型番TM−4、(株)大栄科学精器製作所製)に綿金巾(30cm×30cm)と長さ5cmの人毛0.1gとを入れ、ここに、綿金巾/毛髪除去剤の水溶液=1/33(重量比)となるように毛髪除去剤の水溶液を入れ、100rpmの条件で15分間洗濯した。洗濯後は1分間脱水し、すすぎと脱水を2回繰り返し、自然乾燥させた。なお、上記「すすぎ」は、綿金巾/水=1/33(重量比)となる割合で水を入れ、1回につき2分間撹拌することにより行った。
【0030】
上記より得られた綿金巾につき、毛髪除去性、生地の脆化を下記の方法で評価を行った。
【0031】
<評価方法>
(毛髪除去性)
目視にて観察し、毛髪の有無を確認した。
○:毛髪が残っていない。
×:毛髪が残っている。
【0032】
(生地の強度(脆化防止))
綿金巾の1片を固定し、反対側片の中央部分に、重さ5kgの分銅をつけてから、生地が裁断されるまでの時間を測定した。
◎:20分以上裁断なし。
○:10分では裁断しないが、20分までに裁断する。
×:10分未満で裁断する。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示されたように、実施例のものはいずれも、繊維の脆弱化を防止しつつ、毛髪除去効果に優れることが確認された。一方、比較例のものはいずれも十分な毛髪除去効果が得られず、また、比較例4を除き、生地の脆弱化も顕著であった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の毛髪除去剤および毛髪除去方法は、例えば、おしぼり、モップ、マットなどのダストコントロール用製品、シーツ・シーツカバーなどのリネン製品などの繊維製品から毛髪を除去するために用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)金属封鎖剤、(B)アルカリ金属水酸化物、及び(C)ケイ酸塩を含有してなる毛髪除去剤。
【請求項2】
前記(A)金属封鎖剤、(B)アルカリ金属水酸化物、及び(C)ケイ酸塩の配合割合が重量比で、(A)/(B)=4/1〜1/4であり、(A)/(C)=9/1〜1/9であり、かつ(B)/(C)=9/1〜1/9であることを特徴とする、請求項1に記載の毛髪除去剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の毛髪除去剤の水溶液を調製し、
毛髪が付着した繊維製品をこの水溶液に浸漬する工程を含むことを特徴とする毛髪除去方法。

【公開番号】特開2013−23650(P2013−23650A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162021(P2011−162021)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】