気体の捕集装置およびその評価分析方法
【課題】クリーンルーム内の、雰囲気気体と、製造プロセスで使用されるプロセスガスとに含まれる無機系不純物成分の評価分析を簡便に感度良く行うことのできる気体の捕集装置およびその評価分析方法を提供すること。
【解決手段】測定気体の吸入口15とインピンジャーの吸入口16の間を接続する管の中間に放電を生じさせる放電電極13を備える気体の捕集装置とする。
【解決手段】測定気体の吸入口15とインピンジャーの吸入口16の間を接続する管の中間に放電を生じさせる放電電極13を備える気体の捕集装置とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム内の製造環境における、雰囲気気体と、磁気記録媒体の製造や半導体ウエハの製造などで使用される各種プロセスガスとに含まれる無機系不純物成分の管理によるクリーンルームの清浄度の制御を目的とする気体の捕集装置およびその評価分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム内での製造を必要とする、磁気記録媒体の高精度化や半導体ウエハに形成される半導体デバイスの設計パターンの微細化、高機能化に伴い、磁気記録媒体、半導体ウエハ、製造装置および製造プロセスなどの清浄化への要求がますます強くなってきている。たとえば、クリーンルーム内の、雰囲気気体と、磁気記録媒体の製造プロセスや半導体ウエハプロセスなどにおいて使用される各種プロセスガスとに含まれる塩素化合物、硫化物、硝酸、フッ素化合物などの無機系不純物成分は酸性物質となり易い。これらの無機系不純物成分が半導体ウエハ表面あるいはそのプロセスに使用される製造設備に付着すると、半導体特性を著しく劣化させるあるいは腐食を起こすなどの悪影響を及ぼすことが知られている。また酸化窒素ガスや酸化硫黄ガスはアンモニア等と化学反応して塩として析出し、パターン不良を発生させる原因となることが知られている。磁気記録媒体に対しても同様の問題がある。そこで、クリーンルーム内の、雰囲気気体と、磁気記録媒体の製造プロセスや半導体ウエハプロセスなどで使用されるプロセスガスとに含まれる無機系不純物成分を定常的に捕集およびその分析を行い、その分析結果に基いて無機系不純物成分を一定レベル以下に管理することによるクリーンルーム内の製造環境における清浄度の制御がますます重要になっている。
【0003】
従来の無機系不純物成分を含む気体の捕集および分析のフローは、半導体ウエハプロセスの場合、まず、クリーンルーム内の、雰囲気気体と、製造プロセスに使用されるプロセスガスとに含まれる無機系不純物成分を捕集する捕集工程があって、次に、前記工程で捕集された無機系不純物成分を含む捕集溶液を各分析装置にかけて評価分析する分析工程を経る方法が一般的である。図8に、従来の捕集工程と分析工程とで、それぞれ既に行われている各種の無機系不純物成分の補集方法および評価分析方法をまとめた。補集方法としてはイオンピンジャーバブリングによる補集の他に、シリコンウエハ補集、吸引補集、吸着剤補集などが知られている。また、評価分析方法としては、イオンクロマトグラフィー分析、イオンクロマトグラフ質量分析、誘導結合プラズマ発光分析、誘導結合プラズマ発光質量分析、大気圧イオン化質量分析などが用いられる。以下、これらの従来の無機系不純物成分の補集方法および評価分析方法について具体的に説明する。
クリーンルーム内の、雰囲気気体や製造プロセスで使用されるプロセスガスに含まれる無機系不純物成分の第一の捕集方法および捕集装置を図2および図3に示す。第一の捕集方法および捕集装置は、インピンジャー3に純水または希酸などの捕集溶液4を入れ、前記クリーンルーム内の、雰囲気気体1や前記プロセスガス5を吸引ポンプ2でインピンジャー3に吸引し捕集溶液4にバブリングさせる構成を有している。このようにして、純水または希酸などからなる捕集溶液4中に、吸引気体中に含まれる無機系不純物成分を捕集し、イオンクロマトグラフィー法で分析し評価している。
【0004】
クリーンルーム内の、雰囲気気体や製造プロセスで使用されるプロセスガスに含まれる無機系不純物成分の第二の捕集方法および捕集装置を図4および図5に示す。この第二の捕集方法および捕集装置は、据付台7に立てられたシリコンウエハ6や磁気記録媒体をクリーンルームやプロセスガスのパイプライン内に設置し、吸引気体中に含まれる無機系不純物成分をシリコンウエハ6や磁気記録媒体上に捕集し、続いて水で抽出しイオンクロマトグラフィー法で分析し評価する方法である。また、フッ酸蒸気分離後に原子吸光または誘導結合プラズマ発光分析装置または誘導結合プラズマ質量分析による方法で無機系不純物成分を評価分析することも好ましい。
クリーンルーム内の、雰囲気気体や製造プロセスで使用されるプロセスガスに含まれる無機系不純物成分の第三の捕集方法および装置を図6および図7に示す。この第三の捕集方法および捕集装置は、樹脂、ガラス、金属などからなる中空の捕集容器9または内部にゼオライト、コロイダルシリカ、活性炭などの吸着剤10をつめた捕集容器9に、製造環境の雰囲気気体1やプロセスガス5を中空の捕集容器9に直接取り込む、あるいは粒状やフィルター形状の吸着剤10に通過させて捕集する構造を有する。または、中空の補集容器に取り込んだ吸引ガスを図示しないインピンジャーに送り込み捕集溶液にバブリングさせて捕集される無機系不純物成分をたとえば、イオンクロマトグラフィー分析装置や大気圧イオン化質量分析装置により分析し評価する評価分析方法であり、補集装置である。図6および図7において、符号2は吸引ポンプであり、符号8は開閉バルブである。
【0005】
一方、このような気体中に含まれる不純物成分の評価分析方法に関しては、次のような公知技術が知られている。大気圧イオン化質量分析装置の前段に、評価分析対象の大気から水分を除去した大気を得るための大気導入ユニットを設けることにより、水分起源のイオンがノイズとして発生することを回避して大気中の微量不純物の高精度な測定を可能にする分析装置について公開されている(特許文献1)。
気体排出導入口以外は密閉構造にされる二つの直列配列の容器を有し、後段の容器の後流側にはポンプが配設される構造を有し、各容器には捕集溶液の純水がほぼ1/4〜3/4程まで収納され、捕集溶液の上部は導入気体の流通空間となる構成であって、ポンプが作動すると気体が容器内に流入し気体中のアンモニアが捕集溶液に捕集される気体捕集装置について発表されている(特許文献2)。
クリーンルーム空気中に存在する塩基性系、酸性系および有機系の微粒子状あるいはガス状、分子状の化学汚染不純物を構成している各種カチオンと各種アニオンのイオン構成を溶解性の強いあるいは解離性の強い塩構成のものから連続的に順次第一補集容器と第二補集容器中の捕集溶液に溶解および解離反応をおこさせて高感度、高精度に捕集する気中化学汚染不純物捕集方法についても知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平6−281539号公報(要約)
【特許文献2】特開平11−117977号公報(要約)
【特許文献3】特開2003−302317号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の従来技術には次に示すような欠点がある。前述の第一の捕集方法および捕集装置であるインピンジャーによるバブリング法では、一定流量と時間で純水等の捕集溶液中に雰囲気気体、プロセスガス等を流して、捕集溶液中に無機系不純物成分を吸収させるが、純水への溶解度には無機系不純物成分による違いがある。たとえば、二酸化硫黄の溶解度に対して、硫化水素は1/10以下、六フッ化イオウは1/5000以下、二酸化窒素は1/50であり、捕集溶液中に溶解する無機系不純物成分は元の雰囲気気体やプロセスガス中における無機系不純物成分の含有比率を必ずしも反映していないことが問題である。
シリコンウエハに無機系不純物成分を吸着させる前記第二の捕集方法および捕集装置では、シリコンウエハなどの半導体ウエハの表面状態、たとえば、酸化膜の有無や酸化膜の厚さで無機系不純物成分の吸着の程度に差がある。従って、無機系不純物成分の捕集の際にはシリコンウエハの表面状態を均一に整えるため、シリコンウエハの洗浄工程や酸化膜生成工程を設ける必要があり、非常に大きな手間が発生する。また酸やアルカリをシリコンウエハ表面に強制的に塗布した場合、たとえばシリコンウエハに吸着した無機系不純物成分を水抽出法により抽出した後、たとえばイオンクロマトグラフィーや原子吸光や誘導結合プラズマ発光分光分析装置または誘導結合プラズマ質量分析装置などで測定する時に、塗布した酸、アルカリ物質が妨害となり、検出下限レベルが上がる可能性がある。
【0007】
前述の第三の捕集方法および捕集装置は、製造環境の雰囲気気体、プロセスガスなどに含まれる無機系不純物成分量がppb〜ppt(1/109〜1/1012)レベル以下と低い場合の方法である。このような無機系不純物成分の含有レベルが低い場合は、捕集容器からの不純物の溶出レベルが問題となる。その溶出レベルを下げるためには、長期間の捕集容器エージングを行う必要があり効率が悪い。吸着剤を用いる方法も、捕集したい無機系不純物成分に対して、各々の吸着に適した吸着剤をすべて揃えて捕集する必要がある。また、捕集した後、たとえばイオンクロマトグラフィーや原子吸光や誘導結合プラズマ発光分光分析装置または誘導結合プラズマ質量分析装置などでの測定とそれに伴う無機系不純物抽出作業も個々吸着剤に対応して複数回数必要となり、簡易な捕集および分析方法とは言いがたい。
さらに、前記特許文献1〜3に記載のように、さらに異なる種々の無機系不純物成分の補集分析方法が提案されているものの、クリーンルーム内における製造環境の雰囲気気体中や製造プロセスで使用されるプロセスガス中の無機系不純物成分の評価分析を簡便に感度良く行うことのできる分析方法は見当たらない。
本発明は、以上述べた点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、クリーンルーム内の、雰囲気気体と、製造プロセスで使用されるプロセスガスとに含まれる無機系不純物成分の評価分析を簡便に感度良く行うことのできる気体の捕集装置およびその評価分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特許請求の範囲の請求項1記載の発明によれば、前記本発明の目的は、測定気体の吸入口とインピンジャーの吸入口の間を接続する管の中間に放電を生じさせる放電電極を備える気体の捕集装置とすることにより達成される。
特許請求の範囲の請求項2記載の発明によれば、前記放電電極は、コロナ、沿面および短絡放電を発することができる針状の先端を有し、1000V〜10000Vの直流、交流またはパルス直流、パルス交流の電圧を印加できる電源に接続されている特許請求の範囲の請求項1記載の気体の捕集装置とする。
特許請求の範囲の請求項3記載の発明によれば、測定気体を吸入し、放電を生じている放電空間に接触させてから、インピンジャー内の捕集溶液にバブリングさせ、排出口から測定気体を捕集し、気体分析装置により気体の清浄度を検出する気体の評価分析方法とする。
特許請求の範囲の請求項4記載の発明によれば、測定気体が半導体製造または磁気記録媒体製造における雰囲気気体またはプロセスに使用するガスである特許請求の範囲の請求項3記載の気体の評価分析方法とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クリーンルーム内の、雰囲気気体と、製造プロセスで使用されるプロセスガスとに含まれる無機系不純物成分の評価分析を簡便に感度良く行うことのできる気体の捕集装置およびその評価分析方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明にかかる気体の捕集装置およびその評価分析方法について、図面を参照して詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
図1は本発明にかかる、雰囲気気体とプロセスガスとに含まれる無機系不純物成分の捕集および分析方法フロー図である。図9は本発明にかかる、測定対象気体が雰囲気気体の場合における、放電工程付加したインピンジャーによる捕集装置の概略断面図である。図10は本発明にかかる、クリーンルーム内の、雰囲気気体中の無機系不純物イオン成分の測定結果を示す棒グラフである。図11は本発明にかかる、測定対象気体がプロセスガスの場合における放電工程付加したインピンジャーを用いた捕集装置の概略断面図である。図12は本発明にかかる、窒素ガスおよび空気中の無機系不純物イオン成分の測定結果を示す棒グラフである。
本発明にかかる気体の捕集方法および捕集装置により捕集される無機系不純物成分としては、たとえば、フッ素化合物、塩素化合物、窒素化合物、臭素化合物、燐化合物、硫化物などの酸性成分がある。これらの無機系不純物成分を吸収溶液、たとえば、純水を用いて効率よく捕集するためには、前記無機不純物系成分は純水中を通過する前に、それぞれフッ素イオン、塩素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、臭素イオン、硫酸イオン等にイオン化され易い状態で存在することが望ましいと考えられる。
【0011】
そのために、インピンジャーバブリングされる前に、測定対象のクリーンルーム内の、雰囲気気体や製造プロセスで使用されるプロセスガスは、まず針状の放電電極の先端からコロナあるいは沿面、短絡放電が発生している空間を通過させられる。この放電は交流、直流、パルス交流、パルス直流のいずれかであって1000Vから10000Vの高電圧を印加した、シリコン、タングステン、鉄、ステンレス、チタンなどの導体からなる針状の放電電極の先端から発生する。この針状の放電電極は、放電を発生させる目的であれば、これ以外の材料を用いても構わない。放電空間中を通過する際に、測定対象の前記ガスに含まれる無機系不純物成分はエレクトロン付与および脱離によりイオン化される。たとえば、フッ素化合物、塩素化合物、窒素酸化物、イオウ酸化物、硫化水素、六フッ化イオウなどの無機系不純物成分は放電処理により、それぞれ前述のフッ素イオン、塩素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、臭素イオン、硫酸イオンとなる。その後、測定対象の前記ガスをインピンジャー内の純水中にてバブリングさせる。バブリング時の吸引は、特に流量、時間などの吸引量に制限はない。またインピンジャー容器についても、1本ではなく2本以上の接続についても制限はない。この結果、測定対象の前記ガスに含まれる無機系不純物成分は純水に溶解し易いようにイオン化されているので、インピンジャー内の吸収溶液である純水により効率よく捕集される。
【実施例1】
【0012】
図9は実施例1にかかる無機系不純物成分を含む雰囲気気体の捕集装置の概略断面図である。クリーンルーム内の雰囲気気体1を吸引する吸入口15を有する開閉バルブ8とインピンジャー3の吸入口16の間に針状の放電電極13、電源12からなる放電工程部を接続する。インピンジャー3の排出口17の後ろには、開閉バルブ8、吸引ポンプ2、流量計11などを必要に応じて接続する。捕集は、吸引ポンプ2によってインピンジャーを介して前記雰囲気気体1を吸引し、電源12から電圧を供給された放電電極13から発生するコロナ放電空間に接触するように前記雰囲気気体1を通過させてイオン化させ、インピンジャー3内の純水中へ吸引された雰囲気気体をバブリングさせて、純水中にイオン化した無機系不純物成分を溶解させる。捕集終了後開閉バルブ8を閉じて密閉する。この時、各部を接続する管(パイプまたはチューブ)類の材質は炭化水素チューブ、シリコーンチューブ、石英ガラスチューブ、ステンレスチューブなどであるとともに、材料中にフッ素、窒素、硫黄、臭素、燐、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの無機系不純物成分が10%以下であることが望ましい。なぜなら、放電の際、生成するイオン、エレクトロンなどにより、チューブ中の無機系不純物成分がイオン化していしまい、コンタミネーションとなるからである。また、チューブの長さに特に制限はない。この図9に示す気体の捕集装置を清浄度管理および制御の対象となるクリーンルームやその中の製造現場に持ち込み、そこにおける雰囲気気体を吸引して捕集装置にバブリングさせ、無機系不純物成分を捕集する。捕集した無機系不純物成分を所要の分析装置により分析し、清浄度を評価し、フィードバックすることにより、クリーンルーム内の清浄度を適切に管理することができる。
【0013】
実施例1では、タングステンの放電電極に±5500Vの電圧をかけ、クリーンルーム雰囲気気体を、純水100ml中に2l/分の吸引流量で2時間、合計240lをインピンジャー容器1本で吸引した。このバブリングして捕集した純水中の無機系不純物成分をイオンクロマトグラフィー分析装置で評価した。本発明では、分析装置そのものについて特に限定することはなく、必要に応じて異なる分析方法、たとえば、イオンクロマトグラフィー質量分析でもよい。
実施例1により、クリーンルームの2測定点で捕集した無機系不純物成分に対する評価結果を図10の棒グラフに示す。比較例として、ほぼ同じ測定点で放電工程を経ないで従来のバブリングして捕集したことだけが異なる無機系不純物成分の評価結果を図10の横軸に並べて示す。図10は、フッ化物イオン、硫化物イオン、NO2イオン、NO3イオンについて、それぞれ縦軸に無機系不純物成分濃度をとり、横軸にはクリーンルーム内の任意の2箇所の測定点における実施例1と比較例を示す。本発明にかかる放電工程を経た雰囲気気体中のイオン成分の純水への溶け込みは、比較例の放電工程を持たないバブリングでの捕集に比較して、3倍から64倍の高い溶解効果を有し、極めて効率よく捕集されることが分かる。また、比較例に示すように、従来の捕集方法ではインピンジャーでは無機系不純物成分が検出されないまたは検出レベル以下の場合でも、本発明にかかる放電工程により無機系不純物成分をイオン化させると、無機系不純物成分の捕集が可能なことがわかる。従って、本発明によれば、この放電工程により、無機系不純物成分を効率良く捕集できることが明らかである。
【実施例2】
【0014】
図11は実施例2にかかる無機系不純物成分を含むプロセスガスの捕集装置の概略断面図である。半導体ウエハプロセスに使用される窒素ガスパイプラインまたは空気パイプラインにガスの吸入口15および開閉バルブ8を接続し、前記実施例1と同様の放電電極13、電源12、インピンジャー3、吸引ポンプ2、流量計11を接続する。この時、連結管(パイプまたはチューブ)は実施例1と同様の趣旨により低不純物材料で構成する。これを測定対象の窒素ガスパイプラインまたは空気パイプラインに接続して、その窒素ガス、空気をバブリングさせて捕集し、評価分析する。
実施例2では、流量10l/分で2時間、合計1200lのガス、空気を吸引した。放電工程を経た窒素ガス、空気ガスをバブリングして捕集した、純水中の無機系不純物成分および金属成分をイオンクロマトグラフィー分析装置またはイオンクロマトグラフィー質量分析装置で評価した。評価結果を図12に示す。
図12には、同時に比較例として、放電工程を経ないでバブリングし捕集した無機系不純物成分の評価結果を示した。本発明にかかる放電工程を経た空気中のイオン成分の純水への溶け込みは、比較例の放電工程を持たないバブリングでの捕集に比較して、2倍から240倍の溶解効果を有し、極めて効率よく捕集されることを示している。この放電工程により、無機系不純物成分を効率良く捕集できることが明らかである。
【実施例3】
【0015】
実施例3として、下記表1に従来法の放電なしによるバブリング捕集と本発明の放電工程を持たせたバブリング捕集の場合について、クリーンルーム内の半導体製造ラインにおける雰囲気気体中の硫酸イオン量を捕集および分析した結果を示す。気体の捕集装置は実施例1と同様の気体の捕集装置である放電工程部、インピンジャー、吸引ポンプ、流量計を用いた。従来の捕集では硫酸イオンが検出されていない半導体製造ラインにおける雰囲気気体でも、本発明にかかる放電工程を設けてバブリングする方法とすることにより捕集効率が向上し、無機系不純物成分の検出が可能なことがわかる。
【0016】
【表1】
以上述べてきたように実施例1〜3によれば、半導体製造プロセスに悪影響を及ぼす恐れのある無機系不純物成分などについて、クリーンルーム内の、雰囲気気体中やプロセスガス、空気中などにおける無機系不純物成分量を簡便に知ることが可能となる。測定気体に含まれる無機系不純物成分量を知ることにより、クリーンルーム内の、雰囲気気体中やプロセスガス中の無機系不純物成分量の管理基準および制御レベルを明確にすることができ、製品の歩留まりおよび信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる、雰囲気気体およびプロセスガス中の無機系不純物成分の捕集および分析方法フロー図である。
【図2】従来の、雰囲気気体を測定対象気体とするインピンジャーによる無機系不純物成分の捕集装置の概略断面図である。
【図3】従来の、プロセスガスを測定対象気体とするインピンジャーによる捕集装置の概略断面図である。
【図4】従来の、雰囲気気体を測定対象気体とする半導体ウエハを用いた捕集装置の概略断面図である。
【図5】従来の、プロセスガスを測定対象気体とする半導体ウエハを用いた捕集装置の概略断面図である。
【図6】従来の、雰囲気気体を測定対象気体とする直接または吸着剤を用いた捕集装置の概略断面図である。
【図7】従来の、プロセスガスを測定対象気体とする直接または吸着剤を用いた捕集装置の概略断面図である。
【図8】従来の、雰囲気気体およびプロセスガス中の無機系不純物成分の捕集および分析方法フロー図である。
【図9】本発明にかかる、雰囲気気体を測定対象気体とする捕集装置の概略断面図である。
【図10】本発明にかかる、クリーンルーム内の雰囲気気体中の無機系不純物イオン成分の測定結果を示す棒グラフである。
【図11】本発明にかかる、プロセスガスを測定対象気体とする捕集装置の概略断面図である。
【図12】本発明にかかる、窒素ガスおよび空気中の無機系不純物イオン成分の測定結果を示す棒グラフである。
【符号の説明】
【0018】
1 雰囲気気体
2 吸引ポンプ
3 インピンジャー
4 捕集溶液
5 プロセスガス
6 シリコンウエハ
7 据付台
8 開閉バルブ
9 捕集容器
10 吸着剤
11 流量計
12 電源
13 放電電極
15、16 吸入口
17 排出口。
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム内の製造環境における、雰囲気気体と、磁気記録媒体の製造や半導体ウエハの製造などで使用される各種プロセスガスとに含まれる無機系不純物成分の管理によるクリーンルームの清浄度の制御を目的とする気体の捕集装置およびその評価分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム内での製造を必要とする、磁気記録媒体の高精度化や半導体ウエハに形成される半導体デバイスの設計パターンの微細化、高機能化に伴い、磁気記録媒体、半導体ウエハ、製造装置および製造プロセスなどの清浄化への要求がますます強くなってきている。たとえば、クリーンルーム内の、雰囲気気体と、磁気記録媒体の製造プロセスや半導体ウエハプロセスなどにおいて使用される各種プロセスガスとに含まれる塩素化合物、硫化物、硝酸、フッ素化合物などの無機系不純物成分は酸性物質となり易い。これらの無機系不純物成分が半導体ウエハ表面あるいはそのプロセスに使用される製造設備に付着すると、半導体特性を著しく劣化させるあるいは腐食を起こすなどの悪影響を及ぼすことが知られている。また酸化窒素ガスや酸化硫黄ガスはアンモニア等と化学反応して塩として析出し、パターン不良を発生させる原因となることが知られている。磁気記録媒体に対しても同様の問題がある。そこで、クリーンルーム内の、雰囲気気体と、磁気記録媒体の製造プロセスや半導体ウエハプロセスなどで使用されるプロセスガスとに含まれる無機系不純物成分を定常的に捕集およびその分析を行い、その分析結果に基いて無機系不純物成分を一定レベル以下に管理することによるクリーンルーム内の製造環境における清浄度の制御がますます重要になっている。
【0003】
従来の無機系不純物成分を含む気体の捕集および分析のフローは、半導体ウエハプロセスの場合、まず、クリーンルーム内の、雰囲気気体と、製造プロセスに使用されるプロセスガスとに含まれる無機系不純物成分を捕集する捕集工程があって、次に、前記工程で捕集された無機系不純物成分を含む捕集溶液を各分析装置にかけて評価分析する分析工程を経る方法が一般的である。図8に、従来の捕集工程と分析工程とで、それぞれ既に行われている各種の無機系不純物成分の補集方法および評価分析方法をまとめた。補集方法としてはイオンピンジャーバブリングによる補集の他に、シリコンウエハ補集、吸引補集、吸着剤補集などが知られている。また、評価分析方法としては、イオンクロマトグラフィー分析、イオンクロマトグラフ質量分析、誘導結合プラズマ発光分析、誘導結合プラズマ発光質量分析、大気圧イオン化質量分析などが用いられる。以下、これらの従来の無機系不純物成分の補集方法および評価分析方法について具体的に説明する。
クリーンルーム内の、雰囲気気体や製造プロセスで使用されるプロセスガスに含まれる無機系不純物成分の第一の捕集方法および捕集装置を図2および図3に示す。第一の捕集方法および捕集装置は、インピンジャー3に純水または希酸などの捕集溶液4を入れ、前記クリーンルーム内の、雰囲気気体1や前記プロセスガス5を吸引ポンプ2でインピンジャー3に吸引し捕集溶液4にバブリングさせる構成を有している。このようにして、純水または希酸などからなる捕集溶液4中に、吸引気体中に含まれる無機系不純物成分を捕集し、イオンクロマトグラフィー法で分析し評価している。
【0004】
クリーンルーム内の、雰囲気気体や製造プロセスで使用されるプロセスガスに含まれる無機系不純物成分の第二の捕集方法および捕集装置を図4および図5に示す。この第二の捕集方法および捕集装置は、据付台7に立てられたシリコンウエハ6や磁気記録媒体をクリーンルームやプロセスガスのパイプライン内に設置し、吸引気体中に含まれる無機系不純物成分をシリコンウエハ6や磁気記録媒体上に捕集し、続いて水で抽出しイオンクロマトグラフィー法で分析し評価する方法である。また、フッ酸蒸気分離後に原子吸光または誘導結合プラズマ発光分析装置または誘導結合プラズマ質量分析による方法で無機系不純物成分を評価分析することも好ましい。
クリーンルーム内の、雰囲気気体や製造プロセスで使用されるプロセスガスに含まれる無機系不純物成分の第三の捕集方法および装置を図6および図7に示す。この第三の捕集方法および捕集装置は、樹脂、ガラス、金属などからなる中空の捕集容器9または内部にゼオライト、コロイダルシリカ、活性炭などの吸着剤10をつめた捕集容器9に、製造環境の雰囲気気体1やプロセスガス5を中空の捕集容器9に直接取り込む、あるいは粒状やフィルター形状の吸着剤10に通過させて捕集する構造を有する。または、中空の補集容器に取り込んだ吸引ガスを図示しないインピンジャーに送り込み捕集溶液にバブリングさせて捕集される無機系不純物成分をたとえば、イオンクロマトグラフィー分析装置や大気圧イオン化質量分析装置により分析し評価する評価分析方法であり、補集装置である。図6および図7において、符号2は吸引ポンプであり、符号8は開閉バルブである。
【0005】
一方、このような気体中に含まれる不純物成分の評価分析方法に関しては、次のような公知技術が知られている。大気圧イオン化質量分析装置の前段に、評価分析対象の大気から水分を除去した大気を得るための大気導入ユニットを設けることにより、水分起源のイオンがノイズとして発生することを回避して大気中の微量不純物の高精度な測定を可能にする分析装置について公開されている(特許文献1)。
気体排出導入口以外は密閉構造にされる二つの直列配列の容器を有し、後段の容器の後流側にはポンプが配設される構造を有し、各容器には捕集溶液の純水がほぼ1/4〜3/4程まで収納され、捕集溶液の上部は導入気体の流通空間となる構成であって、ポンプが作動すると気体が容器内に流入し気体中のアンモニアが捕集溶液に捕集される気体捕集装置について発表されている(特許文献2)。
クリーンルーム空気中に存在する塩基性系、酸性系および有機系の微粒子状あるいはガス状、分子状の化学汚染不純物を構成している各種カチオンと各種アニオンのイオン構成を溶解性の強いあるいは解離性の強い塩構成のものから連続的に順次第一補集容器と第二補集容器中の捕集溶液に溶解および解離反応をおこさせて高感度、高精度に捕集する気中化学汚染不純物捕集方法についても知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平6−281539号公報(要約)
【特許文献2】特開平11−117977号公報(要約)
【特許文献3】特開2003−302317号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の従来技術には次に示すような欠点がある。前述の第一の捕集方法および捕集装置であるインピンジャーによるバブリング法では、一定流量と時間で純水等の捕集溶液中に雰囲気気体、プロセスガス等を流して、捕集溶液中に無機系不純物成分を吸収させるが、純水への溶解度には無機系不純物成分による違いがある。たとえば、二酸化硫黄の溶解度に対して、硫化水素は1/10以下、六フッ化イオウは1/5000以下、二酸化窒素は1/50であり、捕集溶液中に溶解する無機系不純物成分は元の雰囲気気体やプロセスガス中における無機系不純物成分の含有比率を必ずしも反映していないことが問題である。
シリコンウエハに無機系不純物成分を吸着させる前記第二の捕集方法および捕集装置では、シリコンウエハなどの半導体ウエハの表面状態、たとえば、酸化膜の有無や酸化膜の厚さで無機系不純物成分の吸着の程度に差がある。従って、無機系不純物成分の捕集の際にはシリコンウエハの表面状態を均一に整えるため、シリコンウエハの洗浄工程や酸化膜生成工程を設ける必要があり、非常に大きな手間が発生する。また酸やアルカリをシリコンウエハ表面に強制的に塗布した場合、たとえばシリコンウエハに吸着した無機系不純物成分を水抽出法により抽出した後、たとえばイオンクロマトグラフィーや原子吸光や誘導結合プラズマ発光分光分析装置または誘導結合プラズマ質量分析装置などで測定する時に、塗布した酸、アルカリ物質が妨害となり、検出下限レベルが上がる可能性がある。
【0007】
前述の第三の捕集方法および捕集装置は、製造環境の雰囲気気体、プロセスガスなどに含まれる無機系不純物成分量がppb〜ppt(1/109〜1/1012)レベル以下と低い場合の方法である。このような無機系不純物成分の含有レベルが低い場合は、捕集容器からの不純物の溶出レベルが問題となる。その溶出レベルを下げるためには、長期間の捕集容器エージングを行う必要があり効率が悪い。吸着剤を用いる方法も、捕集したい無機系不純物成分に対して、各々の吸着に適した吸着剤をすべて揃えて捕集する必要がある。また、捕集した後、たとえばイオンクロマトグラフィーや原子吸光や誘導結合プラズマ発光分光分析装置または誘導結合プラズマ質量分析装置などでの測定とそれに伴う無機系不純物抽出作業も個々吸着剤に対応して複数回数必要となり、簡易な捕集および分析方法とは言いがたい。
さらに、前記特許文献1〜3に記載のように、さらに異なる種々の無機系不純物成分の補集分析方法が提案されているものの、クリーンルーム内における製造環境の雰囲気気体中や製造プロセスで使用されるプロセスガス中の無機系不純物成分の評価分析を簡便に感度良く行うことのできる分析方法は見当たらない。
本発明は、以上述べた点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、クリーンルーム内の、雰囲気気体と、製造プロセスで使用されるプロセスガスとに含まれる無機系不純物成分の評価分析を簡便に感度良く行うことのできる気体の捕集装置およびその評価分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特許請求の範囲の請求項1記載の発明によれば、前記本発明の目的は、測定気体の吸入口とインピンジャーの吸入口の間を接続する管の中間に放電を生じさせる放電電極を備える気体の捕集装置とすることにより達成される。
特許請求の範囲の請求項2記載の発明によれば、前記放電電極は、コロナ、沿面および短絡放電を発することができる針状の先端を有し、1000V〜10000Vの直流、交流またはパルス直流、パルス交流の電圧を印加できる電源に接続されている特許請求の範囲の請求項1記載の気体の捕集装置とする。
特許請求の範囲の請求項3記載の発明によれば、測定気体を吸入し、放電を生じている放電空間に接触させてから、インピンジャー内の捕集溶液にバブリングさせ、排出口から測定気体を捕集し、気体分析装置により気体の清浄度を検出する気体の評価分析方法とする。
特許請求の範囲の請求項4記載の発明によれば、測定気体が半導体製造または磁気記録媒体製造における雰囲気気体またはプロセスに使用するガスである特許請求の範囲の請求項3記載の気体の評価分析方法とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クリーンルーム内の、雰囲気気体と、製造プロセスで使用されるプロセスガスとに含まれる無機系不純物成分の評価分析を簡便に感度良く行うことのできる気体の捕集装置およびその評価分析方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明にかかる気体の捕集装置およびその評価分析方法について、図面を参照して詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
図1は本発明にかかる、雰囲気気体とプロセスガスとに含まれる無機系不純物成分の捕集および分析方法フロー図である。図9は本発明にかかる、測定対象気体が雰囲気気体の場合における、放電工程付加したインピンジャーによる捕集装置の概略断面図である。図10は本発明にかかる、クリーンルーム内の、雰囲気気体中の無機系不純物イオン成分の測定結果を示す棒グラフである。図11は本発明にかかる、測定対象気体がプロセスガスの場合における放電工程付加したインピンジャーを用いた捕集装置の概略断面図である。図12は本発明にかかる、窒素ガスおよび空気中の無機系不純物イオン成分の測定結果を示す棒グラフである。
本発明にかかる気体の捕集方法および捕集装置により捕集される無機系不純物成分としては、たとえば、フッ素化合物、塩素化合物、窒素化合物、臭素化合物、燐化合物、硫化物などの酸性成分がある。これらの無機系不純物成分を吸収溶液、たとえば、純水を用いて効率よく捕集するためには、前記無機不純物系成分は純水中を通過する前に、それぞれフッ素イオン、塩素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、臭素イオン、硫酸イオン等にイオン化され易い状態で存在することが望ましいと考えられる。
【0011】
そのために、インピンジャーバブリングされる前に、測定対象のクリーンルーム内の、雰囲気気体や製造プロセスで使用されるプロセスガスは、まず針状の放電電極の先端からコロナあるいは沿面、短絡放電が発生している空間を通過させられる。この放電は交流、直流、パルス交流、パルス直流のいずれかであって1000Vから10000Vの高電圧を印加した、シリコン、タングステン、鉄、ステンレス、チタンなどの導体からなる針状の放電電極の先端から発生する。この針状の放電電極は、放電を発生させる目的であれば、これ以外の材料を用いても構わない。放電空間中を通過する際に、測定対象の前記ガスに含まれる無機系不純物成分はエレクトロン付与および脱離によりイオン化される。たとえば、フッ素化合物、塩素化合物、窒素酸化物、イオウ酸化物、硫化水素、六フッ化イオウなどの無機系不純物成分は放電処理により、それぞれ前述のフッ素イオン、塩素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、臭素イオン、硫酸イオンとなる。その後、測定対象の前記ガスをインピンジャー内の純水中にてバブリングさせる。バブリング時の吸引は、特に流量、時間などの吸引量に制限はない。またインピンジャー容器についても、1本ではなく2本以上の接続についても制限はない。この結果、測定対象の前記ガスに含まれる無機系不純物成分は純水に溶解し易いようにイオン化されているので、インピンジャー内の吸収溶液である純水により効率よく捕集される。
【実施例1】
【0012】
図9は実施例1にかかる無機系不純物成分を含む雰囲気気体の捕集装置の概略断面図である。クリーンルーム内の雰囲気気体1を吸引する吸入口15を有する開閉バルブ8とインピンジャー3の吸入口16の間に針状の放電電極13、電源12からなる放電工程部を接続する。インピンジャー3の排出口17の後ろには、開閉バルブ8、吸引ポンプ2、流量計11などを必要に応じて接続する。捕集は、吸引ポンプ2によってインピンジャーを介して前記雰囲気気体1を吸引し、電源12から電圧を供給された放電電極13から発生するコロナ放電空間に接触するように前記雰囲気気体1を通過させてイオン化させ、インピンジャー3内の純水中へ吸引された雰囲気気体をバブリングさせて、純水中にイオン化した無機系不純物成分を溶解させる。捕集終了後開閉バルブ8を閉じて密閉する。この時、各部を接続する管(パイプまたはチューブ)類の材質は炭化水素チューブ、シリコーンチューブ、石英ガラスチューブ、ステンレスチューブなどであるとともに、材料中にフッ素、窒素、硫黄、臭素、燐、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの無機系不純物成分が10%以下であることが望ましい。なぜなら、放電の際、生成するイオン、エレクトロンなどにより、チューブ中の無機系不純物成分がイオン化していしまい、コンタミネーションとなるからである。また、チューブの長さに特に制限はない。この図9に示す気体の捕集装置を清浄度管理および制御の対象となるクリーンルームやその中の製造現場に持ち込み、そこにおける雰囲気気体を吸引して捕集装置にバブリングさせ、無機系不純物成分を捕集する。捕集した無機系不純物成分を所要の分析装置により分析し、清浄度を評価し、フィードバックすることにより、クリーンルーム内の清浄度を適切に管理することができる。
【0013】
実施例1では、タングステンの放電電極に±5500Vの電圧をかけ、クリーンルーム雰囲気気体を、純水100ml中に2l/分の吸引流量で2時間、合計240lをインピンジャー容器1本で吸引した。このバブリングして捕集した純水中の無機系不純物成分をイオンクロマトグラフィー分析装置で評価した。本発明では、分析装置そのものについて特に限定することはなく、必要に応じて異なる分析方法、たとえば、イオンクロマトグラフィー質量分析でもよい。
実施例1により、クリーンルームの2測定点で捕集した無機系不純物成分に対する評価結果を図10の棒グラフに示す。比較例として、ほぼ同じ測定点で放電工程を経ないで従来のバブリングして捕集したことだけが異なる無機系不純物成分の評価結果を図10の横軸に並べて示す。図10は、フッ化物イオン、硫化物イオン、NO2イオン、NO3イオンについて、それぞれ縦軸に無機系不純物成分濃度をとり、横軸にはクリーンルーム内の任意の2箇所の測定点における実施例1と比較例を示す。本発明にかかる放電工程を経た雰囲気気体中のイオン成分の純水への溶け込みは、比較例の放電工程を持たないバブリングでの捕集に比較して、3倍から64倍の高い溶解効果を有し、極めて効率よく捕集されることが分かる。また、比較例に示すように、従来の捕集方法ではインピンジャーでは無機系不純物成分が検出されないまたは検出レベル以下の場合でも、本発明にかかる放電工程により無機系不純物成分をイオン化させると、無機系不純物成分の捕集が可能なことがわかる。従って、本発明によれば、この放電工程により、無機系不純物成分を効率良く捕集できることが明らかである。
【実施例2】
【0014】
図11は実施例2にかかる無機系不純物成分を含むプロセスガスの捕集装置の概略断面図である。半導体ウエハプロセスに使用される窒素ガスパイプラインまたは空気パイプラインにガスの吸入口15および開閉バルブ8を接続し、前記実施例1と同様の放電電極13、電源12、インピンジャー3、吸引ポンプ2、流量計11を接続する。この時、連結管(パイプまたはチューブ)は実施例1と同様の趣旨により低不純物材料で構成する。これを測定対象の窒素ガスパイプラインまたは空気パイプラインに接続して、その窒素ガス、空気をバブリングさせて捕集し、評価分析する。
実施例2では、流量10l/分で2時間、合計1200lのガス、空気を吸引した。放電工程を経た窒素ガス、空気ガスをバブリングして捕集した、純水中の無機系不純物成分および金属成分をイオンクロマトグラフィー分析装置またはイオンクロマトグラフィー質量分析装置で評価した。評価結果を図12に示す。
図12には、同時に比較例として、放電工程を経ないでバブリングし捕集した無機系不純物成分の評価結果を示した。本発明にかかる放電工程を経た空気中のイオン成分の純水への溶け込みは、比較例の放電工程を持たないバブリングでの捕集に比較して、2倍から240倍の溶解効果を有し、極めて効率よく捕集されることを示している。この放電工程により、無機系不純物成分を効率良く捕集できることが明らかである。
【実施例3】
【0015】
実施例3として、下記表1に従来法の放電なしによるバブリング捕集と本発明の放電工程を持たせたバブリング捕集の場合について、クリーンルーム内の半導体製造ラインにおける雰囲気気体中の硫酸イオン量を捕集および分析した結果を示す。気体の捕集装置は実施例1と同様の気体の捕集装置である放電工程部、インピンジャー、吸引ポンプ、流量計を用いた。従来の捕集では硫酸イオンが検出されていない半導体製造ラインにおける雰囲気気体でも、本発明にかかる放電工程を設けてバブリングする方法とすることにより捕集効率が向上し、無機系不純物成分の検出が可能なことがわかる。
【0016】
【表1】
以上述べてきたように実施例1〜3によれば、半導体製造プロセスに悪影響を及ぼす恐れのある無機系不純物成分などについて、クリーンルーム内の、雰囲気気体中やプロセスガス、空気中などにおける無機系不純物成分量を簡便に知ることが可能となる。測定気体に含まれる無機系不純物成分量を知ることにより、クリーンルーム内の、雰囲気気体中やプロセスガス中の無機系不純物成分量の管理基準および制御レベルを明確にすることができ、製品の歩留まりおよび信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる、雰囲気気体およびプロセスガス中の無機系不純物成分の捕集および分析方法フロー図である。
【図2】従来の、雰囲気気体を測定対象気体とするインピンジャーによる無機系不純物成分の捕集装置の概略断面図である。
【図3】従来の、プロセスガスを測定対象気体とするインピンジャーによる捕集装置の概略断面図である。
【図4】従来の、雰囲気気体を測定対象気体とする半導体ウエハを用いた捕集装置の概略断面図である。
【図5】従来の、プロセスガスを測定対象気体とする半導体ウエハを用いた捕集装置の概略断面図である。
【図6】従来の、雰囲気気体を測定対象気体とする直接または吸着剤を用いた捕集装置の概略断面図である。
【図7】従来の、プロセスガスを測定対象気体とする直接または吸着剤を用いた捕集装置の概略断面図である。
【図8】従来の、雰囲気気体およびプロセスガス中の無機系不純物成分の捕集および分析方法フロー図である。
【図9】本発明にかかる、雰囲気気体を測定対象気体とする捕集装置の概略断面図である。
【図10】本発明にかかる、クリーンルーム内の雰囲気気体中の無機系不純物イオン成分の測定結果を示す棒グラフである。
【図11】本発明にかかる、プロセスガスを測定対象気体とする捕集装置の概略断面図である。
【図12】本発明にかかる、窒素ガスおよび空気中の無機系不純物イオン成分の測定結果を示す棒グラフである。
【符号の説明】
【0018】
1 雰囲気気体
2 吸引ポンプ
3 インピンジャー
4 捕集溶液
5 プロセスガス
6 シリコンウエハ
7 据付台
8 開閉バルブ
9 捕集容器
10 吸着剤
11 流量計
12 電源
13 放電電極
15、16 吸入口
17 排出口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定気体の吸入口とインピンジャーの吸入口の間を接続する管の中間に放電を生じさせる放電電極を備えることを特徴とする気体の捕集装置。
【請求項2】
前記放電電極は、コロナ、沿面および短絡放電を発することができる針状の先端を有し、1000V〜10000Vの直流、交流またはパルス直流、パルス交流の電圧を印加できる電源に接続されていることを特徴とする請求項1記載の気体の捕集装置。
【請求項3】
測定気体を吸入し、放電を生じている放電空間に接触させてから、インピンジャー内の溶液にバブリングさせ、排出口から測定気体を捕集し、気体分析装置により気体の清浄度を検出することを特徴とする気体の評価分析方法。
【請求項4】
測定気体が半導体製造または記録媒体製造における雰囲気気体またはプロセスに使用するガスであることを特徴とする請求項3記載の気体の評価分析方法。
【請求項1】
測定気体の吸入口とインピンジャーの吸入口の間を接続する管の中間に放電を生じさせる放電電極を備えることを特徴とする気体の捕集装置。
【請求項2】
前記放電電極は、コロナ、沿面および短絡放電を発することができる針状の先端を有し、1000V〜10000Vの直流、交流またはパルス直流、パルス交流の電圧を印加できる電源に接続されていることを特徴とする請求項1記載の気体の捕集装置。
【請求項3】
測定気体を吸入し、放電を生じている放電空間に接触させてから、インピンジャー内の溶液にバブリングさせ、排出口から測定気体を捕集し、気体分析装置により気体の清浄度を検出することを特徴とする気体の評価分析方法。
【請求項4】
測定気体が半導体製造または記録媒体製造における雰囲気気体またはプロセスに使用するガスであることを特徴とする請求項3記載の気体の評価分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−175063(P2009−175063A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15759(P2008−15759)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】
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