説明

気体を含まない流体チャンバ

PCR用の気体を含まない流体チャンバ。本発明は、気体を含まない充填のための、ポリメラーゼ連鎖反応を実施するのに適した流体チャンバを有する装置に関する。このような装置は、例えば分子診断の分野において使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばポリメラーゼ連鎖反応を実施するのに適した流体チャンバを有する装置に関する。このような装置は、例えば分子診断の分野において使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
分子診断の分野において、マイクロフルイディック装置を使用することは、今日では一般的である。このようなマイクロフルイディック装置又はマイクロフルイディックシステムは、一般に、異なる流体チャンバの間の連絡を提供するチャネルによって接続されるチャンバのネットワークを有する。流体チャンバ及びチャネルは、一般に、マイクロスケールの寸法を有し、例えば、チャネルの寸法は、概して、0.1μm乃至約1mmのレンジにある。このようなマイクロフルイディック装置は、米国特許第6,843,281B1号明細書に特に記述されている。
【0003】
分子診断の分野において一般に使用されるプロセスは、いわゆるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。この反応の間、DNAを含む少量(一般に100μl又はそれより少ない)の液体が、DNAの特定の部分を増幅するために熱処理される。
【0004】
このために、プライマの組が、酵素及びデゾキシリボヌクレオチド(dNTP)と共にDNAを含む液体に添加される。液体は、変性、アニール及び伸張の連続的なステップを受ける。変性ステップの間、二本鎖DNAは、一本鎖DNA分子に分離される。アニールステップの間、液体内のDNAの特定の部分に特異的なプライマは、分離された一本鎖にハイブリダイズする。伸長ステップの間、DNAポリメラーゼのような酵素が、プライマを拡張する。一般に、伸長温度は、アニール温度より高く、変性温度は、伸長温度より高い。連続するサイクルの中で変性ステップ、アニールステップ及び伸長ステップを実施することによって、2のレートで少ない量を増幅することが可能である。ここで、nは、サイクルの数を示し、1つのサイクルは、変性、アニール及び伸長ステップを含む。上記の説明は、PCRの基本的な原理に言及しているが、PCRの特化した使用を可能にするための多数の特化したアプローチがある。
【0005】
1つの一般に使用されるPCR技術は、いわゆるリアルタイム蛍光PCR(rtPCR)である。この技術は、PCRの間に、それぞれ異なって標識化されたプライマを使用することに関する。このようなプライマは、別の核酸にアニールされない場合、いかなる蛍光も放出しないが、アニールされ伸長されると、適当な波長によって励起された後、蛍光信号を放出する形で提供されることができる。
【0006】
従って、このアプローチは、PCR反応の実施のオンライン監視を可能にするとともに、適当な較正及び制御処理が並行して実施される場合は、サンプル中に存在するDNAの元の濃度のオンライン決定をも可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PCR反応は、一般に、反応チャンバとも呼ばれる流体チャンバ内で実施され、反応チャンバは、非常に高速レートで、例えば変性、アニール及び伸長温度まで流体チャンバを冷却することを可能にする。本発明の場合、「反応チャンバ」は、「流体チャンバ」の一種であり、すなわち、例えばPCRのような反応が行われることが可能な流体チャンバである。しかしながら、本発明の一般的な考えは、反応チャンバでありうる流体チャンバの気体を含まない(gas-free)充填に関する。
【0008】
PCR反応の間及び特にリアルタイムPCRのオンライン検出の間に今日遭遇する1つの問題は、空気のようなガス気泡が流体チャンバにトラップされることである。
【0009】
流体チャンバの寸法の観点で、このようなトラップされたガス気泡は、PCR反応及び増幅された核酸分子の(オンライン)検出の実施を妨げることがある。
【0010】
従って、絶えず続く関心が、PCR効率及び増幅された核酸生成物の検出の両方を改善するために、気体を含まない充填を可能にする流体チャンバを備える新しいPCRシステムにある。気体を含まない充填を可能にするマイクロフルイディック装置において使用されうる流体チャンバに一般的な関心がある。
【0011】
本発明の1つの目的は、マイクロフルイディック装置において使用されることができる、気体を含まない充填を可能にする流体チャンバを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、PCRに適しており、気体を含まない充填を可能にする流体チャンバを提供することである。
【0013】
後述の説明から明らかになるこれらの及び他の目的は、独立請求項の発明の主題を形成する。本発明の好適な実施形態の幾つかは、従属請求項の発明の主題を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、一実施形態において、流体チャンバに入る流体の通路として機能するのに適した第1のチャネル(2)及び流体チャンバから出る流体の通路として機能するのに適した第2のチャネル(3)と連絡し、少なくとも1つの突出部(4)が、流体チャンバ内に突き出し、前記突出部(4)が、第2のチャネル(3)が流体チャンバに接続されるロケーションに位置付けられている、流体チャンバ(1)に関する。
【0015】
一実施形態において、流体チャンバ(1)内部の前記突出部(4)の表面は、滑らかである。
【0016】
滑らかであるとは、突出部が、それが流体チャンバの壁に接続される基部を除いて、鋭い角をもたないことを意味する。鋭い角では、流体フロント(fluid front)との角度が規定されず、その結果、流体伝播の低減された制御をもたらす。
【0017】
例えば半円形の突出部は、前進する流体フロントが、流体フロントと突出部との間の角度が良好に規定されない鋭いエッジを有する矩形の突出部の場合よりも、より容易に半円形の突出部の滑らかな表面をたどることができるという点で、矩形の突出部にまさる利点を有する。
【0018】
滑らかな形状の例は、楕円形状及び円形状である。
【0019】
原則的に、流体チャンバは、上から見て、滑らかに曲がった壁を有する任意の3次元形状をとりうる。
【0020】
従って、流体チャンバは、上から見ると、円形又は楕円形の断面形状(5)をとりうる。
【0021】
好適には、流体チャンバは、上から見ると円形又は楕円形の断面形状(5)を有する円筒形である。
【0022】
一実施形態において、流体チャンバは、上から見ると、円形又は楕円形の断面形状(5)を有する円筒形(5)であり、第1のチャネル(2)及び第2のチャネル(3)は、円筒形の流体チャンバの側壁に接続される。流体チャンバは、概して、その寸法及び材料に関して、マイクロフルイディック装置への組み入れを可能にするように構成される。好適には、流体チャンバは、流体チャンバ内でPCRを実施することを可能にするように構成される。
【0023】
従って、一実施形態において、流体チャンバ(1)の直径Dは、100μm乃至数cmのレンジにあり、流体チャンバ(1)の高さHは、100μm乃至1cmのレンジにある。
【0024】
第2の(流出)チャネル(3)が流体チャンバに接続されているロケーションに位置する円又は楕円形状の突出部(4)の直径又は深さd(7)は、流体チャンバ内に20μm乃至1cm突き出る。好適には、円又は楕円形状の突出部(4)の直径d(7)は、概して、約50μm乃至約500μmのレンジにある。
【0025】
概して、流体チャンバの直径D(6)は、突出部の直径d(7)の寸法の約10倍より大きい又はそれに等しい大きさであるべきである。本発明の好適な実施形態において、円形又は楕円形の断面形状(5)を有する円筒形の流体チャンバの直径D(6)は、上から見ると、1mm乃至10mmのレンジにあり、高さHは、0.2mm乃至5mmのレンジにあり、直径d(7)は、0.1乃至1mmのレンジにある。
【0026】
第1の(流入)チャネル(2)及び第2の(流出)チャネル(3)は、流体チャンバ(1)の対向する場所に位置付けられることができる。しかしながら、第1及び第2のチャネルは、互いに対して任意の他の角度をなして位置付けられることもできる。第1の(流入)チャネル(2)及び第3の(流出)チャネル(3)が、互いに隣り合って位置付けられる場合(例えば図4を参照)、ただ1つの突出部が必要でありうる。
【0027】
上述したように、流体チャンバ(1)は、それが流体チャンバ内でPCRを実施するのに適しているように構成される。従って、一実施形態において、流体チャンバは、流体チャンバ内の温度を制御する手段と連絡することができ、例えば接続されうる。温度制御手段は、流体チャンバ内の液体の温度が、例えば変性、アニール及び拡張ステップのために必要とされる温度まで上昇され、低下されることを可能にしうる。
【0028】
一実施形態において、流体チャンバは更に、少なくとも1つの透明セクションを含むように改良されることもできる。このような透明セクションは、流体チャンバ内の反応のオンライン監視を可能にすることができる。一実施形態において、流体チャンバ内の少なくとも1つの透明セクションは、rt(リアルタイム)PCRの間、増幅された核酸のオンライン光学モニタリングを可能にすることができる。
【0029】
一実施形態において、流体チャンバは、全体として透明であってもよい。
【0030】
別の実施形態は、本発明による流体チャンバを有するカートリッジのような装置に関する。
【0031】
本発明の他の実施形態は、以下の詳しい説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】流体チャンバに入る流体の通路として機能するのに適した第1のチャネル(2)と、流体チャンバから出る流体の通路として機能するのに適した第2のチャネル(3)と、に接続されている流体チャンバ(1)の上面図であって、更に、第2のチャネル(3)が流体チャンバ(1)に接続される位置において、流体チャンバに突き出る円又は楕円形状の突出部(4)が示されている図。
【図2a】図1の流体チャンバが液体で充填されるときに、液体が、第1の(流入)チャネル(2)を通って移動する段階を示す図。
【図2b】図1の流体チャンバが液体で充填されるときに、液体が流体チャンバ(1)に入る段階を示す図。
【図2c】図2d及び図2eと共に、図1の流体チャンバが液体で充填されるときに、液体がどのように流体チャンバ内に非対称に入っていくかを示す図。
【図2d】図2c及び図2eと共に、図1の流体チャンバが液体で充填されるときに、液体がどのように流体チャンバ内に非対称に入っていくかを示す図。
【図2e】図2c及び図2dと共に、図1の流体チャンバが液体で充填されるときに、液体がどのように流体チャンバ内に非対称に入っていくかを示す図。
【図2f】図1の流体チャンバが液体で充填されるときに、液体が、それが遭遇する第1の突出部で止まる段階を示す図。
【図2g】図2hと共に、液体が第2の突出部で止まるまで、流体チャンバの残りの部分が液体で充填される段階を示す図。
【図2h】図2gと共に、液体が第2の突出部で止まるまで、流体チャンバの残りの部分が液体で充填される段階を示す図。
【図2i】液体が第2の(流出)チャネル(3)を通って押し出される段階を示す図。
【図3】第1の(流入)チャネル(2)及び第2の(流出)チャネル(3)が互いに対向していない流体チャンバ(1)を示す図。
【図4】第1の(流入)チャネル(2)及び第2の(流出)チャネル(3)が、同じロケーションで流体チャンバ(1)に入り、流体チャンバ(1)を出ていき、突出部(4)が、第1及び第2のチャネルの間に位置している、流体チャンバ(1)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
流出チャネルが流体チャンバに接続するロケーションに、円又は楕円形状の突出部を位置付けることが、流体チャンバの気体を含まない充填を可能にすることが分かった。
【0034】
本発明が、その好適な実施形態の幾つかに関して詳しく記述される前に、以下の一般的な説明が提供される。
【0035】
以下に説明的に記述される本発明は、ここに具体的には開示されないが任意の1又は複数の構成要素、1又は複数の制限なしに、適切に実施されることができる。
【0036】
本発明は、特定の実施形態に関して及び特定の図面を参照して記述されるが、本発明は、それらに制限されず、請求項によってのみ制限される。記載される図面は、概略的であって非限定的なものにすぎない。図面において、構成要素の幾つかのサイズは、説明の便宜上、誇張されており、一定の縮尺で描かれていないことがある。
【0037】
「有する、含む(comprising)」という語は、本説明及び請求項において使用される場合、それは、他の構成要素を除外しない。本発明の目的で、「からなる(consisting of)」という語は、「有する、含む(comprising of)」という語の、好適な一態様であると考えられる。以下において、グループが、少なくとも幾つかの特定の数の実施形態を含むと規定される場合、これは、好適にはこれらの実施形態のみからなるグループを開示すると理解されるべきである。
【0038】
例えば「a」、「an」又は「the」のような不定冠詞又は定冠詞が、単数名詞に関連して使用される場合、これは、特記されない限り、その名詞の複数をも含む。「約(about)」又は「およそ(approximately)」という語は、本発明のコンテクストにおいて、当業者が当該特徴の技術的な効果をなお確実にすると理解する正確さの幅を示す。「概して(typically)」という語は、示された数値から±10%の、好適には±5%の偏りを示す。
【0039】
語の更なる規定は、それらの語が使用されるコンテクストの中で以下に与えられる。
【0040】
上述したように、本発明は、一実施形態において、流体チャンバに入る流体の通路として機能するのに適した第1のチャネル(2)及び流体チャンバから出る流体の通路として機能するのに適した第2のチャネル(3)と連絡し、少なくとも1つの突出部(4)が、流体チャンバ内に突き出し、前記少なくとも1つの突出部(4)が、第2のチャネル(3)が流体チャンバに接続されるロケーションに位置付けられている、流体チャンバ(1)に関する。
【0041】
本発明の基礎をなす原理は、図1に示されている。図1は、上から見た流体チャンバを示している。流体チャンバ(1)は、上から見ると、円形の断面形状(5)を有し、第1のチャネル(2)及び第2のチャネル(3)に接続されている。
【0042】
チャンバが、液体充填プロセスの間に、(図2b乃至図2eに示されるように)液体で部分的に満たされる場合、液体−ガスインタフェースの位置は、非常に多くの場合、チャンバの回転対称のため決められない。従って、液体は、このインタフェースの左側に存在し、ガスは、右側に存在する。このインタフェースの形状は、インタフェースと固体壁との間の接触角に依存する。
【0043】
図1に示されるように、第2のチャネル(3)が流体チャンバに入る位置において、円形状の突出部(4)が、流体チャンバ内に突き出ている。半円筒形状の突出部としても示されうる円又は楕円形状のこの突出部は、概して、チャンバの他の寸法と比較して小さい。液体−ガスインタフェースが、これらの突出構造の1つに到達すると、インタフェースの伝播は、インタフェースがチャネルの向こう側の突出構造にも到達するまで、一時的にそこで止まる(図2f乃至図2h参照)。このプロセスによって、ガスの全てでなくともほとんどが、流体チャンバから追い出され、液体が、流出チャネルとして機能するチャネル(3)へ流れ込む。このプロセスは、図2に示されている。
【0044】
概して、上述の実施形態の流体チャンバは、任意の形をとりうる。好適には、このような流体チャンバは、上から見ると、円形又は楕円形の断面形状(5)を有しうる。
【0045】
本発明の流体チャンバは、上から見ると、円形又は楕円形の断面形状を有することが好ましい。
【0046】
流体チャンバ(1)の直径D(6)は、100μm乃至数cmのレンジにある。好適には、直径D(6)は、約100μm乃至約10cm、約200μm乃至約9cm、約300μm乃至約8cm、約400μm乃至約7cm、約500μm乃至約6cm、約600μm乃至約5cm、約700μm乃至約4cm、約800μm乃至約3cm、約900μm乃至約2cm、約1mm乃至約1cm、のレンジにあり、例えば好適には約0.2mm、好適には約0.3mm、好適には約0.4mm、好適には約0.5mm、好適には約0.6mm、好適には約0.7mm、好適には約0.8mm、又は好適には約0.9mmである。
【0047】
流体チャンバ(1)の高さHは、概して、約100μm乃至約1cm、約200μm乃至約9mm、約300μm乃至約8mm、約400μm乃至約7mm、約500μm乃至約6mm、約600μm乃至約5mm、約700μm乃至約4mm、約800μm乃至約3mm、約900μm乃至約2mm、のレンジにあり、好適には約1mmである。
【0048】
「直径」D(6)という語は、それが円形の断面形状の円筒流体チャンバに関する限り、一般的な意味で使用される。「直径」という語が、楕円形の断面形状を有する円筒流体チャンバに関連する限り、それは、楕円の長軸をさす。
【0049】
上述したように、円又は楕円形状(4)の突出部は、概して、流体チャンバの直径より小さい。概して、円又は楕円形状の突出部の直径d(7)は、流体チャンバの直径より10倍小さく又は少なくとも10倍小さく、例えば少なくとも約15倍小さく、又は少なくとも約20倍小さく、又は好適には少なくとも約25倍小さい。
【0050】
第2の(流出)チャネル(3)が流体チャンバに接続されるロケーションに位置する円又は楕円形状の少なくとも1つの突出部(4)の直径又は深さd(7)は、流体チャンバ内に約20μm乃至約1cm突き出る。好適には、円又は楕円形状の突出部(4)の直径d(7)は、概して、約30μm乃至約1mm、約40μm乃至約900μm、約50μm乃至約800μm、約60μm乃至約700μm、約70μm乃至約600μm、約80μm乃至約500μm、約90μm乃至約300μm、好適には約100μm乃至約200μmのレンジにある。
【0051】
本発明の好適な実施形態において、円又は楕円形の断面形状(5)を有する円筒形の流体チャンバの直径D(6)は、上から見て、1mm乃至10mmのレンジにあり、例えば5mmであり、高さHは、0.2mm乃至2mmのレンジにあり、例えば1mmであり、直径d(7)は、0.1乃至0.5mmのレンジにあり、例えば200μmである。
【0052】
突出部のコンテクストにおいて直径d(7)は、それが円形状の突出部に関連する場合、一般的に使用される。楕円形状の突出部に関する限り、直径という語は、長軸をさす。
【0053】
概して、本発明による流体チャンバは、約1マイクロリットル乃至約200マイクロリットルの内側ボリュームを有することができ、約10乃至約100マイクロリットル、例えば25マイクロリットル、のボリュームが好ましい。
【0054】
流体チャンバに接続されているチャネルは、概して、約10μm乃至約5mmの直径、例えば約100μm乃至約500μmの直径を有する。チャネルは、丸い形又は矩形の形のような任意の形を有しうる。丸くない形が使用される場合、上述した寸法は、例えば矩形チャネルの幅及び高さにさすことができる。従って、幅は、例えば500μmでありえ、高さは、100μmでありうる。
【0055】
更に、一実施形態において、本発明による流体チャンバは、流体チャンバ内でPCRを実施するのに適しているように構成されることができる。従って、例えば加熱素子及び冷却素子のような温度制御素子が、PCR反応の実施を可能にするためにマイクロフルイディック装置内で一般に使用される場合、流体チャンバは、温度制御素子に接続されることができる。
【0056】
更に、1つの好適な実施形態において、本発明による流体チャンバは、少なくとも1つの透明なセクションを有することができる。このような透明セクションは、流体チャンバ内に形成される反応生成物の光学的検出を可能にするために、例えば流体チャンバの上部に位置付けられることができる。一般的な実施形態において、流体チャンバ内で進行するrtPCR反応のオンライン光学モニタリングを可能にする透明セクションが、使用されることができる。
【0057】
概して、流体チャンバは、流体チャンバ内で実施される反応に必要とされる条件に耐えるに適した材料から作られる。従って、PCR反応の場合、PCR流体チャンバに一般に使用される材料が選択される。このような材料は、液体と表面との間の接触角が90度より大きくなる限り(すなわち水の疎水性による)、例えばポリマ、プラスチック、樹脂、又は金属合金、金属酸化物、無機ガラス等の金属を含みうる。特定の高分子材料は、例えばポリエチレン、高密度ポリプロピレンのようなポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン及びスチレン等を含みうる。ポリプロピレンが好適でありうる。
【0058】
透明セクションは、例えばそれがrtPCR反応を検出するために使用される場合、例えばポリプロピレンのような透明な疎水性材料から作られることができる。
【0059】
本発明は、更に、流体チャンバを液体でほぼ完全に充填する方法であって、
a.上述した流体チャンバを準備するステップと、
b.上述した流体チャンバの第1のチャネル(2)に液体を導入するステップと、
c.液体が、上述した流体チャンバの第2のチャネル(2)を通ってその充填された流体チャンバを出ていくように、流体チャンバを満たすステップと、
を含む方法に関する。
【0060】
「ほぼ完全に」という語は、流体チャンバ中にガス気泡を有することなく、流体チャンバが液体で満たされることを意味する。
【0061】
同様に、本発明は、液体による、気体を含まない充填のための上述した流体チャンバの使用に関する。
【0062】
しかしながら、本発明は、特定の実施形態に関して記述されているが、それらは本発明を制限するものとして解釈されるべきでない。
【符号の説明】
【0063】
(1)流体チャンバ、(2)流入路として適した第1のチャネル、(3)流出路として適した第2のチャネル、(4)第2のチャネルに位置付けられた、流体チャンバ内に突き出る突出部、(5)上から見た流体チャンバの円形又は楕円形の断面形状、(6)流体チャンバの直径D、(7)突出部の直径d。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体チャンバに入る流体の通路として機能するのに適した第1のチャネル、及び
前記流体チャンバから出る流体の通路として機能するのに適した第2のチャネル、
と連絡し、
少なくとも1つの突出部が、前記流体チャンバ内に突き出し、
前記突出部が、前記第2のチャネルが前記流体チャンバに接続されるロケーションに位置付けられている、流体チャンバ。
【請求項2】
前記流体チャンバ内部の前記突出部の表面が滑らかである、請求項1に記載の流体チャンバ。
【請求項3】
前記突出部が、円形状又は楕円形状である、請求項2に記載の流体チャンバ。
【請求項4】
前記流体チャンバが、上から見ると円形又は楕円形の断面形状を有する円筒形であり、
前記第1のチャネル及び前記第2のチャネルが、円筒形の前記流体チャンバの側壁に接続されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の流体チャンバ。
【請求項5】
前記流体チャンバの直径が、約100μm乃至約10cmのレンジにあり、前記流体チャンバの高さが、約100μm乃至約1cmのレンジにある、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流体チャンバ。
【請求項6】
円形状又は楕円形状の前記突出部の直径が、前記流体チャンバの直径の10倍小さく又は少なくとも約10倍小さい、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の流体チャンバ。
【請求項7】
円形状又は楕円形状の前記突出部の直径が、約10μm乃至約1cmのレンジにある、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の流体チャンバ。
【請求項8】
前記流体チャンバが、前記流体チャンバ内でポリメラーゼ連鎖反応を実施するのに適しているように構成される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の流体チャンバ。
【請求項9】
前記流体チャンバ内の温度を制御する手段が、前記流体チャンバと連絡する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の流体チャンバ。
【請求項10】
前記流体チャンバが、少なくとも1つの透明なセクションを有する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の流体チャンバ。
【請求項11】
前記流体チャンバがポリプロピレンから作られている、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の流体チャンバ。
【請求項12】
液体による、気体を含まない充填のための請求項1乃至11のいずれか1項に記載の流体チャンバの使用。
【請求項13】
液体により流体チャンバを完全に充填する方法であって、
a.請求項1乃至11のいずれか1項に記載の流体チャンバを準備するステップと、
b.前記流体チャンバの前記第1のチャネルに液体を導入するステップと、
c.前記液体が、前記液体チャンバの前記第2のチャネルを通って前記充填された流体チャンバを出て行くように、前記流体チャンバを充填するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の流体チャンバを有する装置。
【請求項15】
前記装置がカートリッジである、請求項14に記載の装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図2h】
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【図2i】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−523829(P2012−523829A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505265(P2012−505265)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051524
【国際公開番号】WO2010/119377
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】