説明

気体分離装置、及びその装置の運転方法

【課題】加湿性能、圧力損失、容積効率及び耐久性に優れ、特に車載燃料電池に使用される気体の加湿に好適な加湿装置及びその装置の運転方法を提供する。
【解決手段】気体分離膜と少なくとも1層の通気性補強材からなる複合膜をプリーツ加工してなるプリーツ成形体23の、該成形体の外辺部に補強フレーム5が配置されたプリーツエレメント6の、該プリーツエレメントの上面及び下面が少なくとも1組の吸気口211,221及び排気口212,222を有するプレートで覆われており、該プリーツ成形体の高さ(H)に対する該吸気口と該排気口の最短距離(L)の比(R=L/H)が0.1以上7.0以下、かつ、該プリーツ成形体の長さ(Le)に対する幅(W)の比(W/Le)が0.3以上10.0以下であることを特徴とする気体分離装置、及びその装置の運転方法であって、容積流量比がそれぞれ200以上である加湿装置の運転方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体分離装置、特に、燃料電池に使用される各種気体の加湿に好適な加湿装置、及びその装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜分離は他の分離操作(蒸留や吸着など)に比べて装置が比較的簡単で、運転コストが低いという長所を有するため、溶液の濃縮や浄水の製造といった液体処理において広く実用化されている。一方、膜分離による気体処理は、アンモニアプラントにおける水素回収やガソリン油槽所からの揮発性有機化合物(VOC)回収やエアコン用酸素富化装置などに一部実用化されているものの、液体処理に比べると処理能力が十分ではなく、現時点において大きな産業を形成するには至っていない。ここでいう処理能力には、単位膜面積あたりの気体透過量(膜性能)以外にも、単位容積あたりの気体透過量(装置性能)、装置内部における圧力損失、気体分離膜の寿命(化学的な変質及び物理的な破損)、製造コスト及び運転コストなどが含まれる。本発明者らはこうした課題を解決するための具体的手段として燃料電池排気ガスによる空気加湿を選択し、膜分離による新規な気体処理を検討した。
燃料電池は、水素やメタノール等の燃料を電気化学的に酸化することによって電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。燃料電池は、用いられる電解質の種類によって、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型又は固体高分子電解質型等に分類されるが、このうち固体高分子電解質型燃料電池は、標準的な作動温度が100℃以下と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、電気自動車等の電源として幅広い応用が期待されている。
【0003】
固体高分子電解質型燃料電池の基本構成は、イオン交換膜とその両面に接合された一対のガス拡散電極からなり、一方の電極に水素、他方に酸素を供給し、両電極間を外部負荷回路へ接続することによって発電させるものである。より具体的には、水素側電極でプロトンと電子が生成され、プロトンは、イオン交換膜の内部を移動して酸素側電極に達した後、酸素と反応して水を生成する。一方、水素側電極から導線を伝って流れ出した電子は、外部負荷回路において電気エネルギーが取り出された後、さらに導線を伝って酸素側電極に達し、前記の水生成反応の進行に寄与する。
固体高分子電解質型燃料電池に使用されるイオン交換膜の材質としては、高い化学的安定性を有することから、フッ素系イオン交換樹脂が広く用いられており、中でも主鎖がパーフルオロカーボンであって、側鎖末端にスルホン酸基を有するデュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」が広く用いられている。こうしたフッ素系イオン交換樹脂は、当業者にはよく知られているように、高いイオン伝導性を発現させるためには水で十分に膨潤させておくことが必要である。したがって、水の供給に制限のある移動体用途、具体的には、車載燃料電池においては、このための水の確保が大きな課題となっている。
燃料電池は前述したとおり、反応に伴って酸素側電極で水を生成するため、酸素側の排気に含まれる水蒸気を利用して酸素側又は水素側の吸気を加湿することができれば、別途、水タンク等を用意することなく水を自給自足することが可能になる。本発明では、酸素ガスや窒素ガスよりも水蒸気ガスを優先的に透過させる性質を持った「気体分離膜」である「水蒸気透過膜」を介して水蒸気透過膜の一方の側面にある水蒸気を優先的に透過させることによって、水蒸気透過膜の他方の側面にある気体を加湿する機能を有する「気体分離装置」のことを「加湿装置」と呼称する。
車載燃料電池用の加湿装置については、下記のような特性が求められている。
1)加湿性能・・・燃料電池運転に必要十分な加湿量
2)圧力損失・・・コンプレッサーに負担をかけない低圧力損失
3)容積効率・・・コンパクトな容積を実現するための高い容積効率
4)耐久性・・・長期間使用下での各種性能維持
こうした加湿装置の従来技術としては、例えば、特許文献1には、燃料電池単電池の積層方向と同一方向に積層された複数の半透膜(水蒸気透過膜)からなる加湿装置が開示されている。当該技術によれば、酸素側又は水素側の吸気を加湿することが可能であるが、十分な加湿に必要な膜面積を確保するには相当枚数の半透膜を積層する必要があるため、枚数に応じて半透膜のシール部分が増してコストが高くなるとともに、枚数に応じて気体流路(セパレーター)の数も増すため、容積効率に欠けていた。
【0004】
特許文献2には、水蒸気透過膜が中空糸であることを特徴とする加湿装置が開示されている。当該技術によれば、中空糸を用いるため特許文献1のようなセパレーターは不要であるため容積効率を改善することが出来る。しかし、中空糸の偏り等によって気体の流れが不均質になり易いため、十分な加湿性能を得られない場合があった。また、中空糸の内部・外部とも高速の気流にさらされるために自励振動や外部振動によって中空糸のばたつきが発生し、中空糸が互いに摩擦して摩耗又は破損し易い、又は中空糸両端の固定部に無理な力がかかって破損し易いという問題があった。
特許文献3には、シート状の水蒸気透過膜をひだ折りにして円筒プリーツ状に丸め、その合わせ目を気密的にシールし、円筒プリーツの両端はドーナツ状の端板により気密的にシールした円筒プリーツ構造からなる加湿装置が開示されている。当該技術によれば、平膜をプリーツ状にして用いるため、特許文献1のようなコスト及び容積効率上の問題や、特許文献2のような物理的耐久性の問題を回避することは可能であるが、当該特許文献の明細書の図3や段落番号0030に記載されているような円筒プリーツは、通常、外径の半分程度の内径からなるデッドスペースを有するため、容積効率が低いという問題があった。
容積効率が低い加湿装置であっても、収納する膜面積を増大させることによって加湿性能を向上させることは可能である。しかしながら、容易に想像されるように膜面積が増大すると通気抵抗が上昇するため、所定の流量を維持するにはより高い押し込み圧、すなわち加湿装置の圧力損失が大きくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−354142号公報
【特許文献2】特開平08−273687号公報
【特許文献3】特開2002−252012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、気体分離膜の利用効率、圧力損失、及び耐久性に優れた気体分離装置及びその装置の運転方法、特に固体高分子型燃料電池に好適な加湿装置及びその装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、気体分離装置の特定の形状因子が気体分離膜の利用効率や圧力損失と密接な関係があること、及び、気体分離装置の特定の運転条件が気体分離膜の利用効率や圧力損失と密接な関係があることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち本発明は、以下の通りである。
1.気体分離膜と少なくとも1層の通気性補強材からなる複合膜をプリーツ加工してなるプリーツ成形体の外辺部に補強フレームが配置されているプリーツエレメントの上面及び下面が、少なくとも1組の吸気口及び排気口を有するプレートで覆われている気体分離装置であって、
前記上面及び下面において、前記吸気口と前記排気口とを繋ぐ流線と、前記プリーツ成形体の山及び谷が平行であることを特徴とする気体分離装置。
2.気体分離膜が水蒸気透過膜である1に記載の気体分離装置。
3.加湿機能を有する2に記載の気体分離装置。
4.外部配管と吸気口・排気口の間に圧力緩衝部がある1〜3のいずれか一に記載の気体分離装置。
5.すべての吸気口と、排気口と、圧力緩衝部とが一体成型されている1〜4のいずれか一に記載の気体分離装置。
6.補強フレームがシール材料で構成されている1〜5のいずれか一に記載の気体分離装置。
7.少なくとも1個のプリーツエレメントが2枚の圧力プレートの中に配置され、各プリーツエレメントの補強フレームと2枚の圧力プレートが互いに密着して1つの気密空間を構成する1〜6のいずれか一に記載の気体分離装置。
8.プリーツエレメントの外形容器(Ve)に対する単位時間当たりの気体流量(NL)の比(容積流量比=NL/Ve)を200以上で運転する1〜7のいずれか一に記載の気体分離装置の運転方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、気体分離膜の利用効率、圧力損失、及び耐久性に優れた気体分離装置、特に固体高分子型燃料電池に好適な加湿装置及びその装置の運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す燃料電池システム構成図である。
【図2】a及びbは、本発明のプリーツ成形体の一例を示す概略図である。
【図3】接着剤等固定型の平面型プリーツエレメントの一例を示す概略図である。
【図4】板状物加工型の平面型プリーツエレメントの一例を示す概略図である。
【図5】平面型プリーツエレメントのシール材の一例を示す概略図である。
【図6】平面型プリーツエレメントのシール材の一例を示す概略図である。
【図7】Aは平面型プリーツエレメント、BとCは本発明の加湿装置を示す概略図である。
【図8】Aは平面型プリーツエレメント、BとCは本発明の加湿装置を示す概略図である。
【図9】プリーツエレメントの吸気口・排気口の関係を示す概略図である。
【図10】本発明の圧力プレート式ハウジングを説明する概略図であり、aは本発明の加湿装置の外観の斜視図、bはその加湿装置の分解図である。
【図11】図10aのB方向の断面図である。
【図12】加湿装置のハウジングの一例を説明する概略図である。
【図13】図12のA方向の断面図である。
【図14】本発明の加湿装置の一例を示す概略図である。
【図15】圧力緩衝部の気体の流し方の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[各部の定義]
本発明における「プリーツ加工」は、気体分離膜基材にV字状、U字状又はΩ字状等の断面形状を付与するような加工をいい、このような加工を行わない場合に比べ、同じ投影面積及び同じ容積の中に、より大きな膜面積を収納することができる。
本発明における「気体分離膜基材」は、気体分離膜と少なくとも1層の通気性補強材からなるエレメントの基本構成部材をいい、必要に応じて気体分離膜と通気性補強材の積層体とすることが出来る。「加湿膜基材」は、水蒸気透過膜と少なくとも1層の通気性補強材からなる基本構成部材をいい、必要に応じて水蒸気透過膜と通気性補強材の積層体とすることが出来る。
本発明における「気体分離膜」は、混合気体から特定の気体を優先的に透過させる性質を持った一種の選択透過膜をいい、特定気体の特定の分圧下でのみ選択透過性を示す膜もこれに含まれる。「水蒸気透過膜」は気体分離膜の一例であり、水蒸気を含む混合気体から水蒸気を優先的に透過させる性質を持った一種の選択透過膜をいい、所定の水蒸気存在下でのみ選択透過性を示す膜(後述する多孔性加湿膜など)もこれに含まれる。特に、水蒸気以外の気体を透過させない性質に対しては、耐リーク性と呼称する場合がある。本発明は、こうした気体分離膜の形態としてプリーツ加工可能な「平膜」を用いることを特徴とする。
本発明における「通気性補強材」は、プリーツ内部で隣接する気体分離膜の密着を妨げることによって良好な膜利用効率を達成するための手段に資するものであり、更にプリーツ成形体に必要な自立性を付与するための補助的な機能を担う。
本発明における「プリーツ成形体」は、平膜状の気体分離膜基材をプリーツ加工することによって得られた構造体をいう。
本発明における「補強フレーム」は、プリーツ成形体の周囲と気密的に接着することによってプリーツエレメントを構成するための構造材をいう。すなわち、プリーツ成形体の端面と一体化することによって、プリーツエレメントの上面と下面を気密的に分離する機能を持つ。樹脂、金属、FRP(繊維強化樹脂)等の目的に応じて各種材料を用いることが出来る。
本発明における「プリーツエレメント」は、プリーツ成形体と補強フレームから成る集合体をいう。
本発明における「ハウジング」は、プリーツエレメントに気体分離機能以外の機能(機械的破壊からの保護機能及び外部回路との接続機能等)を提供するための補助手段をいう。多くの場合、プリーツエレメントはハウジングに収納又は接続されることによって実用上必要な機能が追加され「気体分離装置」を構成する。
本発明において、プリーツの「長さ」とは、プリーツと平行な方向における寸法又は距離を言い、プリーツの「幅」とは、プリーツと垂直な方向における寸法又は距離を言う。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
[燃料電池システム]
図1は、本発明の実施形態の一例を示す燃料電池システム構成図である(ハウジングは明示されていない)。この燃料電池は水素と酸素源としての空気を用いる。
加湿装置2は、空気が導入される乾燥側流路21と、燃料電池1からのカソード側排気が導入される湿潤側流路22と、吸気口211及び221と、排気口212及び222と、これらの流路を分離する加湿膜基材23とを具備している。この加湿装置2の乾燥側流路21の吸気口211は、空気供給源であるコンプレッサー3が配管31で接続されており、乾燥側流路21の排気口212は、燃料電池1のカソード側の吸気口35と配管32で接続されている。湿潤側流路22の吸気口221は、燃料電池1のカソード側の排気口36と配管33で接続されており、湿潤側流路22の排気口222は、排気用の配管34が接続されている。水素供給源4は、燃料電池1のアノード側の吸気口37と配管41で接続されており、燃料電池1のアノード側の排気口38には排気用の配管42が接続されている。
燃料電池1のカソード側からの排気は、電池反応で生成された水と加湿装置2から供給されて燃料電池1の内部で吸収されなかった水、並びに加湿装置2から供給されて電池反応に使用されなかった酸素と窒素等の酸素以外の空気構成気体とからなる混合気体である。この混合気体は、配管33から加湿装置2の湿潤側流路22に導入されるが、加湿膜基材23は水蒸気のみを透過するため、湿潤側流路22内の水蒸気が乾燥側流路21に移動し、乾燥側流路21内の空気が加湿される。加湿された空気は、配管32を通って燃料電池1のカソード側の吸気口35に導入される。したがって、この加湿のための加湿装置2は、水蒸気以外の気体組成や圧力を変化させることなく燃料電池の運転に必要な加湿を安定して行うことができる。このため、本発明の加湿装置は、特に燃料電池自動車への搭載に適している。
乾燥側流路はコンプレッサー3で加圧されているため、湿潤側流路よりも全圧は高くなる。このため、水蒸気透過膜は前記した水蒸気透過性に加え、全圧差に対する十分な耐リーク性、すなわち空気を含む他の気体に対する非透過性を併せ持つ必要がある。
【0012】
[水蒸気透過膜]
水蒸気透過膜の水蒸気透過性は様々な方法で評価することが可能であるが、例えば、JIS−L−1099に記載された塩化カルシウム法の透湿度で評価することが出来る。
水蒸気透過膜の空気を含む他の気体に対する非透過性は様々な方法で評価することが可能であるが、例えば、JIS−P−8117に記載の透気度で評価することが出来る。加湿装置を燃料電池用途に使用する場合は、上記特性に加えて耐熱性を有することが好ましい。
水蒸気透過膜は、多孔性水蒸気透過膜、均質水蒸気透過膜及び複合水蒸気透過膜に分類される。
水蒸気透過膜の透湿度は、好ましくは1000〜30000(g/m2・24hr)、より好ましくは2000〜20000(g/m2・24hr)、更に好ましくは5000〜15000(g/m2・24hr)である。
水蒸気透過膜の透気度は、好ましくは500秒以上、より好ましくは1000秒以上、更に好ましくは10000秒以上、より更に好ましくは100000秒以上、特に好ましくは1000000秒以上である。なお、後述の多孔性水蒸気透過膜は湿潤下でのみ非透過性を発現するため、非透過性の尺度として透気度は使用しない。
水蒸気透過膜の膜厚は、1μm以上1000μm以下が好ましい。膜厚の下限は5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、20μm以上が最も好ましい。膜厚の上限は500μm以下がより好ましく、300μm以下が更に好ましく、200μm以下が最も好ましい。膜厚が1μm未満になると、機械強度が不足する場合があり、膜厚が1000μmを超えると、水蒸気透過性が低下する場合がある。
【0013】
[多孔性水蒸気透過膜]
多孔性水蒸気透過膜としては、織布、不織布、又は微多孔膜等を用いることができる。当業者にはよく知られているように、孔径10μm以下の多孔性水蒸気透過膜に水蒸気を含む気体が接触すると、いわゆる「ケルビン凝縮」が発生し、多孔性水蒸気透過膜の微細孔に水蒸気が凝縮して一種の液膜が形成され、耐リーク性が発現する。当該液膜は水からなるため水蒸気透過性が高く、自由表面水と同等の速度で水蒸気を透過することができる。
多孔性水蒸気透過膜の孔径は、0.001μm以上10μm以下が好ましい。孔径の下限は0.005μm以上がより好ましく、0.01μm以上が更に好ましい。孔径の上限は5μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましく、0.5μm以下がより更に好ましく、0.2μm以下が特に好ましく、0.1μm以下が最も好ましい。孔径が0.001μm未満では、水蒸気透過性が不足する場合があり、孔径が10μmを超えると、ケルビン凝縮が発生しにくい場合がある。
多孔性水蒸気透過膜の気孔率は、5%以上90%以下が好ましく、気孔率の下限は10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましく、30%以上がより更に好ましく、40%以上が最も好ましい。気孔率が5%未満では、水蒸気透過性が不十分な場合があり、気孔率が90%を超えると、機械強度が不足する場合がある。
【0014】
[均質水蒸気透過膜]
水蒸気透過性材料からなる均質膜を、均質水蒸気透過膜という。
水蒸気透過性材料としては、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、セルロースエーテル及びデンプン等の非電解質高分子やこれらの共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルピリジン及びポリアミノ酸等の電解質高分子やこれらの共重合体並びにそれらの塩、さらには前述したようなフッ素系イオン交換樹脂等の吸水性又は含水性樹脂として知られる樹脂であれば公知の如何なる材料でも使用可能である。必要に応じて、イオン架橋、化学架橋、放射線架橋等の架橋、繊維補強又はフィブリル補強等の補強を施すことにより含水率の調整や水への不溶化を図ることができる。
水蒸気透過性材料の含水率は、5%以上95%以下が好ましい。均質多孔膜の含水率の下限は、20%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましく、60%以上がより更に好ましく、80%以上が最も好ましい。含水率の上限は、90%以下がより好ましい。含水率が5%未満になると、十分な加湿性能を示すことが難しくなる場合があり、含水率が95%を超えると、「乾燥時の体積収縮が大きい」、「機械強度が低い」等の問題が発生する場合がある。
【0015】
[複合水蒸気透過膜]
織布、不織布、又は微多孔膜等の多孔性基材に水蒸気透過性材料を塗布又は含浸することにより得られる複合膜を複合水蒸気透過膜という。
水蒸気透過性材料としては、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、セルロースエーテル及びデンプン等の非電解質高分子やこれらの共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルピリジン及びポリアミノ酸等の電解質高分子やこれらの共重合体並びにそれらの塩、さらには前述したようなフッ素系イオン交換樹脂等の吸水性又は含水性樹脂として知られる樹脂であれば公知の如何なる材料でも使用可能である。必要に応じて、イオン架橋、化学架橋、放射線架橋等の架橋、繊維補強又はフィブリル補強等の補強を施すことにより含水率の調整や水への不溶化を図ることができる。
水蒸気透過性材料の含水率は、5%以上95%以下が好ましい。含水率の下限は20%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましく、60%以上がより更に好ましく、80%以上が最も好ましい。含水率の上限は90%以下がより好ましい。含水率が5%未満では、十分な加湿性能を示すことが難しい場合があり、含水率が95%を超えると、「乾燥時の体積収縮が大きい」、「機械強度が低い」等の問題が生じる場合がある。
多孔性基材の気孔率は、5%以上95%以下が好ましい。気孔率の下限は10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましく、30%以上がより更に好ましく、40%以上が最も好ましい。気孔率が5%未満では、水蒸気透過性が不足する場合があり、気孔率が95%を超えると、機械強度が不足する場合がある。
【0016】
[通気性補強材]
通気性補強材は網状又は多孔質状のシートであり、気体分離膜と積層することによってプリーツピッチを維持し、プリーツの深部へ良好に気体を導くことが出来る。また、気体分離膜は一般的に剛性に欠けるが、通気性補強材と積層することによってプリーツ成形体の自立性や構造強度、特に座屈強度、を改善することが出来る。
通気性補強材は気体分離膜の両面又は片面に設けることが出来る。特に、気体分離膜を介して圧力差が存在する場合は少なくとも低圧側に設けることが好ましい。
通気性補強材としては、織布、不織布、樹脂製ネット(例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等)又は金属製ネット等を使用することが出来るが、このうち、樹脂製ネット及び金属製ネットが好ましい。
通気性補強材の厚さは、10μm以上5000μm以下が好ましく、厚さの下限は100μm以上がより好ましく、200μm以上が更に好ましく、500μm以上が最も好ましい。厚さの上限は3000μm以下がより好ましく、2000μm以下が更に好ましく、1000μm以下が最も好ましい。厚さが10μm未満では、機械強度が不足する場合があり、厚さが5000μmを超えると、気体透過性が低下する場合がある。なお、通気性補強材の厚さは、JIS−L−1096に記載の方法で測定される。
通気性補強材の気孔率は、30%以上95%以下が好ましく、気孔率の下限は40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましく、60%以上がより更に好ましく、70%以上が最も好ましい。気孔率が30%未満では、気体分離性が不足する場合があり、気孔率が95%を超えると、機械強度が不足する場合がある。
通気性補強材の透気度は、100秒以下が好ましく、より好ましくは10秒以下、最も好ましくは1秒以下である。
ネットを使用する際のメッシュ数は、2以上1000以下が好ましい。メッシュ数の下限は3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、10以上がより更に好ましく、12以上が特に好ましい。メッシュ数の上限は100以下がより好ましく、50以下が更に好ましく、30以下がより更に好ましく、20以下が特に好ましい。
ネットを使用する際の線径は、0.01mm以上2mm以下が好ましい。線径の下限は0.02mm以上がより好ましく、0.04mm以上が更に好ましく、0.06mm以上がより更に好ましく、0.08mm以上が特に好ましい。線径の上限は1mm以下がより好ましく、0.6mm以下が更に好ましく、0.4mm以下がより更に好ましく、0.2mm以下が特に好ましい。
メッシュ数が100以下のネットを使用する場合は、気体分離膜を保護するため、気体分離膜と通気性補強材の間に薄手の通気性補強材を設けることが好ましい。この種の通気性補強材として、片面又は両面を平滑化処理したものがより好ましい。
【0017】
[プリーツ成形体]
平膜状の気体分離膜基材にプリーツ加工を施すことによってプリーツ成形体が得られる。通常は、気体分離膜と通気性補強材からなる積層体に対してプリーツ加工を施すが、何らかの必要性がある場合は、気体分離膜単独でプリーツ加工を施したあとプリーツ間に通気性補強材を挿入することも可能である。
図2a及びbは、本発明のプリーツ成形体の一例を示す概略図である。図2では、気体分離膜23Aと通気性補強材23Bで構成された気体分離膜基材をプリーツ加工することによって得られるプリーツ成形体を示している。
プリーツ加工の方法としては、公知の方法が使用可能であり、例えばレシプロ(アコーディオン)プリーツマシンやロータリープリーツマシンを用いることが出来る。
プリーツの高さHは、プリーツ成形体の山から山までの高さであり、高さHが一定でない場合は、高さの平均値をHとすることができる。高さHは、5mm以上200mm以下が好ましい。高さHの下限は10mm以上がより好ましく、15mm以上が更に好ましい。高さHの上限は150mm以下がより好ましく、100mm以下が更に好ましく、80mm以下がより更に好ましく、50mm以下が特に好ましい。
【0018】
[補強フレーム]
プリーツエレメントの構成部材である補強フレームは、接着剤やシール材等の樹脂で固めたものでもよいし、樹脂板や金属板等を加工したものであってもよく、また、両方を複合したものであってよい。
樹脂で直接固めたものは、ゴム状の弾性体であることが好ましく、シリコン系やブタジエン系等の一般的に知られているシール材、弾性接着剤等、本発明の目的を損なわない範囲内で様々なものを用いることができる。この場合、補強フレームの厚さは、1mm以上50mm以下が好ましい。厚さの下限は、2mm以上がより好ましく、5mm以上が更に好ましい。厚さの上限は、40mm以下がより好ましく、30mm以下が更に好ましく、20mm以下がより更に好ましい。
板を加工する場合は、平面状であってもよいし、コの字形等の折り曲げ部を設けてもよい。コの字形断面などの折り曲げ部を設けると、補強フレームの強度及びプリーツ成形体との接着面積が増えるとともに、折り曲げ部を介してハウジングと気密的に接続することも容易になるため好ましい。本発明における補強フレームの端部とは、例えば、平面状の補強フレームを用いるときにはプリーツ成形体の上面又は下面に向いた切断面を言い、折り曲げ部を設けた補強フレームを用いるときには折り曲げた部分の面を言う。
この場合の板厚は、0.1mm以上5mm以下が好ましい。板厚の下限は、0.2mm以上がより好ましく、0.5mm以上が更に好ましい。板厚の上限は、4mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましく、2mm以下がより更に好ましい。
補強フレームの高さは、通常はプリーツの高さHにあわせて設定されるが、補強フレームの高さの内寸をプリーツの高さより意図的に長くすることによって、後述するような「空間部流路」を設けることが出来る。複数の材料を組み合わせて補強フレームとする際には、接続部の強度を増すために入れ子構造とすることが好ましい。
補強フレームの折り曲げ部の幅は、1mm以上50mm以下が好ましい。折り曲げ部の幅の下限は5mm以上がより好ましく、10mm以上が更に好ましい。折り曲げ部の幅の上限は40mm以下がより好ましく、30mm以下が更に好ましく、20mm以下がより更に好ましい。
【0019】
[プリーツエレメント]
プリーツエレメントは、平面型が好ましい。「平面型」はプリーツと平行方向の気体分離膜の両端が互いに接着されないタイプであり、プリーツに対して垂直方向と平行方向の両端にそれぞれ2面、合計4面の補強フレーム(主に矩形)を備える。
平面型プリーツエレメントには、プリーツ成形体の外辺部を接着剤やシール材等の樹脂で直接固めるものと、先述した板上のものを加工した補強フレームの内周部に接着固定することによってプリーツエレメントを構成するもの、または、両方を複合したものがある。
図3は、補強フレームが接着剤やシール材等で直接固めたタイプの平面型プリーツエレメントの一例を示す概略図である。図3において、Aは、プリーツ方向に対して平行方向から見た断面図、Bは、プリーツ方向に対して垂直方向から見た断面図である。プリーツ成形体23の外辺部に樹脂で固めた補強フレーム52が形成されている。
図4は、補強フレームが板状のものを加工したタイプの平面型プリーツエレメントの一例を示す概略図である。図4において、Aは、プリーツ方向に対して平行方向から見た断面図、Bは、プリーツ方向に対して垂直方向から見た断面図である。プリーツ成形体23の外辺部と補強フレーム5の内周部を接着する方法としては、例えば、図4A及びBに示すように、コの字断面の補強フレーム内周部に接着剤51を流し込んだあと、プリーツ成形体23を導入して硬化させてもよいし、熱融着により接合してもよい。
図5及び図6は、板状のものを加工したタイプの平面型プリーツエレメントのシール材の一例を示す概略図である。図5及び図6において、aはプリーツ方向に対して垂直に切断した断面図、bはプリーツ方向に対して平行に切断した断面図、cはプリーツ方向に対して平行に見た外観図、dはプリーツ方向に対して垂直に見た外観図である。図5では、補強フレームの側面にシール材7が全周にわたって備えられている。図6では、シール材7は補強フレームの上部と下部の折り曲げ部の全周にわたって備えられている。これ以外に、シール材をハウジングに備えて、補強フレームに備えないことも可能であるし、ハウジングと補強フレームの両方にシール材を備えることも可能である。
また、外辺部をゴム状の弾性接着剤やシール材等の樹脂で直接固めるプリーツエレメントは、補強フレーム自体がシール材となり、後述するハウジングとの機密性に優れ、特に内圧がかかる使用条件では、プリーツエレメントが膨らもうとする力が大きくなるほど、ハウジングとの間のシール力も高くなるいわゆるセルフロック機能が働くので好ましい。
さらに、気密を確保できるような処置を別途にとる場合は、ハウジングと補強フレームの両方にシール材を備えないことも可能である。
【0020】
シール材7としては、本発明の目的を損なわない範囲内でO−リング、ゴムシート、金属シート及び接着剤等の様々なシール材を使用できる。このうち、O−リング及びゴムシートが好ましい。O−リングを使う場合は、ハウジング側又は補強フレーム側に溝加工を行ってO−リングを固定することが好ましい。シール材7としてゴムシートを使う場合は、厚みが厚すぎると内圧によってゴムシートが押し出されることがあるので、ゴムシートの厚みは好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、最も好ましくは1mmである。
ピッチPは、プリーツ成形体の隣接する山と山の間の距離であり、ピッチが一定でない場合は、ピッチの平均値をPとする。ピッチPは0.1mm以上10mm以下が好ましい。ピッチPの下限は0.4mm以上がより好ましく、0.6mm以上が更に好ましく、0.8mm以上がより更に好ましく、1.0mm以上が特に好ましい。ピッチPの上限は8mm以下がより好ましく、6mm以下が更に好ましく、4mm以下がより更に好ましい。ピッチPは、補強フレームの内幅と収納したいプリーツの山数で調整することが出来る。
ピッチPの気体分離膜基材の厚さTに対する比率Mは、0.5以上3.0以下が好ましい。比率Mの下限は、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.0以上、より更に好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.4以上、最も好ましくは1.6以上である。比率Mの上限は、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.2以下、より更に好ましくは2.1以下、特に好ましくは2.0以下、最も好ましくは1.9以下である。比率Mが0.5未満の場合、ピッチが狭くなるため通気性が低下して気体分離性能が損なわれ易い。比率Mが3.0を超えると、ピッチが広くなるため収納できる膜面積が小さくなるとともに、気流で気体分離膜基材がばたつくため、摩耗又は破損し易く、また、気体分離膜両端の固定部に無理な力がかかるので破損し易い。
なお、比率Mが2.0とはプリーツの中で隣接する気体分離膜基材表面が互いに接していることを示しており、比率Mが2.0以下とはプリーツの中で気体分離膜基材が圧縮されて薄くなっていることを示している。図2aは、断面がV字状の1例であり、比率Mは3.0である。図2bは、断面がU字状の1例であり、比率Mは2.0である。
一般的なプリーツエレメントは、長辺と短辺を有する矩形であるが、後述するようにハウジングの梁間隔を短くする目的から、プリーツエレメントの短辺は不必要に長くしないことが好ましい。好ましい短辺の長さは300mm以下であり、250mm以下がより好ましく、200mm以下が更に好ましく、150mm以下がより更に好ましく、100mm以下が特に好ましい。梁間隔を短くする必要がない場合においても短辺の長さは1000mm以下が好ましく、500mm以下がより好ましい。
また、本発明のプリーツエレメントの長さ(Le)に対する幅(W)の比(W/Le)は、気体分離性能(分離効率)、圧力損失の観点から、0.3以上10.0以下であることが好ましく、0.5以上8.0以下が更に好ましく、1.0以上7以下が特に好ましい。
【0021】
[気体分離装置(加湿装置)]
プリーツエレメントに適切な吸気口、排気口、流路(特に明記しない限り、これら3つを総称して「流路」と呼称する)、を設けることによって気体分離装置を構成する。
図7BとC及び図8BとCは本発明の気体分離装置を示す概略図であり、加湿装置の場合には、点線は湿潤側流路、そして実線は乾燥側流路を表している。
図7B及び図8Bは、流路構成手段70を用いてプリーツエレメント上に「流路」を構成する例を示している。流路構成手段としては、例えばウレタンフォームやゲル状シートのような追従性の高い材料に2つの開口部(吸気口・排気口)を形成したシート状の材料を用いることが可能であり、これをプリーツエレメント6の表面に備えることによってプリーツエレメント上に流路が構成される。図7及び図8のハウジング8は、気体分離(加湿)機能以外の補助機能、すなわち、機械的破壊からの保護機能や外部回路との接続機能等をプリーツエレメントに提供している。
図7C及び図8Cは、流路構成手段70の代替としてハウジング8を用いて「流路」を構成する例を示している。
図7C及び図8Cのような構成を取ると、プリーツエレメントとハウジング内表面の間に空間が生じる。本発明においては、この流路を「空間部流路」、そしてプリーツエレメント内部の流路を「基材部流路」と呼称する。エレメントが空間部流路を持つ場合、空間部流路に金網等の流路制御手段を設置することによって通気抵抗を調整することが出来る。例えば、空間部流路の通気抵抗を大きくすると圧力損失は大きくなるが、基材部流路へ流れる気流が増えるため、気体分離(加湿)性能が向上する場合がある。
本発明の加湿装置の湿潤側流路容積の乾燥側流路容積に対する比率V:[(22M+22S)/(21M+21S)]は、0.5以上100以下であることが好ましい。Vの下限は0.8以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましく、1.2以上がより更に好ましく、1.5以上がより特に好ましく、2.0以上が最も好ましい。Vの上限は50以下がより好ましく、20以下が更に好ましく、10以下がより更に好ましく、5以下が特に好ましい。Vが0.5未満では、乾燥側流路の圧力損失に比べて湿潤側流路の圧力損失が大きくなりすぎる。Vが100を超えると、湿潤側流路の圧力損失に比べて乾燥側流路の圧力損失が大きくなりすぎる。
【0022】
[気体分離装置(加湿装置)の吸気口・排気口]
本発明の気体分離装置(加湿装置)は、プリーツエレメントの両面にそれぞれ少なくとも1組の吸気口・排気口を備える。本発明においては、膜利用効率の観点からプリーツエレメントの幅方向にわたって気体を均等に流すことが好ましい。図9は、プリーツエレメントの吸気口・排気口の関係の一例を示す概略図である。
吸気口・排気口の幅61は、プリーツエレメントの内幅に対して、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。
吸気口・排気口の断面積は、外部配管の断面積に対して、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましく、100%以上がより更に好ましく、200%以上が特に好ましく、300%以上が最も好ましい。
吸気口・排気口の長さ62は、前記の幅と断面積から好ましい範囲を求めることが出来るが、通常は1mm以上1m以下の範囲で好ましい長さを求めることが出来る。長さの下限は5mm以上がより好ましく、10mm以上が更に好ましく、15mm以上がより更に好ましい。長さの上限は20cm以下が好ましく、10cm以下がより好ましく、5cm以下が更に好ましい。
吸気口・排気口の形状は、前記の好ましい範囲の中で、長方形、楕円形、菱形、台形、及びこれらを複数組み合わせた集合体等の任意の形状を採用することが出来る。このうち、幅方向に長い長方形の場合は、2つの短辺を直線ではなく半円形とすることによって機械加工を容易にすることが出来るため好ましい。
吸気口・排気口の間隔63は、吸気口・排気口の中心間距離ではなく、各開口部間の最短距離で定義される。本発明においては、この距離を接触距離Lと呼称する。さらに、プリーツの高さHに対する接触距離Lの比率を比率R(R=L/H)と呼称する。
すなわち、本発明の気体分離装置(加湿装置)は、比率Rが0.1以上7.0以下であることを特徴とする。比率Rの下限は、0.2以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.6以上が更に好ましく、0.8以上がより更に好ましく、1.0以上が特に好ましい。比率Rの上限は、6.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.0以下が更に好ましく、3.0以下が最も好ましい。
【0023】
例えば加湿装置の場合、ある高さ・幅・長さを有するプリーツエレメントAに対して、長さ1/2のプリーツエレメントBでは圧力損失を1/2にすることが出来るが、容積と同時に膜面積が半分になるため加湿性能は半減することが予想される。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに単位容積あたりの加湿性能で両者を比較するとプリーツエレメントAよりプリーツエレメントBの方が優れることを見出した。本発明者らはこの知見に基づき鋭意検討した結果、特定の比率Rを有する加湿装置が従来の比較的大きい比率Rを有する加湿装置と比較して、以下の優れた特徴を兼ね備えることを見出し、本発明を成すに到った。
1)同じ加湿膜構成、同じ膜面積、同じ容積で、より高い水分移動量を示す。
2)同じ加湿膜構成、同じ膜面積、同じ容積で、より低い圧力損失を示す。
比率Rが0.1より小さい場合は、気体がプリーツ深部まで十分に浸透できないため、好ましい加湿性能が得られない場合がある。比率Rが7.0より大きい場合は、接触距離が長いため好ましい圧力損失が得られない場合がある。
接触距離Lは、比率Rとプリーツ高さHから好ましい範囲を求めることが出来るが、通常は10mm以上、1000mm以下の範囲で好ましい接触距離Lを求めることが出来る。接触距離Lの下限は、20mm以上がより好ましく、30mm以上が更に好ましく、40mm以上がより更に好ましく、50mm以上が特に好ましい。接触距離Lの上限は、500mm以下がより好ましく、300mm以下が更に好ましく、200mm以下がより更に好ましく、150mm以下が特に好ましい。このように、プリーツエレメントの長さは比率Rとプリーツ高さHの関係によって高々数百mmにとどまるが、プリーツエレメントの幅は、目的とする流量、加湿性能及び圧力損失によって大小さまざまな寸法を取り得る。
【0024】
[ハウジング]
プリーツエレメントをハウジングと接続することによって、気体分離(加湿)機能以外の補助機能(機械的破壊からの保護機能や外部回路との接続機能等)が付与された実用的な気体分離装置(加湿装置)が構成される。
ハウジングとしては、プリーツエレメントの両面に配置された2枚の箱型圧力プレートと補強フレームの一部が互いに密着することによって気密容器を構成するのが好ましい。
図10は、本発明のプリーツエレメント用ハウジングの好ましい例である圧力プレート式ハウジングを説明する概略図である。
このような構成をとることにより、高圧気体にも耐えうる丈夫な気密信頼性の高い気体分離(加湿)装置を構成することが可能となる。
さらに、従来の平面プリーツ型の分離装置は前述したように使い捨てが主流であり、プリーツエレメントを分離装置から取り出すためのメンテナンス性はあまり考慮されていなかったが、本発明の圧力プレート式ハウジングを用いると、コンパクトな装置構成でありながら高いメンテナンス性を併せ持つことができる。
図10aは、本発明の気体分離加湿装置を加湿装置とした場合の第1の例の外観の斜視図であり、図10bは、その加湿装置の分解図である。
ハウジングとプリーツエレメント6は、補強フレーム5を介して気密的に接触、即ち密着している。
図11は図10aのB方向の断面図である。水蒸気透過膜で仕切られた下側の流路を乾燥側流路21、上側を湿潤側流路22としているが、これらは目的に応じて適宜逆に構成してもよい。乾燥側流路21と湿潤側流路22は、水蒸気透過膜基材23、シール材を兼ねた補強フレーム5及びハウジング8によって気密的に分離されており、乾燥側流路21は乾燥側吸気口211及び乾燥側排気口212に、湿潤側流路22は湿潤側吸気口221及び湿潤側排気口222に接続されている。
湿潤側吸気口221から導入された湿潤気体は、図7の点線で示す湿潤側流路22を左から右方向に流れ、湿潤側排気口222から排出される。一方、乾燥側吸気口211から導入された乾燥気体は、図7の実線で示す乾燥側流路21を右から左に流れ、乾燥側排気口212から排出される。この過程の中で、湿潤気体の中に含まれる水蒸気が水蒸気透過膜を横切って乾燥気体に移動する。
1対の圧力プレートは、任意の方法で接合することができる。例えば、接着剤や溶着による接合及びベルトやボルト等による締め付けを用いることができる。
使用気体の圧力が高い場合は、変形する可能性があるため、ハウジングの周囲に補強材を導入することができる。
また、本発明のハウジングは、すべての吸気口、排気口及び圧力緩衝部(圧力緩衝部については後述する)が一体成形されていることが好ましい。
一体成形とは、ボルト止めやネジ止めによってハウジング材料が分割されていないことを言う。例えば、ハウジング材料が分割されていたとしても、分割された材料同士が溶着等されていれば一体成形となる。
このようなハウジング構造とすることにより、振動や圧力変化に対する耐久性が高度に向上する。
図12は本発明の加湿装置の好ましい一例であるハウジングを説明するための概略図である。図13は、図12のA方向の断面図である。
ハウジングとプリーツエレメント6は、補強フレーム5を介して気密的に接触(密着)している。
図14は図12のB方向の断面図でもある。水蒸気透過膜で仕切られた下側の流路を乾燥側流路21とし、上側を湿潤側流路22としているが、これらは目的に応じて適宜逆に構成してもよい。乾燥側流路21と湿潤側流路22は、水蒸気透過膜基材23、補強フレーム5、ハウジング8、必要に応じて、補強フレームと圧力プレートの間に介在するシール材7によって気密的に分離されており、乾燥側流路21は乾燥側吸気口211及び乾燥側排気口212に、湿潤側流路22は、湿潤側吸気口221及び湿潤側排気口222に接続されている。
湿潤側吸気口221から導入された湿潤気体は、図14の点線で示す湿潤側流路22を左から右方向に流れ、湿潤側排気口222から排出される。一方、乾燥側吸気口211から導入された乾燥気体は、図14の実線で示す乾燥側流路21を右から左に流れ、乾燥側排気口212から排出される。この過程の中で、湿潤気体の中に含まれる水蒸気が水蒸気透過膜を横切って乾燥気体に移動する。
ハウジングには、本発明の目的が損なわれない範囲内で様々な構造のものが使用可能であり、例えば、樹脂等を金型成型して作成することができる。ハウジングの材質には、ステンレス、アルミ、プラスチックなどの各種材料を使用することができる。また、リブやハニカム構造材などの公知の材料技術により、必要に応じて軽量化することができる。ハウジングがプリーツエレメントと接触する面はシール性を向上させるために十分平滑であることが好ましい。
ハウジングとプリーツエレメント6は、補強フレーム5を介して気密的に接触するが、この際、ハウジングと補強フレーム5の間に、必要に応じてシール材7を導入することができる。
【0025】
[ハウジングと圧力緩衝部]
本発明の圧力緩衝部は、気体分離(加湿)装置の吸気口・排気口で局所吹き付けを防止するために用いられる整流手段の呼称であり、外部配管と吸気口・排気口の間にハウジングが提供する補助機能の一部として設けられる。本発明において、圧力緩衝部は多くの場合に好ましく用いられる。
圧力緩衝部は、図8に示されるように、外部配管側とプリーツエレメント側にそれぞれ開口部Aと開口部Bを備える。開口部Aは外部配管と同じ形状をもち、開口部Bはプリーツエレメントの吸気口・排気口と同じ形状を持つ。開口部Bの幅は開口部Aの幅にくらべて広い場合が多いが、外部配管と吸気口・排気口の幅が近い場合は、圧力緩衝部を省略することが出来る。
圧力緩衝部の構造は、前記の整流作用を有するものであれば如何なる構造でも使用可能であるが、例えば、1)開口部Aと開口部Bを接続する管であってA−B間の長さが比較的長い構造、2)管の内部に不織布やネットからなるフィルタを設けた構造、3)開口部Aと開口部Bの気流の向きを互いに垂直とする構造等を好ましく用いることが出来る。これらの構造を採用することによって開口部Bにおける圧力分布及び速度分布を比較的均一にすることが可能となり、プリーツエレメントの全面にわたって気体分離(水蒸気透過)膜を有効利用できるため好ましい。このうち3)の構造は、他の構造よりもコンパクトで低圧力損失であるため、より好ましい。ここで「互いに垂直」とは管の内部で気流の向きを転じる概念を示す表記であり、90度に加えて30度〜150度の角度も含まれる場合がある。
【0026】
例えば加湿装置の場合、点線で表記された湿潤側流路22においては、外部回路から左のパイプの開口部A91に導入された気体は、金属板等で封鎖された対向面93にぶつかってパイプ内部に比較的均一な圧力場を形成する。その後、パイプの下部に設けられた排気側の開口部Bからプリーツエレメントの内部に導入され、水蒸気透過膜を介して乾燥側流路21へ水蒸気を透過させたあと、開口部Bから右のパイプの中に排気される。排気された気体はパイプの中で比較的均一な圧力場を形成したあと開口部A92から外部回路へ排気される。図11及び図13は、圧力緩衝部の例も示す概略図である。
図15は、圧力緩衝部の気体の流し方の一例を示す概略図である。aは、気体分離(加湿)装置の吸気口と排気口を上方から見て、気体が左手前から右奥へ流れる流路構成をとり、bは、気体が左手前から右手前へ流れる流路構成をとり、cは、気体が左手前と左奥の2箇所の吸気口から右手前と右奥の2箇所の排気口へ流れる流路構成をとっている。このうち、圧力緩衝作用はcの流路構成が最も好ましい。
圧力緩衝部の容積は、開口部Aと開口部Bで閉じられた空間の容積として定義される。外部配管の断面積とプリーツエレメント内幅の積を基準容積としたとき、圧力緩衝部の容積は基準容積に対して、0.1以上100以下が好ましい。本発明においてはこの比率を比率VBと呼称する。比率VBの下限は、0.2以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、1.0以上がより更に好ましく、2.0以上が特に好ましい。VBが0.1未満の場合は十分な圧力緩衝作用を得られない場合がある。VBの上限は特に限定されないが、100を超えると装置が必要以上に大型化するため好ましくない。
圧力緩衝部の幅は、プリーツエレメントの吸気口・排気口の幅に対して、50%以上800%以下が好ましい。幅の下限は、70%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましく、90%以上がより更に好ましい。幅の上限は、600%以下がより好ましく、400%以下が更に好ましく、200%以下がより更に好ましい。
圧力緩衝部の開口部Bの幅は、圧力緩衝部の幅の50%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上がより更に好ましい。
圧力緩衝部の開口部Bの断面積は、開口部Aの断面積の50%以上が好ましく、100%以上がより好ましく、200%以上が更に好ましく、300%以上がより更に好ましく、400%以上が特に好ましく、500%以上が最も好ましい。
加湿装置の場合、乾燥気体と湿潤気体が水蒸気透過膜を介して接触する形式としては、対向流、並行流、直交流及び放射流等の公知の様々な形式をとることができる。このうち対向流又は並行流が好ましい。
【0027】
[プリーツエレメントの積層]
本発明において、ハウジングに複数のプリーツエレメントを備えることによって大きな膜面積を得ることができる。例えば、本発明において、プリーツの高さPは5mm以上、200mm以下が好ましいが、何らかの理由で加湿装置の平面方向への大きさの制限が強く、かつ、高さ方向への大きさの制限が弱い場合、高さ200mm以下のエレメントを乾燥側流路又は湿潤側流路を共有しながら積層することによって大きな膜面積を達成することができる。
【0028】
[気体分離装置(加湿装置)の運転方法]
本発明者らは、プリーツ成形体からなる気体分離装置(加湿装置)に加え、その運転方法について鋭意研究した結果、プリーツエレメントの外形容積に対する単位時間あたりの気体流量を多くすることによって膜利用効率をさらに向上できることを見出した。
本発明の気体分離装置(加湿装置)の運転方法は、容積流量比が200以上であることを特徴とする。本発明の容積流量比とはプリーツエレメントの外形容器(Ve)に対する1分間あたりの装置全体に供給する気体(加湿装置の場合は乾燥空気)の流量(NL)の比で定義される。ここでNLとは標準状態における気体の体積を意味している。容積流量比の下限は、好ましくは400以上、より好ましくは600以上、更に好ましくは800以上、より更に好ましくは1000以上、特に好ましくは1200以上である。容積流量比の上限は特に制限されないが、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、10000以下であることが更に好ましい。
一定流量のもとに容積流量比を大きくするには定義に従ってプリーツエレメントの容積を小さくすることが必要であるが、例えばプリーツエレメントを相似形で1/2に縮小する(高さ0.5倍、幅0.5倍、長さ0.5倍)と、容積は1/8倍となるが、圧力損失は2倍に拡大する。本発明の運転方法はこうした場合も含まれるが、例えば圧力損失の増大が好ましくない場合は(高さ0.5倍、幅0.71倍、長さ0.35倍)とすることによって、容積は同じ1/8倍ながら圧力損失は1倍を維持することが出来る。
容積流量比の単位は(1/分)であり、時間の逆数の次元を持つ。すなわち容積流量比が200以上とは、気体分離装置(加湿装置)内部における気体の滞留時間が平均して0.3秒以下であることと等価である。
本発明の断面積流量比とは、プリーツ方向と垂直に切断した断面積(cm2)に対する1分間当たりの乾燥気体の流量(NL/分)の比で定義される。本発明における断面積流量比の単位は(10m/分)であり、速度の次元を持つ。容積流量比(滞留時間)は長過ぎないことが好ましく、断面積流量比(装置内部における気体の速度)は速過ぎないことが好ましい。このことは、一定容積のもとでは比率Rの小さな気体分離装置(加湿装置)がより好ましいことを意味している。即ち、本発明の気体分離装置(加湿装置)とその運転方法は、互いに装置と運転方法の立場から同じ技術思想を具現化するためになされた発明である。断面積流量比の上限は、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下、より更に好ましくは40以下、特に好ましくは20以下である。
【0029】
[加湿装置の性能]
以下、本発明の気体分離装置を加湿装置として用いた場合の性能について説明する。
本発明の加湿装置の性能は以下のような指標で評価することが出来る。以下の説明では簡略化のために乾燥側入口、乾燥側出口、湿潤側入口、湿潤側出口をそれぞれDI、DO、WI、WOと呼称する。
水分移動量(g/分)=DO水蒸気流量−DI水蒸気流量
容積当たり水分移動量(g/分/L)=水分移動量/プリーツエレメント容積
平均水蒸気分圧差(kPa)=(WI水蒸気分圧+WO水蒸気分圧−DI水蒸気分圧−DO水蒸気分圧)/2
交換能力(g/分/kPa/L)=水分移動量/平均水蒸気分圧差
容積当たりの交換能力(g/分/kPa/L)=交換能力/プリーツエレメント容積
圧力損失和(kPa)=WI全圧−WO全圧+DI全圧−DO全圧
総合性能(g/分/kPa2/L)=容積当たり交換能力/圧力損失和(kPa)×1000容積当たりの交換能力は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、0.7以上がより更に好ましく、1.0以上が特に好ましい。容積当たりの交換能力が0.1未満では十分な加湿を行うために必要な装置サイズが大きくなり過ぎるため好ましくない。多くの加湿用途においては、2.5以上の容積当たりの交換能力があれば、十分に目的を達成することができる。
圧力損失は、乾燥側と湿潤側の両方とも、50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましく、5kPa以下がより更に好ましく、3kPa以下が特に好ましい。圧力損失が高く、50kPaを超える場合は、多くの加湿用途において加湿装置で失われるエネルギーが無視できなくなるため好ましくない。
総合性能は、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、40以上が更に好ましく、60以上がより更に好ましく、80以上が特に好ましい。
【実施例】
【0030】
実施例1
[加湿膜]
ポリエチレン製微多孔膜(膜厚16μm、目付け9g/m2気孔率40%、透気度300秒)を、パーフルオロイオン交換樹脂溶液(旭化成(株)製、Aciplex−SS−1000)に連続浸漬装置を使用して浸漬し、80℃で乾燥することにより複合加湿膜を得た。このときのパーフルオロイオン交換樹脂の塗工目付け量は4g/m2であった。
[プリーツエレメント]
作成した加湿膜の片面に通気性補強材としてポリプロピレン製ネットA(目付け104g/m2、繊維径0.3mm、開口率66%、厚さ0.7mm)及びポリプロピレン製ネットB(目付け50g/m2、繊維径0.25mm、開口率86%、厚さ0.5mm)を、反対面にポリプロピレン製ネットC(目付け50g/m2、繊維径0.25mm、開口率86%、厚さ0.5mm)を配置し、プリーツ高さHを40mmとしてプリーツ成形を行った。このプリーツをプリーツエレメントとして幅400mm、長さ240mm、高さ44mmとなるような補強フレーム(折り曲げ部の幅10mm)を使用し、エポキシ接着剤を用いてプリーツ成形体と補強フレームを固定し、シールすることにより平面型プリーツエレメントを作成した。この時、山数Nは137山とし、プリーツピッチPは2.9mmとした。また、この時のピッチPの加湿膜基材の厚さTに対する比率Mは、1.7であった。
[加湿エレメント・加湿装置]
プリーツエレメントを図11のようなハウジングと接続することにより加湿エレメント及び加湿装置を構成した。このとき、基材部流路と空間部流路の断面積比率Cは湿潤側では1.1、乾燥側では1.2であり、乾燥側全流路容積に対する湿潤側流路容積の比率Vは1.5とした。また、湿潤側の空間部には流路制御手段として金網(厚さ3mm、線径1.5mm、開口率78%)を配置した。また、プリーツ高さHに対する吸気口と排気口間の距離の比率Rは3.6とした。湿潤空気、乾燥空気の吸排気は向流接触となるように接続した。
[評価]
この加湿装置の湿潤側入口に相対湿度90%で温度80℃の湿潤空気を、流量3000NL/minで湿潤側入口の圧力を40kPaGとなるように湿潤側出口に設けたバルブにより調整し供給するとともに、乾燥側入口に相対湿度1%で温度80℃の乾燥空気を流量3000NL/minで乾燥側出口の圧力を60kPaGとなるように乾燥側出口に設けたバルブにより調整し供給した。
これらの条件での加湿エレメントに供給を1時間行った後に、湿潤側出口及び乾燥側出口の相対湿度と温度を計測し、加湿膜を介しての水分移動量を算出した。また、湿潤側吸排気口間及び乾燥側吸排気口間の圧力損失を測定した。
得られた結果を表1に示す。
【0031】
実施例2
加湿膜及び通気性補強材は実施例1と同様のものを使用し、プリーツ高さHを40mmとしてプリーツ成形を行った。このプリーツをプリーツエレメントとして幅400mm、長さ120mm、高さ44mmとなるような補強フレームを使用し、エポキシ接着剤を用いてプリーツ成形体と補強フレームを固定して、シールすることにより平面型プリーツエレメントを作成した。この時、山数Nは176山とし、プリーツピッチPは2.3mmとした。また、この時のピッチPの加湿膜基材の厚さTに対する比率Mは、1.4であった。
プリーツエレメントを図11のようなハウジングと接続することにより加湿エレメント及び加湿装置を構成した。このとき、基材部流量と空間部流量の断面積比率Cは湿潤側では1.1、乾燥側では1.2であり、乾燥側全流路容積に対する湿潤側流路容積の比率Vは1.5とした。また、湿潤側の空間部には流路制御手段として金網(厚さ3mm、線径1.5mm、開口率78%)を配置した。また、プリーツ高さHに対する吸気口と排気口間の距離の比率Rは1.9とした。この加湿装置を実施例1と同じ条件で評価を行った。
得られた結果を表1に示す。
【0032】
実施例3
加湿膜及び通気性補強材は実施例1と同様のものを使用し、プリーツ高さHを40mmとしてプリーツ成形を行った。このプリーツをプリーツエレメントとして幅300mm、長さ300mm、高さ44mmとなるような補強フレームを使用し、エポキシ接着剤を用いてプリーツ成形体と補強フレームを固定し、シールすることにより平面型プリーツエレメントを作成した。この時、山数Nは103山とし、プリーツピッチPは2.9mmとした。比率Mは、1.7であった。
プリーツエレメントを図11のようなハウジングと接続することにより加湿エレメント及び加湿装置を構成した。このとき、基材部流量と空間部流量の断面積比率Cは湿潤側1.1、乾燥側1.2であり、乾燥側全流路容積に対する湿潤側流路容積の比率Vは1.5とした。また、湿潤側の空間部には流路制御手段として金網(厚さ3mm、線径1.5mm、開口率78%)を配置した。また、プリーツ高さHに対する吸気口と排気口間の距離の比率Rは5.8とした。この加湿装置を実施例1と同じ条件で評価を行った。
得られた結果を表1に示す。
【0033】
(比較例)
加湿膜及び通気性補強材は実施例1と同様のものを使用し、プリーツ高さHを24mmとしてプリーツ成形を行った。このプリーツをプリーツエレメントとして幅240mm、長さ430mm、高さ28mmとなるような補強フレームを使用し、エポキシ接着剤を用いてプリーツ成形体と補強フレームを固定し、シールすることにより平面型プリーツエレメントを作成した。この時、山数Nは82山とし、プリーツピッチPは2.9mmとした。比率Mは、1.7であった。
プリーツエレメントを図11のようなハウジングと接続することにより加湿エレメント及び加湿装置を構成した。このとき、基材部流量と空間部流量の断面積比率Cは湿潤側では1.2、乾燥側では1.3であり、乾燥側全流路容積に対する湿潤側流路容積の比率Vは1.5とした。また、湿潤側の空間部には流路制御手段として金網(厚さ3mm、線径1.5mm、開口率78%)を配置した。また、プリーツ高さHに対する吸気口と排気口間の距離の比率Rは14.0とした。この加湿装置を実施例1と同じ条件で評価を行った。
得られた結果を表1に示す。
表1には本実施例及び比較例の加湿装置の性能を示した。
いずれの実施例も低い圧力損失で、高い容積当たりの加湿性能を有し、高い総合性能を示している。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例4
加湿空気及び乾燥空気の評価流量を表2の様に変更した以外は、実施例1と同様の加湿装置を使用して、同様の条件で評価を行った。
得られた結果を表2に示す。
容積流量比が大きいほど水分移動量が大きい結果となり、容積当たりの効率が向上していることがわかる。
【0036】
【表2】

【0037】
実施例5
プリーツエレメント幅を300mm、山数Nを103山とした以外は全て実施例1と同様の条件で評価を行った。
得られた結果を表3に示す。
実施例1と実施例6を比較すると、一定流量のもとにプリーツエレメント容積を小さくして容積流量比を大きくすることにより、容積当たりの効率が向上していることがわかる。
【0038】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明による気体分離装置及びその装置の運転方法は、固体高分子型燃料電池に用いる気体の加湿・除湿のほか、空調装置や工業用の気体製造装置など様々な用途に対して、コスト、容積効率及び物理的耐久性に優れものとして利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 燃料電池
2 加湿装置
3 コンプレッサー
4 水素供給源
5 補強フレーム
6 プリーツエレメント
7 シール材
8 ハウジング
21 乾燥側流路
22 湿潤側流路
23 気体分離膜基材でもあるプリーツ成形体
23A 気体分離膜
23B 通気性補強材
31、32、33、34、41、42 配管
35 カソード側の吸気口
36 カソード側の排気口
37 アノード側の吸気口
38 アノード側の吸気口
51 接着剤
52 補強フレーム
61 吸気口・排気口の幅(w)
62 吸気口・排気口の長さ(Le)
63 吸気口・排気口の間隔
70 流路構成手段
91、92 開口部A
93 対向面
211、221 吸気口
212、222 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体分離膜と少なくとも1層の通気性補強材からなる複合膜をプリーツ加工してなるプリーツ成形体の外辺部に補強フレームが配置されているプリーツエレメントの上面及び下面が、少なくとも1組の吸気口及び排気口を有するプレートで覆われている気体分離装置であって、
前記上面及び下面において、前記吸気口と前記排気口とを繋ぐ流線と、前記プリーツ成形体の山及び谷が平行であることを特徴とする気体分離装置。
【請求項2】
気体分離膜が水蒸気透過膜である請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項3】
加湿機能を有する請求項2に記載の気体分離装置。
【請求項4】
外部配管と吸気口・排気口の間に圧力緩衝部がある請求項1〜3のいずれか一項に記載の気体分離装置。
【請求項5】
すべての吸気口と、排気口と、圧力緩衝部とが一体成型されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の気体分離装置。
【請求項6】
補強フレームがシール材料で構成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の気体分離装置。
【請求項7】
少なくとも1個のプリーツエレメントが2枚の圧力プレートの中に配置され、各プリーツエレメントの補強フレームと2枚の圧力プレートが互いに密着して1つの気密空間を構成する請求項1〜6のいずれか一項に記載の気体分離装置。
【請求項8】
プリーツエレメントの外形容積(Ve)に対する単位時間当たりの気体流量(NL)の比(容積流量比=NL/Ve)を200以上で運転する請求項1〜7のいずれか一項に記載の気体分離装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−56343(P2013−56343A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−253495(P2012−253495)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【分割の表示】特願2006−513587(P2006−513587)の分割
【原出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】