説明

気体燃料用の硫黄検出器

本発明は、ガス流2と、ガス流内に配置したゼオライト材料と、からなる硫黄検出器8を提供する。種々の硫黄を検出することができるが、本発明は、硫化ジメチル及び有機硫黄に特に適している。ゼオライト材料は、ガス流2中の硫黄と物理的に結合することによって硫黄の存在下において変色する。この物理的結合は物理的吸着とも呼ばれる。ゼオライト材料は、再生可能であり、ゼオライト材料を再生することによって、硫黄が放出され、元の色に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス流中の、特に、燃料電池技術に使用される炭化水素燃料ガス流中の、硫黄の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプライン天然ガスは供給が豊富で産業基盤が十分に発達していることから、分散型燃料電池発電システムに選択される主要燃料となっている。燃料処理システムをその装置入口で用いて天然ガス中のメタン及びより高級な炭化水素を改質することによって、固体酸化物型燃料電池及び溶融炭酸塩型燃料電池は、化学的エネルギーを電気エネルギーに直接転換して電力を供給する。天然ガスを処理して硫黄を除去することは、通常、抽出地点近傍で行なわれるが、この処理は、残留硫化水素を、低濃度(例えば1〜2mg/m3)の混入物質として、残す恐れがある。天然由来の硫化水素に加えて、パイプライン天然ガスは、付臭剤として意図的に添加された硫化ジメチル又は他の有機硫黄種を含んでいる。
【0003】
この燃料改質プロセスは、熱、水蒸気及び化学反応速度を高める触媒を必要とする。最も一般的に用いられる触媒はニッケルをベースにしたものである。天然ガスの改質温度においては、硫黄が供給ガス中に存在すると、触媒は金属硫化物への転換を非常に受け易い。これにより、触媒は不活性化され、改質プロセスが停止させられる。従って、ガス流から硫黄を検出し除去して所望の燃料改質を起させることが必要である。また、改質プロセスを切り抜けた硫黄は大気汚染の原因となる。
【0004】
例えばKataokaの米国特許第6,828,141号により、材料を精製する技術は発展した。しかし、このプロセスは硫黄の特定的な検出に対しては利点がない。先行技術には他の問題もあるが、その一部は更に読み進めれば明らかとなろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気体燃料流中の硫黄を容易に検出することのできる方法及び装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記を考慮すると、とりわけ気体燃料流中の硫黄の検出を容易にする方法及び装置が本発明と一致する。硫黄は、気体燃料から除去される必要がある。硫黄は、天然ガス中にみられる天然混入物質であり、付臭処理の一部として添加された混入物質であることもある。しかし、硫黄は、また、触媒及び燃料電池に著しく害を与え、性能の低下を引き起こす。本発明は、気体燃料流中の硫黄を検出するための簡便かつ再使用可能な方法を提供する。
【0007】
銅交換ゼオライト−Yは、硫化ジメチル及び有機硫黄化合物を共有結合では結合しないものの、非常に良く物理的に吸着する。銅交換ゼオライト−Yは、また、吸着がおきると、薄緑色から暗褐色へはっきりと変色する。この変性ゼオライトは低濃度の硫黄付臭剤を吸収することができるとともに、はっきりと分かる肉眼的変化を示すので、ガス流中の硫黄を検出するのに使用可能である。変性ゼオライトの変化の検出は視覚的に行なってもよいし、光学検出器を用いて行なってもよい。
【0008】
変性ゼオライトは、ガス流に加えてもよいし、パイロットライトと同様、分岐内に分割してもよい。変性ゼオライトは、硫黄系付臭剤と非共有結合的に結合するので、熱を用い、ガスをそのゼオライト上に吹き付けることによって、再生することができる。
【0009】
本発明のこれら及び他の目的、特徴、並びに利点は、ガス流とガス流内に配置したゼオライト材料とからなる硫黄検出器による具体的な実施形態によって示される。種々の硫黄を検出することができるが、本発明は硫化ジメチル及び有機硫黄に特に適している。ゼオライト材料は、ガス流中の硫黄と物理的に結合することによって硫黄の存在下において変色する。この物理的結合は物理的吸着とも呼ばれる。ゼオライト材料は再生可能であり、ゼオライト材料を再生することにより、硫黄が放出され、ゼオライト材料は元の色に戻る。
【0010】
具体的な諸実施形態では、ガス流は燃料である。ゼオライト材料は、金属交換ゼオライト−Yであり、この金属は、特に銅である。ゼオライト材料は、ガス流の側流内に配置してもよく、この側流を用いて硫黄検出器の感度を検定することができる。
【0011】
他の実施形態は、光学検出器を更に含み、光学検出器はゼオライト材料の色の変化を測定することができる。光学検出器を検定して、ゼオライト材料の変色の程度によってガス流中の硫黄濃度を推定することができる。ゼオライト材料は、ガス流中の硫黄濃度が少なくとも1mg/m3のときに変色し、約300℃まで加熱し、ガス流に曝露することによって再生される。再生及び観察は、ガス流からゼオライト材料を取り出した後に、例えば検出器をガス流から物理的に取り出した後に、行なうことができる。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、ガス流と、ガス流内に配置した基材上の銅交換ゼオライト−Y膜と、光学検出器と、からなる硫黄検出器を提供する。ゼオライト−Y膜は、ガス流中の硫黄濃度が少なくとも1mg/m3のときに、ガス流中の硫黄と物理的に結合することによって硫黄存在下において変色する。光学検出器はゼオライト−Yの色の変化を測定することができる。ゼオライト−Yは、約300℃まで加熱し、ゼオライト−Yをガスに曝露することによって再生され、これによりガス流が脱着された硫黄化合物を運び去る。
【0013】
具体的な諸実施形態では、ゼオライト−Yを再生するための加熱は、ヒータを用いて、直接ゼオライト−Yを加熱することによって行なわれる。別法では、ゼオライト−Yを再生するための加熱は、ガス流を約300℃にすることによって行なわれる。
【0014】
更に別の実施形態では、本発明は、金属交換ゼオライトの薄膜を基材上に付着させ、次いで、このゼオライトをガス流内に配置することからなる、ガス流中の硫黄を検出する方法を提供する。次いで、ゼオライトの変色を観察し、この変色を認識し、ガス流中に硫黄が存在することを推論する。
【0015】
この方法の更に具体的な実施形態では、金属交換ゼオライトは、銅交換ゼオライト−Yである。この基材は、ガス流用のシステムの構成部分であってもよい。また、ゼオライトの変色の観察は、光学検出器によって行なわれ得る。
【0016】
本発明の他の実施形態も存在し、これは詳細な説明を更に読めば明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を、添付図面を参照して、実施例により、更に詳細に説明する。
【0018】
本発明は、気体燃料流中の硫化ジメチル及び有機硫黄を迅速に検出するシステム並びに方法を提供する。先行技術では、インライン高速応答型硫黄検出器は、硫化ジメチル又はメルカプタン類及びチオフェン類等の有機硫黄を検出することができない。先行技術の硫黄検出器は、硫化水素のみの検出に適したものである。あらゆる硫黄化合物の検出を可能にする分析には、不連続的に、包括的なサンプルを使用して、このサンプルを、後から、特別な検出器を装備したガスクロマトグラフを用いて処理する必要があった。試料採取から分析終了までの経過時間は約20分である。気体燃料流中の硫黄が少量であっても、鋭敏な触媒を台無しにし、燃料改質を停止させ、或いは燃料電池を短時間で不活性化することがあり得るので、この時間の長さは問題となる恐れがある。また、ガスクロマトグラフ及び特別な硫黄検出器は、本発明の簡便さに比して、非常に高価なものである。
【0019】
本発明では、金属交換ゼオライト(ゼオライト)の薄層を用いる。典型的には、薄層を強固な基材上に搭載し、次いで気体燃料流に曝露する。僅か1mg/m3の硫黄化合物がゼオライトの層を薄緑色から暗褐色へ変色させる。種々のゼオライトが存在するが、ゼオライト−Yとして知られている種類が、孔径、疎水性及び変色の明敏性から、本発明には特に適している。金属交換ゼオライトの金属は、銀、亜鉛、鉄、特に銅等、種々のものであってよい。
【0020】
硫黄の吸着は物理的(非共有結合的)結合であり、従って、可逆性である。吸着された硫黄の物理的結合を壊すために、熱が加えられる。約300℃の温度が硫黄吸着を逆転させ、硫黄を環境に放出する。これは、ヒータを用いて直接ゼオライトを加熱することによって行なってもよいし、高温のガスをゼオライト上に通過させることによって行なってもよい。硫黄を放出後、ゼオライトは薄緑色に戻る。銅交換ゼオライト−Yは、吸着された硫黄化合物を放出すると、直ちに元の薄緑色に戻る。
【0021】
従って、硫黄を検出することは、変色に気付くのと同じほど簡単なものである。ゼオライト材料をガス流に挿入したプローブ上に設置し、次いで、取り出し、検査してもよい。或いは、ガス流内のゼオライト材料を観察するために、窓を設けてもよい。労力を要しない選択肢として、光センサーを用いてゼオライトを観察してもよい。光センサーは、当該技術分野で公知であり、例えば典型的には、光センサーは、それが測定中の物体が暗くなるにつれて低下する電圧を、記録する。
【0022】
光センサーは非常に正確なものであるので、光センサーはゼオライトの色の変化に対して容易に検定することができ、ガス流を測定することができる。これにより、ガス流中の硫黄量を正確に測定することができる。ゼオライトは、直接ガス流内に置かなくてもよい。パイロットライトについて用いられるものに相当する側流が、センサーの方に分岐される。
【0023】
図1は、そういった一実施形態を示す。気体燃料2がこのシステムに入る。この略図では、燃料は脱硫器4を通過する。脱硫の前か後に、弁6を開いて燃料流の少部分を検出器8へ方向転換する。検出器10を出て行くガスは、燃料流に再び入れられるか、廃棄される。既知濃度の硫黄混入物質を含む検定ガスを用いて検出器の感度を検定することが好ましい。
【0024】
前述のように、使用される特定のタイプのゼオライトは、銅交換ゼオライト−Yである。ゼオライトは、シリコンアルミニウム分子であり、Yは、そのゼオライトの構造が、空隙及び比較的疎水性であること等の化学特性に関して、規則的であることを、指す。このゼオライトは約0.05mm以下の薄層として形成されるが、この厚さは変えられてもよい。次いで、ゼオライトは、基材の上に置かれる。この基材は構造的な支持体となるものであり、多様な形状や大きさが可能であり、ガス流装置の一部であってもよい。
【0025】
一実施形態では、本発明はガス流とこのガス流内に配置したゼオライト材料とからなる硫黄検出器を提供する。種々の硫黄を検出することができるが、本発明は、硫化ジメチル及び有機硫黄に特に適している。ゼオライト材料は、ガス流中の硫黄と物理的に結合することによって硫黄の存在下において変色する。この結合は、物理的吸着とも呼ばれる。ゼオライト材料は再生可能であり、ゼオライト材料を再生することによって、硫黄が放出され、元の色に戻る。
【0026】
具体的な実施形態では、ガス流は燃料である。ゼオライト材料は、金属交換ゼオライト−Yであり、この金属は特に銅である。ゼオライト材料はガス流の側流内に配置されてもよく、側流を用いて硫黄検出器の感度を検定してもよい。
【0027】
その他の実施形態は光学検出器を更に含み、この光学検出器は、ゼオライト材料の色の変化を測定することができる。この光学検出器を検定してゼオライト材料の変色の程度によってガス流中の硫黄濃度を推定することができる。ゼオライト材料は、ガス流中の硫黄濃度が少なくとも1mg/m3のときに変色し、約300℃まで加熱しゼオライト材料をガス流に曝露することによって再生される。再生及び観察は、ガス流からゼオライト材料を取り出した後、例えば検出器をガス流から物理的に取り出した後に行なうことができる。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、ガス流と、ガス流内に配置した基材上の銅交換ゼオライト−Y膜と、光学検出器と、からなる硫黄検出器を提供する。このゼオライト−Y膜は、ガス流中の硫黄濃度が少なくとも1mg/m3のときに、ガス流中の硫黄と物理的に結合することによって硫黄存在下において変色する。光学検出器はゼオライト−Yの色の変化を測定することができる。ゼオライト−Yは、約300℃まで加熱しゼオライト−Yをガスに曝露することによって再生され、これによりガス流が脱着された硫黄化合物を運び去る。
【0029】
特別な実施形態では、加熱によるゼオライト−Yの再生は、ヒータを用いて、直接ゼオライト−Yを加熱することによって行なわれる。別法では、加熱によるゼオライト−Yの再生は、ガス流を約300℃にすることによって行なわれる。
【0030】
更に別の実施形態では、本発明は、金属交換ゼオライトの薄膜を基材上に付着させ、次いでこのゼオライトをガス流内に配置することからなる、ガス流中の硫黄を検出する方法を提供する。次いで、ゼオライトの変色を観察し、この変色を認識し、ガス流中に硫黄が存在することを推論する。
【0031】
この方法の更に具体的な実施形態では、金属交換ゼオライトは、銅交換ゼオライト−Yである。この基材は、ガス流用のシステムの構成部分であり得る。また、ゼオライトの変色の観察は、光学検出器によって行なってもよい。
【0032】
本発明の具体的な実施形態を詳細に記載してきたが、当業者であれば、本明細書の教示の全体に照らしてその細部について種々の改変及び代替を加え得ることを理解できよう。従って、本明細書に開示の具体的な諸構成は、説明することのみを目的とするものであって、本発明の範囲を限定しようとするものではなく、本発明の範囲は、添付の請求の範囲の全範囲及びその等価物に対して与えられるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を用いて如何にしてサンプルガス流の硫化ジメチル及び有機硫黄の存在を試験することができるかを示す回路図である。
【符号の説明】
【0034】
2 気体燃料
4 脱硫器
6 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流と、このガス流内に配置され、ガス流中の硫黄と物理的に結合することによって硫黄存在下において変色するゼオライト材料と、からなる硫黄検出器であって、ゼオライト材料が再生可能であり、且つゼオライト材料を再生することによって硫黄が放出され、ゼオライト材料が元の色に戻る、硫黄検出器。
【請求項2】
ガス流が燃料である、請求項1に記載の硫黄検出器。
【請求項3】
ゼオライト材料が金属交換ゼオライト−Yである、請求項1に記載の硫黄検出器。
【請求項4】
金属が銅である、請求項3に記載の硫黄検出器。
【請求項5】
ゼオライト材料がガス流の側流内に配置された、請求項1に記載の硫黄検出器。
【請求項6】
側流が硫黄検出器の感度を検定するのに用いられる、請求項5に記載の硫黄検出器。
【請求項7】
光学検出器を更に含み、この光学検出器はゼオライト材料の色の変化を測定することができる、請求項1に記載の硫黄検出器。
【請求項8】
光学検出器を検定して、ゼオライト材料の変色の程度によってガス流中の硫黄濃度を概算する、請求項7に記載の硫黄検出器。
【請求項9】
ゼオライト材料が、ガス流中の硫黄濃度が少なくとも1mg/m3であるときに、変色する、請求項1に記載の硫黄検出器。
【請求項10】
ゼオライト材料が、約300℃まで加熱され、ガス流に曝露されることによって再生される、請求項1に記載の硫黄検出器。
【請求項11】
ガス流からゼオライト材料を除去した後に再生が行なわれる、請求項10に記載の硫黄検出器。
【請求項12】
ゼオライト材料が、ガス流からゼオライト材料を除去した後に観察される、請求項1に記載の硫黄検出器。
【請求項13】
ガス流と、ガス流内に配置された基材上の銅交換ゼオライト−Y膜と、光学検出器と、からなる硫黄検出器であって、ゼオライト−Y膜がガス流中の硫黄と物理的に結合することによって硫黄の存在下において変色し、ゼオライト−Yがガス流中の硫黄濃度が少なくとも1mg/m3のときに変色し、光学検出器がゼオライト−Yの色の変化を測定することができ、ゼオライト−Yが約300℃まで加熱され、ガスに曝露されることによって再生され、ガス流が吸着された硫黄化合物を運び去る、硫黄検出器。
【請求項14】
加熱によるゼオライト−Yの再生が、ヒータを用いて直接ゼオライト−Yを加熱することによって行なわれる、請求項13に記載の硫黄検出器。
【請求項15】
加熱によるゼオライト−Yの再生が、ガス流を約300℃にすることによって行なわれる、請求項13に記載の硫黄検出器。
【請求項16】
ガス流中の硫黄を検出する方法であって、金属交換ゼオライトの薄膜を基材上に付着させ、ゼオライトをガス流内に配置し、ゼオライトの変色を観察し、変色を認識し、ガス流中に硫黄が存在することを推論することからなる、ガス流中の硫黄を検出する方法。
【請求項17】
金属交換ゼオライトが銅交換ゼオライト−Yである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
基材がガス流用のシステムの構成部分である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ゼオライトの変色の観察が光学検出器によって実行される、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−533677(P2009−533677A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505354(P2009−505354)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/047066
【国際公開番号】WO2007/120235
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(599078705)シーメンス エナジー インコーポレイテッド (57)
【Fターム(参考)】