説明

気体発生装置

【課題】パーティクルの発生による気体の純度の低下が防止された気体発生装置を提供する。
【解決手段】ベローズポンプ61は、モータ70およびヘッド部71を備える。ヘッド部71内に、金属からなるベローズ72が収容されている。ベローズ72内に気体圧縮室73が形成されている。モータ70が作動することにより、ベローズ72が伸縮する。それにより、気体圧縮室73が圧縮および拡張され、フッ素ガスが気体導入口74aから気体導出口74aへ送り出される。ベローズポンプ61のモータ70とヘッド部71との間に、ボール減速機62が取り付けられる。ボール減速機62は、モータ70の回転速度を所定の減速比で減速させてヘッド部71内のベローズ72に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を発生する気体発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の製造工程等において、材料の洗浄および表面改質等の種々の用途でフッ素ガスが用いられている。フッ素ガス自体が用いられることもあり、フッ素ガスを基に合成されたNF(三フッ化窒素)ガス、NeF(フッ化ネオン)ガスおよびArF(フッ化アルゴン)ガス等の種々のフッ素系ガスが用いられることもある。
【0003】
フッ素ガスを安定に供給するために、例えばHF(フッ化水素)を電気分解してフッ素ガスを発生する気体発生装置が用いられる。
【0004】
特許文献1に示されるフッ素ガス発生装置は、電解槽、HF吸着塔、バッファタンクおよびコンプレッサを備える。電解槽内にはKF−HF系混合溶融塩からなる電解浴が形成されている。その電解浴にHFが供給され、HFの電気分解が行われる。それにより、電解槽の陽極からフッ素ガスが発生する。発生したフッ素ガスは、HF吸着塔に導かれる。HF吸着塔においてフッ素ガスに混入しているHFが除去される。
【0005】
このようにして得られた高純度のフッ素ガスは、バッファタンクに貯留される。バッファタンク内の圧力は、コンプレッサにより調整される。そして、必要に応じてバッファタンクからフッ素ガスが供給される。
【特許文献1】特開2004−107761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなフッ素ガス発生装置では、一般的に、コンプレッサとして金属製のベローズを備えたベローズポンプが用いられる。ベローズポンプの作動時には、モータによってベローズが駆動され、伸縮する。それにより、バッファタンク内のフッ素ガスが圧縮される。
【0007】
しかしながら、ベローズポンプを継続的に使用すると、ベローズが摩耗してパーティクルが発生し、そのパーティクルが不純物としてフッ素ガス中に混入する。それにより、フッ素ガスの純度が低下し、種々の用途において処理能力が低下する。
【0008】
本発明の目的は、パーティクルの発生による気体の純度の低下が防止された気体発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る気体発生装置は、気体を発生させる気体発生部と、気体発生部により発生した気体を貯蔵する気体貯蔵部と、気体発生部により発生した気体を気体貯蔵部に圧縮して送る気体圧縮搬送部とを備え、気体圧縮搬送部は、所定の速度で回転するモータと、モータの回転に伴って伸縮するベローズと、ベローズの伸縮に伴って圧縮および拡張するようにベローズの内部に形成され、気体を導入するための気体導入口および気体を導出するための気体導出口を有する気体圧縮室と、モータの回転速度を減速させてベローズに伝達する回転速度伝達部とを有するものである。
【0010】
その気体発生装置においては、気体発生部により発生した気体が、気体圧縮搬送部により気体貯蔵部に圧縮して送られる。その気体は、気体貯蔵部に貯蔵される。気体貯蔵部に貯蔵された気体は、必要に応じて外部に供給される。
【0011】
気体圧縮搬送部においては、モータの回転が回転速度伝達部を介してベローズに伝達されることにより、ベローズが伸縮し、ベローズの内部に形成された気体圧縮室が圧縮および拡張する。それにより、気体導入口を通して気体圧縮室に気体が導入されるとともに気体圧縮室から気体導出口を通して気体が導出され、気体が搬送される。
【0012】
この場合、回転速度伝達部がモータの回転速度を減速させてベローズに伝達する。そのため、ベローズの伸縮動作が抑制される。それにより、ベローズの摩耗によるパーティクルの発生が抑制される。したがって、気体貯蔵部に送られる気体の純度の低下が防止される。
【0013】
また、モータの回転速度を直接調整する場合に比べて、簡単な構成で容易にベローズの伸縮動作を抑制することができるとともに、モータの動作不良の発生を抑制することができる。
【0014】
(2)回転速度伝達部は、モータの回転速度を毎分当り100回転以上1000回転以下に減速させてもよい。
【0015】
この場合、気体貯蔵部への気体の供給圧を適切に維持しつつベローズの摩耗によるパーティクルの発生を十分に抑制することができる。
【0016】
(3)第2の発明に係る気体発生装置は、気体を発生させる気体発生部と、気体発生部により発生した気体を貯蔵する気体貯蔵部と、気体発生部により発生した気体を気体貯蔵部に圧縮して送る気体圧縮搬送部とを備え、気体圧縮搬送部は、モータと、モータにより伸縮駆動されるベローズと、ベローズの伸縮に伴って圧縮および拡張するようにベローズの内部に形成され、気体を導入するための気体導入口および気体を導出するための気体導出口を有する気体圧縮室と、モータをモータの定格回転速度よりも低い回転速度で回転させるインバータとを有するものである。
【0017】
その気体発生装置においては、気体発生部により発生した気体が、気体圧縮搬送部により気体貯蔵部に圧縮して送られる。その気体は、気体貯蔵部に貯蔵される。気体貯蔵部に貯蔵された気体は、必要に応じて外部に供給される。
【0018】
気体圧縮搬送部においては、モータによってベローズが伸縮駆動されることにより、ベローズの内部に形成された気体圧縮室が圧縮および拡張する。それにより、気体導入口を通して気体圧縮室に気体が導入されるとともに気体圧縮室から気体導出口を通して気体が導出され、気体が搬送される。
【0019】
この場合、インバータによりモータが定格回転速度よりも低い回転速度で回転する。そのため、ベローズの伸縮動作が抑制される。それにより、ベローズの摩耗によるパーティクルの発生が抑制される。したがって、気体貯蔵部に送られる気体の純度の低下が防止される。
【0020】
(4)インバータは、モータを毎分当り100回転以上1000回転以下で回転させてもよい。
【0021】
この場合、気体貯蔵部への気体の供給圧を適切に維持しつつベローズの摩耗によるパーティクルの発生を十分に抑制することができる。
【0022】
(5)気体発生部は、フッ化水素を含む混合溶融塩を電気分解してフッ素を発生させてもよい。
【0023】
この場合、発生したフッ素の純度を高く維持することができる。それにより、種々の用途で効果的にフッ素を用いることができる。
【0024】
(6)気体発生装置は、気体発生部により発生した気体からフッ化水素を除去するフッ化水素除去部をさらに備えてもよい。この場合、より高純度のフッ素を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ベローズの摩耗によるパーティクルの発生が抑制される。それにより、気体貯蔵部に送られる気体の純度の低下が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る気体発生装置について図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態においては、気体発生装置の一例としてフッ素ガスを発生するフッ素ガス発生装置について説明する。
【0027】
(1)第1の実施の形態
(1−1)フッ素ガス発生装置
図1は、第1の実施の形態に係るフッ素ガス発生装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、フッ素ガス発生装置1は、筐体100を備える。筐体100の内部は、第1処理室101、第2処理室102および第3処理室103に区画されている。
【0028】
第1処理室101と第2処理室102との間には隔壁104が設けられ、第2処理室と第3処理室との間には隔壁105が設けられている。隔壁104により第1処理室101と第2処理室102との間で雰囲気が遮断され、隔壁105により第1処理室101と第3処理室103との間で雰囲気が遮断されている。
【0029】
第1処理室101には、電解槽10が収容されている。電解槽10は、例えばNi(ニッケル)、モネル、純鉄もしくはステンレス鋼等の金属または合金により形成されている。電解槽10内にKF−HF系混合溶融塩からなる電解浴11が形成されている。電解浴11に一部浸漬するように、円筒状の隔壁12が配置されている。隔壁12は、例えばNiまたはモネルからなる。隔壁12の内側に陽極室10aが形成され、隔壁12の外側に陰極室10bが形成される。
【0030】
電解浴11の陽極室10a内の領域に陽極13が配置され、陰極室10b内の領域に陰極14が配置されている。陽極室10aにおいて主にフッ素ガスが発生し、陰極室10bにおいて主に水素ガスが発生する。陽極13としては、低分極性炭素電極を用いることが好ましい。陰極14としては、例えばNiを用いることが好ましい。
【0031】
電解槽10の上部には、ガス排出口15,16が設けられている。ガス排出口15は陽極室10aに連通し、ガス排出口16は陰極室10bに連通している。陽極室10aで発生する気体はガス排出口15を通して排出され、陰極室10bで発生する気体はガス排出口16を通して排出される。ガス排出口15には排気管15aが接続され、ガス排出口16には排気管16aが接続されている。
【0032】
電解槽10の外面を覆うように、温水ジャケット20aが取り付けられている。温水ジャケット20aには、温水加熱装置20によって加熱された温水が供給される。これにより、電解浴11の温度がHFの電気分解に適した値に維持される。
【0033】
HF(フッ化水素)を供給するためのHF供給ライン17が、電解槽10に接続されている。HF供給ライン17は、温度調整用ヒータ17aにより覆われている。これにより、HF供給ライン17内でHFが液化することが防止される。電解浴11の液面の高さは図示しない液面検知手段により検出される。検出された液面の高さが所定値よりも低くなると、HF供給ライン17を通して電解槽10内にHFが供給される。陽極室10aの内部圧力は、圧力計18aにより検出され、陰極室10bの内部圧力は、圧力計18bにより検出される。
【0034】
第2処理室102には、複数(図1においては2つ)のHF吸着塔30が並設されている。電解槽10のガス排出口16から延びる排気管16aは複数の排気管16bに分岐し、複数のHF吸着塔30の一端部に接続されている。電解槽10のガス排出口16(陰極室10b)から排出される気体は、排気管16a,16bを通してHF吸着塔30に導かれる。
【0035】
各HF吸着塔30には例えばソーダライムが充填される。電解槽10のガス排出口16(陰極室10b)から排出される気体は主に水素ガスであり、その中に腐食性が高いHFが混入している。そのHFがHF吸着塔30において吸着除去される。なお、各HF吸着塔30の材料としては、フッ素ガスおよびHFに対して耐食性を有する材料が用いられることが好ましい。そのような材料としては、例えばステンレス鋼、モネル、Niまたはフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0036】
排気管16aには、電解槽10側から順に開閉バルブV1、ピエゾバルブPV1およびバキュームジェネレータ31が介挿されている。また、各排気管16bには開閉バルブV2が介挿されている。
【0037】
開閉バルブV1が開かれることにより、電解槽10のガス排出口16から排出される気体がHF吸着塔30に導かれる。バキュームジェネレータ31は、エジェクタ効果を利用して排気管16a内を減圧する。ピエゾバルブPV1は、排気管16a内の圧力を所定の範囲内に維持し、排気管16a内の減圧による不具合が電解槽10内で発生しないように作動する。
【0038】
複数の開閉バルブV2のうち1または複数が開かれることにより、対応するHF吸着塔30に電解槽10のガス排出口16から排出される気体が選択的に導かれる。例えば、1つのHF吸着塔30において充填剤(ソーダライム)の交換を行うときに、そのHF吸着塔30の使用が一時的に停止される。この場合、他のHF吸着塔30を継続して使用することができる。
【0039】
各HF吸着塔30の他端部には、排気管32aが接続されている。各排気管32aには開閉バルブV3が介挿されている。複数の排気管32aは、互いに合流して筐体100の外部に延びている。HF吸着塔30を通過してHFが除去された気体(水素ガス)は、排気管32aを通して外部に排出される。
【0040】
第3処理室103には、複数のHF吸着塔40が並設されている。また、第3処理室103には、圧力調整用タンク50、コンプレッサ60およびバッファタンク80が収容されている。電解槽10のガス排出口15から延びる排気管15aは複数の排気管15bに分岐し、複数のHF吸着塔40の一端部に接続されている。電解槽10のガス排出口15(陽極室10a)から排出される気体は、排気管15a,15bを通してHF吸着塔40に導かれる。
【0041】
各HF吸着塔40には例えばNaF(フッ化ナトリウム)が充填される。電解槽10のガス排出口15(陽極室10a)から排出される気体は主にフッ素ガスであり、その中にHFが混入している。そのHFがHF吸着塔40において吸着除去される。それにより、高純度のフッ素ガスが得られる。なお、各HF吸着塔40の材料としては、上記のHF吸着塔30と同様に、フッ素ガスおよびHFに対して耐食性を有する材料が用いられることが好ましい。
【0042】
排気管15aには、電解槽10側から順に開閉バルブV4およびピエゾバルブPV2が介挿されている。また、各排気管15bには開閉バルブV5が介挿されている。
【0043】
開閉バルブV4が開かれることにより、電解槽10のガス排出口15から排出される気体がHF吸着塔40に導かれる。ピエゾバルブPV2は、排気管15a内の圧力を所定の範囲内に維持するように作動する。また、複数の開閉バルブV5のうち1または複数が開かれることにより、対応するHF吸着塔30に電解槽10のガス排出口16から排出される気体が選択的に導かれる。
【0044】
各HF吸着塔40の他端部には、排気管41aが接続されている。複数の排気管41aは、排気管41bに合流している。各排気管41aには開閉バルブV6が介挿され、排気管41bにはピエゾバルブPV3が介挿されている。ピエゾバルブPV3は、排気管41b内の圧力を所定の範囲内に維持するように作動する。
【0045】
排気管41bは、圧力調整用タンク50に接続されている。開閉バルブV6が開かれることにより、HF吸着塔40から排出される高純度のフッ素ガスが圧力調整用タンク50に導かれる。
【0046】
圧力調整用タンク50は、供給管42aを介してコンプレッサ60に接続されている。コンプレッサ60は、供給管42bを介してバッファタンク80に接続されている。供給管42aには開閉バルブV8が介挿され、供給管42bには開閉バルブV9が介挿されている。開閉バルブV8,V9が開かれることにより、コンプレッサ60によって圧力調整用タンク50内のフッ素ガスがバッファタンク80に送られ、貯蔵される。
【0047】
バッファタンク80から筐体100の外部に供給管43が延びている。供給管43には開閉バルブV10が介挿されている。開閉バルブV10が開かれることにより、バッファタンク80に貯蔵されるフッ素ガスが筐体100の外部に供給される。
【0048】
(1−2)コンプレッサ
本実施の形態におけるコンプレッサ60は、金属製のベローズを備えた加圧ポンプ(以下、ベローズポンプと呼ぶ)61、およびボール減速機62により構成される。
【0049】
図2は、コンプレッサ60の具体的な構成の一例を示す模式的側面図である。図2に示すように、ベローズポンプ61は、モータ70およびヘッド部71を備える。
【0050】
ヘッド部71内に、金属(例えばステンレス)からなるベローズ72が収容されている。ベローズ72内に気体圧縮室73が形成されている。ヘッド部71の上部には、気体圧縮室73に気体を導入および導出するための気体導入口74aおよび気体導出口74bが設けられている。
【0051】
気体導入口74aに供給管42aが接続され、気体導出口74bに供給管4242bが接続される。フッ素ガスは、供給管42aから気体導入口74aを通して気体圧縮室73に導入され、気体圧縮室73から気体導出口74bを通して供給管42bに排出される。
【0052】
モータ70が作動することにより、ベローズ72が伸縮する。それにより、気体圧縮室73が圧縮および拡張され、フッ素ガスが気体導入口74aから気体導出口74aへ送り出される。
【0053】
ベローズポンプ61のモータ70とヘッド部71との間に、ボール減速機62が取り付けられる。ボール減速機62は、モータ70の回転速度を所定の減速比で減速させてヘッド部71内のベローズ72に伝達する。それにより、ベローズ72の伸縮速度が低下する。
【0054】
通常、ベローズポンプ61を用いる場合、効率良くフッ素ガスを送り出すためにモータ70の回転速度が高く設定される。しかしながら、その場合には、ベローズ72が伸縮動作によって摩耗し、多量のパーティクルが発生する。そのパーティクルが不純物としてフッ素ガスに混入し、バッファタンク80に送られるフッ素ガスの純度が低下する。
【0055】
そこで、ベローズポンプ61にボール減速機62を取り付けることにより、ベローズ72に伝達される回転速度が低下し、ベローズ72の伸縮動作が抑制される。それにより、パーティクルの発生量を低減することができる。また、ベローズポンプ61の動作時における騒音が低減される。さらに、ボール減速機62による減速比を適切に調整することにより、バッファタンク80へのフッ素ガスの供給圧を適切に維持することが可能になる。
【0056】
また、モータ70の回転速度を直接調整する場合に比べて、簡単な構成で容易にベローズ72の伸縮動作を抑制することができるとともに、モータ70の動作不良の発生を抑制することができる。
【0057】
ベローズ72に伝達される回転速度は、100rpm以上1000rpm以下であることが好ましく、150rpm以上500rpm以下であることがより好ましい。すなわち、ベローズ72の1分間当たりの伸縮回数(伸縮の周波数)を100[回/分](100Hz)以上1000[回/分](1000Hz)以下に設定することが好ましく、150[回/分](150Hz)以上500[回/分](500Hz)以下に設定することがより好ましい。
【0058】
ベローズ72に伝達される回転速度が100rpm以上であることにより、バッファタンク80へのフッ素ガスの供給圧を適切に維持することができる。また、ベローズ72に伝達される回転速度が1000rpm以下であることにより、パーティクルの発生を十分に抑制することができる。
【0059】
(1−3)実施例および比較例
種々の条件でベローズポンプ61を運転し、パーティクルの発生量および他の特性を調べた。表1に、実施例1〜4および比較例1,2のベローズポンプ61の条件および種々の測定結果が示される。なお、以下の説明において、モータ出力とは、モータ70自体の仕事率をいい、モータ回転速度とは、モータ70からベローズ72に伝達される回転速度、すなわち、ボール減速機62が取り付けられている場合にはボール減速機62によって減速された回転速度をいう。
【0060】
【表1】

【0061】
(1−3−1)実施例1〜4
実施例1〜4では、ボール減速機62が取り付けられたベローズポンプ61を用いた。実施例1〜4のベローズポンプ61のモータ出力は65Wであった。また、モータ70の回転速度は1600rpmで一定である。ボール減速機62による減速比を変更することにより、ベローズポンプ61のモータ回転速度を実施例1〜4でそれぞれ16rpm、50rpm、160rpmおよび400rpmとした。
【0062】
(1−3−2)比較例1,2
比較例1,2では、ボール減速機62が取り付けられていないベローズポンプ61を用いた。比較例1のベローズポンプ61のモータ出力は65Wであり、比較例2のベローズポンプ61のモータ出力は380Wであった。比較例1のベローズポンプ61のモータ回転速度は1600rpmであり、比較例2のベローズポンプ61のモータ回転速度は3450rpmであった。
【0063】
(1−3−3)評価
図3は、パーティクルの発生量の測定方法について説明するための図である。図3に示すように、窒素ガスを20L/minで実施例1〜4または比較例1,2のベローズポンプ61に導入し、ベローズポンプ61から導出される気体を0.5L/minでパーティクルカウンタ81に導入した。表1には、1立方フィート(約28.3L)の気体に含まれるパーティクル数の平均値が示される。
【0064】
その結果、実施例1〜4においては、比較例1,2に比べてパーティクルの発生量が大幅に少なかった。これにより、ボール減速機62が取り付けられたベローズポンプ61を用いることにより、パーティクルの発生量が大幅に低減されることがわかった。
【0065】
また、実施例1〜4および比較例1,2のベローズポンプ61による気体の最大昇圧能力(バッファタンク80への気体の供給圧の最大値)を調べた。なお、上記のフッ素ガス発生装置1において、一般的に要求されるフッ素ガスの供給圧は、約150kPaである。
【0066】
実施例3,4においては、250kPaおよび300kPaと高い最大昇圧能力が得られ、フッ素ガス発生装置1において要求される条件を満たしていた。一方、実施例1,2においては、100kPaおよび40kPaと実施例3,4に比べて最大昇圧能力が低かった。
【0067】
また、実施例1〜4および比較例1,2のベローズポンプ61による気体の搬送量を調べた。気体の供給圧は、実施例1〜4および比較例1,2において共通の150kPaとした。なお、上記のフッ素ガス発生装置1において、一般的に要求されるフッ素ガスの搬送量は、約400cc/minである。
【0068】
実施例3,4においては、1000cc/minおよび3000cc/minと十分な量の気体を搬送することができ、フッ素ガス発生装置1で要求される条件を満たしていた。一方、実施例1,2においては、300cc/minおよび100cc/minと実施例3,4に比べて気体の搬送量が少なかった。
【0069】
また、実施例1〜4および比較例1,2のベローズポンプ61のベローズ72の寿命を調べた。その結果、実施例1〜4のベローズポンプ61では、ベローズ72が摩耗しにくいため、8000〜1200hと長期間の使用が可能であった。一方、比較例1,2のベローズポンプ61では、ベローズ72が摩耗しやすいので、4000hと短期間しか使用することができなかった。
【0070】
(2)第2の実施の形態
第2の実施の形態に係るフッ素ガス発生装置1について、上記第1の実施の形態に係るフッ素ガス発生装置1と異なる点を説明する。第2の実施の形態に係るフッ素ガス発生装置1は、図2のコンプレッサ60の代わりに、図4に示すコンプレッサを備える。
【0071】
図4は、第2の実施の形態におけるコンプレッサの構成を示す模式的側面図である。図4のコンプレッサ60aは、ボール減速機62の代わりにインバータ回路65を備える。モータ70の回転速度は、ヘッド部71のベローズ72に直接伝達される。インバータ回路65はモータ70に接続され、モータ70の回転速度を制御する。この場合、インバータ回路65は、モータ70の回転速度を定格回転速度よりも低く調整する。
【0072】
これにより、ベローズ72の伸縮動作が抑制される。それにより、パーティクルの発生量を低減することができる。また、ベローズポンプ61の動作時における騒音が低減される。さらに、モータ70の回転速度を適切に調整することにより、バッファタンク80へのフッ素ガスの供給圧を適切に維持することが可能になる。
【0073】
モータ70の回転速度は、100rpm以上1000rpm以下に調整されることが好ましく、150rpm以上500rpm以下に調整されることがより好ましい。すなわち、ベローズ72の1分間当たりの伸縮回数(伸縮の周波数)を100[回/分](100Hz)以上1000[回/分](1000Hz)以下に設定することが好ましく、150[回/分](150Hz)以上500[回/分](500Hz)以下に設定することがより好ましい。
【0074】
この場合、モータ70の回転速度が100rpm以上であることにより、バッファタンク80へのフッ素ガスの供給圧を適切に維持することができる。また、モータ70の回転速度が1000rpm以下であることにより、パーティクルの発生を十分に抑制することができる。
【0075】
(3)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0076】
上記実施の形態では、電解槽10が気体発生部の例であり、バッファタンク80が気体貯蔵部の例であり、コンプレッサ60が気体圧縮搬送部の例であり、ボール減速機62が回転速度伝達部の例であり、インバータ回路65がインバータの例であり、HF吸着塔40がフッ化水素除去部の例である。
【0077】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、半導体の製造工程等において有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】第1の実施の形態に係るフッ素ガス発生装置の構成を示す模式的側面図である。
【図2】コンプレッサの具体的な構成の一例を示す模式的側面図である。
【図3】パーティクルの発生量の測定方法について説明するための図である。
【図4】第2の実施の形態におけるコンプレッサの構成を示す模式的側面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 フッ素ガス発生装置
10 電解槽
42a 供給管
60 コンプレッサ
61 ベローズポンプ
62 ボール減速機
65 インバータ回路
70 モータ
71 ヘッド部
73 気体圧縮室
74a 気体導入口
74b 気体導出口
100 筐体
101 第1処理室
102 第2処理室
103 第3処理室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を発生させる気体発生部と、
前記気体発生部により発生した気体を貯蔵する気体貯蔵部と、
前記気体発生部により発生した気体を前記気体貯蔵部に圧縮して送る気体圧縮搬送部とを備え、
前記気体圧縮搬送部は、
所定の速度で回転するモータと、
前記モータの回転に伴って伸縮するベローズと、
前記ベローズの伸縮に伴って圧縮および拡張するように前記ベローズの内部に形成され、気体を導入するための気体導入口および気体を導出するための気体導出口を有する気体圧縮室と、
前記モータの回転速度を減速させて前記ベローズに伝達する回転速度伝達部とを有することを特徴とする気体発生装置。
【請求項2】
前記回転速度伝達部は、前記モータの回転速度を毎分当り100回転以上1000回転以下に減速させることを特徴とする請求項1記載の気体発生装置。
【請求項3】
気体を発生させる気体発生部と、
前記気体発生部により発生した気体を貯蔵する気体貯蔵部と、
前記気体発生部により発生した気体を前記気体貯蔵部に圧縮して送る気体圧縮搬送部とを備え、
前記気体圧縮搬送部は、
モータと、
前記モータにより伸縮駆動されるベローズと、
前記ベローズの伸縮に伴って圧縮および拡張するように前記ベローズの内部に形成され、気体を導入するための気体導入口および気体を導出するための気体導出口を有する気体圧縮室と、
前記モータを前記モータの定格回転速度よりも低い回転速度で回転させるインバータとを有することを特徴とする気体発生装置。
【請求項4】
前記インバータは、前記モータを毎分当り100回転以上1000回転以下で回転させることを特徴とする請求項3記載の気体発生装置。
【請求項5】
前記気体発生部は、フッ化水素を含む混合溶融塩を電気分解してフッ素を発生させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の気体発生装置。
【請求項6】
前記気体発生部により発生した気体からフッ化水素を除去するフッ化水素除去部をさらに備えることを特徴とする請求項5記載の気体発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−100506(P2010−100506A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275999(P2008−275999)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】