説明

気体発生装置

【課題】作業負担およびコストの低減が可能な気体発生装置を提供する。
【解決手段】フッ素ガス発生装置100は、電解槽1を備える。電解槽1内には電解浴1aが形成されている。陰極室3内に陰極5が設けられ、陽極室4内に陽極6が設けられる。陰極5および陽極6の間に電圧が印加されることにより、HF(フッ化水素)の電気分解が行われる。電解槽1の陰極5から主として水素ガスが発生し、陽極6から主としてフッ素ガスが発生する。HF吸着塔60〜63に充填されたNaFペレットを加熱するための加熱炉80,81が設けられる。加熱炉80内にHF吸着塔60,62が設けられ、加熱炉81内にHF吸着塔61,63が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を発生する気体発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の製造工程等において、材料の洗浄および表面改質等の種々の用途でフッ素ガスが用いられている。その場合、フッ素ガス自体を用いる場合もあるが、フッ素ガスを基に合成されたNF(三フッ化窒素)ガス、NeF(フッ化ネオン)ガス、およびArF(フッ化アルゴン)ガス等の種々のフッ素系ガスを用いる場合もある。
【0003】
このような現場において、フッ素ガスを安定に供給するために、例えばHF(フッ化水素)を電気分解してフッ素ガスを発生するフッ素ガス発生装置が用いられる。
【0004】
特許文献1に示されるフッ素ガス発生装置は、電解槽を備える。電解槽内は、隔壁により陰極室および陽極室に区画されている。電解槽内にはKF−HF系混合溶融塩からなる電解浴が形成されている。陰極室内に陰極が設けられ、陽極室内に陽極が設けられている。HF供給ラインを通して電解槽内の電解浴にHFが供給され、HFの電気分解が行われる。それにより、電解槽の陰極から水素ガスが発生し、陽極からフッ素ガスが発生する。
【0005】
陰極室の上部には、水素ガスの出口が設けられている。陰極室内で発生した水素ガスは、出口から陰極側の水素ガスラインを通して排出される。水素ガスラインには、自動弁およびHF吸着塔が介挿されている。HF吸着塔には、粒状のNaF(フッ化ナトリウム)ペレットが充填されている。これにより、水素ガスに混入したHFがHF吸着塔でNaFペレットにより吸着され、水素ガスから除去される。
【0006】
陽極室の上部には、フッ素ガスの出口が設けられている。陽極室内で発生したフッ素ガスは、出口からフッ素ガスラインを通して排出される。フッ素ガスラインには、HF吸着塔および自動弁が介挿されている。水素ガスラインと同様に、フッ素ガスに混入したHFがHF吸着塔でNaFペレットにより吸着され、フッ素ガスから除去される。
【0007】
フッ素ガスラインにおいては、HF吸着塔および自動弁の下流側にコンプレッサユニットが設けられている。
【0008】
陰極室および陽極室には、各室内の圧力を測定する圧力計が設けられている。水素ガスラインおよびフッ素ガスラインに介挿される自動弁は、圧力計により測定される圧力値に連動して開閉する。
【0009】
また、陽極室内の圧力が大気圧よりも高い場合にフッ素ガスラインの自動弁が開状態となり、陽極室内のフッ素ガスがフッ素ガスラインを通してコンプレッサユニットに吸引される。一方、陽極室内の圧力が大気圧よりも低い場合にフッ素ガスラインの自動弁が閉状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−52105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
NaFペレットに過剰にHFが吸着すると、NaFペレットが粉末状に分解し、さらにその粉末が凝集する。この場合、凝集したNaFによってHF吸着塔内またはHF吸着塔に接続された配管が閉塞されることがある。そのため、定期的にHF吸着塔内のNaFペレットを交換する必要がある。それにより、煩雑な作業およびコストが必要になる。
【0012】
本発明の目的は、作業負担およびコストの低減が可能な気体発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明に係る気体発生装置は、電気分解により第1の気体および第2の気体を発生させる気体発生装置であって、第1室および第2室に区画され、電気分解される化合物を含む電解浴を収容する電解槽と、第1室において発生された第1の気体を排出する第1の排出経路と、第2室において発生された第2の気体を排出する第2の排出経路と、第1の気体に混入する第3の気体を吸着するための吸着剤を含む第1および第2の吸着手段と、第2の気体に混入する第3の気体を吸着するための吸着剤を含む第3および第4の吸着手段と、第1および第3の吸着手段をそれぞれ第1および第2の排出経路に接続しかつ第2および第4の吸着手段をそれぞれ第1および第2の排出経路から切り離す第1の状態と、第2および第4の吸着手段をそれぞれ第1および第2の排出経路に接続しかつ第1および第3の吸着手段をそれぞれ第1および第2の排出経路から切り離す第2の状態とに切り替え可能に構成された接続手段と、第1および第3の吸着手段の吸着剤をそれぞれ加熱する第1の加熱手段と、第2および第4の吸着手段の吸着剤をそれぞれ加熱する第2の加熱手段と、接続手段、第1の加熱手段および第2の加熱手段を制御する制御手段とを備え、制御手段は、接続手段を第1の状態および第2の状態に切り替えるとともに、接続手段が第1の状態にある場合に、第1および第3の吸着手段の吸着剤が第3の気体を吸着しかつ第2および第4の吸着手段の吸着剤から第3の気体が脱離するように第1および第2の加熱手段を制御し、接続手段が第2の状態にある場合に、第2および第4の吸着手段の吸着剤が第3の気体を吸着しかつ第1および第3の吸着手段の吸着剤から第3の気体が脱離するように第1および第2の加熱手段を制御するものである。
【0014】
この気体発生装置においては、電解浴に含まれる化合物の電気分解が行われることにより、第1室において第1の気体が発生され、第2室において第2の気体が発生される。第1室において発生された第1の気体が第1の排出経路を通して排出され、第2室において発生された第2の気体が第2の排出経路を通して排出される。
【0015】
接続手段が第1の状態である場合、第1および第3の吸着手段が第1および第2の排出経路にそれぞれ接続され、第2および第4の吸着手段が第1および第2の排出経路からそれぞれ切り離される。それにより、第1室において発生された第1の気体が第1の吸着手段に導かれ、第2室において発生された第2の気体が第3の吸着手段に導かれる。
【0016】
この場合、第1および第3の吸着手段の吸着剤が第3の気体を吸着し、第2および第4の吸着手段の吸着剤から第3の気体が脱離するように、第1および第2の加熱手段により第1〜第4の吸着手段の吸着剤が加熱される。
【0017】
接続手段が第2の状態である場合、第2および第4の吸着手段が第1および第2の排出経路にそれぞれ接続され、第1および第3の吸着手段が第1および第2の排出経路からそれぞれ切り離される。それにより、第1室において発生された第1の気体が第2の吸着手段に導かれ、第2室において発生された第2の気体が第4の吸着手段に導かれる。
【0018】
この場合、第2および第4の吸着手段の吸着剤が第3の気体を吸着し、第1および第3の吸着手段の吸着剤から第3の気体が脱離するように、第1および第2の加熱手段により第1〜第4の吸着手段の吸着剤が加熱される。
【0019】
これにより、接続手段が第2の状態である場合に、第1および第3の吸着手段の吸着剤に吸着された第3の気体が、吸着剤から脱離し、接続手段が第1の状態である場合に、接続手段が第2の状態である場合に第1および第3の吸着手段の吸着剤に吸着された第3の気体が、吸着剤から脱離する。
【0020】
したがって、接続手段を第1および第2の状態に交互に切り替えることにより、第1〜第4の吸着手段の吸着剤を交換することなく、第1〜第4の吸着手段の吸着剤に第3の気体が過剰に吸着されることを防止することができる。その結果、作業負担およびコストの低減が可能になる。
【0021】
また、接続手段が第1の状態である場合および接続手段が第2の状態である場合のいずれにおいても、第3の気体が除去された高純度の第1および第2の気体が第1および第2の排出経路を通して排出される。それにより、第1〜第4の吸着手段の吸着剤に第3の気体が過剰に吸着されることを防止しつつ継続的に第1および第2の気体を供給することができる。
【0022】
(2)気体発生装置は、接続手段が第1の状態である場合に第2の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体を第1室に導き、接続手段が第1の状態である場合に第1の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体を第1室に導く第1の循環経路と、接続手段が第1の状態である場合に第4の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体を第2室に導き、接続手段が第1の状態である場合に第3の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体を第2室に導く第2の循環経路とをさらに備えてもよい。
【0023】
この場合、第1および第2の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体が第1室に導かれ、第3および第4の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体が第2室に導かれる。そのため、吸着剤から脱離した第3の気体を電気分解の原料として再利用することができる。その結果、さらにコストを低減することが可能となる。
【0024】
(3)気体発生装置は、接続手段が第1の状態である場合に第2の吸着手段に第4の気体を供給し、接続手段が第2の状態である場合に第1の吸着手段に第4の気体を供給する第1の気体供給手段と、接続手段が第1の状態である場合に第4の吸着手段に第5の気体を供給し、接続手段が第2の状態である場合に第3の吸着手段に第5の気体を供給する第2の気体供給手段とをさらに備えてもよい。
【0025】
この場合、接続手段が第1の状態である場合に第1および第2の気体供給手段により第2および第4の吸着手段に第4および第5の気体が供給されることにより、第2および第4の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体が第2および第4の吸着手段から押し出される。また、接続手段が第2の状態である場合に第1および第2の気体供給手段により第1および第3の吸着手段に第4および第5の気体が供給されることにより、第1および第3の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体が第1および第3の吸着手段から押し出される。それにより、吸着剤から脱離した第3の気体が第1および第3の吸着手段に再吸着することが防止される。
【0026】
(4)第1の気体供給手段は、第1の排出経路を通して排出される第1の気体の一部を貯蔵する貯蔵部と、接続手段が第1の状態である場合に貯蔵部に貯蔵された第1の気体を第4の気体として第2の吸着手段に導き、接続手段が第2の状態である場合に貯蔵部に貯蔵された第1の気体を第4の気体として第1の吸着手段に導く気体供給経路とを含んでもよい。
【0027】
この場合、第1室において発生された第1の気体の一部が第1および第2の吸着手段に供給されることにより、他の気体を用いることなく、第1および第2の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体が第1および第2の吸着手段から押し出される。そのため、コストの増大させることなく、第1および第2の吸着手段の吸着剤への第3の気体の再吸着を防止することができる。
【0028】
(5)第1の排出経路を通して排出される第1の気体のうち要求される量を超える余剰分が貯蔵部に貯蔵されてもよい。この場合、余剰分の第1の気体が第1および第2の吸着手段から第3の気体を押し出すために用いられる。そのため、要求される量の第1の気体を確保しつつ第1および第2の吸着手段の吸着剤への第3の気体の再吸着を防止することができる。
【0029】
(6)第1の気体はフッ素ガスであり、第2の気体は水素であり、第3の気体および化合物はフッ化水素であり、吸着剤はフッ化ナトリウムであり、第1室は陽極室であり、第2室は陰極室であってもよい。
【0030】
この場合、フッ化水素が電気分解されることにより発生されるフッ素ガスおよび水素に混入するフッ化水素を、フッ化ナトリウムにより確実に吸着することができる。また、フッ化ナトリウムに吸着されたフッ化水素をフッ化ナトリウムから容易に脱離させることができる。
【発明の効果】
【0031】
第1〜第4の吸着手段の吸着剤を交換することなく、第1〜第4の吸着手段の吸着剤に第3の気体が過剰に吸着されることを防止することができる。その結果、作業負担およびコストの低減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフッ素ガス発生装置の構成を示す模式図である。
【図2】第1の動作状態について説明するための図である。
【図3】第2の動作状態について説明するための図である。
【図4】図1のフッ素ガス発生装置における制御系の一部を示すブロック図である。
【図5】本実施の形態に係るフッ素ガス発生装置の制御装置によるフッ素ガス等の供給経路切替処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】本実施の形態に係るフッ素ガス発生装置の制御装置によるフッ素ガス等の供給経路切替処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施の形態に係る気体発生装置および気体発生方法について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態においては、気体発生装置の一例として、フッ素ガスを発生するフッ素ガス発生装置について説明する。
【0034】
(1)フッ素ガス発生装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係るフッ素ガス発生装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、フッ素ガス発生装置100は、電解槽1を備える。電解槽1は、例えばNi(ニッケル)、モネル、純鉄もしくはステンレス鋼等の金属または合金により形成されている。電解槽1内は、隔壁2により陰極室3および陽極室4に区画されている。隔壁2は、例えばNiまたはモネルからなる。
【0035】
電解槽1内にはKF−HF系混合溶融塩からなる電解浴1aが形成されている。陰極室3内に例えばNi(ニッケル)からなる陰極5が設けられ、陽極室4内に例えば低分極性炭素からなる陽極6が設けられる。陰極5および陽極6の間に電圧が印加されることにより、HF(フッ化水素)の電気分解が行われる。それにより、電解槽1の陰極5から主として水素ガスが発生し、陽極6から主としてフッ素ガスが発生する。
【0036】
陰極室3の上部には、陰極出口20aが設けられる。陰極出口20aには配管20の一端(上流端)が接続される。配管20の他端には、配管21,22の一端が接続される。配管21には、開閉バルブV1,V2が上流側からこの順で介挿される。配管22には、開閉バルブV3,V4が上流側からこの順で介挿される。
【0037】
配管21の他端は、HF吸着塔60の気体入口に接続される。配管22の他端は、HF吸着塔61の気体入口に接続される。HF吸着塔60,61内には、円柱状のNaF(フッ化ナトリウム)ペレットが充填される。
【0038】
HF吸着塔60の気体出口には、配管23の一端が接続される。配管23には、開閉バルブV5,V6が上流側からこの順で介挿される。HF吸着塔61の気体出口には、配管24の一端が接続される。配管24には、開閉バルブV7,V8が上流側からこの順で介挿される。
【0039】
配管23の他端および配管24の他端が配管25の一端に接続される。配管25の他端は、例えばガスボンベまたは工場の製造ラインに接続される。
【0040】
配管21における開閉バルブV1,V2の間の部分と配管22における開閉バルブV3,V4の間の部分とが配管26を介して接続される。配管26には、開閉バルブV9,V10が配管21側からこの順で介挿される。配管26における開閉バルブV9,V10の間の部分には、配管27の一端が接続される。配管27の他端には、不活性ガスタンク53が接続される。不活性ガスタンク53には、例えばN(窒素)、Ar(アルゴン)またはHe(ヘリウム)等の不活性ガスが高圧で貯蔵される。
【0041】
配管23における開閉バルブV5,V6の間の部分と配管24における開閉バルブV7,V8の間の部分とが配管28を介して接続される。配管28には、開閉バルブV11,V12が配管23側からこの順で介挿される。配管28における開閉バルブV11,V12の間の部分には、配管29の一端が接続される。配管29には、開閉バルブV13が介挿される。配管29の他端には、配管30の一端および配管31の一端が接続される。配管30の他端は、陰極室3内の電解浴1a内に位置するように設けられる。
【0042】
配管31には、開閉バルブV14が介挿される。配管31の他端に、HF供給源51が接続される。電解浴1aの液面の高さが例えば液面検出手段(図示せず)により検出される。検出された液面の高さが所定値よりも低くなると、開閉バルブV13が閉状態とされるとともに開閉バルブV14が開状態とされる。それにより、HF供給源51から配管31,30を通して電解浴1a内にHFが供給される。
【0043】
陽極室4の上部には、陽極出口40aが設けられている。陽極出口40aには配管40の一端(上流端)が接続されている。配管40の他端には、配管41,42の一端が接続される。配管41には、開閉バルブV15,V16が上流側からこの順で介挿される。配管42には、開閉バルブV17,V18が上流側からこの順で介挿される。
【0044】
配管41の他端は、HF吸着塔62の気体入口に接続される。配管42の他端は、HF吸着塔63の気体入口に接続される。HF吸着塔62,63には、円柱状のNaFペレットが充填される。
【0045】
HF吸着塔62の気体出口には、配管43の一端が接続される。配管43には、開閉バルブV19,V20が上流側からこの順で介挿される。HF吸着塔63の気体出口には、配管44の一端が接続される。配管44には、開閉バルブV21,V22が上流側からこの順で介挿される。配管43の他端および配管44の他端が配管45の一端に接続される。配管45には、コンプレッサ45aが介挿される。
【0046】
配管41における開閉バルブV15,V16の間の部分と配管42における開閉バルブV17,V18の間の部分とが配管46を介して接続される。配管46には、開閉バルブV24,V25が配管41側からこの順で介挿される。配管46における開閉バルブV24,V25の間の部分には、配管47の一端が接続される。配管47には、開閉バルブV26が介挿される。配管47の他端には、バッファタンク52が接続される。後述のように、バッファタンク52には、陽極室4内で発生したフッ素ガスが高圧で貯蔵される。バッファタンク52には、配管50の一端が接続される。配管50には、開閉バルブV27が介挿される。配管45の他端および配管50の他端が配管46の一端に接続される。配管46には、開閉バルブV23が介挿される。配管46の他端は、例えばガスボンベまたは工場の製造ラインに接続される。
【0047】
配管43における開閉バルブV19,V20の間の部分と配管44における開閉バルブV21,V22の間の部分とが配管48を介して接続される。配管48には、開閉バルブV28,V29が配管43側からこの順で介挿される。配管48における開閉バルブV28,V29の間の部分には、配管49の一端が接続される。配管49の他端は、陽極室4内の上部空間内に位置するように設けられる。
【0048】
本実施の形態に係るフッ素ガス発生装置100においては、HF吸着塔60〜63に充填されたNaFペレットを加熱するための加熱炉80,81が設けられる。加熱炉80内にHF吸着塔60,62が設けられ、加熱炉81内にHF吸着塔61,63が設けられる。加熱炉80,81を構成する部材の材料としては、例えばステンレス鋼(SUS316L)、ニッケル、モネル、銅、インコネル系合金またはインコロイ系合金が用いられる。
【0049】
(2)動作
次に、フッ素ガス発生装置100の動作について説明する。フッ素ガス発生装置100は、以下に示す第1の動作状態および第2の動作状態で交互に動作する。
【0050】
図2は、第1の動作状態について説明するための図であり、図3は、第2の動作状態について説明するための図である。
【0051】
図2に示される第1の動作状態では、開閉バルブV1,V2,V4,V5,V6,V7,V10,V12,V13,V15,V16,V18,V19,V20,V21,V23,V25,V26,V29が開状態にされるとともに、開閉バルブV3,V8,V9,V11,V14,V17,V22,V24,V27,V28が閉状態にされる。その状態で、コンプレッサ45aが駆動され、電圧印加部70により陰極5と陽極6との間に電圧が印加される。
【0052】
また、加熱炉80によりHF吸着塔60,62が第1の温度で加熱され、加熱炉81によりHF吸着塔61,63が第2の温度で加熱される。ここで、第2の温度は第1の温度よりも高い。第1の温度は例えば80〜90℃であり、第2の温度は例えば300℃である。
【0053】
この場合、陰極室3内で発生した水素ガスが、配管20,21、HF吸着塔60および配管23,25を通して、ガスボンベまたは工場の製造ラインに供給される。HF吸着塔60において、水素ガスに混入するHFがNaFペレットにより吸着されることにより水素ガスから除去される。
【0054】
また、陽極室4内で発生したフッ素ガスが、配管40,41、HF吸着塔62、配管43,45,46を通して、ガスボンベまたは工場の製造ラインに供給される。HF吸着塔62において、フッ素ガスに混入するHFがNaFペレットにより吸着されることによりフッ素ガスから除去される。
【0055】
また、不活性ガスタンク53に高圧で貯蔵された不活性ガスが配管27,26,22を通してHF吸着塔61に送られ、バッファタンク52に高圧で貯蔵されたフッ素ガスが配管47,46,42を通してHF吸着塔63に送られる。
【0056】
なお、第1の動作状態および後述の第2の動作状態において、一時的に開閉バルブV23が閉状態にされるとともに開閉バルブV27が開状態にされることにより、陽極室4で発生したフッ素ガスがバッファタンク52に導かれ、バッファタンク52に貯蔵される。この場合、陽極室4で発生したフッ素ガスのうち、要求された量(例えば工場の製造ラインで使用される量)を超える余剰分がバッファタンク52に貯蔵される。
【0057】
HF吸着塔61,63が高温(第2の温度)で加熱されることにより、HF吸着塔61,63において、NaFペレットに吸着されたHFがNaFペレットから脱離する。
【0058】
HF吸着塔61内で脱離したHFは、不活性ガスタンク53から送られる不活性ガスによりHF吸着塔61から押し出され、配管24,28,29,30を通して電解浴1a内に戻される。HF吸着塔63内で脱離したHFは、バッファタンク52から送られるフッ素ガスによりHF吸着塔63から押し出され、配管44,48,49を通して陽極室4の上部空間に戻される。
【0059】
なお、第1の動作状態としての動作開始から一定時間が経過した後、加熱炉81によるHF吸着塔61,63の加熱が停止される。また、開閉バルブV4,V7,V10,V12,V13が閉状態にされることにより不活性ガスタンク53からHF吸着塔61への不活性ガスの供給が停止され、開閉バルブV18,V21,V25,V26,V29が閉状態にされることによりバッファタンク52からHF吸着塔63へのフッ素ガスの供給が停止される。以下、開閉バルブV4,V7,V10,V12,V13,V18,V21,V25,V26,V29を第1のバルブ群と呼ぶ。
【0060】
図3に示される第2の動作状態では、開閉バルブV2,V3,V4,V5,V7,V8,V9,V11,V13,V16,V17,V18,V19,V21,V22,V23,V24,V26,V28が開状態にされるとともに、開閉バルブV1,V6,V10,V12,V14,V15,V20,V25,V27,V29が閉状態にされる。その状態で、コンプレッサ45aが駆動され、電圧印加部70により陰極5と陽極6との間に電圧が印加される。
【0061】
また、加熱炉81によりHF吸着塔61,63が第1の温度で加熱され、加熱炉80によりHF吸着塔60,62が第2の温度で加熱される。
【0062】
この場合、陰極室3内で発生した水素ガスが、配管20,22、HF吸着塔61および配管24,25を通して、ガスボンベまたは工場の製造ラインに供給される。HF吸着塔61において、水素ガスに混入するHFがNaFペレットにより吸着されることにより水素ガスから除去される。
【0063】
また、陽極室4内で発生したフッ素ガスが、配管40,42、HF吸着塔63および配管44,45,46を通して、ガスボンベまたは工場の製造ラインに供給される。HF吸着塔63において、フッ素ガスに混入するHFがNaFペレットにより吸着されることによりフッ素ガスから除去される。
【0064】
また、不活性ガスタンク53に高圧で貯蔵された不活性ガスが配管27,26,21を通してHF吸着塔60に送られ、バッファタンク52に高圧状態で貯蔵されたフッ素ガスが配管47,46,41を通してHF吸着塔62に送られる。
【0065】
HF吸着塔60,62が高温(第2の温度)で加熱されることにより、HF吸着塔60,62内において、NaFペレットに吸着されたHFがNaFペレットから脱離する。
【0066】
HF吸着塔60内で脱離したHFは、不活性ガスタンク53から送られる不活性ガスによりHF吸着塔60から押し出され、配管23,28,29,30を通して電解浴1a内に戻される。HF吸着塔62内で脱離したHFは、バッファタンク52から送られるフッ素ガスによりHF吸着塔62から押し出され、配管43,48,49を通して陽極室4内の上部空間に戻される。
【0067】
なお、第2の動作状態としての動作開始から一定時間が経過した後、加熱炉80によるHF吸着塔60,62の加熱が停止される。また、開閉バルブV2,V5,V9,V11,V13が閉状態にされることにより不活性ガスタンク53からHF吸着塔60への不活性ガスの供給が停止され、開閉バルブV16,V19,V24,V26,V28が閉状態にされることによりバッファタンク52からHF吸着塔62へのフッ素ガスの供給が停止される。
【0068】
以下、開閉バルブV2,V5,V9,V11,V13,V16,V19,V24,V26,V28を第2のバルブ群と呼ぶ。
【0069】
(3)HFの吸着および脱離
上記のように、第1の動作状態では、水素ガスおよびフッ素ガスに混入するHFが、HF吸着塔60,62内のNaFペレットに吸着され、水素ガスおよびフッ素ガスから除去される。また、第2の動作状態では、水素ガスおよびフッ素ガスに混入するHFが、HF吸着塔61,63内のNaFペレットに吸着され、水素ガスおよびフッ素ガスから除去される。
【0070】
この場合、フッ素ガスおよび水素ガスからHFが除去されることにより、純度が高い水素ガスおよびフッ素ガスを工場の製造ライン等に供給することができる。また、腐食性が高いHFが除去されることにより、水素ガスおよびフッ素ガスの供給経路にある配管等が腐食することを防止することができる。
【0071】
ただし、HF吸着塔60〜63においてNaFペレットに過剰にHFが吸着すると、NaFペレットが粉末状に分解し、さらにその粉末が凝集する。この場合、凝集したNaFによってHF吸着塔60〜63内またはHF吸着塔60〜63に接続された配管21〜24,41〜44が閉塞されることがある。
【0072】
そこで、本実施の形態では、第1の動作状態において、HF吸着塔61,63が第2の温度で加熱されることにより、HF吸着塔61,63内のNaFペレットからHFが脱離する。また、第2の動作状態において、HF吸着塔60,62が第2の温度で加熱されることにより、HF吸着塔61,63内のNaFペレットからHFが脱離する。
【0073】
フッ素ガス発生装置100が第1の動作状態および第2の動作状態で交互に動作することにより、第1の動作状態においてHF吸着塔60,62内のNaFペレットに吸着されたHFが、第2の動作状態においてNaFペレットから脱離する。また、第2の動作状態においてHF吸着塔61,63内のNaFペレットに吸着されたHFが、第1の動作状態においてNaFペレットから脱離する。それにより、HF吸着塔60〜63内のNaFペレットに過剰にHFが吸着することを防止することができる。
【0074】
ここで、NaFペレットに過剰にHFが吸着することを効率良く確実に防止するためには、第1の動作状態が継続される時間および第2の動作状態が継続される時間を適切に制御することが好ましい。以下、第1の動作状態が継続される時間および第2の動作状態が継続される時間をそれぞれ継続時間T1と呼ぶ。
【0075】
また、NaFペレットからHFを脱離させる際のNaFペレットの加熱温度および加熱時間が適正でない場合には、NaFペレットに過剰にHFが吸着した場合と同様に、NaFペレットが粉末状に分解し、その粉末が凝集することがある。そのため、第2の温度、第1の動作状態におけるHF吸着塔61,63の加熱時間、および第2の動作状態におけるHF吸着塔60,62の加熱時間を適切に制御することが好ましい。以下、第1の動作状態におけるHF吸着塔61,63の加熱時間および第2の動作状態におけるHF吸着塔60,62の加熱時間をそれぞれ加熱時間T2と呼ぶ。
【0076】
HFが吸着したNaFペレットの組成はNaF・nHF(n>0)で表される。本発明者は、後述の実験および検証により、上記nが0.01以上0.5以下の範囲にある場合、NaFペレットが一定の形状に維持されることを見出した。本実施の形態では、HF吸着塔60〜63内のNaFペレットの組成がNaF・nHF(0.01≦n≦0.5)となるように、継続時間T1、第2の温度および加熱時間T2が実験およびシミュレーション等により予め設定される。
【0077】
(4)HFの吸着量とNaFペレットの形状との関係
NaFペレットへのHFの吸着量とNaFペレットの形状との関係を調べるために、以下の実験を行った。
【0078】
複数の円柱状のNaFペレットが充填されたHF吸着塔60〜63に、HFが混入したフッ素ガスを供給した。なお、フッ素ガスを供給する前のNaFペレットの総重量は15kgであり、フッ素ガスを供給した後のNaFペレットの総重量は15.31kgであった。すなわち、NaFペレットへのHFの吸着量は、0.31kgであった。
【0079】
フッ素ガスの供給後に、HF吸着塔60〜63内の複数箇所でNaFペレットを採取した。この場合、HF吸着塔60〜63内において、上流側(気体入口に近い側)ほどNaFペレットへのHFの吸着量が多かった。具体的には、採取したNaFペレットの組成は、上流側から順に、NaF・1.15HF、NaF・0.78HF、NaF・0.24、NaF・0.19HF、NaF・0.15、NaF・0.14HF、NaF・0.18HF、NaF・0.18HFおよびNaF・0.22HFであった。
【0080】
NaF・1.15HFおよびNaF・0.78HFの組成を有するNaFペレットは、粉末状に分解し、凝集して円柱形状を保持することができなかった。一方、NaF・0.24、NaF・0.19HF、NaF・0.15、NaF・0.14HF、NaF・0.18HFおよびNaF・0.22HFの組成を有するNaFペレットは、粉末状に分解または凝集することなく円柱形状に保持された。
【0081】
以上により、NaFペレットの組成がNaF・nHF(0.01≦n≦0.5)である場合、NaFペレットが円柱形状に保持されることがわかった。
【0082】
(5)フッ素ガス発生装置の制御系
図4は、フッ素ガス発生装置100の制御系を示すブロック図である。図1のフッ素ガス発生装置100は、図4の制御装置90を備える。制御装置90は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータを含む。また、制御装置90は、タイマ90aを有する。
【0083】
制御装置90は、電圧印加部70、加熱炉80,81、開閉バルブV1〜V29およびコンプレッサ45aの動作を制御し、陰極5と陽極6との間への電圧の印加タイミング、HF吸着塔60〜63の加熱時間および加熱温度、開閉バルブV1〜V29の開閉ならびにコンプレッサ45aの駆動および停止を制御する。
【0084】
(6)供給経路切替処理
本実施の形態では、フッ素ガス発生装置100の動作時に、制御装置90により、以下に示す供給経路切替処理が行われる。図5および図6は、制御装置90による供給経路切替処理の一例を示すフローチャートである。なお、初期状態では、開閉バルブV1〜V19が全て閉状態である。また、本例においては、フッ素ガス発生装置100が最初に第1の動作状態で動作する。
【0085】
まず、図示しない入力装置等によりHFの電気分解の開始が指令されると、制御装置90は、前回のフッ素ガス発生装置100の運転時に計測した経過時間をリセットし、内蔵されるタイマ90aにより経過時間の計測動作を開始する(ステップS1)。
【0086】
そして、制御装置90は、フッ素ガス発生装置100が図2の第1の動作状態で動作するように、電圧印加部70、加熱炉80,81、開閉バルブV1〜V29およびコンプレッサ45aを制御する(ステップS2)。
【0087】
すなわち、制御装置90は、開閉バルブV1,V2,V4,V5,V6,V7,V10,V12,V13,V15,V16,V18,V19,V20,V21,V23,V25,V26,V29を開状態にするとともに、開閉バルブV3,V8,V9,V11,V14,V17,V22,V24,V27,V28を閉状態にする。また、制御装置90は、コンプレッサ45aを駆動し、電圧印加部70により陰極5および陽極6の間に電圧を印加する。さらに、制御装置90は、加熱炉80によりHF吸着塔60,62を第1の温度で加熱し、加熱炉81によりHF吸着塔61,63を第2の温度で加熱する。
【0088】
次に、制御装置90は、内蔵されたタイマ90aにより、ステップS1で計測を開始してからの経過時間を検出する(ステップS3)。次に、制御装置90は、検出されたタイマ90aによる計測開始からの経過時間が予め設定された加熱時間T2に達したか否かを判定する(ステップS4)。
【0089】
タイマ90aによる計測開始からの経過時間が加熱時間T2に達していない場合、制御装置90は、計測開始からの経過時間が加熱時間T2に達するまでステップS3,S4の処理を繰り返す。
【0090】
タイマ90aによる計測開始からの経過時間が加熱時間T2に達した場合、制御装置90は、加熱炉81を停止するとともに(ステップS5)、上記の第1のバルブ群を閉状態にする(ステップS6)。それにより、HF吸着塔61,63内のNaFペレットの加熱が停止されるとともに、HF吸着塔61,63への不活性ガスおよびフッ素ガスの供給が停止される。
【0091】
次に、制御装置90は、内蔵されたタイマ90aにより、ステップS1で計測を開始してからの経過時間を検出する(ステップS7)。次に、制御装置90は、検出されたタイマ90aによる計測開始からの経過時間が予め設定された継続時間T1に達したか否かを判定する(ステップS8)。
【0092】
タイマ90aによる計測開始からの経過時間が継続時間T1に達していない場合、制御装置90は、計測開始からの経過時間が継続時間T1に達するまでステップS7,S8の処理を繰り返す。
【0093】
タイマ90aによる計測開始からの経過時間が継続時間T1に達した場合、制御装置90は、タイマ90aの経過時間を一旦リセットし(ステップS9)、経過時間の計測動作を開始する(ステップS10)。
【0094】
そして、制御装置90は、フッ素ガス発生装置100が図3の第2の動作状態で動作するように、電圧印加部70、加熱炉80,81、開閉バルブV1〜V29およびコンプレッサ45aを制御する(ステップS11)。
【0095】
すなわち、制御装置90は、開閉バルブV2,V3,V4,V5,V7,V8,V9,V11,V13,V16,V17,V18,V19,V21,V22,V23,V24,V26,V28を開状態にするとともに、開閉バルブV1,V6,V10,V12,V14,V15,V20,V25,V27,V29を閉状態にする。また、制御装置90は、コンプレッサ45aを駆動し、電圧印加部70により陰極5および陽極6の間に電圧を印加する。さらに、制御装置90は、加熱炉81によりHF吸着塔61,63を第1の温度で加熱し、加熱炉80によりHF吸着塔60,62を第2の温度で加熱する。
【0096】
次に、制御装置90は、内蔵されたタイマ90aにより、ステップS10で計測を開始してからの経過時間を検出する(ステップS12)。次に、制御装置90は、検出されたタイマ90aによる計測開始からの経過時間が予め設定された加熱時間T2に達したか否かを判定する(ステップS13)。
【0097】
タイマ90aによる計測開始からの経過時間が加熱時間T2に達していない場合、制御装置90は、計測開始からの経過時間が加熱時間T2に達するまでステップS12,S13の処理を繰り返す。
【0098】
タイマ90aによる計測開始からの経過時間が加熱時間T2に達した場合、制御装置90は、加熱炉80を停止するとともに(ステップS14)、上記の第2のバルブ群を閉状態にする(ステップS15)。それにより、HF吸着塔60,62内のNaFペレットの加熱が停止されるとともに、HF吸着塔60,62への不活性ガスおよびフッ素ガスの供給が停止される。
【0099】
次に、制御装置90は、内蔵されたタイマ90aにより、ステップS10で計測を開始してからの経過時間を検出する(ステップS16)。次に、制御装置90は、検出されたタイマ90aによる計測開始からの経過時間が予め設定された継続時間T1に達したか否かを判定する(ステップS17)。
【0100】
タイマ90aによる計測開始からの経過時間が継続時間T1に達していない場合、制御装置90は、計測開始からの経過時間が継続時間T1に達するまでステップS16,S17の処理を繰り返す。
【0101】
タイマ90aによる計測開始からの経過時間が継続時間T1に達した場合、制御装置90は、タイマ90aの経過時間を一旦リセットし(ステップS18)、経過時間の計測動作を開始する(ステップS19)。その後、制御装置90は、ステップS2〜ステップS19の処理を繰り返す。
【0102】
(7)効果
本実施の形態に係るフッ素ガス発生装置100においては、第1の動作状態においてHF吸着塔60,62内のNaFペレットに吸着されたHFが、第2の動作状態においてNaFペレットから脱離する。また、第2の動作状態においてHF吸着塔61,63内のNaFペレットに吸着されたHFが、第1の動作状態においてNaFペレットから脱離する。それにより、HF吸着塔60〜63内のNaFペレットを交換することなく、HF吸着塔60〜63内のNaFペレットに過剰にHFが吸着することを防止することができる。その結果、作業員の作業負担の低減およびコストの低減が可能となる。
【0103】
また、本実施の形態に係るフッ素ガス発生装置100においては、第1の動作状態および第2の動作状態のいずれにおいても、HFが除去された高純度の水素ガスおよびフッ素ガスを供給することができる。それにより、HF吸着塔60〜63内のNaFペレットにHFが過剰に吸着されることを防止しつつ継続的に水素ガスおよびフッ素ガスを供給することができる。
【0104】
また、本実施の形態に係るフッ素ガス発生装置100においては、HF吸着塔60〜63内のNaFペレットから脱離したHFが電解槽1内に戻される。それにより、NaFペレットから脱離したHFを電気分解の原料として再利用することができる。その結果、さらなすコストの低減が可能となる。
【0105】
また、本実施の形態に係るフッ素ガス発生装置100においては、HF吸着塔60〜63内のNaFペレットの組成がNaF・nHF(0.01≦n≦0.5)となるように、継続時間T1、第2の温度および加熱時間T2に設定される。これにより、NaFペレットが分解および凝集することが確実に防止され、HF吸着塔60〜63内が閉塞されることおよびHF吸着塔60〜63に接続された配管21〜24,41〜44が閉塞されることが確実に防止される。
【0106】
また、本実施の形態に係るフッ素ガス発生装置100においては、HF吸着塔60〜63のサイズが小さくても、HF吸着塔60〜63内のNaFペレットを交換することなく、継続的にHF吸着塔60〜63を使用することができる。そのため、装置コストおよび輸送コストをさらに低減することが可能になる。なお、HF吸着塔60〜63の体積は、例えば0.5L〜2Lに設定される。
【0107】
(8)他の実施の形態
上記実施の形態では、タイマ90aによる計測時間に基づいて、第1の動作状態と第2の動作状態との切り替えのタイミングが制御されるが、これに限らず、他の方法により第1の動作状態と第2の動作状態との切り替えのタイミングが制御されてもよい。
【0108】
例えば、陰極室3および陽極室4における水素ガスおよびフッ素ガス発生量に基づいて、第1の動作状態と第2の動作状態との切り替えのタイミングが制御されてもよい。この場合、例えば電解槽1にフッ素ガスまたは水素ガスの発生量を検出するためのセンサが設けられる。また、HF吸着塔60〜63内のNaFペレットの組成がNaF・nHF(0.01≦n≦0.5)となるようなフッ素ガスおよび水素ガスの発生量が予め設定される。センサにより検出されたフッ素ガスまたは水素ガスの発生量が、予め設定された値に達した時点で、第1の動作状態と第2の動作状態とが切り替えられる。これにより、HF吸着塔60〜63内のNaFペレットに過剰にHFが吸着することを効率良く確実に防止することができる。
【0109】
また、上記実施の形態では、陽極室4においてフッ素ガスが発生され、陰極室3において水素ガスが発生されるが、陽極室4および陰極室3の各々において酸素等の他の気体が発生されてもよい。
【0110】
また、上記実施の形態では、バッファタンク52に貯蔵されたフッ素ガスがHF吸着塔62,63に送られることにより、吸着剤から脱離したHFがHF吸着塔62,63から押し出されるが、他の方法で吸着剤から脱離したHFがHF吸着塔62,63から押し出されてもよい。例えば、窒素、アルゴンまたはヘリウム等の不活性ガスが貯蔵されたガスタンクが別途設けられ、そのガスタンクからHF吸着塔62,63に不活性ガスが送られることにより、吸着剤から脱離したHFがHF吸着塔62,63から押し出されてもよい。
【0111】
また、上記実施の形態では、第1の動作状態と第2の動作状態との切り替え、第1の動作状態での加熱炉81の停止、および第2の動作状態での加熱炉80の停止が制御部90により自動的に行われるが、オペレータにより第1の動作状態と第2の動作状態との切り替え、第1の動作状態での加熱炉81の停止、および第2の動作状態での加熱炉80の停止が行われてもよい。
【0112】
(9)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0113】
上記実施の形態においては、フッ素ガス発生装置100が気体発生装置の例であり、陽極室4が第1室の例であり、陰極室3が第2室の例であり、フッ素ガスが第1の気体の例であり、水素ガスが第2の気体の例であり、配管40が第1の排出経路の例であり、フッ化水素が第3の気体の例であり、配管20が第2の排出経路の例であり、HF吸着塔62が第1の吸着手段の例であり、HF吸着塔63が第2の吸着手段の例であり、HF吸着塔60が第3の吸着手段の例であり、HF吸着塔61が第4の吸着手段の例である。
【0114】
また、開閉バルブV1〜V4,V15〜V18が接続手段の例であり、図2に示す第1の動作状態での開閉バルブV1〜V4,V15〜V18の状態が第1の状態の例であり、図3に示す第2の動作状態での開閉バルブV1〜V4,V15〜V18の状態が第2の状態の例であり、加熱炉80が第1の加熱手段の例であり、加熱炉81が第2の加熱手段の例であり、制御装置90が制御手段の例であり、配管49が第1の循環経路の例であり、配管29,30が第2の循環経路の例であり、フッ素ガスが第4の気体の例であり、バッファタンク52および配管47が第1の気体供給手段の例であり、窒素、アルゴンまたはヘリウム等の不活性ガスが第5の気体の例であり、不活性ガスタンク53および配管27が第2の気体供給手段の例であり、バッファタンク52が貯蔵部の例であり、配管47が気体供給経路の例である。
【0115】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、種々の処理装置への気体の供給に利用することができる。
【符号の説明】
【0117】
1 電解槽
1a 電解浴
2 隔壁
3 陰極室
4 陽極室
5 陰極
6 陽極
20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49 配管
V1〜V29 開閉バルブ
20a 陰極出口
40a 陽極出口
45a コンプレッサ
51 HF供給源
52 バッファタンク
53 不活性ガスタンク
60,61,62,63 HF吸着塔
70 電圧印加部
80,81 加熱炉
90 制御装置
100 フッ素ガス発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解により第1の気体および第2の気体を発生させる気体発生装置であって、
第1室および第2室に区画され、電気分解される化合物を含む電解浴を収容する電解槽と、
前記第1室において発生された第1の気体を排出する第1の排出経路と、
前記第2室において発生された第2の気体を排出する第2の排出経路と
第1の気体に混入する第3の気体を吸着するための吸着剤を含む第1および第2の吸着手段と、
第2の気体に混入する第3の気体を吸着するための吸着剤を含む第3および第4の吸着手段と、
前記第1および第3の吸着手段をそれぞれ前記第1および第2の排出経路に接続しかつ前記第2および第4の吸着手段をそれぞれ前記第1および第2の排出経路から切り離す第1の状態と、前記第2および第4の吸着手段をそれぞれ前記第1および第2の排出経路に接続しかつ前記第1および第3の吸着手段をそれぞれ前記第1および第2の排出経路から切り離す第2の状態とに切り替え可能に構成された接続手段と、
前記第1および第3の吸着手段の吸着剤をそれぞれ加熱する第1の加熱手段と、
前記第2および第4の吸着手段の吸着剤をそれぞれ加熱する第2の加熱手段と、
前記接続手段、前記第1の加熱手段および前記第2の加熱手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記接続手段を前記第1の状態および前記第2の状態に切り替えるとともに、前記接続手段が第1の状態にある場合に、前記第1および第3の吸着手段の吸着剤が第3の気体を吸着しかつ前記第2および第4の吸着手段の吸着剤から第3の気体が脱離するように前記第1および第2の加熱手段を制御し、前記接続手段が第2の状態にある場合に、前記第2および第4の吸着手段の吸着剤が第3の気体を吸着しかつ前記第1および第3の吸着手段の吸着剤から第3の気体が脱離するように前記第1および第2の加熱手段を制御することを特徴とする気体発生装置。
【請求項2】
前記接続手段が前記第1の状態である場合に前記第2の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体を前記第1室に導き、前記接続手段が前記第2の状態である場合に前記第1の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体を前記第1室に導く第1の循環経路と、
前記接続手段が前記第1の状態である場合に前記第4の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体を前記第2室に導き、前記接続手段が前記第2の状態である場合に前記第3の吸着手段の吸着剤から脱離した第3の気体を前記第2室に導く第2の循環経路とをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の気体発生装置。
【請求項3】
前記接続手段が前記第1の状態である場合に前記第2の吸着手段に第4の気体を供給し、前記接続手段が前記第2の状態である場合に前記第1の吸着手段に前記第4の気体を供給する第1の気体供給手段と、
前記接続手段が前記第1の状態である場合に前記第4の吸着手段に第5の気体を供給し、前記接続手段が前記第2の状態である場合に前記第3の吸着手段に前記第5の気体を供給する第2の気体供給手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の気体発生装置。
【請求項4】
前記第1の気体供給手段は、
前記第1の排出経路を通して排出される第1の気体の一部を貯蔵する貯蔵部と、
前記接続手段が前記第1の状態である場合に前記貯蔵部に貯蔵された第1の気体を前記第4の気体として前記第2の吸着手段に導き、前記接続手段が前記第2の状態である場合に前記貯蔵部に貯蔵された第1の気体を前記第4の気体として前記第1の吸着手段に導く気体供給経路とを含むことを特徴とする請求項3記載の気体発生装置。
【請求項5】
前記第1の排出経路を通して排出される第1の気体のうち要求される量を超える余剰分が前記貯蔵部に貯蔵されることを特徴とする請求項4記載の気体発生装置。
【請求項6】
前記第1の気体はフッ素ガスであり、前記第2の気体は水素であり、前記第3の気体および前記化合物はフッ化水素であり、前記吸着剤はフッ化ナトリウムであり、前記第1室は陽極室であり、前記第2室は陰極室であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の気体発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−208192(P2011−208192A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75088(P2010−75088)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、経済産業省、地域イノベーション創出研究開発事業「地球温暖化係数ゼロのフッ素ガスオンサイト小型発生装置の開発に関する研究」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】