説明

気化ガス製造システム

【課題】幅広い熱量のLNGを取り扱う複数のLNGタンクを備えた気化ガス製造システムにおいて、LNGタンク切替等により受入LNG熱量が急激に変化した場合でも、常時所定の熱量範囲内に熱量調整制御できる気化ガス製造システムを提供する。
【解決手段】複数のLNGタンクと、LNGタンク接続点の下流でLPG供給制御機構を介して払出ラインに接続されたLPGタンクと、気化器とを備えた気化ガス製造システムであって、LNGタンク接続点とLPGタンク接続点の間にLNG熱量計及びLNG流量計を設置し、LPG供給制御機構がLNG熱量計及びLNG流量計の測定値に基づいてLPGの供給量及び供給タイミングを制御し、調整タンクがLNGとLPGを混合して排出し、気化器がLNGとLPGの混合ガス(払出液化ガス)を気化して気化ガスを製造する気化ガス製造システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、下流側で導管に接続された払出ラインと、前記払出ラインの上流側に接続されたLNGタンクと、前記LNGタンクの前記払出ラインへの接続点であるLNGタンク接続点の下流において、LPGの供給量と供給タイミングを制御するLPG供給制御機構を介して前記払出ラインに接続されたLPGタンクと、前記払出ラインに設置され、供給された払出液化ガスを気化して導出する気化器とを備えた気化ガス製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、通常、極低温状態で液化されたLNG(液化天然ガス)として貯蔵され、その消費にあたり、必要量が気化器により常温の天然ガスに気化されて供給される。
【0003】
しかし、天然ガスはそれぞれ固有の熱量値を示す主成分メタン、副成分エタン、プロパン等の主としてパラフイン系同族体から成る多成分系のガスであるため、その熱量は一定しておらず、産地により異なる。即ち天然ガスの熱量は、前記各成分の組成の違いによりばらつきがある。
【0004】
一方、天然ガスを主成分とする都市ガスを供給する場合、都市ガスに求められる熱量が通常の天然ガスの熱量より高いため、熱量の高い成分を添加する等の増熱処理を施して需要地に供給を行っている。
【0005】
このような熱量調整を行なう技術として、従来から、熱量の高いLPGをLNGに混合して増熱天然ガスを製造することが行われている(例えば特許文献1、2)。
【0006】
特許文献1に開示の技術では、LNGタンク1から払出されるLNGを気化器3で気化し、ミキシングタンク5を経た後、増熱処理を行っている。この技術では、増熱制御の形態は、ミキシングタンク5に導入される前の天然ガスの熱量に基づいたフィードフォワード制御とされている。
【0007】
特許文献2に開示の技術では、LNGタンクから払出されるLNG1、LPGタンクから払出されるLPG2をともに液体の状態で混合して増熱処理を行っている。この技術では、増熱制御の形態は、LNG・LPGの混合後の混合ガスの熱量に基づいたフィードバック制御とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平5−22815号公報
【特許文献2】特公平2−13000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今日、都市ガスの主成分であるLNGの供給元は、従来より格段に広がりつつある。そして、そのような供給元の拡大に伴って、供給されるLNGの熱量のばらつきが大きくなっている。したがって、これまで供給されてきたLNGの熱量変動幅から大きく逸脱したLNGを原料として使用しながら、所定の熱量基準を満たす製品ガスを得る必要が生じる。
【0010】
ここで、図2に示すように、従来受け入れられてきたLNGの熱量は、例えば最低熱量が44.2MJ、最高熱量が45.5MJ、平均約44.6MJと、基本的に所定の熱量管理範囲に収まるものであった。
【0011】
しかし、上記のように、今後は幅広い熱量のLNGを取り扱うことになる。その結果、熱量の二極化及び低熱量化が進展し、今後の受入LNGの熱量幅は、例えば最低熱量が42.0MJ、最高熱量が45.5MJ、平均熱量が約43.4MJ程度になると想定される。このような状況では、所定の熱量管理範囲外である42.0MJ〜44.0MJのLNGが供給された場合は、増熱ガスの添加等による熱量調整が必要となる。
【0012】
さらに、例えば特定のLNGタンクから別のLNGタンクにLNGの供給元を切替えた場合に、製品ガスを都市ガスとして供給するためには、受入LNG熱量が急激に変化した場合でも、供給ガスの熱量を常時所定の熱量範囲に収める熱量調整制御を行えることが必要となる。
【0013】
加えて、図2に示すように、今後の受入LNGで想定される平均熱量(約43.4MJ)は法定の最低熱量(44.0MJ)を下回っている。すなわち、今後は最低熱量を下回る熱量のLNGを大量に取り扱うことが想定される。よって、今後の気化ガス製造システムでは、熱量調整を行わなければガス送出を行えない。したがって、今後の気化ガス製造システムでは、常時熱量調整制御を行えるとともに、熱量調整設備に異常が発生した場合でもガス品質を保証できるガス品質保証対策設備が必要となる。
【0014】
ここで従来技術を確認すると、特許文献2に示された増熱天然ガス製造装置は、液熱量計5の測定値に従いフィードバック制御によりLNG及びLPGの流量を調整する装置であるため、構造上必然的に応答遅れを伴うものである。したがって、特許文献2に示された増熱天然ガス製造装置では、LNGの熱量に急激な変化があった場合、供給ガスの熱量を常時所定の熱量範囲に収める熱量調整制御を行うことは難しかった。
【0015】
また、特許文献2の増熱天然ガス製造装置、特許文献1の熱量調整装置はともに複数のLNGタンクを想定したものでないため、熱量二極化・低熱量化及び複数のLNGタンクの切替による受入LNG熱量の急激な変動等への対策を十分に行ったものとは言えない。
【0016】
そこで、以下、LNG及びLPGをともに気体状態の天然ガス及び石油ガスとし、その後フィードバック制御で熱量調整を行う構成を基礎として、LNG供給元を切替えた場合の影響について発明者らが行った検討を図6、図7を用いて説明する。
【0017】
〔検討技術A:気化ガス製造システム1A〕
図6はフィードバック制御を行う従来の気化ガス製造システム1Aにおける熱量調整制御の様子である。図6の気化ガス製造システム1Aは、LNG供給源である複数のLNGタンク10A(10Aa、10Ab、・・・)及びLPG供給源であるLPGタンク20Aを備え、LNG及びLPGを気化後、気化後の天然ガスと石油ガスとを混合して熱量調整を行ういわゆるガスガス方式で熱量調整を行う。当該システム1Aでは、天然ガスと石油ガスを混合後、天然ガスと石油ガスの混合点であるLPGタンク接続点P2Aの下流の払出ライン上に設置された石油ガス添加後ガス熱量計25Aで混合ガスの熱量を測定し、測定された熱量に基づいて石油ガス供給弁22Aのバルブ開度を調整するフィードバック制御により製造ガスの熱量調整を行っている。
【0018】
図6(a)(b)は、縦軸を熱量、横軸を時間とし、気化ガス製造システム1Aの各点における熱量変動の様子を示したグラフ図である。図6(a)(b)中の44MJの破線は、都市ガスとして導管に供給するために要求される最低熱量を示しており、導管L2Aに供給されるガスは、当該熱量を上回る必要がある。
【0019】
図6(a)は、LNG気化器A1での気化後かつ石油ガスとの混合前の天然ガス(すなわち天然ガス)の熱量変動を示すグラフ図である。図6(a)では、特定時点で熱量変動が起こり、供給ガスの熱量が最低熱量の44MJを下回っている。これは例えば、LNGタンク10Aの切替えによるものである。先述の通り、天然ガスは多成分系のガスであるため、発熱量が一定しておらず、産地により異なるため、LNGタンク10Aによっては、最低熱量を下回るLNGが供給される場合がある。したがって、例えば産地の違いによる構成成分の違いにより、LNGタンク10Aaに貯蔵されているLNGは最低熱量を上回っているがLNGタンク10Abに貯蔵されているLNGは最低熱量を下回っているという場合に、LNG供給源がLNGタンク10AaからLNGタンク10Abに切替えられると、図6(a)に示す熱量変動が発生する。
【0020】
このような場合、気化ガス製造システム1Aは、フィードバック制御により石油ガスを混合することで熱量を調整する。図6(b)は石油ガスタンク接続点P2Aの下流における払出ガスの熱量変動の様子を示すグラフ図である。すなわち、図6(a)において、熱量変動前は天然ガスのみで最低熱量を上回っていたため、熱量調整を行う必要はなかった。しかし、熱量変動が生じたことにより、供給ガスの熱量が最低熱量を下回ったことを熱量計25Aの計測値を通じて流量制御部FC1Aが検知すると、流量制御部FC1Aは、フィードバック制御により石油ガス供給弁22Aのバルブを開くよう制御を行う。これにより石油ガスを混合することで、石油ガスタンク接続点P2Aの下流における払出ガスの熱量が最低熱量以上になるように熱量調整を行う(図6(b)「FB制御追従」)。このような制御により、気化ガス製造システム1Aからの払出ガスは、最低熱量以上の熱量を有することが保証される。
【0021】
しかし、上記気化ガス製造システム1Aは熱量計25Aの測定値に基づくフィードバック制御で熱量調整を行っているため、当該システムでは、図6(b)に示す大幅な応答遅れが生じることを避けられない。すなわち、構造上、フィードバック制御を行うのみでは、熱量を追従して所定の範囲に収めることはできても、LNGの熱量に急激な変化があった場合に払出ガスの熱量を常時所定の熱量範囲に収めることは難しかった。
【0022】
〔検討技術B:気化ガス製造システム1B〕
そこで図6に係る気化ガス製造システム1Aを改良した技術が図7である。図7に係る気化ガス製造システム1Bは、図6に係る気化ガス製造システム1Aの構成に加え、LNG気化器B1の下流にミキシングタンクT1Bを設置して、タンク切替時の熱量変動を緩和している。また、ミキシングタンクT1Bの下流かつLPGタンク接続点P2Bの上流にミキシングタンクT1Bからの送出ガスの熱量を測定する天然ガス熱量計15B及び天然ガス流量計16Bを設け、天然ガス熱量計15B及び天然ガス流量計16Bの測定値に基づいて流量制御部FC1BがLPG供給弁22Bのフィードフォワード制御を行う。さらに、最低熱量を下回るオフスペックガスが導管L2Bに送出されるのを防止すべく、LPGタンク接続点P2Bの下流にオフスペックガス送出防止用タンクT2Bを加えたものである。
【0023】
このように構成した気化ガス製造システム1Bの各点における熱量変動の様子を図7に基づいて説明する。
【0024】
図7(a)は、LNG気化器B1での気化後かつミキシングタンクT1Bでの混合前における熱量変動緩和前の払出ガスの熱量変動の様子を示すグラフ図である。図7(a)の挙動は、先述の図6(a)の挙動と同一である。ここまでにおいて、気化ガス製造システム1A、1Bに違いはない。
【0025】
図7(b)は、熱量変動緩和用ミキシングタンクT1Bからの送出後、石油ガス混合前における払出ガスの熱量変動の様子を示すグラフ図であり、天然ガス熱量計15Bで計測される熱量の変動を示すグラフ図である。払出ラインL1BにミキシングタンクT1Bを設置した場合、ミキシングタンクT1Bから送出される天然ガスについて、LNGタンク切替により供給されるLNGの熱量が大幅に低下した場合でも、ミキシングタンクT1Bでの混合による熱量変動緩和効果により、ミキシングタンクT1Bの下流では、LNGタンク切替による熱量の低下は、急激にではなく、緩やかに現れる。
【0026】
また、天然ガス熱量計15Bの計測値は、石油ガス供給弁22Bのフィードフォワード制御に用いられる。すなわち、天然ガス熱量計15Bの計測値に基づき、流量制御部FC1Bが天然ガスの熱量の低下を検知した場合、流量制御部FC1Bは石油ガス供給弁22Bのバルブ開度を上げるよう弁開制御し、それにより石油ガス添加量を増加させ、天然ガス・石油ガス混合ガスの熱量を増加させる。これにより、天然ガス・石油ガス混合ガスは常に一定以上(最低熱量以上)の熱量を有することになる。
【0027】
図7(c)は、LPGタンク接続点P2Bの下流かつオフスペックガス送出防止用タンクT2Bの上流における払出ガスの熱量変動の様子を示すグラフ図である。この時点で計測されるのは天然ガスと石油ガスの混合ガスの熱量であるため、上記で説明したように、フィードフォワード制御の効果により、当該点での払出ガスは、基本的に常に最低熱量以上の熱量を有している。
【0028】
ただし、このように熱量調整制御を行った場合でも、停電や熱量調整設備の異常等により、最低熱量を下回る熱量未調整のオフスペックガスが送出される場合がある。そこで当該システム1Bでは、オフスペックガスの導管L2Bへの送出を防止すべく、LPGタンク接続点P2Bの下流かつ導管L2Bの上流にオフスペックガス送出防止用タンクT2Bを備え、適切な熱量のガスとの混合により熱量を上げた上で導管L2Bに供給している。
【0029】
しかし、このようなミキシングタンクT1B、オフスペックガス送出防止用タンクT2Bを備えた場合の課題として、ミキシングタンクT1B、オフスペックガス送出防止用タンクT2Bはいずれも気化後のガスの状態(気体状態)でミキシングを行うため、液体状態でのミキシングに比べ、大容量の設備が必要になるという欠点がある。例えば圧力が4MPaGの場合、液体状態での密度が約450kg/m3であるのに対し、ガス(気体)状態での密度は約35kg/m3に過ぎず、ガス(気体)の容積効率は液体に比べて大幅に悪い。
【0030】
本願発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、幅広い熱量のLNGを取り扱う複数のLNGタンクを備えた気化ガス製造システムにおいて、LNGタンク切替などにより受入LNG熱量が急激に変動した場合でも、常時所定の熱量範囲内にガス熱量を調整制御できる気化ガス製造システムを提供する点にある。また、熱量調整設備の異常を想定し、ガス品質保証対策を行った気化ガス製造システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的を達成するための本願発明に係る気化ガス製造システムの特徴構成は、下流側で導管に接続された払出ラインと、前記払出ラインの上流側に接続されたLNGタンクと、前記LNGタンクの前記払出ラインへの接続点であるLNGタンク接続点の下流において、LPGの供給量と供給タイミングを制御するLPG供給制御機構を介して前記払出ラインに接続されたLPGタンクと、前記払出ラインに設置され、供給された払出液化ガスを気化して導出する気化器とを備えた気化ガス製造システムであって、前記LNGタンク接続点より上流側に複数のLNGタンクを備えるとともに、複数のLNGタンク間で前記払出ラインに接続されるLNGタンクを切替える切替手段を備え、前記LNGタンク接続点の下流かつ前記LPGタンクの前記払出ラインへの接続点であるLPGタンク接続点の上流の前記払出ライン上にLNG熱量計測手段及びLNG流量計測手段とを設置し、前記LNG熱量計測手段及び前記LNG流量計測手段の測定値に基づいて前記LPG供給制御機構による前記LPGの供給量及び供給タイミングを制御し、前記LPGタンク接続点より下流側の前記払出液化ガスの熱量を目標熱量とするフィードフォワード制御手段を設け、前記LPGタンク接続点より下流側に、前記払出液化ガスを気化する前記気化器を設け、導入される液化ガスを混合するとともに、一部貯留して、混合・貯留後の液化ガスを排出する調整タンクを、前記LNGタンク接続点から前記気化器までの間に設け、前記気化器で気化した払出気化ガスを前記払出ラインを通じて前記導管に供給する点にある。
【0032】
上記構成の気化ガス製造システムでは、増熱処理を天然ガス及び石油ガスがともに液体状態であるLNG、LPGの状態で行う。そして、当該増熱制御は、増熱前のLNGの熱量及び流量を各計測手段で計測し、流量制御弁等のLPG供給制御機構で実行する。
また、当該増熱制御は、LPGの供給量及び供給タイミングを制御し、LPGタンク接続点より下流側の払出液化ガスの熱量を目標熱量とするフィードフォワード制御で実行するため、LNG側の熱量変動を予測して、その変動を吸収するようにLPGを供給する。したがって、結果的に、LPGタンク接続点より下流側に払い出される液化ガスの熱量変動を小さく抑えることができる。なお、ここで目標熱量とは、混合ガス(LPGタンク接続点より下流側の払出液化ガス)に期待する熱量を言う。目標熱量は所定の熱量基準等に基づいて定められる。
さらに、幅広い熱量のLNGを取り扱う複数のLNGタンクを備えた気化ガス製造システムにおいて、切替手段が働いてLNGタンク切替等により受入LNG熱量が急激に変化した場合でも、上述の熱量制御の効果に加えて、気化器上流に備えた調整タンクにより、前記LNGタンク切替等に伴う熱量変動を緩和することができる。その結果、気化器から得られる気化ガスの熱量を常時所定の熱量の範囲に熱量調整制御することができる。
加えて、上記の特徴構成によれば、増熱制御機能部及び調整タンク部ともに液液状態でガスを取り扱うため、従来のガスガス状態での取り扱いに比べ、設備の占有容積を大幅に削減することができる。したがって、従来の構成に比べ、気化ガス製造システムのオンサイトへの設置が容易となる。
【0033】
本願発明に係る気化ガス製造システムの更なる特徴構成は、前記払出ラインにおいて、前記気化器に導入される前記払出液化ガスの熱量を測定する調整後液化ガス熱量計測手段を設置し、前記調整後液化ガス熱量計測手段の下流かつ前記気化器の上流でオフスペック戻しラインを前記払出ラインに接続し、前記調整後液化ガス熱量計測手段の測定値が所定の範囲内でない場合は、前記オフスペック戻しラインを通じて前記払出液化ガスをオフスペック戻し先に戻す点にある。
【0034】
上記の特徴構成によれば、気化器に導入される払出液化ガス(熱量調整を行った液化混合ガス)の熱量が所定の熱量範囲に満たない場合は、当該液化ガスを下流の気化器及び導管に供給することなく、オフスペック戻しラインを通じて回収する。これにより、熱量調整設備に異常が発生した場合でも、オフスペック戻しラインを通じてガス品質を保証できる。
また、上記の特徴構成によれば、オフスペック戻しラインを通じてオフスペック液化ガスを回収できるため、気化器下流にオフスペックガス送出防止用タンクを設置する必要がなくなる。
さらに、上記の特徴構成によれば、液液熱量調整による液体状態の混合ガスについて、当該混合ガスの気化前にオフスペック戻しラインを通じてガス品質保証対策を行うため、当該混合ガスの気化後にガス品質保証対策を行う場合に比べ、その後に気化器や配管があるという設備構成としてのゆとりを生じる。加えて、気体状態のガスの移動速度は毎秒約30mほどであるが、液体状態であれば毎秒4m程度であることから、対応までの時間的な猶予を生み出すこともできる。
【0035】
本願発明に係る気化ガス製造システムの更なる特徴構成は、前記オフスペック戻し先が、前記LNGタンク及び前記LPGタンクのいずれとも異なる設備でもよい点にある。
【0036】
上記の特徴構成によれば、例えば最低熱量に満たなかったため気化器及び導管に供給されなかったガスをオフスペック液化ガスとして供給元のLNGタンク及びLPGタンクとは異なる設備に戻すことができるため、その後分離して供給元のLNGタンクもしくはLPGタンクに戻すか、或いはその他の用途に使用するか等のように、オフスペックガスの用途や、下流の設備構成を選択する余地が生まれる。
【0037】
本願発明に係る気化ガス製造システムの更なる特徴構成は、前記LPGタンク接続点の下流の前記払出ライン上に前記払出ラインを流れる前記払出液化ガスの熱量を測定するLPG添加後液化ガス熱量計測手段を設置し、前記LPG添加後液化ガス熱量計測手段の測定値に基づいて前記LPG供給制御機構による前記LPGの供給量を制御し、前記LPGタンク接続点より下流側の前記払出液化ガスの熱量を目標熱量とするフィードバック制御手段を設けた点にある。
【0038】
上記の特徴構成によれば、LNGの熱量に基づくLPG供給量のフィードフォワード制御に加えて、LPG添加後の払出液化ガス(液体状態にある混合ガス)の熱量に基づいてLPG供給量の調整を行うフィードバック制御を行うため、フィードフォワード制御による制御のずれをフィードバック制御により補正することができる。これにより、より適切なLPG供給制御を行うことができる。
【0039】
本願発明に係る気化ガス製造システムの更なる特徴構成は、前記調整タンクが口径の異なる複数の入口ノズルを有し、前記調整タンクに導入される前記液化ガスの流量に基づいて、前記入口ノズルから前記調整タンク内に導入される液化ガスの流速が所定値以上となるように、流量が減少した場合には小口径の入口ノズルを選択する形態で前記調整タンク内に導入させる点にある。
【0040】
上記の特徴構成によれば、本願発明に係る熱量調整は、混合対象が液体であり、粘性を有するため、完全混合に近い混合を得るためには十分なノズル流速が要求されるところ、調整タンクに導入される液化ガスの流量毎に口径の異なるノズルを切替えることで、当該調整タンクにおいて混合に必要な十分なノズル流速を確保することができる。すなわち、調整タンクに導入される液化ガスが小流量の場合は、口径の小さい入口ノズルから導入することでノズル流速を確保し、十分な混合を実現する一方で、払出ガスが大流量の場合は、口径の大きい入口ノズルから導入することでノズル流速を抑え、ノズル流速が上昇した際に生じる設備振動により問題が生じることを回避する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本願発明に係る都市ガス製造システムの構成例を示す説明図である。
【図2】熱量二極化及び低熱量化を背景とする熱量調整制御の必要性を示す説明図である。
【図3】LNGの流量と混合ガスの熱量(混合状態)の関係を示すグラフ図である。
【図4】本願発明に係る都市ガス製造システムの構成図及び各点における熱量変動の様子を示すグラフ図である。
【図5】本願発明に係る都市ガス製造システムの別構成例を示す説明図である。
【図6】検討技術Aに係る都市ガス製造システムの構成図及び各点における熱量変動の様子を示すグラフ図である。
【図7】検討技術Bに係る都市ガス製造システムの構成図及び各点における熱量変動の様子を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、本願発明に係る都市ガス製造システム(気化ガス製造システムの一例)の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0043】
〔概略構成〕
図1は、本願発明に係る都市ガス製造システムの構成例を示す説明図である。
都市ガス製造システムは、下流側で導管L2に接続された払出ラインL1と、払出ラインL1の上流側に接続されるLNGタンク10と、LNGタンク10の払出ラインL1への接続点であるLNGタンク接続点P1の下流において、LPGの供給量と供給タイミングを制御するLPG供給制御機構(具体的にはLPG供給制御弁22)を介して払出ラインL1に接続されたLPGタンク20と、払出ラインL1に設置され、供給された払出液化ガスを気化して導出する気化器40とを備えて構成されている。
【0044】
また、LNGタンク接続点P1より上流側に複数のLNGタンク10を備えるとともに、複数のLNGタンク10間で払出ラインL1に接続されるLNGタンク10を切替える切替手段(具体的には開閉弁からなるLNG供給弁12)を備え、LNGタンク接続点P1の下流かつLPGタンク20の払出ラインへの接続点であるLPGタンク接続点P2の上流の払出ライン上にLNG熱量計測手段(具体的にはLNG熱量計15)及びLNG流量計測手段(具体的にはLNG流量計16)とが設置されている。
【0045】
さらに、前記LNG熱量計測手段及び前記LNG流量計測手段の測定値に基づいて前記LPG供給制御機構によりLPGの供給量及び供給タイミングを制御し、LPGタンク接続点P2より下流側の払出液化ガスの熱量を目標熱量とするフィードフォワード制御手段(具体的には流量制御部FC1)を設け、LPGタンク接続点P2より下流側に、払出液化ガスを気化する気化器40が設けられている。
【0046】
そして、導入される払出液化ガスを混合するとともに一部を貯留して、混合・貯留後の液化ガスを排出する調整タンク30をLNGタンク接続点P1から気化器40までの間に設けている。その結果、気化器40で気化した払出気化ガスを払出ラインL1を通じて導管L2に供給することができる。
【0047】
また、払出ラインL1において、調整タンク30の下流に調整タンク30からの払出液化ガス(調整後液化ガス)の熱量を測定する調整後液化ガス熱量計測手段(具体的には調整後液化ガス熱量計35)を設置し、この調整後液化ガス熱量計測手段の下流かつ気化器40の上流でオフスペック戻しラインL3を払出ラインL1に接続している。そして、調整後液化ガス熱量計測手段の測定値が所定の範囲内でない場合は、オフスペック戻しラインL3を通じて払出液化ガスをオフスペック戻し先50に戻す構成を採用している。本構成例では、LNGタンク10及びLPGタンク20のいずれとも異なる設備であるオフスペック戻しタンクをオフスペック戻し先50としている。
【0048】
さらに、LPGタンク接続点P2の下流の前記払出ラインL1上に払出ラインL1を流れる払出液化ガスの熱量を測定するLPG添加後液化ガス熱量計測手段(具体的にはLPG添加後液化ガス熱量計25)を設置し、このLPG添加後液化ガス熱量計測手段の測定値に基づいて前記LPG供給制御機構(LPG供給制御弁22)によりLPGの供給量を制御し、LPGタンク接続点P2より下流側の払出液化ガス(LPG添加後液化ガス)の熱量を目標熱量とするフィードバック制御手段(具体的には、前記流量制御部FC1がこの制御手段としても働く)が設けられている。
【0049】
また、前記調整タンク30が口径の異なる複数の入口ノズル32(32a、32b)を有し(図1には、この入口ノズル32a、32bに接続される切替弁31a、31bを備えた並列配置の管路を示している)、調整タンク30に導入される液化ガスの流量に基づいて、入口ノズル32から調整タンク30内に導入する液化ガスの流速が所定値以上となるように、流量が減少した場合には小口径の入口ノズルを選択する形態で前記調整タンク30内に導入させる構成を採用している。
【0050】
以上で説明したように、都市ガスの原料となるLNGは、複数のLNGタンク10(10a、10b、・・・)に蓄えられており、供給元とするタンクを切替えるLNGポンプ11(11a、11b、・・・)、LNG供給弁12(12a、12b、・・・)を経て払出ラインL1に供給される。
【0051】
この都市ガス製造システム1では、通常、複数のLNGタンク10(10a、10b、・・・)から払出ラインL1にLNGを供給する同時供給形態として払出しており、LNGポンプ11(11a、11b、・・・)、LNG供給弁12(12a、12b、・・・)及びその切替制御装置(図示省略)が本願にいう切替手段を構成する。そして、本願発明に係る熱量制御は、このようなLNG供給元のLNGタンク10からの払出流量バランスが崩れた場合や、LNGポンプ11やLNG供給弁12が故障停止した場合等に生じる熱量の急激な変動への対応を課題としている。
【0052】
以下、システムの主要な機能の詳細について説明する。
〔フィードフォワード制御による熱量調整〕
これまでも説明してきたように、LNGの熱量はLNGタンク10毎に異なる。したがって、複数のLNGタンク10(10a、10b、・・・)をLNGの供給元とする場合、供給元となるLNGタンク10の切替により熱量調整前のLNGの熱量が急変する場合がある。しかし、都市ガスとして導管L2に供給するには、供給するガスの熱量が所定の熱量範囲であることが要求されるため、LNGタンク切替などで熱量調整前のLNGの熱量が急変した場合でも、熱量調整後の送出ガスの熱量は常時所定の熱量範囲内に制御される必要がある。そこで本願発明では、そのような熱量調整制御を行うべく、LPGの添加に際してLNG熱量計15及びLNG流量計16の計測値に基づいて演算を行い、LPGの添加タイミング及び必要なLPG添加量を計算するフィードフォワード制御を行っている。
【0053】
すなわち、LNGに添加されるLPGは、LPGポンプ21、LPG供給量を調整するLPG供給弁22を介してLPGタンク20から供給されるところ、本願発明では、LNGタンク10から払出ラインL1に供給されたLNGの熱量及び流量を払出ラインL1上に設置されたLNG熱量計15及びLNG流量計16により計測し、流量制御部FC1は当該計測値に基づいて、当該計測されたLNGが払出ラインL1へのLPGタンク20からの接続点でありLNGとLPGが混合されるLPGタンク接続点P2に到達するまでの遅れ時間T及び所定の熱量に増熱するために必要なLPG添加量F_LPGを算出し、算出した遅れ時間T及びLPG添加量F_LPGに基づいてLPG供給弁22のバルブ開閉タイミング及びバルブ開度を調整し、LPG添加量を調整する。この制御はLPGタンク接続点P2より下流側の払出液化ガス(LPG添加後液化ガス)の熱量が目標熱量となるようにフィードフォワード制御を実行するものである。
【0054】
具体的には、払出ラインL1を流れるLNGの体積流量をF[m3/h]、LNGが流れる払出ラインL1の配管の断面積をS[m2]、LNGを計測したLNG流量計16の設置点からLPGタンク接続点P2までの配管長をL[m]とすると、遅れ時間Tは以下の式で算出される。

遅れ時間T=L÷(F/S)[時間]=L÷(F/S)×3,600[秒]
【0055】
また、必要なLPG添加量F_LPG[t/h]は、計測されたLNG流量をF_LNG[t/h]、演算により算出されるLNGの熱量をQ_LNG[MJ/m3N]、既知のLNGの産気係数をZ_LNG、LPGの産気係数をZ_LPG、LPGの熱量をQ_LPG[MJ/m3N]、LPG添加後のLNG・LPG混合ガスに期待する熱量(目標熱量)をQ_set[MJ/m3N]とすると、以下の式から算出される。

F_LNG×Z_LNG×Q_LNG+F_LPG×Z_LPG×Q_LPG
=(F_LNG×Z_LNG+F_LPG×Z_LPG)×Q_set
【0056】
また、本願発明に係る都市ガス製造システム1は、上記LNG熱量計15及びLNG流量計16の計測値に基づくフィードフォワード制御だけでなく、LPGタンク接続点P2の下流の払出ラインL1上にLPG添加後液化ガス熱量計25を設置し、流量制御部FC1において、当該熱量計25の計測値に基づきLPG添加後ガスの熱量を算出し、LPG供給量を補正するフィードバック制御を併せて行う。すなわち、フィードフォワード制御による制御のずれをフィードバック制御により補正することで、より適切な熱量調整を行う。
【0057】
〔調整タンクによる混合〕
LPGタンク接続点P2の下流の払出ラインL1上には、熱量変動の緩和を目的として、調整タンク30を設ける。図1から伺えるように、この段階ではLNG、LPGとも気化器40を経ておらず、ともにまだ液体状態である。すなわち、本構成に係る調整タンク30では、液体状態のLNG、LPGを混合する。このように、LNG、LPGを液体状態で混合することで(液液方式)、天然ガス、石油ガスを気体状態で混合する場合に比べ(ガスガス方式)、タンクに必要な容量を大幅に削減することができる。具体的な実施例では、従来のガスガス方式で容量105m3のタンクが13基必要であったところ、液体状態で混合を行う調整タンクを用いることで、容量15m3のタンク3基で対応が可能となった。
【0058】
また、液体は気体に比べ一般に粘性が大きく、混合しづらいという性質を持つため、液体状態で混合を行う調整タンク30では、流量レンジ別にノズルを設け、運用に合わせて切替える構成にするとよい。ノズル流速が混合性能に与える影響が大きいためである。以下、図3のLNG流量と混合ガス熱量(混合状態)の関係を示すグラフ図に基づいてこれを説明する。
【0059】
図3(a)は、縦軸を熱量、横軸を時間とし、本願発明に係る調整タンク30において、口径150Aの大流量用ノズルから流量300t/hでLNGを導入した場合の混合ガスの熱量の変化を示すグラフ図である。LNGの流量が300t/hと大流量の場合は、口径150Aを通じてガスを混入した場合でもノズル流速は10.3m/sに及ぶ。この場合、混合ガスの熱量Houtは、完全混合された場合のガス熱量とほぼ一致する。
【0060】
一方、図3(c)は、本願発明に係る調整タンク30において、口径150Aの大流量用ノズルから流量120t/hでLNGを導入した場合の混合ガスの熱量の変化を示すグラフ図である。LNGの流量が120t/hと小流量になると、口径150Aを通じた混入では、ノズル流速が2.6m/sと低下する。その結果、調整タンク30内における強制対流の影響が弱まり、混合ガスの熱量Houtは完全混合された場合のガス熱量から逸脱する。すなわち、単一のノズルからLNGを導入する場合、低流量域ではノズル流速の確保が困難となり、混合状態が完全混合から逸脱してしまう場合がある。
【0061】
そこで上述したように、幅広い流量を扱う調整タンク30では、流量レンジ別に複数のノズルを設け、運用に合わせてノズルを切替える構成にするとよい。図3(b)は、本願発明に係る調整タンクにおいて、口径100Aの小流量用ノズルから流量120t/hでLNGを導入した場合の混合ガスの熱量の変化を示すグラフ図である。当該小流量用ノズルによれば、流量120t/hの場合でも、4.5m/sのノズル流速が確保される。その結果、LNG流量が120t/hでも、混合ガスの熱量Houtは完全混合された場合のガス熱量とほぼ一致する。
【0062】
上記に従い、図1の構成例では、熱量変動緩和用調整タンク30に40t/h〜120t/hの小流量を対象とする小流量用入口ノズル、100t/h〜300t/hの大流量を対象とする大流量用入口ノズルの2つの入口ノズル及び各々のノズルの弁開/弁閉を行う仕切弁31a、31bを設け、LNG流量計16の計測値に応じて流量制御部FC2が仕切弁31a、31bの弁開/弁閉制御を行う構成としている。
【0063】
〔ガス品質保証対策〕
調整タンク30での混合を経たLNG・LPG混合ガスは、気化器40に払い出されるが、調整タンク30の下流かつ気化器40への上流の払出ラインL1に設置された調整後液化ガス熱量計35の計測値に基づき、流量制御部FC3は、LNG・LPG混合ガスの熱量が所定の熱量範囲にあるかどうかを判断する。
【0064】
そして、LNG・LPG混合ガスの熱量が所定の熱量範囲でないと判断した場合は、流量制御部FC3は、気化器40への弁41を閉じ、オフスペック戻しラインL3の弁51を開くように弁閉/弁開制御を行う。これにより、当該混合ガスはオフスペック戻しライン接続点P3で払出ラインL1に接続されたオフスペック戻しラインL3を通じてオフスペック戻し先50に戻されるため、都市ガスとして導管L2に供給されるのを防ぐことができる。
【0065】
一方、LNG・LPG混合ガスの熱量が所定の熱量範囲と判断した場合は、流量制御部FC3は、オフスペック戻しラインL3の弁51を閉じ、気化器40への弁41を開くように弁閉/弁開制御を行う。これによりLNG・LPG混合ガスは気化器40に導入され、気化器40で気化され、製品ガスとして払出ラインL1を経て、導管L2に供給される。本構成例ではこのように、調整後液化ガス熱量計35及びオフスペック戻しラインL3を利用して、ガス品質保証対策を行っている。
【0066】
なお、オフスペック戻し先50は、LNG、LPGの供給源であるLNGタンク10、LPGタンク20であってもよいし、これらとは全く別の戻し先であってもよい。また、オフスペック戻し先50に導入されたガスは、例えばLNG熱量計15の上流から払出ラインL1に還流され、都市ガスの製造に利用されるように構成してもよい。
【0067】
さらに、オフスペック戻しラインL3の活用方法として、オフスペック液化ガスをオフスペック戻し先50に導入する他、都市ガス製造システム1に常に一定以上の流量のガスが流れていることを保証すべく、LNG流量計16の測定値に基づいて弁51の弁開/弁閉制御を行う流量制御部FC4のミニマム制御において、余剰なガスをLNGタンク10やオフスペック戻し先50に還流させるためのラインとして使用してもよい。
【0068】
〔本願発明の効果〕
以下、図4に基づいて本願発明の作用効果を説明する。図4は本願発明に係る気化ガス製造システムの各点における熱量変動の様子を示すグラフ図である。
【0069】
LNGタンク接続点P1の下流かつLPGタンク接続点P2の上流で払出ラインL1上に設置されたLNG熱量計15及びLNG流量計16の点における熱量変動の様子は図4(a)に示す通りである。図4(a)における熱量変動の様子は、先に説明した検討技術A、Bにおける図6(a)、図7(a)と同様である。特定時点において熱量変動が起こり、ガス熱量は最低熱量を下回っているが、図6(a)、図7(a)と同様、これは例えば、LNGタンク切替に起因するものである。
【0070】
図4(b)は、LPGタンク接続点P2の下流かつ熱量変動緩和用調整タンク30の上流で払出ラインL1上に設置されたLPG添加後液化ガス熱量計25の点における熱量変動の様子である。本願発明に係る気化ガス製造システム1では、LNG熱量計15及びLNG流量計16の測定値に基づいてLPG供給弁22のフィードフォワード制御を行っているため、LNG熱量計15の計測値に基づいてLNGの熱量低下を検知すると、LPG供給弁22のバルブ開度を上げ、LPG添加量を増加させることでLPG添加後液化ガスの熱量を増加させる。
【0071】
この様子を示したものが図4(b)である。図4(b)では、熱量変動の発生後、フィードフォワード制御による追従により、LPG添加量を増加させることでLPG添加後液化ガスの熱量が徐々に増加し、最低熱量を超えている。
【0072】
なお、本願発明に係る図4(b)のフィードフォワード制御では、フィードバック制御のみを行う図6(b)の従来技術と異なり、熱量調整のためのLPG添加量(LPG供給弁22のバルブ開度)だけでなく、遅れ時間Tの算出に基づくLPG供給弁22のバルブ開閉タイミングも制御の対象としている(〔0052〕〔フィードフォワード制御による熱量調整〕で先述)。したがって、熱量変動への追従は、従来技術である図6(b)のフィードバック制御における「応答遅れ」がほぼ見られないほどに迅速に行われる。(但し、このような制御を行った場合でも、制御タイミングにずれが生じることは避けられないため、例えば図6(b)「追従のずれ」に見られる程度の、1秒未満程度のずれは発生する。)
【0073】
図4(c)は、熱量変動緩和用調整タンク30の下流かつ気化器40の上流で払出ラインL1上に設置された調整後液化ガス熱量計35の点における熱量変動の様子である。図4(c)に示されるガス熱量の変動は、図4(b)の点以降、熱量変動緩和用調整タンク30を経たものであり、当該タンク30の効果を表すものである。図4(c)では、調整タンク30の効果により熱量変動後の熱量低下が緩和され、熱量低下はするものの、払出ガス熱量は常に最低熱量を超えている。
【0074】
また、上記以外の効果として、本願発明に係る調整タンク30では、LNG・LPGの混合による熱量調整をいわゆる液液方式で行っているため、気化後のLNG・LPG(天然ガス・石油ガス)を混合する場合に比べて、調整タンク30の容量が小さく済む点は先述の通りである。
【0075】
調整タンク30を経たLNG・LPG混合ガスは、調整後液化ガス熱量計35の測定値から算出される調整後液化ガスの熱量が所定の最低熱量を超えている場合は、気化器40で気化され、導管L2に供給される。一方、調整後液化ガスの熱量が最低熱量を超えない場合は、調整タンク30の下流かつ気化器40の上流のオフスペック戻しライン接続点P3で払出ラインL1に接続されたオフスペック戻しラインL3を通じてオフスペック戻し先50に払い出される。
【0076】
本願発明ではこのように、所定の熱量範囲に収まらないオフスペック液化ガスは、オフスペック戻しラインL3を通じて回収する。これにより、図7の従来技術Bにおいて、オフスペックガスの導管L2への送出を防止すべく導管L2の上流に配置されていたオフスペックガス送出防止用調整タンクT2Bを不要化しつつ、熱量調整設備異常等により調整後液化ガスの熱量が最低熱量を下回った場合は当該調整後液化ガスを回収するガス品質保証対策設備を備えた気化ガス製造システムを構成することができる。
【0077】
〔別構成例〕
図5に本願発明に係る気化ガス製造システムの別の構成例を示す。図5に係る気化ガス製造システム1Dは、図1に係る気化ガス製造システム1の熱量変動緩和用調整タンク30の設置箇所を変えたものである。
図1では熱量変動緩和用調整タンク30をLPGタンク接続点P2の下流かつ気化器40の上流の払出ラインL1上に配置したが、調整タンク30の配置は、熱量変動緩和という目的を果たせる位置であればよい。例えば熱量変動の主な原因がLNGタンク10の切替に基づくLNG熱量の変動である場合は、調整タンク30はLNGタンク切替点の下流、すなわちLNGタンク接続点P1の下流に配置されていればよい。
また、調整タンクの採用によるタンク容量の小型化という目的を果たすためには、調整タンク30はLNG及びLPGの気化以前、すなわち、気化器40の上流に配置されていればよい。
したがって、例えば熱量変動の主な原因がLNGタンク10の切替に基づくLNG熱量の変動である場合は、図5のように、調整タンク30は、LNGタンク接続点P1の下流かつ気化器40の上流であるLPGタンク接続点P2の上流に配置してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 気化ガス製造システム
10 LNGタンク
12 LNG供給弁(切替手段)
15 LNG熱量計(LNG熱量計測手段)
16 LNG流量計(LNG流量計測手段)
20 LPGタンク
22 LPG供給制御弁(LPG供給制御機構)
25 LPG添加後液化ガス熱量計(LPG添加後液化ガス熱量計測手段)
30 調整タンク
32 入口ノズル
35 調整後液化ガス熱量計(調整後液化ガス熱量計測手段)
40 気化器
50 オフスペック戻し先
L1 払出ライン
L2 導管
L3 オフスペック戻しライン
P1 LNGタンク接続点
P2 LPGタンク接続点
P3 オフスペック戻しライン接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下流側で導管に接続された払出ラインと、
前記払出ラインの上流側に接続されたLNGタンクと、
前記LNGタンクの前記払出ラインへの接続点であるLNGタンク接続点の下流において、LPGの供給量と供給タイミングを制御するLPG供給制御機構を介して前記払出ラインに接続されたLPGタンクと、
前記払出ラインに設置され、供給された払出液化ガスを気化して導出する気化器とを備えた気化ガス製造システムであって、
前記LNGタンク接続点より上流側に複数のLNGタンクを備えるとともに、複数のLNGタンク間で前記払出ラインに接続されるLNGタンクを切替える切替手段を備え、
前記LNGタンク接続点の下流かつ前記LPGタンクの前記払出ラインへの接続点であるLPGタンク接続点の上流の前記払出ライン上にLNG熱量計測手段及びLNG流量計測手段とを設置し、
前記LNG熱量計測手段及び前記LNG流量計測手段の測定値に基づいて前記LPG供給制御機構による前記LPGの供給量及び供給タイミングを制御し、前記LPGタンク接続点より下流側の前記払出液化ガスの熱量を目標熱量とするフィードフォワード制御手段を設け、
前記LPGタンク接続点より下流側に、前記払出液化ガスを気化する前記気化器を設け、
導入される液化ガスを混合するとともに一部貯留して、混合・貯留後の液化ガスを排出する調整タンクを前記LNGタンク接続点から前記気化器までの間に設け、
前記気化器で気化した払出気化ガスを前記払出ラインを通じて前記導管に供給する気化ガス製造システム。
【請求項2】
前記払出ラインにおいて、前記気化器に導入される前記払出液化ガスの熱量を測定する調整後液化ガス熱量計測手段を設置し、
前記調整後液化ガス熱量計測手段の下流かつ前記気化器の上流でオフスペック戻しラインを前記払出ラインに接続し、
前記調整後液化ガス熱量計測手段の測定値に基づき算出される前記払出液化ガスの熱量が所定の範囲内でない場合は、前記オフスペック戻しラインを通じて前記払出液化ガスをオフスペック戻し先に戻す請求項1に記載の気化ガス製造システム。
【請求項3】
前記オフスペック戻し先が、前記LNGタンク及び前記LPGタンクのいずれとも異なる設備である請求項2に記載の気化ガス製造システム。
【請求項4】
前記LPGタンク接続点の下流の前記払出ライン上に前記払出ラインを流れる前記払出液化ガスの熱量を測定するLPG添加後液化ガス熱量計測手段を設置し、
前記LPG添加後液化ガス熱量計測手段の測定値に基づいて前記LPG供給制御機構による前記LPGの供給量を制御し、前記LPGタンク接続点より下流側の前記払出液化ガスの熱量を目標熱量とするフィードバック制御手段を設けた請求項1〜3のいずれか一項に記載の気化ガス製造システム。
【請求項5】
前記調整タンクが口径の異なる複数の入口ノズルを有し、前記調整タンクに導入される前記液化ガスの流量に基づいて、前記入口ノズルから前記調整タンク内に導入される液化ガスの流速が所定値以上となるように、流量が減少した場合には小口径の入口ノズルを選択する形態で前記調整タンク内に導入させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の気化ガス製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−207982(P2011−207982A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76004(P2010−76004)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】