説明

気密容器の製造方法

【課題】機械的な外力を加えて両基板を切断する際に、基板での過大な応力や変形の発生を防止する。
【解決手段】互いに対向する第1の基板1と第2の基板7の間に複数の接合材2と複数の支持部材3とが配置された組立体20を用意する。支持部材3の各々は、第1の基板1の第2の基板と対向する面に、隣接する接合材同士を仕切る第1の仮想線10に沿って設けられる。接合材2を加熱して第1の基板1と第2の基板7とを接合材によって接合するとともに、支持部材3の各々と第2の基板7とを当接させる。第2の基板7を第1の仮想線10に沿って機械的な外力を与えて切断し、第1の基板1を接合材と第1の仮想線の間に位置する第2の仮想線12に沿って機械的な外力を与えて切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密容器の製造方法に関し、特に一対のガラス基板から複数の気密容器を切り出す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機LEDディスプレイ(OLED)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などの、フラットパネルタイプの画像表示装置が公知である。これらの画像表示装置は、対向するガラス基板を気密接合して製造され、内部空間が外部空間に対して仕切られた気密容器を備えている。このような気密容器を製造するには、対向するガラス基板の間に必要に応じて間隔規定部材や局所的な接着材を配置し、周辺部に接合材を枠状に配置して、ガラス基板同士を加熱接合する。この方法は、内部に機能デバイスを具備しない真空断熱ガラスの製造にも適用できる。
【0003】
一対のガラス基板から複数の気密容器を製造する技術も知られている。具体的には、対向するガラス基板の間に枠状の接合材をマトリクス状に複数配置し、各々の接合材を加熱接合した後に、個々の気密容器に切断する。
【0004】
特許文献1には、OLEDの外囲器の製造方法が開示されている。マザー基板上に複数の発光素子をマトリックス状に形成し、封止基板上に発光素子と対応した複数の枠状の密封材(封止材)を形成する。発光素子が対応する密封材に取り囲まれるように封止基板とマザー基板とを対向させ、接合材を溶融し、マザー基板と封止基板を接合する。その後、マザー基板と封止基板を切断して、個々のパネルに分離する。
【0005】
特許文献2には、OLEDの外囲器の製造方法が開示されている。第1マザー基板と第2マザー基板の間に密封材(封止材)を格子状に配置し、両基板を接合する。次に、密封材を切断ラインとして両基板を切断し、個々の気密容器に分離する。密封材が無機物で形成されている場合、切断にはスクライバが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-165170号公報
【特許文献2】特開2009-042719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法は、枠状の密封材(封止材)が個々の発光素子を取り囲んで個別に設けられているため、基板を切断する際には、隣接する密封材の間のスペースを切断ラインとして用いることになる。しかし、このスペースには何も設けられていないため、機械的な外力を与えて切断する場合、基板自身で外力を支持する必要があり、基板が大きな変形や応力を受ける。その結果切断が不安定となり、歩留まりも低下する可能性がある。
【0008】
特許文献2に記載の方法は、密封材(封止材)を切断ラインとして用いているため、機械的な外力を密封材が支持し、ガラス基板への影響は抑えられる。しかしながら、接合材自体を切断するため、接合材にクラックが生じるなど、気密容器としての信頼性が低下する可能性がある。
【0009】
本発明は、互いに対向する第1の基板と第2の基板の間に複数の枠状の接合材を設け、両基板を切断することによって個々の気密容器を得る、気密容器の製造方法を対象とする。本発明は、機械的な外力を加えて両基板を切断する際に、基板での過大な応力や変形の発生を防止し、歩留まりの向上が可能な気密容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の気密容器の製造方法は、互いに対向する第1の基板と第2の基板の間に複数の接合材と複数の支持部材とが配置され、接合材の各々は、閉じた線状の形状を有し、第1及び第2の基板の双方に接し、かつ他の接合材の外側に互いに離間して配置され、支持部材の各々は、第1の基板の第2の基板と対向する面に、接合材同士を仕切る第1の仮想線に沿って設けられた組立体を用意する工程と、接合材を加熱して第1の基板と第2の基板とを接合材によって接合するとともに、支持部材の各々と第2の基板とを当接させる工程と、第1の基板と接合された第2の基板を、第1の基板と対向する面の裏面から、第1の仮想線に沿って機械的な外力を与えて切断することと、第2の基板と接合された第1の基板を、第2の基板と対向する面の裏面から、接合材と第1の仮想線の間に位置する第2の仮想線に沿って機械的な外力を与えて切断することと、によって、複数の気密容器を切り出す工程と、を有している。
【0011】
第2の基板の切断ラインとなる第1の仮想線には支持部材が設けられている。支持部材は、第1の基板と第2の基板とが接合されるときに、第2の基板と当接する。このため、第2の基板を切断する際に加えられる機械的な外力が支持部材によって支持され、第2の基板への大きな変形や応力が防止される。一方、第1の基板の切断ラインとなる第2の仮想線は接合材と第1の仮想線の間に位置しているため、第1の基板を切断する際に加えられる機械的な外力は、接合材と支持部材とによって支持される。支持部材を設けることによって、外力の支持位置の間隔が縮小するため、第1の基板についても、大きな変形や応力が防止される。以上によって基板の切断が安定し、歩留まりの向上も可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機械的な外力を加えて両基板を切断する際に、基板での過大な応力や変形の発生を防止し、歩留まりの向上が可能な気密容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の第1のステップを示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の第2のステップを示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の第3のステップを示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の第3のステップを示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態で形成される組立体の平面図である。
【図6】比較例の組立体の平面図である。
【図7】本発明の効果を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態で形成される組立体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の気密容器の製造方法は、内部空間が外部空間から気密遮断されることが必要なデバイスを有するOLED、FED、PDPなどの画像表示装置の外囲器の製造方法に適用可能である。本発明の気密容器の製造方法は、画像表示装置の外囲器などの気密容器の製造に限定されるものではなく、真空断熱ガラスなど、対向する基板の周辺部領域に、気密性の要求される接合部を有する気密容器の製造に広く適用可能である。
【0015】
本発明に係る気密容器の製造方法の第1の実施形態について、図1〜5を参照して説明する。図1はステップ1を示す工程図、図2はステップ2を示す工程図、図3,4はステップ3を示す工程図、図5はステップ2が終了した時点での平面図である。図5(a)と図5(b)は、後述する第1の仮想線と第2の仮想線を別々に示していることを除き、同じ状態を示している。図1〜4は図5中のA−A線で見た断面図である。
【0016】
(ステップ1)
図1(a)、5に示すように、まず、第1の基板1上に複数の枠状の接合材2を、マトリクス状に配列するように形成する。いずれの接合材2も他の接合材2の外側に、他の接合材2に対し互いに離間して配置される。次に、第1の基板1上の、各接合材2の外側領域に、接合材2に沿って支持部材3を形成する。支持部材3の各々は、第1の基板の第2の基板7(後述)と対向する面に、隣接する接合材2同士を仕切る第1の仮想線10に沿って設けられる。第1の仮想線10は複数本設定されており、本実施形態では一部の第1の仮想線10が互いに隣接する接合材2の間を平行に延び、残りが当該一部の第1の仮想線10と直交する方向に延びている。第1の仮想線10は後述する切断ラインと一致しており、第1の仮想線10に沿って第2の基板7が切断される。支持部材3は、互いに隣接する接合材2の互いに対向する辺2a,2bの間に連続的に設けられている。
【0017】
本実施形態では、画像表示装置の外囲器としての気密容器を想定しているため、複数の接合材2は同一の矩形形状を有している。しかし、接合材2の外形はこれに限定されず、任意の閉じた線状の形状を有していればよい。
【0018】
次に、図1(b)及び図5に示すように、発光部5が形成され、発光部5の周辺に電極6が配置された第2の基板7を用意する。発光部5は、TFT回路、平坦化膜、コンタクトホール、下部電極、有機EL層、上部電極、及び保護層(いずれも不図示)で構成されている。電極6はOLED素子の駆動に使用する周辺回路を接続するために設けられている。
【0019】
次に、図1(c)に示すように、接合材2及び支持部材3が形成された第1の基板1と、発光部5が形成され第2の基板7と、を互いに対向配置し、内部空間8を規定する。このとき、接合材2の各々は、第1及び第2の基板1,7の双方に接している。接合材2は発光部5を、支持部材3は電極6を、それぞれ取り囲むように配置されている。このようにして、第1の基板と第2の基板7の間に複数の接合材2と複数の支持部材3とが配置された組立体20を用意する。
【0020】
接合材2は、粘度が負の温度係数を有し、高温度側で軟化し、かつ第1の基板1と第2の基板7のいずれよりも軟化点Tsが低いことが望ましい。これによって、熱によるダメージを軽減することができる。接合材2は後述する局所加熱光の波長に対して高い吸収性を示すことが望ましい。接合材2の例として、ガラスフリット、無機接着剤、有機接着剤などが挙げられる。
【0021】
第1の基板1及び第2の基板7は、接合材2への局所加熱光の照射を阻害しないように、局所加熱光に対して透明性を有する材料が望ましい。第1の基板1及び第2の基板7の例として、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、無アルカリガラスなどが挙げられる。気密容器の残留応力を抑制するため、第1の基板1と第2の基板7に用いる材料は、線膨張係数が一致していることが望ましい。
【0022】
(ステップ2)
接合材2を加熱し、第1の基板と第2の基板7とを接合材2によって接合する。まず、図2(a)に示すように、加圧治具(不図示)を使用して、第2の基板7を枠状の接合材2に押し付けて、接合材2の全周にわたっての密着性を確保する。次に、局所加熱光9を接合材2に照射しながら走査し、接合材2を加熱する。これによって、図2(b)に示すように、第2の基板7と第1の基板1とが気密接合される。加圧された接合材2が溶融するため、各支持部材3は第2の基板7と当接する。気密接合された後の組立体20は、枠状の接合材2で区画された複数の気密容器21を含んでいる。接合材2は、組立体20の全体を加熱炉でベークすることによって加熱してもよい。局所加熱は接合材2の周辺を選択的に加熱するため、加熱冷却時間、加熱に要するエネルギ、生産性、容器の熱変形防止、及び容器内部に配置された機能デバイスの熱劣化防止などの観点から、全体加熱より有利である。局所加熱の手段としてはレーザ光が好適に用いられる。
【0023】
(ステップ3)
次に、気密容器21が多数形成された組立体20を切断し、個々の気密容器21に分離する。このステップは第1の基板1を切断する工程と、第2の基板7を切断する工程とからなり、以下の説明では先に第2の基板7を切断するが、先に第1の基板1を切断することもできる。
【0024】
まず、第1の基板1と接合された第2の基板7を、第1の基板1と対向する面の裏面7aから、第1の仮想線10に沿って機械的な外力を与えて切断する。具体的には、図3(a)に示すように、第2の基板7の裏面7aにガラススクライバ等の切断ツール11を押し付ける。切断ツール11の位置は、支持部材3と対向する位置、すなわち第1の仮想線10上とする。その状態から、第1の仮想線10を切断ラインとして、切断ツール11を第1の仮想線10に沿って移動させて、図3(b)に示すように第2の基板7を切断する。以上の作業を全ての第1の仮想線10について行い、第2の基板7をマトリックス状に切断する。
【0025】
次に、第2の基板7と接合された第1の基板1を、第2の基板7と対向する面の裏面1aから、接合材2と第1の仮想線10の間に位置する第2の仮想線12に沿って機械的な外力を与えて切断する。具体的には、図4(a)に示すように、第1の基板1の裏面1aの外周部にガラススクライバ等の切断ツール11を押し付ける。このとき切断ツール11の位置は、支持部材3と接合材2の間の位置、すなわち第2の仮想線12上とする。第2の仮想線12は好ましくは電極6と接合材2の間の位置に設定する。図5(b)に示すように、一部の第2の仮想線12は互いに隣接する接合材2の間を平行に延び、残りの第2の仮想線12は当該一部の第2の仮想線12と直交する方向に延びている。隣接する接合材2の間にはそれぞれ2本の第2の仮想線12が設定される。
【0026】
その状態から、第2の仮想線12を切断ラインとして、切断ツール11を第2の仮想線12に沿って移動させて、図4(b)に示すように第2の基板7を切断する。以上の作業を全ての第2の仮想線12について行い、第1の基板1をマトリックス状に切断する。接合材2の間の支持部材3を含む小片22が分離され、電極6が露出する。図示の例では組立体20が4個の気密容器21に分離される。端部の小片22を切断することで、第2の基板7に設けられた全ての電極6が露出する。
【0027】
以上の工程に従い第1の基板1と第2の基板7を個別に切断することによって、複数の気密容器21を組立体20から切り出すことができる。切り出されたそれぞれの気密容器21は、第1の基板1と第2の基板7が接合材2によって気密接合され、内部に内部空間8が規定されている。第2の基板7には、接合材2の外側、かつ接合材2の周辺に沿って、駆動回路を接続するための電極6が配置されている。
【0028】
本実施形態では、一対のガラス基板に2行2列に配列された計4個の気密容器21を形成したが、2行3列(計6個)、3行3列(計9個)など任意の配列で任意の数の気密容器を形成することができる。電極6は発光部5の隣接する2辺に沿って形成したが、1辺のみ、または対向する2辺に沿って形成することもできる。
【0029】
ここで、本実施形態の効果について説明する。図6は、支持部材3が設けられないことを除き、組立体20と同じ構成の組立体23を示している。図6(a)は図5と同様の平面図を、図6(b)は図6(a)中のB−B線に沿った断面図を示している。支持部材3が設けられていないため、組立体23の切断ラインとなる仮想線14は上記実施形態と異なり、隣接する接合材2から等距離の位置に設定される。図7(a)は図6(b)の中央領域Eにおける部分詳細図を、図7(b)は端部領域Fにおける部分詳細図を示している。
【0030】
切断ツール11を仮想線14に沿って第2の基板7に押し付けると、その押し付け力で第2の基板7は変形する。この変形のため、切断ツール11を第2の基板7上で仮想線14を切断ラインとして移動させるときに、切断ツール11の移動方向及び姿勢が安定しなくなる。このため、第2の基板7を安定して切断することが困難となる。しかも、最大曲げモーメントが第2の基板7と接合材2との接合部13に生じるため、接合材2が破損しやすくなる。
【0031】
本実施形態のように切断部の近傍に電極6が形成されている場合、さらに別の問題が生じる。すなわち、第2の基板7が曲げ変形を受ける結果、その近傍にある電極6も曲げ変形を受けるため、電極6が破損しやすくなる。特に、電極6を設けた場合は、仮想線14が電極6と重ならないように、仮想線14を接合材2から離れた位置に設定する必要がある。この結果、曲げモーメントがさらに増え、接合材2と電極6とが一層破損しやすくなる。以上の現象は、気密容器の歩留まりと、接合強度の低下の原因となり、望ましくない。
【0032】
本実施形態では、このような課題が改善される。図7(c),(d)は各々図1(c)のC部とD部の部分詳細図を示している。これらの図から明らかな通り、第2の基板7の切断ラインである第1の仮想線10は支持部材3上に設定されているため、切断ツール11の押し付け力を支持部材3が受け、第2の基板7の変形が抑制される。このため、切断ツール11を切断ラインに沿って移動させるときに、切断ツール11の移動方向と姿勢が安定し、第2の基板7を安定して切断することが可能となる。第2の基板7と接合材2との接合部13に曲げモーメントが生じないため、接合材2の破損を防止することが可能となる。電極6が設置されている場合には電極6の破損を防止することも可能となる。
【0033】
さらに、第1の基板1を切断する場合、図6の例では接合材2同士の間の中央に仮想線14が設定されるため、切断ツール11からの押し付け力は両方の接合材2が支持する。一方、本実施形態の場合、切断ツール11からの押し付け力は、第2の仮想線12上に設けられた支持部材3と、第2の仮想線12に隣接する接合材2と、が支持する。つまり、本実施形態では支持点の間の距離は図6の場合の半分となっており、接合材2に掛る曲げモーメントが低減する。
【0034】
このように、本実施形態によれば、切断ツール11の押し付け力を支持部材3が受けるため、基板の変形が抑制されて安定した切断が可能となる。よって、基板の破損を減らし、歩留まりと接合強度の両立を実現した気密容器の製造方法を提供することが可能となる。
【0035】
図7は本発明の第2の実施形態を示す、図5と同様の平面図である。本実施形態では支持部材3は、互いに隣接する接合材2の互いに対向する辺2a,2bの間に分割して設けられている。本実施形態でも切断ツール11の押し付け力が支持部材3によって支持されるため、同様の効果を得ることができる。図7では1辺当たり5分割された支持部材3を示しているが、分割数は特に限定されず、分割された支持部材3の形状も、矩形、楕円形、円形など適宜に選定することができる。
【実施例】
【0036】
以下、具体的な実施例をあげて、本発明を詳しく説明する。
【0037】
(第1の実施例)
前述の第1の実施形態を適用して、気密容器が多数形成された基板を分断し、基板の端面処理を行い、気密容器を製造した。
【0038】
(ステップ1)
まず、第1の基板1を用意した。以下、手順を具体的に示す。板厚0.7mmのガラス基材(AN100、旭硝子株式会社製)を切断し、外形380mm×290mm×0.7mmの板ガラスを用意した。次に、板ガラスに有機溶媒洗浄、純水リンス、及びUVオゾン洗浄を実施し、板ガラスの表面を脱脂した。
【0039】
次に、板ガラスの片面に、枠状の接合材2と支持部材3を形成した。本実施例では、接合材2及び支持部材3の材料としてガラスフリットを使用した。使用したガラスフリットは、粘度が負の温度係数(温度依存性)を有し、線膨張係数α=45×10-7(1/℃)、軟化点Ts=348℃のP25系鉛(Pb)非含有のガラスフリットを母材とし、バインダとして有機物を分散混合したペーストである。
【0040】
以下、形成の手順を具体的に示す。まず、第1の基板1上に、1つ当たり幅1mm、厚さ100μm、外形150mm×110mmの枠状の接合材2を、2×2のマトリクス状に計4個、スクリーン印刷にて形成した。次に、同様にして、幅1mm、厚さ80μmの支持部材3を接合材2の外側の領域に、接合材2の外周に沿ってスクリーン印刷にて形成した。次に、接合材2及び支持部材3を、支持基板である第1の基板1とともに120℃で乾燥した。そして、有機物をバーンアウトするため460℃で加熱、焼成し、接合材2と支持部材3を形成した。以上のようにして、枠状の接合材2と支持部材3が形成された第1の基板1を用意した(図1(a))。
【0041】
次に、第2の基板7を用意した。以下、形成の手順を具体的に示す。板厚0.7mmのガラス基材(AN100)を切断し、外形380mm×290mm×0.7mmの板ガラスを用意した。次に、第1の基板1と同様に洗浄した後、TFT回路12、平坦化膜13、コンタクトホール14及び発光部3を順次形成した(図1(b))。
【0042】
次に、第1の基板1と第2の基板7とを、接合材2及び支持部材3が形成された面と、第2の基板7の発光部5が形成された面とが対向するように配置し、アライメントした後、接触させて、内部空間8が規定された組立体20を形成した(図1(c))。
【0043】
(ステップ2)
まず、第1の基板1と第2の基板7からなる組立体20を加圧治具(不図示)で加圧し、第2の基板7を枠状の接合材2に押し付けて、接合材2の全周にわたっての密着性を確保した。
【0044】
次に、局所加熱光9としてレーザ光を接合材2に照射しながら接合材2に沿って走査して、第2の基板7と第1の基板1を気密接合した。具体的には、レーザ光9の出射源として、加工用レーザ装置(不図示)を1台用意し、レーザ光9の光軸を被照射物である基板に対して垂直となるように設定した。レーザ光9の照射条件は、波長980nm、レーザパワー40W、スポット径2mmとし、10mm/secの速度で走査した。
【0045】
枠状の接合材2は粘度が負の温度係数を有するため、レーザ光で加熱されることによって軟化する。接合材2は加圧治具(不図示)によって第2の基板7に押し付けられているため、接合材2はつぶされて、第2の基板7と支持部材3が当接した。
【0046】
(ステップ3)
次に、第2の基板7の裏面の第1の仮想線10上にガラススクライバ(不図示)を押し付け、その状態でガラススクライバを第1の仮想線10に沿って移動させて、第2の基板7を切断した。同様に、第1の基板1の裏面の第2の仮想線12上にガラススクライバ(不図示)を押し付け、その状態でガラススクライバを第2の仮想線12に沿って移動させて、第1の基板1を切断した。以上の工程によって組立体20を4個の気密容器21に分離した。同時に、第1の基板1の縁部(小片22)を切除して、第2の基板7に設けられた全ての電極6を露出させた。
【0047】
以上の手順で製造した真空気密容器21に、通常の方法に従って駆動回路などを実装し、OLEDを完成させた。完成したOLEDを動作させたところ、長時間にわたって、安定した画像表示が可能であり、かつOLEDに適用可能な接合材強度と気密性が確保されていることが確認された。
【0048】
(実施例2)
本実施例では、図7に示すように、実施例1の支持部材3を不連続な支持部材3に置換したことを除き、実施例1と同様とした。完成したOLEDを動作させたところ、長時間にわたって、安定した画像表示が可能であり、かつOLEDに適用可能な接合材強度と気密性が確保されていることが確認された。
【符号の説明】
【0049】
1 第1の基板
3 支持部材
7 第2の基板
10 第1の仮想線
12 第2の仮想線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1の基板と第2の基板の間に複数の接合材と複数の支持部材とが配置され、前記接合材の各々は、閉じた線状の形状を有し、前記第1及び第2の基板の双方に接し、かつ他の前記接合材の外側に互いに離間して配置され、前記支持部材の各々は、前記第1の基板の前記第2の基板と対向する面に、前記接合材同士を仕切る第1の仮想線に沿って設けられた組立体を用意する工程と、
前記接合材を加熱して前記第1の基板と前記第2の基板とを前記接合材によって接合するとともに、前記支持部材の各々と前記第2の基板とを当接させる工程と、
前記第1の基板と接合された前記第2の基板を、前記第1の基板と対向する面の裏面から、前記第1の仮想線に沿って機械的な外力を与えて切断することと、前記第2の基板と接合された前記第1の基板を、前記第2の基板と対向する前記面の裏面から、前記接合材と前記第1の仮想線の間に位置する第2の仮想線に沿って機械的な外力を与えて切断することと、によって、複数の気密容器を切り出す工程と、
を有する、気密容器の製造方法。
【請求項2】
前記複数の接合材は同一の矩形形状を有し、かつマトリックス状に配列されており、前記支持部材は、互いに隣接する前記接合材の互いに対向する辺の間に連続的にまたは分割して設けられている、請求項1に記載の気密容器の製造方法。
【請求項3】
前記接合材は粘度が負の温度依存性を有している、請求項1または2に記載の気密容器の製造方法。
【請求項4】
前記接合材はガラスフリットである、請求項3に記載の気密容器の製造方法。
【請求項5】
前記接合材は局所加熱光によって加熱される、請求項1から4のいずれか1項に記載の気密容器の製造方法。
【請求項6】
前記気密容器は画像表示装置の外囲器である、請求項1から5のいずれか1項に記載の気密装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1及び第2の基板はガラススクライバによって切断される、請求項1から6のいずれか1項に記載の気密容器の製造方法。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−190607(P2012−190607A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51695(P2011−51695)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】