説明

気泡型流動床ボイラ及びその運転方法

【課題】火炉内及び火炉後段の伝熱管群にクリンカや低融点灰が付着することを防止し、連続安定操業を可能とした気泡型流動床ボイラ及びその運転方法を提供する。
【解決手段】底部に流動媒体が充填された火炉2と、火炉上部で接続され伝熱管が配設された熱回収装置4とを備える気泡型流動床ボイラ1において、火炉2の炉側壁に多段状に二次空気導入ノズル31、32、33が設けられ、該二次空気導入ノズルの下方段領域で且つ直下に二次空気導入ノズルが存在する位置に、高融点物質からなる補給媒体55を供給する補給媒体供給口35を設け、二次空気導入ノズル31、32、33の下方段側から上方段側に向けて空塔速度が大となるように各段の二次空気導入ノズルの空気供給量を設定し、補給媒体供給口35より供給された補給媒体55が、燃焼排ガスに同伴されて火炉2上方より熱回収装置4へ搬送されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床ボイラの火炉内壁及び火炉後段の伝熱管にクリンカや低融点灰が付着することを防止し、安定運転することを可能とした流動床ボイラ及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木材、廃タイヤ、RPF(Refused Paper & Plastic Fuel)等の産業廃棄物又は都市ごみ等の一般廃棄物などを効率的に燃焼させるためのボイラとして、流動床ボイラが広く用いられている。流動床ボイラは、流動媒体を流動化させた流動層が火炉内部に形成され、この流動層内に上記した廃棄物等の燃料を投入することで燃料を燃焼させ、燃焼により生じた燃焼排ガスの熱エネルギを火炉後段に設置された伝熱管で回収し、発電等に用いるようにした装置である。流動床ボイラには、流動形態により気泡型流動床ボイラと循環型流動床ボイラが存在する。このうち気泡型流動床ボイラの構成を図4に示す。
【0003】
同図に示すように気泡型流動床ボイラ100は、火炉101の底部に流動媒体103が充填され、火炉下部より導入する一次空気により流動媒体103を流動化させて流動層を形成し、この流動層内に燃料を投入することにより燃料を燃焼させる。排ガス中に含まれる未燃分又は熱分解ガスは、火炉側壁に設けられた二次空気導入ノズル105より二次空気を導入し、燃焼させる。これらの燃焼で生じた燃焼排ガスは火炉後段に設置された過熱器や節炭器等の伝熱管群102にて熱交換され、ここで回収された熱エネルギは発電等に利用される。尚、火炉101にも伝熱管は配設されており、ここでも熱エネルギの回収が行なわれている。
【0004】
このような流動床ボイラ100には、流動層内や炉内壁へのクリンカ生成防止並びに安定燃焼を目的として、流動層内に堆積した不燃物とともに炉底から流動砂を抜き出して層高を調整する手段あるいは粒径分離装置107を介して一定粒径以下の硅砂や焼却灰を炉内に投入する手段が備えられているものがある。これによりクリンカ生成による流動不良や炉壁付着を防止し安定運転を維持している。
また、特許文献1(特開平8−193712号公報)には、流動層中に堆積した不燃物を炉底から流動媒体とともに抜き出し、層高を適正に維持する不燃物排出制御装置を装備し、流動層内のクリンカ生成による流動不良を防止する構成が開示されている。
さらに、特許文献2(特開2002−333122号公報)には、シリカ成分などの高融点物質が多い硅砂や焼却灰を粒径分離装置によって選別した一定粒径以下のものを炉内に投入し、焼却灰中のアルカリ金属化合物の割合を低減することで、炉壁へのクリンカ付着を防止する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−193712号公報
【特許文献2】特開2002−333122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、流動層から不燃物を抜き出し、シリカ成分の多い硅砂や焼却灰を炉内に投入することで炉壁や流動層内のクリンカ付着を防止することが可能である。しかしながら、従来技術では流動層内へのクリンカ生成防止が目的であり、さらに硅砂や焼却灰を炉内に投入する前に粒径分離する処理過程が必要であった。
気泡型流動床ボイラの安定運転を行うためには、火炉の流動層内のみならず火炉後段に設置された伝熱管への低融点灰の付着を同時に防止することが必要であり、設備増加によるメンテナンスを増やさない運転方法を確立することが求められている。従来は伝熱管のクリンカ生成防止の構成については提案されておらず、伝熱管にクリンカが付着することにより伝熱効率が低下するという問題があった。
【0007】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、火炉内のみでなく火炉後段に配設された伝熱管群にも低融点灰が付着することを防止し、連続安定操業を可能とした気泡型流動床ボイラ及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、底部に流動媒体が充填された火炉と、火炉上部で接続され伝熱管が配設された熱回収装置と、を備える気泡型流動床ボイラにおいて、
前記火炉の炉側壁には、鉛直方向に対して多段状に二次空気導入ノズルが設けられており、前記二次空気導入ノズルの下方段領域で且つ直下に二次空気導入ノズルが存在する位置に、高融点物質からなる補給媒体を供給する補給媒体供給口を設け、
前記二次空気導入ノズルの下方段側から上方段側に向けて空塔速度が大となるように各段の二次空気導入ノズルの空気供給量を設定し、前記補給媒体供給口より供給された補給媒体が、燃焼排ガスに同伴されて火炉上方より熱回収装置へ搬送されるようにしたことを特徴とする。
【0009】
本発明では、火炉側壁の補給媒体供給口から供給された補給媒体は、該補給媒体供給口直下の二次空気導入ノズルより導入される二次空気により上方に吹き上げられ、さらに多段状に設けられた二次空気導入ノズルが下方段側から上方段側に向けて空塔速度が大となるように構成されているため、前記吹き上げられた補給媒体が火炉上方へ確実に搬送される。そして、火炉後段に設置された熱回収装置に燃焼排ガスとともに搬送されることとなる。従って、熱回収装置内を通過する排ガス中の灰に補給媒体が含まれることにより、灰中の高融点物質の割合が増加するため、熱回収装置内で灰が溶融することを防ぎ、延いてはクリンカの生成を抑制することが可能となる。また、補給媒体供給口より供給された補給媒体の一部は火炉底部に落下するため、上記と同様に流動層内の高融点物質の割合が増加しクリンカの生成を抑制することが可能となる。
【0010】
このように本発明によれば、熱回収装置側に補給媒体を搬送させるようにしたため、熱回収装置の伝熱面に低融点灰が生成することを防止でき、伝熱効率を維持し、流動床ボイラの連続安定操業の信頼性を向上させることが可能となる。また、専用の粒径分離装置を設置することなく、簡単な構成で安定運転条件を確率することが可能であり、低コスト化及び低メンテナンス化が図れる。尚、前記補給媒体は、燃焼ガス温度以上の高融点を有する細粒体であり、例えば珪砂、SiO、Al等が用いられる。
【0011】
さらに、前記二次空気導入ノズルは、炉側壁の周囲に亘って複数設けられており、
前記複数の二次空気導入ノズルへ二次空気を供給する供給ライン上に、空気供給量を調整するダンパが設けられ、
前記補給媒体供給口の直下に位置する二次空気導入ノズルと、同一段高さに位置する他の二次空気導入ノズルとが夫々独立したダンパを有しており、これらのダンパは、前記補給媒体供給口の直下に位置する二次空気導入ノズルの方が前記他の二次空気導入ノズルより空気供給量が大となるように設定されていることを特徴とする。
【0012】
このように、同一段高さに位置する二次空気導入ノズルが夫々独立したダンパを有するようにし、補給媒体供給口の直下に位置する二次空気導入ノズルの方が他の二次空気導入ノズルより空気供給量が大となるように設定することにより、火炉内に導入する二次空気の総量を変化させることなく確実に補給媒体を吹き上げることが可能となる。
【0013】
また、前記各段の空気導入ノズルの空気供給量は、前記補給媒体供給口より供給された補給媒体の一部が炉底に落下するように設定されていることを特徴とする。
このように、補給媒体の一部が炉底に落下するような空気供給量とすることにより、火炉底部の流動層と熱回収装置の両方に補給媒体が供給され、流動層と熱回収装置両方においてクリンカや低融点灰の生成を防止することが可能である。
【0014】
さらに、前記補給媒体供給口は、前記補給媒体の他に炉内に燃料を供給する手段であることを特徴とする。
このように、既存の燃料供給手段を補給媒体供給口として利用することにより、新たに補給媒体供給口を設ける必要がなくなる。
さらにまた、前記補給媒体は、前記流動媒体よりも径が小さいことを特徴とする。
火炉底部の流動層で流動化している流動媒体よりも補給媒体の径を小さくすることで、補給媒体を二次空気により確実に吹き上げ、熱回収装置まで確実に搬送することが可能となる。
また、前記ダンパの開度を調整して、前記各段の二次空気導入ノズルの空気供給量を調整する制御装置を備えることを特徴とする。
これは、ダンパ開度を少なくとも各段毎に制御する制御装置を備えるようにした。制御装置は、各段に複数設けられた二次空気導入ノズルを個々に制御できるようにしてもよい。
【0015】
また、火炉底部で流動する流動媒体内に燃料を投入し、該燃料が燃焼して発生した燃焼排ガスを火炉上部より熱回収装置に導き、該熱回収装置に配設された伝熱管で燃焼排ガスから熱回収するようにした流動床ボイラの運転方法において、
前記火炉の炉側壁に、鉛直方向に対して多段状に二次空気導入ノズルが配設されており、下方段側から上方段側に向けて空塔速度が大となるように各段の二次空気導入ノズルの空気供給量を調整するダンパを開度調整するとともに、
前記二次空気導入ノズルの下方段領域で且つ直下に二次空気導入ノズルが存在する位置に補給媒体供給口が配設され、該補給媒体供給口より高融点物質からなる補給媒体を炉内に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、熱回収装置側に補給媒体を搬送させるようにしたため、熱回収装置の伝熱面に低融点灰が生成することを防止でき、伝熱効率を維持し、流動床ボイラの連続安定操業の信頼性を向上させることが可能となる。また、専用の粒径分離装置を設置することなく、簡単な構成で安定運転条件を確率することが可能であり、低コスト化及び低メンテナンス化が図れる。
また、同一段高さに位置する二次空気導入ノズルが夫々独立したダンパを有するようにし、補給媒体供給口の直下に位置する二次空気導入ノズルの方が他の二次空気導入ノズルより空気供給量が大となるように設定することにより、火炉内に導入する二次空気の総量を変化させることなく確実に補給媒体を吹き上げることが可能となる。
【0017】
また、補給媒体の一部が炉底に落下するような空気供給量とすることにより、火炉底部の流動層と熱回収装置の両方に補給媒体が供給され、流動層と熱回収装置両方においてクリンカや低融点灰の生成を防止することが可能である。
さらに、既存の燃料供給手段を補給媒体供給口として利用することにより、新たに補給媒体供給口を設ける必要がなくなる。
さらにまた、流動媒体よりも補給媒体の径を小さくすることで、補給媒体を二次空気により確実に吹き上げ、熱回収装置まで確実に搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係る流動床ボイラが備える火炉の側断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る流動床ボイラの全体構成を示す側断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る流動床ボイラの火炉内壁面を示す概略図である。
【図4】従来の流動床ボイラの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本発明に係る実施形態は、気泡型流動床ボイラに適用されるもので、燃料には一般廃棄物や産業廃棄物等の廃棄物、又はRDFや石炭等の燃料が用いられる。
【実施例】
【0020】
図2に示すように、本実施例の気泡型流動床ボイラ1は、投入された燃料を燃焼させる火炉2と、該火炉2の上部で煙道3により接続された熱回収装置4と、を備える。
前記熱回収装置4は、煙道3から延設された排ガス通路上に伝熱管群40が設置された構成を有しており、図2では、排ガス流れ上流側から順に、過熱器41、過熱器42、節炭器43を配設した構成を示している。尚、伝熱管群40の構成はこれに限定されるものではなく、また伝熱管は火炉壁等にも配設されている場合がある。火炉2で発生した燃焼排ガスは、熱回収装置4の伝熱管群40を通過する際に熱交換されて、排ガスの熱エネルギが回収されるようになっている。
【0021】
前記火炉2は、底部に流動媒体50が充填されている。また火炉底部に一次空気ノズル24が設けられ、該一次空気ノズル24から導入される一次空気51により流動媒体50が流動化され、火炉下部に流動層22が形成されている。
火炉底部には流動媒体抜き出し部26が設けられ、該流動媒体抜き出し部26より適宜不燃物を含む流動媒体52が抜き出される。ここで抜き出した不燃物を含む流動媒体52は、不燃物分離装置27で不燃物53を除去した後、流動媒体54は適宜火炉2内に戻される。
【0022】
図1に示すように、火炉2の側壁には、鉛直方向に対して多段状に二次空気導入ノズル31、32、33が設けられている。これらの二次空気導入ノズル31、32、33を二次空気導入ノズル群30と称する。図1には二次空気導入ノズル群30を3段とした構成を示しているが、この段数に限定されるものではない。また、二次空気導入ノズル31、32、33へ二次空気56を導入する空気導入ライン上には、夫々ダンパ46、47、48が設けられている。このダンパ46、47、48は開度調整され、二次空気導入ノズル31、32、33へ供給される二次空気56の空気量が調整されるようになっている。また、ダンパの開度を少なくとも各段の二次空気導入ノズル31、32、33毎に調整する制御装置49を備えていてもよい。該制御装置49は、複数設けられたダンパを夫々個々に調整する構成としてもよい。
【0023】
また、二次空気導入ノズル群30から導入される空気量は、二次空気導入ノズル31、32、33の下方段側から上方段側に向けて空塔速度が大となるように夫々ダンパ46、47、48により設定されている。好適には、最下段の二次空気導入ノズル31付近の空塔速度が1〜2m/s、中段の二次空気導入ノズル32付近の空塔速度が2〜3m/s、最上段の二次空気導入ノズル33付近の空塔速度が3〜4m/s程度となるように各二次空気導入ノズル31、32、33の空気供給量を設定する。このとき、火炉下部より供給される一次空気量を含むの他の条件も考慮に入れるものとする。また好適には、各部のノズルの空気比は、一次空気ノズル24が0.5〜0.7、下段の二次空気導入ノズル31が0.7〜0.9、中段の二次空気導入ノズル32が1.0〜1.2、上段の二次空気導入ノズル33が1.2〜1.5となるように設定するとよい。
【0024】
さらに火炉2の側壁には補給媒体供給口35が設けられている。該補給媒体供給口35の設置部位は、二次空気導入ノズル群30の下方段領域で且つ直下に二次空気導入ノズルが存在する位置とする。具体例としては、図3に示すように最下段の二次空気導入ノズル31と中段の二次空気導入ノズル32の間で且つ補給媒体供給口35の直下に最下段の二次空気導入ノズル31が位置する部位に設置する。補給媒体供給口35は、複数設置してもよい。
この補給媒体供給口35からは、高融点物質からなる補給媒体55が火炉2内に供給される。補給媒体55は流動床ボイラ1の運転中、常時供給されることが好ましい。該補給媒体55は、燃焼ガス温度以上の高融点を有する細粒体であり、例えば珪砂、SiO、Al等が用いられる。
【0025】
補給媒体55の径は、例えば平均800μm以下とする。また補給媒体55の径は、流動層22の流動媒体50の径よりも小さいことが好ましく、これにより確実に補給媒体55を上方に吹き上げることが可能となる。
また、異なる径を有する補給媒体55を混在させてもよい。この場合、流動媒体50と同一若しくはこれより大の粒径を有する補給媒体と、流動媒体50よりも小の粒径を有する補給媒体とを混在させる。例えば、800μm以下の補給媒体55と、800μm以上の補給媒体55を所定比率で混ぜるようにする。これにより、補給媒体55の一部を火炉上方に吹き上げて熱回収装置4に搬送させ、他を火炉底部の流動層22に落下させることができる。
【0026】
上記した流動床ボイラ1における作用を以下に説明する。
まず、火炉2内に投入された燃料は、流動媒体50が流動化された流動層22内にて燃焼し、燃焼により発生した燃焼排ガス中の未燃分や熱分解ガスが火炉側壁に設けられた二次空気導入ノズル群30より導入される二次空気56により燃焼する。このとき、補給媒体供給口35より火炉2内に補給媒体55を供給する。この補給媒体55は、外部から供給するようにしてもよいし、流動媒体抜き出し部26より抜き出され、不燃物が除去された流動媒体54を供給するようにしてもよい。補給媒体供給口35から火炉2内に供給された補給媒体55の一部は、補給媒体供給口35直下の二次空気導入ノズル31から導入される二次空気56により吹き上げられ、さらに二次空気56が、二次空気導入ノズル31、32、33の下方段側から上方段側に向けて空塔速度が大となるように設定されているため、前記吹き上げられた補給媒体55が火炉2上方に搬送され、煙道3を通って排ガスとともに熱回収装置4に搬送される。
【0027】
熱回収装置4では、補給媒体55を含む灰とともに排ガスが通過し、過熱器41、42、節炭器43で夫々熱交換が行なわれて排ガスの熱エネルギが回収される。回収された熱エネルギは発電等に用いられる。
熱回収装置4を通過する排ガス中の灰には高融点物質からなる補給媒体55が含まれるため、高融点物質の割合が多くなり、低融点物質が溶融して伝熱面に低融点灰が生成することを防止できる。
付着灰の主成分は、融点の低いナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩であるため、灰中のアルカリ金属塩濃度が高いほど低融点灰が生成しやすい。このため、灰中のアルカリ金属塩濃度を低下させること、つまり灰中に含まれるSiO、Al等の高融点物質の割合を増加させることで、熱回収装置4内で灰が溶融して低融点灰が生成することを防止できる。また、二次空気56により吹き上げられずに流動層22に落下した補給媒体55により、流動層22へのクリンカ生成も防止可能である。
【0028】
このように本実施例によれば、熱回収装置4側に補給媒体55を搬送させるようにしたため、熱回収装置4の伝熱面に低融点灰が生成することを防止でき、伝熱効率を維持し、流動床ボイラ1の連続安定操業の信頼性を向上させることが可能となる。また、専用の粒径分離装置を設置することなく、簡単な構成で安定運転条件を確率することが可能であり、低コスト化及び低メンテナンス化が図れる。
【0029】
また、本実施例において、図3に示すように補給媒体供給口35の直下に位置する二次空気導入ノズル31aと、同一段高さに位置する他の二次空気導入ノズル31bとが夫々独立したダンパを有するように構成し、補給媒体供給口35の直下に位置する二次空気導入ノズル31aの方が他の二次空気導入ノズル31bより空気供給量が大となるように各ダンパの開度を調整することが好ましい。
このように、同一段高さに位置する二次空気導入ノズル31が夫々独立したダンパを有するようにし、補給媒体供給口35の直下に位置する二次空気導入ノズル31aの方が他の二次空気導入ノズル31bより空気供給量が大となるように設定することにより、火炉2内に導入する二次空気の総量を変化させることなく確実に補給媒体55を吹き上げることが可能となる。
【0030】
また、図1に示すように、補給媒体供給口35より供給された補給媒体55の一部が上方に吹き上げられ、他の補給媒体55が炉底に落下するように各ダンパ46、47、48の開度を設定し、各段の二次空気導入ノズル31、32、33の空気供給量を調整することが好ましい。これにより、火炉底部の流動層22と熱回収装置4の両方に補給媒体55が供給され、流動層22と熱回収装置4の両方においてクリンカや低融点灰の生成を防止することが可能となる。
さらに、火炉2に設けられた既存の燃料供給手段を用いて補給媒体55を供給することが好ましく、これにより新たに補給媒体供給口35を設ける必要がなくなる。
さらにまた、図3に示すように、補給媒体供給口35の直下に位置する二次空気導入ノズル31aを上方に傾斜させて設置し、他の二次空気導入ノズル31bを下方に傾斜させて設置するようにしてもよい。これにより、補給媒体55が吹き上げられ易くなる。
【符号の説明】
【0031】
1 流動床ボイラ
2 火炉
4 熱回収装置
22 流動層
26 流動媒体抜き出し部
30 二次空気導入ノズル群
31、32、33 二次空気導入ノズル
35 補給媒体供給口
40 伝熱管群
41、42 過熱器
43 節炭器
46、47、48 ダンパ
49 制御装置
51 一次空気
55 補給媒体
56 二次空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に流動媒体が充填された火炉と、火炉上部で接続され伝熱管が配設された熱回収装置と、を備える気泡型流動床ボイラにおいて、
前記火炉の炉側壁には、鉛直方向に対して多段状に二次空気導入ノズルが設けられており、前記二次空気導入ノズルの下方段領域で且つ直下に二次空気導入ノズルが存在する位置に、高融点物質からなる補給媒体を供給する補給媒体供給口を設け、
前記二次空気導入ノズルの下方段側から上方段側に向けて空塔速度が大となるように各段の二次空気導入ノズルの空気供給量を設定し、前記補給媒体供給口より供給された補給媒体が、燃焼排ガスに同伴されて火炉上方より熱回収装置へ搬送されるようにしたことを特徴とする気泡型流動床ボイラ。
【請求項2】
前記二次空気導入ノズルは、炉側壁の周囲に亘って複数設けられており、
前記複数の二次空気導入ノズルへ二次空気を供給する供給ライン上に、空気供給量を調整するダンパが設けられ、
前記補給媒体供給口の直下に位置する二次空気導入ノズルと、同一段高さに位置する他の二次空気導入ノズルとが夫々独立したダンパを有しており、これらのダンパは、前記補給媒体供給口の直下に位置する二次空気導入ノズルの方が前記他の二次空気導入ノズルより空気供給量が大となるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の気泡型流動床ボイラ。
【請求項3】
前記各段の空気導入ノズルの空気供給量は、前記補給媒体供給口より供給された補給媒体の一部が炉底に落下するように設定されていることを特徴とする請求項1若しくは2記載の気泡型流動床ボイラ。
【請求項4】
前記補給媒体供給口は、前記補給媒体の他に炉内に燃料を供給する手段であることを特徴とする請求項1若しくは2記載の気泡型流動床ボイラ。
【請求項5】
前記補給媒体は、前記流動媒体よりも径が小さいことを特徴とする請求項1若しくは2記載の気泡型流動床ボイラ。
【請求項6】
前記ダンパの開度を調整して、前記各段の二次空気導入ノズルの空気供給量を調整する制御装置を備えることを特徴とする請求項2記載の気泡型流動床ボイラ。
【請求項7】
火炉底部で流動する流動媒体内に燃料を投入し、該燃料が燃焼して発生した燃焼排ガスを火炉上部より熱回収装置に導き、該熱回収装置に配設された伝熱管で燃焼排ガスから熱回収するようにした流動床ボイラの運転方法において、
前記火炉の炉側壁に、鉛直方向に対して多段状に二次空気導入ノズルが配設されており、下方段側から上方段側に向けて空塔速度が大となるように各段の二次空気導入ノズルの空気供給量を調整するダンパを開度調整するとともに、
前記二次空気導入ノズルの下方段領域で且つ直下に二次空気導入ノズルが存在する位置に補給媒体供給口が配設され、該補給媒体供給口より高融点物質からなる補給媒体を炉内に供給することを特徴とする流動床ボイラの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−230280(P2010−230280A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80201(P2009−80201)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】