説明

気泡検知用用具、気泡検知装置、気泡検知方法

【課題】塗布液の供給配管経路の途中に設置でき、塗布液の透明、不透明の影響を受けず、全ての気泡を確実に検知できると共に、気泡径の測定をも可能とした気泡検知用用具を提供すること。
【解決手段】塗布液を薄膜化させて流通させる気泡検知流路1を形成可能に所要の間隔をおいて対向配置され、少なくとも一方を透明板とさせた一対の平板2、3を備えた平板部と、平板部を挟み込んで平板部を保持させる共に、塗布液の供給配管経路の途中に接続されるプレート部とを備える。そして、プレート部は、供給配管経路と連通され、気泡検知流路1へ塗布液を流入させる入口側マニホールド6及び気泡検知流路1から塗布液を流出させる出口側マニホールド7と、気泡検知流路1を流通する塗布液中の気泡の有無を透過光又は反射光を用いて検知可能または目視可能に気泡検知流路1と対応する部位を開口させた検知スロット19とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続走行するウエブ上に塗布液を塗布する際に発生する塗布液中の気泡を検知する際に用いられる気泡検知用用具、その用具を備えて気泡を検知する気泡検知装置、気泡を検知する気泡検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続走行するウエブ(シート体)上に塗布液を塗布して製造される物の一つとして例えば感熱紙がある。この感熱紙は、一般に、ウエブの表面に下塗り層、感熱層、保護層が形成され、裏面にバック層が形成されている。製造方法としては、塗布液の塗布、乾燥工程を経て各層を形成し、通常これらを順次繰り返す逐次塗布方法、若しくは、一度に各層を塗布する多層同時塗布方法のいずれかで製造している。塗布液は、塗布液ストックタンクからポンプ、フィルター、液温調装置、分岐バルブなどを経て、スロットダイヘッド、若しくは、カーテンダイヘッドなどの塗布ヘッドに送液されウエブに塗布される。
【0003】
塗布工程に於いては、運転開始前、運転中の塗布液の切り替え、フィルターの切り替えなどがあるが、フィルターの切り替えに伴い、塗布液中に気泡が混入してしまう。
気泡を含有した塗布液をそのまま塗布すると、気泡によって泡はじき、ピンホール等の塗布欠陥が塗布面に生じ、ウエブに均一な感熱記録層を形成することができないといった塗布トラブル、塗布欠陥が発生し、歩留まりの低下などを引き起こしている。
【0004】
このため、実際の塗布工程及び設備においては、液供給ルートの途中に機器には空気抜きを設けるとともに、条件によっては、事前に水若しくは温水を流し、配管ルートの気泡を除去したのち、実塗布液を流すなど、様々な泡除去方法を採用している。
実塗布液の送液を開始したら、先ず、ウエブに塗布される塗布液中に含有する気泡を検知し、次にこれを除去し、塗布液中に気泡のないことを確認し、塗布ヘッドに塗布液を送液し、塗布している。
【0005】
気泡を検知する方法としては、例えば、塗布ノズル、バルブ及びポンプの内部を流れる塗布液中の気泡有無を目視で検知する、若しくは超音波式若しくはレーザ等の発信部と受信部間の信号の受信状態より気泡有無の判別を行う。更には塗布ビード部を撮像検出する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
他の手段としては、流体が流通する管路に音波又は超音波変換器により音波又は超音波を伝達し、変換器に交流電気信号を供給し、変換器がこれに対応した音波又は超音波のエネルギーを管路に発生し、変換器の交流インピーダンスを検出し、該インピーダンスの変化から管路を流通する液体中の気泡の存在を検出するものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1の技術では、塗布液の供給配管の途中のバルブ、ポンプ等に可視部を設けることで検知信頼性を高める提案をしているものの、本件発明者の検討の結果、塗布液供給管のような円筒形流路を流れる気泡は、実際の製造現場の場合、配管内径が通常φ10mmからφ数10mmで口径が大きく、透明塗布液では問題ないが、乳白色、白色、不透明の塗布液では気泡を目視検知することは困難、若しくは、不可能であることが知見された。
【0008】
特許文献2の技術は、気泡検知手段として超音波式若しくはレーザ等の発信部と受信部間の信号の受信状態より気泡有無の判別を行っているが、同様の基本原理(信号の受信状態より気泡有無の“判別”を行う)をもつ日新電子工業株式会社製の気泡検知装置BC計;NFD−1000型(TYPE、10A/15A)を用い、感熱紙用下塗り層液、感熱層液、保護層液について検出を実施した結果、泡径の測定ができないことが明らかになった。
【0009】
また、気泡径φ0.5mm程度より大きい気泡の場合、精度よく検知できるものの、φ0.5mm以下の小径の気泡が検知できない、若しくは、極めて困難であることが分かった。また、円形断面の検知部流路断面を流れるすべての気泡を確実に検知できているか不明であった。このことから、特許文献2の技術では、受信状態より気泡有無の“判別”を行うため、泡径の測定ができない。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、塗布液の供給配管経路の途中に設置でき、塗布液の透明、不透明の影響を受けず、全ての気泡を確実に検知できると共に、例えば、塗布液中の気泡径φ0.5mm程度より小さい気泡を検知可能とし、さらには、気泡径の測定をも可能とした気泡検知用用具、気泡検知装置、気泡検知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる気泡検知用用具、気泡検知装置、気泡検知方法は、下記の技術的手段を講じた。
請求項1にかかる発明は、塗布液を薄膜化させて流通させる気泡検知流路を形成可能に所要の間隔をおいて対向配置され、少なくとも一方を透明板とさせた一対の平板を備えた平板部と、前記平板部を挟み込んで該平板部を保持させる共に、前記塗布液の供給配管経路の途中に接続されるプレート部とを備えてなり、前記プレート部は、前記供給配管経路と連通され、前記気泡検知流路へ前記塗布液を流入させる入口側マニホールドと、前記供給配管経路と連通され、前記気泡検知流路から前記塗布液を流出させる出口側マニホールドと、 前記気泡検知流路を流通する塗布液中の気泡の有無を透過光又は反射光を用いて検知可能または目視可能に、前記気泡検知流路と対応する部位を開口させた検知スロットとを設けてなる気泡検知用用具を特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1において、前記一対の平板の配置間隔は、検知すべき上限の気泡外径以上の間隔であることを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項1または2において、前記入口側マニホールドと前記出口側マニホールドは、前記気泡検知流路に対し鉛直方向に設けられていると共に、傾斜状若しくは垂直状に形成されていることを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3の何れか1項において、前記プレート部は、前記平板部を挟んで上下一対からなると共に、上下夫々、複数のプレートで構成され、
前記入口側マニホールドと前記出口側マニホールドは、複数の前記プレートに跨るように形成されていることを特徴とする。
請求項5にかかる発明は、請求項1乃至5の何れか1項において、前記一対の平板の間、前記平板部と前記入口側マニホールドとの連通部の周辺、前記平板部と前記出口側マニホールドとの連通部の周辺、夫々にシール材を介在させたことを特徴とする。
請求項6にかかる発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の気泡検知用用具と、
前記検知スロットを介して設けられ、前記気泡検知流路を流通する塗布液中の気泡の有無を検知させる検知手段とを備えた気泡検知装置を特徴とする。
請求項7にかかる発明は、請求項6において、前記検知手段は、前記気泡検知流路を流通する塗布液を撮像する撮像カメラを備えてなることを特徴とする。
請求項8にかかる発明は、少なくとも一方を透明板とさせた一対の平板を用いて、塗布液を薄膜化して流通する気泡検知流路を形成し、この気泡検知流路に塗布液を流すことで塗布液を薄膜状に形成し、反射光、若しくは、透過光で薄膜液中の気泡有無を検知または目視する気泡検知方法を特徴とする。
請求項9にかかる発明は、請求項8において、前記一対の平板の配置間隔は、検知すべき上限の気泡外径以上の間隔としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗布液の供給配管経路の途中に設置でき、塗布液の透明、不透明の影響を受けず、全ての気泡を確実に検知できると共に、例えば、塗布液中の気泡径φ0.5mm程度より小さい気泡を検知可能とし、さらには、気泡径の測定をも可能とした気泡検知用用具、気泡検知装置、気泡検知方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態にかかる気泡検知用用具の縦断側面図である。
【図2】図1の(X)−(X)線に沿える横断平面図である。
【図3】他の態様の気泡検知用用具の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明にかかる気泡検知用用具、気泡検知装置の実施の形態を説明する。
先ず、本実施の形態にかかる気泡検知装置の実施の形態を図1及び図2を参照しながら説明する。
【0015】
本実施の形態にかかる気泡検知用用具は、帯板状に形成されると共にスリット孔が一方の縁寄りに長手方向(図において奥行き方向)に亘って形成された透明板2(平板)と、その透明板2と略同形状に形成された平板3(この平板3は透明板の場合もある。詳細は後述する)と、透明板2と平板3のスリット孔同士が連通したクランク状の流路が形成可能に透明板2と平板3とで挟み込まれるように配置された矩形環状のスペーサ10と、透明板2と平板3とを上下から挟み込んで保持すると共にクランク状の流路の水平部である気泡検知流路1に対応した透明板2の部位及び平板3の部位が上下から露出するように開口部が形成され夫々のスリット孔が対向する側面から連通可能な流路が形成された上下一対のプレート部と、スペーサ10夫々の外側端部に矩形環状に設けられたシール材としてのOリング5とを備える。
なお、上述した上下一対の開口部のうち、透明板2の開口部を検知スロット19とし、検知スロット19から覗く透明板2の部位を検知部20とする。なお、透明板2と平板3とスペーサ10とを備えて平板部が構成される。スペーサ10によって形成される透明板2と平板3の配置間隔(気泡検知流路1の流路高さ、つまり液膜厚さ)は、検知すべき上限の気泡外径以上としている(検知すべき上限の気泡が気泡検知流路1を少なくとも移動可能程度の間隔)。
【0016】
この上下一対のプレート部は、平板3の下方に配置された、入口側上プレート16及び入口側下プレート15と、透明板2の上方に配置された、出口側下プレート17及び出口側上プレート18とを備えて構成される。
【0017】
入口側下プレート15は、流体継ぎ手が捩じ込まれる液入口8が側面中央に形成され、その液入口8から円形孔状の液供給路11が内方に延びるように形成され、その液供給路11と連通するように且つ平面(上面)から開口する入口側マニホールド6の底部が形成されてなる。
【0018】
入口側上プレート16は、入口側マニホールド6の底部と繋がり合うように且つ上方に向かって窄まるように入口側マニホールド6の上部が形成され、その入口側マニホールド6の頂部と平板3のスリット孔とが連通するように所要長さのスリット孔状の入口側液整流路13が形成されてなる。また、入口側液整流路13を取り囲むように、入口側上プレート16の平面(上面)にOリング4が矩形環状に設けられて、平板3と入口側上プレート16との接続面からの塗布液漏れを防止させている。
【0019】
出口側上プレート18は、流体継ぎ手が捩じ込まれる液出口9が側面中央に形成され、その液出口9から円形孔状の液排出路12が内方に延びるように形成され、その液排出路12と連通するように且つ底面から開口する出口側マニホールド7の上部が形成されてなる。
【0020】
出口側下プレート17は、その出口側マニホールド7の上部と繋がり合うように且つ下方に向かって窄まるように出口側マニホールド7の下部が形成され、その出口側マニホールド7の最低部と透明板2のスリット孔とが連通するように所要長さのスリット孔状の出口側液整流路14が形成されてなる。また、出口側液整流路14を取り囲むように、出口側下プレート17の底面にOリング4が矩形環状に設けられて、透明板2と出口側下プレート17との接続面からの塗布液漏れを防止させている。
【0021】
このようにして、垂直状に形成した入口側液整流路13と連通する入口側マニホールド6と、垂直状に形成した出口側マニホールド7とが気泡検知流路1を挟んで鉛直方向に設けられて、下方から上方に流れるクランク状の流路が形成される。また、この入口側マニホールド6と出口側マニホールド7の夫々の空間形状は、図2に示すように、平面視、扇状に形成されていると共に、図1に示すように、縦断面視、右下から左上に延出するような傾斜状に形成されている。なお、垂直状に形成しても良い。
【0022】
このように構成された本実施の形態にかかる気泡検知用用具は、気泡有無を検知すべき塗布液の供給配管経路の途中の上流側と下流側の夫々に流体継ぎ手を設け、その上流側の流体継ぎ手を液入口8に捩じ込み、下流側の流体継ぎ手を液出口9に捩じ込むことで、塗布液の供給配管経路の途中に設置する。
そして、気泡有無を検知すべき塗布液は、液入口8より液供給路11を通り、入口側マニホールド6に入る。ここで、幅方向に流路は拡幅し、上方に向かって流れ、入口側液整流路13を通り、検知すべき上限の気泡外径以上の液膜厚さに設定された気泡検知流路1に入る。
【0023】
検知スロット19を介し、検知部20で目視若しくは検知手段で気泡有無を評価された塗布液は、出口側液整流路14を通り、出口側マニホールド7に入り、これより上方に向かって進むに従い流路幅は狭まり、液排出路12を通り、液出口9より排出される。なお、目視の場合、検知スロット19を介して、目盛付き10倍ルーペを用いて気泡有無と気泡径の測定を行なう。検知手段と気泡検知用用具とを備えて気泡検知装置が構成される。詳細は後述する。
【0024】
本実施の形態にかかる気泡検知用用具は、少なくとも一つの透明板を含む上下一対の平板を近接し、縦断面矩形状の気泡検知流路1を形成し、この流路に塗布液を流すことで塗布液を薄膜状に形成し、検知部20より反射光、若しくは、透過光で薄膜液中の気泡有無を検出する。したがって、液膜の厚さは、検知すべき最大気泡径及び塗布液の透明、不透明によって、更には光源として透過光を用いるか反射光によるかで必要に応じて決定される。なお、透過光の場合は、平板3を透明板にする。
【0025】
透過光方式の場合、液膜の厚さは塗布液の透明、不透明に関わらず、概ね、最大気泡径とすることで、光の濃淡が明確になり検知が容易となる。また、塗布液の色、又は、透明、不透明の影響を受けにくく、小径の気泡が検知しやすい。
反射方式の場合、総じて検知能力が低いが、塗布液が透明又は白色に近い色、更には検知気泡径が大きい場合には問題なく検知可能である。
ただし、液粘度及び液流量若しくは流速によっては、平板部での圧力損失が大きくなることがある。この場合には、透過光方式又は反射方式のいずれかの適切な選定、更には、平板の間隔と光源の照度を適切に設定する必要がある。
【0026】
本実施の形態においては、図2に示すように、気泡検知流路1の幅方向Wの区間で均一な流速を持つことで検知性能を高くすることが可能となっている。もし、この部分での液流速にばらつきがあると、気泡検知漏れが発生してしまう。
この為に、気泡検知流路1の前に入口側マニホールド6を設け、ここで通常円形断面である塗布液入口8及び液供給路11を通った塗布液を入口側マニホールド6の幅方向に均一に拡散し、入口側液整流路13に向けて幅方向に均一流速で流す。この結果、塗布液の滞留部の形成を抑制することが可能となる。
【0027】
液滞留部が形成されないことで、塗布液中の気泡も滞留することがなくなる。気泡が滞留してしまう場合には、検知部20で気泡なしと検知しても、滞留部に捕捉されていた気泡が何らかの原因で流出してしまい、誤検知を招くとともに、予期しない塗布欠陥を発生させてしまうことになる。
更に、マニホールド部では、全ての塗布液が概ね同程度の時間で通過することが望ましい。
同程度のマニホールド通過時間であることで、液滞留による分散安定性の小さい分散液の分散物の沈降が抑制でき、流路の詰りが抑制可能となる。
【0028】
マニホールド部での液滞留抑制と液流速の幅方向均一化の為に、現在ではコンピュータシミュレーション等を活用して、その塗布液の流量及び粘度特性に合わせてマニホールドの形状設計を適切に実施することができる。ここで言う粘度特性とは、ブルックフィールド型粘度計での測定値ではなく、シェアレートと塗布液の粘度との関係を求めたものである。
検知部20を通過した塗布液は、出口側液整流路14を通り、出口側マニホールド7に入る。ここでも入口側マニホールド6と同様に液滞抑制と同程度のマニホールド通過時間である必要がある。この結果、気泡の滞留抑制及び分散安定性の小さい塗布液の分散物の沈降による流路の詰りの抑制が可能となる。
【0029】
特に、図2に示すように下流側マニホールドの形状は流下するに従いマニホールドの幅が狭くなることが気泡の滞留抑制の上で望ましいと考えられる。
図1に示すように、マニホールドを縦断面視で点対象の位置に配置してあるため、気泡検知流路1を水平、垂直のいずれに設置しても問題ない。図1において出口側マニホールド7を気泡検知流路1の下方に配置した場合には、気泡検知流路1を垂直に配置することで気泡の滞留を防止できる。
【0030】
図1に示す実施の形態では、塗布液漏れ防止材としてOリングを採用したが、これに限定されるものではなく、(1)ジャパンゴアテックス社製ハイパーシート;PTFE(2)ニチアス株式会社製ソフトシール;トンボNo.9096フッ素樹脂シール材などのシート状のシール材でもよい。
また、図1に示す実施の形態では、液入口8及び液出口9のポートとしてねじ込み方式を例示しているが、フランジ方式でも良い。
【0031】
入口側マニホールド6及び出口側マニホールド7は、気泡検知流路1に対し鉛直方向に設けられ、気泡検知流路1との連通部が傾斜状に形成されていることで、塗布液の滞留が抑制でき、この結果、気泡の滞留も防止でき、滞留部に捕捉された気泡が何らかの原因で流出することでの誤検知抑制と、予期しない塗布欠陥を防止できる。
【0032】
透過光方式の場合、気泡検知流路1の高さつまり、スペーサ10で形成される透明板2と平板3との間隙を、検知すべき上限の気泡外径以上としたことで塗布液の透明、不透明に関わらず光の濃淡が明確になり気泡が検知しやすく、更には小径の気泡が検知しやすい。
透明の塗布液の場合には、気泡が検知しやすいため、上述した間隙を大きくとることが可能であるが、この場合にはレイノルズ数を考慮して、層流となるよう設計する。
【0033】
透明板2はその硬度による耐摩耗性と耐有機溶剤性によりガラスが望ましい。ただし、耐久性及び有機溶剤での洗浄が不要の場合には、ガラスではなく、アクリル樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリカーボネ―トなどの樹脂製透明板でも良い。
【0034】
特にガラスの場合には、厳密には平面度が低く、図1に示すように、少なくとも一つの透明板を含む2枚の平板の間及び外側にシール材若しくはOリングなどのシール材を用いず、かつ低シェア液粘度が小さく、また気泡検知流路1での液圧が大きい場合には、塗布液漏れが発生することがある。
【0035】
特に塗布液漏れが発生するような場合には、広い平面に渡り極狭い隙間からの塗布液漏れとなり、装置及びその周辺を汚し、また、これが経時で乾燥固化し、気泡検知用用具を分解する場合、乾燥固化した塗布液があたかも接着剤のようになり、著しく分解を妨げることとなる。しかし、本実施の形態のようにOリングなどのシール材を用いた場合には、塗布液漏れがあっても液流路に限定されるため、気泡検知用用具、及び、その周辺を汚すことが防止でき、また、装置の分解がシール弾性体部材を用いない場合と比較して容易となる。
【0036】
また、透明板2と平板3をガラス板とした場合には、この2枚の平板の外側にマニホールドを形成する保護部材を設けることでガラスの破損を抑制できる。
ガラスは下記理由により強化ガラスが適している。
すなわち、日本の板ガラス協会の耐風圧強度計算式によれば、強化ガラスは普通板ガラスのおよそ3.5倍の耐圧強度をもつため、設計条件によっても異なるが、気泡検知流路1及び気泡検知用用具の液通過圧力損失及び下流の液供給配管及びダイ等の塗布部の圧力損失は、少なくとも0.1MPa程度の圧力となるため、この圧力に対する強度が必要となり、塗布作業者への安全性、設備の破損防止などの観点から強化ガラスが適している。圧損による設備の破損防止若しくはポンプの負担を考慮すると気泡検知流路1の入り口から出口までの距離を小さくすることで圧損を小さくできる。
【0037】
入口側液整流路13及び出口側液整流路14の幅は、大きすぎると気泡検知流路1への開口幅が大きくなり、気泡検知流路1入り口側の隅に滞留部が形成されてしまうため、検知上限気泡径の数倍程度が望ましい。このため、入口側液整流路13及び出口側液整流路14の幅はマニホールドの左右方向の幅と比較して約1/10程度と小さい。
【0038】
マニホールド形状は、図3に示すように円形断面でもよい。円形断面マニホールド6b、7bの場合、下プレート16bと上プレート17bの機械加工は、穴ぐり加工となるが、量産装置では気泡検知用用具のマニホールドの幅W(図2参照)は、塗布条件にもよるが、感熱紙の塗布においては500mmから750mm程度となり、深穴加工となるため、ガンドリルによる加工が一般的である。なお、円形断面マニホールド6b、7bは、塗布液の流量、塗布液の粘度特性によっては必ずしも最適でない場合もあり得る。
【0039】
これに対し、図1に示す気泡検知用用具のように、上下のプレートをそれぞれ2分割とすることで、塗布液の流量、塗布液の粘度特性に合わせた適切なマニホールド形状とすることが可能となる。特にダイノズルのマニホールド等の流路の流動解析技術を活用することで適切な形状設計が可能となる。機械加工は一般的なフライス、マシニングセンター等で可能なため、安価かつ精度よく、特別な加工技能を必要とすることなく製作ができる。
【実施例】
【0040】
ここで、実施の形態1で例示した気泡検知用用具の実施例を説明する。
<基本条件>
・透明板及び平板:共に強化ガラス、厚さ5mm、2枚
・平板同士の距離(間隙):1mm
・流路幅:100mm
・検知部長さ:20mm
・入口側及び出口側液整流路幅:(1)入口側3mm(2)出口側80mm
・マニホールド断面積:(1)入口側493mm^2(2)2200mm^2
・照明:透過光方式(ストロボを入り口側開口部に設置)、蛍光灯40w
・検知(観察):目視
・塗布液:アクリルエマルジョン糊、密度1040kg/m^3
・液流量:1.25kg/min、2.50kg/min
・気泡検知流路の流速:20.0cm/sec、40.0cm/sec
・気泡の発生方法
1)液タンクより塗布液を脈動の小さいモーノを用い、所定の流量を外形φ10mm内径φ8mmのナイロンチューブで受けタンクに送る。このナイロンチューブに注射針(テルモ27G、3/4“:針外径0.4mm)を刺し、圧空を精密レギュレータにより減圧、圧力調整して針に送る。受けタンクで気泡の入った塗布液をサンプリングし、100mm角のかつ、中央に60mm角の切り抜きをした厚さ1.5mm及び2.0mmのゴムを100mm角の厚さ10mmのガラス板で挟み、ゴム中央の60mm角切り抜き部にサンプリングした気泡入りの塗布液を封入した気泡径測定治具をライトボックッス(シャーカステン)の上に乗せ、目盛付き10倍ルーペで気泡径を測定する。
2)設定液流量に対する狙いの気泡径に対する圧空圧力を設定後、気泡検知装置の液入り口に前記ナイロンチューブを接続し、検知部より気泡を目視検知する。この条件を元に実験した結果を表1及び表2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
上述した実施の形態及び実施例は、気泡の検知を目視によるものとした。運転開始前若しくは運転中に塗布液の切り替え、フィルターの切り替えなどの切り替え作業に伴う気泡の検知であれば、ストロボを活用した目視検知でより信頼性高く検知が可能である。しかし、品質保証の観点では目視検知では作業者毎のばらつきが生じる虞がある。
【0044】
そこで、上述した気泡検知用用具と、検知手段とを備えて気泡検知装置とすることが好ましい。
検知手段は、検知スロット19を介して設置された撮像カメラ21と、その撮像カメラ21の画像データを画像処理して気泡の有無や気泡径を検知する制御部22と、画像データと制御部22の検知結果を記録する記憶装置23と、制御部22の検知結果を画像表示させる表示装置24とを備えて構成される。
撮像カメラの方式は、リニアイメージセンサ(一次元イメージセンサ)又はエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)のいずれでも、また、CCDイメージセンサ若しくはCMOSイメージセンサのいずれでもよい。
【0045】
このように気泡検知装置とすることで、目視検知での作業者毎のばらつきの虞を払拭し、また、目視と比較してより小さな気泡の有無と気泡径の検知が可能となる。このように構成することで、検知した気泡のウエブ流れ方向及び幅方向の位置を記録し、必要により呼び出し、確認することができるため、検出気泡のウエブ流れ方向位置情報として得られ、塗布後の欠点検知装置との突合せによる異常有無検討にも活用できる。
【0046】
以上、本実施の形態にかかる気泡検知用用具、気泡検知装置を説明したが、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【0047】
例えば、少なくとも一方を透明板とさせた一対の平板を用いて、塗布液を薄膜化して流通する気泡検知流路を形成し、この気泡検知流路に塗布液を流すことで塗布液を薄膜状に形成し、反射光、若しくは、透過光で薄膜液中の気泡有無を検知または目視する気泡検知方法でも良い。この場合も、一対の平板の配置間隔は、検知すべき上限の気泡外径以上とした間隔とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0048】
1‥気泡検知流路 2‥透明板 3‥平板 4‥シール材 5‥シール材 6‥入口側マニホールド 7‥出口側マニホールド 8‥液入口 9‥液出口 10‥スペーサ 11‥液供給路 12‥液排出路 13‥入口側液整流路 14‥出口側液整流路 15‥入口側下プレート 16‥入口側上プレート 17‥出口側下プレート 18‥出口側上プレート 19‥検知スロット 20‥検知部 21‥撮像カメラ 22‥制御部 23‥記憶装置 24‥表示装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特開平11−290752号公報
【特許文献2】特開平09−178712号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を薄膜化させて流通させる気泡検知流路を形成可能に所要の間隔をおいて対向配置され、少なくとも一方を透明板とさせた一対の平板を備えた平板部と、
前記平板部を挟み込んで該平板部を保持させる共に、前記塗布液の供給配管経路の途中に接続されるプレート部と
を備えてなり、
前記プレート部は、
前記供給配管経路と連通され、前記気泡検知流路へ前記塗布液を流入させる入口側マニホールドと、
前記供給配管経路と連通され、前記気泡検知流路から前記塗布液を流出させる出口側マニホールドと、
前記気泡検知流路を流通する塗布液中の気泡の有無を透過光又は反射光を用いて検知可能または目視可能に、前記気泡検知流路と対応する部位を開口させた検知スロットと
を設けてなることを特徴とする気泡検知用用具。
【請求項2】
前記一対の平板の配置間隔は、検知すべき上限の気泡外径以上の間隔であることを特徴とする請求項1に記載の気泡検知用用具。
【請求項3】
前記入口側マニホールドと前記出口側マニホールドは、前記気泡検知流路に対し鉛直方向に設けられていると共に、傾斜状若しくは垂直状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の気泡検知用用具。
【請求項4】
前記プレート部は、前記平板部を挟んで上下一対からなると共に、上下夫々、複数のプレートで構成され、
前記入口側マニホールドと前記出口側マニホールドは、複数の前記プレートに跨るように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の気泡検知用用具。
【請求項5】
前記一対の平板の間、前記平板部と前記入口側マニホールドとの連通部の周辺、前記平板部と前記出口側マニホールドとの連通部の周辺、夫々にシール材を介在させたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の気泡検知用用具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の気泡検知用用具と、
前記検知スロットを介して設けられ、前記気泡検知流路を流通する塗布液中の気泡の有無を検知させる検知手段と
を備えたことを特徴とする気泡検知装置。
【請求項7】
前記検知手段は、前記気泡検知流路を流通する塗布液を撮像する撮像カメラを備えてなることを特徴とする請求項6に記載の気泡検知装置。
【請求項8】
少なくとも一方を透明板とさせた一対の平板を用いて、塗布液を薄膜化して流通する気泡検知流路を形成し、この気泡検知流路に塗布液を流すことで塗布液を薄膜状に形成し、反射光、若しくは、透過光で薄膜液中の気泡有無を検知または目視することを特徴とする気泡検知方法。
【請求項9】
前記一対の平板の配置間隔は、検知すべき上限の気泡外径以上の間隔としたことを特徴とする請求項8に記載の気泡検知方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−242328(P2011−242328A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116273(P2010−116273)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】