説明

気泡混合軽量土の造成方法

【課題】原位置土を掘削しながら気泡と混合撹拌する際の消泡を少なくして、経済性に優れた気泡混合軽量土の造成方法を提供する。
【解決手段】界面活性剤系、タンパク質系、樹脂石鹸系等のいずれかの起泡剤を用いて製造される気泡と現位置土および固化材ミルクを相互に混合撹拌して気泡混合軽量土を造成する方法として、先行工程と後工程の2工程に分けて混合撹拌処理を行う。先行工程では、現位置土中に水または固化材ミルクを吐出して混合撹拌することにより流動化処理土を造成する。後工程では、流動化処理土中に固化材ミルクと気泡または気泡を単独で吐出して混合撹拌する。先行工程で造成される流動化処理土の流動値をテーブルフロー値で150mm以上またはシリンダーフロー値にて85mm以上となるように管理する。後工程では、流動化処理土中にエアミルクを吐出して混合撹拌するようにしても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡混合軽量土の造成方法、特に現位置撹拌による気泡混合軽量土の造成方法に関し、さらに詳しくは、例えば地面上に新たな構造物や盛土体を構築するのに先立って、現位置土に空隙形成材として機能する気泡と固化材を加えて混合撹拌して、軽量で且つ十分な強度を有する気泡混合軽量土を造成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の気泡混合軽量土の造成方法としては、例えば特許文献1,2に記載されたいわゆるプラント方式以外に、特許文献3に記載のように現位置混合撹拌方式としたものが本出願人により提案されている。この現位置混合撹拌方式の場合には、現位置にて原土を掘削しながらその時点でスラリ状の固化材(固化材ミルク)および起泡剤または起泡材と混合撹拌して気泡混合軽量土化することから、きわめて経済性に優れたものとなる。
【特許文献1】特公平5−28285号公報
【特許文献2】特開2002−332657号公報
【特許文献3】特許第3784822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献3に記載の現位置混合撹拌方式の造成方法にあっては、掘削した現位置土とスラリ状の固化材および起泡剤または起泡材とを実質的に一工程にて混合撹拌することになるため、原土性状によっては混合撹拌時に気泡が多量に消泡してしまい、気泡混合軽量土の品質低下が危惧されるほか、起泡剤または起泡材(あるいは気泡)を大量に必要とすることとなって不経済となる可能性がある。
【0004】
例えば原土性状が砂質土のようにほぐれやすい(緩い)状態の時には混合撹拌後の消泡は比較的少ないものの、原土性状が粘性土質のように粘着性が高いいわゆる塑性状態にある場合には、現位置土とスラリ状の固化材および気泡を混合撹拌する段階での消泡が顕著となる傾向にある。これは、粘着性が高いいわゆる塑性状態にある現位置土の「ほぐし」を促進するべく混合撹拌を繰り返し行うと、同時にそのエネルギーまたは混合撹拌抵抗によって摩擦圧潰のかたちで気泡が消泡してしまうものと推測される。
【0005】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、原位置土を掘削しながら気泡等と混合撹拌する際の消泡を少なくして、経済性に優れた気泡混合軽量土の造成方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、界面活性剤系、タンパク質系、樹脂石鹸系のうちの少なくともいずれかの起泡剤を用いて製造される気泡と現位置土および固化材ミルクを相互に混合撹拌して気泡混合軽量土を造成する方法において、現位置土中に水または固化材ミルクを吐出して混合撹拌することにより流動化処理土を造成する先行工程と、上記流動化処理土中に固化材ミルクと気泡または気泡を単独で吐出して混合撹拌する後工程と、を含んでいて、上記先行工程で造成される流動化処理土の流動値をテーブルフロー値で150mm以上またはシリンダーフロー値にて85mm以上となるように管理することを特徴とする。
【0007】
なお、シリンダーフロー値とは、東日本、中日本および西日本の各高速道路株式会社が「エアモルタル及びエアミルクの試験方法」の一つである「コンシステンシー試験方法」として定める方法で、詳細は後述する。
【0008】
ここで、上記起泡剤としては界面活性剤系、タンパク質系および樹脂石鹸系等のものが存在することから、請求項1に記載の発明では、起泡剤として界面活性剤系、タンパク質系および樹脂石鹸系のうちの少なくともいずれか一つのものを使用するものとし、必要に応じて二種類以上のものを併用しても良い。
【0009】
このように、混合撹拌処理工程を実質的に先行工程と後工程の二工程に分けた上で、先行工程では掘削した現位置土と固化材ミルクとを混合撹拌して現位置土に流動性を付与することで、現位置土の「ほぐし」が促進されることになる。そして、後工程として流動化処理土中に固化材ミルクと気泡または気泡を単独で吐出させて混合撹拌すると、先行工程で予め現位置土のいわゆる「ほぐし」が促進されているので、従来のような著しい消泡の発生はなくなる。
【0010】
ここで、上記請求項1に記載の後工程では、流動化処理土中に固化材ミルクと気泡または気泡を単独で吐出して混合撹拌するものであるが、これに代えて、請求項2に記載のように、後工程では上記流動化処理土中にエアミルクを吐出させて混合撹拌するものとし、その際に、上記エアミルクは、固化材ミルクと起泡材とを混合した混合材を圧縮空気とともに発泡筒を通過させて製造するようにしても良い。
【0011】
また、請求項1または2に記載の発明を前提として、請求項3に記載のように、予め定められた所定量の気泡混合軽量土を造成するにあたり、その所定量の気泡混合軽量土に必要な固化材ミルクの全量と、その固化材ミルクの全量を製造するのに必要な全水量をそれぞれに予め定めておき、先行工程では上記全水量のうちの一部の水を現位置土中に吐出させながら混合撹拌して流動化処理土を造成するようにしても良い。
【0012】
同様に、請求項4に記載のように、予め定められた所定量の気泡混合軽量土を造成するにあたり、その所定量の気泡混合軽量土に必要な固化材ミルクの全量を予め定めておき、先行工程では上記固化材ミルクの全量のうちの一部の固化材ミルクを現位置土中に吐出して混合撹拌することにより流動化処理土を造成するようにしても良い。
【0013】
さらに、請求項5に記載のように、請求項4に記載の先行工程に代えて、上記固化材ミルクの全量を現位置土中に吐出して混合撹拌することにより流動化処理土を造成する先行工程を含んでいても良い。
【0014】
その一方、請求項1〜5のいずれかに記載の造成方法を前提とした場合、請求項6に記載のように、上記後工程では、当該後工程での混合撹拌時に生じる気泡の消泡を考慮して、その消泡相当量を増量させた起泡剤または起泡材を圧縮空気とともに発泡筒を通過させることで気泡を製造し、該気泡と固化材ミルクまたは気泡を単独で流動化処理土中に吐出して混合撹拌するものとする。
【0015】
この場合、請求項7に記載のように、上記後工程にて気泡の消泡相当量を増量させるにあたり、上記流動化処理土の流動値と気泡の消泡度合いまたは軽量化損失度合いとの相関を予め定めておき、この相関から得られた値に基づいて消泡相当量の起泡剤または起泡材の量を求め、これを上記後工程での消泡相当量として増量させることが品質の安定化の上で望ましい。
【0016】
また、一般的な地盤改良を目的として作業系建設機械をベースマシンとする混合攪拌機が従来から使用されていることから、請求項1〜7のいずれかに記載の造成方法を前提とした場合にも、請求項8に記載のように、上記先行工程および後工程においては、例えばバックホウ等の作業系建設機械をベースマシンとする混合攪拌機にて混合撹拌処理を施すものとする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1,2に記載の発明によれば、混合撹拌処理を実質的に二工程に分けて行い、先行工程で現位置土の流動化による「ほぐし」を促進した上で、後工程で固化材ミルクと気泡または気泡を単独で流動化処理土中に吐出して混合撹拌するようにしたため、従来のような著しい消泡の発生を未然に防止できるとともに、必要とされる起泡剤の量も削減でき、結果として経済性に優れた工法となる。
【0018】
請求項3〜5に記載の発明によれば、一定量の気泡混合軽量土を造成するのに必要な水分量を予め定量的に把握しておいて、その全水分量を先行工程と後工程にて使い分けるようにしているので、造成すべき気泡混合軽量土における水分量の過不足の発生がなく、施工品質が向上する。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、施工時の消泡を見越して起泡剤または起泡材の使用量を決定するようにしているので、施工品質の安定化と向上が図れるとともに、起泡剤または起泡材を必要以上に消費してしまうこともなく、経済性にも優れたものとなる。
【0020】
特に請求項7に記載の発明によれば、流動化処理土の流動値と気泡の消泡度合いまたは軽量化損度合いとの相関を予め定めておき、この相関から得られた値に基づいて消泡相当量の起泡剤または起泡材の量を決定するようにしているので、施工品質の一層の安定化と向上が図れる。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、既存の作業系建設機械をベースマシンとする混合攪拌機を混合撹拌処理手段として用いることで特別な設備が不要であり、設備費低減の上でも好ましいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
一般的に、気泡混合軽量土を造成するには、処理土の品質目標値(設定値)として処理土の密度(単位体積重量)と強度(通常は、一軸圧縮強度)の二つの要素を満たすことが必要である。
【0023】
ここでは、現位置混合撹拌による気泡混合軽量土の造成にあたり、より良い品質の気泡混合軽量土を経済的に造成するのに必要な手順と方法を施工に先立って行う室内配合試験と現位置での施工事例をもって説明する。
【0024】
現位置混合撹拌による気泡混合軽量土の造成を効率的に行うには、気泡の消泡による損失度合いである軽量化損失率を限りなく小さくすることが望ましい。この場合の軽量化損失率とは、後述するように気泡混合軽量土の理論密度と造成実施密度との差を理論密度にて除した値をいう。気泡の消泡が少ない場合には、軽量化損失率が小さい値となる。
【0025】
現位置土(原土)とスラリ状の固化材である固化材ミルクと気泡の混合撹拌により気泡混合軽量土を造成しようとするとき、気泡の消泡は、製造した気泡自体の搬送途中だけでなく、現位置土の土質性状や、特に原位置土との混合撹拌時の混合撹拌抵抗によって発生することは先に述べた。
【0026】
そこで、本実施の形態では、現位置土と固化材ミルクと気泡を相互に混合撹拌して気泡混合軽量土を造成するにあたり、現位置土中に水または固化材ミルクを吐出して混合撹拌することにより流動化処理土を造成する先行工程と、この流動化処理土中に固化材ミルクと気泡または気泡を単独で吐出して混合撹拌する後工程と、の二工程に分けて施工を行うものとする。
【0027】
これは、先行工程にて現位置土を積極的に流動化させることによりいわゆる「ほぐし効果」を与えて、この「ほぐし効果」が得られた流動化処理土に対して後工程にて固化材ミルクと気泡または気泡を単独で吐出させて混合撹拌するようにすれば、従来のような混合撹拌抵抗による摩擦圧潰のかたちでの気泡の消泡を最小限に抑制できるであろうとの知見に基づいている。
【0028】
そして、上記流動化処理土の「ほぐし効果」の度合いに応じて後工程で混合撹拌した時の気泡の消泡の度合いも必然的に異なり、最も消泡の度合いが少ない「ほぐし効果」の度合いの範囲が存在するであろうとの予測のもとに、ここでは上記「ほぐし効果」の度合いを先行工程での流動化処理土の流動値で評価することとする。
【0029】
すなわち、本実施の形態では、先行工程では現位置土中に水または固化材ミルクを吐出して混合撹拌して、現位置土を積極的に流動化させて流動化処理土を造成する一方、後工程ではこの流動化処理土中に固化材ミルクと気泡または気泡を単独で吐出して混合撹拌するものとし、その際の気泡の消泡を最小限にとどめるべく、先行工程における流動化処理土の流動値、例えばテーブルフロー値またはシリンダーフロー値が所定の範囲のものとなるように管理することとした。
【0030】
ここで、主な用語の定義をしておけば下記の通りとなる。
【0031】
(1)固化材
所要の強度を確保するために添加するセメントまたはセメント系固化材などの材料をいう。
【0032】
(2)固化材ミルク
水と固化材を混練して製造されるスラリ状の材料をいう。
【0033】
(3)起泡剤
起泡材のもとになる薬剤で、主に界面活性剤系のものと動物タンパク質系のものが用いられる。
【0034】
(4)起泡材
起泡剤を水で希釈した材料であって、発泡に先立って製造される。
【0035】
(5)混合材
固化材ミルクと起泡材を混合した未発泡状態の材料をいう。
【0036】
(6)気泡
起泡材と圧縮空気を発泡装置に通過させて発泡させたフォーム状の材料であって、現位置土の軽量化に用いる材料をいう。
【0037】
(7)希釈倍率
起泡材は、適切な気泡が得られるように起泡剤を水で希釈して製造するが、その時の水と起泡剤の割合を容積比率であらわしたものをいう。
【0038】
(8)発泡倍率
起泡材が発泡したときの倍率であって、気泡と起泡材の割合を容積比率であらわしたものをいう。
【0039】
(9)エアミルク
固化材ミルクを気泡を混合した軽量な材料をいう。
【0040】
(10)流動化処理土
現位置土(原土)と水または固化材ミルクを混合撹拌して流動性を持たせた土をいう。固化材ミルクを使用する場合には、混合撹拌後30〜60分以内で流動状態を維持している処理土をいう。
【0041】
(11)予定流動値
流動化処理土を先行工程での混合撹拌と後工程での混合撹拌の二工程に分けて造成する場合に、先行工程で得ようとする流動化処理土の流動値をいう。
【0042】
(12)軽量化率
現位置土と造成された気泡混合軽量土との割合をいう(気泡混合軽量土の密度/現位置土の密度)。
【0043】
(13)軽量化損失率
造成後の気泡混合軽量土の軽量化不足の割合で、次式にて表されるものをいう。
【0044】
軽量化損失率={(実測密度−理論密度)/理論密度}×100%
(14)シリンダーフロー値
東日本、中日本および西日本の各高速道路株式会社が「エアモルタル及びエアミルクの試験方法」の一つである「コンシステンシー試験方法」として定める方法(JHS 313−1999)である。最終的には測定値の平均を求め、フロー値mmとして表示する。詳細は、「試験方法 第3編 コンクリート関係試験方法」、平成18年10月 初版、編著:東日本、中日本および西日本の各高速道路株式会社、発行:NEXCO中央研究所」、P31「エアモルタル及びエアミルクの試験方法」参照。
【実施例1】
【0045】
実施工に先立って気泡混合軽量土の品質目標値(設計値)を満足させるのに必要な事項を決定するにあたり、現位置土(試料)を採取し室内配合試験を行う。この室内配合試験では、混合撹拌直後の流動性の度合いにより混合撹拌抵抗に差が生じやすい粘性質土にて試験を行い、後述する先行工程での流動化処理土の望ましい流動値を求める。
【0046】
なお、試料の採取にあたっては施工(造成)対象となる地盤より直接採取するものとし、また試料の保管にあたっては物性および科学的性質が変化しないように配慮する。
【0047】
品質および効率の良い気泡混合軽量土の造成には、製造した気泡の消泡をできるだけ少なくすることはもちろんのこと、現位置土と固化材ミルクと気泡とを実際に混合撹拌する時の消泡をできるだけ少なくすることが重要なポイントとなることは先に述べた。
【0048】
ここでは、後工程での混合撹拌時の混合撹拌抵抗を可及的に小さくするべく、先行工程で処理された現位置土(流動化処理土)の「ほぐしの度合い(ほぐしの程度)」を予め定量的に把握しておくものとし、その「ほぐしの度合い」を処理土の流動性の指標であるテーブルフロー値またはシリンダーフロー値として予め求めておくものとする。
【0049】
室内配合試験は、前述したように粘性質土にて試験を行い、望ましい流動化処理土の流動値をテーブルフロー値またはシリンダーフロー値として求める。また、気泡混合軽量土の品質目標値であるところの軽量化率を例えば75%前後とする密度と一軸圧縮強度(σ28)300KN/m2が得られる固化材の添加量を求めてみる。
【0050】
ここで、上記軽量化率75%の根拠は次の通りである。
【0051】
通常、軟弱地盤における現位置土の湿潤土重量(密度)は13〜15kN/m3程度であり、軟弱地盤内は地下水位が高く、地表面付近にまで水位が上昇していることが多い。一方、気泡混合軽量土工法を採用するにあたり、造成される気泡混合軽量土が地下水による浮力で浮上しないように配慮すると、その気泡混合軽量土の重量を10kN/m3以上で設定する必要があり、設計密度としては11kN/m3程度に設定することが望ましい。
【0052】
その時における軽量化率は、
(11kN/m3)/(13〜15kN/m3)=0.85〜0.73
となる。
【0053】
よって、ここでは現位置混合における軽量化率として最大値に近い約0.75(75%)を品質目標値として検討する。
【0054】
また、先に述べた一軸圧縮強度(σ28)300KN/m2の根拠は次の通りである。
【0055】
例えば図6,7に示した軟弱地盤1上に盛土体2を造成するにあたり、その盛土体2の計画高さHを例えば2mとする。軽量化率を75%とした時の原土(現位置土)と気泡混合軽量土の体積変化率を2倍とする。気泡混合軽量土は、原土と固化材と起泡剤と水とが混合されて造成される。軽量化率によって体積変化率は1.5〜2.5倍と異なるが、ここでは2倍として検証する。なお、表5では原土1m3にて2.277m3の気泡混合軽量土が造成されることを示しており、この場合の体積変化率は約2.3倍となる。
【0056】
体積変化率を2倍として高さH=2mの盛土体2を造成するには、h1=2mとして混合撹拌して、図7に示すようにh2=4mの気泡混合軽量土を造成することとなる。
【0057】
前述したように、軟弱地盤地域における地下水位は地表面付近にある。よって、常に地下水位の影響を受け、高さh1に相当する部分では時間の経過とともに気泡混合軽量土の空隙部に水が浸透することとなる。
【0058】
つまり、高さh1に相当する部分における気泡混合軽量土重量は、造成時に11kN/m3であったとしても、将来的には空隙部に地下水が浸透し、13kN/m3程度に増加することとなる。
【0059】
気泡混合軽量土4mに対する単位面積当たりの重量は、
高さH相当部 11kN/m3×2m=22kN/m2
高さh1相当部 13kN/m3×2m=26kN/m2
合計重量 22kN/m2+26kN/m2≒48kN/m2≒50kN/m2
となる。
【0060】
気泡混合軽量土の必要強度(現場目標強度)を単位面積当たり重量の3倍とする。
【0061】
気泡混合軽量土の必要強度は、
50kN/m2×3=150kN/m2
となる。
【0062】
室内目標強度は現場目標強度の2倍とする。
【0063】
気泡混合軽量土の室内目標強度は、
150kN/m2×2=300kN/m2
となる。
【0064】
<粘性質土における目標流動値の決定>
現位置土1m3当たりに添加する固化材は、一軸圧縮強度(σ28)として300KN/m2が得られると思われる添加量として、過去の実績より暫定的に現位置土1m3当たり500kgとする。
【0065】
固化材500kg当たりの固化材ミルク用水量として300リットル、400リットル、500リットル、600リットル、700リットルの5水準による気泡混合軽量土を製造し、その時の流動値であるテーブルフロー値およびシリンダーフロー値のほか、湿潤密度を測定する。
【0066】
なお、試料(現位置土)の土質性状は以下の通りである。
【0067】
・土質分類:粘性質土
・密度(単位体積重量):1.43t/m3
(土の湿潤密度試験 JGS 0191に準拠)
・自然含水比:87.0%
(土の含水比試験 JIS A 1203に準拠)
また、造成しようとする気泡混合軽量土の品質目標値(設計値)は下記の通りである。
【0068】
・密度(単位体積重量):1.10t/m3
・軽量化率:76.9%(=(1.1/1.43)×100%)
・一軸圧縮強度(σ28):300KN/m2
上記試料に対し、先に述べた5水準の単位水量(原土1m3当たりに用いる水量)を加えた時に、密度(単位体積重量)1.10t/m3となる理論上の配合を表1に示す。また、表1の用語の定義は下位の通りである。
【0069】
・起泡材希釈水:起泡剤×14(15倍希釈の場合)
・気泡の質量(kg):(起泡剤+希釈水)の質量
・気泡の体積(リットル):(起泡剤+希釈水)の体積×20
(20倍発泡の場合)
・気泡混合軽量土の質量(kg):(原土+固化材+固化材ミルク用水+気泡) の質量
・気泡混合軽量土の体積:(原土+固化材+固化材ミルク用水+気泡)の体積
【0070】
【表1】

【0071】
表1の配合表に基づき、それぞれの固化材と固化材ミルク用水とを混合撹拌して固化材ミルクを製造し、その固化材ミルクと現位置土をソイルミキサーで所定時間混合撹拌して現位置土に「ほぐし処理」を施して流動化処理土とする。製造した混合撹拌処理直後の流動化処理土の流動値をテーブルフロー試験(JIS A 5201)およびシリンダーフロー試験(JHS 313)により測定する。
【0072】
気泡混合軽量土の理論密度(単位体積重量)1.10t/m3となるように流動化処理土に対し表1の配合表に基づく規定量の気泡を添加して混合撹拌する。
【0073】
さらに製造した気泡混合軽量土の密度を重量測定法にて測定する。なお、重量測定法とは、既知の定量容器に気泡混合軽量土を入れ、その質量を測定して密度を求める方法である。
【0074】
この時の測定結果を表2に示す。なお、表2の軽量化損失率の定義は先に述べた通りであって、表2の軽量化損失率は理論密度を1(ここでは、1.1t/m3)とした時の軽量化不足の割合を示している。
【0075】
【表2】

【0076】
表2のテーブルフロー値と軽量化損失率との相関をグラフにしたものを図1に、同じく表2のシリンダーフロー値と軽量化損失率との相関をグラフにしたものを図2に、同じく表1のテーブルフロー値と表2のシリンダーフロー値との相関をグラフにしたものを図3にそれぞれ示す。同様に、表2のテーブルフロー値と単位水量との相関をグラフにしたものを図4に示す。
【0077】
図1,2において、気泡混合軽量土の造成において、「ほぐし処理」が施された流動化処理土の流動値が高くなればなるほど軽量化損失率が小さくなることがわかる。その一方、流動化処理土の流動値を高くすることは可能ではあっても、同時にもう一方の目標値である気泡混合軽量土の強度を満足させるためにはより多くの固化材を必要とすることになる。
【0078】
よって、軽量化損失率としては5%以下程度とすることが望ましく、本室内配合試験の粘性質土における流動化処理土の流動値(予定流動値)としては、テーブルフロー値で150mm以上、シリンダーフロー値で85mm以上とすることが望ましい。
【0079】
一方、図4は、テーブルフロー値で150mm以上を満足させるのに必要な単位水量は420リットル/m3以上であることを示している。
【0080】
この単位水量は土質性状により異なるので、土質性状に応じた単位水量を予め求めておくことが望ましく、造成対象現場ごとに行う室内配合試験で単位水量を求めるものとする。
【0081】
<粘性質土において目標強度を満足する固化材添加量の決定>
先の室内配合試験でのデータから、固化材ミルクの単位水量は表2の軽量化損失率3.6%時における500リットル/m3とし、この単位水量で固化材添加量の配合試験を行う。なお、先に求められた単位水量420リットル/m3以上にて配合試験を行うのは、ほかでもなく目標強度に対して安全側の強度を確保するためである。
【0082】
現位置土1m3当たりに、固化材ミルク用水500リットル/m3、固化材添加量として300kg/m3、500kg/m3、700kg/m3の3水準を設定し、気泡混合軽量土の理論密度を1.1t/m3とする配合にて試験を行う。表3に理論上の配合を示す。
【0083】
【表3】

【0084】
表3の固化材添加量理論配合表に基づき気泡混合軽量土を製造する。製造の手順は先の場合と同様とする。
【0085】
製造した気泡混合軽量土を型枠(φ50×100のモールド)に流し込み、供試体を作成する。
【0086】
所定強度が発現するのに必要な所定日数の養生後、供試体を用いて一軸圧縮強度試験(JIS A 1216)を行う。この一軸圧縮強度試験の結果を表4に示す。なお、表4にいう「出来上がり1/m3当たり」とは、造成される気泡混合軽量土1/m3当たりに添加される固化材量を示す。
【0087】
【表4】

【0088】
表4のデータをもとに、固化材添加量と一軸圧縮強度との相関をグラフ化したものを図5に示す。
【0089】
先に述べたように、当初の目標強度を300KN/m2以上としているので、図5から目標強度300KN/m2以上を満たす固化材添加量は1m3当たり520kg/m3とする。なお、この時の気泡混合軽量土1m3当たりの固化材添加量は230kg/m3となる。すなわち、原土1m3に対して520kgの固化材を添加すると、気泡混合軽量土は2.277m3となる。これを気泡混合軽量土1m3当たりの添加量に換算すると、
520/2.277=228≒230kg/m3
となる。
【0090】
これまでの試験結果から明らかなように、気泡混合軽量土を効率良く且つ経済的に造成するには、気泡を混合撹拌する前に、先行工程にて固化材ミルクまたは水等により現位置土を流動化させることが有効であることが証明された。
【0091】
先の室内配合試験に用いた試料は一般的な軟弱地盤に多く見られるところの含水比の高い粘性質土を用いた。軽量化損失率は土質性状により異なるものであるが、軟弱地盤を対象する現位置混合撹拌による気泡混合軽量土ならば、上記試験結果を基準に先行工程での流動化処理土の望ましい流動値(予定流動値)を決定することが可能である。
【0092】
したがって、先に述べたように軽量化損失を5%とした時の流動化処理土の流動値、すなわちテーブルフロー値で150mm以上、シリンダーフロー値で85mm以上とすることは、気泡混合軽量土の造成を先行工程と後工程の二工程に分けて行うにあたり、少なくとも先行工程での流動化処理の際に信頼性の高い流動性の指標となる。なお、土質性状によってテーブルフロー値とシリンダーフロー値の相関は異なるが、少なくともいずれか一方のフロー値を指標とすれば良い。
【0093】
また、現位置混合撹拌では、一つの現場において原土の土質性状が大きく変化することもあり得るので、軽量化損失率としては先に述べた5%程度とすることが望ましいが、場合によっては10%程度とすることもある。いずれにしても、造成現場ごとに定められる目標密度、強度等により、予め行う室内配合試験において軽量化損失率が10%以内となるように、先行工程で実施する流動化処理土の流動値をその都度求めることが望ましい。
【0094】
なお、上記実験により得られた実際の配合例をまとめたものを表5,6に示す。
【0095】
【表5】

【0096】
【表6】

【実施例2】
【0097】
ここでは、先の室内配合試験にて求められた値を用いて、図6,7に示すように軟弱地盤1上に高さH=1.5mの盛土体2を造成するべく、壁面パネル3を併用しながら現位置土と固化材ミルクと気泡を相互に混合撹拌して気泡混合軽量土とする場合の例を示す。なお、気泡混合軽量土を造成すべきいわゆる1ロット分の量は50/m3とし、その施工に要する時間は1時間(60分)と仮定する。
【0098】
また、実施工には図7に示すように例えば作業系建設機械であるバックホウ4をベースマシンとする混合撹拌機6を用いるものとする。この混合撹拌機6は、バックホウ4のアーム5先端に装着されているとともに、上下方向に周回駆動されるエンドレスなドライブチェーンの外周側に複数の混合撹拌翼を備えた公知の構造のもので、バックホウ4の推力をもって軟弱地盤1に貫入されることになる。
【0099】
施工対象となる現位置土の性状は先の室内配合試験の試料と同じで、下記の通りである。
【0100】
・土質分類:粘性質土
・密度(単位体積重量):1.43t/m3
(土の湿潤密度試験 JGS 0191に準拠)
・自然含水比:87.0%
(土の含水比試験 JIS A 1203に準拠)
また、造成しようとする気泡混合軽量土の品質目標値(設計値)も先の室内配合試験の場合と同じで、下記の通りである。
【0101】
・密度(単位体積重量):1.10t/m3
・軽量化率:76.9%(=(1.1/1.43)×100%)
・一軸圧縮強度(σ28):300KN/m2
さらに、現位置土のほか各材料の基本配合は表6の通りとする。
【0102】
次に、気泡混合軽量土を50m3造成するのに必要な主材料は下記の通りとする。
【0103】
・現位置土:(439/50)/1000≒22.0m3
・固化材量:230×50=11500kg
・固化材ミルク用水量:230×50=11500リットル
・起泡剤量:0.85×50=42.5リットル
・起泡剤希釈水量:11.9×50=595リットル
上記主材料により製造される複合材料を下記に示す。
【0104】
・固化材ミルク(固化材+固化材ミルク用水):(76+230)×50=15300リットル
・起泡材(起泡剤+起泡剤希釈水):42.5+595=637.5リットル
・気泡(起泡材+圧縮空気)(20倍発泡):637.5×20=12750リットル
施工に先立ち、流動化処理土の流動値をテーブルフロー値で150mm以上とするのに必要な単位水量を求める。現位置土1m3当たり固化材ミルク用水を100リットル、200リットル、300リットルと加えて混合撹拌した後にテーブルフロー値を測定する。その実測値をテーブルフロー値と単位水量との相関としてグラフ化したものが図8である。
【0105】
先行工程では、先に述べた1ロット分の気泡混合軽量土(50m3)に見合った量の現位置土(約22m3)に「ほぐし処理」を施すべく積極的に流動性を付与することを目的として、全固化材ミルクを製造するのに必要な水の一部を吐出しながら現位置土の混合撹拌を行って、現位置土を流動化処理土とする。ここで用いる水は、先に主材料として明記した固化材ミルク用水の一部を用いるものとし、したがって原則的には材料全体の数量は変化しない。しかしながら、後工程で用いる水量(残りの水量)が固化材ミルクの水/固化材比として0.5未満にはならないようにすることが望ましい。
【0106】
全固化材ミルクを製造するのに必要な水量は、
230×50=11500リットル
であることは先に述べた。
【0107】
先の先行工程に必要な単位水量は図8より220リットル/m3とする。
【0108】
1ロット分の「ほぐし処理」に必要な単位水量は、
220×22=4840リットル
であるので、この4840リットルの水を例えば20分間で原位置土中に吐出しながら混合撹拌を行う。
【0109】
固化材ミルク用水の吐出量は、
4840/20=242リットル/分
となる。
【0110】
後工程において、残りの固化材ミルク用水量にて製造される水/固化材比を算出してみる。
【0111】
残りの固化材ミルク用水の量は、
11500−4840=6660リットル
であるので、水/固化材比は、
6660/11500≒0.58>0.5
として算出できる。
【0112】
この結果、後工程で用いる水量(残りの水量)が固化材ミルクの水/固化材比として0.5未満にはならないようにすることが望ましいとする先の要件を満たすことができる。
【0113】
上記先行工程での施工と並行して、起泡剤に水を加えた起泡材(15倍希釈液)を予め製造しておく。
【0114】
先行工程にて製造した流動化処理土の流動値はテーブルフロー値で150mmであり、図1のテーブルフロー値と軽量化損失率との相関より、造成される気泡混合軽量土の消泡による軽量化損失率は5%程度と予測される。
【0115】
したがって、先の室内配合試験にて求めた表6の配合表に基づき施工した場合には、上記消泡による軽量化損失率を考慮すると造成される気泡混合軽量土は47.5m3(50m3×0.95)程度となるものと予測される。
【0116】
ここでは、軽量化損失率として現れる消泡分を消泡相当量として、この消泡相当量を補うべく起泡材の量を補正する。すなわち、軽量化損失率5%を補うのに必要な起泡材の量を求める。
【0117】
上記軽量化損失率が5%のとき、1ロット50m3の気泡混合軽量土を造成するのに必要な割り増し分を
(50/0.95)−50=2.6≒3m3
として算出する。
【0118】
先の室内配合試験にて求めた起泡材の量(起泡剤+気泡剤希釈水)は637.5リットルであり、また消泡相当分(3m3)の気泡材の量は3000/20=150リットルであるから、消泡相当量を見込んだ上での先に述べた1ロット50m3分の気泡混合軽量土を造成するのに必要な起泡材の量を
637.5+150=787.5リットル
として求める。
【0119】
さらに、起泡材の吐出量(リットル/分)を
787.5/40=19.7≒20リットル/分
として求める。
【0120】
その結果として、全起泡材量は
20リットル/分×40分=800リットル
として算出できる。
【0121】
ここで、実際に造成される気泡混合軽量土量と軽量化損失率との関係についてみた時、現位置土量は22.03m3、先に求めた固化材ミルク量は15300リットル=15.3m3、気泡量は20倍発泡で800リットル×20=16000リットル=16.0m3であるから、軽量化損失率を零とした場合の造成される気泡混合軽量土量は
22.0+15.3+16.0=53.3m3
となる。
【0122】
その一方、先に述べた消泡による軽量化損失率5%を考慮すると、
53.3−(53.3×0.05)=50.6m3≒50m3
となって、実際に造成される気泡混合軽量土量はおよそ50m3となることが理解できる。
【0123】
ここで、上記実施例2を整理すると、次のようになる。
【0124】
(a)先行工程として、1ロット分50m3の気泡混合軽量土を造成するのに必要な現位置土22m3に対し毎分242リットルの水を吐出しながら20分間混合撹拌して流動化処理土とする。この時に使用する総水量は242リットル×20分=4840リットルとなる。
【0125】
なお、当該実施例2では、全固化材ミルクを製造するのに必要な固化材ミルク用水のうち一部の水を加えて混合撹拌することで現位置土に「ほぐし処理」を施すべく流動化処理土としているが、土質性状によっては上記一部の水のみでは所定の流動値まで流動化しないこともあり得る。その場合には、予定流動値(テーブルフロー値で150mm以上またはシリンダーフロー値で85mm以上)とするのに必要な水量にて混合撹拌するものとする。
【0126】
また、一般的には流動化処理土の流動値を下限値にて管理(テーブルフロー値で150mmまたはシリンダーフロー値で85mm)よりも、テーブルフロー値ならば例えば180〜190mm程度とした方が軽量化損失率も小さく、品質的、経済的にも有利となって望ましい。ただし、この場合には、予定の固化材ミルク用水量を上回ることになる。
【0127】
(b)固化材11500kgと残りの固化材ミルク用水6660リットル(11500−4840)とで固化材ミルクを製造する。この時の固化材ミルク量は、
(11500/3.04)+6660=10443リットル
となり、また固化材/水比は、
0.58(6660/11500)
となる。
【0128】
(c)起泡剤を水で15倍希釈した起泡材を、1ロット分として800リットル用意する。
【0129】
(d)後工程として、上記(b)の固化材ミルクと(c)の起泡材を先の流動化処理土に対して40分間吐出しながら混合撹拌する。この時、固化材ミルクは毎分261リットルを、起泡材は毎分20リットルをそれぞれ発泡筒にて圧縮空気と合流させて吐出することにより、結果として毎分400リットルのいわゆるフォーム状の気泡を製造しながら流動化処理土と混合撹拌する。
【0130】
これらの先行工程および後工程での処理を施工フロー図として表すと図9のようになる。
【0131】
また、上記発泡筒の一例を図10に示す。
【0132】
発泡筒7は同図(A)に示すように一般的には例えば直径が10cm程度の筒状のもので、内部には同図(B)に示すようにメッシュ状(メッシュの大きさは例えば0.1mm〜0.5mm程度)のいわゆる金網8を多重層になるように配置したものや、同図(C)に示すように直径5mm程度の中空円筒状の豆碍子9を密になるように詰め込んだものが使用される。要は、起泡剤を水で希釈した起泡材を圧縮空気とともに通過させることによりフォーム状の気泡と化すことができれば良い。
【実施例3】
【0133】
この実施例3では、先行工程において1ロット分の現位置土(約22m3)に「ほぐし処理」を施すべく水分を加えて混合撹拌することで流動化処理土とする点では先の実施例2と同じであるが、先行工程で使用する水分として全固化材ミルクのうちの一部のものを使用する点で実施例2と異なっている。
【0134】
先行工程での流動化処理土のテーブルフロー値が150mm以上またはシリンダーフロー値が85mm以上となるように、現位置土1m3当たりに添加する単位水量を図4から420リットル/m3として読み取る。
【0135】
現位置土1m3当たりの固化材添加量が230kgであることは先に述べたので、水/固化材比が1:1(230:230)となるように両者を混練りする。
【0136】
先行工程において1ロット分の現位置土(約220m3)に必要な水量を、上記単位水量に現位置土量を乗じて最小水量を、
420リットル×22=9240リットル
として求め、さらに残りの固化材ミルク量を総固化材ミルク量から上記水量分を減じて、
15300リットル−9240リットル=6060リットル
として求める。
【0137】
上記先行工程では、20分間で9240リットルの水を現位置土中に吐出する。その時の吐出量は、
9240リットル/20=462リットル/分
となる。
【0138】
すなわち、先行工程では最小の単位水量420リットル/m3として現位置土中に水を吐出しながら混合撹拌して流動化処理土とし、混合撹拌処理直後の流動化処理土の流動値を測定してテーブルフロー値で150mm以上であることを確認する。
【0139】
この先行工程での使用水量は先に述べたように最小の水量であるから、テーブルフロー値が150mm以下である場合には、吐出時間あるいは吐出量を適宜増加させて流動化処理土の流動値を150mm以上とすることが望ましい。また、シリンダーフロー値では85mm以上となるようにすることが望ましい。
【0140】
ここで、先行工程および後工程でそれぞれに用いる固化材ミルクの水/固化材比は共に同じとすることが望ましい。
【0141】
その一方、場合によっては、先行工程で用いる固化材ミルクの水/固化材比を100%以上(例えば150〜200%)とすることにより、流動化処理土のより望ましい流動値(予定流動値)(=テーブルフロー値にて180〜190mm)とすることが可能となる。
【0142】
上記先行工程での施工と並行して、起泡剤に水を加えた起泡材(15倍希釈液)を予め製造しておく。この時には予測される軽量化損失率は5%程度であり、必要な起泡材は先の実施例2の場合と同様となる。
【0143】
・室内配合試験で求めた気泡材の量:637.5リットル
・消泡相当分(3m3)の起泡材量:3000/20=150リットル
1ロット50m3の気泡混合軽量土を造成するのに必要な起泡材量は下記のように算出される。
【0144】
637.5+150=787.5≒788リットル
さらに、残りの固化材ミルクと起泡材で製造される混合材料とその吐出量は下記のように算出される。
【0145】
6060+788=6848リットル
6848/40=171.2≒172リットル/分
毎分172リットルの混合材料を圧縮空気とともに発泡筒を通過させて、発泡倍率20倍で毎分552リットル(=(20×20)+152)のエアミルクを製造する。
【0146】
上記エアミルクを流動化処理土中に吐出しながら、40分間混合撹拌して気泡混合軽量土を造成する。
【0147】
このように本実施例においては、いわゆる気泡化の過程は先の実施例2とは異なるものの、流動化処理土としての流動値には変化がなく、実際に造成される気泡混合軽量土は約50m3となる。
【0148】
ここで、上記実施例3を整理すると、次のようになる。
【0149】
(a)先行工程として、1ロット分50m3の気泡混合軽量土を造成するのに必要な現位置土22m3に対し毎分462リットルの固化材ミルクを吐出しながら20分間混合撹拌して流動化処理土とする。この時に使用する固化材ミルク量は462リットル×20分=9240リットルとなる。
【0150】
この実施例3では、実施例2の水を固化材ミルクに代えて流動化処理土とするところに特徴がある。この場合、実施例2と同様に土質性状によっては上記一部の固化材ミルクのみでは所定の流動値まで流動化しないこともあり得る。その場合には、予定流動値(テーブルフロー値で150mm以上)とするのに必要な固化材ミルク量または固化材ミルクの水/固化材比を大きくして混合撹拌するものとする。
【0151】
また、流動化処理土の流動値を下限値(テーブルフロー値で150mm)にて管理するよりも、テーブルフロー値ならば例えば180〜190mm程度とした方が軽量化損失率も小さく、品質的、経済的にも有利となることも実施例2と同様である。これは、水/固化材比を150〜200%程度の範囲まで水量を多くすることで可能となるものであり、この場合には当然のことながら予定の固化材ミルク用水量を上回ることになる。
【0152】
(b)残りの固化材ミルク6060リットルと起泡材788リットルで両者の混合材を準備する。
【0153】
(c)後工程として、上記(b)の混合材を毎分172リットルで圧縮空気とともに発泡筒を通過させて、エアミルクを製造するとともに、流動化処理土に対して40分間吐出しながら混合撹拌する。
【0154】
これらの先行工程および後工程での処理を施工フロー図として表すと図11のようになる。
【実施例4】
【0155】
この実施例4では、先行工程において1ロット分の現位置土(約22m3)に「ほぐし処理」を施すべく水分を加えて混合撹拌することで流動化処理土とする点では先の実施例2,3と同じであるが、先行工程で使用する水分として必要とする固化材ミルクの全量を使用する点のほか、その先行工程での混合撹拌時間を40分、後工程での混合撹拌を20分としている点で実施例2,3と異なっている。
【0156】
1ロット分の気泡混合軽量土の造成量、基本配合、時間当たり造成量等は先の実施例の場合と同様である。
【0157】
1ロット分の現位置土約22m3に固化材ミルクの全量15300リットルを加えながら40分間混合撹拌し、流動化処理土とする。その時の流動化処理土の流動値を図12のようにテーブルフロー値で約240mm前後のものとして読み取る。なお、図12は図4と同じグラフである。
【0158】
固化材ミルクの吐出量は、
15300リットル/40=382.5リットル1/分
となる。
【0159】
流動化処理土の流動値としてテーブルフロー値で240mmが得られる場合の軽量化損失率を約2%として図1から読み取る。
【0160】
そして、軽量化損失率を約2%とした場合の後工程での気泡の消泡相当量を算出する。
【0161】
軽量化損失率を2%として50m3の気泡混合軽量土を造成するのに必要な割り増し分を算出すると、
(50/0.98)−50=1.0m3
となる。
【0162】
先の室内配合試験の際に求めた起泡材量は637.5リットルであり、また消泡相当分(1.0m3)の起泡材は1000/20=50リットルとなる。
【0163】
1ロット分50m3の気泡混合軽量土を造成するのに必要な起泡材量は、
637.5+50=687.5リットル
となり、その吐出量(リットル/分)は、
637.5/20=34.4≒35リットル/分
となる。
【0164】
故に全起泡材量は、
35リットル/分×20分=700リットル
となる。
【0165】
ここで、実際に造成される気泡混合軽量土量と軽量化損失率との関係についてみた時、現位置土量は22.0m3、先に求めた固化材ミルク量は、
15300リットル=15.3m3
気泡量は20倍発泡で、
700リットル×20=14000リットル=14.0m3
であるから、軽量化損失率を零とした場合の造成される気泡混合軽量土量は、
22.0+15.3+14.0=51.3m3
となる。
【0166】
その一方、先に述べた消泡による軽量化損失率2%を考慮すると、
51.3−(51.3×0.02)=50.3m3≒50m3
となって、実際に造成される気泡混合軽量土量はおよそ50m3となることが理解できる。
【0167】
ここで、上記実施例4を整理すると、次のようになる。
【0168】
(a)先行工程では、1ロット分の気泡混合軽量土を造成するのに必要な現位置土22m3に対して、固化材ミルク(水/固化材比1:1)を毎分382.5リットル吐出すながら40分間混合撹拌して流動化処理土とする。
【0169】
この時の流動化処理土の流動値はテーブルフロー値で240mm、また図3に基づいて換算するとシリンダーフロー値で195mm程度となる。
【0170】
(b)起泡剤を水で15倍希釈した起泡材を1ロット分として700リットル用意する。
【0171】
(c)後工程では、上記(b)の起泡材を20分間吐出しながら流動化処理土と混合撹拌する。
【0172】
この時、起泡材は毎分35リットルを発泡筒にて圧縮空気と合流させて吐出することにより、毎分700リットルの気泡を製造しながら流動化処理土と20分間混合撹拌して、気泡混合軽量土を50m3造成することになる。
【0173】
これらの実施例4での先行工程および後工程での処理を施工フロー図として表すと図13のようになる。
【実施例5】
【0174】
現位置土の性状を予め高精度に把握できているかぎりにおいては、先の各実施例2〜4の施工手順でも気泡混合軽量土の品質を確保することは可能である。その一方、とりわけ現位置混合撹拌処理の場合には、混合撹拌箇所が移動するのに伴って現位置土の性状までもが変化することが往々にしてあるが、施工領域全体の土質性状を正確に把握するべく土質調査等に多くのコストと時間をかけても期待するほどの結果は得られない。何故ならば、完全なる土質性状の定量把握は相当困難を伴うだけではなく、土質性状の変化が気泡混合軽量土の品質に多かれ少なかれ影響することは当然であり、また避けがたいことでもあるからである。
【0175】
この点に、母材の調整が可能なプラント混合と当該現位置混合撹拌との違いがある。なお、ここに言う母材の調整とは、気泡混合軽量土化すべき現位置土(母材)の土質性状の試験を予め行い、母材として好ましい性状とするのに砂、粘性土または水等を添加混合して調質することを言う。
【0176】
この実施例5では、原土性状が場所によって変化していることが想定される場合に、実施例2と同様の工法を基本として施工しようとするものである。
【0177】
先行工程において混合撹拌処理した直後の流動化処理土の流動値を測定した上で、以下の手順で補正を行うものとする。
【0178】
(1)流動化処理土のテーブルフロー値が予定流動値150mmに対して0〜+5mmの場合には、原土性状の変化はないものとみなして、実施例2と同様に施工を進める。
【0179】
(2)その一方、テーブルフロー値が予定流動値150mmに対して例えば175mmであった場合には、図1から軽量化損失率を3.6%として読み取る。よって、消泡相当量として上記3.6%を安全側に4%として丸めて起泡材量を求める。
【0180】
消泡相当分の起泡材は、
{(50/0.96)−50}×1000/20=104.2リットル
となる。
【0181】
1ロット50m3の気泡混合軽量土を造成するのに必要な起泡材量は、
637.5+104.2=741.7リットル
となる。
【0182】
また、起泡材の吐出量は
741.7/40=18.5≒19リットル/分
となる。
【0183】
さらに、全起泡材量は19×40=760リットル
となる。
【0184】
上記条件にて施工を行えば、実施例2よりも少ない起泡材量にて約50m3の気泡混合軽量土が造成される。
【0185】
(3)テーブルフロー値が予定流動値150mmに対して例えば140mmであった場合には、最小の予定流動値を下回っているので、先行工程での水の吐出量を以下の手順で補正して、流動化処理土の流動値を再確認する。
【0186】
図14は図4および図12と同様にテーブルフロー値(mm)と単位水量(リットル/m3)との相関を示しており、単位水量220リットル/m3にて水を現位置土中に吐出して混合撹拌すれば、流動化処理土としての流動値はテーブルフロー値で150mmとなることがわかる。
【0187】
しかしながら、先に述べたように実測テーブルフロー値は140mmであり、それに相当する単位水量は180リットル/m3であることがわかる。
【0188】
ここで、流動化処理土の流動値をテーブルフロー値で150mm以上にするのに必要な水量を求めると、
220+(220−180)×(220/180)=268.9≒270リットル/m3
となる。
【0189】
また、1ロット分に必要な水量は、
22×270=5940リットル
となる。
【0190】
さらに、1分間当たりの吐出量は、
5940/20=297リットル/分
となる。
【0191】
そこで、吐出量297リットル/分にて水を吐出しながら現位置土を20分間混合撹拌して、テーブルフロー値が150mm以上となる流動化処理土を製造する。
【0192】
他方、残りの固化材ミルク用水の量は、
11500−5940=5560リットル
となり、
また、残りの固化材ミルク用水量にて製造される水・固化材比は、
5560リットル/11500リットル=0.48
となる。
【0193】
ここで、固化材ミルクの製造にあたりその水/固化材比は先にも述べたように0.5以上とすることが望ましく、水/固化材比を0.5とした場合には、必要とする固化材ミルク用水量は、
11500リットル×0.5=5750リットル
となる。
【0194】
この結果、先行工程の流動化処理土の製造に用いる水量と後工程にて固化材ミルクを製造するのに用いる水量との合計量と、その初期予定量との差は、
(5940+5750)−11500=190リットル
となり、わずかではあるが、初期予定した固化材ミルク用水量を上回ることとなる。
【0195】
なお、場合によっては、この時の水/固化材比を0.55〜0.6とすることもある。
【0196】
以降の後工程での処理は先の実施例2と同様である。
【0197】
(4)上記方法により、1ロットごとに目標値となるように管理するが、なおも造成される気泡混合軽量土の品質がばらつくことがある。この場合には、後工程での気泡混合軽量土の密度測定を行い、先に実施したロットの気泡混合軽量土の重量が目標値よりも大きい場合(例えば、両者の差をβとする)には、その隣りのロットでは先の増分βだけ重量が目標値よりも小さくなるように施工し、複数ロットでの重量の平均値が目標値となるように管理する。
【0198】
(5)また、1ロットごとの品質精度を高める方法として、後工程で処理した気泡混合軽量土の密度を速やかに測定し、その密度実測値に応じてエアミルク(気泡+固化材ミルク)を追加吐出して、混合撹拌処理すると良い。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】流動化処理土の流動性の指標であるテーブルフロー値と軽量化損失率との相関を示すグラフ。
【図2】流動化処理土の流動性の指標であるシリンダーフロー値と軽量化損失率との相関を示すグラフ。
【図3】流動化処理土の流動性の指標であるテーブルフロー値とシリンダーフロー値相互の相関を示すグラフ。
【図4】流動化処理土の流動性の指標であるテーブルフロー値と単位水量との相関を示すグラフ。
【図5】固化材添加量と一軸圧縮強さとの相関を示すグラフ。
【図6】気泡混合軽量土の施工例を示す断面説明図。
【図7】気泡混合軽量土の施工例を示すより詳細な断面説明図。
【図8】流動化処理土の流動性の指標であるテーブルフロー値と単位水量との相関を示すグラフ。
【図9】実施例2に係る施工例において先行工程および後工程の詳細を示す施工フロー図。
【図10】発泡筒の一例を示す図で、(A)はその側面説明図、(B)および(C)は同図(A)のa−a線に沿う拡大断面図。
【図11】実施例3に係る施工例において先行工程および後工程の詳細を示す施工フロー図。
【図12】流動化処理土の流動性の指標であるテーブルフロー値と単位水量との相関を示すグラフ。
【図13】実施例4に係る施工例において先行工程および後工程の詳細を示す施工フロー図。
【図14】流動化処理土の流動性の指標であるテーブルフロー値と単位水量との相関を示すグラフ。
【符号の説明】
【0200】
1…軟弱地盤
2…盛土体(気泡混合軽量土)
4…バックホウ(作業系建設機械)
6…混合攪拌機
7…発泡筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤系、タンパク質系、樹脂石鹸系のうちの少なくともいずれかの起泡剤を用いて製造される気泡と現位置土および固化材ミルクを相互に混合撹拌して気泡混合軽量土を造成する方法であって、
現位置土中に水または固化材ミルクを吐出して混合撹拌することにより流動化処理土を造成する先行工程と、
上記流動化処理土中に固化材ミルクと気泡または気泡を単独で吐出して混合撹拌する後工程と、
を含んでいて、
上記先行工程で造成される流動化処理土の流動値をテーブルフロー値で150mm以上またはシリンダーフロー値にて85mm以上となるように管理することを特徴とする気泡混合軽量土の造成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の後工程に代えて、上記流動化処理土中にエアミルクを吐出して混合撹拌する後工程を含んでいて、
上記エアミルクは、固化材ミルクと起泡材とを混合した混合材を圧縮空気とともに発泡筒を通過させて製造することを特徴とする気泡混合軽量土の造成方法。
【請求項3】
予め定められた所定量の気泡混合軽量土を造成するにあたり、
その所定量の気泡混合軽量土に必要な固化材ミルクの全量と、その固化材ミルクの全量を製造するのに必要な全水量をそれぞれに予め定めておき、
先行工程では上記全水量のうちの一部の水を現位置土中に吐出して混合撹拌することにより流動化処理土を造成することを特徴とする請求項1または2に記載の気泡混合軽量土の造成方法。
【請求項4】
予め定められた所定量の気泡混合軽量土を造成するにあたり、
その所定量の気泡混合軽量土に必要な固化材ミルクの全量を予め定めておき、
先行工程では上記固化材ミルクの全量のうちの一部の固化材ミルクを現位置土中に吐出して混合撹拌することにより流動化処理土を造成することを特徴とする請求項1または2に記載の気泡混合軽量土の造成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の先行工程に代えて、上記固化材ミルクの全量を現位置土中に吐出して混合撹拌することにより流動化処理土を造成する先行工程を含んでいることを特徴とする気泡混合軽量土の造成方法。
【請求項6】
上記後工程では、当該後工程での混合撹拌時に生じる気泡の消泡を考慮して、その消泡相当量を増量させた起泡剤または起泡材を圧縮空気とともに発泡筒を通過させることで気泡を製造し、該気泡と固化材ミルクまたは気泡を単独で流動化処理土中に吐出して混合撹拌することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の気泡混合軽量土の造成方法。
【請求項7】
上記後工程にて気泡の消泡相当量を増量させるにあたり、
上記流動化処理土の流動値と気泡の消泡度合いまたは軽量化損失度合いとの相関を予め定めておき、
この相関から得られた値に基づいて消泡相当量の起泡剤または起泡材の量を求め、
これを上記後工程での消泡相当量として増量させることを特徴とする請求項6に記載の気泡混合軽量土の造成方法。
【請求項8】
上記先行工程および後工程において、作業系建設機械をベースマシンとする混合攪拌機にて混合撹拌処理を施すことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の気泡混合軽量土の造成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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