説明

気泡発生方法、気泡発生装置、及びオゾン水生成方法

【課題】低濃度の薬剤を用いて効率良く微細な気泡を水性液体流中に分散させて発生させることを可能とする。
【解決手段】水性液体流中に気体を導入し、導入された気体を微細な気泡として水性液体流中に分散させて発生させる気泡発生方法であって、水性液体流中に気体を導入する手前で、水性液体流中に微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入し、なお且つ、この薬剤が水性液体流中に均一に溶解する前に、水性液体流中に気体を導入して気泡を発生させるように、この気体発生部よりも上流側の薬剤投入部から水性液体流中に、少なくとも水/オクタノール分配係数LogPが0以上、2.3以下である有機化合物を含む薬剤を投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な気泡を水性液体流中に分散させて発生させる気泡発生方法及び気泡発生装置、並びにそのような気泡発生方法又は気泡発生装置を用いてオゾン水を生成するオゾン水生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水などの水性液体流中で気泡を発生させる方法としては、ノズルや多孔板などの微小孔から気体を水性液体流中に噴出させる方法や、液体表面の気体を噴流で巻き込む或いは高速液流中に気体を吹き出むなどの剪断力を利用した方法等がある。また、このような機械的な気泡発生方法以外にも、化学的な気泡発生方法として、界面活性剤などを用いる方法もある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、水槽内に気泡水流を噴出する気泡水流発生装置において、界面活性剤及び消泡剤を用いて微細気泡を得ると共に、発生後の気泡を消滅させ易くする技術が開示されている。
【0004】
一方、下記特許文献2には、気泡発生槽と、該槽内に入れられた水と、該水中に気泡を発生させるための気泡発生手段とからなる気泡発生装置及びその気泡発生方法として、特定の有機カルボン酸を含む水を使用することによって、より微小な気泡を得ることができ、液面に浮上した気泡がすぐ消えるようにする技術が開示されている。
【0005】
一方、下記特許文献3には、界面活性剤の作用により生成した多数の微小気泡の合体を抑制しながら該微小気泡を放出させる技術が開示されている。
【0006】
ところで、このような気泡発生方法は、例えば水にオゾンを溶解、分散させたオゾン水を生成する場合に適用されている。この場合、オゾンは水に溶解しにくいといった特性を有するため、オゾンガスをより微細な気泡として水中に分散させることで、より多くのオゾンを水に溶解させることが可能となる。すなわち、オゾン水を生成する場合には、水にオゾンガスを導入し、このオゾンガスによる微細な気泡を水中に分散させて発生させることが好ましい。
【0007】
このため、水に微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入することも行われている。例えば下記特許文献4には、槽に薬剤を溶解した水をはり、散気管を用いてオゾンガスの気泡を吹き込みながらオゾン水を生成することが開示されている。
【0008】
しかしながら、従来の方法では、薬剤の添加量を増やさないと気泡の微細化が促進されなかったり、薬剤がオゾンと反応してオゾンが無駄に使われたりすることがあり、その分だけ薬剤の濃度を高める必要があるなど、低濃度の薬剤を用いて効率良く微細な気泡を液体中に分散させて発生させることについては特に考慮されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−279163号公報
【特許文献2】特開2004−283683号公報
【特許文献3】特開2003−230824号公報
【特許文献4】国際公開第07/040260号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、低濃度の薬剤を用いて効率良く微細な気泡を水性液体流中に分散させて発生させることを可能とした気泡発生方法及び気泡発生装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、そのような気泡発生方法又は気泡発生装置を用いて、オゾン水を効率良く生成することを可能としたオゾン水生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、水性液体流中に気体を導入し、導入された気体を微細な気泡として水性液体流中に分散させて発生させる気泡発生方法であって、水性液体流中に気体を導入する手前で、水性液体流中に微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入し、なお且つ、この薬剤が水性液体流中に均一に溶解する前に、水性液体流中に気体を導入して気泡を発生させるように、この気体発生部よりも上流側の薬剤投入部から水性液体流中に、少なくとも水/オクタノール分配係数LogPが0以上、2.3以下である有機化合物を含む薬剤を投入することを特徴とする気泡発生方法である。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、水性液体流のレイノルズ数が3000以上、200000未満であり、薬剤投入部から水性液体流中に投入された薬剤が気泡発生部に到達するまでの滞留時間を1秒以下とすることを特徴とする請求項1に記載の気泡発生方法である。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、水性液体として、水を導入し、気体として、オゾン、窒素、酸素、空気のうち何れかを含むガスを導入することを特徴とする請求項1又は2に記載の気泡発生方法である。
【0014】
また、請求項4にかかる発明は、薬剤を水溶液の状態で水性流体流中に投入することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の気泡発生方法である。
【0015】
また、請求項5に係る発明は、薬剤が、トリアセチン、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタート、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロパノール、ブタノール、ペンタノールの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の気泡発生方法である。
【0016】
また、請求項6に係る発明は、薬剤が、トリアセチン、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタートの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の気泡発生方法である。
【0017】
また、請求項7に係る発明は、水性液体流中に投入するときの水溶液中に含まれる薬剤の濃度を、気泡が発生した水性液体中に含まれる薬剤の濃度に対して、質量比で100倍以上、10000倍以下とすることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の気泡発生方法である。
【0018】
また、請求項8に係る発明は、水性液体流に気体を導入し、導入された気体を微細な気泡として液体中に分散させて発生させる気泡発生装置であって、水性液体を導入する液体導入路と、気体を導入する気体導入路と、水性液体流中に気体を導入して気泡を発生させる気泡発生部と、気泡を含む水性液体を排出する気液排出路と、微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入する薬剤投入部とを備え、薬剤投入部が、気泡発生部よりも上流側の液体導入路に接続され、薬剤が、少なくとも水/オクタノール分配係数LogPが0以上、2.3以下である有機化合物を含むことを特徴とする気泡発生装置である。
【0019】
また、請求項9に係る発明は、気泡発生部が、エジェクタ、散気管、機械剪断の何れかの手段を用いて気泡を発生させることを特徴とする請求項8に記載の気泡発生装置である。
【0020】
また、請求項10に係る発明は、液体導入路内のレイノルズ数が3000以上、200000未満であり、薬剤投入部から水性液体流中に投入された薬剤が気泡発生部に到達するまでの滞留時間が1秒以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載の気泡発生装置である。
【0021】
また、請求項11に係る発明は、水にオゾンガスを導入し、水にオゾンを溶解、分散させたオゾン水を生成するオゾン水生成方法であって、請求項1〜10の何れか一項に記載の気泡発生方法又は気泡発生装置を用いて、オゾン水を生成することを特徴とするオゾン水生成方法である。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明では、水性液体流中に気体を導入する手前で、水性液体流中に微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入し、なお且つ、この薬剤が水性液体流中に均一に溶解する前に、水性液体流中に気体を導入して気泡を発生させるようにすることで、従来よりも低濃度の薬剤を用いて効率良く微細な気泡を液体中に分散させて発生させることが可能である。したがって、本発明を用いて、オゾンガスをより微細な気泡として水中に分散させることで、水にオゾンを溶解、分散させたオゾン水を効率良く生成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明を適用したオゾン水生成装置の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、気泡発生部の構成を示し、(a)はエジェクタ、(b)は散気管、(c)は機械剪断を用いた場合を示す模式図である。
【図3】図3は、オゾン発生器の具体例を示すブロック図である。
【図4】図4は、薬剤投入部の具体例を示すブロック図である。
【図5】図5は、第1の実施例で用いた実験装置を示す模式図である。
【図6】図6は、図5中のAの位置から薬剤を投入した場合の水槽内を撮影した写真である。
【図7】図7は、図5中のBの位置から薬剤を投入した場合の水槽内を撮影した写真である。
【図8】図8は、第3の実施例で用いた実験装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、本実施形態では、本発明による気泡発生方法又は気泡発生装置をオゾン水の生成に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0025】
先ず、本発明を適用した気泡発生方法について説明する。
本発明を適用した気泡発生方法は、液体に気体を導入し、水性液体流中に気体を導入し、導入された気体を微細な気泡として水性液体流中に分散させて発生させる気泡発生方法であって、水性液体流中に気体を導入する手前で、水性液体流中に微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入し、なお且つ、この薬剤が水性液体流中に均一に溶解する前に、水性液体流中に気体を導入して気泡を発生させるように、この気体発生部よりも上流側の薬剤投入部から水性液体流中に、少なくとも水/オクタノール分配係数LogPが0以上、2.3以下である有機化合物を含む薬剤を投入することを特徴とする。
【0026】
ここで、本発明で使用される水性液体としては、水を主成分とする液体であれば特に制限されないものの、水を95質量%以上含むものが好ましく、水を99.5質量%以上含むものがより好ましく、水であることが更に好ましい。水としては、例えば水道水や、イオン交換水、海水、超純水などを挙げることができる。
【0027】
また、水性液体としては、上述した水の他にも、本発明の効果を奏する範囲で、例えば、エタノール、グリセリン、糖類、塩類、ポリエチレングリコールなどの水/オクタノール分配係数LogPが0未満の化合物を含むものを用いることができる。
【0028】
気泡の分散を補助する薬剤としては、少なくとも水/オクタノール分配係数LogPが0以上、2.3以下である有機化合物を含むものを用いることが好ましい。また、より優れた気泡の分散効果を得るためには、水への溶解度が低い薬剤を用いることが好ましく、具体的にはLogPが0.2以上の薬剤を用いることがより好ましい。一方、気泡分散効果を発揮するためには、適度な水溶性が必要である。また、薬剤を水溶液として使用する場合には、この水溶液から有機化合物が分離せず、より高い濃度の水溶液を維持するため、LogPが1.9未満の薬剤を用いることがより好ましい。
【0029】
また、水溶性液体には、濡れ性向上のため泡沫が安定化しないほど少量の界面活性剤を添加してもよい。この界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルコールエトキシレート、脂肪酸及びその塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などを挙げることができる。その中でも特に、炭素数10以下のアルキル鎖を持つものは、泡沫としての安定性が低いため好適に用いることができ、例えばモノカプリリンの添加は、濡れ性の向上に非常に有効である。
【0030】
具体的に使用する薬剤としては、例えば、トリアセチン、モノブチリン、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタート、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチル、酢酸3−メチルブチルなどのエステル基を持つもの、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、2−フェノキシエタノールなどの水酸基を持つもの、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのカルボニル基をもつもの、酢酸1−エトキシ−2−プロパノール、酢酸2−(2−n−ブトキシエトキシ)エチル、ブチルカルビトール、ブチルセルソルブ、セロソルブアセテートなどのエーテル基を持つものが優れている。また、オゾンとの反応性が低いことから、例えば、トリアセチン、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタート、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチルなどエステル類が優れている。さらに、揮発性の少ないエステル基を2つ以上もつトリアセチンや、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタートなどが好ましく、その中でも揮発性が非常に低いトリアセチン(沸点259℃)が最も好ましい。これらの薬剤は、原液又は水溶液の状態で用いることができるが、より少量の薬剤を定量的に投入し易い点では、水溶液として使用することが好ましい。
【0031】
なお、水/オクタノール分配係数LogPについては、いくつかの算出方法が知られているが、本発明では、LogPとして計算機によるシミュレーションより算出した値を使用した。具体的には、Advanced Chemistry Development(ACD/Labs)社製のLogP予測ソフトウェアACD/LogP DBを使用し、化学構造式からLogP(水/オクタノール系分配係数)を算出した値を使用した。
【0032】
上述した本発明による気泡発生方法をオゾン水の生成に適用する場合には、水流中にオゾンガスを導入する手前で、水流中に微細な気泡の分散を補助する上記薬剤を投入し、なお且つ、この薬剤が水流中に均一に溶解する前に、水流中にオゾンガスを導入して気泡を発生させるようにする。
【0033】
ここで、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、以下の(1)〜(3)の知見を得ると共に、同じ薬剤濃度であっても薬剤を投入する位置によって、気泡の微細化状態が大きく変化することを見出した。
【0034】
(1) 水にオゾンガスを導入するアスピレータ(エジェクタ)に近い位置に薬剤を投入したときに気泡の微細化が起こり、遠い位置に薬剤を投入したときには気泡の微細化が起こらなかった。
(2) 薬剤を水溶液として投入し、気泡の微細化が起きなかったアスピレータから遠い位置であっても、薬剤を原液(高濃度)で導入した場合は、気泡の微細化が起きた。
(3) 槽に薬剤を溶解した水をはり、散気管を用いてオゾンガスの気泡を吹き込みながらオゾン水を生成する方法(A方法)に比べて、オゾンガスをアスピレータで連続的に水流の中に吹き込んでオゾン水を生成する方法(B方法)では、より低濃度の薬剤で気泡の微細化を行うことができた。
【0035】
上記(1)〜(3)の知見から、理由は定かではないものの、配管中の水流に添加した薬剤の水溶液が完全に混合され希釈される前に気体を導入したときに気泡の微細化が起こるものと考えられる。また、薬剤を原液の状態で用いた場合は、アスピレータからより離れた位置から投入しても気泡の微細化が起こることが確認されている。これは、薬剤の溶解速度が遅いため、アスピレータに導入され時点で薬剤が溶けきらなかったためと考えられる。
【0036】
以上のことから、低濃度の薬剤を用いて効率良く微細な気泡を水性液体流中に分散させて発生させるためには、薬剤が水性液体流中に均一に溶解する前に当該水性液体流中に気体を導入することが重要であることが明らかとなった。
【0037】
そこで、本発明を適用した気泡発生方法では、水性液体流中に気体を導入する手前で、水性液体流中に微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入し、この薬剤が水性液体流中に均一に溶解する前に、水性液体流中に気体が導入されるように、例えば薬剤を投入する際の濃度やアスピレータに導入されるまでの距離を調整する。
【0038】
具体的には、水性液体流中に投入するときの薬剤水溶液中に含まれる薬剤の濃度を、気泡が発生した水性液体中に含まれる薬剤の濃度に対して、質量比で100倍以上、10000倍以下とすることが好ましい。薬剤水溶液中に含まれる薬剤の濃度が100倍未満であると、気体と接触する前に薬剤が均一に溶解されやすくなり効果が著しく減少する。一方、薬剤水溶液中に含まれる薬剤の濃度が10000倍超であると、投入する量が極めて少なくなり、水性流体流中に一定量だけ供給するための制御が難しくなることがある。したがって、上記数値範囲であれば、薬剤を投入することによる気泡の微細化効果を安定して得ることができる。
【0039】
以上のように、本発明を適用した気泡発生方法では、水性液体流中に気体を導入する手前で、水性液体流中に微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入し、なお且つ、この薬剤が水性液体流中に均一に溶解する前に、水性液体流中に気体を導入して気泡を発生させるようにすることで、従来よりも低濃度の薬剤を用いて効率良く微細な気泡を液体中に分散させて発生させることが可能である。
【0040】
次に、本発明を適用した気泡発生装置について説明する。
本発明を適用した気泡発生装置は、例えば図1に示すようなオゾン水生成装置10に適用したものであり、このオゾン水生成装置10は、水を導入する液体導入路11と、オゾンを含む空気(以下、オゾンガスという。)を導入する気体導入路12と、水にオゾンガスを導入して気泡を発生させる気泡発生部13と、気泡を含むオゾン水を排出する気液排出路14と、微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入する薬剤投入部15とを備えている。
【0041】
液体導入路11は、水を気泡発生部13に導く配管であり、図示を省略するホースを介して例えば水道水の蛇口と接続されている。また、液体導入路11には、減圧バルブ16が設けられており、供給される水の圧力を所定範囲(例えば0.15〜0.3MPa)で調整することが可能となっている。
【0042】
気体導入路12は、オゾンガスを気泡発生部13に導く配管であり、エアーポンプ17を介して外部から空気を吸引する。また、気体導入路12のエアーポンプ17と気泡発生部13との間には、オゾンを発生させるオゾン発生器18が接続されている。これにより、オゾン発生器18から気体導入路12を通して気泡発生部13にオゾンを供給することが可能となっている。
【0043】
ここで、オゾンの生成方法としては、例えば、紫外線を用いる方法や、水の電気分解による方法、放電による方法などがある。その中でも、メンテナンス性が良く、オゾン濃度のコントロール範囲が広い放電による方法を用いることが好ましい。また、放電によりオゾンを生成する場合は、原料ガスの露点が低い方がオゾンの発生に好ましく、更に酸素濃度が高い方が好ましいことが知られている。
【0044】
具体的に、オゾン発生器18としては、例えば図3(a)〜(e)に示すような構成を挙げることができる。なお、図3(a)〜(e)中に示すオゾン発生器18の各部の構成については、図3中の(1)〜(7)に示すとおりである。すなわち、オゾン発生器18としては、例えば、酸素ボンベや空気ボンベを用いて加圧空気や加圧酸素を導入する方式や、コンプレッサーやポンプで空気を圧送する方式、酸素濃縮器(PSA)のように酸素を濃縮してオゾンの発生効率を向上させる方式、シリカゲルやゼオライトなどの吸着剤で除湿する方式、水蒸気の透過膜を利用した膜式のエアドライヤなどを用いる方式などがあり、これらの方式を適宜組み合わせたものを用いることができる。
【0045】
また、オゾン濃度が高い場合は、空気や酸素、窒素、二酸化炭素等のオゾンに対して不活性なガスを用いて希釈する方法や、放電部の電圧や放電回数を制御しながらオゾンの発生量を抑える方法などがある。また、希釈するガスとしては、露点が低い方がオゾンの安定性から好ましい。
【0046】
気泡発生部13は、T字管により構成されており、このT字管の流入口に液体導入路11、流出口に気液排出路14、吸込口に気体導入路12がそれぞれ接続されている。また、この気泡発生部13は、水にオゾンガスを導入し、導入されたオゾンガスを微細な気泡として水中に分散させるため、例えば図2(a)に示すようなアスピレータ(エジェクタ)13Aにより構成されている。すなわち、このアスピレータ13Aは、上述したT字管に絞り部13aを設けた構成であり、オゾンガスを含む水が流れる方向に圧力差を生じさせ、そのとき発生する衝撃波によって多数の微小気泡を発生させることが可能となっている。
【0047】
また、気泡発生部13は、このようなアスピレータ13Aの構成に必ずしも限定されるものではなく、例えば図2(b)に示すようなT字管内に微小気泡を発生させる散気管13Bを配置した構成や、図2(c)に示すようなT字管内にプロペラ13Cを配置して、このプロペラ13Cの回転による機械剪断によって微小気泡を発生させる構成とすることも可能である。
【0048】
薬剤投入部15は、気泡発生部13よりも上流側の液体導入路11に接続されて、この液体導入路11を流れる水中に薬剤を含む水溶液(又は原液)を導入する。具体的に、この薬剤投入部15としては、図4(a)に示すように、例えばチューブポンプなどのポンプ19を液体導入路11中に配置されたT字管(チーズ)20に接続し、このT字管20を介してポンプ19で圧送された薬剤を液体導入路11を流れる水中に導入する構成とすることができる。また、薬剤投入部15としては、図4(b)に示すように、液体導入路11中にアスピレータ(エジェクタ)21を配置し、このアスピレータ21を介して液体導入路11を流れる水中に薬剤を導入する構成とすることもできる。さらに、薬剤投入部15としては、図4(c)に示すように、液体導入路11から分岐された分岐路11aを設け、この分岐路11aに上記図4(a)に示す構成(又は上記図4(b)に示す構成であってもよい。)を配置し、この分岐路11aを流れる水中に薬剤を導入する構成としてもよい。
【0049】
このオゾン水生成装置10では、オゾンガスを微細な気泡として水中に分散させることで、オゾンを水に溶解、分散させたオゾン水を生成することができる。そして、このオゾン水は気液排出路14を介して外部へと排出されることになる。なお、上記図4(c)に示す構成の場合、オゾン水は、気液排出路14からバルブ22を介して水量が調整された液体導入路11に導入されることになる。
【0050】
ところで、本発明を適用したオゾン水生成装置10では、図1に示すように、気泡発生部13よりも上流側の液体導入路11に薬剤投入部15が接続された構成となっている。すなわち、このオゾン水生成装置10では、水流中にオゾンガスを導入する手前で薬剤を投入して、この薬剤が水流中に均一に溶解する前に気泡発生部13に導入されるようになっている。
【0051】
これにより、従来よりも低濃度の薬剤を用いて効率良くオゾンガスによる微細な気泡を水中に分散させて発生させることが可能である。そして、このオゾン水生成装置10では、オゾンガスをより微細な気泡として水中に分散させることで、より多くのオゾンを水に溶解させることが可能となっている。
【0052】
ここで、薬剤投入部15から投入された薬剤が液体導入路11内で均一分散されるまでの滞留時間には、投入する薬剤の水への溶解性、具体的には水/オクタノール分配係数LogPや、水溶液で投入する場合の薬剤濃度などにもよるため、本発明の効果を得るためには、使用する薬剤や薬剤濃度に応じて、投入位置や条件などを適宜選択することが可能である。
【0053】
具体的に、このオゾン水生成装置10において、本発明の気泡分散効果を安定して得るためには、液体導入路11内のレイノルズ数が3000未満の層流域では、薬剤投入部15から液体導入路11内の水流中に投入された薬剤が気泡発生部13に到達するまでの滞留時間を1秒以下とすることが好ましい。また、液体導入路11内のレイノルズ数が3000以上の乱流域では、投入された薬剤の均一分散が起こり易くなる。この場合、より安定して本発明の気泡分散効果を得るためには、上記滞留時間を0.15秒以下とすることが好ましく、0.1秒以下とすることがより好ましい。一方、液体導入路11内のレイノルズ数を200000以上とすることは、投入した薬剤の均一分散が極めて起こり易くなり、本発明の効果が得られ難くなるため、好ましくない。
【0054】
以上のように、本発明を適用したオゾン水生成装置10では、オゾンガスをより微細な気泡として水中に分散させることが可能なことから、水にオゾンを溶解、分散させたオゾン水を効率良く生成することが可能である。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明は、上述したオゾン水を生成する場合に限らず、例えば、窒素、酸素、空気などの気体を微細な気泡として液体中に分散させて発生させる場合にも適用可能である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0057】
(第1の実施例)
第1の実施例では、例えば図5に示すような実験装置を用いて、薬剤を投入する位置によって、水にオゾンガスを導入した際の気泡の発生状態について測定した。
【0058】
具体的に、この実験装置では、エジェクタ(アズワン社製、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製アスピレータ)31の流入口に内径6mmの配管32を接続し、この配管32を通して渦巻きポンプ(エレポン化工社製、SL−5SN)33により水を3L/minで導入した。また、エジェクタ31の吸込口に内径4mmの配管34を接続し、この配管34を通してエアーポンプ(水作社製、SSPP−2S)35によりオゾン含有空気(オゾンガス)を100ml/minで導入した。また、エジェクタ31の流出口に内径6mmの配管36の一端を接続し、他端を水をはった水槽(3Lアクリル水槽)37内に配置した。そして、水槽37内の水は配管38を通して外部へと排出される。
【0059】
薬剤の投入位置は、エジェクタ31の手前5cm(渦巻きポンプ33から10cm)の位置(A)と、渦巻きポンプ33の手前20cmの位置(B)とした。薬剤には、6重量%のトリアセチン水溶液を用いた。この薬剤を定量送液ポンプ(東京理化器社製、マイクロチューブポンプMP−3)に接続された内径1mmの配管を通して各位置から1mL/minで導入した。
【0060】
そして、図5中に示すAの位置から薬剤を投入したときの水槽37内を撮影した写真を図6に示す。
【0061】
図6に示すように、Aの位置から薬剤を投入した場合には、微細な気泡が水中に分散して発生していることがわかる。また、Aの位置から薬剤を投入した場合は、薬剤の濃度が10〜100ppm程度で微細な気泡が水中に分散して発生することがわかった(目視観察による)。なお、Aの位置でのRe数は、約10000、エジェクタ31までの滞留時間は、約0.028秒であった。
【0062】
一方、図5中に示すBの位置から薬剤を投入したときの水槽27内を撮影した写真を図7に示す。
【0063】
図7に示すように、Bの位置から薬剤を投入した場合には、気泡が粗く気泡の分散も小さいことがわかる。また、Bの位置から薬剤を投入した場合は、微細な気泡を水中に分散させて発生させるのに、薬剤の濃度が50〜5000ppm程度必要であることがわかった(目視観察による)。なお、Bの位置でのRe数は、約10000、エジェクタ31までの滞留時間は、約0.20秒であった。
【0064】
(第2の実施例)
第2の実施例では、水/オクタノール分配係数LogPが異なる実施例1〜19及び比較例1〜14の各種薬剤の0.5重量%水溶液を使用して、上記第1の実施例と同様の試験を行い、「泡の細かさ」及び「濃縮液の分離」の評価を行った。その評価結果を表1及び表2に示す。
【0065】
なお、表1及び表2中において、「泡の細かさ」は、目視観察により、微細化が確認されたものを○、その他を×とした。一方、「濃縮液の分離」は、25℃で0.5重量%水溶液を調整した際に、均一透明に溶解した場合を○とし、白濁した場合を△、すぐに分離した場合を×とした。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
表1及び表2に示すように、水/オクタノール分配係数LogPが本発明の数値範囲(0≦LogP≦2.3)内にある実施例1〜19では、本発明の数値範囲外である比較例1〜14に比べて、何れも良好な結果を示していることがわかる。なお、実施例14,15については、白濁が見られたものの、泡を細かくすることについては良好な結果を示していることから、オゾンガスをより微細な気泡として水中に分散させることが可能である。
【0069】
(第3の実施例)
第3の実施例では、例えば図8に示すような実験装置を用いて、上記図7に示す実験装置よりもスケールを拡大した場合の気泡の発生状態及びオゾン濃度について測定した。
【0070】
具体的に、この実験装置では、マグネットポンプ(日機装エイコー社製、CP−70)41の流入口に内径28mmの配管42の一端を接続する共に、流出口に内径28mmの配管43の一端を接続し、これら配管42,43の他端を水をはった水槽(160Lポリプロピレン水槽)44内に配置する。そして、これらの配管42,43を通して水槽44内の水をマグネットポンプ41により100L/minで循環させた。また、エジェクタ(IBS社製、ポリフッ化ビニリデン製エジェクタ)45の流入口に内径20mmの配管46の一端を接続すると共に、流出口に内径6mmの配管47の一端を接続し、これら配管46,47の他端を配管43に接続することで、これらの配管46,47を通して配管43から分岐された水をエジェクタ45に30L/minで導入した。さらに、エジェクタ45の吸込口に内径6mmの配管48を接続し、この配管48を通してオゾン発生器49から供給されるオゾン含有空気(オゾンガス)をエジェクタ45に3L/minで導入した。
【0071】
薬剤の投入位置は、エジェクタ45の手前15cm(マグネットポンプ41から30cm)の位置(A)と、マグネットポンプ41の手前30cmの位置(B)とした。薬剤には、5重量%のトリアセチン水溶液を用いた。この薬剤を定量送液ポンプ(東京理化器社製、マイクロチューブポンプMP−3)に接続された内径3.7mmの配管を通して各位置から16mL/minで導入した。さらに、最初に薬剤160mLを水槽44に均一に溶解した場合も実験した(位置(C)とする)。なお、このCの位置では、A,Bの位置において開始後10分に相当する量の薬剤を投入した。
【0072】
そして、これら図8中に示すA,B,Cの位置から薬剤を投入したときの「泡の細かさ」及び「オゾン濃度」についての評価を行った。その評価結果を表3に示す。
【0073】
なお、表3中における「泡の細かさ」については、第2の実施例の場合と同様の評価方法を用いた。一方、「オゾン濃度」については、ヤマト科学社製の送液ポンプ7520−40を用いて水槽44内の水を1L/minで循環させながら、荏原実業製の溶存オゾンモニタELP−100を用いて水に溶存するオゾンの濃度を測定した。なお、このとき測定した溶存オゾン濃度は、運転から5分後の値である。また、オゾン発生器49から供給されるオゾン含有ガス中のオゾン濃度については、荏原実業株式会社製のEG−600を用いて0.5体積%で一定となるように調整した、一方、オゾン含有ガスの流量については、コフロック社製のMODEL5100マスフローコントローラを用いて3L/minで一定となるように調整した。
【0074】
【表3】

【0075】
表3に示すように、B,Cの位置から薬剤を投入した場合は、気泡が微細化せず、Aの位置から薬剤を投入した場合は、投入後直ぐに気泡が微細化した。なお、Aの位置でのRe数は、約30000、エジェクタ45までの滞留時間は、約0.09秒であった。
【符号の説明】
【0076】
10…オゾン水生成装置(気泡発生装置) 11…液体導入路 12…気体導入路 13…気泡発生部 14…気液排出路 15…薬剤投入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性液体流中に気体を導入し、導入された気体を微細な気泡として前記水性液体流中に分散させて発生させる気泡発生方法であって、
前記水性液体流中に気体を導入する手前で、前記水性液体流中に微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入し、なお且つ、この薬剤が前記水性液体流中に均一に溶解する前に、前記水性液体流中に前記気体を導入して前記気泡を発生させるように、この気体発生部よりも上流側の薬剤投入部から前記水性液体流中に、少なくとも水/オクタノール分配係数LogPが0以上、2.3以下である有機化合物を含む薬剤を投入することを特徴とする気泡発生方法。
【請求項2】
前記水性液体流のレイノルズ数が3000以上、200000未満であり、前記薬剤投入部から前記水性液体流中に投入された薬剤が前記気泡発生部に到達するまでの滞留時間を1秒以下とすることを特徴とする請求項1に記載の気泡発生方法。
【請求項3】
前記水性液体として、水を導入し、
前記気体として、オゾン、窒素、酸素、空気のうち何れかを含むガスを導入することを特徴とする請求項1又は2に記載の気泡発生方法。
【請求項4】
前記薬剤を水溶液の状態で前記水性流体流中に投入することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の気泡発生方法。
【請求項5】
前記薬剤が、トリアセチン、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタート、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロパノール、ブタノール、ペンタノールの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の気泡発生方法。
【請求項6】
前記薬剤が、トリアセチン、ジアセトキシプロパン、ブタンジオールジアセタート、ペンタンジオールジアセタートの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の気泡発生方法。
【請求項7】
前記水性液体流中に投入するときの前記水溶液中に含まれる薬剤の濃度を、前記気泡が発生した水性液体中に含まれる薬剤の濃度に対して、質量比で100倍以上、10000倍以下とすることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の気泡発生方法。
【請求項8】
水性液体流に気体を導入し、導入された気体を微細な気泡として液体中に分散させて発生させる気泡発生装置であって、
前記水性液体を導入する液体導入路と、
前記気体を導入する気体導入路と、
前記水性液体流中に前記気体を導入して前記気泡を発生させる気泡発生部と、
前記気泡を含む水性液体を排出する気液排出路と、
前記微細な気泡の分散を補助する薬剤を投入する薬剤投入部とを備え、
前記薬剤投入部が、前記気泡発生部よりも上流側の液体導入路に接続され、
前記薬剤が、少なくとも水/オクタノール分配係数LogPが0以上、2.3以下である有機化合物を含むことを特徴とする気泡発生装置。
【請求項9】
前記気泡発生部が、エジェクタ、散気管、機械剪断の何れかの手段を用いて気泡を発生させることを特徴とする請求項8に記載の気泡発生装置。
【請求項10】
前記液体導入路内のレイノルズ数が3000以上、200000未満であり、前記薬剤投入部から前記水性液体流中に投入された薬剤が前記気泡発生部に到達するまでの滞留時間が1秒以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載の気泡発生装置。
【請求項11】
水にオゾンガスを導入し、水にオゾンを溶解、分散させたオゾン水を生成するオゾン水生成方法であって、
請求項1〜10の何れか一項に記載の気泡発生方法又は気泡発生装置を用いて、オゾン水を生成することを特徴とするオゾン水生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−158672(P2010−158672A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279541(P2009−279541)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】