説明

気泡発生装置

【課題】 空気取り入れ部に対しフィルタ部材を設置した場合に、フィルタ部材に目詰まりが発生したとしても、その目詰まりを自動的に除去し得る気泡発生装置を提供する。
【解決手段】 循環アダプタの旋回室に臨ませた先端ノズルに連通して、旋回室の内圧変動が作用する通路531において、瞬間的・急激な内圧上昇が作用するとピストン部材56が付勢部材57に抗して透過壁体54の側に前進する。透過壁体54は背後からの空気の排気流を受けて表面に付着していたゴミを大気側に放出する。旋回室から負圧が作用すると、ピストン部材56は復元して逆止弁部55が撓むことにより開いて、透過壁体54を透過した空気を先端ノズルに対し取り入れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に設けられて浴槽内の浴槽水中に微小な気泡を吐出させる気泡発生装置に関し、特にフィルタ部材の目詰まりを自動的に除去し得るようにして、メンテナンス作業の省力化を図ると共に長期の継続使用に耐え得るようにする技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽内から浴槽水を取り出した後に再び浴槽内に戻すという循環作動をさせ、その循環水を浴槽内に戻す際の吐出流に基づく負圧を利用して空気を循環水中に取り込み、これにより、気泡が混合された状態にして浴槽内に吐出させるという気泡発生装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、湯水の循環路の吐出口近傍に空気取り入れ管の下流端を連通接続する一方、空気取り入れ管の上流端である吸気口を浴槽の上方位置に設置すること、そして、空気取り入れ管の途中に電磁弁を介装すること、が提案されている。
【0004】
特許文献2では、空気取り入れ管(吸気管)の上端である吸気口を浴槽のフランジ下の空間内であって、浴槽内の浴槽水位以上の位置に開口するように設置し、かつ、その吸気口を閉付勢する逆止弁を設けることが提案されている。
【0005】
一方、特許文献3には、浴槽水を循環させて加熱するために浴槽壁に設置される吸込ユニットに付設されたフィルタを清掃するための技術が提案されている。すなわち、浴槽内に臨んでフィルタが配置され、浴槽水の吸い込みの際に浴槽水に含まれるゴミがフィルタに捕集されるようになっており、この捕集されたゴミを清掃するためにポンプを逆転して循環流を逆転させ、この逆流によりフィルタから捕集ゴミを浴槽側に放出させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1−19425号公報
【特許文献2】実開平8−182717号公報
【特許文献3】特公昭63−38628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、気泡を発生させるための空気取り入れの際に、大気中のゴミや塵が吸い込まれることを防止するために、空気取り入れ部の吸気口にフィルタ部材を設置することが一般に行われている。
【0008】
しかし、このフィルタ部材にゴミや塵が詰まって目詰まりを生じると、空気取り入れに支障を来たし、気泡発生量が減少することになるという不都合が生じることになる。このため、フィルタ部材の目詰まりを除去するために定期的なメンテナンスが必要になるという作業負担の増大を招いている。
【0009】
一方、本発明者は先の出願(例えば特願2009−249102)において、浴槽に付設される循環アダプタにおいて追い焚き循環のための循環流を利用して気泡発生機能を実現させる気泡発生装置を提案し、その気泡発生装置において、循環アダプタに対する空気取り入れのための吸気口や逆止弁を備えた空気取り入れ管を浴室外に設置する工事等を省略しつつも、漏水発生のおそれを解消し得る気泡発生装置を提案している。
【0010】
そして、この提案に係る気泡発生装置においても、大気中のゴミや塵の吸い込みを防止するためのフィルタ部材又はこれに代わる部材が必要になるため、上記と同様に目詰まりを除去するための定期的なメンテナンスが必要になると考えられる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空気取り入れ部に対しフィルタ部材を設置した場合に、そのフィルタ部材に目詰まりが発生したとしても、その目詰まりを自動的に除去し得る気泡発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、浴槽の壁面から浴槽内に吐出される湯水の吐出流路に臨んで先端部位が開口し、上記吐出流路を流れる吐出流によって上記先端部位から空気が取り込まれるように配設される気泡発生装置を対象にして次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記先端部位に連通して外部空間から空気を取り入れるための空気取り入れ部として、外部空間側に配設されたフィルタ部材と、このフィルタ部材よりも上記先端部位側に配設されて上記外部空間から取り入れた空気を通過させる一方、外部空間側への水の通過を阻止する逆流防止手段とを備えて構成する。そして、上記逆流防止手段を、上記フィルタ部材側と上記先端部位側との間の通路に対し進退可能に配設することとした(請求項1)。
【0013】
本発明の場合、気泡発生運転の開始のために上記吐出流路に対する吐出流の供給を開始すると、その吐出流の供給開始に伴い、先端部位が開口している吐出流路内の内圧が一時的かつ急激に上昇し、この内圧上昇を先端部位を通して受けて上記逆流防止手段が通路内を上記フィルタ部材側に前進作動されることになる。この逆流防止手段の前進作動によりフィルタ部材に対し空気取り入れ時の空気流とは逆方向に外部空間の側への空気流が背後から作用することになる。このため、フィルタ部材の外部空間側に空気中のゴミや塵がたとえ付着していたとしても、そのゴミや塵はフィルタ部材に対する背後からの空気流によりフィルタ部材から引き剥がされて外部空間の側に放出されることになる。そして、逆流防止手段は、その後の吐出流路内の内圧降下を受けて上記フィルタ部材から後退することになり、吐出流に伴う負圧(外部空間との差圧)を受けて空気が取り入れられて上記先端部位から吐出流に混入され、吐出流と共に気泡を浴槽内に吐出し得ることになる。このように、フィルタ部材の表面に前回の気泡発生運転での空気取り入れに伴い空気中のゴミや塵の類が付着したとしても、そのゴミや塵を気泡発生運転が開始される毎に上記の逆流防止手段の進退作動により自動的に大気に向けて放出させることが可能となり、フィルタ部材における目詰まりの発生を確実に防止することが可能となる。このため、フィルタ部材が目詰まり傾向に陥ることに伴う気泡発生量の減少という不都合な事態が発生することを確実に回避し得る一方、目詰まり除去のための定期的なメンテナンス作業を不要にし得るようになる。これにより、気泡発生装置の機能及び品質を高めることが可能になる上に、大幅な省力化を図り得るようになる。
【0014】
本発明においては、上記のフィルタ部材を、気体は透過させるものの液体は透過させない通気性防水樹脂によって形成することができる(請求項2)。このようにすることにより、先端部位側から吐出流の負圧を受けて通気性防水樹脂により形成されたフィルタ部材から外部空間の空気を内部に透過させて、先端部位側に空気を取り入れることが可能となる一方、フィルタ部材を通して外部空間に対して水は透過し得ないため、空気取り入れ部を通して浴槽側からの水が漏水するおそれもない。このため、従来の如く、空気取り入れ管を浴槽水位よりも上方位置に別途設置する必要はなく、そのための設置工事そのものを省略することができ、大幅な施工コストの低減化を得ることができる。
【0015】
さらに、本発明において、上記空気取り入れ部として、上記逆流防止手段を付勢する付勢部材をさらに備えて構成し、上記付勢部材として、この付勢部材に抗して上記逆流防止手段が上記フィルタ部材の側に前進したときに上記逆流防止手段に対し元の状態に復元する側に付勢力を付与するように構成することができる(請求項3)。このような付勢部材を備えることで、逆流防止手段を元の状態に確実に復元させることが可能になり、気泡発生運転の開始後の定常運転や、次回の気泡発生運転の開始時における逆流防止手段の前進作動を、より確実に行わせることが可能となり、請求項1の作用をより一層確実に実現させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、本発明の気泡発生装置によれば、フィルタ部材の外部空間側にゴミや塵がたとえ付着していたとしても、そのゴミや塵をフィルタ部材に対する背後からの空気流によりフィルタ部材から引き剥がして外部空間の側に放出することができるようになる。このため、フィルタ部材の表面に前回の気泡発生運転での空気取り入れに伴い空気中のゴミや塵の類が付着したとしても、そのゴミや塵を気泡発生運転が開始される毎に逆流防止手段の進退作動により自動的に大気に向けて放出させることができ、フィルタ部材における目詰まりの発生を確実に防止することができるようになる。従って、フィルタ部材が目詰まり傾向に陥ることに伴う気泡発生量の減少という不都合な事態が発生することを確実に回避することができる一方、目詰まり除去のための定期的なメンテナンス作業を不要にすることができるようになる。これにより、気泡発生装置の機能及び品質を高めることができる上に、大幅な省力化を図ることができるようになる。
【0017】
特に、請求項2によれば、先端部位側から吐出流の負圧を受けて外部空間の空気を取り入れることができる一方、フィルタ部材を通して外部空間に対して水は透過し得ないため、空気取り入れ部を通して浴槽側からの水の漏水を確実に防止することができる。このため、上記の効果に加えて次のような効果をも得ることができるようになる。すなわち、従来の如く、空気取り入れ管を浴槽水位よりも上方位置に別途設置する必要はなく、そのための設置工事そのものを省略することができ、大幅な施工コストの低減化を得ることができるようになる。
【0018】
さらに、請求項3によれば、付勢部材をさらに備えることで、その付勢力によって逆流防止手段を元の状態に確実に復元させることができ、気泡発生運転の開始後の定常運転や、次回の気泡発生運転の開始時における逆流防止手段の前進作動を、より確実に行わせることができ、本発明の効果をより一層確実に得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】気泡発生装置が適用される風呂システムの例を示す説明図である。
【図2】気泡発生装置が適用された追い焚き循環用の循環アダプタの斜視図である。
【図3】実施形態に係る図2のA−A線断面説明図である。
【図4】図3の空気取り入れ部の拡大説明図である。
【図5】図2の循環アダプタを用いた追い焚き運転の作動原理を示す説明図である。
【図6】図2の循環アダプタを用いた気泡発生運転の作動原理図を示す図5対応図である。
【図7】図7(a)は気泡発生運転中における空気取り入れ部の状態を示す図3対応図であり、図7(b)は気泡発生運転の開始時点に生じる内部圧力の上昇を受けたときの空気取り入れ部の状態を示す図3対応図である。
【図8】気泡発生運転の開始時の内部圧力変化を示す時間と内部圧力との関係図である。
【図9】図7(b)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に示す風呂システムは、浴槽1と、風呂用の追い焚き循環機能を備えた給湯器2と、戻り路31及び往き路32からなり浴槽1及び給湯器2を互いに接続する追い焚き循環配管3と、実施形態に係る気泡発生装置を内蔵・付設した循環アダプタ4とを備えて構成されたものである。
【0022】
給湯器2は、例えば、追い焚き用熱交換器21と、これを加熱する燃焼バーナ22とを備えているものである。なお、給湯器2としては、追い焚き加熱用の構成を備えていれば、追い焚き用と給湯用とに互いに独立した缶体を備えた2缶2水式のものであるか、追い焚き用と給湯用とを共用する1缶2水式であるか、あるいは、温水循環式暖房回路が組み込まれて、その高温水を熱源とする液−液熱交換器により追い焚き加熱されるものであるかの別は問わず、いずれのものでも適用可能である。
【0023】
浴槽1には、その一側壁面の底部近傍に循環アダプタ4が貫通した状態で設置され、この循環アダプタ4に対し、追い焚き循環配管3の戻り路31の上流端と、往き路32の下流端とが接続されている。そして、給湯器2内の循環ポンプ23が作動されると、浴槽1内の浴槽水(湯又は水)が循環アダプタ4及び戻り路31を通して給湯器2の熱交換器21に戻され、次いで、往き路32及び循環アダプタ4を通して浴槽1内に吐出される、という循環流が生じて循環作動されることになる。この循環作動の際に、燃焼バーナ22が燃焼作動されると、浴槽1から戻された浴槽水が所定温度まで加熱されて追い焚きされることになり、燃焼バーナ22が非燃焼状態のままであると、浴槽水による循環流のみが生じることになる。
【0024】
循環アダプタ4は、浴槽1に対しその内側に配設される前面カバー体41(図2も参照)と、主として浴槽1の外側に配設されるアダプタ本体42とが一体化されて組み付けられるものであり、戻り路31に接続される戻り用接続口421と、往き路32に接続される往き用接続口422とがアダプタ本体42の後端から突出されるとともに、アダプタ本体42の後端面には空気取り入れ部51が設けられている。
【0025】
前面カバー体41には、追い焚き運転モードと気泡発生運転モード(バブル温浴運転モード)との切換えを行うための切換レバー431を備えた後述の切換弁機構43が組み込まれる他、外周側にドーナッツリング状に広がるフィルタ部材410が装着されている。又、前面カバー体41の前面上部位置には気泡を含む循環水が吐出又は噴出される前面吐出口411が開口形成される一方、前面下部位置には半月状の案内開口412から切換レバー431が円弧状に往復移動可能に突出されている。
【0026】
図3は気泡発生装置5が組み込まれた循環アダプタ4を図2のA−A線における断面図として示し、図4は気泡発生装置5の主要部の拡大図を示す。又、図5又は図6は循環アダプタ4の詳細構造を省略した原理的な構造を示すものである。
【0027】
まず、循環アダプタ4の概略構造について、主として図5又は図6を参照しつつ説明する。循環アダプタ4は、前述の循環ポンプ23の作動により浴槽1内から浴槽水を吸い込んで戻り路31に流すための吸い込み流路44と、往き路32からの循環水(浴槽水)を浴槽1内にそのまま流す追い焚き吐出流路45と、同様に往き路32からの循環水に対し気泡を巻き込んだ状態で浴槽1内に吐出する吐出流路である気泡吐出流路46と、上記往き路32からの循環水を追い焚き吐出流路45の側に流す(追い焚き運転モード)か、気泡吐出流路46の側に流す(気泡発生運転モード)かのいずれかに切換える切換弁機構43とを備えている。
【0028】
吸い込み流路44は、図5又は図6に矢印Rで示すように、フィルタ部材410を介して前面カバー体41の外周領域から吸い込まれた浴槽水を合流させた後に戻り用接続口421まで導くように延びている。追い焚き吐出流路45は、図5に矢印Gで示すように、往き用接続口422からの循環水を分流室451に導いた後に開閉切換口452を通して前面カバー体41の下側に導き、その下側領域の外周面に開口する追い焚き吐出口453から浴槽1内に吐出するように延びている。
【0029】
気泡吐出流路46は、図6に矢印Bで示すように、往き用接続口422からの循環水を上記分流室451を介して分流路461に導いた後、噴出孔462から旋回室463に噴出させて旋回室463に旋回流を生じさせて空気を巻き込み、巻き込んだ気泡と共に循環水を気泡吐出口464及び前面吐出口411を経て浴槽1内の前方に向けて吐出させるように延びている。上記旋回室463はその内周面が円筒状に形成され、上記噴出孔462はその旋回室463に対し接線方向に分流室からの循環水を噴出させるように開口されている。この噴出孔462からの循環水の噴出により旋回室463内に気泡吐出口464の側に向かう旋回流が生じて遠心力が作用することにより中心部が大気圧よりも低い負圧となり、この中心部の負圧が気泡発生装置5の後述の空気取り入れ部51に対し作用することにより空気が取り入れられ、この空気が先端ノズル部52から旋回流に巻き込まれた結果、微小な気泡が混合した状態の循環水が浴槽1内に吐出されることになる。このような気泡発生運転モードに切換えられて気泡発生運転が開始される際に、後述の如く旋回室463に対する噴出孔462からの噴出に伴い旋回室463の内部圧力(上記先端ノズル部52に作用する内圧)が瞬間的に大気圧よりも上昇した後、上記の旋回流の発生や浴槽1内への吐出に伴い負圧に降下することになる。
【0030】
切換弁機構43は、前端に切換レバー431が固定されて分流室451を突き抜けるように配置された切換軸432と、この切換軸432の途中に設けられた第1切換弁433及び第2切換弁434と、第1切換弁433を挟んで配置された形状記憶合金製バネ435及びバイアスバネ436とを備えて構成されている。この切換弁機構43は、分流室451に供給される循環水の温度の高低如何によって追い焚き運転モードと気泡発生運転モードとの自動切換が可能であると共に、切換レバー431の切換操作によっても追い焚き運転モードと気泡発生運転モードとの切換が可能となっている。例えば、分流室451に供給される循環水の温度が追い焚き用の高温(例えば80℃)であれば形状記憶合金製バネ435が伸長し、これにより第1切換弁433が分流路461を遮断する一方、第2切換弁434が開閉切換口452を開放した追い焚き運転モードに自動切換される(図5に示す状態参照)。一方、循環水の温度が上記の追い焚き用の高温よりも低温であれば形状記憶合金製バネ435が縮小し、これにより第1切換弁433が分流路461を開放する一方、第2切換弁434が開閉切換口452を遮断した気泡発生運転モードに自動切換される(図6に示す状態参照)。又、切換レバー431の切換操作により切換軸432を進退作動させることによっても、同様に追い焚き運転モードと気泡発生運転モードとに切換操作し得るようになっている。
【0031】
次に、気泡発生装置5について説明すると、図3に示すように、外部から吸気するための空気取り入れ部51と、空気取り入れ部51から吸気した空気を旋回室463に対し噴出させる先端部位としての先端ノズル部52とを備えている。先端ノズル部52は内孔が所定の微小径(例えば0.6mmの直径)に形成されたオリフィス構造を備え、半球状の先端を備えている。
【0032】
空気取り入れ部51は、図4に詳細を示すように、筒状のケース53と、このケース53内の通路531であって外部空間側に開口した吸気用の先端開口532の側の通路位置に対し多孔質素材により形成され通路を遮断するように介装されたフィルタ部材としての透過壁体54と、先端ノズル部52(図3参照)の側の通路位置に対し旋回室463から外部空間側への水の逆流を阻止するために介装された逆止弁部55と、この逆止弁部55を内蔵し通路531を進退し得るピストン部材56と、このピストン部材56を透過壁体54に対し先端ノズル52の側にバネ付勢する付勢部材57とを備えて構成されている。上記逆止弁部55と、ピストン部材56とによって、逆流防止手段が構成されている。
【0033】
これらの各構成要素は次のようにして空気取り入れ部51のケース53内に組み付けられている。すなわち、ケース53内の基端側の底壁533に向けて先端開口532の側から、逆止弁部55を内蔵したピストン体56を挿入し、付勢部材57を間に介装した状態で固定部材58を内嵌し、この固定部材58に対し透過壁体54を内装した上で、蓋部材59をねじ込むことにより透過壁体54を挟み込んで固定する。底壁533、ピストン部材56及び固定部材58にはそれぞれ小孔534,561,581が貫通して形成され、これら小孔534,561,581は通路531の流通開口断面積を吸気量に見合ったものに調整するために形成されている。なお、上記の固定部材58は例えばOリング582によりシールされ、蓋部材59は周囲のねじ込みリング591と、中心部の締め付け操作部592と、両者間に開口されて先端開口532を構成することになる流入孔593とを備えたものである。
【0034】
透過壁体54は、多数の微小径孔を有する多孔質素材により形成され、通路531の上下流方向(空気の流れ方向;先端開口532側が上流側、底壁533側が下流側)に対し気体は透過するものの液体は透過させない壁体であり、例えば通気性防水樹脂によって形成したものである。このような通気性防水樹脂としては、例えば次のものを採用すればよい。すなわち、水溶性パウダーと熱可塑性樹脂(例えばPBT:ポリブチレンテレフタレート)とのコンパウンドを用いて射出成形し、成形後に水処理することで水溶性のパウダーを溶出させ、溶出後に形成される微小空間(例えば20〜50μmの空間)が微小径孔(例えば5〜10μm径の孔)を通して連続して連通することにより連続多孔質の通気性防水樹脂を得るようにする。つまり、気体分子は透過するが液体の水分子は透過させない程度の微径孔を備えた連続多孔質樹脂を用いる。このような通気性防水樹脂の素材の例として、具体的には「microvent」(大成プラス株式会社製品名)が挙げられる。
【0035】
そして透過壁体54として、上記の通気性防水樹脂素材を用い、透過表面積と内外の差圧とにより定まる透過空気量に基づいて気泡発生運転モードに適した吸気量となるようにサイズ設定を行う。例えば、透過壁体54として上記素材例の通気性防水樹脂を用いて直径12mm、厚さ3mmに形成すれば、差圧が−26.1kpaの負圧のときに透過する吸気量は0.1L/minとなり、適切な吸気量の透過を得ることができる。
逆止弁部55は、その弁体551が気泡発生運転モード以外のときに浴槽1(図3参照)側からの水圧を受けて上記小孔561の側に密着して小孔561を遮断する一方、気泡運転モードのときには旋回室463(図3等参照)での旋回流に基づく負圧を受けて撓むことにより小孔561から離れて外周側の隙間から空気を旋回室463の側に流入させ得るようになっている(図7(a)参照)。
【0036】
ピストン部材56は、例えば外径が通路531の内径よりも僅かに小径に設定され、周囲に付設されたシール部材562によって通路531の内周面との間をシールした状態で摺動して通路531内を進退可能とされている。シール部材562としては、例えば図例の如きUリング(Uパッキン)の他にOリング等を用いればよい。又、ピストン部材56は、固定部材58との間に介装された付勢部材57から、底壁533に対し押し付けられる側にバネ付勢力を受けるようになっている。これにより、気泡発生運転の開始の際に後述の如く固定部材58の側に瞬間的に移動するときを除いて、常時は底壁533に対し押し付けられた状態に維持されるようになっている。
【0037】
気泡発生運転の開始から気泡発生運転中における旋回室463内の内圧変動と、これに伴う空気取り入れ部51の状態変化とについて詳細に説明すると、
【0038】
気泡発生運転の開始の際には、切換弁機構43によって前述の如く気泡発生運転モードに切換えられた状態で循環ポンプ23の作動に基づき循環流が噴出孔462を通して旋回室463内に噴出されると、それまで滞留状態であった旋回室463内に循環流が噴出状態で流入されるため、旋回室463内に臨む先端ノズル52に作用する内圧(内部圧力)が一時的かつ急激に上昇して大気圧よりも高い正圧側に変化することになる(図8のT部参照)。このような内圧上昇の程度は、旋回室463内への循環流の噴出力や循環ポンプ23の吐出圧の如何に加えて、背圧ともなる浴槽1内の水位の如何に対応して定まることになる。例えば水位は50cmであればその水頭に対応する値まで内圧上昇することになる。一方、上記の旋回室463に流入した循環流は旋回室463内に旋回流を生じさせ、この旋回流に伴い遠心力が作用して上記内圧は直ぐに降下して大気圧よりも低い負圧側に変化することになる。
【0039】
このような内圧変動に伴い、空気取り入れ部51においては、まず開始の際の一時的かつ急激な内圧上昇が先端ノズル52から逆止弁部55及びピストン部材56(図7(b)参照)に作用し、小孔561が逆止弁部55により閉止された状態でピストン部材56は付勢部材57に抗して固定部材58に向けて、つまり透過壁体54に向けて瞬間的に移動した後、上記の内圧降下に伴い付勢部材57がバネ付勢力を受けてピストン部材56は逆止弁部55と共に底壁533に押し付けられた元の状態(図4に示す状態)に復元する。上記のピストン部材56が内圧上昇に押されて透過壁体54に向けて瞬間的に移動することに伴い、透過壁体54には吸気(空気取り入れ)時とは逆方向に背後から先端開口532の側への空気の排気流が作用し、透過壁体54を通過して外部に放出されることになる。この際、透過壁体54の大気側に臨む面(先端開口532の側の表面)に対し、前回の気泡発生運転における吸気作動に伴い大気中のゴミや塵M(図9参照)の類が付着していたとしても、そのゴミや塵Mを上記の排気流によって大気側に放出することができる。そして、上記の内圧降下に伴いピストン部材56が元の状態に復元すれば、先端ノズル52から作用する負圧を受けて逆止弁部55の弁体551(図7(a)参照)が撓んで小孔561から離れ、先端開口532から吸気された空気を小孔561,534を通して旋回室463に流入させることができるようになる。
【0040】
以上の実施形態の場合、空気取り入れ部51の通路531を遮断するように介装された透過壁体54が空気は透過させるものの水は透過させないという通気性防水樹脂により形成されているため、気泡発生装置5が循環アダプタ4に付設されて空気取り入れ部51の開口が浴槽2内に貯留された浴槽水の水位よりも下側に位置していても、漏水発生のおそれはないばかりか、気泡発生装置5が循環アダプタ4に一体的に内蔵・付設されているため、従来の空気取り入れ管の場合のように浴槽水位よりも上方であって浴室外の壁に設置するというような設置工事そのものを省略することができる。又、漏水発生のおそれの回避については、上記の透過壁体54に加えて、逆止弁部55の付設によってより一層の確実化を図ることができる。
【0041】
さらに、その上に、透過壁体54の表面に吸気作動に伴い大気中のゴミや塵Mの類が付着したとしても、そのゴミや塵Mを気泡発生運転が開始される毎に上記のピストン部材56の進退作動により自動的に大気に向けて放出させることができ、目詰まりの発生を確実に防止することができるようになる。このため、目詰まり傾向に陥ることに伴う気泡発生量の減少という不都合な事態が発生することを確実に回避することができる一方、目詰まり除去のための定期的なメンテナンス作業を不要にすることができるようになる。これにより、気泡発生装置の機能及び品質を高めることができる上に、大幅な省力化を図ることができるようになる。
【0042】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態において、透過壁体54を形成するために通気性防水樹脂として例示したもの以外の通気性防水樹脂を用いて透過壁体を構成してもよい。その場合には、内外の差圧と、そのときの透過可能な吸気量との関係に基づいて所望の吸気量を実現し得るサイズを選択・決定するようにすればよい。
【0043】
上記実施形態の透過壁体54の先端開口532の側にフィルタ部材をさらに付設するようにしてもよい。これにより、透過壁体54の微小径孔の目詰まり発生を確実に防止・抑制することができ、透過壁体54の寿命・耐久性の延長化を図ることができる一方、上記フィルタ部材に付着したゴミや塵の類をピストン部材56の進退作動により気泡発生運転の開始作動の度に大気側に放出することができる。
【0044】
透過壁体54や、これにさらに付設した場合の上記のフィルタ部材に付着したゴミや塵を大気側に放出するための排気流をさらに強力にするために、旋回室463の一時的な内圧上昇の度合を上げるようにすればよい。このための手段として、例えば旋回室463の浴槽1の側に出口に開閉弁6(図3)を付設するようにしてもよい。そして、気泡発生運転の開始の際にはタイムラグをもって閉状態から開状態に切換えて気泡を含む噴出流を浴槽1内に向けて噴出させるようにすればよい。つまり、開状態への切換を遅延させることで、噴出孔462からの噴出流の流入に伴い旋回室463での内圧上昇の度合を増大させることができる。なお、浴槽1の側から旋回室463に向けてゴム製のお椀状の押し込み手段で水を媒体として押圧力を積極的に作用させて内圧上昇を人為的に生じさせるという使用方法も採用し得る。
【0045】
上記実施形態では、旋回室463にて旋回流を生じさせて負圧を発生させることにより空気を取り入れるタイプの気泡発生装置に対し本発明を適用したが、これに限らず、単に吐出流路に対し先端部位である先端ノズルを臨ませて、吐出流路への吐出流の供給開始に伴い内圧が上昇し、この内圧上昇を受けて逆流防止手段をフィルタ側に前進作動させるという構成を提供してもよい。
【0046】
又、上記実施形態では、負圧により吸い込んだ気泡を担持させて浴槽内に吐出させる湯水の吐出流として、追い焚き循環路3の循環流を利用した例を示したが、循環流に限らず、例えば浴槽からはオーバーフロー排水させるだけで浴槽に対しては単に供給して浴槽内に吐出させるための水流、いわゆる掛け流し方式での湯水の供給水流を利用するようにしてもよい。
【0047】
上記実施形態では、透過壁体54を通気性防水樹脂によって他の構成部材とは別体に形成した後に組み付けて空気取り入れ部51を形成しているが、これに限らず、合成樹脂により形成される他の構成部材、例えばケース53等と透過壁体54とを併せて二色成形方式により一体成形するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、循環アダプタ4が浴槽1の一側の壁面に設置された例を示したが、これに限らず、気泡発生装置5が付設された循環アダプタ4を浴槽1の底側の壁面(底壁面)に設置し、気泡を含む吐出流が浴槽水に対し上向きに吐出されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 浴槽
5 気泡発生装置
46 気泡吐出流路(吐出流路)
51 空気取り入れ部
52 先端ノズル(先端部位)
54 透過壁体(フィルタ部材)
55 逆止弁部(逆流防止手段)
56 ピストン部材(逆流防止手段)
57 付勢部材
531 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の壁面から浴槽内に吐出される湯水の吐出流路に臨んで先端部位が開口し、上記吐出流路を流れる吐出流によって上記先端部位から空気が取り込まれるように配設される気泡発生装置であって、
上記先端部位に連通して外部空間から空気を取り入れるための空気取り入れ部が、外部空間側に配設されたフィルタ部材と、このフィルタ部材よりも上記先端部位側に配設されて上記外部空間から取り入れた空気を通過させる一方、外部空間側への水の通過を阻止する逆流防止手段とを備えて構成され、
上記逆流防止手段が、上記フィルタ部材側と上記先端部位側との間の通路に対し進退可能に配設されている
ことを特徴とする気泡発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気泡発生装置であって、
上記フィルタ部材が、気体は透過させるものの液体は透過させない通気性防水樹脂によって形成されている、気泡発生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の気泡発生装置であって、
上記空気取り入れ部は、上記逆流防止手段を付勢する付勢部材をさらに備えて構成され、
上記付勢部材は、この付勢部材に抗して上記逆流防止手段が上記フィルタ部材の側に前進したときに上記逆流防止手段に対し元の状態に復元する側に付勢力を付与するように構成されている、気泡発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−135947(P2011−135947A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296363(P2009−296363)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】