説明

気泡粒板及び気泡粒板の製造方法

【課題】新たな構成を有する気泡粒板などを提供する。
【解決手段】気泡粒60重量%以上90重量%以下とバインダ10重量%以上40重量%以下とが焼結している気泡粒板である。この気泡粒板には、本体層、表面層、及び裏面層が形成されている。本体層では、気泡粒が半壊している又は無壊である。表面層では、気泡粒が全壊している。裏面層では、気泡粒が全壊している。表面層は、厚み比率が1.25%である。裏面層は、厚み比率が1.25%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡粒を主成分とする板及びこの板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーライトなどの気泡粒を主体とする板状材が提案された(特許文献1、特許文献2参照)。この板状材は、気泡粒を主体としているため多孔質であり、吸音性・断熱性・保湿性などに優れるという特長を有するものである。
【特許文献1】特開2004−69060号公報
【特許文献2】特開2008−50934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、気泡粒を主体とする板状材については、使用者や製造者などによって様々な用途が既に作り出されており、また、今後も作り出され続けるであろうと考えられる。したがって、将来新たに作り出される用途に迅速に対応するためにも、気泡粒を主体とする板状材については、気泡粒を主体として多孔質であることを維持しつつも、その構成が異なるものを提供していく必要があった。
【0004】
そこで、本発明は、新たな構成を有する気泡粒板及びこの気泡粒板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記課題は、次の手段により解決される。
【0006】
第1の発明は、気泡粒60重量%以上90重量%以下とバインダ10重量%以上40重量%以下とが焼結している気泡粒板であって、前記気泡粒が半壊している本体層と、厚み比率が1.25%であって前記気泡粒が全壊している表面層と、が形成されていることを特徴とする気泡粒板である。
【0007】
第2の発明は、気泡粒60重量%以上90重量%以下とバインダ10重量%以上40重量%以下とが焼結している気泡粒板であって、前記気泡粒が無壊である本体層と、厚み比率が1.25%であって前記気泡粒が全壊している表面層と、が形成されていることを特徴とする気泡粒板である。
【0008】
第3の発明は、前記気泡粒及び前記バインダが無機物であることを特徴とする第1の発明または第2の発明に係る気泡粒板である。
【0009】
第4の発明は、気泡粒60重量%以上90重量%以下とバインダ10重量%以上40重量%以下とからなる混合物を作製する混合物作製工程と、前記混合物作製工程で作製された混合物を振動させながら板状に加圧成形し、前記気泡粒が半壊している本体層と厚み比率が1.25%であって前記気泡粒が全壊している表面層とが形成された板状の成形体を作製する成形工程と、前記成形工程で作製された板状の成形体を脱水する脱水工程と、前記脱水工程で脱水された板状の成形体を焼成する焼成工程と、を有することを特徴とする気泡粒板の製造方法である。
【0010】
第5の発明は、気泡粒60重量%以上90重量%以下とバインダ10重量%以上40重量%以下とからなる混合物を作製する混合物作製工程と、前記混合物作製工程で作製された混合物を振動させながら板状に加圧成形し、前記気泡粒が無壊である本体層と厚み比率が1.25%であって前記気泡粒が全壊している表面層とが形成された板状の成形体を作製する成形工程と、前記成形工程で作製された板状の成形体を脱水する脱水工程と、前記脱水工程で脱水された板状の成形体を焼成する焼成工程と、を有することを特徴とする気泡粒板の製造方法である。
【0011】
(気泡粒板、気泡粒、バインダ)
「気泡粒板」とは気泡粒を主成分とする板状体をいい、「気泡粒を主成分とする」とは板状体全体の重量に対する気泡粒の重量%が60以上であることをいう。また、「気泡粒」とは気泡を有する粒状体をいい、「バインダ」とは気泡粒とともに焼結している物質をいう。
【0012】
(表面層)
表面層は、気泡粒板の厚みに対する厚み比率が1.25%とされる。なお、気泡粒板は、幅、奥行、及び厚みを有しているが、厚みは、幅の1%以上40%以下、奥行の1%以上40%以下とされる。
【0013】
(全壊、半壊、無壊)
「気泡粒が全壊している」とは、体積密度が、気泡粒の体積密度の200%以上であることをいう。また、「気泡粒が半壊している」とは、体積密度が、気泡粒の体積密度の120%以上200%未満であることをいう。「気泡粒が無壊である」とは、体積密度が、気泡粒の体積密度の100%以上120%未満であることをいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、新たな構成を有する気泡粒板及びこの気泡粒板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、添付した図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0016】
[気泡粒板]
まず、本発明の実施形態に係る気泡粒板について説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る気泡粒板を模式的に示す図である。図1に示すように、本発明の実施形態においては、1つの親気泡粒板1が切断線L1〜L4に沿って切断され、1つの親気泡粒板1から9つの子気泡粒板11〜19が取得される。親気泡粒板1、子気泡粒板11〜19は、ともに、本発明に係る「気泡粒板」の一例である。
【0018】
親気泡粒板1は、気泡粒60重量%以上90重量%以下とバインダ10重量%以上40重量%以下とが焼結している焼結体である。同様に、子気泡粒板11〜19も、気泡粒60重量%以上90重量%以下とバインダ10重量%以上40重量%以下とが焼結している焼結体である。
【0019】
なお、本発明は、気泡粒として用いる物を何ら限定するものではないが、気泡粒としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーンを好ましく用いることができ、特に、黒曜石、真珠岩、または松脂岩を粉砕して焼成し発泡させた発泡パーライトを望ましく用いることができる。
【0020】
また、本発明の実施形態では、バインダとして用いる物を何ら限定するものではないが、バインダとしては、珪酸ソーダ、珪酸カリウム、または水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、粘土、水などを好ましく用いることができる。
【0021】
気泡粒とバインダとの双方に無機物を用いると、気泡粒板が無機物として作製されるため、環境に無害の気泡粒板を作成することができ、好ましい。
【0022】
図2は、図1中のA−A断面及びB−B断面を示す図であり、(a)は図1中のA−A断面を示し、(b)は図1中のB−B断面を示す。
【0023】
図2に示すように、親気泡粒板1は、幅x、奥行y、厚みzの寸法を有している。また、親気泡粒板1と子気泡粒板14〜16とは、第1領域20と第2領域30とを備えている。
【0024】
親気泡粒板1における第1領域20は、第2領域30に囲まれている。他方、子気泡粒板14における第1領域20は、右側面を除いて第2領域30に囲まれており、子気泡粒板15における第1領域20は、両側面を除いて第2領域30に囲まれており、子気泡粒板16における第1領域20は、左側面を除いて第2領域30に囲まれている。
【0025】
親気泡粒板1における第1領域20は、「本体層」の一例である。また、親気泡粒板1における第2領域30のうち、図2(a)中の上側に描かれている部分は親気泡粒板1に形成される「表面層」の一例であり、図2(a)中の下側に描かれている部分は親気泡粒板1に形成される「裏面層」の一例である。
【0026】
子気泡粒板14〜16における第1領域20は、「本体層」の一例である。また、子気泡粒板14〜16における第2領域30のうち、図2(a)中の上側に描かれている部分は子気泡粒板14〜16に形成される「表面層」の一例であり、図2(a)中の下側に描かれている部分は子気泡粒板14〜16に形成される「裏面層」の一例である。
【0027】
図3は、図2(a)中で示された子気泡粒板15の断面について詳細に説明する図であり、(a)は図2(a)中で示された子気泡粒板15の断面図であり、(b)〜(d)は子気泡粒板15の断面における各領域の拡大図である。
【0028】
図3(a)に示すように、子気泡粒板15には、表面層40と、本体層50と、裏面層60と、が形成されている。
【0029】
上述したように、子気泡粒板15に形成される表面層40は、図2(a)に描かれた子気泡粒板15における第2領域30のうち、上側に描かれている部分から構成される。
【0030】
また、子気泡粒板15に形成される本体層50は、図2(a)に描かれた子気泡粒板15における第1領域20から構成される。
【0031】
また、子気泡粒板15に形成される裏面層60は、図2(a)に描かれた子気泡粒板15における第2領域30のうち、下側に描かれている部分から構成される。
【0032】
図3(b)に示すように、表面層40は、全壊している気泡粒70とバインダ90とにより構成される。また、図3(c)に示すように、本体層50は、半壊している気泡粒80とバインダ90とにより構成される。また、図3(d)に示すように、裏面層60は、全壊している気泡粒70とバインダ90とにより構成される。なお、参考までに、無壊である気泡粒100を図3中に模式的に示す。
【0033】
表面層と裏面層とは、気泡粒板の厚みzに対する厚み比率が1.25%とされる。
【0034】
以上説明した本発明の実施形態に係る親気泡粒板1及び子気泡粒板11〜19によれば、新たな構成を有する気泡粒板を提供することができる。
【0035】
その上、本発明の実施形態に係る親気泡粒板1及び子気泡粒板11〜19によれば、気泡粒が全壊している表面層40及び裏面層60の厚み比率が、気泡粒板の厚みzに対して1.25%とされるため、多孔質性が大きく害されることがない。
【0036】
[気泡粒板の製造方法]
次に、本発明の実施形態に係る気泡粒板の製造方法について説明する。
【0037】
図4は、本発明の実施形態に係る気泡粒板の製造方法を模式的に示すフローチャートである。図4に示すように、上述した親気泡粒板1及び子気泡粒板11〜19は、次の工程を有する方法により好ましく製造することができる。
【0038】
(S1:混合物作成工程)
まず、気泡粒100とバインダ90とをミキサー110に投入し、気泡粒100とバインダ90とを混合させ、気泡粒100とバインダ90とからなる混合物120を作製する。ここで、混合物120中における気泡粒100とバインダ90との割合は、次の通りである。
(1)気泡粒:60重量%以上90重量%以下
(2)バインダ:10重量%以上40重量%以下
【0039】
(S2:成形工程)
次に、上記の混合物作製工程(S1)で作製された混合物120をホッパー130に投入し、混合物120を金型式成形装置140または圧延式成形装置150で振動させながら板状に加圧成形する。
【0040】
<金型式成形装置140で成形する場合>
金型式成形装置140で成形する場合は、ホッパー130に投入された混合物120を振動プレス141に取り付けられた金型142に充填して、金型142を振動させながら板状に加圧成形する。
【0041】
したがって、混合物120は、その表面、裏面、及び側面が金型142の内面に接触した状態で、振動されながら加圧成形される。これにより、混合物120の表面付近、裏面付近、及び側面付近に存在している気泡粒が全壊し、混合物120の内部に存在している気泡粒が半壊する。
【0042】
<圧延式成形装置150で成形する場合>
圧延式成形装置150で成形する場合は、ホッパー130に投入された混合物120を、圧延ローラ151と振動プレス141に取り付けられた板153とからなる圧延部分に供給して、板153を振動させながら板状に加圧成形する。なお、図示していないが、圧延式成形装置150は、混合物120の側面に接触する板153も備えている。
【0043】
したがって、混合物120は、その表面、裏面、及び側面が板153に接触した状態で振動されながら加圧成形される。これにより、混合物120の表面付近、裏面付近、及び側面付近に存在している気泡粒が全壊し、混合物120の内部に存在している気泡粒が半壊する。
【0044】
なお、金型式成形装置140で成形する場合も、圧延式成形装置150で成形する場合も、混合物120の表面及び裏面に形成される気泡粒の全壊した層が、気泡粒板の厚みzに対して1.25%の厚み比率を有するように、加圧の程度及び振動の程度が調整される。
【0045】
(S3:脱水工程)
次に、上記の成形工程で作製された板状の成形体160を遠赤外線装置170からの遠赤外線照射によって加熱し、さらに、この加熱された板状の成形体160を熱風装置180からの熱風にさらすことにより、板状の成形体160を脱水する。なお、この脱水工程を真空中で行えば、空気中で行う場合よりも、脱水に要する時間を短縮することができ、好ましい。
【0046】
(S4:焼成工程)
次に、上記の脱水工程で脱水された板状の成形体を焼成炉190で焼成する。これにより、親気泡粒板1が作製される。なお、本体層50における気泡粒の半壊は、焼成によっても進行する。また、表面層40及び裏面層60における気泡粒の全壊は、焼成によっても進行する。
【0047】
(S5:切断工程)
次に、必要に応じて、上記のようにして作製された親気泡粒板1を切断して、子気泡粒板11〜19を作製する。
【0048】
以上説明した本発明の実施形態に係る気泡粒板の製造方法によれば、新たな構成を有する気泡粒板の製造方法を提供することができる。
【0049】
また、本発明の実施形態に係る気泡粒板の製造方法によれば、板状の気泡粒板の型崩れを防止することができる。これは、気泡粒とバインダとの混合物が、加圧成形される際に振動されるためと考えられる。
【0050】
すなわち、気泡粒とバインダとの混合物が、加圧成形される際に振動されると、作製される板状の成形体において、その内部に気泡粒が半壊している部分が形成され、また、その表面、裏面、及び側面に気泡粒が全壊している部分が形成されるためと考えられる。
【0051】
より具体的に検討すると、実施形態における加圧成形によって作製された板状の成形体では、型崩れが、半壊している気泡粒同士の引っ掛かりにより阻止され、さらに、全壊している気泡粒によって構成される壁によって阻止されると考えられる。
【0052】
これにより、実施形態における加圧成形によって作製された板状の成形体は、加圧成形から焼成が完了するまでの間における型崩れが防止されるものと考えられる。
【0053】
成形体に含まれる水は、成形体の型崩れを生じさせる原因の一つと考えられるが、本発明の実施形態に係る気泡粒板の製造方法によれば、成形後焼成前に脱水が行われるため、板状の気泡粒板の型崩れがより一層防止される。
【0054】
なお、本発明の実施形態に係る気泡粒板の製造方法においては、加圧しながら焼成を行う必要がないため、成形工程と焼成工程とを分離することができる。したがって、本発明の実施形態に係る気泡粒板の製造方法によれば、成形時における条件と焼成時における条件とを異ならしめることができ、特に、成形時における条件が焼成時における条件に制限されないため、全壊、半壊、無壊という気泡粒の壊程度を成形時において調整できるようになり、様々な壊程度を持つ気泡粒板を製造できるようになる。
【0055】
なお、上記した実施形態に係る気泡粒板においては、本体層において気泡粒が半壊しているとしたが、本発明に係る気泡粒板においては、本体層において気泡粒が無壊であってもよい。
【0056】
また、上記した実施の形態に係る気泡粒板においては、気泡粒が全壊している表面層及び裏面層が気泡粒板に形成されるとしたが、気泡粒が全壊している裏面層が形成されていない気泡粒板も、本発明に係る気泡粒板に含まれる。また、気泡粒が全壊している部位を側面側に有する気泡粒板も、本発明に係る気泡粒板に含まれる。
【0057】
また、上記した実施の形態に係る気泡粒板の製造方法においては、気泡粒が半壊している本体層が板状の成形体及び気泡粒板に形成されるとしたが、本発明に係る気泡粒板の製造方法においては、成形工程における加圧の程度や振動の程度を調整することによって、気泡粒が無壊である本体層が板状の成形体及び気泡粒板に形成されるとしてもよい。
【0058】
また、上記した実施の形態に係る気泡粒板の製造方法においては、気泡粒が全壊している表面層及び裏面層が気泡粒板に形成されるとしたが、本発明は、この形態に限定されるものではない。本発明に係る気泡粒板の製造方法には、気泡粒が全壊している表面層は形成されるが、気泡粒が全壊している裏面層は形成されない形態も含まれる。
【0059】
本発明によれば、好ましい芯材を提供できることはもちろんのこと、多孔質でありつつも、表面に硬度を有しており、また、表面が崩れ難いため、好ましい表面材(例:床の下に設置される断熱材など)を提供することができる。
【0060】
また、本発明によれば、気泡粒が半壊している本体層又は気泡粒が無壊である本体層によって、吸音性・断熱性・保湿性・耐火性などに優れた気泡粒板を提供することができる一方、気泡粒が全壊している表面層(実施形態では表面層及び裏面層)によって、雨水や塗料が内部に浸透し難い、防水性・塗装性に優れた気泡粒板を提供することができる。
【0061】
[特定方法]
本発明においては、「気泡粒が全壊している表面層」、「気泡粒が半壊している本体層」、「気泡粒が無壊である本体層」、及び「気泡粒が全壊している裏面層」が次のように特定される。
【0062】
<気泡粒が全壊している表面層>
表面層として想定される層(想定表面層)の体積密度を測定する。具体的には、気泡粒板から想定表面層を除去し、この除去された想定表面層の体積密度を測定する。ここで、想定表面層は、気泡粒板の表面を始点にして、気泡粒板の厚みに厚み比率0.0125を乗じて得られる値を厚みとする。なお、気泡粒板の表面とは、厚み方向に垂直な2つの面のうちの一方をいう。
【0063】
想定表面層の体積密度は、想定表面層の重量を想定表面層の体積で除することにより測定される。想定表面層の体積には、気泡粒板の幅と気泡粒板の奥行と気泡粒板の厚みに0.0125を乗じた値とを乗じた値を用いる。また、想定表面層の重量には、除去された想定表面層自体の重量、または、想定表面層を除去する前後の気泡粒板の重量差を用いる。
【0064】
想定表面層は、その体積密度が、気泡粒の体積密度の200%以上であれば、本発明における「気泡粒が全壊している表面層」とされる。
【0065】
<気泡粒が全壊している裏面層>
裏面層として想定される層(想定裏面層)の体積密度を測定する。具体的には、気泡粒板から想定裏面層を除去し、この除去された想定裏面層の体積密度を測定する。ここで、想定裏面層は、気泡粒板の裏面を始点にして、気泡粒板の厚みzに厚み比率0.0125を乗じて得られる値を厚みとする。なお、気泡粒板の裏面とは、厚み方向に垂直な2つの面のうちの他方をいう。
【0066】
想定裏面層の体積密度は、想定裏面層の重量を想定裏面層の体積で除することにより測定される。想定裏面層の体積には、気泡粒板の幅と気泡粒板の奥行と気泡粒板の厚みに0.0125を乗じた値とを乗じた値を用いる。また、想定裏面層の重量には、除去された想定裏面層自体の重量、または、想定裏面層を除去する前後の気泡粒板(想定表面層は既に除去されている)の重量差を用いる。
【0067】
想定裏面層は、その体積密度が、気泡粒の体積密度の200%以上であれば、本発明における「気泡粒が全壊している裏面層」とされる。
【0068】
<気泡粒が半壊している本体層、気泡粒が無壊である本体層>
本体層として想定される層(想定本体層)の体積密度を測定する。具体的には、想定表面層と想定裏面層とが除去された気泡粒板の体積密度を測定する。
【0069】
想定本体層の体積密度は、想定本体層の重量を想定本体層の体積で除することにより測定される。想定本体層の体積には、気泡粒板の幅と気泡粒板の奥行と気泡粒板の厚みに(1−2×0.0125)を乗じた値とを乗じた値を用いる。また、想定本体層の重量には、想定本体層自体の重量、すなわち、想定表面層と想定裏面層とが除去された気泡粒板の重量を用いる。
【0070】
想定本体層は、その体積密度が、気泡粒の体積密度の120%以上200%未満であれば、本発明における「気泡粒が半壊している本体層」とされる。他方、想定本体層は、その体積密度が、気泡粒の体積密度の100%以上120%未満であれば、本発明における「気泡粒が無壊である本体層」とされる。
【実施例1】
【0071】
次に、本発明の実施例1に係る気泡粒板について説明する。
【0072】
本発明の実施例1においては、まず、次の気泡粒とバインダとを準備した。
(1)気泡粒57kg(75重量%):黒曜石を粉砕して焼成し発泡させた発泡パーライト(黒曜石パーライト)
(2)バインダ19kg(25重量%):水酸化ナトリウム、粘土、水
(a)水酸化ナトリウム6kg(約7.89重量%)
(b)粘土4kg(約5.26重量%)
(c)水9kg(約11.84重量%)
【0073】
次に、気泡粒とバインダとの混合物を作製し、作製された混合物を、金型式成形装置で振動させながら板状に加圧成形し、遠赤外線を10分間照射した上、100〜250度の熱風に20分間さらして乾燥させ、800〜1200度の温度で30分間焼成し、幅が670mm、奥行が970mm、厚みが20mmである気泡粒板を作製した。
【0074】
このようにして作製された気泡粒板における「想定表面層」は、厚みが0.25mmであり、体積密度が492kg/mであった。また、作製された気泡粒板における「想定本体層」は、厚みが19.5mmであり、体積密度が156kg/mであった。また、作製された気泡粒板における「想定裏面層」は、厚みが0.25mmであり、体積密度が486kg/mであった。
【0075】
黒曜石パーライトの体積密度が120kg/mであるため、上記の想定表面層は本発明における「表面層」に該当し、上記の想定本体層は本発明における「本体層」に該当し、上記の想定裏面層は本発明における「裏面層」に該当する。したがって、実施例1に係る気泡粒板は、本発明における「表面層」、「本体層」、及び「裏面層」を備えていた。
【0076】
このようにして作製された気泡粒板の断面写真を図5〜図7に示す。図5は実施例1に係る気泡粒板の一部分を示す断面写真(その1)を示す図であり、図6は実施例1に係る気泡粒板の一部分を示す断面写真(その2)を示す図であり、図7は実施例1に係る気泡粒板の一部分を示す断面写真(その3)を示す図である。
【0077】
図5に示された断面写真においては、表面層の一部と本体層の一部とが示されている。また、図6に示された断面写真においては、本体層の一部が示されている。また、図7に示された断面写真においては、本体層の一部と裏面層の一部とが示されている。
【0078】
(比較例1)
次に、本発明の比較例1に係る気泡粒板について説明する。
【0079】
比較例1においても、実施例1と同様に、次の気泡粒とバインダとを準備した。
(1)気泡粒57kg(75重量%):黒曜石を粉砕して焼成し発泡させた発泡パーライト(黒曜石パーライト)
(2)バインダ19kg(25重量%):水酸化ナトリウム、粘土、水
(a)水酸化ナトリウム6kg(約7.89重量%)
(b)粘土4kg(約5.26重量%)
(c)水9kg(約11.84重量%)
【0080】
次に、気泡粒とバインダとの混合物を作製し、作製された混合物を、金型式成形装置で板状に加圧成形しながら800〜1200度の温度で30分間焼成し、幅が670mm、奥行が970mm、厚みが20mmである気泡粒板を作製した。
【0081】
このようにして作製される気泡粒板における「想定表面層」は、厚みが0.25mmであり、体積密度が156kg/mであった。また、作製された気泡粒板における「想定本体層」は、厚みが19.5mmであり、体積密度が156kg/mであった。また、作製された気泡粒板における「想定裏面層」は、厚みが0.25mmであり、体積密度が156kg/mであった。
【0082】
黒曜石パーライトの体積密度が120kg/mであるため、上記の想定表面層は本発明における「表面層」に該当せず、上記の想定本体層は本発明における「本体層」に該当せず、上記の想定裏面層は本発明における「裏面層」に該当しない。したがって、比較例1に係る気泡粒板は、本発明における「表面層」、「本体層」、及び「裏面層」を備えていなかった。
【0083】
(比較例2)
最後に、比較例2に係る気泡粒板について説明する。
【0084】
比較例2においても、実施例1及び比較例1と同様に、次の気泡粒とバインダとを準備した。
(1)気泡粒57kg(75重量%):黒曜石を粉砕して焼成し発泡させた発泡パーライト(黒曜石パーライト)
(2)バインダ19kg(25重量%):水酸化ナトリウム、粘土、水
(a)水酸化ナトリウム6kg(約7.89重量%)
(b)粘土4kg(約5.26重量%)
(c)水9kg(約11.84重量%)
【0085】
次に、気泡粒とバインダとを混合して混合物を作製し、作製された混合物を、金型式成形装置で振動させることなく板状に加圧成形し、遠赤外線を10分間照射した上、100〜250度の熱風に20分間さらして乾燥させ、800〜1200度の温度で30分間焼成した。
【0086】
しかしながら、比較例2では、気泡粒を板状に形成することができなかった。これは、金型式成形装置による加圧成形に際して、金型を振動させなかったため、気泡粒とバインダとの混合物に実施例1のような表面層及び裏面層が形成されておらず、遠赤外線の照射中、熱風乾燥中、及び焼成中に型崩れしてしまうことが原因と考えられる。
【0087】
したがって、比較例2によっては、板状の気泡粒板を作製することができなかった。
【0088】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、これらの説明は本発明の一例に関する説明であり、本発明は上記説明によって何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態に係る気泡粒板を模式的に示す図である。
【図2】図1中のA−A断面及びB−B断面を示す図である。
【図3】図2(a)中で示された子気泡粒板15の断面について詳細に説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る気泡粒板の製造方法を模式的に示すフローチャートである。
【図5】実施例1に係る気泡粒板の一部分を示す断面写真(その1)を示す図である。
【図6】実施例1に係る気泡粒板の一部分を示す断面写真(その2)を示す図である。
【図7】実施例1に係る気泡粒板の一部分を示す断面写真(その3)を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 親気泡粒板
11〜19 子気泡粒板
20 第1領域
30 第2領域
40 表面層
50 本体層
60 裏面層
70 半壊している気泡粒
80 全壊している気泡粒
90 バインダ
100 無壊である気泡粒
110 ミキサー
120 混合物
130 ホッパー
140 金型式成形装置
141 振動プレス
142 金型
150 圧延式成形装置
151 圧延ローラ
152 振動プレス
153 板
160 板状の成形体
170 遠赤外線装置
180 熱風装置
190 焼成炉
200 親気泡粒板
210 子気泡粒板
L1〜L4 切断線
x 幅
y 奥行
z 厚み


【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡粒60重量%以上90重量%以下とバインダ10重量%以上40重量%以下とが焼結している気泡粒板であって、
前記気泡粒が半壊している本体層と、
厚み比率が1.25%であって前記気泡粒が全壊している表面層と、
が形成されていることを特徴とする気泡粒板。
【請求項2】
気泡粒60重量%以上90重量%以下とバインダ10重量%以上40重量%以下とが焼結している気泡粒板であって、
前記気泡粒が無壊である本体層と、
厚み比率が1.25%であって前記気泡粒が全壊している表面層と、
が形成されていることを特徴とする気泡粒板。
【請求項3】
前記気泡粒及び前記バインダが無機物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気泡粒板。
【請求項4】
気泡粒60重量%以上90重量%以下とバインダ10重量%以上40重量%以下とからなる混合物を作製する混合物作製工程と、
前記混合物作製工程で作製された混合物を振動させながら板状に加圧成形し、前記気泡粒が半壊している本体層と厚み比率が1.25%であって前記気泡粒が全壊している表面層とが形成された板状の成形体を作製する成形工程と、
前記成形工程で作製された板状の成形体を脱水する脱水工程と、
前記脱水工程で脱水された板状の成形体を焼成する焼成工程と、
を有することを特徴とする気泡粒板の製造方法。
【請求項5】
気泡粒60重量%以上90重量%以下とバインダ10重量%以上40重量%以下とからなる混合物を作製する混合物作製工程と、
前記混合物作製工程で作製された混合物を振動させながら板状に加圧成形し、前記気泡粒が無壊である本体層と厚み比率が1.25%であって前記気泡粒が全壊している表面層とが形成された板状の成形体を作製する成形工程と、
前記成形工程で作製された板状の成形体を脱水する脱水工程と、
前記脱水工程で脱水された板状の成形体を焼成する焼成工程と、
を有することを特徴とする気泡粒板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−58982(P2010−58982A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222986(P2008−222986)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(593193756)株式会社三和製作所 (17)
【Fターム(参考)】