説明

気流止め部材

【課題】新築住宅の場合は固より、中古住宅についても、さしたる手間とコストを要することなく、容易に気流止めの措置を実施することができる気流止め部材を提供することを課題とする。
【解決手段】断熱性を有する連続気泡型の発泡プラスチック製で膨縮可能な芯材4が、縮状態で樹脂シート2間に封止されて成り、使用時に穿孔されて前記封止状態が破られることにより、芯材4が膨状態になることを特徴とする。好ましくは、芯材4に、その部分切離又は部分折曲を容易にするための切離線8を入れる。切離線8は縦横に入れ、その縦側切離線と横側切離線の交差部に切残し部9を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気流止め部材に関するものであり、より詳細には、一般住宅における間仕切り壁等の空間を閉塞し、そこを流れる気流を止めて、一般住宅の温熱環境の改善を行うための気流止め部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造軸組工法や鉄骨造の外壁及び間仕切り壁の上下端部は、壁体の内部空間が床下、小屋裏等の断熱区画外に開放されている。この開放状態を放置すると、外気が床下から壁内に侵入し、小屋裏に抜け出るという気流経路が確立される。この気流は、外壁に設置された断熱材の断熱性能を低下させ、また、間仕切り壁に流れる気流は直接住宅内の温熱環境に悪影響を与え、それが一般住宅の温熱環境劣化の一原因となっている。
【0003】
従って、開放されている部位を気密材等によって塞ぐことが必要となる。そのための措置は、「気流止め」と称されている。なお、かつてこの「気流止め」は「通気止め」と称されていたが、「通気止め」なる用語は、通気層を塞ぐかのような印象を与え、誤解されるおそれがあるために、平成21年の住宅・建築の省エネルギー基準の改正により、「気流止め」と改められたものである。
【0004】
この気流止めの措置は、新築住宅の場合は比較的簡単であるが、中古住宅のリフォーム時等において施工するには、多くの手間とコストがかかる。即ち、近時の高気密・高断熱住宅に移行する前の中古住宅を、リフォームにより高気密・高断熱住宅化しようとする場合、既設の外壁や間仕切り壁に新たに気流止めの措置を行うことは容易ではなく、その作業には多くの手間とコストがかかる。
【0005】
また、この気流止めのための部材として、膨張性の芯材を被覆材で被覆し、施工時に被覆材に開口して芯材を膨張させるものがあるが(特許文献1、2)、それらは、運搬中、保管中、あるいは、施工現場等における不注意な取り扱い等により被覆材に穴が開いてしまうと、もはや使用不可となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−287191号公報
【特許文献2】特開2008−297878号公報
【特許文献3】実用新案登録第3031287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、気流止めの措置は、新築住宅の場合は比較的簡単であるが、中古住宅のリフォーム時等において施工するには、多くの手間とコストがかかっていた。そこで本発明は、新築住宅の場合は固より、中古住宅についても、さしたる手間とコストを要することなく、容易に気流止めの措置を実施することができ、また、運搬中、保管中、あるいは、施工現場等における不注意な取り扱い等により封止部に穴が開くようなことがあっても使用が可能であり、更には、設置個所に筋交いや電線(VVFケーブル等)等の邪魔物が存在するような場合において、それらを避けて収まりよく配置することが可能な気流止め部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、断熱性を有する連続気泡型の発泡プラスチック製で膨縮可能な芯材が、縮状態で樹脂シート間に封止されて成り、使用時に穿孔されて前記封止状態が破られることにより、前記芯材が膨状態になることを特徴とする気流止め部材である。
【0009】
一実施形態においては、前記芯材に、前記芯材の部分切除又は部分折曲を容易にするための切離線が入れられる。例えば、前記切離線は縦横に入れ、その縦側切離線と横側切離線の交差部に切残し部を設ける方法で入れる。また、一実施形態においては、前記封止した芯材の周囲に、設置個所に面接触する固定部が設けられる。
【0010】
前記芯材を縮状態にしての封止操作は、前記芯材を2枚の前記樹脂シート間に配置し、その周囲をシールしつつそのシール部内の脱気を行うことにより行い、あるいは、前記芯材を樹脂シート製チューブ内に配置し、その両開口部をシールしつつそのチューブ内の脱気を行うことにより行い、あるいは、前記芯材を樹脂シート製袋内に配置し、その開口部をシールしつつその袋内の脱気を行うことにより行う。
【0011】
また、一実施形態においては、本部材は、使用時に切開又は除去される束縛手段によって束縛状態にされる。前記束縛手段としては、ネット袋を含む袋、バンド、紐、ゴム輪又は樹脂フィルム製ラッピング材の内の1又は複数が用いられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る気流止め部材は、上記のとおり、樹脂シート間に、断熱性を有する連続気泡型の発泡プラスチック製で膨縮可能な芯材を縮状態に封止して成り、使用時に前記封止部に穿孔することにより、前記芯材が膨状態になることを特徴とするものであり、例えば、芯材の封止部周囲の固定部を利用して固定配置した後、単に、その封止部に穿孔するだけで、容易に外壁や間仕切り壁の空間を閉塞して気流止めすることができ、以て、さしたる手間とコストを要することなく、不必要な気流経路を遮断して、住宅の温熱環境が劣化することを防止し得る効果がある。
【0013】
請求項2及び3に記載の発明においては、芯材に、それを部分的に切除又は折曲することが容易なため、筋交いや電線(VVFケーブル等)等が存在する個所に施工する場合、それらを避けて収まりよく配置することが可能且つ容易なる効果がある。
【0014】
請求項8及び9に記載の発明においては、本気流止め部材は、使用時に切開又は除去される束縛手段によって束縛状態にされているので、運搬中、保管中、あるいは、施工現場等における不注意な取り扱い等により封止部に穴が開いても、芯材が膨状態になることが抑えられ、その穴が開いた状態のままでの使用が可能となる効果がある。
【0015】
本発明に係る気流止め部材は、新築住宅における気流止め措置に用いることができることは言うまでもないが、特に、中古住宅のリフォーム時等において、外壁や間仕切り壁に気流止め措置を施す場合に使用するのに好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る気流止め部材の一実施形態の部分省略斜視図である。
【図2】本発明に係る気流止め部材の他の実施形態の斜視図である。
【図3】本発明に係る気流止め部材の更に他の実施形態の縮状態と膨状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示す実施形態の使用状態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る気流止め部材の更に他の実施形態の斜視図である。
【図6】本発明に係る気流止め部材の使用状態を示す図である。
【図7】本発明に係る気流止め部材の他の使用状態を示す図である。
【図8】本発明に係る気流止め部材の更に他の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態につき、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る気流止め部材1は、断熱性を有する連続気泡型の発泡プラスチック製で膨縮可能な芯材3が、縮状態で樹脂シート2間に封止されて成り、使用時にその封止部3が穿孔されてその封止状態が破られることにより、芯材4が復元して膨状態になることを特徴とするものである。
【0018】
一実施形態においては、気流止め部材1は、芯材4を2枚の樹脂シート2間に配置し、その周囲をシールしつつ、その封止部3内の脱気を行うことにより、芯材4を縮状態に封止して構成される(図1参照)。
【0019】
また、他の実施形態においては、気流止め部材1は、芯材4を樹脂シート製チューブ2a内に配置し、そのチューブ2aの両開口部をシールしつつ、その内部の脱気を行うことにより、芯材4を縮状態に封止して構成することができる(図2(A)参照)。この実施形態の変形例として、予め、樹脂シート2又は樹脂シート製チューブ2aから樹脂シート製袋2bを形成し、芯材4をこの樹脂シート製袋2b内に配置し、その開口部をシールしつつ袋内脱気を行うことにより、芯材4を縮状態に封止して構成することもできる(図2(B)参照)。
【0020】
これらいずれの実施形態においても、封止された芯材4の周囲に樹脂シート(チューブ、袋)部分を広く残し、施工場所の部材に面接触し得る固定部5となすことが好ましい。気流止め部材1は、この固定部5を利用して、施工場所の部材に固定されることになる。
【0021】
芯材4を構成する断熱性を有する連続気泡型の発泡プラスチックとしては、ウレタンフォームが好適である。また、樹脂シート2、樹脂シート製チューブ2a及び樹脂シート製袋2bは、通例、ポリエチレン製である。
【0022】
芯材4は、縮状態、換言すれば、押し潰されて脱気された状態で封止部3内に密封されている。従って、使用時に封止部3に穿孔すると、封止部3内に外気が流入し、芯材4が吸気しつつその反発力で膨状態に復元する。そのために芯材4は、脱気及び外気流入の際に膨縮可能な、連続発泡型プラスチックである必要がある。
【0023】
好ましい実施形態においては、芯材4に、その部分切除又は部分折曲を容易にするための切離線8が入れられる。例えば、切離線8は縦横に入れ、その縦側切離線と横側切離線の交差部に切残し部9を設ける方法で入れる(図3参照)。即ち、この場合は、各切離線8によって区切られた部分は、互いに切残し部9を介してつながった状態となっている。
【0024】
このように切離線8を設けた場合は、切離線8に沿って芯材4を引っ張ることによって部分的に切除したり(図4(B)参照)、折曲したりすることが容易となるため、気流止め部材1を筋交い18や電線(VVFケーブル等)等が存在する個所に施工する場合、それらを避けての配置が可能且つ容易となる(図4(A)参照)。なお、このような個所に施工するために、芯材4を細片化して全体的に変形可能にすることも考えられるが、その場合、縮状態に封止加工する際にバラけてまとまりがなくなるという問題が起こる(図3(A)に示すような、中央部にまとまった状態にはならない。)。
【0025】
また、気流止め部材1は、使用時に切開又は除去される束縛手段によって束縛状態にされ、その状態で運搬、保管に供されるようにすることが好ましい。束縛手段としては、ネット袋を含む袋、バンド、紐、ゴム輪、あるいは、樹脂フィルム製ラッピング材等が考えられ、それらが単独で用いられる場合と、それらの内のいくつかが併用される場合とがある。
【0026】
図5に示す例は、束縛手段としてネット袋6を用いたもので、この場合気流止め部材1は、丸めてネット袋6内に収められることにより、その縮状態が保持される。そして、使用時にネット袋6がカットされることにより気流止め部材1が解放され、封止部3の穿孔に伴い、芯材4の自由な膨張が許容される。
【0027】
このように、気流止め部材1が束縛手段によって束縛状態にされた状態で運搬、保管に供されることで、その運搬中や保管中に何らかの外力が加わることにより、あるいは、施工現場等における不注意な取り扱い等により封止部3に穴が開いたとしても、芯材4が膨状態になることが抑えられることになる。そして、気流止め部材1は、その穴が開いた状態のままで使用することも可能である。
【0028】
この気流止め部材1を使用するに当たっては、縮状態の封止部3を、天井裏の束11間や間仕切り壁12間、その他の気流止め措置をしようとする隙間13に配し、封止部3の周囲の固定部5を、例えば、野縁14の上面に張着することにより、その場所に保持する(図7参照)。そして、その状態で封止部3の適宜個所に孔7を開けると、封止部3内に外気が流入し、芯材4が吸気しつつその反発力で膨状態に復元する。それにより、例えば、両側の間仕切り壁12の内面に密着して当該隙間13を閉塞する。
【0029】
気流止め部材1は、図6、7に示すように、固定部5を上側にし、芯材4を下側にして使用するだけでなく、上下逆向き(図1(B)の状態)にして使用することもある。このように上下逆向きにして使用することもあることを考慮し、固定部5は十分に広く、例えば、膨状態にある芯材4の幅の2倍程度の幅とし、野縁に対して十分な当接面積が確保されるようにすることが好ましい。
【0030】
上記のように、例えば、野縁14の上面に張着した固定部5は、気密シートと重ね合わせることにより、その部分の気密保持に用いることができる。また、気流止め部材1は、閉塞する隙間13の上端部(図6における上方の気流止め部材1参照)だけでなく、その下端部(図6における下方の気流止め部材1参照)に配することもできる。好ましくは、上端部及び下端部の双方に配することとし、下端部に配する場合には、図5に示す、ネット袋6に収める実施形態のものが好適である。
【0031】
また、気流止め部材1は、内外壁21、22間の隙間13内において、既設の断熱材10を挟むように用いられることもある(図8参照)。なお、図中15は梁、16は天井板、17は床板を示す。
【0032】
上述したように、本発明に係る気流止め部材1は、その封止部3の周囲の固定部5を、不必要に気流経路を生成する隙間13の周辺部に固定して配置し、単に、封止部3に穿孔するだけで、簡単確実に当該隙間13を閉塞して気流経路を遮断し、以て、住宅の断熱性能の低下を阻止し得るものであるので、新築住宅における気流止め措置については勿論、中古住宅のリフォーム時等における気流止め措置に利用するのに好適なものである。
【0033】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
1 気流止め部材
2 樹脂シート
2a 樹脂シート製チューブ
2b 樹脂シート製袋
3 封止部
4 芯材
5 固定部
6 ネット袋
7 孔
8 切離線
9 切残し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性を有する連続気泡型の発泡プラスチック製で膨縮可能な芯材が、縮状態で樹脂シート間に封止されて成り、使用時に穿孔されて前記封止状態が破られることにより、前記芯材が膨状態になることを特徴とする気流止め部材。
【請求項2】
前記芯材に、前記芯材の部分切離又は部分折曲を容易にするための切離線を入れた、請求項1に記載の気流止め部材。
【請求項3】
前記切離線は縦横に入れ、その縦側切離線と横側切離線の交差部に切残し部を設ける、請求項2に記載の気流止め部材。
【請求項4】
前記封止した芯材の周囲に、設置個所に面接触する固定部を設けた、請求項1に記載の気流止め部材。
【請求項5】
前記芯材を縮状態にしての封止操作は、前記芯材を2枚の前記樹脂シート間に配置し、その周囲をシールしつつそのシール部内の脱気を行うことにより行う、請求項1に記載の気流止め部材。
【請求項6】
前記芯材を縮状態にしての封止操作は、前記芯材を樹脂シート製チューブ内に配置し、その両開口部をシールしつつそのチューブ内の脱気を行うことにより行う、請求項1に記載の気流止め部材。
【請求項7】
前記芯材を縮状態にしての封止操作は、前記芯材を樹脂シート製袋内に配置し、その開口部をシールしつつその袋内の脱気を行うことにより行う、請求項1に記載の気流止め部材。
【請求項8】
使用時に切開又は除去される束縛手段によって束縛状態にされた、請求項1乃至7のいずれかに記載の気流止め部材。
【請求項9】
前記束縛手段として、ネット袋を含む袋、バンド、紐、ゴム輪又は樹脂フィルム製ラッピング材の内の1又は複数が用いられる、請求項8に記載の気流止め部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−149270(P2011−149270A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206038(P2010−206038)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(397025107)日本住環境株式会社 (43)
【Fターム(参考)】