説明

気流発生装置、気流発生装置の製造方法及び風力発電システム

【課題】曲面を持った取り付け面に取り付けることが可能で、且つ、取り付け面の撓みにより破損することがなく、電極間で発生させる放電に対して優れた耐性を持ち長期的な使用が可能な気流発生装置、気流発生装置の製造方法及び風力発電システムを提供する。
【解決手段】マイカ紙にエポキシ樹脂を含浸させ、エポキシ樹脂を硬化することによって形成された絶縁性基体と、絶縁性基体内に埋め込まれた第1の電極と、第1の電極より絶縁性基体の表面側に、かつ、第1の電極との間に絶縁性基体の一部を介在させた状態で配設された第2の電極とを具備し、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加して放電を発生させることにより、気流を発生させる気流発生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、気流発生装置、気流発生装置の製造方法及び風力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
流体工学の分野において、物体表面に放電を生成して、流体機器における空気力学的特性を制御しようとする誘電体バリア型のプラズマアクチュエーターを用いた気流発生装置が注目を集めている。このような気流発生装置は、放電プラズマの作用により発生させた気流により空気力学的特性を改善することで、流体機器における震動や騒音の抑制、或いは、高効率化が可能となるため、特に、風力発電システムの風車翼への適用が期待されている。
【0003】
このような、誘電体バリア型のプラズマアクチュエーターを用いた気流発生装置としては、放電電極と対向電極の2つの電極が、誘電体(絶縁体)を介して配置された構成のものが知られている。このような構成の気流発生装置が、風力発電システムの風車翼に取り付けられ、2つの電極間に電圧を印加することで、電極近傍の気体がイオン化されて風車翼の表面に気流が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−317656号公報
【特許文献2】特開2008−25434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気流発生装置に用いる誘電体(絶縁体)として、窒化アルミ、アルミナ、ジルコニアなどを主成分としたセラミックス材料、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料が挙げられる。しかし、これらの絶縁体を用いた気流発生装置では次のような課題がある。
【0006】
セラミックス材料は、放電に対して強い耐性を持つが、弾性が無いため複雑な曲面により形成される風力発電システムの風車翼に取り付けることが困難である。また、セラミックス材料を絶縁体として用いた気流発生装置を、風車翼に分割して取り付けることができたとしても、風車翼は回転時には撓むため、弾性のないセラミックス材料が破損し、安定した放電により気流を発生させることができない。
【0007】
一方、樹脂材料は、弾性が有り風車翼への取り付けは比較的容易であるが、放電に対する耐性がセラミックス材料と比較して著しく低いため、放電により絶縁体が劣化し、安定した放電を発生させ、安定した気流を発生させることができない。また、樹脂材料は、屋外で使用した場合、紫外線の照射や吸湿により劣化するため、長期的に使用することができない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、曲面を持った取り付け面に取り付けることが可能で、且つ、取り付け面の撓みにより破損することがなく、電極間で発生させる放電に対して優れた耐性を持ち長期的な使用が可能な気流発生装置、気流発生装置の製造方法及び風力発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
気流発生装置の一態様は、マイカ紙にエポキシ樹脂を含浸させ、エポキシ樹脂を硬化することによって形成された絶縁性基体と、前記絶縁性基体内に埋め込まれた第1の電極と、前記第1の電極より前記絶縁性基体の表面側に、かつ、前記第1の電極との間に前記絶縁性基体の一部を介在させた状態で配設された第2の電極とを具備し、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加して放電を発生させることにより、気流を発生させることを特徴とする。
【0010】
気流発生装置の製造方法の一態様は、エポキシ樹脂を含浸させたマイカ紙を、加熱乾燥にて半硬化状態とした複数のプリプレグシートを形成する工程と、複数の前記プリプレグシートを積層させて積層体を構成するとともに、前記プリプレグシートの間に第1の電極を挟み込み、かつ、当該積層体の前記第1の電極より表面側に前記第1の電極との間に前記プリプレグシートの一部を介在させた状態で第2の電極を設置する工程と、前記第1の電極と前記第2の電極と前記プリプレグシートの積層体をプレスしながら加熱して一体化する工程とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、曲面を持った取り付け面に取り付けることが可能で、且つ、取り付け面の撓みにより破損することがなく、電極間で発生させる放電に対して優れた耐性を持ち長期的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る気流発生装置の断面構成を示す図。
【図2】気流発生装置の絶縁体の耐部分放電性の評価方法を示す図。
【図3】第2実施形態に係る気流発生装置の断面構成を示す図。
【図4】一実施形態に係る気流発生装置の製造方法を示す図。
【図5】一実施形態に係る気流発生装置の風車翼への取り付け方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、第1実施形態に係る気流発生装置10の断面構成を示す図である。図1に示すように、気流発生装置10は、マイカ紙1にエポキシ樹脂2を含浸させ、エポキシ樹脂2を硬化することで形成された絶縁性基体3を具備しており、この絶縁性基体3内には、第1の電極4が埋め込まれている。
【0015】
また、絶縁性基体3には、第1の電極4よりも表面側で、かつ、第1の電極4との間に絶縁性基体3の一部を介在させた状態で第2の電極5が配設されている。第2の電極5は、その表面が、外部に露出された状態で配設されていてもよく、絶縁性基体3の一部によって覆われた状態、すなわち第2の電極5が絶縁性基体3の表面近傍に埋設された状態とされていてもよい。なお、気流発生装置10の全体の厚さは、例えば、0.5mmから1mm程度であり、図1では、説明のため長手方向(図1中左右方向)のスケールに対して、厚さ方向(図1中上下方向)のスケールを拡大して模式的に示してある(後述する図2〜5においても同様)。
【0016】
上記構成の気流発生装置10では、図示しない電源から第1の電極4と第2の電極5との間に電圧を印加することによって、放電を生起できるようになっており、この放電によって、絶縁性基体3の表面近傍の気体の一部をプラズマ化することにより、気流を発生させることができるようになっている。
【0017】
上記絶縁性基体3を構成するためのマイカ紙としては、抄造した集成マイカを使用することができる。集成マイカとしては、例えば、硬質無焼成集成マイカ、硬質焼成集成マイカを用いることができる。また、これら集成マイカの機械強度、耐熱性、含浸性を向上させるためにアラミッドのような芳香族ポリアミドのフィブリッド(短繊維)を集成マイカに混合して抄造したり、ガラス短繊維を集成マイカに混合して抄造したりしてもよい。
【0018】
また、マイカ紙の強度を増すため、補強材を使用してもよい。補強材としては、マイカ紙を補強できるものであれば特に制限されるものではなく、ガラスクロス、高分子フィルム(ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムなど)、ポリエステル不織布の絶縁性シート材を使用することができる。
【0019】
より具体的には、例えば、日本理化工業社製の硬質無焼成アラミド繊維混抄マイカテープ(KMF 805A ST,KMF 806E ST,KM 801A ST,KMF 805A STB,KMP 801A STB(いずれも商品名))、日本マイカ製作所社製の硬質集成マイカテープ(ZGB22HDT(商品名))、岡部マイカ工業社製の硬質無焼成集成マイカテープ(DL86−4C,DG86−TD1(いずれも商品名))、硬質焼成集成マイカテープ(DG86,DG88,DGL76(いずれも商品名))等を用いることができる。
【0020】
また、エポキシ樹脂2としては、例えば、ハンツマン社製撥水性エポキシ樹脂(Hydrophobic Cyclo Epoxy (HCEP)、或いは、Shed Hydrophobic Cycloaliphatic Epoxy (S−HCEP)(いずれも商品名))を好適に用いることができる。
【0021】
また、撥水性エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤を組み合わせてもよい。他のエポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノール類などの多価フェノール類や多価アルコールとの縮合によって得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂や、エピクロルヒドリンとガルボン酸との縮合によって得られるグリジジルエステル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネートやエピクロルヒドリンとヒダントイン類との反応によって得られるヒダントイン型エポキシ樹脂のような複素環式エポキシ樹脂などを使用することができる。
【0022】
また、エポキシ樹脂用硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド等のアミン系硬化剤、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘッド酸、無水メチルハイミック酸、ドデセニル無水コハク酸、無水ポリアゼライン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物硬化剤、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール系硬化剤、ポリサルファイド、チオエステルなどのポリメルカプタン系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、フェノール系硬化剤、ルイス酸系硬化剤、イソシアネート系硬化剤を使用することができる。更に、エポキシ樹脂用硬化剤と併用して、エポキシ樹脂の硬化反応を促進或いは制御可能なエポキシ樹脂用硬化促進剤を使用してもよい。
【0023】
また、マイカ紙にエポキシ樹脂を含浸する時に、エポキシ樹脂の粘度を調整するために有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、エポキシ樹脂と相溶し、且つ、粘度を所望の値まで下げることができるものであれば、適宜使用可能であり、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等の有機溶媒、或いは、分子骨格にエポキシ基を有することで硬化物の骨格の一部となることが可能なブチルグリシジルエーテル、アルキレンモノグリシジルエーテル、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテルなどの反応性希釈剤を使用することができる。
【0024】
また、第1の電極4及び第2の電極5を構成する材料は、導電性材料であればよく、その材質が限定されるものではない。第1の電極4及び第2の電極5を構成する材料としては、例えば、ステンレス、インコネル(商品名)、ハステロイ(商品名)、チタン、白金、タングステン、モリブデン、ニッケル、銅、金、銀、すず、クロム等の金属や、これらの金属元素を主成分とする合金、カーボンナノチューブ、導電性セラミックス等の無機良導電体や、導電性プラスチック等の有機良導電体等を使用することができる。
【0025】
また、第1の電極4及び第2の電極5の形状としては、マイカ紙1とエポキシ樹脂2で構成される絶縁性基体3内に埋め込むことができ、且つ、絶縁性基体3の表面、または表面近傍に設置することができる形状であれば、その形状が限定されるものではないが、薄片形状のものを好適に使用することができる。
【0026】
次に、上記構成の気流発生装置10における絶縁性基体3の評価試験を行った結果について説明する。この評価試験では、マイカ紙にエポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を含浸させて加熱硬化することで作製した絶縁体サンプルAと、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を加熱硬化することで作製した比較用の絶縁体サンプルBの耐部分放電性を評価した。
【0027】
耐部分放電性は、図2に示すように、サンプル21の裏面に導電性ペイント22を塗布した後、接地電極23にサンプル21を設置し、ロッド電極24をサンプル21の表面から0.2mmのギャップを空けてセットした。そして、ロッド電極24にAC4kVrmsの電圧を印加することで、平板状のサンプル21の表面を部分放電に曝露させた。1440時間課電後、最も放電劣化された部分の劣化深さを測定した。
【0028】
この劣化深さの測定結果は以下のようになった。
絶縁体サンプルA:15μm
絶縁体サンプルB:210μm
【0029】
上記のように、絶縁体サンプルAでは、絶縁体サンプルBと比べて、放電による劣化深さが非常に小さくなっていることが分かる。絶縁体サンプルAでは、放電に対して優れた耐性を持つマイカ紙がエポキシ樹脂中に含まれている。エポキシ樹脂は有機物であるため放電により、エポキシ樹脂の分子鎖が切断されて劣化が進行する。しかしながら、絶縁体サンプルAでは、マイカ紙が放電に対して弱いエポキシ樹脂を保護するため、優れた耐部分放電性を示す。なお、上記の評価結果は、エポキシ樹脂として撥水性でない通常のビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用したものであるが、撥水性エポキシ樹脂(ハンツマン社製)を使用した場合について評価した結果も、同様な結果となった。
【0030】
次に、撥水性エポキシ樹脂を加熱硬化することで作製した撥水性エポキシ樹脂絶縁体サンプルと、撥水性ではない通常のエポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を加熱硬化することで作製したエポキシ樹脂絶縁体サンプルにおいて、接触角を測定した。接触角は、サンプル表面に水滴を落とし、側面から撮影したサンプル表面の水滴写真から求めた。また、ISO 4892−3:1994 (Plastics − Methods of exposure to laboratory light sources − Part 3: Fluorescent UV lamps)に従い、5000時間に相当する紫外線を照射した後、同様の方法で接触角を測定した。
【0031】
上記の接触角の測定の結果は、以下のようになった。
撥水性エポキシ樹脂絶縁体サンプル:115度(紫外線照射前),105度(紫外線照射後)
通常のエポキシ樹脂絶縁体サンプル:100度(紫外線照射前),70度(紫外線照射後)
【0032】
上記の測定結果のとおり、撥水性エポキシ樹脂絶縁体サンプルでは、通常のエポキシ樹脂絶縁体サンプルと比べて、接触角が大きいことが分かる。これは、撥水性エポキシ樹脂絶縁体サンプルが、優れた撥水性を示していることを意味する。また、紫外線照射後の接触角を比較すると、通常のエポキシ樹脂絶縁体サンプルでは、紫外線によりサンプル表面が劣化し、接触角が著しく低下しているが、撥水性エポキシ樹脂絶縁体サンプルでは、紫外線照射による接触角の低下が小さく、優れた撥水性を維持していることが分かる。
【0033】
一般的に、エポキシ樹脂は、吸水すると絶縁性能が低下する。一方、撥水性エポキシ樹脂を用いた絶縁体サンプルでは優れた撥水性を持ち、紫外線による撥水性の低下も小さいため、屋外で使用した場合、降雨による水を吸水しにくく、長期間に渡り優れた絶縁性能を維持することができる。このため、撥水性エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
本実施形態によれば、樹脂材料を用いた絶縁体であるため、曲面を持った取り付け面に取り付けることが可能で、且つ、取り付け面の撓みにより破損することがなく、電極間で発生させる放電に対して優れた耐性を持ち長期的に使用することができる。
【0035】
次に、第2実施形態について説明する。この第2実施形態に係る気流発生装置20では、図3に示すように、マイカ紙1にエポキシ樹脂2を含浸させ、エポキシ樹脂2を硬化することによって形成した絶縁性基体3のエポキシ樹脂2中に、無機粒子6が分散された構成となっている。この無機粒子6は、その粒径が、例えばミクロンオーダーからナノオーダーの微細な粒子(微粉末)からなる。そして、この無機粒子6が分散された絶縁性基体3内に、第1の電極4が埋め込まれ、第1の電極4より絶縁性基体3の表面側に、かつ、第1の電極4との間に絶縁性基体3の一部を介在させた状態で第2の電極5が配設されている。なお、図3中の下部には、絶縁性基体3の内部の状態を拡大して模式的に示してある。
【0036】
無機粒子6としては、例えば、クレイ、シリカ、アルミナ、或いは、酸化チタン等からなる微粒子、例えば粒径がナノサイズの微粒子を用いることができ、また、これらを単独或いは2種類以上を混合して使用することができる。
【0037】
また、上記の無機粒子6としては、エポキシ樹脂との界面がシランカップリング剤により改質されたものを使用することができる。
【0038】
具体的には、クレイ粒子としては、コープケミカル社製のソマシフME−100、ME、MAE、スメクタイトSWN,STN、SEN(いずれも商品名)、クニミネ工業社製のクニピアF(商品名)、ホージュン社製の精製ベントナイト(ベンゲルシリーズ:ベンゲルW−100、ベンゲルW−100U,ベンゲルW−200U、ベンゲルW−300U、ベンゲルW−300HPなど(いずれも商品名))、ホージュン社製の有機ベントナイト(エスベンシリーズ:エスベン、エスベン C、エスベン E、エスベン W、エスベン WXなど、オルガナイトシリーズ:オルガナイト、オルガナイトD,オルガナイトTなど(いずれも商品名))、Southern Clay Products社製のCloisiteシリーズ(Cloisite Na、Cloisite 30B、Cloisite 10A、Cloisite 25A、Cloisite 20A、Cloisite 15A、Cloisite 6A(いずれも商品名))などを用いることができる。
【0039】
また、ソマシフME−100、スメクタイトSWN、精製ベントナイト、Cloisite Naなど、有機修飾されていないクレイについては、クレイの層間に種々の有機化合物を挿入することで、エポキシ樹脂に対する親和性を付与することができる。クレイの層間に挿入することができる有機化合物としては、アルキルアミン塩及び第4級アンモニウム塩が望ましく、アルキルアミン塩としては、第1〜3級のアルキルアミン塩を使用可能であり、第1級アルキルアミン塩としては、オクチルアミン塩、ラウリルアミン塩、ミリスチルアミン塩、ステアリルアミン塩、ココアルキルアミン塩、牛脂アルキルアミン塩、硬化牛脂アルキルアミン塩、オレイルアミン塩、硬化牛脂アルキルアミン塩などが、第2級アルキルアミン塩としては、ジココアルキルアミン塩、ジ硬化牛脂アルキルアミン塩などが、第3級アルキルアミン塩としては、N,N−ジメチルラウリルアミン塩、N,N−ジメチルミリスチルアミン塩、N,N−ジメチルパルミチルアミン塩、N,N−ジメチルステアリルアミン塩、N,N−ジメチルベヘニルアミン塩、N,N−ジメチルココアルキルアミン塩、N,N−ジメチル牛脂アルキルアミン塩、N,N−ジメチル硬化牛脂アルキルアミン塩、N,N−ジメチルオレイルアミン塩、N−メチルジデシルアミン塩、N−メチルジココアルキルアミン塩、N−メチル硬化牛脂アルキルアミン塩、N−メチルジオレイルアミン塩などが挙げられ、これらのアルキルアミン塩は単独或いは2種類以上の混合物として使用することができる。第4級アンモニウム塩としては、テトラブチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、ジヘキシルジメチルアンモニウム塩、ジオクチルジメチルアンモニウム塩、ヘキサトリメチルアンモニウム塩、オクタトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ドコセニルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリエチルアンモニウム塩、ヘキサデシルアンモニウム塩、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、ステアリルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジオレイルジメチルアンモニウム塩、N−メチルジエタノールラウリルアンモニウム塩、ジプロパノールモノメチルラウリルアンモニウム塩、ジメチルモノエタノールラウリルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンドデシルモノメチルアンモニウム塩、ジメチルヘキサデシルオクタデシルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩などが挙げられ、単独或いは2種類以上の混合物として使用することができる。
【0040】
シリカ粒子としては、日本アエロジル社製のアエロジルシリーズ(AEROSIL 90、AEROSIL 130、AEROSIL 150、AEROSIL 200、AEROSIL 300、AEROSIL OX、AEROSIL TT、AEROSIL 200SP、AEROSIL 300SP、AEROSIL R972、AEROSIL R104、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL R7200など(いずれも商品名)、エルケム・ジャパン株式会社製のNanoSilica 999(商品名)、アドマテック社製のアドマファインシリーズ(SO−E1、SO−E2,SO−C1、SO−C2など(いずれも商品名))、シーアイ化成社製のNanoTek SiO(商品名) などを用いることができる。
【0041】
アルミナ粒子としては、日本アエロジル社製のアエロオキサイドシリーズ(AEROXIDE Alu C、AEROXIDE Alu 65、AEROXIDE Alu 130(いずれも商品名))、アドマテック社製のアドマファインシリーズ(AO−802、AO−502(いずれも商品名))、シーアイ化成社製のNanoTek Al(商品名)などを用いることができる。
【0042】
酸化チタン粒子としては、日本アエロジル社製のアエロオキサイドシリーズ(AEROXIDE TiO P25、AEROXIDE TiO PF2(いずれも商品名)、シーアイ化成社製のNanoTek TiO2、テイカ社製のMTシリーズ(MT−01、MT−100S、MT−100TV、MT−100SA、MT−100HD、MT−300HD、MT−500HD、MT−500Bなど(いずれも商品名))などを用いることができる。
【0043】
無機粒子の表面を改質し、エポキシ樹脂と無機粒子の接着性を改善する、或いは分散した無機粒子がエポキシ樹脂中で再凝集するのを抑制する目的で使用するカップリング剤としては、γ−グリシドオキシ−プロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピル−トリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシラン等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤が使用可能であり、これらのカップリング剤を単独もしくは2種類以上の混合物として使用することができる。
【0044】
次に、上記の無機粒子6による作用、効果を評価した結果について説明する。エポキシ樹脂にシリカナノ粒子(日本アエロジル社製AEROSIL 200)を加えて攪拌した後、加熱硬化することで作製した絶縁体サンプルAと、エポキシ樹脂にシリカナノ粒子(日本アエロジル社製AEROSIL 200)とシランカップリング剤(γ−グリシドオキシ−プロピルトリメトキシシラン)を加えて攪拌した後、加熱硬化することで作製した絶縁体サンプルAと、シリカナノ粒子(日本アエロジル社製AEROSIL 200)とシランカップリング剤(γ−グリシドオキシ−プロピルトリメトキシシラン)を加えて攪拌、分散したエポキシ樹脂でマイカ紙を含浸して加熱硬化することで作製した絶縁体サンプルAと、シリカナノ粒子を含まず、単にエポキシ樹脂を加熱硬化することで作製した絶縁体サンプルBの耐部分放電性を評価した。評価方法は、図2に示した前述した評価方法と同じである。
【0045】
この耐部分放電性の評価の結果、各絶縁体サンプルA1,A2,A3,Bの劣化深さは以下のようになった。
絶縁体サンプルA:75μm
絶縁体サンプルA:25μm
絶縁体サンプルA:5μm
絶縁体サンプルB:210μm
【0046】
上記のとおり、無機粒子を含まない絶縁体サンプルBに比べて、シリカナノ粒子を含む絶縁体サンプルA、A、Aのいずれも、放電による劣化深さが非常に小さくなっている。これは、放電に対して優れた耐性を持つシリカナノ粒子がエポキシ樹脂中に緻密に分散していることによる。
【0047】
すなわち、エポキシ樹脂は有機物であるため、放電によりエポキシ樹脂の分子鎖が切断されて劣化が進行する。しかしながら、シリカナノ粒子がエポキシ樹脂中に緻密に分散している場合、このシリカナノ粒子が放電に対して弱いエポキシ樹脂を保護するため、シリカナノ粒子が含まれていない場合に比べて耐部分放電性が向上する。
【0048】
また、シリカナノ粒子に加えてシランカップリング剤を含む絶縁体サンプルA、絶縁体サンプルAでは、シランカップリング剤を含まない絶縁体サンプルAに比べて更に、放電による劣化深さが小さくなっている。これは、シランカップリング剤が、シリカナノ粒子とエポキシ樹脂の接着性を向上させるため、シリカナノ粒子による保護効果が増すことによる。
【0049】
さらに、シリカナノ粒子とシランカップリング剤を加えて攪拌、分散したエポキシ樹脂をマイカ紙に含浸させて加熱硬化することにより作製した絶縁体サンプルAでは、他のサンプルに比べて放電による劣化深さが最も小さくなっている。これは、マイカ紙によるエポキシ樹脂の保護効果と、シランカップリンブ剤によりエポキシ樹脂との接着性が改善されたシリカナノ粒子による保護効果の2つ保護効果により、放電によるエポキシ樹脂の劣化を最小にすることができるためである。
【0050】
以上のとおり、エポキシ樹脂に、シリカナノ粒子等の無機粒子を分散させること、さらにシランカップリンブ剤等により無機粒子の表面を改質することによって、放電に対して優れた耐性を持つ気流発生装置とすることができ、長期的に使用することが可能となる。
【0051】
本実施形態によれば、マイカ紙にエポキシ樹脂を含浸させ、エポキシ樹脂を硬化することで形成された絶縁性基体としたことにより、曲面を持った取り付け面に取り付けることが可能で、且つ、取り付け面の撓みにより破損することがなく、電極間で発生させる放電に対して優れた耐性を持ち長期的に使用することができる。
【0052】
次に、図4を参照して一実施形態に係る気流発生装置の製造方法について説明する。
【0053】
本実施形態に係る気流発生装置の製造方法では、まず、エポキシ樹脂を含浸させたマイカ紙を、エポキシ樹脂を接着剤として作用させて貼り合わせた後、加熱乾燥にて半硬化状態(Bステージの状態)としたプリプレグシート41を複数形成する。なお、エポキシ樹脂を含浸させたマイカ紙を複数貼り合わせずに、エポキシ樹脂を含浸させた1つのマイカ紙を加熱乾燥にて半硬化状態としたプリプレグシート41を用いてもよい。
【0054】
次に、図4(a)に示すように、プリプレグシート41を積層させるとともに、プリプレグシート41の間に第1の電極42を挟み込み、かつ、この積層体の第1の電極42より表面側に第1の電極42との間にプリプレグシート41の一部を介在させた状態で第2の電極43を設置する。なお、図4(a)には、第2の電極43が表面に露出するように設置した場合について図示されているが、第2の電極43の一部がプリプレグシート41で覆われた状態としてもよい。
【0055】
この後、図4(b)に示すように、プリプレグシート41、第1の電極42、第2の電極43を積層させた積層体を、両側から熱板44で挟み込み、プレスしながら加熱することで積層体を一体化し、気流発生装置40を製造する。この加熱は、例えば、室温から100℃までの加熱を行った後、最終的には150℃程度にまで加熱して10時間程度加熱する。この場合、室温から100℃までの加熱は減圧雰囲気中で行うことが好ましい。このように減圧雰囲気中で加熱することによって、エポキシ樹脂中に含まれる空気等を排出することができる。
【0056】
なお、気流発生装置40の全体の厚さは、例えば、0.5mmから1mm程度とすることが好ましい。このため、例えばマイカ紙の厚さが0.1mm程度である場合、マイカ紙は、気流発生装置40全体として、数枚(例えば、3枚)から10枚程度積層させることが好ましく、さらに、5〜9枚程度(例えば、7枚)積層させることが好ましい。
【0057】
エポキシ樹脂は、室温では液状或いは固形である。このため、第1の電極42及び第2の電極43を、エポキシ樹脂からなる絶縁性基体内に埋め込む、或いは絶縁性基体表面に設置するためには、金型などの容器内に第1の電極42及び第2の電極43を設置した後、液状のエポキシ樹脂或いは、固形エポキシ樹脂を加熱して液状にして、容器内に流し込んだ後に加熱硬化する必要があり、製造工程が非常に複雑となる。
【0058】
一方、本実施形態では、エポキシ樹脂を含浸させたマイカ紙を、エポキシ樹脂を接着剤として貼り合わせた後、加熱乾燥にて半硬化状態としたプリプレグシート41を用いる。これによって、エポキシ樹脂を流し込むための金型(容器)が不要となるため、製造工程を簡略化することができる。つまり、第1の電極42をプリプレグシート41に挟み込み、且つ、プリプレグシート41の表面に第2の電極43を設置し、第1の電極42と第2の電極43とプリプレグシート41を、熱板44でプレスしながら加熱するのみで、気流発生装置40を製造することができる。
【0059】
次に、図5を参照して一実施形態に係る気流発生装置の風車翼への取り付け方法の一例を説明する。図5において、50は、風力発電システムの風車の風車翼の一部を示しており、風力発電システムでは、この風車翼50を有する風車が回転することによって、発電を行う。
【0060】
図5(a)に示すように、プリプレグシート51と第1の電極52と第2の電極53を風車翼50の表面に積層させて設置し、この後、図5(b)に示すように、プリプレグシート51と第1の電極52と第2の電極53の積層体を、曲面を持った熱板54でプレスしながら加熱することで、風車翼50の表面に、気流発生装置55が取り付けられる。気流発生装置55の構成は、図1に示した構成のものでも、図3に示した構成のものであってもよい。なお、プリプレグシート51は、エポキシ樹脂を含浸させたマイカ紙、又は当該マイカ紙をエポキシ樹脂を接着剤として作用させて貼り合わせたものを、加熱乾燥にて半硬化状態(Bステージの状態)としたものである。
【0061】
風力発電システムの風車翼50は曲面により形成されているため、風車翼50の表面にエポキシ樹脂を流し込むための容器(囲い)を設置することは困難である。そのため、プリプレグシート51と第1の電極52と第2の電極53を風車翼50の表面に設置した後、曲面を持った熱板54でプレスしながら加熱することで、曲面により形成された風車翼50に気流発生装置55を簡単に取り付けることができる。
【0062】
以上により、樹脂材料を用いた絶縁体であるため、曲面を持った風力発電システムの風車翼に容易に取り付けることが可能であり、且つ、回転時の風車翼の撓みにより破損することがない。また、電極間で発生させる放電に対して優れた耐性を持ち、屋外で長期的に使用することができる。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1……マイカ紙、2……エポキシ樹脂、3……絶縁性基体、4……第1の電極、5……第2の電極、10……気流発生装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイカ紙にエポキシ樹脂を含浸させ、エポキシ樹脂を硬化することによって形成された絶縁性基体と、
前記絶縁性基体内に埋め込まれた第1の電極と、
前記第1の電極より前記絶縁性基体の表面側に、かつ、前記第1の電極との間に前記絶縁性基体の一部を介在させた状態で配設された第2の電極と
を具備し、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加して放電を発生させることにより、気流を発生させる
ことを特徴とする気流発生装置。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂が、撥水性を有する撥水性エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1記載の気流発生装置。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂に、無機粒子が分散されていることを特徴とする請求項1又は2記載の気流発生装置。
【請求項4】
前記無機粒子が、クレイ、シリカ、アルミナ、酸化チタンのいずれかからなることを特徴とする請求項3記載の気流発生装置。
【請求項5】
前記無機粒子の表面が、シランカップリング剤により改質されていることを特徴とする請求項4記載の気流発生装置。
【請求項6】
エポキシ樹脂を含浸させたマイカ紙を、加熱乾燥にて半硬化状態とした複数のプリプレグシートを形成する工程と、
複数の前記プリプレグシートを積層させて積層体を構成するとともに、前記プリプレグシートの間に第1の電極を挟み込み、かつ、当該積層体の前記第1の電極より表面側に前記第1の電極との間に前記プリプレグシートの一部を介在させた状態で第2の電極を設置する工程と、
前記第1の電極と前記第2の電極と前記プリプレグシートの積層体をプレスしながら加熱して一体化する工程と
を具備したことを特徴とする気流発生装置の製造方法。
【請求項7】
前記プリプレグシートが、複数のエポキシ樹脂を含浸させたマイカ紙を張り合わせて構成されていることを特徴とする請求項6記載の気流発生装置の製造方法。
【請求項8】
風車翼を有する風車を具備し、当該風車が回転することによって発電する風力発電システムであって、
請求項1乃至5いずれか1項記載の気流発生装置が、前記風車翼表面に配設されていることを特徴とする風力発電システム。
【請求項9】
エポキシ樹脂を含浸させたマイカ紙を加熱乾燥にて半硬化状態とした複数のプリプレグシートと、前記の第1の電極と、前記第2の電極とを、前記風車翼表面に設置した後、プレスしながら加熱することで、前記気流発生装置が前記風車翼表面に取り付けられていることを特徴とする請求項8記載の風力発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−64352(P2013−64352A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203433(P2011−203433)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/動的流れ場に対するプラズマ気流制御最適化の研究開発」業務委託、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】