説明

気液接触トレイ

通常の垂直の塔の中で水平に取り付けるのに適した気液接触トレイであって、このトレイは、実質的に円形の周辺を有し、かつ頂部表面と底部表面とを有するトレイ板であって、前記頂部表面と底部表面との間に気体のための通路を備え、上に2つの半円形のトレイ部分がトレイ板の仮想直径線によって画定されるトレイ板と、液体を前記トレイ板の頂部表面からトレイの下方へ導くための全部で3つの降下管であって、各降下管は、トレイ板の中に配置された入口開口部からトレイの下方の降下管出口開口部まで延在する全部で3つの降下管とを含む。前記降下管のうちの2つは半円形トレイ部分の1つの隅部に配置され、第3の降下管は別のトレイ部分の上に、直径線に直角なトレイの半径に実質的に沿って配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体と液体を向流的に接触させるための通常は垂直の塔の中に水平に取り付けるのに適した気液接触トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
具体的には、本発明は、頂部表面と底部表面とを有する実質的に円形周辺を持つトレイ板を含むトレイであって、前記トレイ板は頂部表面と底部表面との間に気体のための通路を備え、トレイ板の頂部表面からトレイの下方へ液体を導くための1つまたは複数の降下管が配置され、各降下管はトレイ板の中に配置された入口開口部からトレイ下方の降下管出口開口部へ延在している、トレイに関するものである。本発明によるトレイを、直径が約1m以上、特に1.2m以上であって、約2m未満、特に1.8m以下である比較的小さな直径の塔の中で使用することができることは特に有利である。
【0003】
本説明または特許請求の範囲の中で気体という用語を使用する場合には、これを蒸気に対しても呼ぶべきである。液体という用語を使用する場合には、これを泡についても呼ぶことができる。
【0004】
直径が1mから2mまでの比較的小さな気液接触塔が、効率的な気液接触トレイの設計のために多くの特定の課題を提示している。
【0005】
伝統的な設計では、単一セグメント降下管が塔内の各トレイの上に配置されている。セグメント降下管とは、降下管の入口開口部の周辺の一部がトレイの周辺(塔の壁)に沿うように、降下管入口開口部が壁の近くに配置された降下管である。垂直気液接触塔の中では、複数のこの種のトレイが積み重ねられ、連続するトレイは塔の軸の周りに180度だけ回転した形であり、こうして各トレイは、降下管の入口開口部とは直径方向に反対側の液体受入れ区域の上で次に高いトレイの降下管出口から液体を受け入れる。しかしこの設計には欠点がある。
【0006】
1つの欠点は、トレイの上の液体の流れ経路長が、トレイの直径から降下管の幅を引いた程度の比較的長いものになることである。これはまず第1に、利点であると考えられるかもしれないが、液体の高さにおける比較的大きな勾配が液体受入れ区域と降下管入口開口部との間に、正規の動作中にトレイの上に発生することがわかる。この液体の不均衡配分は、トレイの効率と、降下管の入口開口部の近くで気体が好ましくは低い液体高さの区域における気体通路を通過する容量とを低下させる。さらにまた、最大液体高さでは、液体はトレイの容量を制限する気体通路を通ってしみ出る可能性がある。
【0007】
単一セグメント降下管のさらに別の問題点は、トレイの上の液体の流れパターンにおいて、いわゆるデッドゾーンが塔壁の近くで受入れ区域と降下管入口開口部との中間に形成されることである。このデッドゾーンは結果的に、流れパターンを改善するための特別の措置を取らない限り、トレイの効率を低下させることになる。
【0008】
さらに別の欠点は、塔の液体負荷が高い場合に、トレイの効率を落とすことなく大きな降下管入口開口部を備えることができないことである。液体負荷を、下記の流れパラメータ
【数1】

として表すことができ、ただし、VおよびVは単位時間当たりの液体と気体の供給容積であり、ρおよびρはそれぞれ液体と気体の密度である。高い液体負荷では、流れパラメータは約0.1であるかまたはこれより大きい。
【0009】
大きな、例えばトレイの全断面積の20%〜27%またはそれ以上の降下管入口開口部を提供するためには、非常に広いセグメント降下管を使用しなければならない。しかし、このような降下管はなお比較的小さな降下管入口長さを有している。降下管入口長さという用語を、液体をトレイから受け入れることができる降下管の周辺の長さのことを指すために、本説明および特許請求の範囲の中で使用する。この長さは、トレイの上に最小の液体高さを提供するために、しばしば越流せき(weir)として与えられる。したがって、降下管入口長さはしばしば、越流せきが配置されていなくても越流せき長さとも呼ばれる。
【0010】
比較的大きな降下管入口面積と組み合わせた比較的短い降下管入口長さは好ましくない。それは、入口長さが液体取扱い容量の制限要素となるからである。これは結果的に、トレイの上における比較的大きな液体高さとなり、これは早まったジェットフラッディングを助長し、したがってトレイの容量を制限するので、一般に望まれない。
【0011】
より大きな降下管入口長さを提供するための、より小さな塔における代替トレイ設計は、いわゆる二路式トレイである。この設計では、塔の中に交互に積み重ねられた2つの形式のトレイが使用される。第1形式のトレイは、トレイの上で互いに直径方向に関して反対側に配置された2つのセグメント降下管を有する。第2形式のトレイは、トレイのある直径に沿って、隣接するトレイのセグメント降下管に平行に配置された単一長方形降下管を有する。この二路式設計における液体流れ経路長さは、トレイの直径から降下管の幅を引いたものの半分程度である。
【0012】
二路式トレイの設計も欠点を有する。第1に、2つのかなり異なった形式のトレイを製造しなければならない。第2に、1つのトレイ形式は通常制限するものとなり、完全に均衡した設計を提供することはほぼ不可能である。例えば、降下管入口長さは両トレイ形式においてかなり異なる。第3に、単一の直径方向降下管を有するトレイにおいては、トレイの上方と下方で、降下管のいずれかの側においてトレイ区域間での流体連絡は通常存在しない。したがって、さまざまな液体レベルが両側に生じることがあり、トレイの下方に蒸気の連絡はなく、これはトレイの効率を低下させる。原則として、流体連絡チャネルを2つの側の間に配置して蒸気連絡の問題を軽減することができるが、これはトレイの複雑さとコストを増すことになる。
【0013】
より大きなトレイのためにしばしば適用される別のトレイ設計では、複数の平行な降下管が、トレイの周辺と仮想直径線との間に配置される。このトレイ設計の例は、米国特許第6460833号明細書、同第6494440号明細書、および同第6588735号明細書に開示されている。2つのトレイ部分の上の降下管の配置は同一であるから、一方のトレイ部分を、トレイの中心の周りに約180度回転することによって他のトレイ部分に変換することができる。降下管の全個数は偶数である。各トレイ部分の上に、少なくとも1つの実質的に長方形の降下管が仮想直径線に直角の線に沿って配置されている。各トレイ部分の上にはまた、1つのセグメント降下管を、仮想直径線とトレイ周辺との間の隅部に配置することができる。2つのトレイ部分の上の降下管は千鳥形配置を形成する。塔の中における隣接するトレイは互いに鏡像であり、仮想直径線を鏡として有する。
【0014】
トレイの上のこの降下管レイアウトは、約2m以上の直径を有する比較的大きな塔について良好に働く。これはまた、さらに小さな直径の塔に適用することもできるが、この設計は、トレイ部分の上における隣接降下管の間の距離の半分程度である流れ経路長さが過度に小さくならない、という制限をますます考慮する必要がある。これは特に、十分な液体取扱い容量を提供するために比較的大きな降下管入口面積をトレイの上に設ける必要がある場合である。新しい塔については、既存の塔を改装するために、最小の流れ経路長さを提供するようにより大きな直径を選びたいが、これは可能ではない。
【0015】
例えば、知られているレイアウトにおいてトレイ部分当り1つの長方形で1セグメントの降下管によれば、全降下管入口面積がトレイの全断面積の18%未満である場合に、仮想直径線に平行な例えば250mmの流れ経路長さを例えば1.5mの直径を有するトレイの上に実現できるのみである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、特に小さな塔において高い液体取扱い容量を有し、トレイの堅固で効率的な動作と費用効果の高い製造を可能にする、気液接触トレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、通常の垂直の塔の中で水平に取り付けるのに適した気液接触トレイであって、
実質的に円形の周辺を有し、頂部表面と底部表面とを有するトレイ板であって、前記頂部表面と底部表面との間に気体のための通路を備え、上に2つの半円形のトレイ部分がトレイ板の仮想直径線によって画定されるトレイ板と、
液体を前記トレイ板の頂部表面からトレイの下方へ導くための全部で3つの降下管であって、各降下管は、トレイ板の中に配置された入口開口部からトレイの下方の降下管出口開口部まで延在する全部で3つの降下管と
を含み、
前記降下管のうちの2つは半円形トレイ部分の1つの隅部に配置され、第3の降下管は別のトレイ部分の上に、直径線に直角なトレイの半径に実質的に沿って配置されている、
気液接触トレイが提供される。
【0018】
本発明は、トレイ部分の1つの隅部にある2つの降下管(以下「隅部降下管」と称する)と実質的にトレイの半径に沿った1つの降下管(以下この降下管が半径の全長に沿って延在する必要がなくても「半径方向降下管」と称する)とを有する、気液接触トレイの特定の有利な設計を提供する。
【0019】
本発明によるトレイを塔の中に積み重ねると、隣接するトレイは塔の軸の周りに互いに180度だけ回転した形であるが、高い方のトレイの降下管の、次に下のトレイへの投影は、鏡軸としての仮想直径線に関する下のトレイ上の降下管の鏡像と一致する。上のトレイのあるトレイ部分における2つの隅部降下管の出口は、下のトレイの半径方向降下管の入口に対して対称的に配置され、上のトレイの半径方向降下管の出口は、下のトレイの隅部降下管の入口の間に対称的に配置されている。したがって、2種類のトレイを製造する必要はない。
【0020】
両トレイ部分における降下管の配置は、1つの半径方向降下管に対して2つの半セグメント(隅部)降下管と、非常に異なっている。この不均斉の結果として、降下管入口長さ、降下管入口面積、および降下管入口長さと降下管入口面積との間の比は、両トレイ部分において一般に異なる。本発明以前には、この不均斉は、2つのトレイ部分の上に液体が不均衡に配分される可能性があるので、トレイの容量および/または効率を制限するという重大な問題を引き起こすと思われていた。しかし本出願人は、この不均斉は実際には問題にならないことを理解した。2つのトレイ部分間の液体のどのような不均衡配分も、結果的に液体高さの大きな勾配になることはない。そのわけは、トレイ部分間が流体の開放連絡状態にあること、および最も近い降下管への液体の最大流れ経路長さがトレイ板のレベルにおいてトレイ直径から降下管の幅(いわゆる頂部の幅)を引いたものの半分程度にすぎず、過度に長くはないことである。必要であれば、両トレイ部分の上の降下管入口長さおよび/または降下管入口面積を、および/または半径方向降下管の幅を、適切に均衡した設計を得るように、例えば隅部降下管の幅と形状を適切に選択することによって個別に調整することができる。
【0021】
適切には、半径方向降下管の降下管入口面積の両半セグメント(隅部)降下管合計の降下管入口面積に対する比は、0.75〜1.25の間にあり、好ましくは0.9〜1.1の間にある。
【0022】
適切には、半径方向降下管の降下管入口長さの両半セグメント(隅部)降下管合計の降下管入口長さに対する比は、0.75〜1.25の間にあり、好ましくは0.9〜1.1の間にある。
【0023】
本発明による3つの降下管による設計は、直径が1m〜2mの小さな塔においても、全トレイ断面積に対して20〜27%およびそれ以上の比較的大きな降下管入口面積についても、良好な気液接触のために十分な長さであるトレイを覆う液体の平均流れ経路長さ(泡区域)を提供する。しかしこの設計はまた、8%またはそれ以下までの、例えば10または15%より小さな相対降下管入口面積についても適している。
【0024】
本発明によるトレイは、トレイ部分を分離する仮想直径線に平行な降下管入口長さの比較的大きな部分を有する。それでも本出願人には、液体の迂回は問題ではないことがわかった。液体の迂回という用語は、液体がある降下管の出口から、下のトレイの別のトレイ部分における最も近い降下管の入口に直接流れることを指すために使用される。隅部降下管の間の液体の迂回の影響を評価するために試験を実施したが、下のトレイの上の隅部降下管入口開口部の側部に仮想直径線に沿って、高い阻流板を置いた。これらの阻流板を置いてもn−ブタン/イソブタン分離実験においてはトレイの効率を顕著に改善することにはならず、トレイの効率は、平衡物質移動と比較して蒸気相において達成される物質移動の小部分として定義されることがわかった。しかし、阻流板を配置するとトレイ容量は著しく低くなることがわかった。
【0025】
本発明によるトレイの利点は、単一セグメントトレイや二路式トレイと比較して降下管入口長さが大きく、この結果、トレイ上の液体高さが低くなり、トレイ容量を増加することである。
【0026】
本発明によるトレイを、1つまたは複数の遠心分離装置を備えた分離トレイを接触トレイに隣接させた配置で、有利に使用することができる。接触トレイを、特に分離トレイと共に一体的に形成することができる。
【0027】
本発明を、図面を参照してさらに詳しく以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1を参照すると、トレイ1は、実質的に円形の周辺6を有するトレイ板5を含む。この周辺の周りに支持リング7が配置され、これによってトレイを垂直な塔(図示せず)の中で水平に取り付けることができる。トレイ板は頂部表面と底部表面を有し、図1ではこのうち頂部表面8が見える。トレイ板は頂部表面と底部表面の間に気体10を通すための通路を備え、この通路を、ふるい孔、可動バルブ、固定バルブ、または当技術分野では知られているその他の気体通路にすることができる。気体10用の通路は、トレイ板の上でいくつかの位置においてのみ示されているが、降下管によって占められていないトレイ板の全自由区域に本質的にわたって延在している。塔においてより高いトレイの降下管の直下の液体受入れ区域において特別の通路を配置するか、または通路を配置しないことも可能である。通路を備えた区域は通常は泡区域と呼ばれる。
【0029】
2つの半円形トレイ部分14、15が、トレイ板5の仮想直径線18によって画定されている。トレイ板の頂部表面からトレイの下方へ液体を導くために3つの降下管21、22、23が、トレイの中に配置されている。各降下管は、トレイ板の中に配置された入口開口部26、27、28からトレイの下方の降下管底部板31、32、33まで延在している。底部板には、液体流の適切な抑制部を形成する出口開口部が配置され、この実施形態では図示するように、出口開口部は長方形のスロット36、37、38の形を有する。図で見ることができるように、底部板はそれぞれの入口開口部よりも小さな断面を有し、傾斜した降下管側壁によって連結され、すなわち降下管は図示するようにいわゆる傾斜降下管である。降下管がいわゆる傾斜降下管であることはふさわしく、これは、各トレイを垂直塔の中で互いに上下に取り付けると、底部板が下方にあるトレイ板の上の液体受入れ区域の上方にある距離をおいて配置されることを意味する。先端を切った降下管がトレイの下方のトレイ間隔の50%〜90%まで延在することはふさわしい。トレイ間隔を、塔における2つの隣接するトレイ板の頂部表面の間の距離として定義することができる。トレイ間隔は0.2m〜1mであることがふさわしい。
【0030】
降下管の内の2つが半円トレイ部分14の隅部41、42に配置されており、これらの隅部は直径線18と周辺6とによって画定されている。隅部降下管41、42は実質的に半セグメント降下管である。各半セグメント降下管の入口開口部26、27は、仮想直径線18に直角をなす長い直線側部46、47と、線18に面してこれに平行な短い直線側部48、49と、周辺6に隣接する曲線の後側部50、51とによって画定される。製造費を節約するために、後側壁を、1枚の平板、または図示するような後側部の湾曲形状に従う多角形の線に沿って適切に組み立てられた複数の平板から製造することもできることは、明らかになるはずである。
【0031】
第3降下管32は別のトレイ部15の上に配置され、直径線18に直角なトレイの半径44に実質的に沿って延在している。半径方向降下管32はいわゆる長方形降下管であり、入口開口部28は、半径44に平行に走り半径44まで等距離にある2つの長い側部53、54と2つの短い側部55、56とによって画定されている。側部55は、選択された距離をおいて直径線18に平行であり、直径線18に面している。周辺6に隣接する側部56を図示するように曲げることができ、または例えば製造費を最小化するために直線にすることもできることは、明らかになろう。
【0032】
この図は、塔における次の高いトレイの降下管の底部板61、62、63の、トレイ板5の上への投影部も示す。
【0033】
塔においてトレイ1が正常に動作している間、液体はトレイ1の上で投影部61、62、63の区域に受け入れられることになる。液体は一般に隣接する降下管の入口に向かって流れ、トレイ上のさまざまな個所における液体の主な流れ方向は矢印65で示されている。この液体の通過中に、気体は気体通路10を通じて泡立つことができるので、気体と液体の親密な接触が達成されて、熱および/または物質の交換が可能になる。
【0034】
液体は、降下管21、22、23の入口開口部26、27、28によって受け入れられ、降下管出口36、37、38を通過して次の下のトレイの上に到る。各隅部降下管21、22の降下管入口長さは、それぞれの長い側部と短い側部46、48および47、49の全長によってそれぞれ形成される。長方形降下管23の降下管入口長さは、側部53、54、および55の全長によって形成される。
【0035】
降下管の短い側部は、本発明によるトレイにおいて全降下管入口長さに対する比較的大きなパーセンテージの一助となっている。本発明以前は、これは、液体が1つのトレイ部分における液体受入れ区域から別のトレイ部分における隣接する降下管の入口へ、例えば区域61から降下管22へ、62から21へ、および63から23へ容易に流れることができるので、トレイの効率に強く影響すると思われていた。このような効果は隅部降下管について最も断言されるべきである。以前に知られているすべての他のトレイ設計とは異なり、トレイ部分14には長方形降下管は存在せず、したがって2つの隅部降下管がこの1つのトレイ部分における降下管のすべてを構成する。
【0036】
この効果を調査するために、区域61と降下管22との間、および区域62と降下管21との間に直接流動を防止する高い阻流板を置いた場合と置かない場合の実験を行った。上述のように、阻流板がない場合はトレイ効率に対する小さい効果が観察されたが、阻流板がある場合はトレイ容量の大きな低下が観察された。直径線に平行な関連する流れ経路長さを、所定の制限値以上に、例えば150mm、200mm、250mm、または300mmに選ぶことが適切である。
【0037】
次に図1に示す各部分を参照して、本発明によるトレイの一例を定量的に検討する。この例のトレイは1500mmの直径を有する。支持リング7は50mmの幅を有し、1400mmの有効トレイ直径を残す。長方形降下管の頂部幅(入口側部55の長さ)は356mmであり、隅部降下管の頂部幅(側部48、49の長さ)は330mmである。側部48、49,55は50mmの距離をおいて線18に平行に走り、必要ならば線18に沿った支持ビームの配置を可能にする。したがって、降下管と同じトレイ部分の上の隣接液体受入れ区域との間の平均距離として計算される流れ経路長さは281mmであり、これはトレイの良好な効率のためには十分に長いが、このレイアウトにおける全降下管入口面積はトレイの断面の27%とむしろ大きい。既に知られているトレイ設計によって、このような小さな直径のトレイのために流れ経路長さと全降下管入口面積の同様な組合せを得ることは不可能であるが、十分に高いトレイ容量と効率のために十分に長い降下管入口長さを維持する。250mm以上の流れ経路長さを維持しながら、本発明によるトレイによって1m〜2mのトレイ直径の全範囲にわたって15%以上の相対降下管入口面積を提供することは可能であり、1.2m〜2mの塔直径のために20%以上の相対降下管入口面積を提供することができる。
【0038】
トレイ上の全降下管入口長さは3458mmであり、このうち1016mmは仮想直径線18に沿って走っている。さらに、長方形降下管23は全降下管入口面積の48%を占め、全降下管入口長さの47%を占め、残りは2つの半セグメント降下管21、22にわたって均等に配分されると計算することができる。したがって、両方のトレイ部分上の降下管の幾何学的外形に大きな相違があるにもかかわらず、本発明によるトレイによって、トレイ部分の間で驚くほど均衡した降下管レイアウトを提供することが可能である。均衡した設計は、トレイ部分間の直交流を最小化するので好ましい。
【0039】
降下管の形状を図1に示す例とは異なるものにすることができるのは明らかである。例えば、長い直線側部と降下管21の側部46および50などの後側部とによって画定される半セグメント降下管入口の鋭い隅部の形状を、降下管入口長さと降下管面積との比を微調整するために変更することができる。鋭い隅部を例えば、側部48と平行なさらに別の直線側部によって切り離すこともでき、これはまた隅部降下管の製造をより簡単でより安価なものにするはずである。隅部降下管入口開口部の長い側部と後側部を、複数の直線側部によって連結することもできよう。
【0040】
次に図2を参照して、本発明によるトレイの特定の適用例を論述する。この適用例では、本発明による接触トレイは、一般に米国特許第5885488号明細書において論述された方法でこの利点を伴って、分離トレイと組み合わせて使用される。
【0041】
図2は、本発明による多数の接触トレイ103a、103b、103cが垂直に積み重ねられて配置された垂直円筒状塔100を概略的に示す。図1を参照して既に使用された参照番号にa、b、またはcが追加されたものは、同じか類似の部分を示す。塔100は、ほぼ塔の軸に沿った縦断面図で示されており、この中にはトレイが配置され、これらの仮想直径線は、紙面においてまたは紙面と平行に半円トレイ部分を画定する。トレイ103aおよび103cは塔の中で同じ配列方向を有し、すなわちそれぞれの降下管は互いに上に配置されている。中間トレイ103bは180度だけ回転した形をしている。図面では、これは、トレイ103a、103cの半径方向降下管23a、cのみが見えており、トレイ103bの隅部降下管21b、22bだけが見えるように表現されている。接触トレイの降下管、例えばトレイ103aの降下管23aは、液体を接触トレイから出口へ、例えば33aへ導くために、次の下の接触トレイ、例えば103bの泡立ち区域の上にある距離をおいて配置されている。泡立ち区域は破線で示されている。
【0042】
気液接触トレイに加えて、分離トレイ113a、113bも設置されている。分離トレイ113aは接触トレイ103aの下方に設置され、分離トレイ113bは接触トレイ103bの下方に設置されている。各分離トレイは、多数の遠心分離装置120を備え、これらの遠心分離装置120は上述のトレイの泡立ち区域に対応する区域にわたって適切に分配されている。一般的な数は、泡立ち区域のm当り10〜30個の分離装置である。
【0043】
分離トレイ113aおよび113bは、塔の中における配置方向を除いて実質的に同様である。分離装置120はプレート125a、125bによって支持されており、これらのプレートを通じて次の高い接触トレイの降下管が延在している。各分離装置120は管状導管である渦流管123を含み、この渦流管123はその下端部に入口を有し、下端部では対応する開口部がプレート125aの中にある。渦流管の内部には羽根、例えば国際公開第2004/073836号パンフレットに開示された渦流分与手段などの羽根組立体を適切に備えた渦流分与手段128がある。
【0044】
渦流管123は、環状Uターン転向板130などの返りスカートを備えている。この返りスカートは渦流管の上端部を覆って配置されている。その他の渦流管も同様なものである。
【0045】
各分離トレイはさらに、プレート125a、bにおける入口開口部から下向きに延在する降下管または降下管パイプ135および136、137の形の、分離トレイから液体を除去するための手段を備えている。分離トレイ113aの降下管135は例えば降下管21bの中に開き、降下管21bは接触トレイ103cの上に開いている。
【0046】
さらに多くの分離トレイと接触トレイを設置できることは理解されよう。実際には、塔の最低分離トレイに属する降下管は、塔の下部の中に開いている。
【0047】
正常動作中、気体は塔100に、塔の下部のトレイ103cの下方にある気体入口(図示せず)を通じて供給される。液体は塔100に、塔の上部のトレイ103aの上方にある液体入口(図示せず)を通じて供給される。塔100の中では、気体と液体は水平接触トレイ103a、b、cの上で接触し、物質および/または熱を交換し、接触後、液体と気体は、塔100の上部にある気体出口(図示せず)を通じて、および塔100の下部にある液体出口(図示せず)を通じて塔100から除去される。過剰液体は降下管21a、b、c、22a、b、c、23a、b、c(図2では降下管のすべては見えない)を通じて接触トレイ103a、b、cから除去される。液体の一部は上向きに流れる気体によって飛沫同伴される。
【0048】
塔の性能は、液体流量に応じての最大気体流量によって決定され、この最大気体流量は、上向きに流れる気体によって液体の飛沫同伴が始まるときの気体流量である。分離トレイ113a、bは、飛沫同伴を減らすことによって塔の性能を向上させるのに役立つ。
【0049】
分離トレイ113a、bの渦流管120の中で、飛沫同伴される液体を伴う上向きに流れる気体は、渦流分与手段によって遠心運動を受け、液体は外向きに投げ飛ばされ、主に渦流管の内壁に沿って、または内壁の近くを上向きに流れる。渦流管の上端部では、液体は内部表面から離脱し、Uターン転向板130によって遮られ、分離トレイのそれぞれの床板に向かって導かれる。ここから、液体は次の下の分離トレイの降下管の中に開いている降下管135、136、137を通じて除去され、こうして液体は、接触トレイの下方の第2分離トレイの泡立ち区域の上に導かれる。
【0050】
渦流管の垂直軸の近くを上向きに流れる流体(特に気体)は遮られず、上の接触トレイに向かって上向きに流れることができる。
【0051】
連続する接触トレイ間の典型的な垂直距離は600mmであるが、300mmなどのもっと短い間隔も可能である。接触トレイと次の下の分離トレイとの間の典型的な距離は200mmである。接触トレイを、下の分離トレイ(図2ではトレイ103aおよび113a、103bおよび113b)などの隣接する分離トレイと共に、これらが1つの塔の中に取り付けられる前でも、一体的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明による気液接触トレイの概略上面図である。
【図2】塔の中における分離トレイと共に、本発明による接触トレイの特定の実施形態を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の垂直の塔の中で水平に取り付けるのに適した気液接触トレイであって、
該トレイが、
実質的に円形の周辺を有し、頂部表面と底部表面とを有するトレイ板であって、前記頂部表面と底部表面との間に気体のための通路を備え、上に2つの半円形のトレイ部分がトレイ板の仮想直径線によって画定されるトレイ板と、
液体を前記トレイ板の頂部表面からトレイの下方へ導くための全部で3つの降下管であって、各降下管は、トレイ板の中に配置された入口開口部からトレイの下方の降下管出口開口部まで延在する全部で3つの降下管と
を含み、
前記降下管のうちの2つは半円形トレイ部分の1つの隅部に配置され、第3の降下管は別のトレイ部分の上に、直径線に直角なトレイの半径に実質的に沿って配置されている、
気液接触トレイ。
【請求項2】
半径方向降下管の入口開口部の面積の両隅部降下管の入口開口部の合計面積に対する比が0.75〜1.25の間にあり、好ましくは0.9〜1.1の間にある請求項1に記載のトレイ。
【請求項3】
全部で3つの降下管の入口開口部の全面積が、トレイの全断面積の20%以上を占める請求項1または2に記載のトレイ。
【請求項4】
半径方向降下管の入口開口部が半径方向降下管の入口長さを画定し、隅部降下管の入口開口部が全隅部降下管の入口長さを画定し、半径方向降下管入口長さの全隅部降下管入口長さに対する比が0.75〜1.25間にある、好ましくは0.9〜1.1間にある請求項1から3までのいずれか一項に記載のトレイ。
【請求項5】
隅部降下管の各々の入口開口部が、仮想直径線と平行な側部と、直径線に直角な側部と、トレイの周辺に実質的に従う側部とを有する請求項1から4までのいずれか一項に記載のトレイ。
【請求項6】
トレイの周辺に実質的に従う前記側部が、少なくとも部分的に直線状に通っている請求項5に記載のトレイ。
【請求項7】
直径線に直角な側部とトレイの周辺に実質的に従う側部が、降下管入口開口部の1つまたは複数のさらなる側部によって連結されている請求項5または6に記載のトレイ。
【請求項8】
接触トレイに隣接する分離トレイを伴う配置において、前記分離トレイが1つまたは複数の遠心分離装置を備えている請求項1から7までのいずれか一項に記載のトレイ。
【請求項9】
接触トレイが分離トレイと共に一体的に形成されている請求項8に記載のトレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−515280(P2007−515280A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546175(P2006−546175)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053633
【国際公開番号】WO2005/061070
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】