説明

気道通路を制御するためのインプラントシステム

皮下インプラント装置を作動させるための技法が開示されている。インプラント装置は、核磁気共鳴画像化法(MRI)の様な診断法に適合している非磁性材料で形成することができ、外部磁界の影響下に回転する回転子要素を含むことができる。インプラント装置は、インプラント装置と患者の舌の一部分の間に印加される過剰な荷重を緩めるための張力緩和機構を含んでいる。非植込装置は、外部磁界を生成するための固定子及び駆動回路構成を含むことができる。非植込装置は、ユーザーコマンドを受信し、コマンドに基づいて外部磁界を変えることができる。インプラント装置は、磁界によって起動されると、その作動状態を変化させ、患者の身体と作用し合うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001]本出願は、2009年2月18日出願の米国仮特許出願第61/153,455号の恩典を主張している国際特許出願である2010年2月18日出願の国際特許出願第PCT/US10/024604号の一部継続出願であり、本出願は、更に、2010年2月18日出願の米国仮特許出願第61/305,934号並びに2009年5月28日出願の米国仮特許出願第61/182,041号の恩典を主張しており、上記各出願の内容全体を参考文献としてあらゆる目的で本明細書に援用する。
【0002】
[0002]本発明は、概括的には医療装置に、より厳密にはインプラントの作動に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]いびきは、睡眠中の呼吸時に軟口蓋と口蓋垂の振動が原因で引き起こされる雑音である。いびきは人間によく見受けられるものであって、いびきはどれもが悪いというわけではない。しかしながら、いびきは時間を経るにつれ憎悪する可能性があり、治療せずに放置すると無呼吸の原因になるとも限らない。
【0004】
[0004]無呼吸の人では睡眠時に呼吸が停止し、夜中に何百回となく停止することも往々にしてある。普通、無呼吸は、睡眠中に咽喉の筋肉と舌が弛緩して気道の開口部を部分的に塞いだときに起こる。舌の付け根の軟口蓋筋肉と口蓋垂が弛緩し垂れると、気道が遮られてゆき、呼吸するのに労力を要したり雑音を発したりし、呼吸が完全に止まってしまうことすらあり得る。睡眠時無呼吸は同様に肥満の人々では気道の過剰な量の組織が気道を狭めてしまって起こることがある。
【0005】
[0005]一晩に、不随意な呼吸一時停止又は「無呼吸事象」の回数が、1時間当たり20回から60回又はそれ以上という高い回数になることもある。これらの呼吸一時停止があると、ほぼ決まって無呼吸の発作と発作の間にいびきが起こる。睡眠時無呼吸は窒息感を特徴とすることもある。
【0006】
[0006]睡眠時無呼吸は、かかりつけ医、呼吸器科医、神経科医、又は睡眠障害の専門訓練を受けた他の医師らによって診断、治療される。睡眠が妨げられるには多くの異なった理由があるため、睡眠時無呼吸の診断は容易ではない。
【0007】
[0007]睡眠時無呼吸のための具体的な療法は、個々の患者に対し、病歴、身体診察、及び睡眠ポリグラフ検査の結果に基づいて誂えられる。薬物療法は、一般に、睡眠時無呼吸の治療には有効でない。心不全によって引き起こされる中枢性無呼吸の患者では時に酸素が使用されるが、閉塞性睡眠時無呼吸を治療するのには使用されない。
【0008】
[0008]持続的気道陽圧法(CPAP)は、睡眠時無呼吸の最も一般的な治療法である。この処置では、患者は睡眠時に鼻と口を覆うマスクを着用し、送風機からの圧力が空気を押して空気の通り道を通過させる。空気の圧力は、睡眠中に咽頭が虚脱するのを防ぐのにちょうど足りるように調節される。圧力は一定で持続性である。CPAPはそれが使用されている間は気道閉鎖を防止するが、CPAPが停止するか又は不適切に使用された場合は無呼吸発作がぶり返す。
【0009】
[0009]CPAP装置の多くの変型が利用可能である。どれもに、鼻の刺激感や乾燥、顔面皮膚過敏、腹部膨満、マスクの漏れ、ただれ目、及び頭痛といった様な同じ副作用がある。CPAP装置には、圧力を当人の呼吸パターンに一致するように変化させる種類もあれば、低い圧力から開始してゆっくりと上昇させてゆき当人を寝入らせてから最大規定圧力を印加するものもある。
【0010】
[0010]軽度から中度の睡眠時無呼吸の患者の一部やいびきはかくが無呼吸はないという者には、下顎と舌を正常な位置に戻す歯科装置が役立っている。歯科医又は歯科矯正医は、その様な装置を患者に合うように誂えることができる。
【0011】
[0011]睡眠時無呼吸の患者には手術が必要な者もいる。気道のサイズを大きくするために幾つかの外科的処置が用いられているが、完全に成功しているもの或いは危険性を伴わないものはどれ1つとしてない。患者が何らかの恩恵を実感するまでには2つ以上の処置を試してみることが必要であるかもしれない。より一般的な処置の一部には、アデノイド及び扁桃腺の除去(特に小児)、鼻茸又は他の腫瘤の除去、又は気道の他の組織の除去、及び構造的奇形の矯正が含まれる。老年患者よりも若年患者のほうがこれらの外科処置から恩恵を受けることが多いように思われる。
【0012】
[0012]口蓋垂口蓋咽喉形成術(UPPP)は、咽喉の奥の余分な組織(扁桃腺、口蓋垂、及び軟口蓋の一部)を除去するのに用いられる処置である。この技法の成功率は30%から60%の範囲であろう。長期の副作用と恩恵が知られており、どの患者ならこの処置が巧くいくということを予見するのは難しい。
【0013】
[0013]レーザー支援型口蓋垂軟口蓋形成手術(LAUP)は、いびきを解消するために行われるが、睡眠時無呼吸の治療に有効であるとは示されていない。この処置は、咽喉の奥の組織を取り除くためのレーザー装置の使用を伴う。UPPP同様、LAUPはいびきを軽減又は解消するが、睡眠時無呼吸を解消することはできない。睡眠時無呼吸の一次症状であるいびきが病態への感化なしに解消されるということには、LAUPを受けることを決めた患者の睡眠時無呼吸の診断及び見込まれる治療を遅らせてしまうという危険性が内在する。裏に睡眠時無呼吸が潜んでいる可能性を見極めるために、通常はLAUPが施行される前に睡眠検査が求められる。
【0014】
[0014]ソムノプラスティは、RFを使用して口蓋垂及び後舌面の様な一部の気道構造のサイズを縮小する処置である。この技法はいびきを低減するには役に立つが、無呼吸の治療法としては研究段階である。
【0015】
[0015]命を脅かす重度の睡眠時無呼吸の人には器官形成術が用いられる。この処置では、気管に小さな孔が開けられ、開口部に管が挿入される。この管は、覚醒時には閉じられたままであって、当人は普通に呼吸したり喋ったりする。それは、睡眠中には、空気が上気道の如何なる障害物をも迂回して直接肺の中へ流れるように開かれる。この処置は有効性が高いが、まれにしか用いられない非常手段である。
【0016】
[0016]睡眠時無呼吸が下顎の奇形によって引き起こされている患者であれば外科的再建から恩恵を受けることができるかもしれない。病的肥満の睡眠時無呼吸患者では、時に、肥満を治療するための外科的処置が勧められる。生活習慣を変えることが治療プログラムの重要部分であり、中度の症例では、必要なのは生活習慣療法だけという場合もある。太り過ぎの人は、減量から恩恵を受けることができる。殆どの患者では、体重を10%落としただけでも無呼吸事象の回数は減ってくる。
【0017】
[0017]無呼吸のある人たちは、アルコールや催眠薬を使用すると睡眠中に気道が虚脱し易くなり且つ無呼吸期間を長引かせることになるので、それらの使用を控えるべきである。中度の睡眠時無呼吸の患者には、仰臥位で眠っている場合だけ呼吸一時停止が起こる者もいる。その様な症例では、患者が横臥位で眠るのを支援する枕又は他の装置を使用することが助けとなるであろう。
【0018】
[0018]近年、ミネソタ州セントポールのレストア・メディカル社(Restore Medical, Inc.)は、ピラー技法と呼ばれる、いびき及び無呼吸の新しい治療法を開発した。ピラーシステムは、3つ又はそれ以上の小型のポリエステル製ロッド装置を患者の軟口蓋に設置する処置を伴う。ピラーシステムは、口蓋を堅くし、組織の振動を低減し、起こりうる気道の虚脱を防止する。しかしながら、軟口蓋の堅いインプラントは、患者の、発話、嚥下能、咳やくしゃみをするといった様な正常な機能を阻害しかねない。インプラントの気道内への張り出しは、もう1つの長期懸念事項である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際特許出願第PCT/US10/024604号
【特許文献2】米国仮特許出願第61/153,455号
【特許文献3】米国仮特許出願第61/305,934号
【特許文献4】米国仮特許出願第61/182,041号
【特許文献5】米国特許出願第12/250,398号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
[0019]いびき及び/又は無呼吸の現在の治療法は有効でなく副作用があるため、更なる治療選択肢の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
[0020]本発明の1つの実施形態は、舌を安定させるための植込式装置を提供している。植込式装置は、下顎アンカーを含むことができる。下顎アンカーにはアクチュエータ機構を固定することができる。舌アンカーを舌の付け根に錨着させることができる。連接部がアクチュエータ機構を舌アンカーに接合している。連接部は、アクチュエータ機構の作動に応えて舌アンカーへ牽引力を働かせるように適合されている。張力緩和機構は、下顎アンカーと舌アンカーの間の力が閾値を超えた場合に連接部がアクチュエータ機構に対して動くことを許容するように適合されている。
【0022】
[0021]植込式装置の1つの態様では、アクチュエータ機構は、シャフトに結合されている回転子を含んでおり、アクチュエータ機構の牽引力は回転子の回転に基づいていてもよい。
【0023】
[0022]植込式装置の別の態様では、回転子は、植込式装置の外部の電磁界の影響下に回転するように適合されていてもよい。
【0024】
[0023]植込式装置の別の態様では、アクチュエータ機構は、更に、シャフトに結合されている入力と連接部に結合されている出力とを有する歯車箱を含んでいてもよい。
【0025】
[0024]植込式装置の別の態様では、歯車箱は、シャフトの回転速度に対して回転速度を減少させた出力を提供するように適合されている、遊星歯車箱、平歯車列、ワーク歯車、油圧式ポンプ、空圧式ポンプ、摩擦クラッチ、ねじ機構、ばね機構、押圧型玉軸受機構、及び滑車システムのうちの1つであってもよい。
【0026】
[0025]植込式装置の別の態様では、歯車箱の出力にスプールが結合されていて、連接部は、一方の端がスプールに結合されていてもう一方の端が舌アンカーに結合されている係留紐を含んでいてもよい。
【0027】
[0026]植込式装置の別の態様では、連接部分は、剛性構造を含んでいてもよい。
【0028】
[0027]植込式装置の別の態様では、張力緩和機構は、ばねを含んでいてもよい。
【0029】
[0028]植込式装置の別の態様では、連接部分は、ばねの張力に関連する可撓性を有していてもよい。
【0030】
[0029]植込式装置の別の態様では、ばねは、下顎アンカーと舌アンカーの間の力が閾値を超えると伸長し始めることになる。
【0031】
[0030]植込式装置の別の態様では、ばねは、アクチュエータ機構と舌アンカーの間の連接部の一部を形成していてもよいし又は当該連接部と直列になっていてもよい。
【0032】
[0031]植込式装置の別の態様では、ばねは、閉鎖コイルばねであってもよい。
【0033】
[0032]植込式装置の別の態様では、張力緩和機構は、引張部材間に捕捉される押圧要素を含んでいてもよい。
【0034】
[0033]植込式装置の別の態様では、第2の舌アンカーが提供されていて、連接部は、それぞれが一方の端をアクチュエータ機構に結合され、もう一方の端を各々の舌アンカーに結合されている、第1係留紐と第2係留紐を含んでいてもよい。
【0035】
[0034]植込式装置の別の態様では、第2アンカーの場所は、第1アンカーの場所と異なっていてもよい。
【0036】
[0035]植込式装置の別の態様では、牽引力は10N未満であってもよく、閾力値は1Nより大きくてもよい。
【0037】
[0036]植込式装置の別の態様では、牽引力は2−5Nの範囲にあってもよく、閾力値は2Nより大きくてもよい。
【0038】
[0037]植込式装置の別の態様では、舌アンカーは、閾値より下になると途中まで又は一杯まで伸長するように構成されている引張ばねを含むことができる。
【0039】
[0038]植込式装置の別の態様では、引張ばねは、舌の付け根にねじ込むように構成されていてもよい。
【0040】
[0039]植込式装置の別の態様では、引張ばねは、複数の弾性錨着部材に接続されていてもよい。
【0041】
[0040]本発明の別の実施形態は、患者身体の下顎の近傍へ挿入するように適合されている植込式装置を用いて舌を安定させる方法を提供している。電磁界を植込式装置の回転子に受ける。回転子が電磁界の影響下に回転すると安定化力が発現する。安定化力は、係留紐を介して舌に伝達される。安定化力は、係留紐に掛かる総力が閾値を超えると解放される。
【0042】
[0041]方法の1つの態様では、安定化力は、係留紐に掛かる総力が閾値を超えなくなれば回復される。
【0043】
[0042]方法の別の態様では、安定化力を発現させる段階は、歯車箱を使用して、回転子の回転によって生成されるトルクを増加させる段階を含んでいてもよい。
【0044】
[0043]方法の別の態様では、安定化力を伝える段階は、係留紐を側方に変位させる段階を含んでいてもよい。
【0045】
[0044]方法の別の態様では、係留紐は、植込式装置の横軸に沿って側方に変位させられてもよい。
【0046】
[0045]方法の別の態様では、係留紐は、植込式装置の横軸に沿って案内されていてもよい。
【0047】
[0046]方法の別の態様では、安定化力を解放する段階は、植込式装置のばねを伸長させる段階を含んでいてもよい。
【0048】
[0047]方法の別の態様では、安定化力は、植込式装置のクラッチ機構を係合解除する段階を含んでいてもよい。
【0049】
[0048]方法の別の態様では、係留紐に掛かる総力は、安定化力と外力の和を含むものであってもよい。
【0050】
[0049]方法の別の態様では、安定化力を伝える段階は、下顎と舌の間に張力を印加する段階を含んでいてもよい。
【0051】
[0050]本発明の別の実施形態は、舌を安定させるための別の植込式装置を提供している。植込式装置は、当該装置の第1部分を患者の下顎に固定するための手段を含むことができる。植込式装置は、更に、当該装置の第2部分を患者の舌に固定するための手段を含むことができる。植込式装置は、更に、当該装置の外部の源から受ける電磁界に応えて安定化力を発現させるための手段を含むことができる。植込式装置は更に、安定化力を患者の舌に伝えるための手段を含むことができる。植込式装置は、更に、患者の下顎と当該装置によって担持されている患者の舌の間の力が所定の閾値を超えると安定化力を解放するための手段を含むことができる。
【0052】
[0051]本発明の別の実施形態は、舌を安定させるための別の植込式装置を提供している。植込式装置は、下顎アンカーを含むことができる。下顎アンカーにはアクチュエータ機構を結合することができる。アンカー装置は、アクチュエータ機構のハウジング内に配置されていて、外部電磁界の影響下に回転するように適合されている、回転子を含むことができる。回転子にはシャフトが結合されている。シャフトには入力に歯車箱が結合されていて、歯車箱はシャフトの回転に対してトルクを増加させ回転速度を減少させた出力を提供するように適合されている。植込式装置は、更に、クラッチプレートとコイルばねを含んでいる減結合機構を含むことができる。クラッチプレートは、コイルばねによって、減結合機構が第1位置では歯車箱の出力に準じて回転し第2位置では歯車箱の出力とは独立に回転するように付勢されている。歯車箱の出力にはスプールが結合されている。植込式装置は、更に、舌の付け根に係合するように適合されている舌アンカーを含むことができる。植込式装置は、更に、スプールに結合されている第1端と舌アンカーに結合されている第2端を有していて、アクチュエータ機構の作動に応えて側方に変位させられるように配設されている、係留紐を含むことができる。減結合機構は、コイルばねに掛かる力が閾値を超えると第1位置から第2位置へ移行し、コイルばねに掛かる力が閾値より下になると第1位置へ戻る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】本発明の或る実施形態による、患者体内に植え込まれた舌インプラントシステムの断面図を示している。
【図1B】本発明の或る実施形態による舌インプラントシステムの動力伝達態様を説明している模式図である。
【図1C】本発明の或る実施形態による舌インプラント装置の模式図である。
【図1D】本発明の或る実施形態による、使用中の図1Cの舌インプラント装置の模式図である。
【図1E】本発明の前記実施形態による、使用中の図1Cの舌インプラント装置の模式図である。
【図2A】本発明の或る実施形態による、舌インプラントを制御するための装置の分解斜視図及び完成斜視図を示している。
【図2B】本発明の或る実施形態による、インプラント制御回路の機能ブロック図である。
【図3】本発明の或る実施形態による、外部電磁界の態様を示している磁束の説明図である。
【図4A】本発明の或る実施形態による固定子の図である。
【図4B】本発明の別の実施形態による固定子の図である。
【図4C】本発明の別の実施形態による固定子の図である。
【図4D】本発明の別の実施形態による固定子の図である。
【図4E】本発明の別の実施形態による固定子の図である。
【図4F】本発明の別の実施形態による固定子の図である。
【図5】本発明の或る実施形態による、舌インプラントを作動させるための方法の例示としてのフローチャートである。
【図6A】本発明の或る実施形態による舌インプラント装置の斜視図である。
【図6B】図6Aの舌インプラント装置の分解側面図である。
【図6C】図6Aの舌インプラント装置の分解部分斜視図である。
【図6D】本発明の或る実施形態による、使用中の図6Aの舌インプラント装置の斜視図である。
【図7A】本発明の或る実施形態による舌インプラント装置の斜視図である。
【図7B】本発明の別の実施形態による舌インプラント装置の斜視図である。
【図7C】本発明の別の実施形態による舌インプラント装置の斜視図である。
【図7D】本発明の別の実施形態による舌インプラント装置の斜視図である。
【図7E】本発明の実施形態による図6Aの舌インプラント装置と図7Cの舌インプラント装置の作動を比較している側面図である。
【図7F】図7Cの舌インプラント装置の断面図である。
【図7G】図7Dの舌インプランの装置の部分透視斜視図である。
【図8】本発明の或る実施形態による舌インプラント装置の斜視図である。
【図9A】本発明の或る実施形態による舌インプラント装置の部分透視斜視図である。
【図9B】本発明の或る実施形態による、使用中の図9Aの舌インプラント装置の斜視図である。
【図10A】本発明の或る実施形態による可撓性アンカーの斜視図である。
【図10B】本発明の別の実施形態による可撓性アンカーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
[0073]本開示の実施形態の特徴、目的、及び利点は、以下に述べられている詳細な説明を図面と併せて考察することから更に明らかになってゆくものであり、図中、同様の要素には同様の符号番号が付されている。
【0055】
[0074]皮下インプラント装置を作動させるための技法が開示されている。インプラント装置は、核磁気共鳴画像化法(MRI)の様な診断法に適合している非磁性材料で形成することができ、外部磁界の影響下に回転する回転子要素を含むことができる。インプラント装置は、過剰な荷重が装置を損傷させ患者を傷付けるのを防ぐために張力緩和機構を提供することができる。非植込装置は、外部磁界を生成するための固定子及び駆動回路構成を含むことができる。非植込装置は、ユーザーコマンドを受信し、コマンドに基づいて外部磁界を変えることができる。インプラント装置は、磁界によって起動されると、その作動状態を変化させ、それにより患者の身体と作用し合う。出願人の同時係属特許出願である2008年10月13日出願の第12/250,398号(弁理士整理番号第026705−001400US)は、本発明の実施形態に関係のある追加の詳細を開示しており、同出願を参考文献としてあらゆる目的で本明細書に明示的に援用する(特許文献5)。
【0056】
[0075]図1Aは、本発明の或る実施形態による舌インプラントシステム100の簡略図である。本図では、要素110は舌を表し、要素120は下顎を表している。インプラントシステム100は、患者の身体の中へ挿入されているインプラント130と、患者の外部に在る非植込部分140を含んでいる。非植込部分140は、舌110と作用し合うことによって気道通路障害を回避するようにインプラント130の作動を制御する。
【0057】
[0076]幾つかの実施形態では、インプラント130は、アンカー部分とアクチュエータと接続部材を含んでいる。アンカー部分は、インプラント130を下顎120に固定するのに使用されており、チタン製ブラケットとチタン製骨ねじを含んでいてもよい。アクチュエータは、回転外部磁界を回転運動へと変換するトランスデューサとなり得る。例えば、アクチュエータは、外部磁界下に回転するように構成されている導体を含むことができる。接続部材は、アクチュエータと舌の間に配置されていて、その方向に応じ、アクチュエータの回転が舌と作用し合えるようにしている。
【0058】
[0077]接続部材は、アクチュエータの回転を直線運動に転換する、シャフト又はねじの様な機械的手段を含むことができる。幾つかの実施形態では、接続部材は、一端が舌の付け根に固着され他端がシャフト又はねじに固着されている可撓性部分又はファイバーを含んでいる。アクチュエータの回転は、こうして、舌と作用し合って所望の動作を発生させる接続部材の直線変位へと転換される。接続部材は、更に、接続部材に作用する牽引力が所定の閾を超えると接続部材の全部又は一部を係合解除する、ばね支援式クラッチの様な張力緩和機構を含むことができる。
【0059】
[0078]非植込部分140は、インプラント130の作動を制御するように構成されている。幾つかの実施形態では、非植込部分140(「制御器」ともいう)は、患者の身体のインプラント130が設置されている場所又はその近傍の場所とインターフェースするように適合されているハウジングを含んでいる。示されている様に、制御器140は、患者の頤を受ける輪郭の付いた部分を有している。輪郭の付いた部分は、制御器がインプラント130の何ヵ所かの面に向かい合うようにしてインプラント130を部分的に包囲できるようにしている。例えば、制御器140は、患者に係合させたときにインプラントに関して略半球面状の被覆域を形成することができる。
【0060】
[0079]制御器140は、インプラントを作動させるための磁界を発生させるように構成することができる。1つの実施形態では、制御器140は、固定子要素を含んでいる。固定子は、強磁性の芯を有することができる。強磁性の芯は、単一材料片から形成されていてもよい。幾つかの実施形態では、強磁性の芯は複数の薄板から形成されている。固定子要素は、それぞれが導電性巻線を受け入れるように適合されている複数の極を有することができる。極と巻線の数は変えることができる。幾つかの実施形態では、固定子要素は、4つの極と2つの導電性巻線を有していて、それらは巻線それぞれが2つの異なった極を橋渡しするように配設されている。
【0061】
[0080]図1Bは、インプラントシステム100の態様を説明している概念図である。この図は、固定子要素150と回転子要素170の間の相互作用を示している。固定子150は、制御器140の一部であり、患者身体の外部のインプラントの部位に近い位置に在ることが示されている。回転子170は、インプラント130のアクチュエータ部分の一部であり、皮膚の下に位置している。インプラント130及び非植込部分140の他の態様は、固定子150と回転子170の間の相互作用の説明を分かり易くするために省略されている。
【0062】
[0081]固定子150は、巻線155、160と芯165を含んでいる。示されている様に、芯165は、端が面取りされた4つの細長い極を有しており、それぞれの極は関連付けられている巻線のための支持を提供している。作動時、駆動回路が交流電流を巻線に供給し、電流フロー間の位相関係を制御する。それぞれの巻線の交流電流は、変化を、即ち患者の身体の回転子170の近傍を通過することのできる磁界を、作り出す。まとめると、交流電流は固定子150に関連してシフト又は回転する磁界を発生させる。回転磁界の方向と磁界の強さは、電流フローを制御することによって変化させることができる。
【0063】
[0082]回転子170は、変化する磁界の影響下に動く。示されている様に、回転子170は、インプラント装置内で軸周りに旋回することのできる中空円筒形構造とすることができる。回転子170は、中実表面(例えば管)又は1つ又はそれ以上の開口部を有する面を有するものとすることができる。1つの実施形態では、回転子170は、それぞれの端がリングで接合されている複数の細長い導電部材を有するリス籠設計を有するものとすることができる。回転子170の多くの変型が本発明の範囲内で実施可能である。
【0064】
[0083]回転子170は銅の様な非磁性材料で形成されているのが好適である。他の適した非磁性材料には金及び銀を含めることができる。幾つかの実施形態では、インプラント130は、核磁気共鳴画像化法(MRI)や他の診断法への干渉を回避するために全体が非磁性材料で作製されている。固定子150からの磁界は、回転子170の電流フローを誘導することができる。誘導電流と回転磁界の間の相互作用が回転子170をその軸周りに旋回させる、又は回す。インプラント130は、こうして外部磁界からのエネルギーを舌と作用し合うのに使用される機械的エネルギーへ変換することができる。
【0065】
[0084]制御器140は、インプラントシステム100の作動を制御するためのユーザーインターフェースを含むことができる。例えば、就寝前に、患者は気道通路の閉鎖を回避するために舌の運動を抑制することを選択してもよい。目覚めたら、又は治療がもうそれ以上求められなくなったら、ユーザーは、インプラント130を起動させて、舌を自由に動かせるように解放することができる。1つの実施形態では、制御器140は、インプラント130のその作動に関連する状態を変化させるため、少なくとも固定コマンドと解放コマンドをサポートしている。幾つかの実施形態では、状態表示器も提供されており、状態表示器は、例えば、制御器140がインプラント130を作動させるために正しく位置付けられたらそれを表示することができる。
【0066】
[0085]図1Cは、本発明の或る実施形態によるインプラント130の簡略化された模式図である。インプラントは、全体が、チタン、ステンレス鋼、又はポリマー材料の様な、MRI安全生体適合性材料から作製されているハウジング172を含んでいる。ハウジング172は、当該ハウジング172に蝶番式に取り付けることができるとされている下顎アンカー174を介して下顎に取り付けられるように構成することができる。回転子170は、ハウジング172内に位置しており、その内部に固着されている。回転子170の出力は、作動的にトルク倍化機構176に結合されている。トルク倍化機構176は、回転子の出力トルクを増加させるように構成されており、歯車箱、又はより具体的には、遊星歯車箱、平歯車列、ワーク歯車、油圧式ポンプ、空圧式ポンプ、摩擦クラッチ、ねじ機構、ばね機構、押圧型玉軸受機構、及び滑車システム、を備えていてもよい。
【0067】
[0086]トルク倍化機構176の出力は作動的に張力緩和機構178に結合され、張力緩和機構178そのものは作動的にスプール180に結合され、スプール180そのものは作動的に連接機構182に結合されている。連接機構182は、1つ又はそれ以上の可撓性係留紐であって、それぞれが舌の付け根に固着させるための舌アンカー184の様な1つ又はそれ以上の剛性構造体を含んでいる、係留紐として構成されていてもよい。連接機構182は、スプール180周りに巻き付くように構成されており、スプールが回転すると、連接機構182のハウジング172から外に伸びている長さが増加するか又は減少することになる。
【0068】
[0087]張力緩和機構178は、連接機構182に印加される牽引力が所定の閾力値を超えると、スプール180をトルク倍化機構176から係合解除するように構成されている。幾つかの実施形態では、牽引力は10N未満であり、閾力値は1Nより大きい。他の実施形態では、牽引力は2−5Nの範囲にあり、閾力値は2Nより大きい。閾力値は、概して、連接機構182及び/又は舌アンカー184が、破損したり、舌から押し退けられたり、永久的に変形したりするのを未然に防ぐように選定される。張力緩和機構178が係合解除され、閾牽引力が鎮まったら、張力緩和機構178は、後で舌が動く場合に備えてスプール180をトルク倍化機構176に再係合させる。
【0069】
[0088]牽引力は、連接機構182に、ひいてはスプール180の外径に印加される。これにより、トルクがスプール180を介して張力緩和機構178に印加されることになる。幾つかの実施形態では、張力緩和機構178は、閾力値に相当する閾トルクが加えられると滑るか又は完全に係合解除するように構成されているクラッチであってもよい。張力緩和機構178は、閾力値が印加されると張力緩和機構178の係合解除を助けるべく伸長し始める引張コイルばねの様な機構を含んでいてもよい。
【0070】
[0089]図1D及び図1Eは、本発明の或る実施形態による、使用中のインプラント130の簡略化された模式図を示している。インプラント130は、下顎アンカー174が外科的に下顎に取り付けられ舌アンカー184が外科的に舌の付け根に取り付けられた状態で、患者の中に植え込まれている。
【0071】
[0090]図1Dを参照していうと、患者又は別の操作者は、ここに説明されている制御器140の使用を介して回転子170を発動させることができる。回転子170は、それに応じてトルク倍化機構176を発動させ、係合されている張力緩和機構178を介してスプール180を回転させる。スプール180は、回転し、それにより連接機構182を自身の周りに巻き付けてゆくことによって連接機構182に牽引力Fを印加し、そうして舌アンカー184を下顎アンカー174に向けて引き寄せる。回転子170は、舌アンカー184が所定の距離を移動したか又は患者が制御器140を制御して回転子170を駆動する磁界の生成を停止させると、回転を停止する。連接機構182は、舌が気道を塞がないよう舌を定位置に保持するべく舌アンカー184に掛けられる安定化力を維持する。回転子170は、制御器140の使用により、図1Dに示されている状態から弛緩状態へ逆転させることができる。その結果、回転子170は反対方向に回転してスプール180を解き、連接機構182を弛ませてゆく。これにより、舌アンカー184及び接続されている舌は非緊張位置へ戻ってゆく。連接機構182は、弛んだ状態でも、舌アンカー184の過剰な弛みを防止するため僅かな張力を印加している。僅かな張力とは、概ね、患者に気付かれない程度の小ささである。
【0072】
[0091]図1Eを参照していうと、張力緩和機構178は、牽引力の閾量が外部から連接機構182に印加されて係合解除しようとしている。力の閾量は、概して、図1Dに示されている連接機構によって維持されている安定化力と外部からの牽引力の和であり、舌アンカー184の押し退けを生じさせることになる力より下である。これは、概して、舌の筋肉が連接機構182に逆らって牽引したときに起こり、睡眠時の患者による不随意の行動のこともある。張力緩和機構178は、クラッチを含むことができ、クラッチはその被押圧要素(例えば、ばね)が、閾牽引力が印加されたせいで打ち負かされると、滑るか又はスプール180を完全に係合解除する。その結果、連接機構182は、緩んで、舌アンカー184及びアンカーが取り付けられている舌部分が非緊張位置へ戻れるようになる。張力緩和機構178の係合解除は、インプラント130の諸部分に破損が起こること、及び/又は患者が力ずくでアンカーを患者本人から除去してしまうことを未然に防止する。張力緩和機構180は、牽引力が閾より下に下がった後に再係合され、従って連接機構182は再度張られ、図1Dに示されている位置に戻されることになる。
【0073】
[0092]図2Aは、本発明の実施形態による舌インプラントを作動させるための非植込装置200(制御器としても知られている)の図である。非植込装置200は、患者の身体とインターフェースするように輪郭の付いた区域220を有するハウジング210を含んでいる。図示されている様に、固定子要素230は、ハウジング内の輪郭の付いた区域近くに配置されている。幾つかの実施形態では、固定子230は、それぞれが面取りされた端造形を有する複数の極を有している。例えば、面取りされた端造形は、固定子230の内側部分に向かって先細りに断面積が削減されているものであってもよい。固定子の極間を漸減することで患者の頤を受けるための窪んだ区域を作り出すことができる。患者に係合させたとき、極はインプラントの異なった部分に露出され、そのおかげで固定子の磁界とインプラント回転子の導電材料の有効結合が促される。
【0074】
[0093]非植込装置200は、更に、ユーザーインターフェース要素を含むことができる。例えば、インプラントの作動を制御するためのボタン240を含むことができる。発光ダイオードの様な状態表示器も同様に含むことができる。1つの実施形態では、ボタン240は、インプラントの状態を変化させるための固定コマンドと解放コマンドに対応している。非植込装置200とインプラントとの整列を支援するため、及び低バッテリ状況などを知らせるために、1つ又はそれ以上の状態表示器を含むことができる。
【0075】
[0094]図2Bは、非植込装置200と共に使用することのできる様な舌インプラント制御回路250の機能ブロック図である。示されている様に、制御回路250は、プロセッサ255と駆動回路260とユーザーインターフェース265を含んでいる。プロセッサ610は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は類似の装置とすることができる。プロセッサ255は、ユーザーインターフェース265からの入力/出力信号を受信し、駆動回路260の作動を制御するように構成されている。
【0076】
[0095]駆動回路260は、固定子要素(例えば、固定子150など)に、当該固定要素の巻線の電流フローを制御するのに結合されている。例えば、駆動回路265は、回転磁界を生成するために電流を0°移相巻線と90°位相巻線に送達する二移相駆動機構であってもよい。本実施形態は、二位相駆動機構に限定されず、所望の強度及び他の特質を有する磁界が作り出されるように配設されている如何なる数の巻線及び交流電流を含んでいてもよい。
【0077】
[0096]使用時、プロセッサ255は、ユーザーインターフェース265から、インプラントを制御するためのコマンドを受信する。例えば、コマンドには、舌の動きを抑制するための固定コマンド、舌の十分な動きを取り戻すための解放コマンド、又は何らかの他のコマンドがあろう。このコマンドに基づき、プロセッサ255は駆動回路260に、固定子巻線へのエネルギーを供給させ、それによって回転磁界を作り出させる。磁界が回転する方向は、受信されるコマンドに対応する。例えば、駆動回路260は、電流フローを、プロセッサ255に指示される通り、時計回りの磁界が作り出されるようにも或いは反時計回りの磁界が作り出されるようにも設定することができる。
【0078】
[0097]プロセッサ255は、安全機能及び位置付け機能も遂行することができる。幾つかの実施形態では、プロセッサ255は、固定子巻線を流れる電流のレベルを監視し、電流が所定レベルを超えたら、駆動回路255に電流を減少させるか又は固定子へのエネルギー供給を断たせる。プロセッサ255は、固定子電流に基づいてインプラントの存在を検知することができる。例えば、プロセッサ255は、インプラントへの磁界結合に関連付けられる電流フローの降下を検知することができる。幾つかの実施形態では、プロセッサ255は、可聴発信音を発生させるか又はユーザーインターフェース265のLEDを点滅させることによって、インプラントの近接を知らせる。発信音の持続時間又は点滅速度を変えることにより、ユーザーには非植込装置の正しい位置付けと整列が案内される。
【0079】
[0098]図3は、本発明の実施形態による非植込装置によって作り出される磁界300の態様を示している概念図である。本図では、芯要素310は非植込装置の固定子に近似している。電流が固定子巻線を流れると、固定子の芯に北と南の磁極が作り出される。すると今度は磁極が磁束線によって結び付けられ、磁束線が固定子の芯の物理的な極同士の間の空隙を橋渡しする。
【0080】
[0099]磁束の1本1本分は固定子の芯から外に広がり、植え込まれている回転子の導体と磁気結合する。固定子の互いに反対の極を結び付けている磁界が回転すると、トルクが回転子に働きかける。巻線充填率が大凡63%と仮定して、本発明の実施形態による4極固定子は、体内舌インプラント装置を作動させるのに十分な強度の磁界を生成することができるということが分析によって示されている。幾つかの実施形態では、0.2Tより大きい磁界強度を大凡10mm離した固定子で生成することができる。分析は、この磁界強度は少なくとも1.5μN・Mのトルクを生成することができ、舌を変位させるには十分であると考えられることを示している。
【0081】
[0100]図4A−図4Fは、本発明の実施形態と共に使用するための異なった固定子設計を示している。それらの様々な固定子は強磁性材料で形成することができる。幾つかの実施形態では、固定子は、例えば芯構造の渦電流効果を低減することのできる複数の薄板を含んでいる。
【0082】
[0101]図4Aは、実質的に平坦な矩形構成の4極固定子である。固定子は、それぞれの辺が大凡80mmのサイズで、大凡10mmの厚さを有するものとすることができる。図示されている様に、それぞれの極は均一に離間し、内部区域の中へ大凡15mm伸びている。或る好適な実施形態では、それぞれの極は、患者の頤を受けるように面取りされた端造形を含んでいる。例えば、面取りされた極は、内方へ傾斜して、頤を載せる椀を形成していてもよい。
【0083】
[0102]図4Bは、円筒形固定子の端面図である。示されている様に、極の周りの巻線は、固定子の長さに延在していて、それぞれの極は中央の円形支持要素に接合されている。図4Cは、実質的に平坦であるとされる十字形状の固定子である。巻線は十字の互いに反対側の脚を覆っている。図4Dは、中心軸から外へ伸びている脚を有する変型十字形状である。面取りされた端造形の場合同様、脚は頤を載せることに対応するように配設することができる。図4E−図4Fは、代わりの固定子設計の上面図である。これらの固定子は、実質的に平坦な外面を維持しつつも患者の位置付けをやり易くするように設計されている。
【0084】
[0103]図5は、舌インプラントを作動させるための諸段階のフローチャートである。これらの段階は、プロセッサ(例えば、プロセッサ255)又はここに記載されている様な非植込装置と共に使用される他の制御回路構成によって実行することができる。ブロック510で、インプラントを作動させるためのコマンドが受信される。コマンドは、舌を抑制する又は舌を解放するためのユーザーコマンドであってもよいし、或いはインプラントに関係する何か他のコマンドであってもよい。
【0085】
[0104]ブロック520で、非植込部分は、ユーザーコマンドに応えて固定子巻線の電流フローを確定する。固定子は患者の外部に在り、固定子巻線の電流フローは回転磁界を発生させるように制御される。回転の方向は、ユーザーコマンドに従って確定されることになる。例えば、植え込まれている回転子の機械的な配設にもよるが、舌を抑制するには時計回りの回転が使用され、舌を解放するには反時計回りの回転が使用されてもよい。
【0086】
[0105]幾つかの実施形態では、固定子巻線へ送達される電流の量は、非植込部分をインプラント装置から一定距離離して測定したときに所定の強度を有する磁界が作り出されるように確定される。例えば、電流フローは、10mmの典型的離隔距離で磁界の強度が少なくとも0.16Tになるように確定されるかもしれない。
【0087】
[0106]ブロック530で、固定子の電流と温度が監視される。如何なるときも、安全でないレベルの電流又は温度が検知されたなら、固定子巻線はエネルギー供給を即座に断たれるか、電流レベルが下げられるかし、装置のユーザーには状況が通知されることになる。
【0088】
[0107]非植込装置が患者に係合されているとき、磁界は植え込まれている回転子に結合され、固定子電流は変化する。この変化は、回転速度及び固定子要素と回転子要素の整列具合によって変わり得る。例えば、非植込部分が最初に起動されると、固定子電流は増加する。回転子に旋回が付き始め、回転速度が安定してくると、固定子電流は定常作動レベルに減少してゆく。
【0089】
[0108]ブロック540で、非植込部分は、固定子電流フローのレベルを検知し、ブロック550で、整列表示が提供される。例えば、非植込部分は、固定子電流の上昇及び/又は定常作動レベルを測定し、それを、固定子要素回転子要素間の適正整列を表している閾値(又は値の集合)と比較してもよい。比較に基づき、整列表示器は、結合不十分を知らせ、ユーザーに非植込部分の位置を然るべく調節するよう警報を発する。インプラントの作動が完了すると、ブロック560で、固定子巻線はエネルギー供給を断たれ、プロセスは完了する。
【0090】
[0109]図6A−図6Eは、本発明の或る実施形態によるインプラント600を様々な図に示している。インプラント600は、インプラント130に関連付けて説明されているものと同様の機械的構成を共有している。
【0091】
[0110]図6Aを参照すると、インプラント600は、患者の顎に外科的に取り付けるように構成されている下顎アンカー602を含んでいる。下顎アンカー602は、患者の下顎の頤隆起(即ち、頤)を包み込むのにぴったり合うように湾曲している湾曲内面604を含んでいる。下顎アンカー602は、ねじを通して下顎に取り付けられるようにする孔606を含んでいる。下顎アンカー602は、様々な生体適合性金属(例えば、ステンレス鋼、チタン)及び/又はポリマーから作製することができる。下顎アンカー602は、外科医が内面604を特定の患者の頤外形に付形できるように可鍛性であってもよい。
【0092】
[0111]下顎アンカー602は、ハウジング608に蝶番式に取り付けられている。ハウジング608は、下顎アンカー602に結合している蝶番610を有する円筒として構成されている。ハウジング608は、MRI安全生体適合性金属(例えば、ステンレス鋼又はチタン)又はポリマーから作製することができる。ハウジング608にはエンドキャップ612が接続されていて、エンドキャップ612は同様の様式に作製されている。エンドキャップ612は、連接部616を出させる開口部614を含んでいる。
【0093】
[0112]連接部616は、高い引張荷重に耐えられ且つ何回もの荷重サイクルに耐えられる、強化ポリマー(例えば、編組ケブラー)又は編組ステンレス鋼の様な可撓性の弦から作製することができる。連接部616は、舌アンカー618に取り付けられている。舌アンカー618は、患者の舌の付け根内部に長期間植え込まれるように構成されている。舌アンカー618は、中央部材620を含んでいて、そこから複数のアンカー腕部622が伸びている。4つのアンカー腕部622が示されているが、但し、実施形態によってはそれより多い又は少ないアンカー腕部622を使用することができる。アンカー腕部622は、高い引張荷重に耐えられ且つ何回もの荷重サイクルに耐えられるステンレス鋼又はチタンの様な比較的堅く弾性のあるMRI安全生体適合性材料から作製することができる。
【0094】
[0113]インプラント600の内側の諸部分が図6Bの分解図に示されている。ハウジング608は回転可能な回転子626を支持する軸受624を保持している。軸受624並びにインプラント600の全ての軸受は、腐食しないようにセラミック製玉軸受を利用することができる。回転子626は、複数の細長い導電部材がそれぞれの端をリングで接合されているリス籠型回転子とすることができる。回転子出力シャフト628が、回転子に接続されていて、回転子と一体に回転することができる。回転子出力シャフト628は、歯車箱630に結合されている。この実施形態では、歯車箱630は、回転子626内部に在る円筒形のハウジングを備えた遊星歯車箱として構成されている。代わりに、歯車箱630は、平歯車列、ワーク歯車、油圧式ポンプ、空圧式ポンプ、摩擦クラッチ、ねじ機構、ばね機構、押圧型玉軸受け機構、又は滑車システムを備えることもできる。歯車箱630は、外部電界によって発動される可動式のピン又は爪の様な係止又は後戻り防止用の造形であって、電源の入っていないときに歯車箱630が動くのを防止する造形を含むことができる。
【0095】
[0114]幾つかの実施形態では、歯車箱630は、256:1の入力/出力比を有するものであって、即ち、回転子出力シャフトが256回転する毎に歯車箱は1回転を出力するものとすることができる。逆に言うと、トルクは歯車箱630の出力において1:256の入力/出力比で増加するということであり、つまりは、回転子出力シャフト628が歯車箱630に1単位のトルクを伝達する毎に、歯車箱は256単位のトルクを出力することになる。回転子626の動力出力に従って、多くの他の歯車箱比を使用することができる。
【0096】
[0115]ハウジング608の端にはハウジングキャップ632が取り付けられていて、歯車箱630の出力シャフト634を軸受を介して回転可能に支持している。出力シャフト634には張力緩和機構636が結合されている。張力緩和機構636の一部分は出力シャフト634と一体に回転する。張力緩和機構636は、更に、回転可能なスプール638に、可動に係合したり係合解除したりするように構成されている。連接部616はスプール638に巻き付けられる。従って、スプール638が回転すると、回転方向に応じて連接部616がエンドキャップ612から外へ伸びたりエンドキャップ612内に格納されたりする。連接部616は、組織及び液体の進入防止を支援するエンドキャップ612のワイピングシール640内を滑動する。
【0097】
[0116]張力緩和機構636の詳細部分が図6Cに示されている。ハウジングキャップ632は、複数のランプ642rと垂直面642vと高さの異なる水平面642u/642lを含むカム面642を含んでいる。回転可能なクラッチプレート644がハウジングキャップ632に係合する。クラッチプレート644は、静止のハウジングキャップ632に対して、長手方向に可動で、出力シャフト634に沿って同シャフト周りに回転可能である。
【0098】
[0117]クラッチプレート644は、カム面642に係合する玉として構成されている複数の従動子(本図には図示せず)を含んでいる。ばね646がクラッチプレート644及びスプール638に継続的な長手方向の荷重を印加している。こうして、スプール618が回転可能ではあっても長手方向に静止しているものとして、ばね646はクラッチプレート644の従動子(図示せず)を付勢して継続的にカム面642に係合させている。従って、出力シャフト634が回転すると、クラッチプレート644は、出力シャフト634とカム面642に沿って回転と長手方向前進後進運動をする。カム面642の垂直造形642vは、従動子が非駆動状態時に非被駆動方向に自由に一周回転するのを防止することができ、こうしてクラッチプレート644及び出力シャフト634のブレーキの役目を果たしている。しかしながら、回転子626は、非被駆動方向に駆動(即ち、逆転)されることもあり、すると従動子は垂直造形642vを乗り越えさせられる。
【0099】
[0118]ばね646は、波ばねとして示されているが、押圧されると継続的な長手方向の力を印加する如何なる装置(例えば、コイルばね、隔壁プレートなど)であってもよい。ばね646は、スプール618(クラッチプレート644に係合されていないとき)の回転について、スプール618に印加されるトルク閾量がばね646によって印加される摩擦保持力に打ち勝つまでは、スプール618が自由に回転するのを防ぐのに十分な長手方向の力をスプール618に印加することができる。スプール618の内部分とばね646の外部分は、それらの間の摩擦係数を大きくし、ひいてはスプール618を回転させるのに要するトルクの閾量が大きくなるように、摩擦性の面を含むことができる。
【0100】
[0119]ねじりばね648がスプール638内に在って、その第1端は出力シャフト634に取り付けられ、第2端はスプール638の一部に取り付けられており、よって、ねじりばね648は巻かれると出力シャフトとスプールの間に力を印加することができる。ねじりばねは、スプール638の駆動方向に巻く(即ち、短縮及び圧縮する)ように構成されており、連接部616に教示されている弛みを付与することができる。クラッチプレート644の従動子(図示せず)がカム面642のカム外形の高点に沿ってカム面に乗ると、クラッチプレート644の歯650がスプール638の嵌め合い相手の歯652に係合し、その結果、スプール638が、出力シャフト634共々クラッチプレート644と一体に駆動される。この係合位置では、出力シャフト634とスプール638は同じやり方で回転し、そのためねじりばね648は巻かれない。
【0101】
[0120]逆に言うと、クラッチプレート644の従動子(図示せず)がカム面642のカム外形の低点に沿ってカム面に乗っているときには、クラッチプレート644の歯650はスプール638の嵌め合い相手の歯652から係合解除されている。歯とは別に、摩擦性の面の様な他の係合面を使用することもできるものと理解されたい。係合解除位置では、出力シャフト634は静止しているスプール638に対して回転し、その結果、ねじりばね648は巻かれる。ねじりばね648は、スプール638がばね646によって印加される長手方向の力を免れる位置に保持されているので、スプール638を解くことができなくなっている。従って、出力シャフト634によって駆動されたときのクラッチプレート644の完全被駆動回転は、スプール638が駆動されて回転する少なくとも1つの係合位置と、ねじりばね648が巻かれてスプール638が静止に保持される少なくとも1つの係合解除位置を持つことになる。駆動方向を逆転させると、その結果、スプール638及びねじりばね648は同様のやり方で解かれることになる。
【0102】
[0121]クラッチプレート644は、出力シャフト634によって駆動されていないときはスプール638から係合解除されており、そのとき、ばね646によって印加される長手方向の力は、従動子が静止のハウジングキャップ632のカム面642の垂直面642vによって停止されるまでクラッチプレート644を非被駆動方向に僅かに回転させようとする。これによりクラッチプレート644及び出力シャフト634が自由に回転するのが防止される。従って、駆動されていない巻かれた位置にある(即ち、クラッチプレート644が係合解除されていて、出力シャフト634が駆動されておらず、スプール638が巻かれている)ときは、ねじりばね648は、係止されたクラッチプレート644とスプール638の間で巻かれて、それらの間に位置エネルギーを貯蔵する。ねじりばね648は、完全には巻かれず、よって連接部616に弛みを提供することができる。駆動されていない巻かれた位置にあるとき、巻かれたスプール638に連接部616によって逆トルク荷重(即ち、駆動方向と逆の方向に印加される舌の力)が印加されても、スプール638は、ばね646の長手方向の力によってなおその場に保持される。
【0103】
[0122]逆転トルク荷重が所定の閾を超えると、ばね646によって印加されている長手方向の力は打ち負かされてゆき、するとスプール638はクラッチプレート644及び出力シャフト634に対して回転することができるようになる。これによって更に、ねじりばね648が引き伸ばされ始め、係止されたクラッチプレート644とスプール638の間に貯蔵されている非被駆動方向の位置エネルギーが解放されてゆく。これにより、スプール638は、スプール638の逆転モーメントがばね646の長手方向の力によって減速停止されるまで、解かれてゆく。スプール638が解かれると、同時に連接部616の巻かれていた部分が解かれ弛む。ばね648は、閾逆転トルクが連接部616によってスプール638に印加される閾牽引力に相応しているとき、クラッチプレート644とスプール638の間の相対運動を許容するように構成することができる。幾つかの実施形態では、牽引力は10N未満で、閾力値は1Nより大きい。他の実施形態では、牽引力は2−5Nの範囲にあり、閾力値は2Nより大きい。
【0104】
[0123]図6Dは、本発明の或る実施形態による、使用中のインプラント600を示している。インプラントは、ヒト患者に植え込まれていることが示されている。下顎アンカー602は外科的に下顎Mの頤区域に取り付けられており、舌アンカー618は外科的に舌の付け根(図示せず)に取り付けられている。患者は、典型的には患者が就寝する前に、外部に宛がった制御器660(例えば、制御器140)を使用して、インプラント600に磁界を印加し、回転子626を回転させる。連接部616は、その結果、スプール638に巻き取られ、エンドキャップ612の中へ引き寄せられ、同時に舌アンカー618を頤により近く引き寄せる。これにより患者の気道の空間を広げて、気道が虚脱しないように助け、ひいては睡眠中の無呼吸を救う。患者は、目覚めると、制御器660を使用して回転子を逆転させ連接部616をスプール638から解き、そうして連接部161を弛めて舌及び舌アンカー618を非緊張位置へ戻せばよい。
【0105】
[0124]場合によっては、舌は連接部616に不随意の牽引力を印加することもある。牽引力は、軽減されなければ、舌アンカー618を強制的に舌から押し退けて傷害を引き起こしてしまうほどに大きいかもしれない。インプラント600の張力緩和機構636は、過剰な牽引力を、連接部616を減結合することによって軽減することができる。牽引力が所定の閾を超えると、対応する逆転トルク閾がスプール638に印加される。牽引力閾は、舌アンカー618を押し退ける力の量より小さいが、舌を緊張位置に引き留めるのに要する牽引力より大きい。逆転トルク閾は、ばね646の保持力を打ち負かし、巻かれたねじりばねが長くなってエネルギーを解放し素早くスプール638を解けるようにする。スプール638が解かれてゆくと、その結果、連接部616は弛み、舌が非緊張位置をとれるようにし、舌アンカー618の強引な押し退けを未然に防止する。スプール638は、その後再度巻かれて連接部616を張り直すことができる。この様に、インプラント600は、閾牽引力の繰り返されるサイクルに、舌アンカー618を失陥させることも或いはインプラント600の除去/外科的介入を要することもなく、耐えることができる。
【0106】
[0125]図7A−図7Dは、本発明の様々な実施形態による様々なインプラントハウジングを示している。示されているインプラントハウジングは、機械的に、全体的なやり方はインプラント600に関連付けて説明されているのと同じ様に機能する。
【0107】
[0126]図7A及び図7Bは、インプラントハウジング700及び705を示している。インプラントハウジング700及び705は、形状が円筒形である。インプラントハウジング700及び705は、下顎と舌の間を伸びる牽引軸Aに沿って作動するように構成されている。インプラントハウジング700は、41mmの大凡長さ、10mmの大凡直径を有している。インプラントハウジング705は、32mmの大凡長さ、10mmの大凡直径を有している。
【0108】
[0127]図7C及び図7Dは、インプラントハウジング710及び715を示している。インプラントハウジング710及び715は、下顎と舌の間を伸びる牽引軸Aに大凡横の方向に作動する(即ち、巻き取る)ように構成されている。インプラントハウジング710は、先端が断ち切られて上円筒形部分725へ漸減している円筒形基部720を含んでいる。円筒形基部720は、16mmの大凡直径を有している。上円筒形部分725は9mmの大凡直径を有している。インプラントハウジング710の全長は、大凡21mmである。
【0109】
[0128]図7Dを参照すると、インプラントハウジング715は、上円筒形部分725に隣接する円筒形基部730を含んでいる。円筒形基部730は、21mmの大凡直径を有している。上円筒形部分725は、8mmの大凡直径を有している。円筒形基部730の長さは大凡5mmで、インプラントハウジング710の全長は大凡11mmである。図7C及び図7Dに示されている横型レイアウトを利用すれば、場合によっては、よりコンパクトなインプラントになる。
【0110】
[0129]図7Eは、インプラント600とインプラント735を比較した図を示している。インプラント735は、インプラントハウジング710と、インプラント600の連接部616と同様に構成されている連接部740を含んでいる。ここで説明されている様に、インプラント600の長手方向主軸Lは、下顎と舌の間を伸びる牽引軸Aと同じ大凡方向に在る。逆に言うと、インプラント735の長手方向主軸Bは、下顎と舌の間を伸びる牽引軸Aに大凡横の方向に作用する。
【0111】
[0130]図7Fは、本発明の或る実施形態によるインプラントハウジング710の断面図を示している。インプラントハウジング710は、機械的に、全体的なやり方はインプラント600に関連付けて論じられているのと同じ様に機能する。円筒形の基部720は、軸受支持型回転子/歯車箱組立体750を収納しており、回転子/歯車箱組立体750は張力緩和機構755へ出力し、張力緩和機構755そのものは二重軸受支持型スプール760へ出力する。固定子/歯車箱750は、16:1の歯車比を有する市販の歯車箱を利用していてもよい。連接部740は、開口部765を介して上円筒形部分725から伸ばされたり上円筒部725の中へ格納されたりするようにスプール760周りに巻き取られる。幾つかの実施形態では、開口部765は細長いスリットであってもよい。
【0112】
[0131]図7Gは、インプラントハウジング715の部分透過図を示している。インプラントハウジング715は、機械的に、全体的なやり方はインプラント600に関連付けて論じられているのと同じ様に機能する。しかしながら、インプラントハウジング715は、平歯車列770を利用している。幾つかの実施形態では、平歯車列は、256:1までの範囲の歯車比を有するように構成することができる。平歯車列770は、円筒形基部730の内部容積全てを複数の並列軸に沿って歯車を積み重ねることによって活用するように配設されており、従ってコンパクトな縦外形を有している。
【0113】
[0132]図8は、本発明の或る実施形態によるインプラント800を示している。インプラント800は、機械的に、全体的なやり方はインプラント600に関連付けて論じられているのと同じ様に機能する。しかしながら、インプラント800は、複数の連接部805と各々の舌アンカー810を含んでいる。連接部805は、単一のスプール周りに巻き取られてもよいし、代わりに個々のスプール周りに巻き取られてもよい。2つの連接部805が示されているが、但しそれより多くを使用することもできる。複数の連接部805と各々の舌アンカー810は、より広い気道空隙を提供することによって、より効果的なやり方で患者の舌を下顎により近付けて位置付けることができる。複数の舌アンカー810は、更に、舌を操作するのに要する力をより広い区域に分配するので、その結果、アンカー/組織の失陥の危険性が低くなる。ここに開示されているインプラント実施形態は全て、複数の連接部805及び各々の舌アンカー810を実装することができるものと理解されたい。
【0114】
[0133]図9Aは、本発明の或る実施形態によるインプラント900を示している。インプラント900は、機械的に、全体的なやり方はインプラント600に関連付けて論じられているのと同じ様に機能するが、但し、インプラント900は、横並びの動力列を特徴とする。インプラント900は、長円形又は競技場の外形をした長形ハウジング902を含んでいる。ハウジング902の一方の側は、第1歯車906に出力する回転子/歯車箱組立体904を収納している。第1歯車906には、動力を回転子/歯車箱組立体904から張力緩和機構910へ伝達するための第2歯車908が結合されており、張力緩和機構910はその動力を今度はスプール912に伝達する。スプール912は、完全に露出されたものとして示されているが、幾つかの実施形態では、ハウジング902内に隠されていてもよい。第1歯車906と第2歯車908は、直接接続を有していることが示されているが、幾つかの実施形態では、チェーン又はベルトを介した間接接続を有していてもよい。第1歯車906と第2歯車908の結合は、1:1の歯車比を有していてもよいし、異なった歯車比を有していてもよい。
【0115】
[0134]図9Bは、本発明の或る実施形態による、使用中のインプラント900を示している。インプラント900は、スプール912が連接部914及びアンカー916の牽引方向に対して横向きに配設されるように位置付けられている。ハウジング902は、下顎Mに、下顎アンカー918を介して接続されている。インプラント900は、下顎M内でインプラントが占める長手方向空間と垂直方向高さの量を最小限に抑えることのできるコンパクトなレイアウトを提供している。
【0116】
[0135]図10Aは、本発明の或る実施形態による、ここに説明されているインプラントの何れかと共に使用するための可撓性アンカー1002を示している。可撓性アンカー1002は、ここに説明されているインプラントの何れにも接続することができる連接部1004の軸に沿って弾性的に伸長する。この実施形態では、可撓性アンカー1002は、近位方向に徐々に直径が増している引張ばねとして構成されている。代わりに、この配設は、連接部に近い遠位区域で直径が大きくなるように逆にすることもできる。砂時計又は逆さ砂時計の様な他のばね構成を使用してもよい。可撓性アンカー1002は、各種弾性金属(例えば、ステンレス鋼、チタン、NiTi)、ポリマー、又は金属/ポリマーの組合せから作製することができる。可撓性アンカー1002は、可撓性アンカー1002の内側部分に干渉嵌め、溶接、はんだ付け、接着などにより固定される直径サイズと構成であるばね結合器1006を介して連接部1004に接続されている。可撓性アンカー1002の最近位端1008は、可撓性アンカー1002が回転運動すると舌の付け根にねじ込んでゆき、そうして可撓性アンカー1002を組織の中へ固定するように構成されている尖った先端を有することができる。
【0117】
[0136]可撓性アンカー1002は、力の閾量が結合されている張力緩和機構を始動させることを余儀なくさせた力より小さい力を受けると途中まで伸長し、力の閾量が結合されている張力緩和機構を始動させることを余儀なくさせた力より大きい力を受けると一杯まで伸長するように構成されていてもよい。従って、舌の運動は、可撓性アンカー1002を途中まで伸長させはするであろうが、但し可撓性アンカー1002は、張力緩和機構が始動される前に一杯まで伸長することはない。他の実施形態では、可撓性アンカー1002は、力の閾量が結合されている張力緩和機構を始動させることを余儀なくさせた力より大きい力を受けると一杯まで伸長するように構成されている。後者の実施形態では、可撓性アンカーは、長手方向には、舌の付け根と結合されているインプラントの間の距離より相対的に短い最大伸長長さを有するように配設されている。
【0118】
[0137]使用時、可撓性アンカー1002は、結合されている張力緩和機構が始動される前は、一杯まで又は途中まで伸長することによって連接部に弾性的な弛みを提供するであろう。この弛みは、本明細書にあるインプラントにとって作動上の柔軟性を高めるものであり、というのも、張力緩和機構は、可撓性アンカー1002なしの機構に比べ、より高い始動力を有するように構成することができるからである。可撓性アンカー1002は、睡眠時無呼吸事象に関連付けられてはいないが他のやり方でインプラントを始動させてしまうであろう舌の速い痙攣運動を補償することができる。
【0119】
[0138]図10Bは、本発明の或る実施形態による、ここに説明されているインプラントの何れかと共に使用するための可撓性アンカー1010を示している。可撓性アンカー1010は、概して、可撓性アンカー1002に関連して説明されているのと同じやり方で構成され使用される。この実施形態では、可撓性アンカー1010は、均一直径を有するねじりばねとして構成されている。従って、可撓性アンカー1010は、ここに開示されている他の錨着実施形態に基づいて同様に説明されている様に舌の付け根へ外科的に埋め込まれるように構成されている複数の弾性アンカーに更に取り付けられている。
【0120】
[0139]当業者には理解されるであろうが、本発明は、その本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態に具現化することもできる。例えば、本発明の実施形態は、各種医療用途で使用するのにMRI適合モーターを含むこともできる。1つの実施形態では、植え込まれた回転子と植え込まれていない制御装置は、ポンプ又は類似の装置の作動を制御することもあろう。本発明の他の実施形態は、舌以外の他の身体組織を動かすのに使用することもできよう(例えば、ラップバンド型の装置)。当業者は、ここに記載されている本発明の特定の実施形態の多数の等価物を認知することであり、又は通常の実験以上のことをしなくてもそれらを突き止めることができるであろう。その様な等価物は、付随の特許請求の範囲によって網羅されるものとする。
【符号の説明】
【0121】
100 舌インプラントシステム
110 舌
120 下顎
130 インプラント
140 非植込部分、制御器
150 固定子要素
155、160 巻線
165 芯
170 回転子要素
172 ハウジング
174 下顎アンカー
176 トルク倍化機構
178 張力緩和機構
180 スプール
182 連接機構
184 舌アンカー
200 非植込装置、制御器
210 ハウジング
220 輪郭の付いた区域
230 固定子
240 制御ボタン
250 舌インプラント制御回路
255 プロセッサ
260 駆動回路
265 ユーザーインターフェース
300 磁界
310 芯要素
600 インプラント
602 下顎アンカー
604 湾曲内面
606 取り付け孔
608 ハウジング
610 蝶番
612 エンドキャップ
614 開口部
616 連接部
618 舌アンカー
620 中央部材
622 アンカー腕部
624 軸受
626 回転子
628 回転子出力シャフト
630 歯車箱
632 ハウジングキャップ
636 張力緩和機構
638 スプール
640 ワイピングシール
642 カム面
642r ランプ
642v 垂直面
642u、642l 水平面
644 クラッチプレート
646 ばね
648 ねじりばね
650 クラッチプレート側の歯
652 スプール側の歯
660 制御器
700、705、710、715 ハウジング
720、730 円筒形基部
725 上円筒形部分
735 インプラント
740 連接部
750 軸受支持型回転子/歯車箱組立体
755 張力緩和機構
760 二重軸受支持型スプール
765 開口部
770 平歯車列
800 インプラント
805 連接部
810 舌アンカー
900 インプラント
902 ハウジング
904 回転子/歯車箱組立体
906 第1歯車
908 第2歯車
910 張力緩和機構
914 連接部
916 アンカー
918 下顎アンカー
1002 可撓性アンカー
1004 連接部
1006 ばね結合器
1008 可撓性アンカーの最近位端
1010 可撓性アンカー
F 牽引力
A 牽引軸
L インプラント600の長手方向主軸
B インプラント735の長手方向主軸
M 下顎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舌を安定させるための植込式装置において、
下顎アンカーと、
前記下顎アンカーに固定することのできるアクチュエータ機構と、
舌の付け根に錨着することのできる舌アンカーと、
前記アクチュエータ機構を前記舌アンカーに接合している連接部であって、当該アクチュエータ機構の作動に応えて当該舌アンカーへ牽引力を働かせるように適合されている連接部と、
前記下顎アンカーと前記舌アンカーの間の力が閾値を超えた場合に前記連接部が前記アクチュエータ機構に対して動くことを許容するように適合されている張力緩和機構と、を備えている植込式装置。
【請求項2】
請求項1に記載の植込式装置において、
前記アクチュエータ機構は、シャフトに結合されている回転子を備えており、当該アクチュエータ機構の前記牽引力は当該回転子の回転に基づいている、植込式装置。
【請求項3】
請求項2に記載の植込式装置において、
前記回転子は、前記植込式装置の外部の電磁界の影響下に回転するように適合されている、植込式装置。
【請求項4】
請求項2に記載の植込式装置において、
前記アクチュエータ機構は、前記シャフトに結合されている入力と前記連接部に結合されている出力とを有する歯車箱を更に備えている、植込式装置。
【請求項5】
請求項4に記載の植込式装置において、
前記歯車箱は、前記シャフトの回転速度に対して回転速度を減少させた出力を提供するように適合されている、遊星歯車箱、平歯車列、ワーク歯車、油圧式ポンプ、空圧式ポンプ、摩擦クラッチ、ねじ機構、ばね機構、押圧型玉軸受機構、及び滑車システムのうちの1つを備えている、植込式装置。
【請求項6】
請求項4に記載の植込式装置において、
前記歯車箱の前記出力に結合されているスプールを更に備えており、前記連接部は、一方の端が前記スプールに結合されていてもう一方の端が前記舌アンカーに結合されている係留紐を備えている、植込式装置。
【請求項7】
請求項1に記載の植込式装置において、
前記連接部分は、剛性構造を備えている、植込式装置。
【請求項8】
請求項1に記載の植込式装置において、
前記張力緩和機構は、ばねを備えている、植込式装置。
【請求項9】
請求項8に記載の植込式装置において、
前記連接部分は、前記ばねの引張に関連する可撓性を有している、植込式装置。
【請求項10】
請求項8に記載の植込式装置において、
前記ばねは、前記下顎アンカーと前記舌アンカーの間の力が前記閾値を超えると伸長し始める、植込式装置。
【請求項11】
請求項10に記載の植込式装置において、
前記ばねは、前記アクチュエータ機構と前記舌アンカーの間の前記連接部の一部を形成しているか又は当該連接部と直列になっている、植込式装置。
【請求項12】
請求項10に記載の植込式装置において、
前記ばねは、閉鎖コイルばねである、植込式装置。
【請求項13】
請求項10に記載の植込式装置において、
前記張力緩和機構は、引張部材間に捕捉される押圧要素を備えている、植込式装置。
【請求項14】
請求項1に記載の植込式装置において、
第2の舌アンカーを更に備えていて、前記連接部は、それぞれが一方の端を前記アクチュエータ機構に結合され、もう一方の端を各々の前記舌アンカーに結合されている、第1係留紐と第2係留紐を備えている、植込式装置。
【請求項15】
請求項14に記載の植込式装置において、
前記第2アンカーの場所は、前記第1アンカーの場所と異なっている、植込式装置。
【請求項16】
請求項1に記載の植込式装置において、
前記牽引力は10N未満であり、前記閾力値は1Nより大きい、植込式装置。
【請求項17】
請求項16に記載の植込式装置において、
前記牽引力は2−5Nの範囲にあり、前記閾力値は2Nより大きい、植込式装置。
【請求項18】
請求項1に記載の植込式装置において、
前記舌アンカーは、前記閾値より下になると途中まで又は一杯まで伸長するように構成されている引張ばねを備えている、植込式装置。
【請求項19】
請求項18に記載の植込式装置において、
前記引張ばねは、前記舌の付け根にねじ込むように構成されている、植込式装置。
【請求項20】
請求項18に記載の植込式装置において、
前記引張ばねは、複数の弾性錨着部材に接続されている、植込式装置。
【請求項21】
患者身体の下顎の近傍へ挿入するように適合されている植込式装置を用いて舌を安定させる方法において、
電磁界を前記植込式装置の回転子に受ける段階と、
前記回転子を前記電磁界の影響下に回転させて安定化力を発現させる段階と、
前記安定化力を係留紐を介して前記舌に伝える段階と、
前記係留紐に掛かる総力が閾値を超えると前記安定化力を解放する段階と、を備えている方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、
前記係留紐に掛かる総力が前記閾値を超えなくなれば、前記安定化力を回復させる段階を更に備えている、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法において、
前記安定化力を発現させる段階は、歯車箱を使用して、前記回転子の回転によって生成されるトルクを増加させる段階を備えている、方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法において、
前記安定化力を伝える段階は、前記係留紐を側方に変位させる段階を備えている、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、
前記係留紐は、前記植込式装置の横軸に沿って側方に変位させられる、方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法において、
前記係留紐を前記植込式装置の横軸に沿って案内する段階を更に備えている、方法。
【請求項27】
請求項21に記載の方法において、
前記安定化力を解放する段階は、前記植込式装置のばねを伸長させる段階を備えている、方法。
【請求項28】
請求項21に記載の方法において、
前記安定化力は、前記植込式装置のクラッチ機構を係合解除する段階を備えている、方法。
【請求項29】
請求項21に記載の方法において、
前記係留紐に掛かる総力は、前記安定化力と外力の和を備えている、方法。
【請求項30】
請求項21に記載の方法において、
前記安定化力を伝える段階は、前記下顎と前記舌の間に張力を印加する段階を備えている、方法。
【請求項31】
舌を安定させるための植込式装置において、
前記植込式装置の第1部分を患者の下顎に固定するための手段と、
前記植込式装置の第2部分を前記患者の舌に固定するための手段と、
前記植込式装置の外部の源から受ける電磁界に応えて安定化力を発現させるための手段と、
前記安定化力を前記患者の舌に伝えるための手段と、
前記患者の下顎と前記植込式装置によって担持されている当該患者の舌の間の力が所定の閾値を超えると前記安定化力を解放するための手段と、を備えている植込式装置。
【請求項32】
舌を安定させるための植込式装置において、
下顎アンカーと、
前記下顎アンカーに結合されているアクチュエータ機構であって、
当該アクチュエータ機構のハウジング内に配置されていて、外部電磁界の影響下に回転するように適合されている回転子と、
前記回転子に結合されているシャフトと、
前記シャフトの入力に結合されていて、当該シャフトの回転に対してトルクを増加させ回転速度を減少させた出力を提供するように適合されている歯車箱と、
クラッチプレートとコイルばねを備えている減結合機構であって、当該クラッチプレートは、当該コイルばねによって、当該減結合機構が第1位置では前記歯車箱の前記出力に準じて回転し第2位置では前記歯車箱の前記出力とは独立に回転するように付勢されている、減結合機構と、
前記歯車箱の前記出力に結合されているスプールと、を含んでいるアクチュエータ機構と、
前記舌の付け根に係合するように適合されている舌アンカーと、
前記スプールに結合されている第1端と前記舌アンカーに結合されている第2端を有していて、前記アクチュエータ機構の作動に応えて側方に変位させられるように配設されている係留紐と、を備えており、
前記減結合機構は、前記コイルばねに掛かる力が閾値を超えると前記第1位置から前記第2位置へ移行し、前記コイルばねに掛かる力が前記閾値より下になると前記第1位置へ戻る、植込式装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2012−527971(P2012−527971A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513212(P2012−513212)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036204
【国際公開番号】WO2010/138593
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(504101304)メドトロニック・ゾーメド・インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】