説明

水なし平版印刷版の現像方法

【課題】有機溶媒を含有する後処理液で後処理する工程を有しない現像方法により、優れたインキ着肉性を有する水なし平版印刷版を提供すること。
【解決手段】基板上に、少なくとも感光層または感熱層、およびシリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版の現像方法であって、(1)水なし平版印刷版を、下記一般式(I)で表されるエチレングリコール誘導体を95重量%以上含有する前処理液で前処理する工程および(2)前処理後の水なし平版印刷版を水を含む現像液により現像する工程を有し、有機溶媒を含有する後処理液で後処理する工程を有しないことを特徴とする水なし平版印刷版の現像方法。
R−(OCHCH−OH (I)
(上記一般式(I)中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは1〜5の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に、少なくとも感光層または感熱層、およびシリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版を現像する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水なし平版印刷版は、印刷時に水を必要としないことから、熟練度を必要としない簡易性等の特徴を有している。さらに近年、製版用フィルムを使用しないで、原稿電子データから直接オフセット印刷版を作製する、いわゆる直描型(CTP)製版が可能な直描型水なし平版印刷版が多数検討されている。直描型製版は、熟練度を必要としない簡易性、短時間で印刷版が得られる迅速性、多様なシステムから品質とコストに応じて選択可能である合理性などの特徴を有している。
【0003】
最近では、露光時にネガあるいはポジのフィルムを用いる従来の水なし平版印刷版に用いられる自動現像機にて現像処理が可能な直描型水なし平版印刷版が開発されている。また、製版時に用いられる処理液について、ネガ型水なし平版印刷版、ポジ型水なし平版印刷版、直描型水なし平版印刷版のいずれをも処理することができる処理液として、アミン化合物と極性溶剤とから主としてなるものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、製版条件の変動による影響を受けやすいポジ型や直描型の水なし平版印刷版であっても製版条件の変動による影響を受けることなく処理することができる処理液として、アミノ基と水酸基を有する化合物、エチレングリコール誘導体および極性溶剤とから主としてなるものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、これらの処理液を長時間使用すると、組成中のアミン化合物が消費されて画像再現性が低下する。そこで、アミン化合物の含有量変動による画像再現性低下等を抑制し、長期間安定して処理できる処理液として、エチレングリコール誘導体と、1分子中に1級アミノ基を2個以上有するアミン化合物を含有する処理液が開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−167356号公報
【特許文献2】特開2005−338580号公報
【特許文献3】特開2008−015065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水なし平版印刷版の現像方法は、前処理、現像および後処理の各工程をこの順に有することが一般的であった。有機溶媒を含有する後処理液を用いた後処理工程により、画線部に残存するシリコーンゴム層などのインキ反発成分が削減され、画線部のインキ着肉性を向上させている。しかしながら、最近では、環境負荷低減の観点から、有機溶媒の使用を控え、有機溶媒を用いる後処理工程を有しない現像方法が求められている。有機溶媒を用いる後処理工程を有しない現像方法では画線部にインキ反発成分が残存しやすく、有機溶媒を用いる後処理工程を有する現像方法に比べてインキ着肉性が低下する課題があった。
【0007】
上記従来技術の課題に鑑み、本発明は、有機溶媒を含有する後処理液で後処理する工程を有しない現像方法により、優れたインキ着肉性を有する水なし平版印刷版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板上に、少なくとも感光層または感熱層、およびシリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版の現像方法であって、(1)水なし平版印刷版を下記一般式(I)で表されるエチレングリコール誘導体を95重量%以上含有する前処理液で前処理する工程および(2)前処理後の水なし平版印刷版を水を含む現像液により現像する工程を有し、有機溶媒を含有する後処理液で後処理する工程を有しないことを特徴とする水なし平版印刷版の現像方法である。
R−(OCHCH−OH (I)
(上記一般式(I)中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは1〜5の整数を示す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の現像方法により、有機溶媒を含有する後処理液を使用することなく、画線部へのインキ反発成分の残存を抑制し、優れたインキ着肉性を有する水なし平版印刷版を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水なし平版印刷版の現像方法は、水なし平版印刷版を露光・現像する製版工程において用いられるものである。本発明の現像方法によって現像される水なし平版印刷版は、基板上に、少なくとも感光層または感熱層、およびシリコーンゴム層をこの順に有する。基板と感光層または感熱層の間に、プライマー層を有してもよく、さらに他の層を有してもよい。非画線部剥がれ耐性の観点から、感熱層を有する水なし平版印刷版が好ましい。より具体的には、特開2009−186626号公報、特開2005−309126号公報に記載された水なし平版印刷版を挙げることができる。
【0011】
本発明の水なし平版の現像方法は、環境負荷低減の観点から有機溶媒を含有する後処理液を用いた後処理工程を有しないため、従来検版のために一般的に行われていた後処理工程における画線部の染色工程を有しない。このため、染色工程を必要とせずに検版が可能である水なし平版印刷版がより好ましい。水なし平版印刷版の検版性としては、目視による目視検版性のほか、網点面積率測定装置による機器検版性が挙げられる。一般的に、機器検版は目視検版よりもシビアであるため、機器検版性が良好な水なし平版印刷版は目視検版性もまた良好である場合が多い。染色工程を必要とせずに検版が可能である水なし平版印刷版としては、例えば、露光時、感熱層(感光層)が吸熱(吸光)することで変色する感熱層(感光層)を有する水なし平版印刷版や、シリコーンゴム層が有色顔料を含有する水なし平版印刷版などが挙げられる。
【0012】
これらの中でも、シリコーンゴム層が有色顔料を含有する水なし平版印刷版が好ましく用いられる。機器検版性や目視検版性をより向上させる観点から、緑色光または赤色光を吸収する有色顔料を含有する水なし平版印刷版がより好ましい。緑色光または赤色光を吸収する有色顔料としては、べんがら(酸化第二鉄)、酸化クロム、コバルトブルー、鉄黒、ビリジアン、朱、カドミウムレッド、紺青、モリブデンレッド、含水硅酸塩、群青、ガーネット、マンガンバイオレット、カーボンブラック、体質顔料にローダミン、メチルバイオレット、ピーコックブルー、アルカリブルー、マラカイトグリーン、アリザリン等の染料を染め付けた捺染系顔料、アルカリブルー、アニリンブラック、リソールレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ウォッチヤングレッド、ボルドー10B、パラレッド、レーキレッド4R、ナフトールレッド、クロモフタルスカーレットRN、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、フタロシアニングリーン、アントラキノン系顔料、ペリレンレッド、チオインジゴレッド、インダントロンブルー、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、ナフトールグリーンBが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。シリコーンゴム層が有色顔料を含有する水なし平版印刷版としては、例えば、国際公開第2008/56588号に記載された水なし平版印刷版を挙げることができる。
【0013】
次に、水なし平版印刷版の製版方法について説明する。基板上に、少なくとも感光層およびシリコーンゴム層をこの順に有する水なし平版印刷版の場合は、通常保護フィルム上に原図フィルムを配して活性光線により画像露光を行い、その後保護フィルムを剥離した後、現像することによって画像を形成することができる。また、基板上に、少なくとも感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有するいわゆる直描型の水なし平版印刷版の場合は、保護フィルムを有する版についてはそのままもしくは保護フィルムを剥離してから、保護フィルムのない版についてはインキ反発層に直接レーザー光で画像を露光する。保護フィルムを有するものは剥離した後、手現像または現像装置で現像することによって画像を形成することができる。現像装置の具体例としては、TWL−650シリーズ、TWL−860シリーズ、TWL−1160シリーズ(東レ(株)製)、TWL−860CF、TWL−1160CF((株)東洋商社製)、特開平4−2265号公報、特開平5−2272号公報、特開平5−6000号公報などに開示される自動現像機などを挙げることができる。
【0014】
本発明は、上記水なし平版印刷版の製版方法における現像方法に関するものであり、(1)水なし平版印刷版を、下記一般式(I)で表されるエチレングリコール誘導体を95重量%以上含有する前処理液で前処理する工程および(2)前処理後の水なし平版印刷版を水を含む現像液により現像する工程を有し、有機溶媒を含有する後処理液で後処理する工程を有しないことを特徴とする。
R−(OCHCH−OH (I)
(上記一般式(I)中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは1〜5の整数を示す。)
まず、(1)水なし平版印刷版を、前記一般式(I)で表されるエチレングリコール誘導体を95重量%以上含有する前処理液で前処理する工程について説明する。前処理工程は、水なし平版印刷版を露光後、現像に先だって行われ、シリコーンゴム層を膨潤させ、後に画線部となる部分の感熱層または感光層を溶解する工程である。本発明における前処理液は、前記一般式(I)で表されるエチレングリコール誘導体を95重量%以上含有することを特徴とする。有機溶媒を含有する後処理液で後処理する工程を有しない現像方法では、エチレングリコール誘導体含有量が95重量%未満であると、画線部にシリコーンゴム層などのインキ反発成分が残存しやすく、後処理工程を有する現像方法に比べてインキ着肉性が低下する。画線部のインキ着肉性をより向上させるために、エチレングリコール誘導体含有量は96重量%以上が好ましい。一方、非画線部のシリコーンゴム層剥がれを抑制するためには、エチレングリコール誘導体含有量は99.9重量%以下が好ましい。
【0015】
一般式(I)で表されるエチレングリコール誘導体としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルトリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。nは1〜4が好ましく、Rは水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、水素がより好ましい。
【0016】
また、前処理液による非画線部のシリコーンゴム層剥がれを抑制するために、前記エチレングリコール誘導体とともに、1分子中に1級アミノ基を2個以上有するアミン化合物を含有することが好ましく、かかるアミン化合物を前処理液中0.1重量%以上含有することが好ましい。一方、画線部のインキ着肉性の観点から、アミン化合物含有量は5重量%以下が好ましく、4重量%以下がより好ましい。
【0017】
エチレングリコール誘導体と同時に含有するアミン化合物としては、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、2,3−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、ビス(3−アミノプロオキシ)エタン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロピレンジアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、1,2,5−ペンタトリアミン、2,3,6−トリアミノピリジン、ポリオキシアルキレントリアミン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ジエチレングリコールエーテル、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリエチレングリコールエーテル、1,2,4,5−ベンゼンテトラミン等が挙げられるが、1級アミノ基を2個以上有すればこれらに限定されることはない。これらの中で、揮発性の点から分子量150以上のものが好ましい。
【0018】
本発明における前処理液には、プロピレングリコール系溶剤、染料、染料助剤、界面活性剤、消泡剤等を任意に含有してもよい。また、前処理液をそのまま現像液として使用してもよい。
【0019】
前処理は、露光後の水なし平版印刷版を前記前処理液で処理することによって行う。処理方法としては、例えば、露光後の水なし平版印刷版を前記前処理液に浸漬する方法、露光後の水なし平版印刷版面にシャワーで前記前処理液をかけて版面を濡らす方法などが挙げられる。
【0020】
本発明の水なし平版印刷版の現像方法においては、画像再現性、インキ着肉性をより安定化させる観点から、前処理工程における前処理液の温度を一定に保つことが好ましい。現像性を向上させる観点から、前処理液の温度は35℃以上が好ましい。また、感光層や感熱層の剥離を抑制する観点から、50℃以下がより好ましい。
【0021】
また、画像再現性、インキ着肉性をより安定化させる観点から、前処理時間を一定に保つことが好ましい。適切な処理時間は処理液の温度によって変化するが、好ましくは20秒以上である。20秒以上であれば処理時間の管理が容易であり、安定した現像が行いやすい。また、作業性の点から90秒以下が好ましい。特に自動現像機を用いる場合、前処理時間は短いことが好ましい。
【0022】
次に、(2)前処理後の水なし平版印刷版を水を含む現像液により現像する工程について説明する。現像工程とは、前記の前処理液もしくは水の存在下、水なし平版印刷版表面をブラシや木綿パッドで擦ることにより画像を形成する工程である。ポジティブワーキングにより画像形成された場合、未露光部のシリコーンゴム層が除去されて下層の感光層または感熱層が露出し、インキ着肉部(画像部)が形成される。また、ネガティブワーキングにより画像形成された場合、露光部のシリコーンゴム層が除去されて下層の感光層または感熱層が露出し、インキ着肉部(画像部)が形成される。環境負荷低減の点からは、現像液として水を使用することが好ましい。温水や水蒸気を水なし平版印刷版面に噴射することによって現像を行ってもよい。現像性を向上させるために、水に前記前処理液を少量加えたものを現像液として用いてもよい。現像工程における現像液の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。
【0023】
本発明の現像方法は、有機溶媒を含有する後処理液で後処理する工程を有しないが、現像工程の後に有機溶媒を含有しない後処理液を用いた後処理工程を設けてもよい。後処理工程では、水なし平版印刷版表面をブラシや木綿パッドで擦ることにより、現像工程で除去し切れなかった画線部のインキ反発成分を除去する。後処理工程にブラシを設置する場合は、残存するインキ反発成分を削減する観点から、通版方向に対してブラシを逆回転させることが好ましい。後処理液には水を用いてもよいし、その他水性の酸、消泡剤、可塑剤を任意に添加してもよいが、環境負荷低減の点から、水を用いることが好ましい。後処理工程における後処理液の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。
【0024】
水なし平版印刷版面に前処理液や後処理液が浸透したままになっていると、経時により非画線部のシリコーンゴム層や画線部の感光層または感熱層が剥離しやすくなる場合があるため、水を用いて前処理液や後処理液を水なし平版印刷版面から洗い落とす水洗工程を設けてもよい。水洗水の温度は任意でよいが、10℃〜50℃が好ましい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定される
ものではない。
【0026】
(実施例1)
まず、以下の方法で縦560mm×横670mmの大きさの着色シリコーン層を有した水なし平版印刷版原版を作製した。厚さ0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に下記のプライマー層組成物液を塗布し、200℃で90秒間乾燥し、膜厚10g/mのプライマー層を設けた。
【0027】
<プライマー層組成物液>
(a)“チタンマスター”(登録商標)7A−1331(住化カラー(株)):75重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製):78重量部
(c)エポキシ樹脂:エポキシ1010DMF(ペトロケミカルス(株)製):36重量部
(d)レベリング剤:“ディスパロン”(登録商標)LC951(楠本化成(株)製):1重量部
(e)N,N−ジメチルホルムアミド:29重量部
(f)メチルエチルケトン:77重量部
【0028】
次いで、下記の感熱層組成物液を前記プライマー層上に塗布し、120℃で90秒間加熱し、膜厚1.5g/mの感熱層を設けた。
【0029】
<感熱層組成物液>
(a)赤外線吸収染料:NK8876((株)林原生物化学研究所製):10重量部
(b)チタンキレート:“ナーセム”(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製、固形分濃度:40重量%):10重量部
(c)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”(登録商標)PR−50731(住友ベークライト(株)製)のテトラヒドロフラン溶液(固形分:40重量%):68重量部
(d)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”(登録商標)PR−53195(住友ベークライト(株)製)のテトラヒドロフラン溶液(固形分:40重量%):23重量部
(e)ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製):5重量部
(f)シリル化モノマー:SP−Y08(東レ・ファインケミカル(株)製):18重量部
(g)テトラヒドロフラン:100重量部
(h)エタノール:10重量部
(i)エチルジグリコール:43重量部
【0030】
次いで、塗布直前に調製した下記の有色顔料含有シリコーン希釈液を前記感熱層上に塗布し、130℃で90秒間加熱し、膜厚2.0g/mのシリコーンゴム層を設けた。加熱直後のシリコーンゴム層は完全に硬化していた。加熱直後のシリコーンゴム層上に、厚み6μmのポリプロピレンフイルム:“トレファン”(登録商標)(東レ(株)製)をラミネートし、ネガ型水なしCTP平版印刷版原版を得た。
【0031】
<有色顔料含有シリコーン希釈液>
下記(a)〜(c)をこの順に混合することで有色顔料分散希釈液を得た。
(a)“アイソパー”(登録商標)E(エクソンモービル(有)製):342重量部
(b)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:1重量部
(c)有色顔料(紺青):“ブルーマスター”(登録商標)5A1258(住化カラー(株)製):10重量部
【0032】
次いで、別容器中で下記(d)〜(h)を混合することでシリコーン希釈液を得た。
(d)“アイソパー”(登録商標)E(エクソンモービル(有)製):701重量部
(e)DOW CORNING TORAY CY54−050BASE(東レ・ダウコーニング(株)製):20重量部
(f)CY51−046(アヅマックス(株)製):80重量部
(g)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:3重量部
(h)“SRX”212(東レ・ダウコーニング(株)製):7重量部
【0033】
予め作製しておいた有色顔料分散希釈液を撹拌しながら、別容器で作製した上記シリコーン希釈液を、液重量比1:6.5で混合することにより、有色顔料含有シリコーン希釈液を得た。
【0034】
上記ネガ型水なしCTP平版印刷版原版を製版機Trendsetter800Quntum(コダック(株)製)に装着し、半導体レーザーを用いて、露光量10.5Wで、2400dpi、175線/インチ、50%の画像を露光した。露光後の版から表面のポリプロピレンフイルムを剥離し、前処理液温度45℃、前処理時間40秒、現像液温度25℃に設定した水なし平版印刷版用自動現像機TWL−1160F(東レ(株)製)に通版して、前処理・現像・後処理・水洗を行い、印刷版を得た。
【0035】
前処理槽には下記組成の<前処理液−1>を入れ、現像槽、後処理槽、水洗槽には水を入れた。
<前処理液−1>
(1)ジエチレングリコール 100.0重量%
【0036】
得られた印刷版を枚葉オフセット印刷機LITHRONE26(小森コーポレーション(株)製)に取り付け、水なし平版用インキアクワレスエコーネオ藍LZ(東洋インキ(株)製)を使用して、印刷物の100%絵柄のインキ濃度が1.10〜1.30となるように、コート紙(トップコート62.5kg/(636mm×939mm))に印刷し、印刷物の50%絵柄のインキ濃度を測定することによりインキ着肉性を評価した。インキ濃度は0.41であり、良好なインキ着肉性を示した。評価結果を表1に示す。本評価では、インキ濃度が0.25以上であればインキ着肉性が良好であるといえる。なお、印刷物のインキ濃度測定には、GretagMacbeth SpectroEye(エックスライト社製)を用いた。また、前記前処理・現像・後処理・水洗により得られた印刷版を目視観察することにより非画線部剥がれを評価したところ、非画線部に剥がれが発生していた。
【0037】
(実施例2)
自動現像機の前処理槽に下記組成の<前処理液−2>を使用した以外は実施例1と同様の方法で製版・印刷をしてインキ着肉性および非画線部剥がれの評価を行ったところ、良好なインキ着肉性を示し、非画線部剥がれが発生した。評価結果を表1に示す。
<前処理液−2>
(1)ジエチレングリコールモノブチルエーテル 100.0重量%
【0038】
(実施例3〜11)
自動現像機の前処理槽に下記組成の<前処理液−3>〜<前処理液−11>を使用した以外は実施例1と同様の方法で製版・印刷をしてインキ着肉性および非画線部剥がれの評価を行ったところ、良好なインキ着肉性を示し、実施例3では非画線部剥がれが発生したが、実施例4〜11では発生しなかった。評価結果を表1に示す。
<前処理液−3>
(1)トリエチレングリコール 100.0重量%
<前処理液−4>
(1)トリエチレングリコール 99.9重量%
(2)ポリオキシアルキレントリアミン(“ジェファーミン”(登録商標)T−403(ハンツマン社製) 0.1重量%
<前処理液−5>
(1)トリエチレングリコール 99.5重量%
(2)ポリオキシアルキレントリアミン(“ジェファーミン”(登録商標)T−403(ハンツマン社製) 0.5重量%
<前処理液−6>
(1)トリエチレングリコール 99.0重量%
(2)ポリオキシアルキレントリアミン(“ジェファーミン”(登録商標)T−403(ハンツマン社製) 1.0重量%
<前処理液−7>
(1)トリエチレングリコール 98.0重量%
(2)ポリオキシアルキレントリアミン(“ジェファーミン”(登録商標)T−403(ハンツマン社製) 2.0重量%
<前処理液−8>
(1)トリエチレングリコール 97.0重量%
(2)ポリオキシアルキレントリアミン(“ジェファーミン”(登録商標)T−403(ハンツマン社製) 3.0重量%
<前処理液−9>
(1)トリエチレングリコール 96.0重量%
(2)ポリオキシアルキレントリアミン(“ジェファーミン”(登録商標)T−403(ハンツマン社製) 4.0重量%
<前処理液−10>
(1)トリエチレングリコール 95.0重量%
(2)ポリオキシアルキレントリアミン(“ジェファーミン”(登録商標)T−403(ハンツマン社製) 5.0重量%
<前処理液−11>
(1)トリエチレングリコール 95.0重量%
(2)ポリオキシアルキレンジアミン(“ジェファーミン”(登録商標)D−230(ハンツマン社製) 5.0重量%
【0039】
(比較例1〜3)
自動現像機の前処理槽に下記組成の<前処理液−12>〜<前処理液−14>を使用した以外は実施例1と同様の方法で製版・印刷をしてインキ着肉性および非画線部剥がれの評価を行ったところ、インキ着肉性の低下が見られたが、非画線部剥がれは発生しなかった。評価結果を表1に示す。
<前処理液−12>
(1)トリエチレングリコール 94.0重量%
(2)ポリオキシアルキレントリアミン(“ジェファーミン”(登録商標)T−403(ハンツマン社製) 6.0重量%
<前処理液−13>
(1)トリエチレングリコール 90.0重量%
(2)ポリオキシアルキレントリアミン(“ジェファーミン”(登録商標)T−403(ハンツマン社製) 10.0重量%
<前処理液−14>
(1)トリエチレングリコール 85.0重量%
(2)ポリオキシアルキレントリアミン(“ジェファーミン”(登録商標)T−403(ハンツマン社製) 15.0重量%
【0040】
(比較例4)
自動現像機の後処理槽に、有機溶媒を15重量%含有する後処理液PA−1(東レ(株)製)を使用した以外は比較例3と同様の方法で製版・印刷をしてインキ着肉性および非画線部剥がれの評価を行ったところ、良好なインキ着肉性を示し、非画線部剥がれは発生しなかった。
【0041】
この結果から、後処理槽に有機溶媒を含有する後処理液を使用しない場合には、前記一般式(I)で表されるエチレングリコール誘導体を95重量%以上含有する前処理液で前処理することにより、インキ着肉性が向上することが分かる。
【0042】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも感光層または感熱層、およびシリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版の現像方法であって、(1)水なし平版印刷版を、下記一般式(I)で表されるエチレングリコール誘導体を95重量%以上含有する前処理液で前処理する工程および(2)前処理後の水なし平版印刷版を水を含む現像液により現像する工程を有し、有機溶媒を含有する後処理液で後処理する工程を有しないことを特徴とする水なし平版印刷版の現像方法。
R−(OCHCH−OH (I)
(上記一般式(I)中、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは1〜5の整数を示す。)
【請求項2】
前記前処理液が、前記一般式(I)で表されるエチレングリコール誘導体を95重量%以上および1分子中に1級アミノ基を2個以上有するアミン化合物を5重量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の現像方法。
【請求項3】
前記水なし平版印刷版のシリコーンゴム層が有色顔料を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の水なし平版印刷版の現像方法。