説明

水ガラスの製造方法

【課題】シリコンの純度向上プロセスから副生され、シリコンを含有すると共に珪酸ナトリウムを主成分とする副生成物から、透明な水ガラスとして有効利用することができる水ガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】シリコンの純度向上プロセスから副生され、シリコンを含有すると共に珪酸ナトリウムを主成分とするナトリウム系副生成物を、水に溶解させて、粗水ガラスを生成すると共に、前記シリコンを溶解して水素ガスを発生させ、その後、前記粗水ガラスを濾過して水ガラスを製造することを特徴とする水ガラスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンの純度向上プロセスから副生され、シリコンを含有すると共に珪酸ナトリウムを主成分とする副生成物を使用した水ガラスの製造方法に関する。特には、SiO固体からのシリコンの製造、又は、シリコンからのスラグ精錬によるホウ素除去の過程で副生される、シリコンを含有すると共に珪酸ナトリウムを主成分とする副生成物を使用した水ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は先に特許文献1において、不純物としてホウ素を含有する金属シリコンを融点以上に加熱して溶融状態とした後、二酸化珪素を主成分とする固体とアルカリ炭酸化物又はアルカリ炭酸化物の水和塩の一方又は両方を主成分とする固体を該溶融シリコン中に添加することで、スラグを形成すると共に、シリコン中のホウ素を除去することを特徴とするシリコンからのホウ素除去方法を開示している。更にまた、アルカリ炭酸化物又はアルカリ炭酸化物の水和塩として、ナトリウム化合物であるところの、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、およびこれらの水和塩を挙げている。
【0003】
また、本発明者等は特許文献2において、SiO固体に、アルカリ金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸化物、ふっ化物のいずれか、又はアルカリ土類金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸化物、ふっ化物のいずれか、又はこれらの化合物の2種以上を添加し、生じた混合物をSiの融点以上に加熱し、化学反応を行わせることによりSiを生成させ、該Siを反応副生成物から分離回収することを特徴とするSi製造方法を開示している。又、ここでのアルカリ金属元素の一つとしてナトリウムを挙げている。
【0004】
本発明は、主に上記2つの方法において、ナトリウム化合物を使用した場合に関するものである。
【0005】
ナトリウム化合物を使用した場合、上記のシリコンからのホウ素の除去方法においては、シリコンの他にSiO2と酸化ナトリウムを主成分とするガラス状物質、即ち、珪酸ナトリウムを主成分とする副生成物が発生する。又、ナトリウム化合物を使用した場合、上記のSiO固体からのシリコンの製造方法においては、シリコンの他に、SiO2と添加したナトリウム化合物から生成する酸化ナトリウムから成るガラス状物質、即ち、珪酸ナトリウムを主成分とする副生成物が発生する。これら副生成物は、シリコンと同等又はそれ以上の質量で発生し、これらを有効に活用する方法が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特開2005−247623号公報
【特許文献2】特開2004−51453号公報
【非特許文献1】廃棄物学会論文,Vol 16, No.6, p540-544, 2005, 土屋禎造他
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
背景技術で述べたように、特許文献2に記載するようなSiO固体からのシリコンの製造方法では、シリコンの他に、SiO2と添加したアルカリ元素又はアルカリ土類元素の酸化物から成るガラス状物質が副生成するが、本発明においては、アルカリ元素又はアルカリ土類元素としてナトリウムが選択された場合に、副生する珪酸ナトリウムを主成分とする副生成物の有効活用方法を提示する。又、背景技術で述べたように、特許文献1に記載するようなシリコンからのホウ素の除去方法においても、シリコンの他に、副生する珪酸ナトリウムを主成分とする副生成物についても有効活用方法を提示する。
【0008】
尚、以下では、これらの副生成物を“ナトリウム系副生成物”と記述する。
ナトリウム系副生成物は、珪酸ナトリウムを主成分とするため、水ガラスの原料として利用できる可能性が考えられた。
【0009】
ここで言うところの水ガラスとは、珪酸ナトリウムを主成分とする無色透明の水溶液のことであり、濁度(JIS-K0101工業用水試験方法)としては例えば15以下のものを指し、一般に、土建用材料(土壌安定剤、セメント急結剤など)、成形材料(鋳造用砂型材料など)、無水珪酸製造用原料(ホワイトカーボン、シリカゲル、触媒用シリカ担体など)、パルプ用材料(漂白剤など)、バインダー成分(窯業用、接着剤用)等に使用される工業製品である。
【0010】
水ガラスの一般的な工業的製法は、乾式法と湿式法に大別されるが、乾式法においては、原料珪砂と原料ソーダ灰とを混合して溶融した後、冷却固化して製造され、カレットと呼ばれている無色透明の珪酸ナトリウム固体を、オートクレーブを使用して、加圧下で水と共に加熱して溶解し、水溶液とする。この水溶液は、粗水ガラスとも言う。
【0011】
この粗水ガラスには、微量の不溶解成分を含有することもある。このため、オートクレーブ処理の後に、粗水ガラスを、必要に応じて珪藻土などの濾過助剤を加えて、濾過により不溶解成分を除去し、透明な水溶液のみを分離して、これを水ガラス製品とする方法が一般的である。
【0012】
しかし、ナトリウム系副生成物を原料として上記方法で水ガラスの製造を考えた場合、次の問題があった。
【0013】
第一に、上述したように、ナトリウム系副生成物はシリコン製造プロセスで副成するものであるので、殆どの場合、微量のシリコンが含有されており、数mmから数10mmのシリコン塊がナトリウム系副生成物の所々にかみ込まれている。この形態は、ナトリウム系副生成物の生成に至る条件によっては、存在しない場合もある。
【0014】
また、SiO固体からのシリコンの製造方法、又は、シリコンからのスラグ精錬によるホウ素の除去方法においては、発生元は明確にはなっていないが、炉材、部材、保温材などの不純物(混入物ともいう)が、少量ではあるがナトリウム系副生成物中に溶解もしくは混入する。
【0015】
粗水ガラスは、強アルカリであるため、これらの炉材、部材、保温材などからの混入物(Al23やMgOやCaOなど)は、微量ながら溶解する。溶解した微量のCa、Mg、Alなどの多価金属イオンは、粗水ガラス中の珪酸ナトリウムと反応して、不溶性の珪酸塩金属水和物や珪酸などを同時に生成してゲル化し、これらも粗水ガラス中の懸濁物質の原因となる。例えば、水酸化カルシウムとの反応は(式1)のようになる。
【0016】
Na2O・nSiO2+ Ca(OH) 2 + mH2O → CaO・nSiO2・mH2O・2NaOH(一部SiO2になる)
―――(式1)
【0017】
シリコンを含有するナトリウム系副生成物は、通常の水ガラス原料用のカレットとは異なり、茶色もしくは灰色であり、これを水に溶解させ水溶液とすると、生じた懸濁物質により、濃い茶色もしくは灰色の液体となる。さらに、この懸濁物質は、1μm以下の微粒子が多く、かつ、強い濁りを有していることから、濾過が困難であると推測される。
【0018】
工業的な製造を考えた場合、不良品となる、濁った水ガラスが製造されてしまうことは問題であり、特に水ガラスは強アルカリの溶液であるので、不良品ができた場合にはその廃棄に多大な労力・コストを要することとなる。このため、ナトリウム系副生成物を水ガラス原料として使用することは困難と考えられた。
【0019】
第二に、ナトリウム系副生成物を高温で水に溶解させると、珪酸ナトリウムのためアルカリ性となるが、シリコンはアルカリ性では水と反応し水素を発生することが知られている。この現象については、例えば、非特許文献1に記載されている。水素は爆発性のガスであるので、ナトリウム系副生成物を工業生産ラインで使用するためには、この水素への対処が必要であった。又、仮に水素発生量が少なく、爆発に至らない水素発生量であっても、オートクレーブでの溶解中に圧力上昇が大きくなり、内容物の液体がガス抜き弁から流れ出る等による操業安定性の問題があった。
【0020】
本発明においては、上記課題に鑑み、シリコンの純度向上プロセスから副生され、シリコンを含有すると共に珪酸ナトリウムを主成分とする副生成物(ナトリウム系副生成物)を、水ガラスとしてリサイクルでき、更に、その際に、ナトリウム系副生成物中のシリコンに起因する水素ガス発生の問題を解決し、安全かつ安定操業が可能で、透明な水ガラスとして有効利用することができる水ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の特徴は以下の通りである。
(1)シリコンの純度向上プロセスから副生され、シリコンを含有すると共に珪酸ナトリウムを主成分とするナトリウム系副生成物を、水に溶解させて、粗水ガラスを生成すると共に、前記シリコンを溶解して水素ガスを発生させ、その後、前記粗水ガラスを濾過して水ガラスを製造することを特徴とする水ガラスの製造方法。
【0022】
(2)シリコンの純度向上プロセスから副生され、シリコンを含有すると共に珪酸ナトリウムを主成分とするナトリウム系副生成物を、水に溶解させて、粗水ガラスを生成すると共に、前記シリコンを溶解して水素ガスを発生させ、その後、濾過助剤を用い、前記粗水ガラスを濾過して水ガラスを製造することを特徴とする前記(1)に記載の水ガラスの製造方法。
【0023】
(3)前記ナトリウム系副生成物が、不純物としてホウ素を含有する金属シリコンを加熱して溶融した後、二酸化珪素を主成分とする固体と、ナトリウム炭酸化物又はナトリウム炭酸化物の水和塩の一方又は両方を主成分とする固体とを、前記溶融シリコン中に添加して、珪酸ナトリウムを主成分とするスラグを形成すると共に、前記溶融シリコン中のホウ素を前記スラグに移動させて除去するシリコンからのホウ素除去方法において副生される、前記スラグからなる副生成物であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の水ガラスの製造方法。
【0024】
(4)前記ナトリウム系副生成物が、SiO固体に、ナトリウムの酸化物、水酸化物、炭酸化物、ふっ化物のいずれか1種、又はこれらの化合物の2種以上を添加して混合物とし、当該混合物をSiの融点以上に加熱することでSiを生成するSiの製造方法において副生される、副生成物であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の水ガラスの製造方法。
【0025】
(5)前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させる際、大気圧下で溶解し、生成された水溶液を静置して、未溶解のナトリウム系副生成物を沈澱させて分離し、当該分離後の水溶液を前記粗水ガラスとすることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の水ガラスの製造方法。
【0026】
(6)前記未溶解のナトリウム系副生成物を分離後の水溶液を60〜250℃に加温して、前記溶解により水溶液中に生じている懸濁物質を凝集させ、その後、当該懸濁物質を分離して、当該分離後の水溶液を前記粗水ガラスとすることを特徴とする前記(5)に記載の水ガラスの製造方法。
【0027】
(7)前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させる際、大気圧下で溶解し、生成された水溶液を60〜250℃に加温して、前記溶解により水溶液中に生じている懸濁物質を凝集させ、その後、当該懸濁物質および未溶解のナトリウム系副生成物を分離して、当該分離後の水溶液を前記粗水ガラスとすることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の水ガラスの製造方法。
【0028】
(8)前記懸濁物質を分離する方法として、静置もしくは遠心分離を用いることを特徴とする前記(6)又は(7)に記載の水ガラスの製造方法。
(9)前記シリコンを溶解して水素ガスを発生させる際に、水溶液中に浮上してくるシリコンを回収することを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の水ガラスの製造方法。
(10)前記シリコンを溶解して水素ガスを発生させる際に、前記ナトリウム系副生成物中のシリコンを全量溶解することを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の水ガラスの製造方法。
(11)ナトリウム化合物、珪酸ナトリウム、可溶性シリカの少なくともいずれかを、前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させる前、前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させた後、又は、前記濾過後に、添加して、前記ナトリウム系副生成物と混合し、製造される水ガラスのモル比を調整することを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれか1つに記載の水ガラスの製造方法。
(12)前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させる前、前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させた後、又は、前記濾過後に、添加する前記ナトリウム化合物、前記珪酸ナトリウム、前記可溶性シリカの少なくともいずれかは、固体または水溶液の状態で添加することを特徴とする前記(11)に記載の水ガラス製造方法。
(13)前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させる際、大気圧超の圧力下で溶解させることを特徴とする前記(1)〜(4)、(9)〜(12)のいずれか1つに記載の水ガラスの製造方法。
(14)前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させる際、大気圧下で溶解して、水素ガスを発生させた後、大気圧超の圧力下で前記ナトリウム系副生成物をさらに溶解させることを特徴とする前記(1)〜(4)、(9)〜(12)のいずれか1つに記載の水ガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、シリコンの純度向上プロセスから副生され、シリコンを含有すると共に珪酸ナトリウムを主成分とする副生成物(ナトリウム系副生成物)のリサイクル利用が可能になり、このナトリウム系副生成物からの透明な水ガラスの製造が可能となった。又、副生成物に含有されるシリコン起因の水素ガス発生による安全性の問題を解決できる水ガラスの製造が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、シリコンの純度向上プロセスから副生され、シリコンを含有すると共に珪酸ナトリウムを主成分とするナトリウム系副生成物を用いて、水ガラスを製造する方法であるが、このナトリウム系副生成物を生成するシリコンの純度向上プロセスとは、例えば、以下に示す二つの形態がある。
【0031】
第一の実施形態としては、特許文献1で記載されている金属シリコンからホウ素を除去する方法(以下、ホウ素除去方法と言う)であり、不純物としてホウ素を含有する金属シリコンを融点以上に加熱して溶融した後、二酸化珪素を主成分とする固体とナトリウム炭酸化物又はナトリウム炭酸化物の水和塩の一方又は両方を主成分とする固体とを前記溶融シリコン中に添加して、珪酸ナトリウムを主成分とするスラグを形成すると共に、前記シリコン中のホウ素を前記スラグに移動させるシリコンからのホウ素除去方法がある。この方法では、スラグは冷却後に珪酸ナトリウムを主成分とする塊を形成し、本発明で言うところのナトリウム系副生成物となる。
【0032】
又、第二の実施形態としては、特許文献2に記載されているSiO法(以下、SiO法と言う)であり、SiO固体に、ナトリウムの酸化物、水酸化物、炭酸化物、ふっ化物のいずれか1種、又はこれらの化合物の2種以上を添加して混合物とし、当該混合物をSiの融点以上に加熱すると、SiOがSiとSiO2に分解すると共に、生成したSiO2は上記ナトリウム化合物と反応し珪酸ナトリウムとなる。Siの融点以上では、Siはもちろん、珪酸ナトリウムも液体であるので、各々は表面張力により合体し、冷却後にはSi塊と珪酸ナトリウムを主成分とする塊が得られる。この珪酸ナトリウム塊も本発明で言うところのナトリウム系副生成物である。
【0033】
次に、ナトリウム系副生成物から水ガラスを製造する方法について述べる。
まずはナトリウム系副生成物を水に溶解させ水溶液とするわけであるが、上述したように、ナトリウム系副生成物に含有されているシリコンと水が反応し大なり小なり水素が発生する。本発明では、シリコンの分離もしくは完全にシリコンを溶解させることで、脱水素を行いつつ、水ガラス溶液を製造する。
【0034】
まず、一般的なナトリウム系副生成物を水に溶解させる条件としては、大気圧超であることが好ましく、更に、温度が120℃以上であることが最も好ましい。これは、このように高圧高温とすることで、ナトリウム系副生成物の溶解を促進するためと、生成する懸濁物質の造粒(結晶成長)させ、後段のろ過をし易くするためである。また、造粒化した懸濁物質は凝集しやすく、1mm〜10mm程度の凝集体となり、静置、遠心分離などの重力分離において、凝集した懸濁物質を分離し易くするためである。但し、圧力が高すぎたり、ナトリウム系副生成物中のシリコンの含有量が多い場合は、溶解により水素が多量に発生し、問題となることがある。従って、事前に溶解試験を行って、水素の発生状況を確認し、適正な圧力条件を設定することが好ましい。尚、大気圧を超える溶解処理には一般にオートクレーブが使用できる。
【0035】
又、次に好ましい条件は、大気圧下であっても40℃以上でナトリウム系副生成物を水に溶解させる条件である。大気圧超と比較すると若干溶解速度が遅くなるものの、ナトリウム系副生成物は元々溶解性に優れる性質を持っており、実機操業可能である。
【0036】
又、ナトリウム系副生成物を、大気圧下で(100℃以下の条件で)溶解させた後、大気圧を超え(又は、更に120℃以上で)さらに溶解させることが好ましい場合も多い。これは初めの大気圧下の溶解処理でナトリウム系副生成物中に含有されるシリコンを熱水と反応させ水素を発生させてしまい、次に例えばオートクレーブを使用し大気圧以上(又は、更に120℃以上)でナトリウム系副生成物を完全溶解させ、また生成する懸濁物質を造粒し、後述の濾過、もしくは、静置や遠心分離などの重力分離を容易にする方法である。初めの大気圧下で大部分またはほぼ全てのシリコンを水と反応させることにより、次のオートクレーブ処理での水素発生を抑制することができ、実機操業の安全確保の意味から好ましいと言える。特に、シリコンの含有割合が多いナトリウム系副生成物を用いる場合は、望ましい形態である。
また、ナトリウム系副生成物中に含有されるシリコンは、全て水と反応させなくてもよい。ナトリウム系副生成物を溶解させる際に、シリコン界面より水素ガスを発生させてナトリウム系副生成物を崩壊させシリコンは分離されるが、その分離したシリコンはシリコン周辺に水素ガス層を付着させるため、粒子径が小さいと、浮上する。粒子径が大きいと沈降したままとなる。シリコンの浮上もしくは沈降する粒子径は、粗水ガラスの液比重、水温などにより、一概には決まらないが、浮上もしくは沈降する粒子径の境界は、5〜15mmである。このようなシリコンの挙動、つまり、シリコンのほとんどが水面と底に存在することに着目し、浮上したシリコンを回収することで、シリコンを分離することができる。または/かつ、水面と底ではない中間層から粗水ガラスを採取することで、シリコンを分離することができる。
【0037】
また、ナトリウム系副生成物を大気圧下、もしくは、大気圧超で溶解させる段階で、ナトリウム系副生成物の全てが溶解しない場合がある。このような場合、懸濁物質の結晶化(ゼオライト化)による粒子径増大化は不十分となり、懸濁物質を構成する粒子は1μm以下のものが量として多く存在し、濾過時の濾過抵抗が大きくなり、濾過に長時間要してしまう。
【0038】
ナトリウム系副産物を溶解させると、珪酸ナトリウム成分は数時間以内で溶解するが、炉材、部材、保温材などからの混入物(Al23やMgOやCaOなど)は、微量ながら溶解するものの、完全に溶解するには相当時間がかかる。例えば、アルミナ成分は、一部、水酸化アルミニウムとなり、溶解した珪酸ナトリウム成分と反応し、Na2O−Al2O3−nSiO2−H2Oゲルを形成する。このゲルは、40〜450℃において、水熱合成反応により、ゼオライト結晶化する。結晶化時間は水熱合成時の温度によって大きく変化し、温度が低い程、時間を要する傾向がある。60℃より低い場合、水熱合成反応(結晶化反応ともいう)は4日以上要し、生産性が悪化する。また、250℃より高い場合、反応時間は30分以下になるが、反応容器はオートクレイブのようにバッチ操作となるため、粗水ガラスの出し入れ時間などの付帯作業があり、サイクルタイム全体では大きな短縮とならず、かつ、4MPa程度の耐圧構造が必要となるため、設備費が大きくなる。そこで、水熱合成反応は、60〜250℃が好ましい。また、前述したように、アルミナ成分自体の溶解には非常に時間がかかるため、アルミナ成分が共存した状態で、結晶化により粒子径を大きく(1μm以上)するためには、さらに、長時間(数日間〜10日間)を要し、現実的ではない。また、ゼオライト結晶化した粒子は、凝集性がよく、1〜10mm程度の凝集体となりやすい。また、前記混入物は、前記未溶解のナトリウム系副産物と混在しており、前記未溶解のナトリウム系副産物から前記混入物(Al23やMgOやCaOなど)を分離するのは困難である。未溶解のナトリウム系副産物を、ゲルを含有する水溶液から分離せずに、60〜250℃での水熱合成反応領域で結晶化させた場合、未溶解のナトリウム系副産物中には、混入物(Al23やMgOやCaOなど)が含まれており、前述のようにゲルが発生し、そのゲル発生は混入物中の可溶性物質が溶解するまで継続する。つまり、常に粒子径の小さいゲル(<1μm)が生成するため、ゲルや結晶化粒子からなる懸濁物質の粒度分布では、微細粒子(<1μm)を3〜10%含み、その結果、凝集性や沈降性や濾過性が劣る。そこで、60〜250℃の水熱合成反応領域とする前に、予め、前記混入物(Al23やMgOやCaOなど)を含んだ未溶解のナトリウム系副産物を分離することで、水熱合成反応時での新たなゲル発生が抑制され、凝集性や沈降性や濾過性は改善される。
【0039】
そこで、ナトリウム系副生成物を大気圧下もしくは大気圧超で溶解させる段階で、ナトリウム系副生成物の全てが溶解しない場合、未溶解のナトリウム系副生成物を分離した後、つまり、不純物(溶解に時間を要するアルミナ成分など)も含めた未溶解のナトリウム系副生成物を分離した後、懸濁物質を含んだ水ガラスのみを、再度、大気圧下もしくは大気圧超で加温し、懸濁物質を結晶化させ、粒子径を大きくすることが好ましい。このように結晶化した懸濁物質は凝集しやすい性質をもち、1〜10mmの凝集体になる。結晶化および凝集化させることで、後段で容易に濾過もしくは静置や遠心分離などの重力分離により懸濁物質を分離することができる。大気圧下では、40〜100℃の条件で加温し、大気圧超では例えばオートクレイプを使用し、120℃以上で加温することが好ましい。未溶解のナトリウム系副生成物の分離方法としては、静置や遠心分離や網による分離などが使用できる。
【0040】
ナトリウム系副生成物中に含有されるシリコン量は、ナトリウム系副生成物を細かく粉砕した後40℃以上の温水または熱水と反応させ、このとき発生する水素の量から測定することができる。この際の反応式は、(式2)に従い水素が発生するものと考える。
Si(s) + 2OH- + H2O → SiO32- + 2H2(g)↑ ―――(式2)
尚、この反応は40℃程度以上で行わせることが望ましく、例えば室温でも進行するが、進行しても非常に遅い。
【0041】
ナトリウム系副生成物を、水に溶解後は濾過を行うが、次にこの条件について述べる。水ガラスの濾過は工業的には加圧式の濾過機たとえばフィルタープレスを用いることが多い。又、真空・減圧式の濾過方法を用いることもできる。又、加圧濾過する際の圧力は一般的に0.3〜0.8MPa(ゲージ圧)が用いられ、温度は水ガラスの沸点以下ならばなるべく高い温度が好ましい。水ガラスの粘度は温度依存性が高く、水ガラス温度が高いほど粘度が低く濾過しやすいからである。好ましくは80℃程度である。
【0042】
また、温度以外に粘性を制御する方法として、ナトリウム系副生成物を溶解する際に添加する水の量、つまり濃度調節によって粘度を調整してもよい。
【0043】
以上の方法で濾過した後には、得られた水ガラスの濁度が、15以下となっていることが好ましい。濁度を下げることで水ガラスを無色透明化することができる。
【0044】
また、ナトリウム系副生成物のモル比(SiO2/Na2O)は、シリコンの純度向上プロセスが、ホウ素除去方法かSiO法かの違いや、プロセスの操業条件によって異なるが、最大で約0.3〜5の範囲内で変化する可能性があり、通常は、約0.5〜2.5の範囲内で変化する。
【0045】
ナトリウム系副生成物のモル比はこのように変動を生じ、また、水ガラスのモル(SiO2/Na2O)比としては、様々なものが製品となり得る。このため、この比を調整する目的で、ナトリウム化合物、例えば水酸化ナトリウム、又は、珪酸ナトリウムの固体および溶液、又は、可溶性シリカの少なくともいずれかを、ナトリウム系副生成物を水に溶解させる前、もしくは水に溶解させた後、又は、濾過後に添加することができる。
【0046】
なお、可溶性シリカとは、モル比調整の際に用いることができるアルカリに可溶なシリカのことであるが、ホワイトカーボン、シリカゲル、珪藻土などの非晶質シリカが、易溶であることから好ましい。硅砂等の結晶性シリカを用いる場合は、微粉化すれば使用可能である。
【0047】
モル比の調整に際しては、通常の水ガラスのモル比調整方法を適用すればよい。
尚、本発明の水ガラス製造方法を実施する際の設備の一例を、図1に示す。
水素除去槽1に原料となるナトリウム系副生成物と水を投入し、排気しながら前記副生成物を溶解する。この槽内でシリコンとアルカリを十分反応させ、水素除去を行う。次に溶解液を調整槽2に送り、濃度分析および濃度調整を行う。調整槽2の調整液を単独もしくはモル比調整のために前記ナトリウム化合物や可溶性シリカと共にオートクレーブ3に投入し、加圧溶解および熟成を行う。加圧後の溶解液を調整槽4に投入し、濃度分析および濃度調整を行う。フィルタープレス5で懸濁粒子を除去し、清澄な液を調整槽6に送り、モル比、濃度の分析および調整を行い、最終製品とする。なおモル比調整のための前記ナトリウム化合物や可溶性シリカ等を、水素除去槽1、調整槽2、調整槽4、調整槽6のいずれかの槽で投入する場合もある。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
ホウ素除去方法からのナトリウム系副生成物600グラムと水1200グラムをステンレス製容器に入れ、80℃に加温し、水素を発生させた。水素の泡が発生しなくなるのを確認後、全量をオートクレーブに入れ、蒸発分の水分を添加し、150℃、0.37MPa(ゲージ圧)で2時間溶解した。得られた粗水ガラスを通気度10({cm3/cm2・sec}、JIS L 1096「一般織物試験方法」で規定)の濾布を使用して吸引濾過した。
【0049】
濾過開始時の液温は80℃、濾過圧は0.03MPa(ゲージ圧)とした。濾過に要した時間は、約200分であった。得られた水ガラスは、Na2O:11.82重量%、SiO2:20.53重量%、モル比:1.78、濁度10であった。
【0050】
(実施例2)
実施例1と同様の操作で粗水ガラスを作製した。この粗水ガラスに濾過助剤(珪藻土類)を1重量%添加し、実施例1と同様に濾過を行った。得られた水ガラスの濁度は5以下であった。
【0051】
(実施例3)
ホウ素除去方法からのナトリウム系副生成物600グラムと水1200グラムをステンレス製容器に入れ、沸騰状態に加温し、ナトリウム系副生成物を溶解した。ナトリウム系副生成物の固まりが無いことを確認した後、実施例1と同様に濾過を行った。得られた水ガラスの濁度は15となった。また、ろ過時間が実施例1の5倍と長い時間を要した。
【0052】
(実施例4)
ホウ素除去方法からのナトリウム系副生成物100キログラムと水200キログラムをオートクレーブに入れ、上部蓋を開放状態(大気圧下)で80℃に加温し、水素を発生させた。水素の泡が発生しなくなるのを確認後、蒸発分の水分を添加し、オートクレーブ上部蓋を密閉し、150℃、0.37MPa(ゲージ圧)で2時間溶解した。得られた粗水ガラスに濾過助剤(珪藻土類)を0.6重量%添加し、通気度10の濾布を使用したフィルタープレス機で加圧濾過した。濾過開始時の液温は80℃、濾過圧は0.5MPa(ゲージ圧)とした。得られた水ガラスは、Na2O:9.48重量%、SiO2:19.70重量%、モル比:2.1、濁度5であった。このとき残渣の平均粒子径は、2.784μmであった。
【0053】
(実施例5)
実施例2で得られた水ガラス100グラムに、可溶性シリカ15グラムを混合し、80℃で可溶性シリカを溶解した。Na2O:10.20重量%、SiO2:30.80重量%、モル比:3.1、濁度10の水ガラスを得た。
【0054】
(実施例6)
ホウ素除去方法からのナトリウム系副生成物300グラムと水1200グラムをステンレス容器に入れ、80℃に加温し、水素を発生させた。水素の泡が発生しなくなるのを確認し、未溶解のナトリウム系副生成物を分離せずに、蒸発分の水分と共に、全量をオートクレーブに入れ、次にモル比3.75の水ガラスカレット300グラムをオートクレーブに入れ、150℃、0.37MPa(ゲージ圧)で2時間溶解した。得られた粗水ガラス中の残留固形物濃度は70g/Lであり、その残留固形物中の直径1μm以下の粒子は、全残留固形物中の5%(体積基準)であった。その粗水ガラスに濾過助剤(珪藻土類)を1重量%添加し、通気度10の濾布を使用して吸引濾過した。濾過開始時の液温は80℃、濾過圧は0.03MPaとした。濾過面積は78.5cm2であった。濾過に要した時間は、約300分であった。得られた水ガラスは、Na2O:9.26重量%、SiO2:24.07重量%、モル比:2.7、濁度5以下であった。
【0055】
(実施例7)
ホウ素除去方法からのナトリウム系副生成物300グラムと水1200グラムをステンレス容器に入れ、80℃に加温し、水素を発生させた。水素の泡が発生しなくなるのを確認し、1分間静置させ、未溶解のナトリウム系副生成物を沈殿させ、分離した後、蒸発分の水分と共に、懸濁物質を含んだ粗水ガラスのみをオートクレーブに入れ、次にモル比3.75の水ガラスカレット300グラムをオートクレーブに入れ、150℃、0.37MPa(ゲージ圧)で2時間溶解した。得られた粗水ガラス中の残留固形物濃度は11g/Lであり、その残留固形物中の直径1μm以下の粒子は、全残留固形物中の1.5%(体積基準)であった。その粗水ガラスに濾過助剤(珪藻土類)を1重量%添加し、通気度10の濾布を使用して吸引濾過した。濾過開始時の液温は80℃、濾過圧は0.03MPaとした。濾過面積は78.5cm2であった。濾過に要した時間は、約30分であった。得られた水ガラスは、Na2O:9.26重量%、SiO2:24.07重量%、モル比:2.7、濁度5以下であった。
【0056】
(実施例8)
ホウ素除去方法からのナトリウム系副生成物300グラムと水1200グラムをステンレス容器に入れ、80℃に加温し、水素を発生させた。水素の泡が発生しなくなるのを確認し、1分間静置させ、未溶解のナトリウム系副生成物を沈殿させ、分離した後、蒸発分の水分と共に、懸濁物質を含んだ粗水ガラスのみをステンレス容器に入れ80℃に5hr加温し、その後、12時間静置し、析出物を沈殿させ、分離し、上澄液のみをオートクレーブに入れ、次にモル比3.75の水ガラスカレット300グラムをオートクレーブに入れ、150℃、0.37MPa(ゲージ圧)で2時間溶解した。得られた粗水ガラス中の残留固形物濃度は0.1g/Lであり、その残留固形物中の直径1μm以下の粒子は、全残留固形物中の80%(体積基準)であった。その粗水ガラスに濾過助剤(珪藻土類)を1重量%添加し、通気度10の濾布を使用して吸引濾過した。濾過開始時の液温は80℃、濾過圧は0.03MPaとした。濾過面積は78.5cm2であった。濾過に要した時間は、約20分であった。得られた水ガラスは、Na2O:9.27重量%、SiO2:24.09重量%、モル比:2.7、濁度5以下であった。
(実施例9)
ホウ素除去方法からのナトリウム系副生成物300グラムと水1200グラムをステンレス容器に入れ、80℃に加温し、水素を発生させた。水素の泡が発生しなくなるのを確認し、1分間静置させ、未溶解のナトリウム系副生成物を沈殿させ分離した後、蒸発分の水分と共に、懸濁物質を含んだ粗水ガラスのみをオートクレーブに入れ、150℃、0.37MPa(ゲージ圧)で2hr加温し、その後、12時間静置し、析出物を沈殿させ、分離し、上澄液のみを次のオートクレーブに入れ、次にモル比3.75の水ガラスカレット300グラムをオートクレーブに入れ、150℃、0.37MPa(ゲージ圧)で2時間溶解した。得られた粗水ガラス中の残留固形物濃度は0.1g/Lであり、その残留固形物中の直径1μm以下の粒子は、全残留固形物中の85%(体積基準)であった。その粗水ガラスに濾過助剤(珪藻土類)を1重量%添加し、通気度10の濾布を使用して吸引濾過した。濾過開始時の液温は80℃、濾過圧は0.03MPaとした。濾過面積は78.5cm2であった。濾過に要した時間は、約20分であった。得られた水ガラスは、Na2O:9.5重量%、SiO2:24.06重量%、モル比:2.7、濁度5以下であった。
(実施例10)
ホウ素除去方法からのナトリウム系副生成物300グラムと水1500グラムをステンレス容器に入れ、80℃に加温し、水素を発生させた。水素の泡が発生しなくなるのを確認し、1分間静置させ、未溶解のナトリウム系副生成物を沈殿させ分離した後、蒸発分の水分と共に、懸濁物質を含んだ粗水ガラスのみをオートクレーブに入れ、150℃、0.37MPa(ゲージ圧)で2hr加温し、その後、12時間静置し、析出物を沈殿させ、分離し、粗水ガラスを得た。得られた粗水ガラス中の残留固形物濃度は0.1g/Lであり、その残留固形物中の直径1μm以下の粒子は、全残留固形物中の85%(体積基準)であった。その粗水ガラスに濾過助剤(珪藻土類)を1重量%添加し、通気度10の濾布を使用して吸引濾過した。濾過開始時の液温は80℃、濾過圧は0.03MPaとした。濾過面積は78.5cm2であった。濾過に要した時間は、約15分であった。得られた水ガラスは、Na2O:9.7重量%、SiO2:20.15重量%、モル比:2.1、濁度5以下であった。この水ガラスをステンレス製容器に移し、加温濃縮し、水ガラスを得た。得られた水ガラスは、Na2O:18.1重量%、SiO2:36.1重量%、モル比:2.06、濁度5以下であった。
(実施例11)
ホウ素除去方法からのナトリウム系副生成物400グラムと水1200グラムをステンレス容器に入れ、80℃に加温した。ナトリウム系副生成物が溶解(崩壊)するとともに、シリコンの一部が浮上し、浮上したシリコンを回収した。浮上シリコン回収後も、ナトリウム系副生成物は完全に溶解しておらず、水素の泡も発生していたが、ステンレス容器の中段より粗水ガラスを回収することで、水素が発生しない懸濁物質を含んだ粗水ガラスを得た。その粗水ガラスをオートクレーブに入れ、150℃、0.37MPa(ゲージ圧)で2hr加温し、その後、12時間静置し、析出物を沈殿させ、分離し、上澄液のみを次のオートクレーブに入れ、次にモル比3.75の水ガラスカレット300グラムをオートクレーブに入れ、150℃、0.37MPa(ゲージ圧)で2時間溶解した。得られた粗水ガラス中の残留固形物濃度は0.2g/Lであり、その残留固形物中の直径1μm以下の粒子は、全残留固形物中の83%(体積基準)であった。その粗水ガラスに濾過助剤(珪藻土類)を1重量%添加し、通気度10の濾布を使用して吸引濾過した。濾過開始時の液温は80℃、濾過圧は0.03MPaとした。濾過面積は78.5cm2であった。濾過に要した時間は、約20分であった。得られた水ガラスは、Na2O:9.4重量%、SiO2:23.81重量%、モル比:2.7、濁度5以下であった。
【0057】
(実施例12)
ナトリウム系副生成物が、SiO法からの副生成物であること以外は、実施例4と同じ条件で試験を行った。その結果、得られた水ガラスは、Na2O:10.0重量%、SiO2:31.50重量%、モル比:3.3、濁度10であった。
(実施例13)
市販の48.5%水酸化ナトリウム水溶液4.9kgと、実施例10と同様な条件で作製した水ガラス(モル比:2.1、Na2O:17.9重量%、SiO2:36.4重量%)4.3kg及び水0.8kgを加えて、十分撹拌しながら80℃まで加熱した。この液を55℃まで冷却し、メタ珪酸ナトリウム5水塩の種晶0.1kgを加え、55℃の恒温槽中で5時間晶析させた後、遠心濾過器により固液分離したところ、透明な粒状メタ珪酸ナトリウム5水塩結晶が2.83kg得られた。
【0058】
以上の実施例の結果から、本発明の方法を実施することで、シリコン純度向上プロセスから副生されるナトリウム系副生成物を、有効に水ガラスとしてリサイクルすることが可能であることが判った。また、ナトリウム系副生成物を水ガラスとする際の課題であった、水素ガス発生の問題と透明化の問題を共に解決できることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の水ガラス製造方法を実施する典型的な製造設備の概略図である。
【符号の説明】
【0060】
1 水素除去槽
2 加圧処理前調整槽
3 オートクレーブ
4 濾過前調整槽
5 フィルタープレス
6 最終製品調整槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンの純度向上プロセスから副生され、シリコンを含有すると共に珪酸ナトリウムを主成分とするナトリウム系副生成物を、水に溶解させて、粗水ガラスを生成すると共に、前記シリコンを溶解して水素ガスを発生させ、その後、前記粗水ガラスを濾過して水ガラスを製造することを特徴とする水ガラスの製造方法。
【請求項2】
シリコンの純度向上プロセスから副生され、シリコンを含有すると共に珪酸ナトリウムを主成分とするナトリウム系副生成物を、水に溶解させて、粗水ガラスを生成すると共に、前記シリコンを溶解して水素ガスを発生させ、その後、濾過助剤を用い、前記粗水ガラスを濾過して水ガラスを製造することを特徴とする請求項1記載の水ガラスの製造方法。
【請求項3】
前記ナトリウム系副生成物が、不純物としてホウ素を含有する金属シリコンを加熱して溶融した後、二酸化珪素を主成分とする固体と、ナトリウム炭酸化物又はナトリウム炭酸化物の水和塩の一方又は両方を主成分とする固体とを、前記溶融シリコン中に添加して、珪酸ナトリウムを主成分とするスラグを形成すると共に、前記溶融シリコン中のホウ素を前記スラグに移動させて除去するシリコンからのホウ素除去方法において副生される、前記スラグからなる副生成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記ナトリウム系副生成物が、SiO固体に、ナトリウムの酸化物、水酸化物、炭酸化物、ふっ化物のいずれか1種、又はこれらの化合物の2種以上を添加して混合物とし、当該混合物をSiの融点以上に加熱することでSiを生成するSiの製造方法において副生される、副生成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させる際、大気圧下で溶解し、生成された水溶液を静置して、未溶解のナトリウム系副生成物を沈澱させて分離し、当該分離後の水溶液を前記粗水ガラスとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水ガラスの製造方法。
【請求項6】
前記未溶解のナトリウム系副生成物を分離後の水溶液を60〜250℃に加温して、前記溶解により水溶液中に生じている懸濁物質を凝集させ、その後、当該懸濁物質を分離して、当該分離後の水溶液を前記粗水ガラスとすることを特徴とする請求項5に記載の水ガラスの製造方法。
【請求項7】
前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させる際、大気圧下で溶解し、生成された水溶液を60〜250℃に加温して、前記溶解により水溶液中に生じている懸濁物質を凝集させ、その後、当該懸濁物質および未溶解のナトリウム系副生成物を分離して、当該分離後の水溶液を前記粗水ガラスとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水ガラスの製造方法。
【請求項8】
前記懸濁物質を分離する方法として、静置もしくは遠心分離を用いることを特徴とする請求項6又は7に記載の水ガラスの製造方法。
【請求項9】
前記シリコンを溶解して水素ガスを発生させる際に、水溶液中に浮上してくるシリコンを回収することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の水ガラスの製造方法。
【請求項10】
前記シリコンを溶解して水素ガスを発生させる際に、前記ナトリウム系副生成物中のシリコンを全量溶解することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の水ガラスの製造方法。
【請求項11】
ナトリウム化合物、珪酸ナトリウム、可溶性シリカの少なくともいずれかを、前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させる前、前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させた後、又は、前記濾過後に、添加して、前記ナトリウム系副生成物と混合し、製造される水ガラスのモル比を調整することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の水ガラスの製造方法。
【請求項12】
前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させる前、前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させた後、又は、前記濾過後に、添加する前記ナトリウム化合物、前記珪酸ナトリウム、前記可溶性シリカの少なくともいずれかは、固体または水溶液の状態で添加することを特徴とする請求項11に記載の水ガラス製造方法。
【請求項13】
前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させる際、大気圧超の圧力下で溶解させることを特徴とする請求項1〜4、9〜12のいずれか1項に記載の水ガラスの製造方法。
【請求項14】
前記ナトリウム系副生成物を水に溶解させる際、大気圧下で溶解して、水素ガスを発生させた後、大気圧超の圧力下で前記ナトリウム系副生成物をさらに溶解させることを特徴とする請求項1〜4、9〜12のいずれか1項に記載の水ガラスの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−263204(P2009−263204A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308783(P2008−308783)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【出願人】(391003598)富士化学株式会社 (40)
【Fターム(参考)】