説明

水上構造物及びその構築方法

【課題】 所定の流量の流下を確保すべき流下範囲に構築される構造物を最小限に抑えた水上構造物及びその構築方法を提供すること。
【解決手段】 所定の流量の流下を確保すべき断面積が流下範囲1aとして定められている水域1の水底地盤2に複数の杭体10A,10B,・・・を立設し、結構部材11を杭体10A,10Aに挿通して装着する。
そして、水面下の流下範囲1a外までこの結構部材11を沈設して杭体10A,10A間を連結し、杭体10A,10B,・・・上に桁部材12を架け渡して形成する水上構造物9の構築方法であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上に構築する人工地盤や桟橋などの水上構造物及びその構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図8に示すような杭体5,・・・で支持される水上構造物8が知られている(特許文献1など参照)。
【0003】
この水上構造物8は、水底地盤2に間隔を置いて複数の杭体5,・・・を立設し、その杭体5,・・・に鋼製のジャケット6,・・・を装着することによって構築される。
【0004】
このジャケット6には、床面を形成するデッキ部6bと、その下方に突出して前記杭体5,・・・を挿入させるための挿入孔を有する複数の接合鋼管6a,・・・とが設けられており、起重船に備えたワイヤ7でこのジャケット6を吊り上げて前記杭体5,・・・に装着される。
【0005】
そして、前記ジャケット6を隣接して配置された別のジャケット6に連結する際には、ワイヤ7で吊り上げた不安定な状態で位置合わせをして、隣接するジャケット6との連結部8aを構築する。
【0006】
一方、このような水上構造物8を河口付近に構築する場合には、次のような制約がある。
【0007】
すなわち、河川などの水路では、図9に示すように、洪水時に計画流量を流下させることが出来るように水路断面積が流下範囲1a(いわゆる河積)として定められており、その流下範囲1a内に構造物を設ければ、断面積が欠損して所定の流量の水を流下させることが出来なくなるため、その流下範囲1aを侵す構造物の構築は可能な限り避けるべきであるという制約がある。
【0008】
特に、河川が海に流れ込む河口付近の水域1では、水底地盤2上にやわらかい底泥3が沈殿し易く、この底泥3が流下の妨げになるため、水底面付近の範囲を除いた範囲が流下範囲1aとして定められている。
【0009】
この流下範囲1aに構造物を構築すれば、洪水時などに計画された流量分の水を適切に流下させることが出来なくなり、河川水が護岸4を越えて流れ出す危険もあるため、できるだけ流下の阻害(河積阻害)になるような構造物の構築は避けなければならない。
【特許文献1】特開平8−311868号公報(図4、0002段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記した従来のジャケット6を使用した水上構造物8の構築においては、重量の大きなジャケット6を吊り上げるために大型の起重船を使用する必要があるので、使用できる起重船が限られていると共に、その使用料によって施工費用が増加するという問題がある。
【0011】
また、ジャケット6の下方に突出した前記接合鋼管6a,・・・やブレス材6c,・・・が、前記流下範囲1aに配置されることになるため、断面積が大幅に欠損されて洪水時の計画高水流量の流下の妨げになる。
【0012】
そこで、本発明は、所定の流量の流下を確保すべき流下範囲に構築される構造物を最小限に抑えた水上構造物及びその構築方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、所定の流量の流下を確保すべき断面積が流下範囲として定められている水域に構築され、複数の杭体で桁部材が支持される水上構造物であって、前記杭体は少なくとも二本を一組として結構部材によって連結され、該結構部材は水面下の前記流下範囲外に沈設されたことを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項2に記載のものは、前記桁部材と隣接する他の前記桁部材との連結部の位置が、前記杭体位置上に配置された請求項1に記載の水上構造物であることを特徴とするものである。
【0015】
そして、請求項3に記載の発明は、所定の流量の流下を確保すべき断面積が流下範囲として定められている水域の水底地盤に複数の杭体を立設し、前記杭体の少なくとも二本を一組として、結構部材を前記杭体に挿通して水面下の前記流下範囲外まで沈設して前記杭体間を連結し、前記杭体上に桁部材を架け渡して形成する水上構造物の構築方法であることを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項4に記載の方法は、前記桁部材と隣接して配置される他の前記桁部材とを、前記杭体位置上で連結することで前記杭体上に前記桁部材を架け渡す請求項3記載の水上構造物の構築方法であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項5に記載の方法は、複数の前記桁部材を所定の場所で予め一体に連結し、その場所から連結した前記桁部材をジャッキで前記杭体上に押し出し、次に新たな前記桁部材をさらに連結して押し出し、これを繰り返すことで前記杭体上に前記桁部材を架け渡す請求項3記載の水上構造物の構築方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このように構成された請求項1の発明は、前記複数の杭体間を連結して水上構造物の変形を抑えるための前記結構部材が、所定の流量の流下を確保すべき前記流下範囲を避けて配置される。
【0019】
このため、前記流下範囲の流下可能流量を減少させることがほとんどない。そして、前記杭体間は前記結構部材によって連結されて変形が抑制されるため、杭体を立設する間隔を広げて前記流下範囲の前記杭体による断面欠損を最小限に抑えることができる。
【0020】
さらに、前記結構部材と、前記桁部材を別々に設置するため、部材ごとの揚重重量が小さくなり、通常規模の起重船でも施工することができる。
【0021】
また、請求項2に記載されたものは、前記桁部材間の連結部の位置が、前記杭体位置上に配置される。
【0022】
このため、前記連結部が前記杭体によって確実に支持されるので、連結部が杭体間に浮いた状態で配置される構造よりも構造耐力が向上する。
【0023】
そして、請求項3に記載の発明は、前記結構部材を前記杭体に挿通して装着する。このため、前記杭体間を前記結構部材によって容易に連結することができる。
【0024】
さらに、請求項4に記載された方法は、前記桁部材と隣接して配置される他の前記桁部材とを、前記杭体位置上で連結する。
【0025】
このため、連結部の施工を吊り下げられた不安定な状態でなく、前記杭体上の安定した場所でおこなうことができるので、施工精度が向上すると共に、効率よく作業をおこなうことができる。
【0026】
また、請求項5に記載された方法は、所定の場所で連結した前記桁部材を前記ジャッキで押し出すことで、前記杭体上にその桁部材を架け渡す。
【0027】
このため、陸上や決められた発進基地等の定位置から前記桁部材を送り出すことができ、水上を移動しながらの作業を最小限に抑えることができる。さらに、波浪や風等の影響をほとんど受けることなく施工できるので、施工性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0029】
なお、前記従来例と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0030】
図1乃至図4は、本実施の形態による水上構造物9の構築手順を示した図である。
【0031】
まず、構成から説明すると、このような本実施の形態の水上構造物9は、水底地盤2に立設された複数の杭体10A,10B,・・・と、該杭体10A,10B,・・・の少なくとも二本を一組として杭体10A,10A、杭体10B,10B間をそれぞれ連結する結構部材11,11と、前記複数の杭体10A,10B,・・・に跨って載置する桁部材12とから主に構成される。
【0032】
本実施の形態の杭体10A,10B,・・・は、所定の流量の流下を確保すべき断面積が流下範囲1aとして定められている水域1の水底地盤2に立設される。
【0033】
例えば、河川が海に繋がる河口付近では、河川から海に流れ出す水を適切に流下させるために、底泥3(図9参照、その他の図面では省略)が沈殿し易い水底付近を除いた範囲を計画高水流量の流下に必要な確保すべき断面積と想定し、流下範囲1aとして定めている。
【0034】
この流下範囲1aを有する水域1に、水上構造物9を支持させるための杭体10A,10B,・・・が水底地盤2に打設される。この杭体10A,10B,・・・には、鋼管杭、既製コンクリート杭等が使用される。
【0035】
前記杭体10A,10B,・・・は、少なくとも二本を一組として打設され、組み合わせとされた杭体10A,10A(杭体10B,10B)間の間隔は、後述する結構部材11の挿入孔11a,11aの間隔に一致する。
【0036】
この杭体10A,10B,・・・は、上部構造及び上載荷重が支持できる所定の深さまで打ち込まれ、杭頭部10a,・・・の高さは、杭体10A,10B,・・・同士で同じ高さとなるように形成される。
【0037】
本実施の形態の結構部材11は、例えば図2のA−A線平面図である図3に示すように、杭体10A,10Aを挿入するための挿入孔11aが形成された鋼管11b,・・・が四隅に配置され、その鋼管11b,・・・の間は鋼製の水平連結材11c,11c,11d,11d及びブレス材11e,11e等によって連結される。
【0038】
そして、図1に示すように、水深方向に間隔を置いて配置された水平連結材11c,11c間がブレス材11f,・・・によって連結される。
【0039】
さらに、前記挿入孔11aに前記杭体10Aを挿通した際に発生する前記鋼管11bと前記杭体10Aの隙間には、セメント系固化材等の充填材が充填され、前記杭体10Aに前記結構部材11が固定される。
【0040】
この結構部材11は、前記流下範囲1aよりも深い水中に設置される。通常、河口付近の水底地盤2上には柔らかい底泥3が堆積しており、その上に結構部材11を沈めると、その重みで沈み込んで水底地盤2付近に設置される。
【0041】
ここで、前記結構部材11は、設置された際に上端が前記流下範囲1aに侵入しないような高さに形成されている。
【0042】
また、本実施の形態の桁部材12は、前記杭体10A,10B,・・・上に架け渡される部材である。
【0043】
この桁部材12は、図1の右側に示すように、鋼材を組み合わせて製作された桁部材としての単位桁材12aを複数連結することによって形成される。この単位桁材12aは、隣り合う杭体10A,10A、杭体10A,10B又は杭体10B,10Bの芯間隔と略等しい長さにそれぞれ形成され、その両端は杭体10A,10B,・・・位置上に載置される。
【0044】
なお、図1では、杭頭10aと桁部材12(単位桁材12a)の間に、桁部材12の延伸方向と直交する方向に架け渡した横桁18,・・・が配置されている。
【0045】
この横桁18,・・・は、図4の平面図に示すように、一端が杭体10A,10B,・・・に載置され、他端が対向する位置に立設された杭体10C,10D,・・・に載置される。
【0046】
そして、前記杭体10A,10B,・・・の列と、前記杭体10C,10D,・・・の列とにそれぞれ架け渡された桁部材12,12上に、平板状のデッキ部14が架け渡されて床面が形成される。
【0047】
このデッキ部14には、平面視が四角形に形成された鋼製床版、コンクリート床版、鉄骨コンクリート床版等が使用できる。
【0048】
次に、本実施の形態の水上構造物9の構築方法について説明すると共に、その作用について説明する。
【0049】
まず、前記流下範囲1aを有する水域1の水底地盤2に、前記杭体10A,10B,・・・を間隔を置いて打設する。
【0050】
この杭体10A,10B,・・・は、図3を参照しながら説明すると、前記結構部材11の四隅に配置される鋼管11b,・・・のうち、片側の2本の鋼管11b,11bに挿入される杭体10A,10Aのみ前記結構部材11の設置に先行して打設する。なお、杭体10B,10Bも同様に前記結構部材11の設置に先行して打設する。
【0051】
そして、図2に示すように、前記結構部材11をワイヤ7を介して起重船で吊り上げ、先行して打設された杭体10B,10B位置上方に前記鋼管11b,11bが配置されるように位置合わせをおこなう。
【0052】
位置合わせ後、前記杭体10B,10Bの頭部から前記鋼管11b,11bを挿通し、前記杭体10B,10Bに沿って前記結構部材11を吊り下げる。この結構部材11は、前記流下範囲1aを侵さない深さの水中まで沈設される。
【0053】
図3は、先行して打設した杭体10A,10Aに前記結構部材11を取り付けた状態の平面図である。この時点では、前記結構部材11の残りの2本の鋼管11b,11bには杭体10C,10Cが配置されていない。
【0054】
そこで、杭体10Cの挿入されていない鋼管11bをガイドにして、残りの杭体10C,10Cを打設する。このように、鋼管11bをガイドにして杭体10Cを打設すれば、打設時の位置管理の頻度を少なくしても正確かつ短時間で杭体10Cを打設することができる。
【0055】
次に、前記杭体10A,10C,・・・と前記鋼管11b,・・・の隙間に充填材を充填する。この充填材が硬化することによって、前記結構部材11は前記杭体10A,10C,・・・に固定される。
【0056】
そして、打設された前記杭体10A,10B,10C,10D,・・・の上端を切断加工して、すべての杭頭部10a,・・・の高さを揃える。
【0057】
さらに、図4に示すように、対向して立設された前記杭体10A,10C、杭体10B,10D間には、前記横桁18,・・・を架け渡す。
【0058】
次に、図1に示すように、前記横桁18,・・・を介して杭体10A,10B,・・・上に桁部材12を載置する。
【0059】
この桁部材12は、前記単位桁材12a毎に起重船で吊り上げて、前記横桁18,18上にその単位桁材12aの両端が配置されるように載置する。そして、既に配置された桁部材12の端面と、単位桁材12aの端面との間を溶接や高張力ボルト等で連結して連結部12bを形成する。
【0060】
そして、図4に示すように、前記桁部材12,12間に前記デッキ部14を架け渡すことで水上に床面を形成する。
【0061】
以上に示したように、本実施の形態によれば、前記杭体10A,10A,10C,10C(又は前記杭体10B,10B,10D,10D)間を連結して水上構造物9の変形を抑えるための前記結構部材11が、前記流下範囲1aを避けて配置される。
【0062】
このため、前記結構部材11が前記流下範囲1aの断面積を欠損して、流下可能な流量を減少させることがほとんどない。
【0063】
そして、前記杭体10A,10C,・・・間は前記結構部材11によって連結されて変形が抑制されるため、前記杭体10A,10C,・・・を打設する間隔を広げたり、前記杭体10A,10C,・・・の直径を小さくしたりすることができる。このため、前記流下範囲1aの杭体10A,10C,・・・による断面欠損を最小限に抑えることができる。
【0064】
さらに、前記結構部材11と、前記桁部材12を別々に設置するため、部材ごとの揚重重量が小さくなり、通常規模の起重船でも容易に施工することができる。
【0065】
また、前記連結部12bが前記杭体10A,10B,・・・によって確実に支持されるので、連結部12bが杭体10A,10B,・・・間に浮いた状態で配置される構造よりも、前記デッキ部14に載荷する上載荷重に対する構造耐力を向上させることができる。
【0066】
そして、前記桁部材12を構成する前記単位桁材12aを前記横桁18,・・・上に載置し、その後に連結作業をおこなえばよいため、上下方向の揺れがほとんどない安定した場所で作業が実施でき、良好な連結によって前記連結部12bを形成することができる。
【0067】
また、前記結構部材11は、前記挿入孔11a,・・・に前記杭体10A,10Aを挿通させることで容易に装着できる。このため、前記杭体10A,10A間を前記結構部材11によって容易に連結することができる。
【実施例1】
【0068】
以下、前記した実施の形態の実施例1について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0069】
実施例1では、図5に示したように、桁部材13をジャッキ15,15によって押し出すことによって杭体10A,10B,・・・間に架設する。
【0070】
まず、前記実施の形態で説明した方法と同様にして、杭体10A,10B,・・・の打設、結構部材11,・・・の設置、杭頭部10a,・・・の形成、横桁18,・・・の設置をおこなう。
【0071】
そして、前記横桁18,・・・上に桁部材13を押し出す。この桁部材13は、護岸4上に設けた作業ヤードで押し出しを行なう分ずつ組み立てる。また、前記桁部材13の上には、押し出す前にデッキ部14を設けておく。
【0072】
そして、護岸4上には、前記桁部材13がスライドし易いように滑り支承17,・・・を設置する。
【0073】
さらに、押し出しに使用するジャッキ15は、護岸4上に設けた反力桁16に取り付ける。この反力桁16は、押し出し用のジャッキ15から発生する反力を受け止める部材であり、反力板16aと支持部材16b,16b等を組み合わせて製作する。
【0074】
次に、前記桁部材13の後端にジャッキ15,15の先端を当接させ、そのジャッキ15,15を伸長させることによって前記桁部材13を前記杭体10A,10B,・・・側に押し出す。
【0075】
押し出しは、ジャッキ15,15を例えば1ストローク分伸長した時点で一旦、中断し、伸長したジャッキ15,15を縮めて元の長さに戻す。
【0076】
そして、前記ジャッキ15,15の先端と前記桁部材13の後端との間に、1ストローク分の長さの桁用の部材を組み立てて、前記桁部材13の後端と連結して一体にする。この継ぎ足した部材の上にもデッキ部14を設ける。
【0077】
こうした後に、再び、ジャッキ15,15によって前記桁部材13を押し出す。
【0078】
このように実施例1の方法によれば、陸上や水上に設けられた発進基地等の定位置から前記桁部材13を送り出すことができるので、起重船で所定の位置まで単位桁材12aを運んで設置するような水上を移動しながらの作業を最小限に抑えることができ、効率的である。
【0079】
また、前記桁部材13の連結部13aの形成を陸上等の安定した場所でおこなうことができるので、連結作業が波浪や風等の影響をほとんど受けることなく効率的に実施することができる。
【0080】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0081】
以下、前記した実施例1の一部を変更した実施例2について説明する。なお、前記実施例1又は実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0082】
実施例2では、実施例1と同様に桁部材13をジャッキ15,15によって押し出すことによって杭体10A,10A間に架設するが、その先の杭体10B,・・・の打設、結構部材11,・・・の設置、横桁18,・・・の設置などは、架設済みの桁部材13を利用しておこなう。
【0083】
この実施例2では、図6に示すように、桁部材13に架け渡されたデッキ部14上にクローラクレーン23を設置し、このクローラクレーン23を使用して、油圧ハンマ24による杭体10Bの打設をおこなう。また、前記結構部材11の設置、その先の杭体10Bの打設なども、同様に前記クローラクレーン23を使用しておこなうことができる。
【0084】
そして、クローラクレーン23のアームの長さでは届かなくなったときに、前記桁部材13をジャッキ15,15によって前方に押し出し、再びクローラクレーン23による作業を進めればよい。
【0085】
このように押し出された前記桁部材13を利用して、その上に設置されたクローラクレーン23で作業を進めることで、起重船による作業を大幅に削減することができ、効率的である。
【0086】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施例1及び実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0087】
以下、前記した実施の形態の実施例3について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0088】
実施例3では、図7に示したように平面的に広い床面を水上に形成する水上構造物22について説明する。
【0089】
この実施例3では、杭体10A,10B,・・・の列を3列以上形成し、その上に架け渡した桁部材20A,20B,・・・上にデッキ部19,・・・を敷き詰めて広い床面を形成する。
【0090】
例えば、前記実施の形態の前記杭体10C,10D,・・・によって形成される列、前記杭体10A,10B,・・・によって形成される列と略平行するように、杭体10E,10F,・・・によって形成される列、杭体10G,10H,・・・によって形成される列等を形成し、各列上にはそれぞれ桁部材20A,20B,20C,20Dを架け渡す。
【0091】
なお、図7では省略されているが、前記杭体10A,10C,・・・、前記杭体10B,10D,・・・、前記杭体10E,10G,・・・、前記杭体10F,10H,・・・は、それぞれ前記結構部材11,・・・で連結されている。
【0092】
また、前記桁部材20A,20Bと前記杭体10A,10C,・・・の間には横桁21A,・・・を介在させる。さらに、前記桁部材20C,20Dと前記杭体10E,10G,・・・の間には横桁21B,・・・を介在させる。
【0093】
そして、略平行に並べた前記桁部材20A,20B,20C,20D上にパネル状のデッキ部19を隙間なく架け渡す。
【0094】
このようにして前記結構部材11,・・・でそれぞれ連結された杭体10A,10B,・・・を、平面的な広がりをもって配置すれば、広い床面を水上に容易に形成することができる。
【0095】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【0096】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0097】
例えば、前記実施の形態の所定の流量の流下を確保すべき流下範囲1aは、各河川によって定められた所定の流量を流すために確保すべき断面積である河積と必ずしも一致しなくともよい。前記結構部材11の上端が、前記河積に侵入する場合であっても、本実施の形態で設定された前記流下範囲1aに前記結構部材11の上端が侵入していなければよい。
【0098】
また、前記結構部材11は、前記流下範囲1a外に配置されていればよく、水底地盤2に密着させなくともよい。
【0099】
そして、前記実施の形態では、前記桁部材12,13上にデッキ部14を載置したが、桁部材とデッキ部を一体に形成することもできる。このように一体に形成することで、重量は大きくなるが、一度の作業で両方を設置することができ、施工性に優れている。
【0100】
そして、デッキ部14を設けずに桁部材12,13を架け渡すことによって完成する水上構造物9であってもよい。
【0101】
また、前記実施の形態では、一部の杭体10A,10B,・・・を先行して打設し、残りの杭体10C,10D,・・・は前記結構部材11の鋼管11bをガイドにして打設したが、すべての杭体10A,10B,10C,10D,・・・を前記結構部材11を設置する前に打設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の最良の実施の形態の水中構造物の構築方法を説明する説明図である。
【図2】本発明の最良の実施の形態の水中構造物の構築方法の結構部材を設置する作業を説明する説明図である。
【図3】図2のA−A線平面図である。
【図4】本発明の最良の実施の形態の水中構造物の一部切断平面図である。
【図5】実施例1の水中構造物の構築方法を説明する説明図である。
【図6】実施例2の水中構造物の構築方法を説明する説明図である。
【図7】実施例3の水中構造物の構成を説明する平面図である。
【図8】従来例のジャケットを使用した水中構造物の構築方法を説明する説明図である。
【図9】河川の流下範囲を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 水域
1a 流下範囲
2 水底地盤
9,22 水上構造物
10A,10B,・・・ 杭体
11 結構部材
12,13 桁部材
12a 単位桁材(桁部材)
12b,13a 連結部
15 ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の流量の流下を確保すべき断面積が流下範囲として定められている水域に構築され、複数の杭体で桁部材が支持される水上構造物であって、前記杭体は少なくとも二本を一組として結構部材によって連結され、該結構部材は水面下の前記流下範囲外に沈設されたことを特徴とする水上構造物。
【請求項2】
前記桁部材と隣接する他の前記桁部材との連結部の位置が、前記杭体位置上に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の水上構造物。
【請求項3】
所定の流量の流下を確保すべき断面積が流下範囲として定められている水域の水底地盤に複数の杭体を立設し、前記杭体の少なくとも二本を一組として、結構部材を前記杭体に挿通して水面下の前記流下範囲外まで沈設して前記杭体間を連結し、前記杭体上に桁部材を架け渡して形成することを特徴とする水上構造物の構築方法。
【請求項4】
前記桁部材と隣接して配置される他の前記桁部材とを、前記杭体位置上で連結することで前記杭体上に前記桁部材を架け渡すことを特徴とする請求項3に記載の水上構造物の構築方法。
【請求項5】
複数の前記桁部材を所定の場所で予め一体に連結し、その場所から連結した前記桁部材をジャッキで前記杭体上に押し出し、次に新たな前記桁部材をさらに連結して押し出し、これを繰り返すことで前記杭体上に前記桁部材を架け渡すことを特徴とする請求項3に記載の水上構造物の構築方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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