水中において改善された安定性を持つ修飾糖
【課題】免疫原性は保持するが、改善された安定性を有する修飾多糖(特に修飾Neisseria meningitides血清型A多糖)を提供すること。
【解決手段】免疫原性は保持するが、改善された安定性を有する修飾多糖(特に修飾Neisseria meningitides血清型A多糖)。代表的に、修飾多糖は、莢膜多糖またはそれらのオリゴ糖フラグメントをCDIといった二機能性試薬と反応させ、その後ジメチルアミンといったアミノ化合物と反応させることにより調製される。このような結合体から調製される修飾多糖−タンパク質結合体およびワクチンもまた記載されている。本発明は、対応する天然の莢膜糖の少なくとも1つの単糖単位のヒドロキシル基の位置における保護基を含む修飾莢膜糖を提供する。
【解決手段】免疫原性は保持するが、改善された安定性を有する修飾多糖(特に修飾Neisseria meningitides血清型A多糖)。代表的に、修飾多糖は、莢膜多糖またはそれらのオリゴ糖フラグメントをCDIといった二機能性試薬と反応させ、その後ジメチルアミンといったアミノ化合物と反応させることにより調製される。このような結合体から調製される修飾多糖−タンパク質結合体およびワクチンもまた記載されている。本発明は、対応する天然の莢膜糖の少なくとも1つの単糖単位のヒドロキシル基の位置における保護基を含む修飾莢膜糖を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用された全ての文献は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、多糖の化学の分野にあり、修飾糖、修飾糖調製のプロセスおよび、結合体化した誘導体(conjugated derivative)に関する。特に、本発明は、水中において改善された安定性を有する修飾糖に関する。
【背景技術】
【0003】
多糖は、重要な生物学的分子であり、疾患の予防および処置のための医薬産業において広く使用されている。例えば、莢膜多糖は、莢膜細菌(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、およびHib(Haemophilus influenzae B型)に対するワクチンとして長年使用されてきた。
【0004】
特に小児においてこれら多糖の免疫原性を高めるために、結合体化ワクチン(conjugate vaccine)が開発された。結合体化ワクチンは、キャリアタンパク質[例えば、参考文献1、2、3]に結合体化した莢膜多糖を含む。結合体は、T−独立抗原をT依存抗原に変得える。
【0005】
多様な多糖の問題は、水中における安定性の乏しさである。水中における多糖の安定性は、糖単位を繋いでいるO−グリコシド結合の性質に依存する。水中における安定性の乏しさは、O―グリコシド結合が、酸またはグリコシダーゼの存在下で簡単に加水分解されることに起因する。血清型A髄膜炎菌の莢膜多糖は、水中において乏しい安定性をもつ多糖の一例である。
【0006】
多糖の安定性は、結合体化ワクチンの生産において、特に問題である。多糖−タンパク質結合体を調製するために、多糖に化学官能基を操作する必要がある。その操作によって、多糖がタンパク質と連結され得る。多糖は、タンパク質に直接的に連結され得る[特許文献1[2]、特許文献2[4]]かまたは、リンカー基を介して連結され得る。多様な種類のリンカー基が多糖をタンパク質に連結するために提案されている[例えば、特許文献3[3]、特許文献4[5]]。
【0007】
化学的な試薬(特に酸)への多糖の露出は、望ましくないグリコシド結合の切断、そしてその結果、多糖の断片化を引き起こし得る。このような断片化は、非常に好ましくなく、多糖−タンパク質結合体の合成における収量の損失の原因となる。
【0008】
一般的に、このように不安定な多糖は、上の問題を回避するための試薬および条件の慎重な選択を必要とする。しかし、この選択は、多糖の操作に使用可能な試薬を制限し、従って、多糖とキャリアタンパク質との間に形成され得る結合の範囲も制限される。さらに、これら多糖の不安定性は、工業規模でワクチンを調製するのに使用され得る粗野な手順の開発が困難であることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,761,283号明細書
【特許文献2】米国特許第4,356,170号明細書
【特許文献3】米国特許第4,882,317号明細書
【特許文献4】米国特許第4,695,624号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
莢膜糖を修飾する方法を提供し、不安定性の問題を被ることなく抗原性を維持することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、莢膜糖の単糖単位でのヒドロキシル基の修飾が改善された安定性を提供するという発見に基づいている。本発明のプロセスにより入手される修飾糖は、対応する天然の糖よりも加水分解に対して安定である。
【0012】
(本発明の修飾糖)
本発明は、対応する天然の莢膜糖の少なくとも1つの単糖単位のヒドロキシル基の位置における保護基を含む修飾莢膜糖を提供する。
【0013】
用語「修飾莢膜糖」は、適切な修飾により天然の莢膜糖から入手され得る糖を意味する。従って、天然の莢膜糖における単糖単位の繰り返しの基本的な配列は、本発明の修飾莢膜糖において保持されている。
【0014】
用語「糖」は、オリゴ糖(例えば、2〜39単糖単位を含む)と多糖(例えば、40もしくはそれ以上の単糖単位を含む)との両方を包含する。細菌で天然に見られるように、天然の莢膜糖は通常、多糖の形態をとる。多糖は、より短いオリゴ糖を与えるように操作され得る。オリゴ糖は、天然の多糖の精製および/またはサイズ処理(例えば、緩やかな酸での加水分解によって、加熱によって、サイジングクロマトグラフィーによって、など)により入手され得る。
【0015】
代表的に、本発明の修飾糖は、オリゴ糖である。オリゴ糖は上で記載した任意のサイズ処理の方法によって多糖から入手され得る。
【0016】
本発明の修飾莢膜糖は、天然の莢膜糖から入手され得る。しかし、本発明は、天然の莢膜糖から入手される修飾糖に限定されない。本発明の修飾莢膜糖は、完全な合成または部分的な合成といった他の方法によって、入手され得る。
【0017】
保護基を有する単糖単位の数は、本発明において変化し得る。例えば、対応する莢膜糖の全てのまたは実質的に全ての単糖単位が保護基を有し得る。あるいは、対応する莢膜糖の少なくとも、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の単糖単位が保護基を有し得る。対応する莢膜糖の少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の単糖単位が保護基を有し得る。
【0018】
同様に、単糖単位での保護基の数も変化し得る。例えば、単糖単位での保護基の数は、1、2、3、4、5、または6であり得る。好ましくは、1〜4、さらに好ましくは1〜2であり得る。
【0019】
1つの実施形態において、保護基を有する単糖単位の少なくとも1つは、非末端単糖単位である。用語「非末端単糖単位」は、オリゴ糖/多糖鎖での末端単糖単位の中の1つでない単糖単位を意味する。
【0020】
本発明は、修飾莢膜糖を包含し、末端単糖単位および非末端単糖単位の全てのヒドロキシル基の位置が保護基を有し得る。しかし、本発明の修飾莢膜糖において少なくとも1つの遊離なヒドロキシル基もしくはアミノ基が存在することが好ましい。修飾莢膜糖のさらなる反応のため(例えば、キャリア分子への結合のため)のハンドルを提供するため、遊離なヒドロキシル基またはアミノ基が、有利である。修飾糖が遊離なヒドロキシル基を含む場合、遊離ヒドロキシル基は、好ましくは、アノマーヒドロキシル基であり、好ましくは末端アノマーヒドロキシル基である。修飾糖が遊離なアミノ基を含む場合は、遊離なアミノ基は好ましくは、アノマーヒドロキシル基に由来する。アミノ基は、還元アミノ化(例えば、NaBH3CN/NH4Clを使用して)によりアノマーヒドロキシル基から容易に入手される。
【0021】
用語「アミノ基」は、−NH2または−NH−E基を含む。Eは、窒素保護基である。代表的な窒素保護基の例は、以下に記載される。
【0022】
用語「保護基」は、ヒドロキシル基の反応性をブロックする任意の基を意味する。当業者は、種々の型の保護基を認識する。ヒドロキシル基に対する好ましい保護基は、ヒドロキシル基の誘導体化反応を介して直接入手し得る基である。すなわち、ヒドロキシル基の水素原子を他の基で置換する。保護基として働く適切なヒドロキシル基の誘導体は、例えば、カルバミン酸塩、スルホン酸塩、炭酸塩、エステル、エーテル(例えば、シリルエーテルまたはアルキルエーテル)およびアセタールである。このような保護基の幾つかの特定の例は、アリル、Aloc、ベンジル、BOM、t−ブチル、トリチル、TBS、TBDPS、TES、TMS、TIPS、PMB、MEM、MOM、MTM、およびTHPである。
【0023】
しかし、保護基は、ヒドロキシル基の誘導体化反応を介して直接入手される必要はない。保護基は、完全にヒドロキシ置換を置換し得る。例えば、保護基は、C1−12アルキル、C3−12アルキル、C5−12アリール、C5−12アリール−C1−5アルキル、NR1R2(R1およびR2は以下で定義するものである)、H、F、Cl、Br、CO2H、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、CCl3などである。
【0024】
好ましくは、保護基は、電子吸引性基である。仮説理論によって束縛されるのは望まないが、グリコシド結合での糖ヒドロキシル基の分子内求核攻撃からの補助に起因して(すなわち、環状中間体の形成によって)、グリコシド結合は加水分解に対して不安定であると考えられている。ヒドロキシル基の求核性が大きいほど、分子内求核攻撃の傾向は高い。電子吸引性保護基は、酸素孤立電子対の非局在化の効果を有する。従って、酸素の求核性を減少させ、分子内求核攻撃の傾向を減少させる。
【0025】
好ましくは、保護基は以下の式のものである:
−O−X−Y または −OR3
ここで、Xは、C(O)、S(O)、またはSO2である;
Yは、C1−12アルキル、C1−12アルコキシ、C3−12シクロアルキル、C5−12アリールまたはC5−12アリール−C1−6アルキルであり、それぞれは、必要に応じて、別個に、F、Cl、Br、CO2H、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、もしくはCCl3から選択される、1、2または3つの基で置換され得る;またはYは、NR1R2である;
R1およびR2は別個にH、C1−12アルキル、C3−12シクロアルキル、C5−12アリール、C5−12アリール−C1−6アルキルから選択される;またはR1およびR2はC3−12飽和複素環基を形成するように結合され得る;
R3は、C1−12アルキルまたはC3−12シクロアルキルであり、それぞれは、必要に応じて、別個に、F、Cl、Br、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、もしくはCCl3から選択される、1、2または3つの基で置換され得る;またはR3は、C5−12アリールまたはC5−12アリール−C1−6アルキルであり、それぞれは、必要に応じて、別個に、F、Cl、Br、CO2H、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、もしくはCCl3から選択される1、2、3、4または5つの基で置換され得る。
【0026】
好ましくは、R3がC1−12アルキルまたはC3−12シクロアルキルである場合、上で定義したように、R3は、1、2、または3つの基で置換される。
【0027】
式−O−X−Y または −OR3の保護基は、標準的な誘導体化工程(例えば、ヒドロキシル基とアシルハロゲン化物、ヒドロキシル基とアルキルハロゲン化物、ヒドロキシル基とスルホン酸ハロゲン化物などの反応)によりヒドロキシル基から調製され得る。従って、好ましくは、−O−X−Yでの酸素原子は、ヒドロキシル基の酸素原子である。一方、−O−X−Yでの−X−Y基は、好ましくは、ヒドロキシル基の水素原子を置換する。
【0028】
あるいは、保護基は、置換反応(例えば、Mitsunobu型置換)を介して入手され得る。これらのヒドロキシル基からの保護置換の調製方法および他のヒドロキシル基からの保護置換の調製方法は周知である。
【0029】
さらに好ましくは、保護基は、−OC(O)CF3[6]または−OC(O)NR1R2である。
【0030】
さらに好ましくは、保護基は、式−OC(O)NR1R2のカルバミン酸塩基である。ここで、R1およびR2は、C1−6アルキルから独立して選択される。さらに好ましくは、R1およびR2は共にメチルである。すなわち、保護基は、−OC(O)NMe2である。
【0031】
カルバミン酸塩保護基は、グリコシド結合における安定化効果を有し、緩やかな条件下で調製され得る。カルバミン酸保護塩基を提供するための糖の操作工程の1例は、以下で記載されている。しかし、本発明は本明細書中で例示された工程によって調製される修飾糖に限定されない。さらに、本発明の修飾糖の調製のための工程は当業者には容易に理解される。
【0032】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖状の形態と分岐形態の両方のアルキル基を指す。アルキル基は、−O−、−NH−または−S−から選択される1つ、2つ、または3つのヘテロ原子で中断され得る。アルキル基はまた、1つ、2つ、もしくは3つの2重結合および/または3重結合によっても中断され得る。しかし、用語「アルキル」は通常、ヘテロ原子の中断、または2重結合もしくは3重結合の中断を有さないアルキル基を指す。C1−12アルキルと言及した場合、アルキル基は1〜12の間の任意の数の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)。を含み得ることを意味する同様に、C1−6アルキルと言及した場合、アルキル基は、1〜6の間の任意の数の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6)を含み得ることを意味する。
【0033】
用語「シクロアルキル」は、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、およびシクロアルケニル基ならびにこれらとアルキル基との組み合わせ(例えば、シクロアルキルアルキル)含む。シクロアルキル基は、−O−、−NH−または−S−から選択される1つ、2つ、または3つのヘテロ原子で中断され得る。しかし、用語「シクロアルキル」は通常、ヘテロ原子の中断を有さないシクロアルキル基を指す。シクロアルキル基の例として、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキシルメチルおよびアダマンチル基が挙げられる。C3−12シクロアルキルと言及した場合、シクロアルキル基は、3〜12の間の任意の数の炭素原子(例えば、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含み得ることを意味する。
【0034】
本明細書中で使用される用語「アリール」は、フェニルまたはナフチルといった芳香族基を指す。C5−12アリールと言及した場合、アリール基は、5〜12の間の任意の数の炭素原子(例えば、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含み得ることを意味する。
【0035】
用語「C5−12アリール−C1−6アルキル」は、ベンジル、フェニルエチル、およびナフチルメチルといった基を指す。
【0036】
R1およびR2がC3−12飽和複素環基の形成のために連結される場合、R1およびR2は窒素原子と共に、3〜12の間の任意の数の炭素原子(例えば、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含む飽和複素環基を形成することを意味する。飽和複素環基は、窒素原子以外に1つまたは2つのヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含み得る。C3−12飽和複素環基の例は、ピロリジニル、ピペリジニル、モルフォリニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、アゼチジニルおよびアジリジニル、である。
【0037】
上で記載した全ての実施形態において、好ましくは、修飾莢膜糖は、リン酸ジエステル結合を有する修飾莢膜糖である。さらに好ましくは、修飾莢膜糖は、修飾Neisseria meningitidis血清型A糖である。Neisseria meningitidis血清型A糖は、加水分解に対して特に不安定である。
【0038】
修飾莢膜糖が修飾Neisseria meningitidis血清型A糖である場合、好ましくは、保護基は、対応するNeisseria meningitidis血清型A糖の4位および/または3位、さらに好ましくは4位に存在する。Neisseria meningitidis血清型A糖の4位および/または3位の保護基は、加水分解に対する安定性の改善に特に効果的であることが示されている。
【0039】
本発明はまた、以下の式の糖を提供する:
【0040】
【化5】
【0041】
ここでTは以下の式(A)または(B)である:
【0042】
【化6】
【0043】
nは1から100の整数である;
各Z基は、−OHまたは上で定義された保護基から別個に選択される;ならびに
各Q基は、−OHまたは上で定義された保護基から別個に選択される;
Wは、−OHまたは上で定義された保護基から選択される;
Vは、−NH2、−NHE、−NE1E2、−OHまたは−O−Dから別個に選択される;ここでE、E1およびE2は同じもしくは異なり得る窒素保護基であり、そしてDは酸素保護基である;
さらに、Q基の約7%より多く(例えば、8%、9%、10%、またはそれより多く)が保護基である;
好ましくは、nは、15〜25の整数である。
【0044】
n+2Z基の各々は、互いに同じまたは異なり得る。同様に、n+2Q基の各々は、互いに同じまたは異なり得る。
【0045】
好ましくは、Vは、−NH2または−NHEである。
【0046】
適切な窒素保護基は、シリル基(例えば、TMS、TES、TBS、TIPS)、アシル誘導体(例えば、トリフルオロアセトアミド、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(ZまたはCbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc))、スルホニル誘導体(例えば、a−トリメチルシリルエタノスルホニル(SES))、スルフェニル誘導体、C1−12アルキル、ベンジル、ベンズヒドリル、トリチル、アリール、9−フェニルフルオレニルなどである。好ましい窒素保護基は、Fmocである。
【0047】
E1、E2として使用され得る二価窒素保護基としては、環状イミド誘導体(例えば、N−フタルイミド、N−ジチアスクシンイミド、N−2,3−ジフェニルマレイミド)、イミン誘導体(例えば、N−1,1−ジメチルチオメチレンアミン、N−ベンジリデネアミン、N−p−メトキシベンジリデネンアミン、N−ジフェニルメチエンアミン)、エナミン誘導体(例えば、N−(5,5−ジメチル−3−オキソ−1−シクロヘキセニル)アミン)などが挙げられる。好ましい二価窒素保護基はN−フタリミジルである。
【0048】
適切な酸素保護基には、エステル、エーテル(例えば、シリルエーテルまたはアルキルエーテル)およびアセタールが挙げられる。特定の例として、アリル、アセチル、Aloc、ベンジル、ベンジルオキシメチル(BOM)、t−ブチル、トリチル、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリエチルシリル(TES)、トリメチルシリル(TMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、パラメトキシベンジル(PMB)、MEM、メトキシメチル(MOM)、MTMおよびテトラヒドロピラニル(THP)が挙げられる。
【0049】
すべてのZ基は、OHであり得る。あるいは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%または60%のZ基がOAcであり得る。好ましくは、約70%のZ基がOAcであり、残りのZ基は、OHまたは上で定義されたような保護基である。
【0050】
少なくとも約7%のQ基は、保護基である。好ましくは、少なくとも、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%のQ基が保護基である。あるいは、全てのQ基が保護基であり得る。
【0051】
本発明はまた以下の式の糖部分を含む分子を提供する:
【0052】
【化7】
【0053】
ここで、Tは以下の式(A)または(B)である:
【0054】
【化8】
【0055】
n、Z、QおよびWは、上で定義された通りであり、Lは、O、NH、NE、SまたはSeである。
【0056】
Lの遊離共有結合は、任意の適切な部分(例えば、−H、−E、リンカー、タンパク質キャリアなど)へ連結され得る。好ましくは、Lは、NまたはOである。Lは、Nであり得るか、二価リンカーに連結され得るか、二価保護基に連結され得るか、二価タンパク質キャリアへ連結され得る。
【0057】
(修飾糖の産生のためのプロセス)
本発明は莢膜糖の修飾のためのプロセスを提供する。このプロセスは、以下の工程を包含する:
(a)単糖単位において少なくとも1つのヒドロキシル基を有する莢膜糖を提供する工程;および
(b)前記の少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基に変換する
工程。保護基は、上で定義された保護基のうちいずれかであり得る。
【0058】
莢膜糖は、天然の莢膜糖(オリゴ糖または多糖)であり得る。代替的に、例えば、莢膜糖は、デ−O−アセチル化莢膜糖および/または末端アミノ基(例えば、還元アミノ化により得られた)を有する莢膜糖であり得る。
【0059】
保護基が−OC(O)NR1R2であるとき、糖の修飾の好ましいプロセスは、工程(b)が以下の過程を含む場合である:
(b1)有機溶媒中で、莢膜糖を二機能性試薬と反応させる工程;および
(b2)工程(b1)の生成物を式(I)のアミノ化合物と反応させる工程であって、
HNR1R2 (I)
ここでR1およびR2は上で記載された通りである、工程。
【0060】
用語「二機能性試薬」は、(i)工程(b1)において、糖のヒドロキシル基との結合(coupling)のための第1の求電子性炭素原子を提供する工程;および(ii)工程(b2)で使用されるアミノ基との結合(coupling)のための第2の求電子性炭素原子を提供する工程の二重の機能を実行し得る任意の試薬を意味する。通常、第2の求電子性炭素原子は、工程(b)で第1の求電子性炭素原子から再生される。二機能性試薬は、多糖とアミノ化合物との間の−C(O)−結合を提供する。
【0061】
本発明で使用される二機能性試薬には、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、カルボニルジ−1,2,4−トリアゾール(CDT)、カルボニルジ−1,2,3−ベンゾトリアゾール(CDB)、ジフェニルカルボネート、臭化シアン、ホスゲンまたはトリホスゲンが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、これらと同じ機能を実行し得る他の二機能性試薬を認識する。
【0062】
好ましい二機能性試薬は、CDIである。CDIは、例えば、ホスゲンまたは臭化シアンに比べて緩やかな試薬であるという利点を有している。特に、CDIを使用した共役反応は、HClまたはHBrといったヒドロハロンゲン化ガスを産生しない。HClまたはHBrガスの大気への回避を避けるために、反応チャンバー排気口の洗浄が必要となる。このため、これらガスの産生は望ましくない。さらに、HClまたはHBrガスの産生は、糖の感受性官能基に影響し得、糖の分解または断片化による収量の損失を招く。
【0063】
好ましくは、工程(b1)で使用される有機溶媒は、非プロトン性の溶媒である。非プロトン性の溶媒は、当業者に周知であり、イオン性水素原子を含まない。ヒドロキシル基の求核性を増強することにより、糖のヒドロキシル基と二機能性試薬との反応を、促進することから、これらの溶媒は有利である。適切な非プロトン性の溶媒には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ホルムアミド、ヘキサメチルホスホラストリアミド(HMPT)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、またはヘキサメチルホスホラミド(HMPA)が挙げられるが、これらに限定されない。DMSOが好ましい。
【0064】
本発明のプロセスの工程(b2)において、工程(b1)の生成物は、修飾多糖を形成するためにアミノ化合物と反応させられる。本発明のプロセスにおいて使用されるアミノ化合物は、上で定義されたように式(I)のものである。好ましくは、式(I)において、R1およびR2は、C1−6アルキルから独立して選択される。さらに好ましくは、R1およびR2は共にメチルである。
【0065】
本発明で使用され得る適切なアミノ化合物は、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、N−エチルメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−エチルプロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、N−メチルブチルアミン、N−エチルブチルアミン、N−プロピルブチルアミン、N−メチルシクロペンチルアミン、N−エチルシクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルヘキシルアミン、ベンジルアミン、N−エチルベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロペンチルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、イミダゾリジン、アゼチジン、アジリジン、アニリン、N−メチルアニリンおよびN−エチルアニリンである。これら化合物は、塩の形態(例えば、塩酸塩)で使用され得る。
【0066】
好ましくは、本発明で使用されるアミノ化合物は、第2級アミンである。さらに好ましくは、アミンはジメチルアミンである。
【0067】
本発明の好ましいプロセスは、以下のスキーム1で例示される:
【0068】
【化9】
【0069】
このスキームにおいて、糖(例えば、MenA多糖またはオリゴ糖)はまず、DMSO溶媒中でCDIを使用して、単糖単位の少なくとも1つのヒドロキシル基を介して活性化される。結果として生じるイミダゾールカルバミン酸塩中間体は、修飾糖を得るために、アミンR1R2NH(例えば、ジメチルアミン)により捕捉される。
【0070】
あるいは、修飾糖は、莢膜糖での1つ以上のヒドロキシル基を式XC(O)NR1R2の試薬と反応させることによって1工程のプロセスにおいて調製され得る。ここでXは、脱離基であり、R1およびR2は上で定義されているものである。適切な脱離基には、−Cl、−Br、−CF3、−OC6F5または−CCl3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
あるいは、本発明の修飾莢膜糖は、例えば、適切な単糖単位からの合成方法によって調製され得る。代表的に、修飾莢膜糖の生合成は、適切な単糖単位との間のグリコシド結合(例えば、リン酸ジエステル結合)の形成し、次いで上で記載した任意の方法で生じた糖を修飾する工程を包含する。あるいは、同じ修飾莢膜糖を提供するために、単糖単位は、グリコシド結合の形成前に修飾され得る。
【0072】
好ましくは、本発明の修飾莢膜糖は、オリゴ糖である。天然の莢膜多糖から出発して、修飾莢膜オリゴ糖は2つの方法のいずれかにより入手され得る(1)莢膜多糖の修飾とその後の、修飾オリゴ糖を形成するための、修飾多糖のサイズ処理;または(2)莢膜多糖のサイズ処理とその後の修飾オリゴ糖を形成するために生じたオリゴ糖の修飾。両方の方法は、本発明内に包含されている。しかし、末端ヒドロキシル基が、後の修飾オリゴ糖のキャリア分子(例えば、タンパク質)への結合に利用されることを確実にするので、最初の方法が好ましい。
【0073】
本発明はまた、Neisseria meningitidis血清型A多糖の修飾のためのプロセスを提供する。このプロセスは以下の工程を包含する:
(a)Neisseria meningitidis血清型A多糖を提供する工程
(b)前記多糖をサイズ処理して、オリゴ糖を提供する工程;および
(c)上で定義したように、オリゴ糖の少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基に変換する工程。このプロセスの工程(b)は、必要に応じて公知の誘導体化の工程を工程(c)の前に伴い得る。例えば、公知の誘導体化の工程は、生じた−NH2基および/またはデ−O−アセチル化の保護を伴う還元的アミノ化を包含する。
【0074】
本発明はまた、Neisseria meningitidis血清型A多糖の修飾のためのプロセスを提供する。このプロセスは以下の工程を包含する:
(a)Neisseria meningitidis血清型A多糖を提供する工程;
(b)上で定義したように、多糖の少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基に変換する工程;および
(c)結果として生じる多糖をサイズ処理してオリゴ糖を提供する工程。このプロセスの工程(c)は、必要に応じて公知の誘導化工程を伴い得る。例えば、公知の誘導体化の工程は、結果として生じた−NH2基および/またはデ−O−アセチル化の保護を伴う還元的アミノ化を包含する。
【0075】
上で定義した任意のプロセスはその後に、混入物(例えば、低分子量混合物)を除去する工程が伴い得る。
【0076】
(莢膜糖の出発物質)
本発明の修飾莢膜糖は、天然の莢膜糖から入手され得る。用語「天然の莢膜糖」は、細菌(グラム陽性とグラム陰性の両方)(例えば、N.meningitidis、S.pneumoniae、およびH.influenzae)のカプセルにおいて見出され得る糖を含有するポリマー(例えば、糖のポリマー、糖酸、アミノ糖、多価アルコール、糖アルコール、および糖リン酸など)を指す。さらに、「天然の莢膜糖」は、多糖とオリゴ糖の両方を含む。天然の莢膜オリゴ糖は、天然の多糖のサイズ処理により入手され得る。
【0077】
天然の莢膜糖の「ヒドロキシル基の位置」は、ヒドロキシル基を有する天然の莢膜糖での位置である。しかし、グリコシド結合における位置またはヒドロシ基を有するそれらの残基の位置を含めない(例えば、リン酸結合の一部であるヒドロキシル基はヒドロキシル基の位置を占めない)。また、末端単糖単位でのアノマーヒドロキシル基により占められている位置も含まない。天然の莢膜糖でのアセトキシ(AcO)基が存在する位置もまた、ヒドロキシル基の位置ではない。
【0078】
天然の莢膜糖は、リン酸ジエステル結合で連結した糖単位を含み得る。リン酸ジエステル結合を含む糖は、加水分解に対し不安定である。
【0079】
好ましくは、天然の莢膜糖および本発明の修飾莢膜糖は、哺乳動物(例えば、ヒト)において免疫原性である。哺乳動物は成人または小児であり得る。
【0080】
好ましくは、天然の莢膜糖は、N.meningitidis(血清型A、B、C、W135またはYを含む)、S.pneumoniae(血清型1、4、5、6B、9V、14、18C、19F、および23Fを含む)、およびH.influenzaeB型、Neisseria gonorrhoeae、Streptococcus agalactiae、Escherichia coli、Salmonella typhi、Streptococcus mutans、Cryptococcus neoformans、Moraxella catarrhalis、Klebsiella pneumoniae、Staphylococcus aureusおよび/またはPseudomonas aeruginosa由来の多糖(またはそれらのオリゴ糖フラグメント)である。
【0081】
本発明はN.meningitidisの任意の血清型へ適用され得るが、血清型A(「MenA」)由来の莢膜糖を使用することが好ましい。MenA莢膜糖は、水溶液において特に不安定である。この不安定性は、この分子において化学的な操作(例えば、キャリアタンパク質への結合)を実行するためには、特別な手順を使用する必要があることを意味する。しかし、本発明に従って修飾されたMenA糖は、水溶液において有利に安定であることが見出されている。
【0082】
MenA莢膜多糖{→6)−D−ManpNAc(3/4OAc)−α−(1→OPO3→}は、以下に示す反復単位を有するα1−6リン酸ジエステル結合によって共に連結されているN−アセチルマンノースアミン残基からなる。
【0083】
【化10】
【0084】
上での記載と一致して、4位の93%がヒドロキシル基の位置であり、3位の30%がヒドロキシル基の位置である。末端1−ヒドロキシル基もまた、ヒドロキシル基を占めている。末端1−ヒドロキシル基は、末端アノマーヒドロキシル基である。−OP(O)(OH)O−基の部分であるヒドロキシル基は、ヒドロキシル基の位置ではない。
【0085】
(糖−タンパク質結合)
本発明の修飾糖は、糖に対して適用される任意の一般的な下流のプロセス(例えば、誘導体化、結合、断片化など)の対象であり得る。免疫原性を高めるために、本発明の修飾糖は、好ましくは、キャリアタンパク質に結合される。キャリアタンパク質への結合は、小児用のワクチン[7]に対して特に有用であり、周知の技術である[例えば、参考文献8〜16などで総説されている]。
【0086】
従って、本発明は、タンパク質と本発明の修飾糖の結合体を提供する。タンパク質は、糖に直接結合し得るか、または、リンカーが使用され得る。任意の適切なリンカー化学が使用され得る。修飾多糖の改善された安定化は、有意に広範囲な結合の使用を可能にする。
【0087】
上で定義したように、修飾莢膜糖が後のキャリアタンパク質との結合のためのハンドルとして使用され得る少なくとも1つの遊離なヒドロキシル基またはアミノ基を有することが好ましい。
【0088】
遊離なヒドロキシル基を選択的に有する修飾莢膜糖は、莢膜糖のヒドロキシル基をブロック化することにより、または、全てのヒドロキシル基がブロックされている修飾莢膜糖を選択的に非ブロック化することにより入手され得る。あるいは、遊離なヒドロキシル基は、修飾莢膜糖のサイズ処理によって明らかにされ得る。好ましくは、少なくとも1つの遊離なヒドロキシル基は、末端アノマーヒドロキシル基である。末端アノマーヒドロキシル基は、修飾莢膜糖をサイズ処理することにより明らかにされ得るので、末端アノマーヒドロキシル基は、遊離なヒドロキシル基として好ましい。
【0089】
遊離のアミノ基を持つ修飾莢膜糖は、末端アノマーヒドロキシル基の還元性アミノ化によって入手され得る。必要に応じて、結果として生じる−NH2基の保護を伴う。還元性アミノ化反応は、本発明の修飾工程の前または後に行われ得る。生じた−NH2基は、ヒドロキシル基/保護基の存在下において選択的に保護/脱保護され得ることから、好ましくは、還元性アミノ化反応は、本発明の修飾工程の前に行われる。
【0090】
タンパク質への直接的な結合は、例えば、参考文献2および参考文献4で記載されているように、タンパク質での還元性アミノ化を伴う多糖の酸化を含み得る。
【0091】
リンカー基を介した結合は、例えば、参考文献3および参考文献5で記載されている手順のような任意の公知の手順を使用して作製される。好ましい結合の種類は、カルバミン酸結合形成のためのタンパク質との反応を伴うCDI[17、18]と修飾糖の遊離ヒドロキシル基の反応により形成され得るカルボニルリンカーである。別の好ましい結合の種類は、アジピン酸(例えばジイミド活性化を使用して)と修飾糖での遊離−NH2基との共役により形成され得、次いで、タンパク質が生じた糖−アジピン酸中間体と共役するアジピン酸リンカーである[12、19、20]。他のリンカーとしては、B−プロピオンアミド[21]、ニトロフェニル−エチルアミン[22]、ハロアシルハライド[23]、グリコシド結合[24]、6−アミノカプロン酸[25]、ADH[26]、C4からC12部分[27]などが挙げられる。
【0092】
結合は、以下を含み得る:アノマー末端の第1級ヒドロキシル基への還元、必要に応じた第1級ヒドロキシル基の保護/脱保護;CDIカルバミン酸中間体の形成のための第1級ヒドロキシル基とCDIとの反応;およびCDIカルバミン酸中間体とタンパク質のアミノ基との共役。
【0093】
スキーム2は、本発明に従った莢膜糖のキャリアタンパク質への結合方法の2つの異なる例を示している。最初の例において、タンパク質は、末端ヒドロキシル基を介して結合されている。第2の例において、タンパク質は、末端アミノ基を介して結合している。
【0094】
【化11】
【0095】
好ましいキャリアタンパク質は、細菌毒素素または細菌トキソイド(例えば、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド)である。これらは、一般に結合ワクチンで使用される。CRM197ジフテリアトキソイドが特に好ましい[28]。他の適切なキャリアタンパク質としては、N.meningitidis外膜タンパク質[29]、合成ペプチド[30、31]、熱ショックタンパク質[32、33]、百日咳タンパク質[34、35]、H.influenzae由来のタンパク質D[36]、サイトカイン[37]、リンフォカイン[37]、ホルモン[37]、成長因子[37]、C.difficile由来の毒素Aまたは毒素B[38]、鉄取り込みタンパク質[39]などが挙げられる。キャリアタンパク質の混合を使用することも可能である。
【0096】
結合の後、遊離な糖および結合した糖は、分離され得る。多くの適切な方法が存在する(例えば、疎水性クロマトグラフィー、接線限外濾過、ダイアフィルトレーションなど)(参考文献40、41なども参照)。
【0097】
単一のキャリアタンパク質は、複数の異なる糖を保有し得る[42]。
【0098】
(薬学的組成物および方法)
本発明は、(a)本発明の修飾糖および/または本発明の結合体、および(b)薬学的に受容可能なキャリア、を含む薬学的組成物を提供する。
【0099】
結合体が存在する場合、組成物もまた遊離なキャリアタンパク質を含み得る[43]。
【0100】
「薬学的に受容可能なキャリア」は、組成物を受容する個体に対して、それ自身は有害な抗体の産生を誘導しない任意のキャリアを含む。適切なキャリアは、代表的に大きく、ゆっくりと代謝される高分子(例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸重合体、アミノ酸コポリマー、トレハロース[44]、脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)、および不活性化ウィルス粒子)である。このようなキャリアは、当業者に周知である。ワクチンはまた、希釈液(例えば、水、生理食塩水、グリセロールなど)も含み得る。さらに、補助的な物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質など)が存在し得る。薬学的に受容可能な賦形剤の完全な考察は、RemingtonのPharmaceutical Sciencesで利用可能である。
【0101】
代表的に、組成物は、液体溶液または懸濁液いずれかの注射可能な物質として調製される;溶液に適した固形、懸濁液に適した固形、注射前の液体ビヒクルもまた調製され得る。増強されたアジュバントの効果のために、調製物はまた、乳化され得るかまたは、リポソームに包まれ得る。一般的に、組成物の直接的な送達は、非経口的である(例えば、皮下への注射、腹腔内への注射、静脈内への注射、もしくは筋内への注射いずれかによって、または、組織の間質性空間への送達)。組成物はまた、損傷へ投与され得る。他の投与方法には、経口投与および肺への投与、直腸(坐薬)、さらには経皮的な(transdermal)適用または経皮的(transcutaneous)な適用[例えば、参考文献45]、針、および皮下噴射器が挙げられる。投薬処置は、単回投与計画または複数回投与計画(例えば、ブースター投与を含む)であり得る。
【0102】
好ましくは、本発明の組成物は、滅菌され、緩衝化され、そして/または発熱物質を含まない。
【0103】
好ましくは、組成物は、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。糖または糖−タンパク質結合体に基づくワクチンは、当該分野で周知である。
【0104】
免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の糖抗原を含み、必要に応じて他の特定の成分も含む。「免疫学的に有効な量」は、処置または予防に有効な量の個体への投与を意味し、投与は、単回投与もしくは連続投与の一部としてのいずれかである。この量は、処置される個体の健康状態および体調、年齢、処置される個体の分類学的な群(例えば、ヒトでない霊長類、霊長類など)、合成抗体に対する個体の免疫系の能力、所望する防御の程度、ワクチンの処方、処置する医者の医学的な状況判断、ならびに他の関連する因子に依存して変化する。この量は、定期的な試行を経て決定され得る比較的広い範囲となることが期待される。投薬処置は、単回投与計画または、複数回投与計画(例えば、ブースター投与を含む)であり得る。ワクチンは、他の免疫調節性の薬剤と共に投与され得る。
【0105】
免疫原性の組成物は、アジュバントを含み得る。組成物の効果を増強する好ましいアジュバントには:(A)アルミニウム化合物、例えば、水酸化アルミニウム(例えば、オキシヒドロキサイド)、リン酸化アルミニウム(例えば、ヒドロキシホスフェート、正リン酸塩)、硫酸アルミニウムなど[例えば、参考文献46の第8章および第9章を参照]、または任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶質、無定形など)をとり、好ましくは吸着的な、異なるアルミニウム化合物の混合物;(B)MF59(5% Squalene、0.5% Tween80、および0.5% Span85、マイクロフリューダイザーを使用してミクロン以下の粒子に処方された)[参考文献46の第10章を参照、また参考文献47を参照];(C)リポソーム[参考文献46の第13章および第14章を参照];(D)さらなる界面活性剤を欠いてもよい[48]ISCOM[参考文献46の第23章を参照];(E)10% Squalene、0.4% Tween80、5%プルロニック−ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含み、ミクロン以下の乳濁液にマイクロフリューダイズ化されているか、または、より大きな粒子サイズの乳濁液を作製するためにボルテックスされているかのいずれかであるSAF[参考文献46第12章を参照];(F)2% Squalene、0.2% Tween80、およびモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群からの1種以上の細菌細胞壁成分を含むRibiTMアジュバントシステム(RAS)、(Ribi Immunochem)好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM);(G)サポシンアジュバント(例えば、StimulonTMとしても知られているQuilAまたはQS21)[参考文献46第22章を参照];(H)キトサン(例えば49);(I)完全Freundのアジュバント(CFA)および不完全Freundのアジュバント(IFA);(J)サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えばインターフェロン−a)、マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子など)[参考文献46の第27章および第28章を参照];(K)生分解性および非毒性である物質(例えば、ポリ(a−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシブチル酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から形成された微粒子(すなわち、直径が約100nm〜約150imの粒子、さらに好ましくは、直径が約200nm〜約30im、さらに最も好ましくは、直径が約500nm〜約10im);(L)モノホスホリル脂質A(MPL)または3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)[例えば、参考文献46の第21章を参照];(M)3sMPLと例えば、QS21および/または水中油乳濁液の配合[50];(N)CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド[51]、すなわち、少なくとも1つのCGジヌクレオチドを含み、必要に応じてシトシンおよび/またはCIモチーフの場所に5−メチルシトシンが使用される、;(O)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル[52];(P)オクトキシノールの組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤[53]、または少なくとも1つのさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトオキシノール)と組み合わせたポリオキソエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤[54];(Q)免疫賦活性のオリゴヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)およびサポニン[55];(R)免疫賦活剤および金属塩の粒子[56];(S)サポニンおよび水中油(乳濁液[57];(T)サポニン(例えばQS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)[58];(U)E.coli熱不安定性エンテロトキシン(「LT」)、またはそれらの解毒変異体(例えば、K63変異体またはR72変異体)[例えば、参考文献59の第5章を参照];(V)コレラ毒素(「CT」)、またはそれらの解毒変異体[例えば、参考文献59の第5章を参照];および(W)モノホスホリル脂質A模倣物(例えば、アミノアルキルグルコサミドリン酸誘導体(例えば、RC−529)[60]);(X)ポリホスファゼン(PCPP);(Y)生物粘着剤[61](例えば、エステル化ヒアルロン酸微粒子[62]、またはポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖、およびカルボキシメチルセルロースの誘導体から成る群から選択される粘膜付着剤;あるいは(Z)組成物の効果を増強するために免疫賦活性な因子として機能する他の物質[参考文献46の第7章を参照]。ミョウバン(特にリン酸アルミニウムおよび/または水酸化物)が好ましいアジュバントである。
【0106】
ムラミルペプチドには、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)などが挙げられる。
【0107】
一旦処方されると、本発明の組成物は、被験体に直接的に投与され得る。処置される被験体は、動物であり得る;特にヒト被験体が処置され得る。ワクチンは、小児およびティーンエイジャーを予防接種するために特に有用である。
【0108】
本発明に従うワクチンは、予防的(すなわち感染を防止する)または処置的(すなわち、感染後の疾患を処置する)のいずれかであり得る。しかし、代表的には、予防的である。
【0109】
修飾糖と同様に、組成物は、さらなる抗原性成分を含み得る。例えば、組成物は、1つ以上のさらなる糖(本発明に従って修飾されているか修飾されていないかに関わらず)を含み得る。例えば、組成物は、N.meningitidis血清型C、血清型W135、および血清型Y由来の糖(例えば、修飾MenA糖に加えて)を含み得る。代表的に、これらはキャリアタンパク質に結合される。またN.meningitidisの異なる血清型由来の糖が、同じまたは異なるキャリアタンパク質に結合され得る。混合物が、血清型Aおよび血清型Cの両方由来の莢膜糖を含む場合、好ましくは、MenA糖:MenC糖の比(w/w)は1より大きい(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1またはより高い)。MenA成分の改善された免疫原性は、MenC成分に対して過剰に存在(質量/投与)する場合に観察されている[63]。
【0110】
組成物はまた、タンパク質抗原を含み得る。
【0111】
本発明の組成物に含まれ得る抗原には以下が挙げられる:
−Helicobacter pylori由来の抗原(例えば、CagA[64〜67]、VacA[68、69]、NAP[70、71、72]、HopX[例えば、73]、HopY[例えば、73]および/または尿素加水分解酵素、
−N.meningitidis血清型B由来のタンパク質抗原(例えば、参考文献74〜80に記載のもの、タンパク質「287」(以下を参照)および誘導体(例えば、「AG287」)が特に好ましい)
−N.meningitidis血清型C由来の外膜小胞(OMV)調製物(例えば、参考文献81、82、83、84などで開示されているもの)
−N.meningitidis血清型C由来の糖抗原(例えば、参考文献85で開示されている血清型C由来のオリゴ糖)(参考文献86も参照)
−Streptococcus pneumononiae由来の糖抗原[参考文献87、88、89]
−A型肝炎ウィルス由来の抗原(例えば、不活性化ウィルス)[参考文献90、91]
−B型肝炎ウィルス由来の抗原(例えば、表面抗原および/またはコア抗原)[参考文献91、92]
−C型肝炎ウィルス由来の抗原[参考文献93]
−Bordetalla pertussis由来の抗原(例えば、百日咳ホロトキシン(PT)およびB.pertussisからの線維状赤血球凝集素(FHA)、必要に応じてパータクチンおよび/または細胞凝集源2および3の組み合わせ[例えば、参考文献94および95]
−ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド)[例えば、参考文献96の第3章](例えば、CRM197変異体[例えば、97])
−破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド)[参考文献96の第4章]
−Haemophilus influenzaeB由来の糖抗原[例えば、86]
−N.gonorrhoeae由来の抗原[例えば、74、75、76]
−Chlamydia pneumoniae由来の抗原[例えば、98、99、100、101、102、103、104]
−Chlamydia trachomatis由来の抗原[例えば、105]
−Porphyromonas gingivalis由来の抗原[例えば、106]
−ポリオ抗原[例えば、107、108](例えば、IPVまたはOPV)
−狂犬病抗原[例えば、109](例えば、凍結乾燥不活性化ウィルス[例えば、110、RabAvertTM])
−はしか、おたふく風邪、および/または風疹抗原[例えば、参考文献96の第9章、第10章、および第11章]
−インフルエンザ抗原[例えば、参考文献96の第19章](例えば、赤血球
および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質)
−Moraxella catarrhalis由来の抗原[例えば、111]
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来の抗原[例えば、112、113]
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来の糖抗原
−Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)由来の抗原[例えば、113、114、115]
−Staphylococcus aureus由来の抗原[例えば、116]
−Bacillus anthracis由来の抗原[例えば、117、118、119]
−フラビウィルス科(フラビウィルス属)におけるウィルス(例えば、黄熱病ウィルス、日本脳炎ウィルス、デング熱ウィルスの4つの血清型、ダニ媒介の脳炎ウィルス、ウェストナイルウィルス)由来の抗原
−ペスチウィルス抗原(例えば、古典的なブタ熱ウィルス由来、ウシウィルス性の下痢ウィルス由来、および/またはボーダー病ウィルス由来)
−パルボウィルス抗原(例えば、パラボウィルスB19由来)
−プリオンタンパク質(例えば、CJDプリオンタンパク質)
−アミロイドタンパク質(例えば、βペプチド)[120]
−癌抗原(例えば、参考文献121の表1に列挙しているもの、または参考文献122の表3および表4に列挙しているもの)
組成物は、1つ以上のこれらのさらなる抗原を含み得る。
【0112】
毒性のタンパク質抗原は、必要な場合に解毒され得る(例えば、化学的方法および/または遺伝学的方法による百日咳毒素の解毒[95])。
【0113】
ジフテリア抗原が組成物に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含まれることが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含まれることが好ましい。
【0114】
好ましくは、抗原はアルミニウム塩に吸着される。
【0115】
代表的に、組成物での抗原は、それぞれ少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般的に、任意の所定の抗原の濃度は、抗原に対する免疫応答を誘発するために十分である。
【0116】
本発明の組成物においてタンパク質抗原の使用の代替えとして、抗原をコードする核酸が使用され得る[例えば、参考文献123〜131]。従って、本発明の組成物のタンパク質成分は、タンパク質をコードする核酸によって置き換えられ得る(好ましくは、例えば、プラスミドの形態のDNA)。
【0117】
本発明はまた、哺乳動物において抗体応答を惹起するための方法を提供する。この方法は、哺乳動物への本発明の薬学的組成物の投与を包含する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。ヒトは成人であり得るが、好ましくは小児である。好ましくは、抗体応答は、N.meningitidis血清型Aによる感染に対して保護的である。
【0118】
本発明はまた、哺乳動物を免疫するための方法を提供する。この方法は、哺乳動物への本発明の薬学的組成物の投与を包含する。
【0119】
本発明はまた、医薬として使用するための本発明の修飾糖、または本発明の結合体を提供する。
【0120】
本発明はまた、莢膜細菌により引き起こされる疾患の予防または処置のための医薬製造における、本発明の修飾糖の使用、または本発明の結合体の使用を提供する。Neisseriaにより引き起こされる疾患には、髄膜炎、敗血病、および淋病が挙げられる。H.influenzaeにより引き起こされる疾患には、中耳炎、気管支炎、肺炎、蜂巣炎、心膜炎、および髄膜炎が挙げられる。肺炎球菌により引き起こされる疾患には、髄膜炎、敗血症、および肺炎が挙げられる。従って、細菌髄膜炎の予防および/または処置が好ましい。
【0121】
(定義)
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」と「から成る(consisting)」との両方を意味する。例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、X単独から成り得るし、または何かさらなるものを含み得る(例えばX+Y)。
【0122】
数値xに関しての用語「約」は、例えばx±10%を意味する。
【0123】
糖環は開環型および閉環型で存在し得ると理解される。閉環型は、本明細書中での構造式において示されている。開環型もまた本発明によって包含されている。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、37℃、49℃、および57℃でインキュベーションした後のMenAサンプルのavDPを時間(h)の関数としてプロットしたものを示す。
【図2】図2は、37℃、49℃、および57℃でインキュベーションした後のMenA−CDI−DMAサンプルのavDPを時間(h)の関数としてプロットしたものを示す。
【図3】図3は、57℃で0時間、24時間、48時間、72時間、96時間インキュベーションしたMenA−CDI−DMAサンプルの31P NMR 242.9 MHzスペクトルの積層プロットを示す。いくつかのシグナル表示が示されている。
【図4】図4は、比色分析の比較をするためのavDP vs.時間の図および31PNMRの分析方法を示す。
【図5】図5は、長時間2℃〜8℃にあった天然のMenA糖および修飾MenA糖のavDPを示す。
【図6】図6は、298KでのMenA−CDI−DMAの標識された1H NMR 600 MHzスペクトルを示す。いくつかの設定が示されている。
【図7】図7は、MenA、MenA−CDIおよびMenA−CDI−DMAオリゴ糖をコーティング剤として使用して実施した競合的ELISAテストの結果を示す。競合剤の濃度は、100〜10−7mg/mlの範囲である。
【図8】図8は、MenAオリゴ糖の結合のための反応のスキームを図示する。
【図9】図9は、活性化修飾MenAの25℃における600 MHz 1H NMRスペクトルを示す。いくつかのシグナル表示が示されている。
【図10A】図10Aおよび図10Bは、活性化MenAの25℃でのヘテロ相関1H、13CNMRスペクトルを示す。図10Aと図10Bとの両方において、X軸は、おおよそ左は5.7ppmから右は1.8ppmまでと走っている。図10Aにおいて、Y軸は、おおよそ上は145ppmから下は185ppmまで走る;図10BにおいてY軸は、おおよそ上は5ppmから下は105ppmまで走っている。
【図10B】図10Aおよび図10Bは、活性化MenAの25℃でのヘテロ相関1H、13CNMRスペクトルを示す。図10Aと図10Bとの両方において、X軸は、おおよそ左は5.7ppmから右は1.8ppmまでと走っている。図10Aにおいて、Y軸は、おおよそ上は145ppmから下は185ppmまで走る;図10BにおいてY軸は、おおよそ上は5ppmから下は105ppmまで走っている。
【図11】図11は、活性化修飾MenA DP4および活性化した天然なMenA DP4(CDIおよびDMAによる化学的修飾を有さない)の重ね合わせた1H NMRスペクトルを示す。
【図12】図12は、活性化修飾MenAの25℃における243 MHz 31P NMRスペクトルを示す。
【図13】図13および図14は、4週間にわたって37℃で置いた結合体の加水分解に起因する遊離な糖の出現を示す。修飾糖は、四角として示され、天然な糖は、中抜きの三角で示される。
【図14】図13および図14は、4週間にわたって37℃で置いた結合体の加水分解に起因する遊離な糖の出現を示す。修飾糖は、四角として示され、天然な糖は、中抜きの三角で示される。
【図15】図15は、4週間の間、種々のpHで37℃で置いた結合体の加水分解に起因する遊離な糖の出現を示す。それぞれの対の左カラムは天然の糖を示す。
【図16】図16は、ロット3、ロット5、およびロット002011結合体(左から右)により誘導された抗−MenA−pS IgGの力価を示す。バーは、95%の信頼限界を示す。
【図17】図17は、MenAの修飾結合体およびMenAの非修飾結合体(ロット3、5、および002011)での免疫化からのプール血清のIgGのサブクラスの分析を示す。値は、OD405nmに1000をかけた値である。
【図18】図18は、競合剤としてMenA pSを使用した競合的ELISAの結果を示す。Y軸は、OD405nm値に1000をかけた値を示す。X軸は、血清希釈の逆数を示す。非修飾MenAオリゴ糖は、丸で示されている;修飾糖は四角(ロット3)および三角(ロット5)で示されている。中抜きのシンボルは、競合剤である多糖無しでのデータを示している;塗り潰したシンボルは、競合剤である多糖の存在下でのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0125】
(発明を実施する形態)
(MenAオリゴ糖の修飾)
莢膜多糖はMenAから精製され、MenAオリゴ糖を得るために加水分解された。多糖(2g)が、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.75)中、10mg/mLの多糖濃度で50℃、約4時間で加水分解された[86]。加水分解の後、溶液はロータリーエバポレーションによって乾燥された。
【0126】
オリゴ糖は、スキーム1で示された反応スキームを使用して活性化された。オリゴ糖は、10mg/mLの糖濃度になるようDMSO中に溶解された。1:20のオリゴ糖:CDIのモル比に従って、21.262gのCDI(SigmaTM)を次いで加え、反応混合物を、室温で16時間攪拌した。生じたMenA−CDI化合物は、80:20(v/v)アセトン:DMSO混合物における選択的な沈殿、その後の遠心分離により精製された。活性化反応の効率は、遊離イミダゾールと結合イミダゾールの比を決定することにより、約67.9%と算出された。
【0127】
第2の反応工程において、MenA−CDIオリゴ糖は、約10mg/mLの糖濃度でDMSO中に可溶化された。1:100のMenA−CDI単位:DMAのモル比に従って、36.288gの99%ジメチルアミン塩酸塩(SigmaTM)を加え、反応混合物を、室温で16時間攪拌した。反応生成物を凍結乾燥し、10mg/mL水溶液に再び溶解した。
【0128】
オリゴ糖調製由来の低分子量反応試薬(特に、ジメチルアミン(DMA))を除くため、透析の工程は3.5kDa MWCO膜(Spectra/Por(登録商標))を通して実施された。4つの透析の工程が実施された:(i)16時間vs.2Lの1M塩化ナトリウム(透析因子1:20)、(ii)16時間vs.2Lの0.5M塩化ナトリウム(透析因子1:20)、(iii)および(iv)16時間vs.2LのWFI(透析因子1:20)。精製を改善するために、透析の工程はまた、1kDa MWCO膜(CentriconTM)を通しても実施された。
【0129】
精製されたMenA−CDI−DMA生成物は、25mM L−ヒスチジン(FlukaTM)中pH6.5で緩衝化された。
【0130】
MenAおよびMenA−CDI−DMA生成物の安定性は、平均の重合の度合い(avDP)を決定するための比色分析方法およびNMR方法を使用して評価された。サンプルは、25mM His緩衝液(pH6.5)中、ガラスバイアル中で3つの温度(37℃、49℃、または57℃)のうちの1つで96時間インキュベートされた。そして、インキュベーション期間の終わりで、サンプルは4℃で保存された。
【0131】
(比色分析安定性研究)
化学的avDPは、[Pt]/[Pme]の比によって表わされる。ここで、[Pt]は、全てのリン濃度であり、[Pme]は、全末端モノエステルリン酸の濃度である。[Pt]は、参考文献132で記載されているように、比色分析で決定された。[Pme]は、ポテト酸脱リン酸酵素[133]での酵素反応により放出される無機リン酸Piの測定により決定される。
【0132】
図1および図2は、MenAおよびMenA−CDI−DMAのavDPSを時間(t)の関数として示す。
【0133】
糖加水分解の速度定数(k)(avDPの低下として図1および図2で見られる)は、参考文献134で記載されているように分析された。2つの異なる局面が分析された:
−標準的な動態方程式におけるavDPおよびtの関数としてのk;次いで
−Arrhenius等式における頻度因子(A)活性化エネルギー(ΔGa)および温度(T)の関数としてのk。
【0134】
加水分解は、良好な一次の速度式で、完全に進行したと想定した。
【0135】
【数1】
【0136】
ここで、t=0でavDP0=avDP
対数的な形式は:
lnavDP=lnavDP0−kt
であり、kは、lnavDP=f(t)プロットの傾きとして定義される。
【0137】
Arhenius等式は、種々の温度値での速度定数と加水分解反応についての活性化エネルギーとの間の相関を示す:
k=Aexp(−△Ga/RT)
lnk=lnA−△Ga/RT
ここでR=8.314×10−3KJ/mol K
ΔGaは、温度の逆数(1/T)の関数であるlnkをプロットすることにより得られる直線の傾きから算出される。本研究において、本発明者らは、活性化エンタルピーおよび活性化エントロピーからの単一寄与の分離をせずに、加水分解反応の全ての活性化エネルギーだけを分析した(ΔGa=ΔHa+TΔSa)。
【0138】
表1は、比色分析のavDPのデータおよび種々の温度での加水分解反応の速度定数をまとめる:
【0139】
【表1】
【0140】
37℃、49℃および57℃で得られた速度定数のArrheniusプロットは、25mM His緩衝液(pH6.5)における加水分解反応の活性化エネルギーは、MenAに対しては50.1KJ/mol(12.0Kcal/mol)、そしてMenA−CDI−DMAに対しては94.9KJ/mol(22.7Kcal/mol)であることを示す。Arrheniusプロットの直線最小二乗回帰により概算される標準誤差は、ΔGa値に対して±5.0KJ/mol(±1.2Kcal/mol)である。従って、本発明の修飾多糖は、対応する非修飾糖の約2倍安定である。
【0141】
(NMR安定性研究)
比色分析方法により得たavDPを検証するために、31P NMR分析実験が実施された。avDPデータは、PmeシグナルとPin chainシグナルとの間の集積比により算出される(図3を参照)。
【0142】
1Hおよび31P NMRサンプルは、10〜15mM濃度の溶液を得るため、0.75mlの99.9%D2O(AldrichTM)中で、凍結乾燥されたオリゴ糖を溶解することで調製された。すべての実験において、5mm WilmadTM NMRチューブが使用された。NMRスペクトルは、298Kで、BGU単位を備えるBrukerTM NMR Spectrometer Avance DRX 600MHzで記録された。自己遮蔽されたz−勾配を有する5mm TBI三重共鳴プローブが使用された。データ処理のために、Bruker XWINNMR3.0ソフトウェアが使用された。1H標準スペクトル獲得条件は、4回の走査、600Hzのスペクトルウィンドウ上で32kのデータポイントを収集することである。1H NMRスペクトルは、0.1Hz線広がり関数(line broadening function)に適用された後、Fourier変換され、1.91ppmでの酢酸陰イオン共鳴または、1重水素化水の4.72ppmでの共鳴に関して参照された。31P標準スペクトル獲得条件は、128回の走査、3000Hzのスペクトルウィンドウ上で32kのデータポイントを収集することである。2.0Hz線広がり関数(line broadeningfunction)が使用された。
【0143】
図4で示すように、比色分析方法および31P NMR方法は、わずかな低下変換のみが明らかだが、全ての温度の値に対して一致している(ln avDP=f(t)の影響なし)。
【0144】
比色分析方法分析および31P NMR方法分析の結果は、表2で要約されている:
【0145】
【表2】
【0146】
Pmeスペクトルの形による分析を改善することによって、2つの異なる分子種が現れることが観察される(図3参照)。低い速度定数の速さは、上昇フィールドシグナルについて明らかである。
【0147】
低い温度(例えば、代表的な保管温度である2〜8℃)で得られたデータの外挿によって、これらデータの時間尺度を2年、外挿することが可能である(図5を参照)。
【0148】
これら検査によって、得たMenAおよびMenA−CDI−DMAの安定化における結果の比較により、修飾生成物の安定性の有意な上昇が観察される。より長い時間尺度への外挿は2年間のその生成物の分布を許容するよう、MenA−CDI−DMAの分解が、有意に減少したことを示す。
【0149】
(構造的特徴)
図6は、298KでのMenA−CDI−DMAサンプルの1H NMRスペクトルを、指示的なシグナル割り当て(indicative signal assignmlnt5)と共に示している。NMRプロファイルは、MenAオリゴ糖とMenA−CDI−DMAオリゴ糖との間の高度な類似性を示す。遊離なDMAの1H−メチルDNAシグナルが、2.6ppm〜3ppmスペクトル領域において観察される。2.73ppmのピークは、溶液での残留試薬としての遊離なDMAの1H−メチルに対応する。2.91ppmのピークは、オリゴ糖鎖への1H−メチルDMA結合として、暫定的に割り当てられる。
【0150】
31P NMRプロファイルは、MenAオリゴ糖と類似している。Pmeシグナルの短い低磁場シフト変動だけが観察される(図3を参照)。
【0151】
従って、本発明の修飾糖は、対応する天然の多糖に構造的に類似している。この類似性は、抗原性および免疫性が影響されていないことを示す。
【0152】
(競合的ELISAアッセイ)
競合的ELISAアッセイが、MenAオリゴ糖、MenA−CDIオリゴ糖、およびMenA−CDI−DMAオリゴ糖を、特定の抗体を置換するその能力と共に相関するよう使用された。競合剤の濃度(mg/mL)の関数としての阻害%のプロットが、図7に示されている。すべてのサンプルは、10−1mg/mLの競合剤濃度で約100%の阻害に到達するという、類似した挙動を示した。
【0153】
この結果は、本発明を使用する糖の修飾が、抗原性の損失を生じないことを確証している。
【0154】
(結合)
修飾MenA糖(MenA−CDI−DMA)は、図8に要約されているプロセスによりCRM197タンパク質に結合される。結合のプロセスにおける標準的な工程は:
−オリゴ糖フラグメントを得るための、MenA多糖の加水分解の工程
−オリゴ糖フラグメントのサイズ処理の工程
−サイズ処理されたオリゴ糖での末端アルデヒド基の還元アミノ化工程
−CDI反応の前の、Fmoc基による末端−NH2基の保護工程
−DMA反応中の−NH2基の内因性の脱保護工程
−SIDEA(N−ヒドロキシコハク酸アジピン酸)による末端−NH2基の活性化工程
−CRM197タンパク質への共有的な付着工程
である。
【0155】
(a)加水分解)
MenA多糖は50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.75)中、73℃で、約3時間で加水分解した。総有機リンとモノエステルリン酸との間の比(w/w)によって決定される平均的な重合度合い(DP)(約15)のオリゴ糖を得るために、加水分解を調節した。
【0156】
(b)サイズ処理)
この工程は、加水分解プロセスの間に生じるオリゴ糖の定義された集団を選択する。上で得られた加水分解生成物を、保持液部分での長い長さの鎖を除くために、30kDaのカットオフ膜を通した限外濾過(5mMリン酸緩衝液(pH6.5)のダイアフィルトレーションの12倍容積)した。
【0157】
(c)還元末端での第1級アミノ基の導入)
酢酸アンモニウムを、サイズ処理されたオリゴ糖溶液に、最終濃度が300g/Lとなるよう加えた。それから、シアンホウ化水素を最終濃度73g/Lまで加えた。pHを6.5±0.2に調節した後、混合物を、37℃で5日間、インキュベートした。
【0158】
次いで、アミノ−オリゴ糖を、0.5M NaClの13倍容積を使用して3kDaのカットオフ膜を通した限外ろ過により精製した。この工程は、短い長さの糖鎖(DP<6〜7)を除去し、約15の最終的な平均重合度合いがを与える。
【0159】
保持液部分を、4倍容積の10mM TAB(テトラブチル臭化アンモニウム)でダイアフィルトレーションし、次いで、Na+をTAB+と交換するために、7倍容積の水でダイアフィルトレーションした。正の有機イオンは、DMSO(次の誘導体化の工程に必要)における糖の安定性を約10g/Lへと改善する。
【0160】
精製されたオリゴ糖を、水を除去するためにロータリーエバポレーターにより乾燥し、次いで、約10g/Lの濃度でDMSO溶媒に溶解した。
【0161】
精製されたアミノ−オリゴ糖溶液を、Chen[132]の手順によりリン含有量に対して分析し、Habbeb[135]の手順により導入されたアミノ基の量を分析した。
【0162】
短い鎖の糖の除去のための限外ろ過の代替方法として、Qセファロース高速カラムが使用された。しかし、その結果SP−セファロース(PharmaciaTM)カラムへのさらなる交換のプロセスが、Na+/TAB+変換に影響するために必要となる。
【0163】
(d)Fmoc試薬での末端アミノ基の保護)
アミノ−オリゴ糖を、モル比−NH2:Fmoc−OSu=1:20に従って、Fmoc−OSu(N−9−フルオレニルメトキシカルボニルオキシ(Sigma))と反応させた。混合物を、室温で攪拌しながら一晩インキュベートし、アセトン(80%v/v最終濃度)で沈殿させた。沈殿物を、遠心により収集し、未反応のFmoc−OSu試薬を除去するために、アセトンで数回洗浄した。
【0164】
(e)CDIおよびDMA試薬での安定化反応)
保護されたアミノ−オリゴ糖を、DMSO中10g/Lで溶解し、CDI:総リンのモル比が20:1となるようCDIに加えた。混合物を、室温で攪拌しながら一晩インキュベートし、アセトン(80%v/v最終濃度)で沈殿させた。沈殿物を、遠心により収集し、未反応のCDI試薬を除去するために、アセトンで数回洗浄した。
【0165】
得られた生成物を、DMSO中10g/Lで溶解し、DMA:総リンのモル比が20:1であることに従って、エタノール中のDMAの溶液(約5.6M)に加えた。混合物を、室温で攪拌しながら一晩インキュベートし、アセトン(80%v/v最終濃度)で沈殿させた。沈殿物を、遠心により収集し、未反応のDMA試薬を除去するために、アセトンで数回洗浄した。
【0166】
次いで、精製されたオリゴ糖を、微量の有機溶媒を除去するために真空下で乾燥させた。
【0167】
(f)クロマトグラフィーのイオン交換)
乾燥したオリゴ糖を、水中に10g/Lで溶解し、TAB+/Na+変換を実施するために、1M NaClで平衡化されたSP−セファロース高速(PharmaciaTM)カラムに充填した。次いで、カラムを、樹脂に吸着した微量の生成物を回復するために、5倍のカラム容積(CV)の水で洗浄した。次いで、オリゴ糖を、ロータリーエバポレーターで乾燥し、水を除去した。
【0168】
(g)活性化エステルの誘導体化)
乾燥した生成物を、水中に40mMアミノ基濃度で溶解し、次いで、9倍のDMSOを加えた。その後、TEA(トリエチルアミン)を最終濃度200mMで加えた。生じた溶液に、最終濃度480mMで、アジピン酸N−ヒドロキシコハク酸ジエステル(SIDEA)を加えた。
【0169】
室温で2時間攪拌しながら、反応を維持した。次いで、活性化オリゴ糖を、アセトン(最終濃度80%v/v)で沈殿させた。沈殿物を、遠心により収集し、未反応のSIDEAを除去するために、アセトンで数回洗浄した。
【0170】
次いで、精製されたオリゴ糖を、溶媒を除去するために真空下で乾燥させた。
【0171】
オリゴ糖構造へ導入された活性化エステル基の量を、参考文献136で記載されているように、比色分析方法により決定した。
【0172】
活性化オリゴ糖を、上記したように1H NMRにより分析し、化学的修飾を確証した。以前の実験で確立されたプロトンNMRプロファイルを、生成物の幾つかのロットを評価するために使用した。糖のシグナルは、1D(図9)および2Dヘテロ−相関(1H、13C;図10Aおよび図10B)NMRスペクトルの検査により割り当て、修飾MenAの特徴であると示した。
【0173】
約5mgのそれぞれのサンプルを750μLのD2Oに溶解し、Bruker Avance600 MHzスペクトロメーターでスペクトルを記録した。
【0174】
CH3DMA基とH1糖環の比の検査は、70%〜75%の間の安定化した反応収量を提供する。
【0175】
修飾糖のプロトンプロファイルは維持されており、O−アセチルの状態および高次構造に関する実質的な修飾は、NMR分析からは明らかではない。しかし、カルバミン酸基は、局所的な磁場を変化させる。従って、1H NMRスペクトルの割り当ては、複雑である。
【0176】
図11において、修飾MenAオリゴ糖および天然のMenAオリゴ糖の、上書きスペクトルが示されている。C3およびC4環の位置でのカルバミン酸基は、他の核(例えば、H1)よりも近いために、H3、H4およびH2シグナルの低磁場シフト変動が、明らかである。他の変動は、スペクトルから示唆されるが、それらの割り当ては完全に確かではない。
【0177】
図12は、化学的誘導体化が、31P NMRスペクトルでのいかなる変化も引き起こさないことを示している。
【0178】
(h)CRM197への結合)
乾燥した活性化オリゴ糖を、12:1のエステル基:タンパク質のモル比に従って、10mMリン酸緩衝液(pH7.2)中の45mg/mLのCRM197溶液に加えた。室温で一晩、攪拌しながら、反応を維持した。次いで、得られた結合体を、50倍容積の10mMリン酸緩衝液(pH7.2)を使用した30kDaのカットオフ膜を通した限外ろ過により精製した。生成物を無菌ろ過し、ワクチンの処方まで−20℃で保存した。
【0179】
精製された結合体を、タンパク質の含有量(マイクロBCA タンパク質アッセイ)、糖の含有量(比色分析的なリンの決定)、遊離な糖の含有量(クロマトグラフィー分析)、HPLCプロファイル(TSKgel G4000SWXL 7.5mm IDx30cm上で)、NMRプロファイルおよびSDS−PAGEについて分析した。
【0180】
(結合体の時間依存的な安定性)
MenA−CDI−DMAオリゴ糖のCRM197結合体の安定性は、37℃で4週間保存している間の加水分解による溶液での遊離な糖の出現をモニタリングし、非修飾MenAオリゴ糖のCRM結合体と比較して評価した。
【0181】
遊離な(すなわち非結合体化)糖は、非結合体化鎖を単離するためのISOLUTETM C4カートリッジカラム(ISTTM)での逆相クロマトグラフィー、を使用し、次いでHPAE−PADクロマトグラフィーで浸透した糖により決定した。
【0182】
糖の総量(すなわち結合体化および非結合体化の両方)は、N−アセチルマンノースアミンホスフェートの定量的分析のための方法により決定する。この方法は、パルス電流測定器を備えた高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAE−PAD)を使用する[137]。
【0183】
非結合体化糖の、糖の総量への比はパーセンテージ(%FS)で表現されている。
【0184】
第1の実験において、%FSは以下(図13)のように生じ:
【0185】
【表3】
【0186】
第2の実験において、結果は以下(図14)のようであった:
【0187】
【表4】
【0188】
修飾MenAオリゴ糖の結合体は、対応する天然の結合体よりも、高い温度で、加水分解に対して明らかに抵抗性である。例えば、37℃で28日後、放出された糖のパーゼンテージは、修飾オリゴ糖では、6.4%であり、対して天然な糖では23.5%である。
【0189】
修飾MenA糖を使用したロットからロットの一貫性の試験のためのさらなる研究において、37℃で8週間、結合体からの遊離な糖の出現をモニタリングした。これらの3つのロットの結果は以下の通りであった:
【0190】
【表5】
【0191】
従って、修飾結合体は、延長された期間にわたって安定である。通常以上の温度においても、12%未満の遊離な糖のレベルは、許容限界内である。
【0192】
(結合体のpH依存的な安定性)
修飾MenAオリゴ糖の結合体および非修飾MenAオリゴ糖の結合体の安定性を、37℃で28日間保存した後、pH6.0〜8.0の間の異なるpHでの遊離な糖の出現をモニタリングすることにより試験した。修飾(ロット5)オリゴ糖および非修飾(ロットRS040101)オリゴ糖を比較した。また、0〜28日の間での遊離な糖(A%FS)の上昇は以下(図15)の様である:
【0193】
【表6】
【0194】
従って、pH6.5〜pH7.5の間で修飾MenA結合体は、天然のMenAオリゴ糖の結合体よりも、かなり低い加水分解反応速度を示す。カルバミン酸安定化基が除去されるpH8.0では、その効果はそれほど顕著ではない。
【0195】
(修飾結合体の免疫原性)
精製された修飾MenAオリゴ糖のCRM197結合体を、修飾が、糖の免疫原性を除去しないことを立証するために、マウスを免疫するよう使用した。
【0196】
0.5ml容積における10μgの糖の単一ヒト投与量(SHD)を与えるように、ワクチンを処方した。2種類の処方物が作製された:液体処方物および凍結処方物。両方が、最終的な投薬形態において0.6mgAl3+/mlでリン酸アルミニウムアジュバントを含む。アジュバントの水性懸濁液を、凍結処方物を再構成するために使用した。
【0197】
修飾オリゴ糖結合体の溶液処方物を、天然の(すなわち、非修飾の)オリゴ糖結合体の凍結処方物と比較した。
【0198】
マウスをSHDの1/5で免疫した。それぞれの免疫の前にワクチンを生理食塩水で希釈した。免疫化群あたり10匹のBalb/cマウス(メス、6〜8週齢)に、時間0、次いで4週間後に0.5mlのワクチンを皮下注射した。第1の免疫の前および6週間目(前および後−II血清)に血液を採取し、血清を−70℃で保存した。
【0199】
(抗多糖力価)
いくつかの小さい変化を伴った動物血清分析に適応させたMenAヒト血清分析[138]のためのCDC手順に従って、特定の抗MenA多糖総IgG抗体を、免疫された動物の血清において測定した。
【0200】
それぞれ個々のマウス血清を、滴定曲線により二連で分析した。免疫化群についてGMTを算出した。抗MenA多糖力価は、MEUの計算のために使用されるReference Line Assay Methodに基づいたソフトウェアを装備するMouse Elisa Units(MEU)で表現した。
【0201】
IgGのサブクラス分析を、アルカリホスファターゼ抗マウスIgG1、IgG2a、IgG2bまたはIgG3(Zymed)をELISAの手順における第2の結合体として使用して、プールした免疫化群の後−II血清で実施した。力価は、基質発色の30分後のプールされた後−II血清の1:3200希釈で得られるOD405nmとして表現した。
【0202】
図16は、MenA修飾結合体の2つのロット(ロット3および5)により誘導され、リン酸アルミニウムアジュバントを使用した非修飾MenA結合体(ロット002011)と比較した、抗MenA−pS IgG力価(GMT)を示す。両方の修飾結合体は、非修飾MenA結合体によって誘導される力価と非常に類似した力価を誘導した。
【0203】
図17は、修飾MenA結合体および非修飾MenA結合体での免疫化からのプールされた血清(1:32000で希釈)のIgGサブクラスの分析を示す。全ての血清における最も代表的なサブクラスは、IgG1である。IgG1は、T−依存的な抗原がタンパク質として提示された場合、マウスで主に誘導されるサブクラスである。生来、MenA莢膜糖は、T独立抗原であり、免疫学的記憶を誘導し得ない。この結果は、結合体がその目的を達成していることを示す。
【0204】
抗MenA pS力価の特異性は、最終濃度25μg/mlでMenA pSを競合剤として使用する競合的ELISAによって決定した。図18で示すように、修飾結合体および非修飾結合体により誘導される力価の非常に良好な抑制が存在する。これは、全ての結合体が、抗MenA pS特異的な力価を誘導し得ることを示す。
【0205】
(N.meningitidis血清型Aに対する血清殺菌アッセイ(SBA))
結合体での免疫化により誘導される抗体の機能を、細菌の補体−媒介性溶解を測定するために、インビトロ殺菌アッセイにおいて分析した。
【0206】
免疫化された群のそれぞれについてのプールされた後−II血清を用いた。アッセイでの使用の前に56℃で、30分間、血清を不活性化した。25%子ウサギ補体を、補体の原料(Pel Freeze)として使用した。殺菌力価は、細菌の50%の死滅を生じる血清の希釈の逆数として表現した。2つの血清型A株に対する活性を試験した:F8238およびF6124。
【0207】
力価は以下のようであった:
【0208】
【表7】
【0209】
従って、全ての3つの結合体は、両方の株に対して良好な殺菌力価を誘導する。また、修飾オリゴ糖により誘導された力価は、天然の糖構造を使用して得た力価に比べて有意に低くは無い。しかし、有利なことには、修飾オリゴ糖は、天然のオリゴ糖よりも有意に安定である。従って、本発明は、天然のMenA莢膜糖の免疫原性を保持するが、保存の間の加水分解に対し改善された抵抗性を提供する抗原を提供する。
【0210】
本発明は、例としてのみ上記されており、本発明の範囲および趣旨内にありつつ、改変がなされることが、理解される。
【0211】
(参考文献(その内容は、本明細書中に参考として援用される))
【0212】
【表8−1】
【0213】
【表8−2】
【0214】
【表8−3】
【0215】
【表8−4】
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば以下の修飾莢膜糖、組成物、方法などが提供される:
(項目1)
対応する天然の莢膜糖の少なくとも1つの単糖単位におけるヒドロキシル基の位置での保護基を含む、修飾莢膜糖。
(項目2)
項目1に記載の修飾莢膜糖であって、前記少なくとも1つの単糖単位が、非末端単糖単位である、修飾莢膜糖。
(項目3)
項目1または2に記載の修飾莢膜糖であって、少なくとも1つの遊離ヒドロキシル基またはアミノ基を含む、修飾莢膜糖。
(項目4)
項目3に記載の修飾莢膜糖であって、前記少なくとも1つの遊離ヒドロキシル基が、末端アノマーヒドロキシル基である、修飾莢膜糖。
(項目5)
項目1に記載の修飾莢膜糖であって、前記保護基が、電子吸引性基である、修飾莢膜糖。
(項目6)
項目1または2に記載の修飾莢膜糖であって、前記保護基が以下の式であり:
−O−X−Y または −OR3
ここで、Xは、C(O)、S(O)、またはSO2である;
Yは、C1〜12アルキル、C1〜12アルコキシ、C3〜12シクロアルキル、C5〜12アリールまたはC5〜12アリール−C1〜6アルキルであり、必要に応じて、それぞれは、別個にF、Cl、Br、CO2H、CO2(C1〜6アルキル)、CN、CF3、またはCCl3から選択される1、2、または3つの基で置換され得る;あるいは、Yは、NR1R2である;
R1およびR2は、別個に、H、C1〜12アルキル、C3〜12シクロアルキル、C5〜12アアリール、C5〜12アリール−C1〜6アルキルから選択される;または、R1およびR2は、C3〜12飽和複素環基を形成するために連結され得る;
R3は、C1〜12アルキルまたはC3〜12シクロアルキルであり、必要に応じて、それぞれは、別個にF、Cl、Br、CO2(C1〜6アルキル)、CN、CF3、またはCCl3から選択される1、2、または3つ基で置換され得る;あるいはR3は、C5〜12アリールまたはC5〜12アリール−C12アルキルであり、必要に応じてそれぞれは、F、Cl、Br、CO2H(C1〜6アルキル)、CN、CF3、またはCCl3から選択される1、2、3、4、または5つの基で置換され得る、
修飾莢膜糖。
(項目7)
項目3に記載の修飾莢膜糖であって、前記保護基が、−OC(O)NR1R2または−OC(O)CF3である、修飾莢膜糖。
(項目8)
項目4に記載の修飾莢膜糖であって、前記保護基が、−OC(O)NR1R2であり、さらにR1およびR2が、別個に、C1〜6アルキルから選択される、修飾莢膜糖。
(項目9)
項目5に記載の修飾莢膜糖であって、R1およびR2の両方が、メチルである、修飾莢膜糖。
(項目10)
項目1〜9のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖であって、少なくとも10%の前記単糖単位が、保護基を含む、修飾莢膜糖。
(項目11)
項目1〜10のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖であって、前記対応する莢膜糖が、ホスホジエステル結合により連結している単糖単位を含む、修飾莢膜糖。
(項目12)
項目11に記載の修飾莢膜糖であって、前記対応する莢膜糖が、Neisseria meningitidis血清型A糖である、修飾莢膜糖。
(項目13)
項目12に記載の修飾莢膜糖であって、前記保護基が、前記対応するNeisseria meningitidis血清型A糖の任意の4位および/または3位にある、修飾莢膜糖。
(項目14)
項目12に記載の修飾莢膜糖であって、前記保護基が、前記対応するNeisseria meningitidis血清型A糖の任意の4位にある、修飾莢膜糖。
(項目15)
オリゴ糖である、項目1〜14に記載の修飾莢膜糖。
(項目16)
以下の式の糖であって
【化1】
ここで、Tは以下の式(A)または(B)である:
【化2】
nは、1〜100の整数である;
各Z基は、別個に、OHまたは項目5〜9に定義されたような保護基から選択される;そして
各Q基は、OHまたは項目5〜9に定義されたような保護基から別個に選択される;
Wは、OHまたは項目5〜9に定義されたような保護基から選択される;
Vは、−NH2または−NHE、から選択され、ここでEは、窒素保護基である;
さらに、該Q基の約7%より多くが保護基である、
糖。
(項目17)
項目16に記載の糖であって、前記Z基の少なくとも50%がOAcである、糖。
(項目18)
項目16または17に記載の糖であって、nが15〜25の整数である、糖。
(項目19)
項目16〜18に記載の糖であって、前記Q基の少なくとも10%が、保護基である、糖。
(項目20)
莢膜糖を修飾するプロセスであって、以下:
(a)単糖単位に少なくとも1つのヒドロキシル基を有する莢膜糖を提供する工程;および
(b)前記の少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基へ変換する工程
を包含する、プロセス。
(項目21)
項目20に記載のプロセスであって、前記保護基が、項目5〜9のいずれか1項に定義された通りである、プロセス。
(項目22)
項目20または21に記載のプロセスであって、前記保護基は、−OC(O)NR1R2であって、工程(b)は以下:
(b1)有機溶媒中で該莢膜糖を二機能性試薬と反応させる工程;および
(b2)工程(b1)の生産物を式(I)のアミノ化合物HNR1R2と反応させる工程であって:
ここでR1およびR2は、項目3、5および6のいずれかの1項に定義された通りである、工程
を包含するプロセス。
(項目23)
項目22に記載のプロセスであって、前記有機溶媒が、非プロトン性溶媒である、プロセス。
(項目24)
項目23に記載のプロセスであって、前記非プロトン性溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ホルムアミド、ヘキサメチルホスホラミド(HMPA)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)またはジメチルアセトアミド(DMAC)から選択される、プロセス。
(項目25)
項目23または24に記載のプロセスであって、前記非プロトン性溶媒が、DMSOである、プロセス。
(項目26)
項目22〜25に記載のプロセスであって、前記二機能性試薬が、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、カルボニルジ1,2,4−トリアゾール(CDT)、カルボニルジ1,2,3−ベンゾトリアゾール(CDB)、ジフェニルカルボネート、臭化シアン、ホスゲン、またはトリホスゲンから選択される、プロセス。
(項目27)
項目26に記載のプロセスであって、前記二機能性試薬が、CDIである、プロセス。
(項目28)
項目20〜27に記載のプロセスであって、前記修飾莢膜糖が、修飾莢膜オリゴ糖である、プロセス。
(項目29)
項目28に記載のプロセスであって、工程(a)における前記莢膜糖が、対応する天然の莢膜多糖のサイズ処理によって入手可能な莢膜オリゴ糖である、プロセス。
(項目30)
項目28に記載のプロセスであって、工程(a)における前記莢膜糖が、天然の莢膜多糖であって、前記プロセスがさらに、工程(b)の生成物がサイズ処理され、これにより修飾莢膜オリゴ糖を提供する工程(c)を包含する、プロセス。
(項目31)
Neisseria meningitidis血清型A多糖を修飾するためのプロセスであって、以下:
(a)天然のNeisseria meningitidis血清型A多糖を提供する工程;
(b)オリゴ糖を提供するために、該多糖のサイズ処理する工程;および
(c)項目21〜27いずれか1項に従って、オリゴ糖の少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基へ変換する工程
を包含する、プロセス。
(項目32)
Neisseria meningitidis血清型A多糖を修飾するためのプロセスであって、以下:
(a)天然のNeisseria meningitidis血清型A多糖を提供する工程;
(b)項目21〜27いずれか1項に従って、該多糖の少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基へ変換する工程;
(c)生じた多糖をサイズ処理する工程
を包含する、プロセス。
(項目33)
項目1〜19に記載の修飾莢膜糖を調製するためのプロセスであって、総合的な合成プロセスが、2つ以上の単糖単位の間のグリコシド結合を形成する工程を含包する、プロセス。
(項目34)
項目20〜33いずれか1項に記載のプロセスによって入手可能である、修飾莢膜糖。
(項目35)
項目20〜33いずれか1項に記載のプロセスによって得られた、修飾莢膜糖。
(項目36)
項目1〜19、34または35のいずれか1項に記載の修飾糖の、糖−タンパク質結合体。
(項目37)
項目36に記載の結合体であって、前記タンパク質が、細菌毒素または細菌トキソイドである、結合体。
(項目38)
項目37に記載の結合体であって、前記細菌毒素または細菌トキソイドが、ジフテリア毒素またはジフテリアトキソイドである、結合体。
(項目39)
項目37に記載の結合体であって、前記細菌毒素または細菌トキソイドが、CRM197である、結合体。
(項目40)
以下の式の糖部分を含む、分子であって:
【化3】
ここで、Tは、以下の式(A)または(B)である:
【化4】
nは、1〜100の整数である;
各Z基は、別個に、OHまたは項目5〜9に定義されるような保護基から選択される;そして
各Q基は、別個にOHまたは求項5〜9に定義されるような保護基から選択される;
Wは、OHまたは項目5〜9に定義されるような保護基から選択される;
Vは、−NH2または−NH−E、から選択され、ここでEは、窒素保護基である;
Lは、O、NH、NE、SまたはSeである;
さらに、該Q基の約7%より多くが保護基である、
分子。
(項目41)
(a)項目1〜19、34または35のいずれか1項に記載の修飾糖および/または項目36〜39のいずれか1項に記載の糖−タンパク質結合体および/または項目40に記載の分子、ならびに(b)薬学的に受容可能なキャリア、を含む、薬学的組成物。
(項目42)
項目41に記載の組成物であって、さらに1種類以上のNeisseria meningitidisの血清型C、W135およびY由来の糖抗原を含み、必要に応じて前記糖は、オリゴ糖であり、必要に応じてキャリアタンパク質に結合させられる、組成物。
(項目43)
項目41または42に記載の組成物であって、ワクチンアジュバントをさらに含む、組成物。
(項目44)
項目43に記載の組成物であって、前記アジュバントが、リン酸アルミニウムである、組成物。
(項目45)
項目41〜44のいずれか1項に記載の組成物であって、Neisseria meningitidisにより引き起こされる疾患に対するワクチンである、組成物。
(項目46)
哺乳動物において、抗体応答を惹起させるための方法であって、哺乳動物に項目41〜45のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目47)
医薬としての使用のための、項目1〜18のいずれか1項に記載の修飾糖。
(項目48)
医薬としての使用のための、項目36〜39のいずれかに1項に記載の結合体。
(項目49)
医薬としての使用のための、項目40に記載の分子。
(項目50)
1種類以上の莢膜細菌により引き起こされる疾患の予防または処置のための医薬の製造における、項目1〜19、34または35のいずれか1項に記載の修飾糖、または項目36〜39のいずれか1項に記載の結合体または、項目40に記載の分子の使用。
(項目51)
項目50に記載の使用であって、前記疾患が、細菌性髄膜炎である、使用。
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用された全ての文献は、その全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、多糖の化学の分野にあり、修飾糖、修飾糖調製のプロセスおよび、結合体化した誘導体(conjugated derivative)に関する。特に、本発明は、水中において改善された安定性を有する修飾糖に関する。
【背景技術】
【0003】
多糖は、重要な生物学的分子であり、疾患の予防および処置のための医薬産業において広く使用されている。例えば、莢膜多糖は、莢膜細菌(例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、およびHib(Haemophilus influenzae B型)に対するワクチンとして長年使用されてきた。
【0004】
特に小児においてこれら多糖の免疫原性を高めるために、結合体化ワクチン(conjugate vaccine)が開発された。結合体化ワクチンは、キャリアタンパク質[例えば、参考文献1、2、3]に結合体化した莢膜多糖を含む。結合体は、T−独立抗原をT依存抗原に変得える。
【0005】
多様な多糖の問題は、水中における安定性の乏しさである。水中における多糖の安定性は、糖単位を繋いでいるO−グリコシド結合の性質に依存する。水中における安定性の乏しさは、O―グリコシド結合が、酸またはグリコシダーゼの存在下で簡単に加水分解されることに起因する。血清型A髄膜炎菌の莢膜多糖は、水中において乏しい安定性をもつ多糖の一例である。
【0006】
多糖の安定性は、結合体化ワクチンの生産において、特に問題である。多糖−タンパク質結合体を調製するために、多糖に化学官能基を操作する必要がある。その操作によって、多糖がタンパク質と連結され得る。多糖は、タンパク質に直接的に連結され得る[特許文献1[2]、特許文献2[4]]かまたは、リンカー基を介して連結され得る。多様な種類のリンカー基が多糖をタンパク質に連結するために提案されている[例えば、特許文献3[3]、特許文献4[5]]。
【0007】
化学的な試薬(特に酸)への多糖の露出は、望ましくないグリコシド結合の切断、そしてその結果、多糖の断片化を引き起こし得る。このような断片化は、非常に好ましくなく、多糖−タンパク質結合体の合成における収量の損失の原因となる。
【0008】
一般的に、このように不安定な多糖は、上の問題を回避するための試薬および条件の慎重な選択を必要とする。しかし、この選択は、多糖の操作に使用可能な試薬を制限し、従って、多糖とキャリアタンパク質との間に形成され得る結合の範囲も制限される。さらに、これら多糖の不安定性は、工業規模でワクチンを調製するのに使用され得る粗野な手順の開発が困難であることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,761,283号明細書
【特許文献2】米国特許第4,356,170号明細書
【特許文献3】米国特許第4,882,317号明細書
【特許文献4】米国特許第4,695,624号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
莢膜糖を修飾する方法を提供し、不安定性の問題を被ることなく抗原性を維持することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、莢膜糖の単糖単位でのヒドロキシル基の修飾が改善された安定性を提供するという発見に基づいている。本発明のプロセスにより入手される修飾糖は、対応する天然の糖よりも加水分解に対して安定である。
【0012】
(本発明の修飾糖)
本発明は、対応する天然の莢膜糖の少なくとも1つの単糖単位のヒドロキシル基の位置における保護基を含む修飾莢膜糖を提供する。
【0013】
用語「修飾莢膜糖」は、適切な修飾により天然の莢膜糖から入手され得る糖を意味する。従って、天然の莢膜糖における単糖単位の繰り返しの基本的な配列は、本発明の修飾莢膜糖において保持されている。
【0014】
用語「糖」は、オリゴ糖(例えば、2〜39単糖単位を含む)と多糖(例えば、40もしくはそれ以上の単糖単位を含む)との両方を包含する。細菌で天然に見られるように、天然の莢膜糖は通常、多糖の形態をとる。多糖は、より短いオリゴ糖を与えるように操作され得る。オリゴ糖は、天然の多糖の精製および/またはサイズ処理(例えば、緩やかな酸での加水分解によって、加熱によって、サイジングクロマトグラフィーによって、など)により入手され得る。
【0015】
代表的に、本発明の修飾糖は、オリゴ糖である。オリゴ糖は上で記載した任意のサイズ処理の方法によって多糖から入手され得る。
【0016】
本発明の修飾莢膜糖は、天然の莢膜糖から入手され得る。しかし、本発明は、天然の莢膜糖から入手される修飾糖に限定されない。本発明の修飾莢膜糖は、完全な合成または部分的な合成といった他の方法によって、入手され得る。
【0017】
保護基を有する単糖単位の数は、本発明において変化し得る。例えば、対応する莢膜糖の全てのまたは実質的に全ての単糖単位が保護基を有し得る。あるいは、対応する莢膜糖の少なくとも、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の単糖単位が保護基を有し得る。対応する莢膜糖の少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の単糖単位が保護基を有し得る。
【0018】
同様に、単糖単位での保護基の数も変化し得る。例えば、単糖単位での保護基の数は、1、2、3、4、5、または6であり得る。好ましくは、1〜4、さらに好ましくは1〜2であり得る。
【0019】
1つの実施形態において、保護基を有する単糖単位の少なくとも1つは、非末端単糖単位である。用語「非末端単糖単位」は、オリゴ糖/多糖鎖での末端単糖単位の中の1つでない単糖単位を意味する。
【0020】
本発明は、修飾莢膜糖を包含し、末端単糖単位および非末端単糖単位の全てのヒドロキシル基の位置が保護基を有し得る。しかし、本発明の修飾莢膜糖において少なくとも1つの遊離なヒドロキシル基もしくはアミノ基が存在することが好ましい。修飾莢膜糖のさらなる反応のため(例えば、キャリア分子への結合のため)のハンドルを提供するため、遊離なヒドロキシル基またはアミノ基が、有利である。修飾糖が遊離なヒドロキシル基を含む場合、遊離ヒドロキシル基は、好ましくは、アノマーヒドロキシル基であり、好ましくは末端アノマーヒドロキシル基である。修飾糖が遊離なアミノ基を含む場合は、遊離なアミノ基は好ましくは、アノマーヒドロキシル基に由来する。アミノ基は、還元アミノ化(例えば、NaBH3CN/NH4Clを使用して)によりアノマーヒドロキシル基から容易に入手される。
【0021】
用語「アミノ基」は、−NH2または−NH−E基を含む。Eは、窒素保護基である。代表的な窒素保護基の例は、以下に記載される。
【0022】
用語「保護基」は、ヒドロキシル基の反応性をブロックする任意の基を意味する。当業者は、種々の型の保護基を認識する。ヒドロキシル基に対する好ましい保護基は、ヒドロキシル基の誘導体化反応を介して直接入手し得る基である。すなわち、ヒドロキシル基の水素原子を他の基で置換する。保護基として働く適切なヒドロキシル基の誘導体は、例えば、カルバミン酸塩、スルホン酸塩、炭酸塩、エステル、エーテル(例えば、シリルエーテルまたはアルキルエーテル)およびアセタールである。このような保護基の幾つかの特定の例は、アリル、Aloc、ベンジル、BOM、t−ブチル、トリチル、TBS、TBDPS、TES、TMS、TIPS、PMB、MEM、MOM、MTM、およびTHPである。
【0023】
しかし、保護基は、ヒドロキシル基の誘導体化反応を介して直接入手される必要はない。保護基は、完全にヒドロキシ置換を置換し得る。例えば、保護基は、C1−12アルキル、C3−12アルキル、C5−12アリール、C5−12アリール−C1−5アルキル、NR1R2(R1およびR2は以下で定義するものである)、H、F、Cl、Br、CO2H、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、CCl3などである。
【0024】
好ましくは、保護基は、電子吸引性基である。仮説理論によって束縛されるのは望まないが、グリコシド結合での糖ヒドロキシル基の分子内求核攻撃からの補助に起因して(すなわち、環状中間体の形成によって)、グリコシド結合は加水分解に対して不安定であると考えられている。ヒドロキシル基の求核性が大きいほど、分子内求核攻撃の傾向は高い。電子吸引性保護基は、酸素孤立電子対の非局在化の効果を有する。従って、酸素の求核性を減少させ、分子内求核攻撃の傾向を減少させる。
【0025】
好ましくは、保護基は以下の式のものである:
−O−X−Y または −OR3
ここで、Xは、C(O)、S(O)、またはSO2である;
Yは、C1−12アルキル、C1−12アルコキシ、C3−12シクロアルキル、C5−12アリールまたはC5−12アリール−C1−6アルキルであり、それぞれは、必要に応じて、別個に、F、Cl、Br、CO2H、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、もしくはCCl3から選択される、1、2または3つの基で置換され得る;またはYは、NR1R2である;
R1およびR2は別個にH、C1−12アルキル、C3−12シクロアルキル、C5−12アリール、C5−12アリール−C1−6アルキルから選択される;またはR1およびR2はC3−12飽和複素環基を形成するように結合され得る;
R3は、C1−12アルキルまたはC3−12シクロアルキルであり、それぞれは、必要に応じて、別個に、F、Cl、Br、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、もしくはCCl3から選択される、1、2または3つの基で置換され得る;またはR3は、C5−12アリールまたはC5−12アリール−C1−6アルキルであり、それぞれは、必要に応じて、別個に、F、Cl、Br、CO2H、CO2(C1−6アルキル)、CN、CF3、もしくはCCl3から選択される1、2、3、4または5つの基で置換され得る。
【0026】
好ましくは、R3がC1−12アルキルまたはC3−12シクロアルキルである場合、上で定義したように、R3は、1、2、または3つの基で置換される。
【0027】
式−O−X−Y または −OR3の保護基は、標準的な誘導体化工程(例えば、ヒドロキシル基とアシルハロゲン化物、ヒドロキシル基とアルキルハロゲン化物、ヒドロキシル基とスルホン酸ハロゲン化物などの反応)によりヒドロキシル基から調製され得る。従って、好ましくは、−O−X−Yでの酸素原子は、ヒドロキシル基の酸素原子である。一方、−O−X−Yでの−X−Y基は、好ましくは、ヒドロキシル基の水素原子を置換する。
【0028】
あるいは、保護基は、置換反応(例えば、Mitsunobu型置換)を介して入手され得る。これらのヒドロキシル基からの保護置換の調製方法および他のヒドロキシル基からの保護置換の調製方法は周知である。
【0029】
さらに好ましくは、保護基は、−OC(O)CF3[6]または−OC(O)NR1R2である。
【0030】
さらに好ましくは、保護基は、式−OC(O)NR1R2のカルバミン酸塩基である。ここで、R1およびR2は、C1−6アルキルから独立して選択される。さらに好ましくは、R1およびR2は共にメチルである。すなわち、保護基は、−OC(O)NMe2である。
【0031】
カルバミン酸塩保護基は、グリコシド結合における安定化効果を有し、緩やかな条件下で調製され得る。カルバミン酸保護塩基を提供するための糖の操作工程の1例は、以下で記載されている。しかし、本発明は本明細書中で例示された工程によって調製される修飾糖に限定されない。さらに、本発明の修飾糖の調製のための工程は当業者には容易に理解される。
【0032】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖状の形態と分岐形態の両方のアルキル基を指す。アルキル基は、−O−、−NH−または−S−から選択される1つ、2つ、または3つのヘテロ原子で中断され得る。アルキル基はまた、1つ、2つ、もしくは3つの2重結合および/または3重結合によっても中断され得る。しかし、用語「アルキル」は通常、ヘテロ原子の中断、または2重結合もしくは3重結合の中断を有さないアルキル基を指す。C1−12アルキルと言及した場合、アルキル基は1〜12の間の任意の数の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)。を含み得ることを意味する同様に、C1−6アルキルと言及した場合、アルキル基は、1〜6の間の任意の数の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6)を含み得ることを意味する。
【0033】
用語「シクロアルキル」は、シクロアルキル、ポリシクロアルキル、およびシクロアルケニル基ならびにこれらとアルキル基との組み合わせ(例えば、シクロアルキルアルキル)含む。シクロアルキル基は、−O−、−NH−または−S−から選択される1つ、2つ、または3つのヘテロ原子で中断され得る。しかし、用語「シクロアルキル」は通常、ヘテロ原子の中断を有さないシクロアルキル基を指す。シクロアルキル基の例として、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキシルメチルおよびアダマンチル基が挙げられる。C3−12シクロアルキルと言及した場合、シクロアルキル基は、3〜12の間の任意の数の炭素原子(例えば、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含み得ることを意味する。
【0034】
本明細書中で使用される用語「アリール」は、フェニルまたはナフチルといった芳香族基を指す。C5−12アリールと言及した場合、アリール基は、5〜12の間の任意の数の炭素原子(例えば、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含み得ることを意味する。
【0035】
用語「C5−12アリール−C1−6アルキル」は、ベンジル、フェニルエチル、およびナフチルメチルといった基を指す。
【0036】
R1およびR2がC3−12飽和複素環基の形成のために連結される場合、R1およびR2は窒素原子と共に、3〜12の間の任意の数の炭素原子(例えば、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12)を含む飽和複素環基を形成することを意味する。飽和複素環基は、窒素原子以外に1つまたは2つのヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を含み得る。C3−12飽和複素環基の例は、ピロリジニル、ピペリジニル、モルフォリニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、アゼチジニルおよびアジリジニル、である。
【0037】
上で記載した全ての実施形態において、好ましくは、修飾莢膜糖は、リン酸ジエステル結合を有する修飾莢膜糖である。さらに好ましくは、修飾莢膜糖は、修飾Neisseria meningitidis血清型A糖である。Neisseria meningitidis血清型A糖は、加水分解に対して特に不安定である。
【0038】
修飾莢膜糖が修飾Neisseria meningitidis血清型A糖である場合、好ましくは、保護基は、対応するNeisseria meningitidis血清型A糖の4位および/または3位、さらに好ましくは4位に存在する。Neisseria meningitidis血清型A糖の4位および/または3位の保護基は、加水分解に対する安定性の改善に特に効果的であることが示されている。
【0039】
本発明はまた、以下の式の糖を提供する:
【0040】
【化5】
【0041】
ここでTは以下の式(A)または(B)である:
【0042】
【化6】
【0043】
nは1から100の整数である;
各Z基は、−OHまたは上で定義された保護基から別個に選択される;ならびに
各Q基は、−OHまたは上で定義された保護基から別個に選択される;
Wは、−OHまたは上で定義された保護基から選択される;
Vは、−NH2、−NHE、−NE1E2、−OHまたは−O−Dから別個に選択される;ここでE、E1およびE2は同じもしくは異なり得る窒素保護基であり、そしてDは酸素保護基である;
さらに、Q基の約7%より多く(例えば、8%、9%、10%、またはそれより多く)が保護基である;
好ましくは、nは、15〜25の整数である。
【0044】
n+2Z基の各々は、互いに同じまたは異なり得る。同様に、n+2Q基の各々は、互いに同じまたは異なり得る。
【0045】
好ましくは、Vは、−NH2または−NHEである。
【0046】
適切な窒素保護基は、シリル基(例えば、TMS、TES、TBS、TIPS)、アシル誘導体(例えば、トリフルオロアセトアミド、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(ZまたはCbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc))、スルホニル誘導体(例えば、a−トリメチルシリルエタノスルホニル(SES))、スルフェニル誘導体、C1−12アルキル、ベンジル、ベンズヒドリル、トリチル、アリール、9−フェニルフルオレニルなどである。好ましい窒素保護基は、Fmocである。
【0047】
E1、E2として使用され得る二価窒素保護基としては、環状イミド誘導体(例えば、N−フタルイミド、N−ジチアスクシンイミド、N−2,3−ジフェニルマレイミド)、イミン誘導体(例えば、N−1,1−ジメチルチオメチレンアミン、N−ベンジリデネアミン、N−p−メトキシベンジリデネンアミン、N−ジフェニルメチエンアミン)、エナミン誘導体(例えば、N−(5,5−ジメチル−3−オキソ−1−シクロヘキセニル)アミン)などが挙げられる。好ましい二価窒素保護基はN−フタリミジルである。
【0048】
適切な酸素保護基には、エステル、エーテル(例えば、シリルエーテルまたはアルキルエーテル)およびアセタールが挙げられる。特定の例として、アリル、アセチル、Aloc、ベンジル、ベンジルオキシメチル(BOM)、t−ブチル、トリチル、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリエチルシリル(TES)、トリメチルシリル(TMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、パラメトキシベンジル(PMB)、MEM、メトキシメチル(MOM)、MTMおよびテトラヒドロピラニル(THP)が挙げられる。
【0049】
すべてのZ基は、OHであり得る。あるいは、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%または60%のZ基がOAcであり得る。好ましくは、約70%のZ基がOAcであり、残りのZ基は、OHまたは上で定義されたような保護基である。
【0050】
少なくとも約7%のQ基は、保護基である。好ましくは、少なくとも、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%のQ基が保護基である。あるいは、全てのQ基が保護基であり得る。
【0051】
本発明はまた以下の式の糖部分を含む分子を提供する:
【0052】
【化7】
【0053】
ここで、Tは以下の式(A)または(B)である:
【0054】
【化8】
【0055】
n、Z、QおよびWは、上で定義された通りであり、Lは、O、NH、NE、SまたはSeである。
【0056】
Lの遊離共有結合は、任意の適切な部分(例えば、−H、−E、リンカー、タンパク質キャリアなど)へ連結され得る。好ましくは、Lは、NまたはOである。Lは、Nであり得るか、二価リンカーに連結され得るか、二価保護基に連結され得るか、二価タンパク質キャリアへ連結され得る。
【0057】
(修飾糖の産生のためのプロセス)
本発明は莢膜糖の修飾のためのプロセスを提供する。このプロセスは、以下の工程を包含する:
(a)単糖単位において少なくとも1つのヒドロキシル基を有する莢膜糖を提供する工程;および
(b)前記の少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基に変換する
工程。保護基は、上で定義された保護基のうちいずれかであり得る。
【0058】
莢膜糖は、天然の莢膜糖(オリゴ糖または多糖)であり得る。代替的に、例えば、莢膜糖は、デ−O−アセチル化莢膜糖および/または末端アミノ基(例えば、還元アミノ化により得られた)を有する莢膜糖であり得る。
【0059】
保護基が−OC(O)NR1R2であるとき、糖の修飾の好ましいプロセスは、工程(b)が以下の過程を含む場合である:
(b1)有機溶媒中で、莢膜糖を二機能性試薬と反応させる工程;および
(b2)工程(b1)の生成物を式(I)のアミノ化合物と反応させる工程であって、
HNR1R2 (I)
ここでR1およびR2は上で記載された通りである、工程。
【0060】
用語「二機能性試薬」は、(i)工程(b1)において、糖のヒドロキシル基との結合(coupling)のための第1の求電子性炭素原子を提供する工程;および(ii)工程(b2)で使用されるアミノ基との結合(coupling)のための第2の求電子性炭素原子を提供する工程の二重の機能を実行し得る任意の試薬を意味する。通常、第2の求電子性炭素原子は、工程(b)で第1の求電子性炭素原子から再生される。二機能性試薬は、多糖とアミノ化合物との間の−C(O)−結合を提供する。
【0061】
本発明で使用される二機能性試薬には、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、カルボニルジ−1,2,4−トリアゾール(CDT)、カルボニルジ−1,2,3−ベンゾトリアゾール(CDB)、ジフェニルカルボネート、臭化シアン、ホスゲンまたはトリホスゲンが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、これらと同じ機能を実行し得る他の二機能性試薬を認識する。
【0062】
好ましい二機能性試薬は、CDIである。CDIは、例えば、ホスゲンまたは臭化シアンに比べて緩やかな試薬であるという利点を有している。特に、CDIを使用した共役反応は、HClまたはHBrといったヒドロハロンゲン化ガスを産生しない。HClまたはHBrガスの大気への回避を避けるために、反応チャンバー排気口の洗浄が必要となる。このため、これらガスの産生は望ましくない。さらに、HClまたはHBrガスの産生は、糖の感受性官能基に影響し得、糖の分解または断片化による収量の損失を招く。
【0063】
好ましくは、工程(b1)で使用される有機溶媒は、非プロトン性の溶媒である。非プロトン性の溶媒は、当業者に周知であり、イオン性水素原子を含まない。ヒドロキシル基の求核性を増強することにより、糖のヒドロキシル基と二機能性試薬との反応を、促進することから、これらの溶媒は有利である。適切な非プロトン性の溶媒には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ホルムアミド、ヘキサメチルホスホラストリアミド(HMPT)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、またはヘキサメチルホスホラミド(HMPA)が挙げられるが、これらに限定されない。DMSOが好ましい。
【0064】
本発明のプロセスの工程(b2)において、工程(b1)の生成物は、修飾多糖を形成するためにアミノ化合物と反応させられる。本発明のプロセスにおいて使用されるアミノ化合物は、上で定義されたように式(I)のものである。好ましくは、式(I)において、R1およびR2は、C1−6アルキルから独立して選択される。さらに好ましくは、R1およびR2は共にメチルである。
【0065】
本発明で使用され得る適切なアミノ化合物は、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、N−エチルメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−エチルプロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、N−メチルブチルアミン、N−エチルブチルアミン、N−プロピルブチルアミン、N−メチルシクロペンチルアミン、N−エチルシクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルヘキシルアミン、ベンジルアミン、N−エチルベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロペンチルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、イミダゾリジン、アゼチジン、アジリジン、アニリン、N−メチルアニリンおよびN−エチルアニリンである。これら化合物は、塩の形態(例えば、塩酸塩)で使用され得る。
【0066】
好ましくは、本発明で使用されるアミノ化合物は、第2級アミンである。さらに好ましくは、アミンはジメチルアミンである。
【0067】
本発明の好ましいプロセスは、以下のスキーム1で例示される:
【0068】
【化9】
【0069】
このスキームにおいて、糖(例えば、MenA多糖またはオリゴ糖)はまず、DMSO溶媒中でCDIを使用して、単糖単位の少なくとも1つのヒドロキシル基を介して活性化される。結果として生じるイミダゾールカルバミン酸塩中間体は、修飾糖を得るために、アミンR1R2NH(例えば、ジメチルアミン)により捕捉される。
【0070】
あるいは、修飾糖は、莢膜糖での1つ以上のヒドロキシル基を式XC(O)NR1R2の試薬と反応させることによって1工程のプロセスにおいて調製され得る。ここでXは、脱離基であり、R1およびR2は上で定義されているものである。適切な脱離基には、−Cl、−Br、−CF3、−OC6F5または−CCl3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
あるいは、本発明の修飾莢膜糖は、例えば、適切な単糖単位からの合成方法によって調製され得る。代表的に、修飾莢膜糖の生合成は、適切な単糖単位との間のグリコシド結合(例えば、リン酸ジエステル結合)の形成し、次いで上で記載した任意の方法で生じた糖を修飾する工程を包含する。あるいは、同じ修飾莢膜糖を提供するために、単糖単位は、グリコシド結合の形成前に修飾され得る。
【0072】
好ましくは、本発明の修飾莢膜糖は、オリゴ糖である。天然の莢膜多糖から出発して、修飾莢膜オリゴ糖は2つの方法のいずれかにより入手され得る(1)莢膜多糖の修飾とその後の、修飾オリゴ糖を形成するための、修飾多糖のサイズ処理;または(2)莢膜多糖のサイズ処理とその後の修飾オリゴ糖を形成するために生じたオリゴ糖の修飾。両方の方法は、本発明内に包含されている。しかし、末端ヒドロキシル基が、後の修飾オリゴ糖のキャリア分子(例えば、タンパク質)への結合に利用されることを確実にするので、最初の方法が好ましい。
【0073】
本発明はまた、Neisseria meningitidis血清型A多糖の修飾のためのプロセスを提供する。このプロセスは以下の工程を包含する:
(a)Neisseria meningitidis血清型A多糖を提供する工程
(b)前記多糖をサイズ処理して、オリゴ糖を提供する工程;および
(c)上で定義したように、オリゴ糖の少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基に変換する工程。このプロセスの工程(b)は、必要に応じて公知の誘導体化の工程を工程(c)の前に伴い得る。例えば、公知の誘導体化の工程は、生じた−NH2基および/またはデ−O−アセチル化の保護を伴う還元的アミノ化を包含する。
【0074】
本発明はまた、Neisseria meningitidis血清型A多糖の修飾のためのプロセスを提供する。このプロセスは以下の工程を包含する:
(a)Neisseria meningitidis血清型A多糖を提供する工程;
(b)上で定義したように、多糖の少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基に変換する工程;および
(c)結果として生じる多糖をサイズ処理してオリゴ糖を提供する工程。このプロセスの工程(c)は、必要に応じて公知の誘導化工程を伴い得る。例えば、公知の誘導体化の工程は、結果として生じた−NH2基および/またはデ−O−アセチル化の保護を伴う還元的アミノ化を包含する。
【0075】
上で定義した任意のプロセスはその後に、混入物(例えば、低分子量混合物)を除去する工程が伴い得る。
【0076】
(莢膜糖の出発物質)
本発明の修飾莢膜糖は、天然の莢膜糖から入手され得る。用語「天然の莢膜糖」は、細菌(グラム陽性とグラム陰性の両方)(例えば、N.meningitidis、S.pneumoniae、およびH.influenzae)のカプセルにおいて見出され得る糖を含有するポリマー(例えば、糖のポリマー、糖酸、アミノ糖、多価アルコール、糖アルコール、および糖リン酸など)を指す。さらに、「天然の莢膜糖」は、多糖とオリゴ糖の両方を含む。天然の莢膜オリゴ糖は、天然の多糖のサイズ処理により入手され得る。
【0077】
天然の莢膜糖の「ヒドロキシル基の位置」は、ヒドロキシル基を有する天然の莢膜糖での位置である。しかし、グリコシド結合における位置またはヒドロシ基を有するそれらの残基の位置を含めない(例えば、リン酸結合の一部であるヒドロキシル基はヒドロキシル基の位置を占めない)。また、末端単糖単位でのアノマーヒドロキシル基により占められている位置も含まない。天然の莢膜糖でのアセトキシ(AcO)基が存在する位置もまた、ヒドロキシル基の位置ではない。
【0078】
天然の莢膜糖は、リン酸ジエステル結合で連結した糖単位を含み得る。リン酸ジエステル結合を含む糖は、加水分解に対し不安定である。
【0079】
好ましくは、天然の莢膜糖および本発明の修飾莢膜糖は、哺乳動物(例えば、ヒト)において免疫原性である。哺乳動物は成人または小児であり得る。
【0080】
好ましくは、天然の莢膜糖は、N.meningitidis(血清型A、B、C、W135またはYを含む)、S.pneumoniae(血清型1、4、5、6B、9V、14、18C、19F、および23Fを含む)、およびH.influenzaeB型、Neisseria gonorrhoeae、Streptococcus agalactiae、Escherichia coli、Salmonella typhi、Streptococcus mutans、Cryptococcus neoformans、Moraxella catarrhalis、Klebsiella pneumoniae、Staphylococcus aureusおよび/またはPseudomonas aeruginosa由来の多糖(またはそれらのオリゴ糖フラグメント)である。
【0081】
本発明はN.meningitidisの任意の血清型へ適用され得るが、血清型A(「MenA」)由来の莢膜糖を使用することが好ましい。MenA莢膜糖は、水溶液において特に不安定である。この不安定性は、この分子において化学的な操作(例えば、キャリアタンパク質への結合)を実行するためには、特別な手順を使用する必要があることを意味する。しかし、本発明に従って修飾されたMenA糖は、水溶液において有利に安定であることが見出されている。
【0082】
MenA莢膜多糖{→6)−D−ManpNAc(3/4OAc)−α−(1→OPO3→}は、以下に示す反復単位を有するα1−6リン酸ジエステル結合によって共に連結されているN−アセチルマンノースアミン残基からなる。
【0083】
【化10】
【0084】
上での記載と一致して、4位の93%がヒドロキシル基の位置であり、3位の30%がヒドロキシル基の位置である。末端1−ヒドロキシル基もまた、ヒドロキシル基を占めている。末端1−ヒドロキシル基は、末端アノマーヒドロキシル基である。−OP(O)(OH)O−基の部分であるヒドロキシル基は、ヒドロキシル基の位置ではない。
【0085】
(糖−タンパク質結合)
本発明の修飾糖は、糖に対して適用される任意の一般的な下流のプロセス(例えば、誘導体化、結合、断片化など)の対象であり得る。免疫原性を高めるために、本発明の修飾糖は、好ましくは、キャリアタンパク質に結合される。キャリアタンパク質への結合は、小児用のワクチン[7]に対して特に有用であり、周知の技術である[例えば、参考文献8〜16などで総説されている]。
【0086】
従って、本発明は、タンパク質と本発明の修飾糖の結合体を提供する。タンパク質は、糖に直接結合し得るか、または、リンカーが使用され得る。任意の適切なリンカー化学が使用され得る。修飾多糖の改善された安定化は、有意に広範囲な結合の使用を可能にする。
【0087】
上で定義したように、修飾莢膜糖が後のキャリアタンパク質との結合のためのハンドルとして使用され得る少なくとも1つの遊離なヒドロキシル基またはアミノ基を有することが好ましい。
【0088】
遊離なヒドロキシル基を選択的に有する修飾莢膜糖は、莢膜糖のヒドロキシル基をブロック化することにより、または、全てのヒドロキシル基がブロックされている修飾莢膜糖を選択的に非ブロック化することにより入手され得る。あるいは、遊離なヒドロキシル基は、修飾莢膜糖のサイズ処理によって明らかにされ得る。好ましくは、少なくとも1つの遊離なヒドロキシル基は、末端アノマーヒドロキシル基である。末端アノマーヒドロキシル基は、修飾莢膜糖をサイズ処理することにより明らかにされ得るので、末端アノマーヒドロキシル基は、遊離なヒドロキシル基として好ましい。
【0089】
遊離のアミノ基を持つ修飾莢膜糖は、末端アノマーヒドロキシル基の還元性アミノ化によって入手され得る。必要に応じて、結果として生じる−NH2基の保護を伴う。還元性アミノ化反応は、本発明の修飾工程の前または後に行われ得る。生じた−NH2基は、ヒドロキシル基/保護基の存在下において選択的に保護/脱保護され得ることから、好ましくは、還元性アミノ化反応は、本発明の修飾工程の前に行われる。
【0090】
タンパク質への直接的な結合は、例えば、参考文献2および参考文献4で記載されているように、タンパク質での還元性アミノ化を伴う多糖の酸化を含み得る。
【0091】
リンカー基を介した結合は、例えば、参考文献3および参考文献5で記載されている手順のような任意の公知の手順を使用して作製される。好ましい結合の種類は、カルバミン酸結合形成のためのタンパク質との反応を伴うCDI[17、18]と修飾糖の遊離ヒドロキシル基の反応により形成され得るカルボニルリンカーである。別の好ましい結合の種類は、アジピン酸(例えばジイミド活性化を使用して)と修飾糖での遊離−NH2基との共役により形成され得、次いで、タンパク質が生じた糖−アジピン酸中間体と共役するアジピン酸リンカーである[12、19、20]。他のリンカーとしては、B−プロピオンアミド[21]、ニトロフェニル−エチルアミン[22]、ハロアシルハライド[23]、グリコシド結合[24]、6−アミノカプロン酸[25]、ADH[26]、C4からC12部分[27]などが挙げられる。
【0092】
結合は、以下を含み得る:アノマー末端の第1級ヒドロキシル基への還元、必要に応じた第1級ヒドロキシル基の保護/脱保護;CDIカルバミン酸中間体の形成のための第1級ヒドロキシル基とCDIとの反応;およびCDIカルバミン酸中間体とタンパク質のアミノ基との共役。
【0093】
スキーム2は、本発明に従った莢膜糖のキャリアタンパク質への結合方法の2つの異なる例を示している。最初の例において、タンパク質は、末端ヒドロキシル基を介して結合されている。第2の例において、タンパク質は、末端アミノ基を介して結合している。
【0094】
【化11】
【0095】
好ましいキャリアタンパク質は、細菌毒素素または細菌トキソイド(例えば、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド)である。これらは、一般に結合ワクチンで使用される。CRM197ジフテリアトキソイドが特に好ましい[28]。他の適切なキャリアタンパク質としては、N.meningitidis外膜タンパク質[29]、合成ペプチド[30、31]、熱ショックタンパク質[32、33]、百日咳タンパク質[34、35]、H.influenzae由来のタンパク質D[36]、サイトカイン[37]、リンフォカイン[37]、ホルモン[37]、成長因子[37]、C.difficile由来の毒素Aまたは毒素B[38]、鉄取り込みタンパク質[39]などが挙げられる。キャリアタンパク質の混合を使用することも可能である。
【0096】
結合の後、遊離な糖および結合した糖は、分離され得る。多くの適切な方法が存在する(例えば、疎水性クロマトグラフィー、接線限外濾過、ダイアフィルトレーションなど)(参考文献40、41なども参照)。
【0097】
単一のキャリアタンパク質は、複数の異なる糖を保有し得る[42]。
【0098】
(薬学的組成物および方法)
本発明は、(a)本発明の修飾糖および/または本発明の結合体、および(b)薬学的に受容可能なキャリア、を含む薬学的組成物を提供する。
【0099】
結合体が存在する場合、組成物もまた遊離なキャリアタンパク質を含み得る[43]。
【0100】
「薬学的に受容可能なキャリア」は、組成物を受容する個体に対して、それ自身は有害な抗体の産生を誘導しない任意のキャリアを含む。適切なキャリアは、代表的に大きく、ゆっくりと代謝される高分子(例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸重合体、アミノ酸コポリマー、トレハロース[44]、脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)、および不活性化ウィルス粒子)である。このようなキャリアは、当業者に周知である。ワクチンはまた、希釈液(例えば、水、生理食塩水、グリセロールなど)も含み得る。さらに、補助的な物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質など)が存在し得る。薬学的に受容可能な賦形剤の完全な考察は、RemingtonのPharmaceutical Sciencesで利用可能である。
【0101】
代表的に、組成物は、液体溶液または懸濁液いずれかの注射可能な物質として調製される;溶液に適した固形、懸濁液に適した固形、注射前の液体ビヒクルもまた調製され得る。増強されたアジュバントの効果のために、調製物はまた、乳化され得るかまたは、リポソームに包まれ得る。一般的に、組成物の直接的な送達は、非経口的である(例えば、皮下への注射、腹腔内への注射、静脈内への注射、もしくは筋内への注射いずれかによって、または、組織の間質性空間への送達)。組成物はまた、損傷へ投与され得る。他の投与方法には、経口投与および肺への投与、直腸(坐薬)、さらには経皮的な(transdermal)適用または経皮的(transcutaneous)な適用[例えば、参考文献45]、針、および皮下噴射器が挙げられる。投薬処置は、単回投与計画または複数回投与計画(例えば、ブースター投与を含む)であり得る。
【0102】
好ましくは、本発明の組成物は、滅菌され、緩衝化され、そして/または発熱物質を含まない。
【0103】
好ましくは、組成物は、免疫原性組成物(例えば、ワクチン)である。糖または糖−タンパク質結合体に基づくワクチンは、当該分野で周知である。
【0104】
免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の糖抗原を含み、必要に応じて他の特定の成分も含む。「免疫学的に有効な量」は、処置または予防に有効な量の個体への投与を意味し、投与は、単回投与もしくは連続投与の一部としてのいずれかである。この量は、処置される個体の健康状態および体調、年齢、処置される個体の分類学的な群(例えば、ヒトでない霊長類、霊長類など)、合成抗体に対する個体の免疫系の能力、所望する防御の程度、ワクチンの処方、処置する医者の医学的な状況判断、ならびに他の関連する因子に依存して変化する。この量は、定期的な試行を経て決定され得る比較的広い範囲となることが期待される。投薬処置は、単回投与計画または、複数回投与計画(例えば、ブースター投与を含む)であり得る。ワクチンは、他の免疫調節性の薬剤と共に投与され得る。
【0105】
免疫原性の組成物は、アジュバントを含み得る。組成物の効果を増強する好ましいアジュバントには:(A)アルミニウム化合物、例えば、水酸化アルミニウム(例えば、オキシヒドロキサイド)、リン酸化アルミニウム(例えば、ヒドロキシホスフェート、正リン酸塩)、硫酸アルミニウムなど[例えば、参考文献46の第8章および第9章を参照]、または任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶質、無定形など)をとり、好ましくは吸着的な、異なるアルミニウム化合物の混合物;(B)MF59(5% Squalene、0.5% Tween80、および0.5% Span85、マイクロフリューダイザーを使用してミクロン以下の粒子に処方された)[参考文献46の第10章を参照、また参考文献47を参照];(C)リポソーム[参考文献46の第13章および第14章を参照];(D)さらなる界面活性剤を欠いてもよい[48]ISCOM[参考文献46の第23章を参照];(E)10% Squalene、0.4% Tween80、5%プルロニック−ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含み、ミクロン以下の乳濁液にマイクロフリューダイズ化されているか、または、より大きな粒子サイズの乳濁液を作製するためにボルテックスされているかのいずれかであるSAF[参考文献46第12章を参照];(F)2% Squalene、0.2% Tween80、およびモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群からの1種以上の細菌細胞壁成分を含むRibiTMアジュバントシステム(RAS)、(Ribi Immunochem)好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM);(G)サポシンアジュバント(例えば、StimulonTMとしても知られているQuilAまたはQS21)[参考文献46第22章を参照];(H)キトサン(例えば49);(I)完全Freundのアジュバント(CFA)および不完全Freundのアジュバント(IFA);(J)サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えばインターフェロン−a)、マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子など)[参考文献46の第27章および第28章を参照];(K)生分解性および非毒性である物質(例えば、ポリ(a−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシブチル酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から形成された微粒子(すなわち、直径が約100nm〜約150imの粒子、さらに好ましくは、直径が約200nm〜約30im、さらに最も好ましくは、直径が約500nm〜約10im);(L)モノホスホリル脂質A(MPL)または3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)[例えば、参考文献46の第21章を参照];(M)3sMPLと例えば、QS21および/または水中油乳濁液の配合[50];(N)CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド[51]、すなわち、少なくとも1つのCGジヌクレオチドを含み、必要に応じてシトシンおよび/またはCIモチーフの場所に5−メチルシトシンが使用される、;(O)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル[52];(P)オクトキシノールの組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤[53]、または少なくとも1つのさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトオキシノール)と組み合わせたポリオキソエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤[54];(Q)免疫賦活性のオリゴヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)およびサポニン[55];(R)免疫賦活剤および金属塩の粒子[56];(S)サポニンおよび水中油(乳濁液[57];(T)サポニン(例えばQS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)[58];(U)E.coli熱不安定性エンテロトキシン(「LT」)、またはそれらの解毒変異体(例えば、K63変異体またはR72変異体)[例えば、参考文献59の第5章を参照];(V)コレラ毒素(「CT」)、またはそれらの解毒変異体[例えば、参考文献59の第5章を参照];および(W)モノホスホリル脂質A模倣物(例えば、アミノアルキルグルコサミドリン酸誘導体(例えば、RC−529)[60]);(X)ポリホスファゼン(PCPP);(Y)生物粘着剤[61](例えば、エステル化ヒアルロン酸微粒子[62]、またはポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖、およびカルボキシメチルセルロースの誘導体から成る群から選択される粘膜付着剤;あるいは(Z)組成物の効果を増強するために免疫賦活性な因子として機能する他の物質[参考文献46の第7章を参照]。ミョウバン(特にリン酸アルミニウムおよび/または水酸化物)が好ましいアジュバントである。
【0106】
ムラミルペプチドには、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)などが挙げられる。
【0107】
一旦処方されると、本発明の組成物は、被験体に直接的に投与され得る。処置される被験体は、動物であり得る;特にヒト被験体が処置され得る。ワクチンは、小児およびティーンエイジャーを予防接種するために特に有用である。
【0108】
本発明に従うワクチンは、予防的(すなわち感染を防止する)または処置的(すなわち、感染後の疾患を処置する)のいずれかであり得る。しかし、代表的には、予防的である。
【0109】
修飾糖と同様に、組成物は、さらなる抗原性成分を含み得る。例えば、組成物は、1つ以上のさらなる糖(本発明に従って修飾されているか修飾されていないかに関わらず)を含み得る。例えば、組成物は、N.meningitidis血清型C、血清型W135、および血清型Y由来の糖(例えば、修飾MenA糖に加えて)を含み得る。代表的に、これらはキャリアタンパク質に結合される。またN.meningitidisの異なる血清型由来の糖が、同じまたは異なるキャリアタンパク質に結合され得る。混合物が、血清型Aおよび血清型Cの両方由来の莢膜糖を含む場合、好ましくは、MenA糖:MenC糖の比(w/w)は1より大きい(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1またはより高い)。MenA成分の改善された免疫原性は、MenC成分に対して過剰に存在(質量/投与)する場合に観察されている[63]。
【0110】
組成物はまた、タンパク質抗原を含み得る。
【0111】
本発明の組成物に含まれ得る抗原には以下が挙げられる:
−Helicobacter pylori由来の抗原(例えば、CagA[64〜67]、VacA[68、69]、NAP[70、71、72]、HopX[例えば、73]、HopY[例えば、73]および/または尿素加水分解酵素、
−N.meningitidis血清型B由来のタンパク質抗原(例えば、参考文献74〜80に記載のもの、タンパク質「287」(以下を参照)および誘導体(例えば、「AG287」)が特に好ましい)
−N.meningitidis血清型C由来の外膜小胞(OMV)調製物(例えば、参考文献81、82、83、84などで開示されているもの)
−N.meningitidis血清型C由来の糖抗原(例えば、参考文献85で開示されている血清型C由来のオリゴ糖)(参考文献86も参照)
−Streptococcus pneumononiae由来の糖抗原[参考文献87、88、89]
−A型肝炎ウィルス由来の抗原(例えば、不活性化ウィルス)[参考文献90、91]
−B型肝炎ウィルス由来の抗原(例えば、表面抗原および/またはコア抗原)[参考文献91、92]
−C型肝炎ウィルス由来の抗原[参考文献93]
−Bordetalla pertussis由来の抗原(例えば、百日咳ホロトキシン(PT)およびB.pertussisからの線維状赤血球凝集素(FHA)、必要に応じてパータクチンおよび/または細胞凝集源2および3の組み合わせ[例えば、参考文献94および95]
−ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド)[例えば、参考文献96の第3章](例えば、CRM197変異体[例えば、97])
−破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド)[参考文献96の第4章]
−Haemophilus influenzaeB由来の糖抗原[例えば、86]
−N.gonorrhoeae由来の抗原[例えば、74、75、76]
−Chlamydia pneumoniae由来の抗原[例えば、98、99、100、101、102、103、104]
−Chlamydia trachomatis由来の抗原[例えば、105]
−Porphyromonas gingivalis由来の抗原[例えば、106]
−ポリオ抗原[例えば、107、108](例えば、IPVまたはOPV)
−狂犬病抗原[例えば、109](例えば、凍結乾燥不活性化ウィルス[例えば、110、RabAvertTM])
−はしか、おたふく風邪、および/または風疹抗原[例えば、参考文献96の第9章、第10章、および第11章]
−インフルエンザ抗原[例えば、参考文献96の第19章](例えば、赤血球
および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質)
−Moraxella catarrhalis由来の抗原[例えば、111]
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来の抗原[例えば、112、113]
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)由来の糖抗原
−Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)由来の抗原[例えば、113、114、115]
−Staphylococcus aureus由来の抗原[例えば、116]
−Bacillus anthracis由来の抗原[例えば、117、118、119]
−フラビウィルス科(フラビウィルス属)におけるウィルス(例えば、黄熱病ウィルス、日本脳炎ウィルス、デング熱ウィルスの4つの血清型、ダニ媒介の脳炎ウィルス、ウェストナイルウィルス)由来の抗原
−ペスチウィルス抗原(例えば、古典的なブタ熱ウィルス由来、ウシウィルス性の下痢ウィルス由来、および/またはボーダー病ウィルス由来)
−パルボウィルス抗原(例えば、パラボウィルスB19由来)
−プリオンタンパク質(例えば、CJDプリオンタンパク質)
−アミロイドタンパク質(例えば、βペプチド)[120]
−癌抗原(例えば、参考文献121の表1に列挙しているもの、または参考文献122の表3および表4に列挙しているもの)
組成物は、1つ以上のこれらのさらなる抗原を含み得る。
【0112】
毒性のタンパク質抗原は、必要な場合に解毒され得る(例えば、化学的方法および/または遺伝学的方法による百日咳毒素の解毒[95])。
【0113】
ジフテリア抗原が組成物に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原も含まれることが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原も含まれることが好ましい。
【0114】
好ましくは、抗原はアルミニウム塩に吸着される。
【0115】
代表的に、組成物での抗原は、それぞれ少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般的に、任意の所定の抗原の濃度は、抗原に対する免疫応答を誘発するために十分である。
【0116】
本発明の組成物においてタンパク質抗原の使用の代替えとして、抗原をコードする核酸が使用され得る[例えば、参考文献123〜131]。従って、本発明の組成物のタンパク質成分は、タンパク質をコードする核酸によって置き換えられ得る(好ましくは、例えば、プラスミドの形態のDNA)。
【0117】
本発明はまた、哺乳動物において抗体応答を惹起するための方法を提供する。この方法は、哺乳動物への本発明の薬学的組成物の投与を包含する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。ヒトは成人であり得るが、好ましくは小児である。好ましくは、抗体応答は、N.meningitidis血清型Aによる感染に対して保護的である。
【0118】
本発明はまた、哺乳動物を免疫するための方法を提供する。この方法は、哺乳動物への本発明の薬学的組成物の投与を包含する。
【0119】
本発明はまた、医薬として使用するための本発明の修飾糖、または本発明の結合体を提供する。
【0120】
本発明はまた、莢膜細菌により引き起こされる疾患の予防または処置のための医薬製造における、本発明の修飾糖の使用、または本発明の結合体の使用を提供する。Neisseriaにより引き起こされる疾患には、髄膜炎、敗血病、および淋病が挙げられる。H.influenzaeにより引き起こされる疾患には、中耳炎、気管支炎、肺炎、蜂巣炎、心膜炎、および髄膜炎が挙げられる。肺炎球菌により引き起こされる疾患には、髄膜炎、敗血症、および肺炎が挙げられる。従って、細菌髄膜炎の予防および/または処置が好ましい。
【0121】
(定義)
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」と「から成る(consisting)」との両方を意味する。例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、X単独から成り得るし、または何かさらなるものを含み得る(例えばX+Y)。
【0122】
数値xに関しての用語「約」は、例えばx±10%を意味する。
【0123】
糖環は開環型および閉環型で存在し得ると理解される。閉環型は、本明細書中での構造式において示されている。開環型もまた本発明によって包含されている。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、37℃、49℃、および57℃でインキュベーションした後のMenAサンプルのavDPを時間(h)の関数としてプロットしたものを示す。
【図2】図2は、37℃、49℃、および57℃でインキュベーションした後のMenA−CDI−DMAサンプルのavDPを時間(h)の関数としてプロットしたものを示す。
【図3】図3は、57℃で0時間、24時間、48時間、72時間、96時間インキュベーションしたMenA−CDI−DMAサンプルの31P NMR 242.9 MHzスペクトルの積層プロットを示す。いくつかのシグナル表示が示されている。
【図4】図4は、比色分析の比較をするためのavDP vs.時間の図および31PNMRの分析方法を示す。
【図5】図5は、長時間2℃〜8℃にあった天然のMenA糖および修飾MenA糖のavDPを示す。
【図6】図6は、298KでのMenA−CDI−DMAの標識された1H NMR 600 MHzスペクトルを示す。いくつかの設定が示されている。
【図7】図7は、MenA、MenA−CDIおよびMenA−CDI−DMAオリゴ糖をコーティング剤として使用して実施した競合的ELISAテストの結果を示す。競合剤の濃度は、100〜10−7mg/mlの範囲である。
【図8】図8は、MenAオリゴ糖の結合のための反応のスキームを図示する。
【図9】図9は、活性化修飾MenAの25℃における600 MHz 1H NMRスペクトルを示す。いくつかのシグナル表示が示されている。
【図10A】図10Aおよび図10Bは、活性化MenAの25℃でのヘテロ相関1H、13CNMRスペクトルを示す。図10Aと図10Bとの両方において、X軸は、おおよそ左は5.7ppmから右は1.8ppmまでと走っている。図10Aにおいて、Y軸は、おおよそ上は145ppmから下は185ppmまで走る;図10BにおいてY軸は、おおよそ上は5ppmから下は105ppmまで走っている。
【図10B】図10Aおよび図10Bは、活性化MenAの25℃でのヘテロ相関1H、13CNMRスペクトルを示す。図10Aと図10Bとの両方において、X軸は、おおよそ左は5.7ppmから右は1.8ppmまでと走っている。図10Aにおいて、Y軸は、おおよそ上は145ppmから下は185ppmまで走る;図10BにおいてY軸は、おおよそ上は5ppmから下は105ppmまで走っている。
【図11】図11は、活性化修飾MenA DP4および活性化した天然なMenA DP4(CDIおよびDMAによる化学的修飾を有さない)の重ね合わせた1H NMRスペクトルを示す。
【図12】図12は、活性化修飾MenAの25℃における243 MHz 31P NMRスペクトルを示す。
【図13】図13および図14は、4週間にわたって37℃で置いた結合体の加水分解に起因する遊離な糖の出現を示す。修飾糖は、四角として示され、天然な糖は、中抜きの三角で示される。
【図14】図13および図14は、4週間にわたって37℃で置いた結合体の加水分解に起因する遊離な糖の出現を示す。修飾糖は、四角として示され、天然な糖は、中抜きの三角で示される。
【図15】図15は、4週間の間、種々のpHで37℃で置いた結合体の加水分解に起因する遊離な糖の出現を示す。それぞれの対の左カラムは天然の糖を示す。
【図16】図16は、ロット3、ロット5、およびロット002011結合体(左から右)により誘導された抗−MenA−pS IgGの力価を示す。バーは、95%の信頼限界を示す。
【図17】図17は、MenAの修飾結合体およびMenAの非修飾結合体(ロット3、5、および002011)での免疫化からのプール血清のIgGのサブクラスの分析を示す。値は、OD405nmに1000をかけた値である。
【図18】図18は、競合剤としてMenA pSを使用した競合的ELISAの結果を示す。Y軸は、OD405nm値に1000をかけた値を示す。X軸は、血清希釈の逆数を示す。非修飾MenAオリゴ糖は、丸で示されている;修飾糖は四角(ロット3)および三角(ロット5)で示されている。中抜きのシンボルは、競合剤である多糖無しでのデータを示している;塗り潰したシンボルは、競合剤である多糖の存在下でのデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0125】
(発明を実施する形態)
(MenAオリゴ糖の修飾)
莢膜多糖はMenAから精製され、MenAオリゴ糖を得るために加水分解された。多糖(2g)が、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.75)中、10mg/mLの多糖濃度で50℃、約4時間で加水分解された[86]。加水分解の後、溶液はロータリーエバポレーションによって乾燥された。
【0126】
オリゴ糖は、スキーム1で示された反応スキームを使用して活性化された。オリゴ糖は、10mg/mLの糖濃度になるようDMSO中に溶解された。1:20のオリゴ糖:CDIのモル比に従って、21.262gのCDI(SigmaTM)を次いで加え、反応混合物を、室温で16時間攪拌した。生じたMenA−CDI化合物は、80:20(v/v)アセトン:DMSO混合物における選択的な沈殿、その後の遠心分離により精製された。活性化反応の効率は、遊離イミダゾールと結合イミダゾールの比を決定することにより、約67.9%と算出された。
【0127】
第2の反応工程において、MenA−CDIオリゴ糖は、約10mg/mLの糖濃度でDMSO中に可溶化された。1:100のMenA−CDI単位:DMAのモル比に従って、36.288gの99%ジメチルアミン塩酸塩(SigmaTM)を加え、反応混合物を、室温で16時間攪拌した。反応生成物を凍結乾燥し、10mg/mL水溶液に再び溶解した。
【0128】
オリゴ糖調製由来の低分子量反応試薬(特に、ジメチルアミン(DMA))を除くため、透析の工程は3.5kDa MWCO膜(Spectra/Por(登録商標))を通して実施された。4つの透析の工程が実施された:(i)16時間vs.2Lの1M塩化ナトリウム(透析因子1:20)、(ii)16時間vs.2Lの0.5M塩化ナトリウム(透析因子1:20)、(iii)および(iv)16時間vs.2LのWFI(透析因子1:20)。精製を改善するために、透析の工程はまた、1kDa MWCO膜(CentriconTM)を通しても実施された。
【0129】
精製されたMenA−CDI−DMA生成物は、25mM L−ヒスチジン(FlukaTM)中pH6.5で緩衝化された。
【0130】
MenAおよびMenA−CDI−DMA生成物の安定性は、平均の重合の度合い(avDP)を決定するための比色分析方法およびNMR方法を使用して評価された。サンプルは、25mM His緩衝液(pH6.5)中、ガラスバイアル中で3つの温度(37℃、49℃、または57℃)のうちの1つで96時間インキュベートされた。そして、インキュベーション期間の終わりで、サンプルは4℃で保存された。
【0131】
(比色分析安定性研究)
化学的avDPは、[Pt]/[Pme]の比によって表わされる。ここで、[Pt]は、全てのリン濃度であり、[Pme]は、全末端モノエステルリン酸の濃度である。[Pt]は、参考文献132で記載されているように、比色分析で決定された。[Pme]は、ポテト酸脱リン酸酵素[133]での酵素反応により放出される無機リン酸Piの測定により決定される。
【0132】
図1および図2は、MenAおよびMenA−CDI−DMAのavDPSを時間(t)の関数として示す。
【0133】
糖加水分解の速度定数(k)(avDPの低下として図1および図2で見られる)は、参考文献134で記載されているように分析された。2つの異なる局面が分析された:
−標準的な動態方程式におけるavDPおよびtの関数としてのk;次いで
−Arrhenius等式における頻度因子(A)活性化エネルギー(ΔGa)および温度(T)の関数としてのk。
【0134】
加水分解は、良好な一次の速度式で、完全に進行したと想定した。
【0135】
【数1】
【0136】
ここで、t=0でavDP0=avDP
対数的な形式は:
lnavDP=lnavDP0−kt
であり、kは、lnavDP=f(t)プロットの傾きとして定義される。
【0137】
Arhenius等式は、種々の温度値での速度定数と加水分解反応についての活性化エネルギーとの間の相関を示す:
k=Aexp(−△Ga/RT)
lnk=lnA−△Ga/RT
ここでR=8.314×10−3KJ/mol K
ΔGaは、温度の逆数(1/T)の関数であるlnkをプロットすることにより得られる直線の傾きから算出される。本研究において、本発明者らは、活性化エンタルピーおよび活性化エントロピーからの単一寄与の分離をせずに、加水分解反応の全ての活性化エネルギーだけを分析した(ΔGa=ΔHa+TΔSa)。
【0138】
表1は、比色分析のavDPのデータおよび種々の温度での加水分解反応の速度定数をまとめる:
【0139】
【表1】
【0140】
37℃、49℃および57℃で得られた速度定数のArrheniusプロットは、25mM His緩衝液(pH6.5)における加水分解反応の活性化エネルギーは、MenAに対しては50.1KJ/mol(12.0Kcal/mol)、そしてMenA−CDI−DMAに対しては94.9KJ/mol(22.7Kcal/mol)であることを示す。Arrheniusプロットの直線最小二乗回帰により概算される標準誤差は、ΔGa値に対して±5.0KJ/mol(±1.2Kcal/mol)である。従って、本発明の修飾多糖は、対応する非修飾糖の約2倍安定である。
【0141】
(NMR安定性研究)
比色分析方法により得たavDPを検証するために、31P NMR分析実験が実施された。avDPデータは、PmeシグナルとPin chainシグナルとの間の集積比により算出される(図3を参照)。
【0142】
1Hおよび31P NMRサンプルは、10〜15mM濃度の溶液を得るため、0.75mlの99.9%D2O(AldrichTM)中で、凍結乾燥されたオリゴ糖を溶解することで調製された。すべての実験において、5mm WilmadTM NMRチューブが使用された。NMRスペクトルは、298Kで、BGU単位を備えるBrukerTM NMR Spectrometer Avance DRX 600MHzで記録された。自己遮蔽されたz−勾配を有する5mm TBI三重共鳴プローブが使用された。データ処理のために、Bruker XWINNMR3.0ソフトウェアが使用された。1H標準スペクトル獲得条件は、4回の走査、600Hzのスペクトルウィンドウ上で32kのデータポイントを収集することである。1H NMRスペクトルは、0.1Hz線広がり関数(line broadening function)に適用された後、Fourier変換され、1.91ppmでの酢酸陰イオン共鳴または、1重水素化水の4.72ppmでの共鳴に関して参照された。31P標準スペクトル獲得条件は、128回の走査、3000Hzのスペクトルウィンドウ上で32kのデータポイントを収集することである。2.0Hz線広がり関数(line broadeningfunction)が使用された。
【0143】
図4で示すように、比色分析方法および31P NMR方法は、わずかな低下変換のみが明らかだが、全ての温度の値に対して一致している(ln avDP=f(t)の影響なし)。
【0144】
比色分析方法分析および31P NMR方法分析の結果は、表2で要約されている:
【0145】
【表2】
【0146】
Pmeスペクトルの形による分析を改善することによって、2つの異なる分子種が現れることが観察される(図3参照)。低い速度定数の速さは、上昇フィールドシグナルについて明らかである。
【0147】
低い温度(例えば、代表的な保管温度である2〜8℃)で得られたデータの外挿によって、これらデータの時間尺度を2年、外挿することが可能である(図5を参照)。
【0148】
これら検査によって、得たMenAおよびMenA−CDI−DMAの安定化における結果の比較により、修飾生成物の安定性の有意な上昇が観察される。より長い時間尺度への外挿は2年間のその生成物の分布を許容するよう、MenA−CDI−DMAの分解が、有意に減少したことを示す。
【0149】
(構造的特徴)
図6は、298KでのMenA−CDI−DMAサンプルの1H NMRスペクトルを、指示的なシグナル割り当て(indicative signal assignmlnt5)と共に示している。NMRプロファイルは、MenAオリゴ糖とMenA−CDI−DMAオリゴ糖との間の高度な類似性を示す。遊離なDMAの1H−メチルDNAシグナルが、2.6ppm〜3ppmスペクトル領域において観察される。2.73ppmのピークは、溶液での残留試薬としての遊離なDMAの1H−メチルに対応する。2.91ppmのピークは、オリゴ糖鎖への1H−メチルDMA結合として、暫定的に割り当てられる。
【0150】
31P NMRプロファイルは、MenAオリゴ糖と類似している。Pmeシグナルの短い低磁場シフト変動だけが観察される(図3を参照)。
【0151】
従って、本発明の修飾糖は、対応する天然の多糖に構造的に類似している。この類似性は、抗原性および免疫性が影響されていないことを示す。
【0152】
(競合的ELISAアッセイ)
競合的ELISAアッセイが、MenAオリゴ糖、MenA−CDIオリゴ糖、およびMenA−CDI−DMAオリゴ糖を、特定の抗体を置換するその能力と共に相関するよう使用された。競合剤の濃度(mg/mL)の関数としての阻害%のプロットが、図7に示されている。すべてのサンプルは、10−1mg/mLの競合剤濃度で約100%の阻害に到達するという、類似した挙動を示した。
【0153】
この結果は、本発明を使用する糖の修飾が、抗原性の損失を生じないことを確証している。
【0154】
(結合)
修飾MenA糖(MenA−CDI−DMA)は、図8に要約されているプロセスによりCRM197タンパク質に結合される。結合のプロセスにおける標準的な工程は:
−オリゴ糖フラグメントを得るための、MenA多糖の加水分解の工程
−オリゴ糖フラグメントのサイズ処理の工程
−サイズ処理されたオリゴ糖での末端アルデヒド基の還元アミノ化工程
−CDI反応の前の、Fmoc基による末端−NH2基の保護工程
−DMA反応中の−NH2基の内因性の脱保護工程
−SIDEA(N−ヒドロキシコハク酸アジピン酸)による末端−NH2基の活性化工程
−CRM197タンパク質への共有的な付着工程
である。
【0155】
(a)加水分解)
MenA多糖は50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.75)中、73℃で、約3時間で加水分解した。総有機リンとモノエステルリン酸との間の比(w/w)によって決定される平均的な重合度合い(DP)(約15)のオリゴ糖を得るために、加水分解を調節した。
【0156】
(b)サイズ処理)
この工程は、加水分解プロセスの間に生じるオリゴ糖の定義された集団を選択する。上で得られた加水分解生成物を、保持液部分での長い長さの鎖を除くために、30kDaのカットオフ膜を通した限外濾過(5mMリン酸緩衝液(pH6.5)のダイアフィルトレーションの12倍容積)した。
【0157】
(c)還元末端での第1級アミノ基の導入)
酢酸アンモニウムを、サイズ処理されたオリゴ糖溶液に、最終濃度が300g/Lとなるよう加えた。それから、シアンホウ化水素を最終濃度73g/Lまで加えた。pHを6.5±0.2に調節した後、混合物を、37℃で5日間、インキュベートした。
【0158】
次いで、アミノ−オリゴ糖を、0.5M NaClの13倍容積を使用して3kDaのカットオフ膜を通した限外ろ過により精製した。この工程は、短い長さの糖鎖(DP<6〜7)を除去し、約15の最終的な平均重合度合いがを与える。
【0159】
保持液部分を、4倍容積の10mM TAB(テトラブチル臭化アンモニウム)でダイアフィルトレーションし、次いで、Na+をTAB+と交換するために、7倍容積の水でダイアフィルトレーションした。正の有機イオンは、DMSO(次の誘導体化の工程に必要)における糖の安定性を約10g/Lへと改善する。
【0160】
精製されたオリゴ糖を、水を除去するためにロータリーエバポレーターにより乾燥し、次いで、約10g/Lの濃度でDMSO溶媒に溶解した。
【0161】
精製されたアミノ−オリゴ糖溶液を、Chen[132]の手順によりリン含有量に対して分析し、Habbeb[135]の手順により導入されたアミノ基の量を分析した。
【0162】
短い鎖の糖の除去のための限外ろ過の代替方法として、Qセファロース高速カラムが使用された。しかし、その結果SP−セファロース(PharmaciaTM)カラムへのさらなる交換のプロセスが、Na+/TAB+変換に影響するために必要となる。
【0163】
(d)Fmoc試薬での末端アミノ基の保護)
アミノ−オリゴ糖を、モル比−NH2:Fmoc−OSu=1:20に従って、Fmoc−OSu(N−9−フルオレニルメトキシカルボニルオキシ(Sigma))と反応させた。混合物を、室温で攪拌しながら一晩インキュベートし、アセトン(80%v/v最終濃度)で沈殿させた。沈殿物を、遠心により収集し、未反応のFmoc−OSu試薬を除去するために、アセトンで数回洗浄した。
【0164】
(e)CDIおよびDMA試薬での安定化反応)
保護されたアミノ−オリゴ糖を、DMSO中10g/Lで溶解し、CDI:総リンのモル比が20:1となるようCDIに加えた。混合物を、室温で攪拌しながら一晩インキュベートし、アセトン(80%v/v最終濃度)で沈殿させた。沈殿物を、遠心により収集し、未反応のCDI試薬を除去するために、アセトンで数回洗浄した。
【0165】
得られた生成物を、DMSO中10g/Lで溶解し、DMA:総リンのモル比が20:1であることに従って、エタノール中のDMAの溶液(約5.6M)に加えた。混合物を、室温で攪拌しながら一晩インキュベートし、アセトン(80%v/v最終濃度)で沈殿させた。沈殿物を、遠心により収集し、未反応のDMA試薬を除去するために、アセトンで数回洗浄した。
【0166】
次いで、精製されたオリゴ糖を、微量の有機溶媒を除去するために真空下で乾燥させた。
【0167】
(f)クロマトグラフィーのイオン交換)
乾燥したオリゴ糖を、水中に10g/Lで溶解し、TAB+/Na+変換を実施するために、1M NaClで平衡化されたSP−セファロース高速(PharmaciaTM)カラムに充填した。次いで、カラムを、樹脂に吸着した微量の生成物を回復するために、5倍のカラム容積(CV)の水で洗浄した。次いで、オリゴ糖を、ロータリーエバポレーターで乾燥し、水を除去した。
【0168】
(g)活性化エステルの誘導体化)
乾燥した生成物を、水中に40mMアミノ基濃度で溶解し、次いで、9倍のDMSOを加えた。その後、TEA(トリエチルアミン)を最終濃度200mMで加えた。生じた溶液に、最終濃度480mMで、アジピン酸N−ヒドロキシコハク酸ジエステル(SIDEA)を加えた。
【0169】
室温で2時間攪拌しながら、反応を維持した。次いで、活性化オリゴ糖を、アセトン(最終濃度80%v/v)で沈殿させた。沈殿物を、遠心により収集し、未反応のSIDEAを除去するために、アセトンで数回洗浄した。
【0170】
次いで、精製されたオリゴ糖を、溶媒を除去するために真空下で乾燥させた。
【0171】
オリゴ糖構造へ導入された活性化エステル基の量を、参考文献136で記載されているように、比色分析方法により決定した。
【0172】
活性化オリゴ糖を、上記したように1H NMRにより分析し、化学的修飾を確証した。以前の実験で確立されたプロトンNMRプロファイルを、生成物の幾つかのロットを評価するために使用した。糖のシグナルは、1D(図9)および2Dヘテロ−相関(1H、13C;図10Aおよび図10B)NMRスペクトルの検査により割り当て、修飾MenAの特徴であると示した。
【0173】
約5mgのそれぞれのサンプルを750μLのD2Oに溶解し、Bruker Avance600 MHzスペクトロメーターでスペクトルを記録した。
【0174】
CH3DMA基とH1糖環の比の検査は、70%〜75%の間の安定化した反応収量を提供する。
【0175】
修飾糖のプロトンプロファイルは維持されており、O−アセチルの状態および高次構造に関する実質的な修飾は、NMR分析からは明らかではない。しかし、カルバミン酸基は、局所的な磁場を変化させる。従って、1H NMRスペクトルの割り当ては、複雑である。
【0176】
図11において、修飾MenAオリゴ糖および天然のMenAオリゴ糖の、上書きスペクトルが示されている。C3およびC4環の位置でのカルバミン酸基は、他の核(例えば、H1)よりも近いために、H3、H4およびH2シグナルの低磁場シフト変動が、明らかである。他の変動は、スペクトルから示唆されるが、それらの割り当ては完全に確かではない。
【0177】
図12は、化学的誘導体化が、31P NMRスペクトルでのいかなる変化も引き起こさないことを示している。
【0178】
(h)CRM197への結合)
乾燥した活性化オリゴ糖を、12:1のエステル基:タンパク質のモル比に従って、10mMリン酸緩衝液(pH7.2)中の45mg/mLのCRM197溶液に加えた。室温で一晩、攪拌しながら、反応を維持した。次いで、得られた結合体を、50倍容積の10mMリン酸緩衝液(pH7.2)を使用した30kDaのカットオフ膜を通した限外ろ過により精製した。生成物を無菌ろ過し、ワクチンの処方まで−20℃で保存した。
【0179】
精製された結合体を、タンパク質の含有量(マイクロBCA タンパク質アッセイ)、糖の含有量(比色分析的なリンの決定)、遊離な糖の含有量(クロマトグラフィー分析)、HPLCプロファイル(TSKgel G4000SWXL 7.5mm IDx30cm上で)、NMRプロファイルおよびSDS−PAGEについて分析した。
【0180】
(結合体の時間依存的な安定性)
MenA−CDI−DMAオリゴ糖のCRM197結合体の安定性は、37℃で4週間保存している間の加水分解による溶液での遊離な糖の出現をモニタリングし、非修飾MenAオリゴ糖のCRM結合体と比較して評価した。
【0181】
遊離な(すなわち非結合体化)糖は、非結合体化鎖を単離するためのISOLUTETM C4カートリッジカラム(ISTTM)での逆相クロマトグラフィー、を使用し、次いでHPAE−PADクロマトグラフィーで浸透した糖により決定した。
【0182】
糖の総量(すなわち結合体化および非結合体化の両方)は、N−アセチルマンノースアミンホスフェートの定量的分析のための方法により決定する。この方法は、パルス電流測定器を備えた高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAE−PAD)を使用する[137]。
【0183】
非結合体化糖の、糖の総量への比はパーセンテージ(%FS)で表現されている。
【0184】
第1の実験において、%FSは以下(図13)のように生じ:
【0185】
【表3】
【0186】
第2の実験において、結果は以下(図14)のようであった:
【0187】
【表4】
【0188】
修飾MenAオリゴ糖の結合体は、対応する天然の結合体よりも、高い温度で、加水分解に対して明らかに抵抗性である。例えば、37℃で28日後、放出された糖のパーゼンテージは、修飾オリゴ糖では、6.4%であり、対して天然な糖では23.5%である。
【0189】
修飾MenA糖を使用したロットからロットの一貫性の試験のためのさらなる研究において、37℃で8週間、結合体からの遊離な糖の出現をモニタリングした。これらの3つのロットの結果は以下の通りであった:
【0190】
【表5】
【0191】
従って、修飾結合体は、延長された期間にわたって安定である。通常以上の温度においても、12%未満の遊離な糖のレベルは、許容限界内である。
【0192】
(結合体のpH依存的な安定性)
修飾MenAオリゴ糖の結合体および非修飾MenAオリゴ糖の結合体の安定性を、37℃で28日間保存した後、pH6.0〜8.0の間の異なるpHでの遊離な糖の出現をモニタリングすることにより試験した。修飾(ロット5)オリゴ糖および非修飾(ロットRS040101)オリゴ糖を比較した。また、0〜28日の間での遊離な糖(A%FS)の上昇は以下(図15)の様である:
【0193】
【表6】
【0194】
従って、pH6.5〜pH7.5の間で修飾MenA結合体は、天然のMenAオリゴ糖の結合体よりも、かなり低い加水分解反応速度を示す。カルバミン酸安定化基が除去されるpH8.0では、その効果はそれほど顕著ではない。
【0195】
(修飾結合体の免疫原性)
精製された修飾MenAオリゴ糖のCRM197結合体を、修飾が、糖の免疫原性を除去しないことを立証するために、マウスを免疫するよう使用した。
【0196】
0.5ml容積における10μgの糖の単一ヒト投与量(SHD)を与えるように、ワクチンを処方した。2種類の処方物が作製された:液体処方物および凍結処方物。両方が、最終的な投薬形態において0.6mgAl3+/mlでリン酸アルミニウムアジュバントを含む。アジュバントの水性懸濁液を、凍結処方物を再構成するために使用した。
【0197】
修飾オリゴ糖結合体の溶液処方物を、天然の(すなわち、非修飾の)オリゴ糖結合体の凍結処方物と比較した。
【0198】
マウスをSHDの1/5で免疫した。それぞれの免疫の前にワクチンを生理食塩水で希釈した。免疫化群あたり10匹のBalb/cマウス(メス、6〜8週齢)に、時間0、次いで4週間後に0.5mlのワクチンを皮下注射した。第1の免疫の前および6週間目(前および後−II血清)に血液を採取し、血清を−70℃で保存した。
【0199】
(抗多糖力価)
いくつかの小さい変化を伴った動物血清分析に適応させたMenAヒト血清分析[138]のためのCDC手順に従って、特定の抗MenA多糖総IgG抗体を、免疫された動物の血清において測定した。
【0200】
それぞれ個々のマウス血清を、滴定曲線により二連で分析した。免疫化群についてGMTを算出した。抗MenA多糖力価は、MEUの計算のために使用されるReference Line Assay Methodに基づいたソフトウェアを装備するMouse Elisa Units(MEU)で表現した。
【0201】
IgGのサブクラス分析を、アルカリホスファターゼ抗マウスIgG1、IgG2a、IgG2bまたはIgG3(Zymed)をELISAの手順における第2の結合体として使用して、プールした免疫化群の後−II血清で実施した。力価は、基質発色の30分後のプールされた後−II血清の1:3200希釈で得られるOD405nmとして表現した。
【0202】
図16は、MenA修飾結合体の2つのロット(ロット3および5)により誘導され、リン酸アルミニウムアジュバントを使用した非修飾MenA結合体(ロット002011)と比較した、抗MenA−pS IgG力価(GMT)を示す。両方の修飾結合体は、非修飾MenA結合体によって誘導される力価と非常に類似した力価を誘導した。
【0203】
図17は、修飾MenA結合体および非修飾MenA結合体での免疫化からのプールされた血清(1:32000で希釈)のIgGサブクラスの分析を示す。全ての血清における最も代表的なサブクラスは、IgG1である。IgG1は、T−依存的な抗原がタンパク質として提示された場合、マウスで主に誘導されるサブクラスである。生来、MenA莢膜糖は、T独立抗原であり、免疫学的記憶を誘導し得ない。この結果は、結合体がその目的を達成していることを示す。
【0204】
抗MenA pS力価の特異性は、最終濃度25μg/mlでMenA pSを競合剤として使用する競合的ELISAによって決定した。図18で示すように、修飾結合体および非修飾結合体により誘導される力価の非常に良好な抑制が存在する。これは、全ての結合体が、抗MenA pS特異的な力価を誘導し得ることを示す。
【0205】
(N.meningitidis血清型Aに対する血清殺菌アッセイ(SBA))
結合体での免疫化により誘導される抗体の機能を、細菌の補体−媒介性溶解を測定するために、インビトロ殺菌アッセイにおいて分析した。
【0206】
免疫化された群のそれぞれについてのプールされた後−II血清を用いた。アッセイでの使用の前に56℃で、30分間、血清を不活性化した。25%子ウサギ補体を、補体の原料(Pel Freeze)として使用した。殺菌力価は、細菌の50%の死滅を生じる血清の希釈の逆数として表現した。2つの血清型A株に対する活性を試験した:F8238およびF6124。
【0207】
力価は以下のようであった:
【0208】
【表7】
【0209】
従って、全ての3つの結合体は、両方の株に対して良好な殺菌力価を誘導する。また、修飾オリゴ糖により誘導された力価は、天然の糖構造を使用して得た力価に比べて有意に低くは無い。しかし、有利なことには、修飾オリゴ糖は、天然のオリゴ糖よりも有意に安定である。従って、本発明は、天然のMenA莢膜糖の免疫原性を保持するが、保存の間の加水分解に対し改善された抵抗性を提供する抗原を提供する。
【0210】
本発明は、例としてのみ上記されており、本発明の範囲および趣旨内にありつつ、改変がなされることが、理解される。
【0211】
(参考文献(その内容は、本明細書中に参考として援用される))
【0212】
【表8−1】
【0213】
【表8−2】
【0214】
【表8−3】
【0215】
【表8−4】
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば以下の修飾莢膜糖、組成物、方法などが提供される:
(項目1)
対応する天然の莢膜糖の少なくとも1つの単糖単位におけるヒドロキシル基の位置での保護基を含む、修飾莢膜糖。
(項目2)
項目1に記載の修飾莢膜糖であって、前記少なくとも1つの単糖単位が、非末端単糖単位である、修飾莢膜糖。
(項目3)
項目1または2に記載の修飾莢膜糖であって、少なくとも1つの遊離ヒドロキシル基またはアミノ基を含む、修飾莢膜糖。
(項目4)
項目3に記載の修飾莢膜糖であって、前記少なくとも1つの遊離ヒドロキシル基が、末端アノマーヒドロキシル基である、修飾莢膜糖。
(項目5)
項目1に記載の修飾莢膜糖であって、前記保護基が、電子吸引性基である、修飾莢膜糖。
(項目6)
項目1または2に記載の修飾莢膜糖であって、前記保護基が以下の式であり:
−O−X−Y または −OR3
ここで、Xは、C(O)、S(O)、またはSO2である;
Yは、C1〜12アルキル、C1〜12アルコキシ、C3〜12シクロアルキル、C5〜12アリールまたはC5〜12アリール−C1〜6アルキルであり、必要に応じて、それぞれは、別個にF、Cl、Br、CO2H、CO2(C1〜6アルキル)、CN、CF3、またはCCl3から選択される1、2、または3つの基で置換され得る;あるいは、Yは、NR1R2である;
R1およびR2は、別個に、H、C1〜12アルキル、C3〜12シクロアルキル、C5〜12アアリール、C5〜12アリール−C1〜6アルキルから選択される;または、R1およびR2は、C3〜12飽和複素環基を形成するために連結され得る;
R3は、C1〜12アルキルまたはC3〜12シクロアルキルであり、必要に応じて、それぞれは、別個にF、Cl、Br、CO2(C1〜6アルキル)、CN、CF3、またはCCl3から選択される1、2、または3つ基で置換され得る;あるいはR3は、C5〜12アリールまたはC5〜12アリール−C12アルキルであり、必要に応じてそれぞれは、F、Cl、Br、CO2H(C1〜6アルキル)、CN、CF3、またはCCl3から選択される1、2、3、4、または5つの基で置換され得る、
修飾莢膜糖。
(項目7)
項目3に記載の修飾莢膜糖であって、前記保護基が、−OC(O)NR1R2または−OC(O)CF3である、修飾莢膜糖。
(項目8)
項目4に記載の修飾莢膜糖であって、前記保護基が、−OC(O)NR1R2であり、さらにR1およびR2が、別個に、C1〜6アルキルから選択される、修飾莢膜糖。
(項目9)
項目5に記載の修飾莢膜糖であって、R1およびR2の両方が、メチルである、修飾莢膜糖。
(項目10)
項目1〜9のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖であって、少なくとも10%の前記単糖単位が、保護基を含む、修飾莢膜糖。
(項目11)
項目1〜10のいずれか1項に記載の修飾莢膜糖であって、前記対応する莢膜糖が、ホスホジエステル結合により連結している単糖単位を含む、修飾莢膜糖。
(項目12)
項目11に記載の修飾莢膜糖であって、前記対応する莢膜糖が、Neisseria meningitidis血清型A糖である、修飾莢膜糖。
(項目13)
項目12に記載の修飾莢膜糖であって、前記保護基が、前記対応するNeisseria meningitidis血清型A糖の任意の4位および/または3位にある、修飾莢膜糖。
(項目14)
項目12に記載の修飾莢膜糖であって、前記保護基が、前記対応するNeisseria meningitidis血清型A糖の任意の4位にある、修飾莢膜糖。
(項目15)
オリゴ糖である、項目1〜14に記載の修飾莢膜糖。
(項目16)
以下の式の糖であって
【化1】
ここで、Tは以下の式(A)または(B)である:
【化2】
nは、1〜100の整数である;
各Z基は、別個に、OHまたは項目5〜9に定義されたような保護基から選択される;そして
各Q基は、OHまたは項目5〜9に定義されたような保護基から別個に選択される;
Wは、OHまたは項目5〜9に定義されたような保護基から選択される;
Vは、−NH2または−NHE、から選択され、ここでEは、窒素保護基である;
さらに、該Q基の約7%より多くが保護基である、
糖。
(項目17)
項目16に記載の糖であって、前記Z基の少なくとも50%がOAcである、糖。
(項目18)
項目16または17に記載の糖であって、nが15〜25の整数である、糖。
(項目19)
項目16〜18に記載の糖であって、前記Q基の少なくとも10%が、保護基である、糖。
(項目20)
莢膜糖を修飾するプロセスであって、以下:
(a)単糖単位に少なくとも1つのヒドロキシル基を有する莢膜糖を提供する工程;および
(b)前記の少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基へ変換する工程
を包含する、プロセス。
(項目21)
項目20に記載のプロセスであって、前記保護基が、項目5〜9のいずれか1項に定義された通りである、プロセス。
(項目22)
項目20または21に記載のプロセスであって、前記保護基は、−OC(O)NR1R2であって、工程(b)は以下:
(b1)有機溶媒中で該莢膜糖を二機能性試薬と反応させる工程;および
(b2)工程(b1)の生産物を式(I)のアミノ化合物HNR1R2と反応させる工程であって:
ここでR1およびR2は、項目3、5および6のいずれかの1項に定義された通りである、工程
を包含するプロセス。
(項目23)
項目22に記載のプロセスであって、前記有機溶媒が、非プロトン性溶媒である、プロセス。
(項目24)
項目23に記載のプロセスであって、前記非プロトン性溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ホルムアミド、ヘキサメチルホスホラミド(HMPA)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)またはジメチルアセトアミド(DMAC)から選択される、プロセス。
(項目25)
項目23または24に記載のプロセスであって、前記非プロトン性溶媒が、DMSOである、プロセス。
(項目26)
項目22〜25に記載のプロセスであって、前記二機能性試薬が、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、カルボニルジ1,2,4−トリアゾール(CDT)、カルボニルジ1,2,3−ベンゾトリアゾール(CDB)、ジフェニルカルボネート、臭化シアン、ホスゲン、またはトリホスゲンから選択される、プロセス。
(項目27)
項目26に記載のプロセスであって、前記二機能性試薬が、CDIである、プロセス。
(項目28)
項目20〜27に記載のプロセスであって、前記修飾莢膜糖が、修飾莢膜オリゴ糖である、プロセス。
(項目29)
項目28に記載のプロセスであって、工程(a)における前記莢膜糖が、対応する天然の莢膜多糖のサイズ処理によって入手可能な莢膜オリゴ糖である、プロセス。
(項目30)
項目28に記載のプロセスであって、工程(a)における前記莢膜糖が、天然の莢膜多糖であって、前記プロセスがさらに、工程(b)の生成物がサイズ処理され、これにより修飾莢膜オリゴ糖を提供する工程(c)を包含する、プロセス。
(項目31)
Neisseria meningitidis血清型A多糖を修飾するためのプロセスであって、以下:
(a)天然のNeisseria meningitidis血清型A多糖を提供する工程;
(b)オリゴ糖を提供するために、該多糖のサイズ処理する工程;および
(c)項目21〜27いずれか1項に従って、オリゴ糖の少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基へ変換する工程
を包含する、プロセス。
(項目32)
Neisseria meningitidis血清型A多糖を修飾するためのプロセスであって、以下:
(a)天然のNeisseria meningitidis血清型A多糖を提供する工程;
(b)項目21〜27いずれか1項に従って、該多糖の少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基へ変換する工程;
(c)生じた多糖をサイズ処理する工程
を包含する、プロセス。
(項目33)
項目1〜19に記載の修飾莢膜糖を調製するためのプロセスであって、総合的な合成プロセスが、2つ以上の単糖単位の間のグリコシド結合を形成する工程を含包する、プロセス。
(項目34)
項目20〜33いずれか1項に記載のプロセスによって入手可能である、修飾莢膜糖。
(項目35)
項目20〜33いずれか1項に記載のプロセスによって得られた、修飾莢膜糖。
(項目36)
項目1〜19、34または35のいずれか1項に記載の修飾糖の、糖−タンパク質結合体。
(項目37)
項目36に記載の結合体であって、前記タンパク質が、細菌毒素または細菌トキソイドである、結合体。
(項目38)
項目37に記載の結合体であって、前記細菌毒素または細菌トキソイドが、ジフテリア毒素またはジフテリアトキソイドである、結合体。
(項目39)
項目37に記載の結合体であって、前記細菌毒素または細菌トキソイドが、CRM197である、結合体。
(項目40)
以下の式の糖部分を含む、分子であって:
【化3】
ここで、Tは、以下の式(A)または(B)である:
【化4】
nは、1〜100の整数である;
各Z基は、別個に、OHまたは項目5〜9に定義されるような保護基から選択される;そして
各Q基は、別個にOHまたは求項5〜9に定義されるような保護基から選択される;
Wは、OHまたは項目5〜9に定義されるような保護基から選択される;
Vは、−NH2または−NH−E、から選択され、ここでEは、窒素保護基である;
Lは、O、NH、NE、SまたはSeである;
さらに、該Q基の約7%より多くが保護基である、
分子。
(項目41)
(a)項目1〜19、34または35のいずれか1項に記載の修飾糖および/または項目36〜39のいずれか1項に記載の糖−タンパク質結合体および/または項目40に記載の分子、ならびに(b)薬学的に受容可能なキャリア、を含む、薬学的組成物。
(項目42)
項目41に記載の組成物であって、さらに1種類以上のNeisseria meningitidisの血清型C、W135およびY由来の糖抗原を含み、必要に応じて前記糖は、オリゴ糖であり、必要に応じてキャリアタンパク質に結合させられる、組成物。
(項目43)
項目41または42に記載の組成物であって、ワクチンアジュバントをさらに含む、組成物。
(項目44)
項目43に記載の組成物であって、前記アジュバントが、リン酸アルミニウムである、組成物。
(項目45)
項目41〜44のいずれか1項に記載の組成物であって、Neisseria meningitidisにより引き起こされる疾患に対するワクチンである、組成物。
(項目46)
哺乳動物において、抗体応答を惹起させるための方法であって、哺乳動物に項目41〜45のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目47)
医薬としての使用のための、項目1〜18のいずれか1項に記載の修飾糖。
(項目48)
医薬としての使用のための、項目36〜39のいずれかに1項に記載の結合体。
(項目49)
医薬としての使用のための、項目40に記載の分子。
(項目50)
1種類以上の莢膜細菌により引き起こされる疾患の予防または処置のための医薬の製造における、項目1〜19、34または35のいずれか1項に記載の修飾糖、または項目36〜39のいずれか1項に記載の結合体または、項目40に記載の分子の使用。
(項目51)
項目50に記載の使用であって、前記疾患が、細菌性髄膜炎である、使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10A】
【図10B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図3】
【図6】
【図9】
【図11】
【図15】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10A】
【図10B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図3】
【図6】
【図9】
【図11】
【図15】
【公開番号】特開2010−132925(P2010−132925A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44780(P2010−44780)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2003−578430(P2003−578430)の分割
【原出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
【出願人】(592243793)カイロン ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2003−578430(P2003−578430)の分割
【原出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
【出願人】(592243793)カイロン ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (107)
【Fターム(参考)】
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