説明

水中ポンプオイル監視装置

【課題】 オイル室への浸水とオイルの漏洩を安定的に信頼性高く検出するとともに、オイル減少により軸封装置のトラブルが発生することなく運転を継続でき、また、ポンプを水中から引き上げることなくオイルを補充することができる水中ポンプオイル監視装置を提供する。
【解決手段】水中ポンプ10のモータ回転軸11に取り付けた軸封装置12を内蔵するオイル室13への浸水及びオイル17の漏洩を監視する水中ポンプオイル監視装置Aは、地上14に設置したオイルタンク15と、オイルタンク15とオイル室13とを連通連結する連通配管16と、オイルタンク15に取り付け、オイルタンク15内のオイル17の液位の変動を検出する液位検出センサ18とを具備する。上記した構成によって、液位検出センサ18の検出出力に基づいて浸水及びオイルの漏洩を監視することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ回転軸に取り付けた軸封装置を内蔵するオイル室への浸水及びオイルの漏洩を監視するために用いる水中ポンプオイル監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中ポンプは、インペラや攪拌羽根等を回転駆動するためモータを内蔵しており、その際、モータへのポンプ圧力水の浸水を防止するため、メカニカルシール等の軸封装置を、モータとインペラケーシングとの間に配設されたオイル室内に取り付け、オイル室内に封入したオイルで潤滑している。
また、同一または別の軸封装置によりオイル室内のオイルがモータ室内に侵入するのを防止している。
このような軸封装置、特に軸封装置としてメカニカルシールを用いた場合、正常動作時であっても、微量な漏れがあるため、通常はポンプ圧力水が徐々にオイル室内に漏れ入るが、揚程の低いポンプ等はインペラ裏側が負圧になることがあり、この場合には、オイルがインペラ側に徐々に漏れ出て、オイルレベルが低下する。また、軸封装置が故障すると水漏れ量は急激に増大する。
オイル室への水の浸入は、モータ室への水の侵入を防ぐ上から、一定量に制限する必要がある。また、オイル室内のオイルレベルが過度に低下すると、軸封装置の摺動面の磨耗、焼付き等が発生し、軸封装置が故障するため、浸水の検出とともにオイルレベルの監視も安定的な運転のために必要である。なお、軸受の熱伝導や軸封装置の摺動熱によるオイルの熱膨張によるオイル室内の異常圧発生を防止するため、オイルの封入量は、通常、オイル室容積の80%に制限している。
【0003】
従来、このような軸封装置における浸水検出装置として、電極棒方式が一般的に採用されている。この方式は、ポンプのオイル室内に電極棒を絶縁状態で設置した後オイル室内にオイルに封入し、電極棒とポンプ金属部材との間に電圧を印加し、オイル室内に水が浸入すると両者間に微弱電流が流れる現象を利用して浸水を検知する方法である。即ち、この電流値が一定値を超えることを感知して接点を閉じる制御ユニットを用いて、制御盤等に設けたブザー、異常表示ランプ等を作動させる。
また、下記特許文献1に記載されているように、上記した検出装置と同様な構成を有する検出装置を用いて、漏電遮断器を作動させ、ポンプの運転を自動停止する方法も提案されている。
しかし、上記した従来の浸水検出装置は、いずれも、専ら浸水のみを検出するための装置であり、オイルの減少は検出できないため、オイルの減少によるトラブルを防止することはできなかった。
この点に鑑み、下記特許文献2は、一つの浸水検知器によって浸水とオイルの漏洩の両方を検知できる検出装置を提案している。
【0004】
【特許文献1】特開2002−310091号公報
【特許文献2】特許第3122011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載されている発明にあっては、オイル室(メカニカルシール室)内のオイルが、運転中は軸及びメカニカルシール回転環の回転により静止状態にはなく、液面が乱雑に変動するため、オイルの減少を検出するには信頼性に欠ける問題点がある。また、オイルの減少が検出されたとしても、それに対処するためには、ポンプの運転を停止して水中から引き上げ、オイルの補充を行わなければならないという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記した問題点を解決でき、オイル室への浸水とオイルの漏洩を安定的に信頼性高く検出するとともに、オイル減少により軸封装置のトラブルが発生することなく運転を継続でき、また、ポンプを水中から引き上げることなくオイルを補充することができる水中ポンプオイル監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明においては、水中ポンプのモータ回転軸に取り付けた軸封装置を内蔵するオイル室への浸水及びオイルの漏洩を監視する水中ポンプオイル監視装置において、地上に設置したオイルタンクと、オイルタンクとオイル室とを連通連結する連通配管と、オイルタンクに取り付け、オイルタンク内のオイルの液位の変動を検出する液位検出センサとを具備し、液位検出センサの検出出力に基づいて浸水及びオイルの漏洩を監視可能としている。
【0008】
上記した構成によって、オイル室への浸水によってオイルタンク内のオイルの液位が設定位置まで上昇した場合には、液位検出センサの検出出力に基づいて、例えば、警報装置が作動し、警報を鳴らす。これによって、水中ポンプの軸封装置の補修、交換等の適切な対策を採ることができる。一方、オイル室内のオイルの漏洩によってオイルタンクのオイルの液位が設定位置まで下降した場合には、液位検出センサの検出出力に基づいて、例えば、警報装置が作動し、警報を鳴らす。これによって、水中ポンプの軸封装置を内蔵するオイル室にオイルを補充する等の適切な対策を採ることができる。
また、万一、オイルタンク内のオイルが全量漏洩したとしても、オイルタンクの下方に位置するポンプオイル室内は常にオイルで満たされているため、軸封装置のオイル切れは発生せず、水中ポンプを継続して運転することができる。従って、水中ポンプを引き上げることなく、オイルを補充することができる。
また、液位検出センサは、水中ポンプ内に装備するものではなく、地上のオイルタンクに設置するため、外形寸法の制約が少なく、市販の安価なセンサを使用することができる。
さらに、オイルタンクは、地上に設置されているので、ポンプ回転部が配置されているオイル室から離れているため、オイルタンク内のオイルの液位は静止状態にあり、安定したかつ信頼性の高い液位検出を行うことができる。
【0009】
また、上記した構成を有する水中ポンプオイル監視装置において、本発明は、液位検出センサによる前記液位の変動の検出を、複数の浸水検出用の液位検出設定位置と、複数のオイル漏洩検出用の液位検出設定位置に基づいて行うようにしたことにも特徴を有する。即ち、本発明は、液位検出センサによる前記液位の変動の検出を、例えば、「浸水注意」、「浸水」、「オイル減少注意」、「オイル減少」の4つの液位検出設定位置に基づいて行うことができる。
この場合、レベルの検出設定位置を、段階的に「浸水注意」、「浸水」、「減少注意」、「減少」としたことによって、効率よく軸封部の状態を把握でき、経済的に軸封部の交換管理を行うことができる。
【0010】
また、上記した構成を有する水中ポンプオイル監視装置において、本発明は、オイルタンクの上部にオイルタンクの内部空間と連通すると共に内部空間より狭い横断面積を有する液面検出部を設け、オイルを液面検出部に達するまで内部空間に封入し、液面検出部に液位検出センサを取り付けたことを特徴とする。
この場合、液面検出部における液位の変化を大きくすることができ、液位検出を正確に行うことができ、軸封部をより正確に監視することができる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明に係る水中ポンプオイル監視装置は、地上にオイルタンクを設置すると共に、オイルタンクに液位検出センサを取り付けることによって、オイル室への浸水とオイルの漏洩の両方を安定的にかつ信頼性高く検出するとともに、オイル減少により軸封装置のトラブルが発生することなく運転を継続でき、また、ポンプを水中から引き上げることなくオイルを補充することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に示す幾つかの実施の形態を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
(第1実施例)
図1に示すように、本実施例に係る水中ポンプオイル監視装置Aは、水中ポンプ10のモータ回転軸11に取り付けた軸封装置12、12aを内蔵するオイル室13と、地上14に設置したオイルタンク15と、オイル室13とオイルタンク15とを連通連結する連通配管16と、オイルタンク15に取り付け、オイルタンク15内のオイル17の液位の変動を検出する液位検出センサ18とを具備し、液位検出センサ18の検出出力に基づいてオイル室13内における浸水及びオイル17の漏洩を監視可能な構成としたことを特徴とする。
【0013】
以下、上記した水中ポンプオイル監視装置Aの各部の構成について詳細に説明する。
水中ポンプ10は、モータ20を水密状態に内蔵するモータ室21と、内部にモータ20の駆動によって回転するインペラ22を具備するインペラケーシング23と、モータ室21とインペラケーシング23との間に介設される軸封部24とからなる基本構造を有する。
【0014】
上記基本構造において、軸封部24は、その内部中央部をモータ回転軸11が貫通するオイル室13と、オイル室13とインペラケーシング23及びオイル室13とモータ室21との軸封を図るため設けた軸封装置(本実施例ではメカニカルシールを用いている)12とを具備する。ここで、軸封装置12は、例えば、図2に示すように、モータ回転軸11に沿って上下方向にそれぞれ対称に配置した、インペラケーシング側固定シールリング12aと、モータ室側固定シールリング12bと、インペラケーシング側回転シールリング12cと、モータ室側回転シールリング12dと、両回転シールリング12c、12dとの間に介設したスプリング12e とから構成されたものを用いることができる。なお、インペラケーシング側固定シールリング12aとインペラケーシング側回転シールリング12cとの間、及び、モータ室側固定シールリング12bとモータ室側回転シールリング12dとの間に、それぞれ、シール摺動面が形成される。
一方、地上14に設置したオイルタンク15は、内部空間にオイル17を充填しており、その側壁に設けたオイル流出口25は、フレキシブルホース等からなる連通配管16を介して、オイル室13の側壁に設けたオイル流入口26に連通連結されている。上記した構成によって、オイルタンク15とオイル室13とは常時連通状態にあり、オイル室13内には常時オイル17が充満している。
従って、オイル室13へインペラケーシング23から水が浸水すると、連通配管16を介してオイルタンク15内のオイル17の液位が上昇することになる。一方、オイル室13内のオイルがインペラケーシング23内に漏洩すると、連通配管16を介してオイルタンク15のオイル17の液位が下降することになる。
【0015】
また、本実施例では、オイルタンク15内のオイル17の上記した液位の変動を検出する液位検出センサ18は、オイルタンク15の側壁に縦長のフロート式液面計18aを並設すると共に、フロート式液面計18aの下端をオイルタンク15の下部に連通連結し、オイルタンク15内に設定した「浸水注意」、「浸水」、「オイル減少注意」、「オイル減少」の4つの液位検出設定位置に対応してフロート式液面計18aに近接スイッチSW1、SW2、SW3、SW4を取り付けることによって構成している。また、これらの近接スイッチSW1、SW2、SW3、SW4は、図示しない制御装置を介して警報装置に接続されている。なお、近接スイッチの数は増減することができる。
従って、オイル室13内への浸水やオイル17の漏洩によってオイルタンク15内のオイル17の上記した液位が変動し、それぞれの液位検出設定位置「浸水注意」、「浸水」、「オイル減少注意」、「オイル減少」に達すると、そのことを近接スイッチSW1、SW2、SW3、SW4が検出して、水中ポンプ10の状態を正確に保守管理者等に警報装置を通して速やかに報知することができる。なお、ここで、近接スイッチとしては、金属製のフロートの接近によって作動する近接スイッチを用いることができる。
【0016】
また、図1に示す実施例に係る水中ポンプオイル監視装置Aのその他の構成について説明すると、27はモータ回転軸11の伸延端に固着した土砂等の攪拌に用いる攪拌羽根、28はオイルタンク15の下部に取り付けたオイル交換用のドレインである。
【0017】
次に、上記した構成を有する水中ポンプオイル監視装置Aの作動について説明する。
オイル室13への浸水によってオイルタンク15内のオイル17の液位が設定位置まで上昇した場合には、液位検出センサ18の検出出力に基づいて、例えば、警報装置が作動し、警報を鳴らす。これによって、水中ポンプ10の軸封装置12の補修、交換等の適切な対策を採ることができる。一方、オイル室13内のオイル17の漏洩によってオイルタンク15のオイル17の液位が設定位置まで下降した場合には、液位検出センサ18の検出出力に基づいて、例えば、警報装置が作動し、警報を鳴らす。これによって、水中ポンプ10の軸封装置12,12aを内蔵するオイル室13にオイル17を補充する等の適切な対策を採ることができる。
【0018】
また、万一、オイルタンク15内のオイル17が全量漏れたとしても、オイルタンク15の下方に位置するオイル室13内は常にオイル17で満たされているため、軸封装置12,12aのオイル切れは発生せず、水中ポンプ10を継続して運転することができる。従って、水中ポンプ10を引き上げることなくオイル17の補充を行うことができる。
また、液位検出センサ18は、水中ポンプ10内に装備するものではなく、地上のオイルタンク15に設置するため、外形寸法の制約が少なく、市販の安価なセンサを使用することができる。
さらに、オイルタンク15は、地上に設置されているので、ポンプ回転部が配置されているオイル室13から離れているため、オイルタンク15内のオイル17の液位は静止状態にあり、安定したかつ信頼性の高い液位検出を行うことができる。
【0019】
また、本発明では、液位検出センサ18による液位の変動の検出を、近接スイッチSW1、SW2、SW3、SW4を用いて、「浸水注意」、「浸水」、「オイル減少注意」、「オイル減少」の4つの液位検出設定位置に基づいて行うことができるので、効率よく軸封装置12,12aの状態を把握でき、経済的に軸封部24の交換管理を行うことができる。
【0020】
(第2実施例)
図3に示すように、本実施例に係る水中ポンプオイル監視装置A1は、以下の構成を除いて、実質的に第1実施例と同一の構成を有するので、同一の箇所は同一の符号で示し、その説明は省略する。
即ち、本実施例は、オイルタンク15の上部にオイルタンク15の内部空間と連通すると共に内部空間より狭い横断面積を有する液面検出部30を設け、オイル17を液面検出部30に達するまで内部空間に封入し、液面検出部30に、第1実施例で説明した液位検出センサ18と同様な液位検出センサ32を取り付けたことを特徴とする。
この場合、第1実施例によって得られる効果に加えて、液面検出部30におけるオイル17の液位の変化を大きくすることができ、液位検出をより正確に行うことができ、軸封部24をより正確に監視することができるという効果も奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る水中ポンプオイル監視装置は、浚渫現場、土木現場、プラント等において、土砂等の攪拌吸引作業において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例に係る水中ポンプオイル監視装置の全体構成説明図。
【図2】水中ポンプの軸封装置の詳細図。
【図3】本発明の第2実施例に係る水中ポンプオイル監視装置の全体構成説明図。
【符号の説明】
【0023】
A:水中ポンプオイル監視装置
SW1:近接スイッチ
SW2:近接スイッチ
SW3:近接スイッチ
SW4:近接スイッチ
10:水中ポンプ
11:モータ回転軸
12,12a:軸封装置
13:オイル室
14:地上
15:オイルタンク
16:連通配管
17:オイル
18:液位検出センサ
18a::フロート式液面計
20:モータ
21:モータ室
22:インペラ
23:インペラケーシング
24:軸封部
25:オイル流出口
26:オイル流入口
27:攪拌羽根
28:ドレイン
30:液面検出部
32:液面検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中ポンプのモータ回転軸に取り付けた軸封装置を内蔵するオイル室への浸水及びオイルの漏洩を監視する水中ポンプオイル監視装置であって、
地上に設置したオイルタンクと、
前記オイルタンクと前記オイル室とを連通連結する連通配管と、
前記オイルタンクに取り付け、前記オイルタンク内のオイルの液位の変動を検出する液位検出センサとを具備し、
前記液位検出センサの検出出力に基づいて前記浸水及びオイルの漏洩を監視可能としたことを特徴とする水中ポンプオイル監視装置。
【請求項2】
前記液位検出センサは、前記液位の変動の検出を、複数の浸水検出用の液位検出設定位置と、複数のオイル漏洩検出用の液位検出設定位置に基づいて行うことを特徴とする請求項1記載の水中ポンプオイル監視装置。
【請求項3】
前記オイルタンクの上部にオイルタンクの内部空間と連通すると共に前記内部空間より狭い横断面積を有する液面検出部を設け、前記オイルを前記液面検出部に達するまで前記内部空間に封入し、前記液面検出部に前記液位検出センサを取り付けたことを特徴とする請求項1又は2記載の水中ポンプオイル監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−250005(P2006−250005A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66411(P2005−66411)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(591013388)株式会社東洋電機工業所 (11)
【Fターム(参考)】