説明

水中可視光通信システム及び水中可視光通信方法

【課題】 水質の状況に応じて可視光の波長を変えることができて、しかもバッテリによる駆動時間を延ばすことができる水中可視光通信システムを提供する。
【解決手段】 水中移動体1の可視光放射装置9から放射された複数種類の波長の可視光のうち、観測装置3の可視光受光部15に到来した最も強い光の波長を波長判定部31で判定する。観測装置3は、波長判定部31で判定した波長の可視光を送信用の可視光として選択して、その可視光に観測データを含めて可視光放射装置11から水中に放射する。水中移動体1の可視光受光部13は、受光した可視光を復調して、観測データを取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中を移動する水中移動体に対して、水中に設置された観測装置から、観測データを可視光通信を用いて送信する水中可視光通信システム及び水中可視光通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水中でデータ(情報)の送受信を行うために、可視光を利用したシステムがある。例えば、特開平4−312035号公報(特許文献1)及び特開2005−20422号公報(特許文献2)には、水中においてデータの送受信を行うために、送信側で、送信すべきデータを可視光に変調して水中に放射し、当該可視光を受光した受信側で復調して情報を取り出すための技術が開示されている。
【特許文献1】特開平4−312035号公報
【特許文献2】特開2005−20422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、既存の可視光を利用した水中可視光通信システムは、ダイバー同士の通信などのように至近距離での使用が前提とされている。そのため水質、水中の浮遊物(「マリンスノー」と呼ばれる懸濁物)などを考慮することは行われておらず、水中の浮遊物が多くなった場合や、浮遊物の種類によっては通信ができなくなる問題があった。
【0004】
また、既存の水中可視光通信システムでは、水中に長期間に亘って置かれる観測機器のように、バッテリの放電を抑制して、観測装置の使用期間をできるだけ延ばさなければならないといった問題はなかった。それはダイバー同士の通信であれば、バッテリの充電量が低下しても、バッテリの交換を容易に行えるためであった。
【0005】
本発明の目的は、水質の状況に応じて可視光の波長を変えることができて、しかもバッテリによる駆動時間を延ばすことができる水中可視光通信システム及び水中可視光通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水中可視光通信システムは、水中を移動する水中移動体に対して、水中に設置されたバッテリを電源とする観測装置から観測データを可視光通信を用いて送信するものである。水中移動体に設けられた可視光通信装置は、複数種類の波長の可視光を水中の観測装置に向かって同時にまたは時間間隔をあけて放射する可視光放射装置と、水中を通って到来する可視光を受光する可視光受光部と、可視光受光部が受光した可視光から観測データを含む必要なデータを取得するデータ取得装置とを備えている。また、観測装置に設けられた可視光通信装置は、複数種類の波長の可視光から選択した1種類の波長の可視光に必要なデータを含めて水中に放射する可視光放射装置と、水中を通って到来する可視光を受光する可視光受光部と、可視光受光部が受光した可視光の波長を判定する波長判定部とを備え、可視光放射装置は波長判定部が判定した波長の可視光を1種類の波長の可視光として選択するように構成されている。そして本発明の水中可視光通信方法では、観測装置に設けられた可視光通信装置の可視光受光部が可視光を受光していることを条件に、観測装置から観測データを可視光放射装置を用いて送信する。
【0007】
可視光通信を行うためには、可視光が到達する距離まで水中移動体が観測装置に近づく必要がある。しかしながら、通信を行う水質(浮遊物の量)の影響で、最も遠くまで到達する可視光の波長(減衰率の低い波長の可視光)は異なる。そのため可視光通信を行うときの水域の環境に合わせた波長の可視光を選択することが重要である。また、観測装置は水中に設置されており、電源となるバッテリの交換は容易ではないため、なるべく観測装置の電力の消費を抑える必要がある。そこで、本発明では、観測データの送信を開始する前に、水中の水質に適した波長の可視光を選択する動作を行って、可能な限り観測データの送信をできるようにする。そのために、まず水中移動体に設けられた可視光放射装置が複数種類の波長の可視光を放射する。複数種類の波長は、予め水質の状況を考慮して定めておけばよい。そして観測装置に設けた波長判定部は、可視光受光部が受光した可視光の波長を判定する。観測装置に設けた可視光放射装置は、波長判定部が判定した波長の可視光を、観測データの送信に利用する1種類の波長の可視光として選択し、この波長の可視光に必要なデータを含めて水中に放射する。本発明では、適切な波長の決定のために、観測装置側から水中に可視光を放射することは行わず、適切な波長の可視光を選択するために必要な複数種類の波長の可視光を放射する動作は、水中移動体側の可視光通信装置が担当する。そのため本発明によれば、波長決定に要する観測装置側の電力の使用量は少なくてすむ。そして本発明では、水中移動体が放射する可視光を受光しない限り観測データの送信を行わないので、観測データの送信のために無駄な電力を使用することがない。観測装置側の可視光受光部が受光できた可視光は、水中移動体から観測装置に到達した可視光であるので、この可視光の波長と同じ波長の可視光を利用して観測データを送信すれば、観測装置から放射した可視光も水中移動体側の可視光受光部まで確実に到達する。したがって本発明によれば、実際に可視光通信を行う場所の水中を通って到来した波長の可視光と同じ波長の可視光を用いて観測データの送信を行うため、観測装置に設けられた可視光放射装置が放射する可視光が水中移動体に到達する可能性が非常に高く、信頼性のある水中可視光通信システムを提供することが可能となる。さらに、本発明では、水中移動体から放射された可視光が観測装置に到来してはじめて観測装置がデータを含んだ可視光を放射するため、無駄な可視光の放射を行うことがなくなり、観測装置の電力の消費も抑えることができる。
【0008】
水中移動体に設けられた可視光通信装置の可視光放射装置は、観測装置に向かって複数種類の波長の可視光を時間間隔をあけて放射してもよく、また同時に放射してもよい。時間間隔をあけて放射すれば、観測装置側の波長判定部の判定精度を高めることができる。複数種類の波長の可視光を同時に放射すれば、利用可能な可視光の波長の判定を短い時間で行える可能性がある。水中移動体から複数種類の波長の可視光を同時に放射するためには、水中移動体に設けられた可視光放射装置の光源として白色光源を用いればよい。そして観測装置に設けられた波長判定部を、受光した可視光から複数種類の波長の可視光を分光する分光手段と、分光手段によって分光された可視光の中で最も強い光の波長を判定結果として出力することを決定する波長決定部とを備えるように構成すればよい。白色光源から放射される可視光は、複数種類の波長を含んでいる。そして観測装置では、分光手段によって到来した可視光を分光することによって、到達し得る可視光の波長を特定することができる。そして、特定された波長のうち、最も強い光の波長を判定結果として出力することによって、その環境で使用可能な波長の可視光を容易に決定することができる。
【0009】
水中移動体に設けられた可視光通信装置は、可視光放射装置から水中に複数種類の波長の可視光を照射した後、予め定めた時間が経過しても、可視光受光部が可視光を受光しないときには、予め定めた回数、可視光の放射を実行し、最終的に可視光受光部が可視光を受光しないときには、測定不能信号を出力する測定不能信号発生部を更に備えるようにしてもよい。このように構成すれば、放射した可視光が観測装置に到達せず、データの収集ができなかったことが明確になり、さらに接近して通信を行うべきか、観測装置が故障しているかなどの判断材料を得ることができる。
【0010】
観測装置に設けられた可視光通信装置に設けられた可視光放射装置の光源として何を使用するかは任意である。例えば、波長の異なる複数種類の発光ダイオードを使用してもよい。発光ダイオードは指向性及び輝度が高い上に、消費電力が少なく、また、寿命も長いため、水中に長期間設置したままになる観測装置の可視光放射装置の光源に適している。また、光源として可視光レーザを発生するレーザ発生器を使用してもよい。可視光レーザは波長がそろっており、指向性が非常に高いため、他の光源を利用する場合に比べて通信性能が高くなるという効果が得られる。
【0011】
なお、可視光の波長を450nm〜600nmの範囲に限定して放射し、その上で、その中から最も強い波長の可視光を選択するのが好ましい。このようにすると状況に応じた通信に最適な波長の可視光を選択できる。
【0012】
観測装置に設ける分光手段は、例えば、波長選択性フィルタを用いることができる。波長選択性フィルタを透過することによって、観測装置に到達した波長の可視光を分光し、使用可能な波長の可視光の特定が容易になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水中移動体から放射された複数種類の波長の可視光のうち、実際に観測装置に到来した可視光から、1種類の波長の可視光を観測データの送信に使用する可視光として決定して、観測データの送信を行うので、波長決定のために観測装置側で使用する電力は少なくてすみ、また観測装置側から観測データ送信のために可視光を放射する回数を増やすことなく、観測データを水中移動体に確実に送信することができる。したがって本発明によれば、観測装置側のバッテリによる駆動時間を延ばして、信頼性の高い水中可視光通信システム及び水中可視光通信方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面を参照して、本発明の水中可視光通信システム及び水中可視光通信方法の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の水中可視光通信方法を実施する本発明の水中可視光通信システムの実施の形態の一例の構成を概念的に示す図であり、図2は本発明の水中可視光通信システムの制御システムの構成を示すブロック図である。水中を移動する水中移動体1には可視光通信装置5が設けられており、水中に設置された観測装置3には可視光通信装置7が設けられている。水中移動体1は水中探査機・曳航体・ロボットなど、水中で移動できるものであればよく、また、有人運転か無人運転かを問わない。観測装置3は、海底などの水中に設置して海水の温度、塩分濃度、地磁気の変化、地震、海流の速さなどを観測する。
【0015】
図2に示すように、水中移動体に設けられた可視光通信装置5は、複数種類の波長の可視光を水中の観測装置に向かって同時にまたは時間間隔をあけて放射する可視光放射装置9と、水中を通って到来する可視光を受光する可視光受光部13と、可視光受光部13が受光した可視光から観測データを含む必要なデータを取得するデータ取得装置19とを備えている。また、観測装置3に設けられた可視光通信装置7は、複数種類の波長の可視光から選択した1種類の波長の可視光に必要なデータを含めて水中に放射する可視光放射装置11と、水中を通って到来する可視光を受光する可視光受光部15と、可視光受光部15が受光した可視光の波長を判定する波長判定部31とを備えている。可視光放射装置11は波長判定部31が判定した波長の可視光を1種類の波長の可視光として選択するように構成されている。
【0016】
図3は水中移動体1が可視光通信によって観測装置から観測データを取得するまでのステップを示すフローチャートである。以下図3を参照しながら、水中移動体1内の構成と観測装置3の構成について説明する。観測装置3から観測データを回収するために可視光通信を行う際には、水中移動体1を観測装置3にある程度まで接近させる。そして互いの可視光放射装置9,11及び可視光受光部13,15が向かい合うようする。
【0017】
水中移動体1に設けられた可視光放射装置9は、複数種類の波長の可視光を放射することができるものであればよく、本実施の形態では、後に詳細に説明するように、同時に複数種類の波長の可視光を放射できる白色光源を使用している。水中移動体1は、ステップST1で複数種類の波長の可視光を放射後、可視光受光部13が観測装置3からの可視光を受光するまで所定の時間(T秒)待機する(ステップST2)。ステップST3で可視光を受光したことが確認できれば、受信した可視光を復調装置17で復調して、可視光に含まれたデータを取得し、データ取得装置19のデータ記憶部21に保存する(ステップST4)。これにより、水中移動体1は、観測装置3から観測データを収集できる。
【0018】
これに対して、ステップST3で可視光の受光が確認できなかった場合には、ステップST5に移って、可視光を受光できるまで複数種類の波長の可視光をn(2以上の自然数)回放射する。放射回数がn回を超えたにもかかわらず観測装置3からの可視光を受光できなかった場合には、観測装置3が何らかの理由で可視光を受光できなかったとして、ステップST6で測定不能信号発生部23が測定不能信号を発生して、処理を終了する。測定不能信号が測定不能信号発生部23から出力された場合には、可視光が到達しやすいようにさらに水中移動体を観測装置に接近するようにする。それでも、可視光通信ができない場合には、観測装置3が故障している可能性もあるので、その場合には、観測装置3の回収のために位置データを記録する。
【0019】
なお、複数種類の波長の可視光を時間間隔をあけて放射する場合には、ステップST5で放射回数がn回を超えたところで、放射する可視光の波長を変え、放射する可視光の波長の候補がなくなったところでステップST6で測定不能信号を発生して処理を終了する。
【0020】
次に、図4に示した、観測装置3が水中移動体1にデータを送信するまでの手順を示すフローチャートを参照して、図2の観測装置3の構成と動作について説明する。観測装置3は、バッテリ25を電源として、通常は、各種のデータを観測部27により定期的に観測し、観測データ記憶部29に観測データを記憶している。水中移動体1から可視光が放射されたことを可視光受光部15が感知すると、観測データを送信するための送信モードに移行する(ステップST11)。水中移動体1の可視光放射装置9の白色光源39(図5参照)から放射された可視光は複数種類の波長を含んでいる。そのため、どの波長の可視光が到来したのか判定するために、波長判定部31の分光手段33で分光する(ステップST12)。そして、分光された可視光の中で最も強い光の波長を波長決定部35が決定する(ステップST13)。水中移動体1の可視光放射装置9から時間間隔をあけて複数種類の波長の可視光が放射される場合には、最初に到達した可視光の波長を最も強い光の波長としてもよい。
【0021】
このようにして波長決定部35が決定した波長の可視光が観測装置3の可視光放射装置11から放射される可視光となる。すなわち、ここで決定された波長の可視光は、水中移動体1の可視光放射装置9が放射し、水中を通って観測装置3まで到達した可視光のうち、最も強いものであり、観測装置3の可視光放射装置11が放射すれば、水中移動体1に到達する可能性が最も高い波長の可視光である。後述するように、本実施の形態では、2台のレーザ発生器LZ1,LZ2を備えている。そこで分光手段33は2台のレーザ発生器LZ1,LZ2のレーザ光に対応した2種類の波長の可視光を分光できるものである。そしてどちらの波長の可視光が到達したかは、波長決定部35が決定する。可視光放射装置11の光源として、複数種類の発光ダイオードなどを使用してもよいのはもちろんである。発光ダイオードは指向性・輝度が高い上に、消費電力が少なく、また、寿命も長いため、水中に長期間設置したままになる観測装置3の可視光放射装置11の光源にも適している。
【0022】
放射する可視光の波長が決定したら、次は、観測データを観測データ記憶部29から読み出し(ステップST14)、変調装置37で観測データを可視光に変調してから(ステップST15)、可視光放射装置11が水中移動体1に向けて可視光を放射する(ステップST16)。
【0023】
図5を用いて、可視光通信に使用する波長の可視光の決定と、その可視光を使用した可視光通信について実験を行った結果を説明する。この実験では、可視光放射装置9の光源として白色光源39(例えばFianium社のSC450)を使用している。白色光源は、複数種類の波長の可視光を含んでいるため、複数種類の波長の可視光を同時に放射したい場合に適している。そして、分光手段33の分光器41には、波長選択性フィルタを使用している。波長選択性フィルタを透過することで、観測装置3に到達した可視光がどの波長のものかがわかる。観測装置3の可視光放射装置として、2種類の波長の可視光を放射できるレーザ発生器LZ1,LZ2を備えている。この実験装置では、2種類の波長の可視光を放射できるようになっているため、分光器41は、この2種類の波長の可視光のうちいずれの可視光が到達できたか、また両方が到達したのであれば、どちらがより強いかを判別するために分光を行う。例えば、レーザ発生器LZ1に対応する波長の可視光が到達した(または強かった)のであれば、鏡43を上げて(実線の位置)、水中移動体1にレーザ発生器LZ1からの可視光レーザを放射するようにする。また、レーザ発生器LZ2に対応する波長の可視光が到達した(または強かった)のであれば、鏡43を下げて(破線の位置)、水中移動体1にレーザ発生器LZ2からの可視光レーザを放射するようにする。
【0024】
なお、水質によって通りやすい可視光の波長が異なり、到達距離が異なることを示す実験として、532nmと635nmの2種類の波長の可視光を、(1)ろ過水、(2)水道水に通す実験を行った。
【表1】

【0025】
その結果、(1)ろ過水の場合には、532nmの可視光が711.1m、635nmの可視光が213.3mだったのに対して、(2)水道水の場合には、532nmの可視光が56.9m、635nmの可視光の方が62.7mという実験結果が得られた。このことから水質によって通りやすい可視光の波長が異なることがわかる。
【0026】
このように、水中移動体1と観測装置3にそれぞれ設けられた可視光通信装置5,7は連携して適切な波長の可視光を決めて可視光通信を行う。そのため、可視光通信を行うときの水域の環境に合わせた最適な波長の可視光を使用できるため、可視光通信が可能な距離を伸ばすことができる。また、観測装置は適切な波長の可視光を探し出すための余計な電力の消費も抑えることが可能となるだけでなく、1種類の波長の可視光を放射すればよいため、複数種類の波長の可視光を放射する場合に比べて電力の消費を抑えることができる。さらに、水中移動体からの可視光が到来してはじめて観測装置がデータを含んだ可視光を放射するため、無駄な可視光の放射を行うことがなくなり、観測装置の電力の消費も抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の方法を実施する本発明の水中可視光通信システムの実施の形態の一例の構成を概念的に示す図である。
【図2】本発明の水中可視光通信システムの制御システムの構成を示すブロック図である。
【図3】水中移動体が可視光通信によってデータを取得するまでの流れを示すフローチャートである。
【図4】観測装置が水中移動体にデータを送信するまでの流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明を用いた可視光通信に使用する波長の可視光の決定と、その可視光を使用した可視光通信の方法を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 水中移動体
3 観測装置
5,7 可視光通信装置
9,11 可視光放射装置
13,15 可視光受光部
17 復調装置
19 データ取得装置
21 データ記憶部
23 測定不能信号発生部
25 バッテリ
27 観測部
29 観測データ記憶部
31 波長判定部
33 分光手段
35 波長決定部
37 変調装置
39 白色光源
41 分光器
43 鏡
LZ1,LZ2 レーザ発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中を移動する水中移動体に対して、水中に設置されたバッテリを電源とする観測装置から観測データを可視光通信を用いて送信する水中可視光通信システムにおいて、
前記水中移動体に設けられた可視光通信装置は、複数種類の波長の可視光を前記水中の前記観測装置に向かって同時にまたは時間間隔をあけて放射する可視光放射装置と、前記水中を通って到来する可視光を受光する可視光受光部と、前記可視光受光部が受光した前記可視光から前記観測データを含む必要なデータを取得するデータ取得装置とを備えており、
前記観測装置に設けられた可視光通信装置は、複数種類の波長の可視光から選択した1種類の波長の可視光に必要なデータを含めて前記水中に放射する可視光放射装置と、前記水中を通って到来する可視光を受光する可視光受光部と、前記可視光受光部が受光した前記可視光の波長を判定する波長判定部とを備え、前記可視光放射装置は前記波長判定部が判定した波長の可視光を前記1種類の波長の可視光として選択するように構成されていることを特徴とする水中可視光通信システム。
【請求項2】
前記水中移動体に設けられた可視光通信装置の前記可視光放射装置は、白色光源からの可視光を前記水中に放射するように構成され、
前記観測装置に設けられた可視光通信装置の前記波長判定部は、受光した前記可視光から前記複数種類の波長の可視光を分光する分光手段と、前記分光手段によって分光された可視光の中で最も強い光の波長を判定結果として出力することを決定する波長決定部とを備えている請求項1に記載の水中可視光通信システム。
【請求項3】
前記水中移動体に設けられた前記可視光通信装置は、前記可視光放射装置から前記水中に前記複数種類の波長の可視光を照射した後、予め定めた時間が経過しても、前記可視光受光部が可視光を受光しないときには、予め定めた回数前記可視光の放射を実行し、最終的に前記可視光受光部が可視光を受光しないときには、測定不能信号を出力する測定不能信号発生部を更に備えている請求項1または2に記載の水中可視光通信システム。
【請求項4】
前記観測装置に設けられた可視光通信装置に設けられた前記可視光放射装置の光源が、波長の異なる複数種類の発光ダイオードであることを特徴とする請求項1,2または3に記載の水中可視光通信システム。
【請求項5】
前記観測装置に設けられた可視光通信装置に設けられた前記可視光放射装置の光源が、波長の異なる複数種類の可視光レーザを発生するレーザ発生器であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の水中可視光通信システム。
【請求項6】
前記複数種類の波長は、450nm〜600nmの範囲の波長であることを特徴とする請求項1に記載の水中可視光通信システム。
【請求項7】
前記分光手段は、波長選択性フィルタである請求項1に記載の水中可視光通信システム。
【請求項8】
水中を移動する水中移動体に対して、水中に設置されたバッテリを電源とする観測装置から観測データを可視光通信を用いて送信する水中可視光通信方法であって、
前記水中移動体に設けられた可視光通信装置として、複数種類の波長の可視光を前記水中の前記観測装置に向かって同時にまたは時間間隔をあけて放射する可視光放射装置と、前記水中を通って到来する可視光を受光する可視光受光部と、前記可視光受光部が受光した前記可視光から前記観測データを含む必要なデータを取得するデータ取得装置とを備えたものを用い、
前記観測装置に設けられた可視光通信装置として、複数種類の波長の可視光から選択した1種類の波長の可視光に必要なデータを含めて前記水中に放射する可視光放射装置と、前記水中を通って到来する可視光を受光する可視光受光部と、前記可視光受光部が受光した前記可視光の波長を判定する波長判定部とを備え、前記可視光放射装置は前記波長判定部が判定した波長の可視光を前記1種類の波長の可視光として選択するように構成されたものを用い、
前記観測装置に設けられた可視光通信装置の前記可視光受光部が前記可視光を受光していることを条件に、前記観測装置から前記観測データを可視光放射装置を用いて送信することを特徴とする水中可視光通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−278455(P2009−278455A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128519(P2008−128519)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】