説明

水中基礎均し装置

【課題】 重錘の支持体に取り付けたワイヤーがたるんでも、反射体に衝突することがない水中基礎均し装置を提供すること。
【解決手段】 水中の基礎を構成する捨石の表面を均す重錘1を支持する支持体2の上部周囲に、均し面の位置を測定するための反射体5を複数設け、上記支持体をワイヤー4で吊り上げてから当該支持体2を自重で落下させて基礎の表面を均す一方、上記反射体5は、均し面の位置を検出する受光手段に向かって光を反射させる構成にした水中基礎均し装置を前提とし、たるみを持った上記ワイヤー4が反射体5に当たるのを防止する防護体8を設けるとともに、受光手段に向かって反射体5から反射する光の光路に対応した位置に光通過部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水中の基礎を均す重錘を備えるとともに、均し面の位置を検出する手段を備えた水中基礎均し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、捨石を投下してからクレーンで吊り下げた重錘1を落下させて、水中に基礎を形成する水中基礎均し装置が知られている。このような水中基礎均し装置は、例えば、図6に示すように、下端に重錘1を固定したパイプ状の支持体2の上端にワイヤーの取り付け部3を備えたもので、この取り付け部3に固定したワイヤー4を船上のクレーンC側に連結して吊り上げたり、落下させたりして、重錘1が落下したときの衝撃力で基礎を均すようにしている。
そして、重錘1を落下させて形成する基礎が目的の大きさや高さになるように、水底を均す過程で、均し面の位置を検出するようにしている。
【0003】
上記均し面の位置を検出するため、上記支持体2の上部外周に、外周に沿って複数の反射体5を配置し、この反射体5に光線aを照射するとともに、その反射光a’を受光する受光部6を備え、受光した反射光a’に基づいて上記反射体5の高さや平面上の位置の座標を算出する機能を備えた位置測定装置7を用いることが知られている(特許文献1参照)。
上記位置測定装置7が、反射光a’に基づいて反射体5の位置を特定できれば、支持体2の長さに基づいて重錘1の位置も演算により特定できることになる。そして、この重錘1の底面位置が、均し作業中の均し面の位置となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3225485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、均し面の位置を測定するため、支持体2の上部外周には、複数の反射体5を円周状に配置している。
一方、重錘1を自由落下させる際には、上記取り付け部3に連結したワイヤー4が、重錘1のスムーズな落下を阻害しないように、図示しないリールから自由に繰り出されるようにしている。
そのため、重錘1が均し面に衝突して停止したときには、上記リールの慣性で余分な長さのワイヤー4が繰り出されてしまうことがある。このように、余分な長さのワイヤー4が繰り出されれば、ワイヤー4にたるみができる。
また、重錘1が均し面に衝突してバウンドすることもあり、その場合にも、ワイヤー4がたるんでしまう。
【0006】
このようなたるみをなくすことはほとんど不可能であるが、そのたるみ量が大きくなると、垂れ下がったワイヤー4が、図7のように上記反射体5に衝突してしまうことがある。上記ワイヤー4は、支持体2とともに重錘1を吊り上げるものなので、強度が要求されるため、太く丈夫に形成されている。
このようなワイヤー4が反射体5の表面に衝突すると、反射体5が破損したり、表面が汚れてしまったりすることがある。反射体5が破損したり、汚れてしまったりすると、光を反射できなくなったり、反射光の方向が変わってしまったり、反射光量が少なくなったりすることがあり、正確な位置測定ができないという問題が発生する。
【0007】
この発明の目的は、重錘の支持体に取り付けたワイヤーがたるんでも、ワイヤーが反射体に衝突することがない水中基礎均し装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、水中の基礎を構成する捨石の表面を均す重錘を支持する支持体の上部周囲に、均し面の位置を測定するための反射体を複数設け、上記支持体をワイヤーで吊り上げてから当該支持体を自重で落下させて基礎の表面を均す一方、上記反射体は、均し面の位置を検出するための受光手段に向かって光を反射させる構成にした水中基礎均し装置において、たるみを持った上記ワイヤーが反射体に当たるのを防止する防護体を設けるとともに、受光手段に向かって反射体から反射する光の光路に対応した位置に光通過部を設けた点に特徴を有する。
【0009】
第2の発明は、上記防護体が、上記反射体の上方に設けるとともに、その下方を上記光通過部とする一方、上記防護体は、複数の反射体が連続して形成する円周よりも外方に突出した外縁を備え、上記外縁は、たるんだワイヤーが当該外縁に当たったとき、ワイヤーが反射体に衝突しない関係位置を保持した点に特徴を有する。
第3の発明は、上記防護体をドーム状にした点に特徴を有する。
【0010】
第4の発明は、第1の発明を前提とし、上記防護体が、反射体の上下に設けた一対の防護部材からなり、上記一対の防護部材間を上記光通過部とする一方、各防護部材は複数の反射体が連続して形成する円周よりも外方に突出した外縁を備え、上記外縁は、たるんだワイヤーが当該外縁に当たったとき、ワイヤーが反射体に衝突しない関係位置を保持した点に特徴を有する。
【0011】
第5の発明は、第1の発明を前提とし、上記防護体は、上記全ての反射体を囲うとともに、この防護体に上記光通過部を設けた点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
第1〜第5の発明によれば、重錘が落下したときに、ワイヤーがたるんでも、それが反射体に衝突しないので、ワイヤー4が反射体を破損したり、表面を汚したりすることがない。従って、常に、均し面の正確な位置測定ができる。
第2の発明によれば、防護体の構成を単純化することができるとともに、反射光の光路を十分確保できる。
第3の発明では、防護体をドーム状にすることによって、ワイヤーの衝撃力から防護体を守り、防護体の耐久性を高めることができる。
第4の発明によれば、ワイヤーのたるみ量が非常に大きく、大きく垂れ下がるようなときにも、反射体を保護することができる。
第5の発明によれば、ワイヤーのたるみ量によらず、より確実に反射体を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の主要部の正面図である。
【図2】第2実施形態の主要部の正面図である。
【図3】第3実施形態の主要部の正面図である。
【図4】第4実施形態の主要部の正面図である。
【図5】第5実施形態の正面図である。
【図6】従来の水中基礎均し装置の使用例を示す模式図である。
【図7】従来例の主要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すこの発明の第1実施形態は、重錘1の支持体2に設けた反射体5の上方に防護体8を設けたものである。なお、上記防護体8を備えた以外は、図6に示す従来の装置と同様の構成であり、使用形態も同様である。
この防護体8は、金属製の円盤状の部材で、支持体2に溶接により固定している。
また、上記防護体8を構成する円盤状の部材の直径は、複数の反射体5が連続して形成する円の直径Dよりも大きな直径を備えて、図のようにたるんだワイヤー4が防護体8の外縁に衝突しても、反射体5には衝突しないようにしている。
【0015】
つまり、上記防護体8は、複数の反射体5が連続して形成する円周よりも外方に突出した外縁を備え、上記外縁はたるんだワイヤーが当該外縁に当たったとき、ワイヤーが反射体5に衝突しない関係位置を保持している。
そのため、重錘1によって水底を均す過程で、ワイヤー4がたるんだとしても、それが反射体5に衝突して、反射体5を破損したり、表面を汚したりするようなことはない。
さらに、上記防護体8は反射体5の上方に設け、防護体8の下方を完全に開放してこの発明の光通過部としている。
従って、位置測定時に反射体5から反射する反射光の光路を、防護体8が遮ることがない。
【0016】
そのため、この第1実施形態の水中基礎均し装置では、反射体5がたるんだワイヤー4によって破損したり、汚れたりするようなこともなく、常に、正確な位置測定ができる。
なお、上記防護体8のように、それを板状部材で構成すれば、防護体の構造を単純にできるとともに、十分な大きさの光通過部を簡単に設けることができるというメリットもある。
但し、この第1実施形態では、上記防護体8を円盤状の部材としたが、その形状は、円盤に限らない。複数の反射体5が連続して形成する円周よりも外方へ突出した外縁を備えてさえいれば、どのようなものでも良く、例えば、外縁形状を多角形にしてもよい。
【0017】
また、たるんだワイヤー4が防護体8の外縁に当たったとき、反射体5に衝突しない関係位置は、ワイヤー4のたるみ量、防護体8の上下位置、防護体8の外縁の突出位置、すなわち、防護体8の直径などによって変わる。そのため、この水中基礎均し装置による均し作業時において予想されるワイヤー4のたるみ量に基づいて、他の要素を調節して実現することができる。
【0018】
図2に示す第2実施形態は、ドーム状の防護体9を備えている点が、上記第1実施形態と異なるが、その他の構成は、第1実施形態と同じである。
この第2実施形態では、反射体5の上方において、支持体2にドーム状の防護体9を固定している。そして、この防護体9の外縁を、上記複数の反射体5が連続して形成する円周より外方へ突出させている。
また、上記外縁を構成する、防護体9の下端を上記反射体5より上方に位置させ、防護体9の下方を光通過部としている。
【0019】
上記のように構成することによって、防護体9が、均し面の位置を測定する際の反射光の光路を遮ることがないし、図示したように、ワイヤー4がたるんで垂れ下がって防護体9に衝突しても、ワイヤー4は反射体5に衝突しない。そのため、ワイヤー4の衝撃によって反射体5が破損したり、汚れたりすることはない。
また、防護体9をドーム状にすることによって、耐衝撃性が高まり、ワイヤー4の衝突時の衝撃によって防護体9が変形したり破損したりすることを防止できる。
【0020】
さらに、上記ドーム状の防護体9では、垂れ下がったワイヤーが防護体9の傾斜部分に衝突することによって、ワイヤー4の反射体5へ向かう方向の力を弱めることができる。そのため、ワイヤー4のたるみ量が、予想以上に大きくなるようなことが起こって、防護体9の下方でワイヤー4が反射体5に衝突することがあっても、その衝撃力が小さくなっているので反射体5の破損は防止できる。
【0021】
図3に示す第3実施形態は、複数の反射体5の上下に一対の板状の防護部材10a,10bを設け、これら防護部材10a,10bによって防護体10を構成するものである。この防護体10以外の構成は、上記第1実施形態と同様である。
この防護体10は、上記防護部材10a,10bの間を、光通過部とするとともに、上記防護部材10a,10bの外縁を、上記複数の反射対5が連続して形成する円周の外方に突出させている。
【0022】
このような防護体10を設けたので、上記ワイヤー4がたるんで垂れ下がった場合には、各防護部材10a,10bの外縁にワイヤー4が衝突し、ワイヤー4が反射体5に衝突することを防止できる。特に、ワイヤー4のたるみ量が大きい場合には、たるんだワイヤー4が反射体5の下方に設けた防護部材10bに衝突して、ワイヤー4が反射体5を破損したり、汚したりすることを防止できる。
そのため、この第3実施形態の水中基礎均し装置においても、反射体5が破損する心配はなく、均し面の正確な位置測定ができる。
【0023】
なお、この第3実施形態では、上記一対の防護部材10a,10bを平板状にしているが、これら防護部材10a,10bは平板に限らない。例えば、防護部材10a,10bをドーム状にしてもよい。特に、上側の防護部材10aをドーム状にすれば、上記第2実施形態と同様に、ドームの傾斜面でワイヤー4の衝撃を弱めることもできるし、防護部材10aの耐衝撃性を向上させることもできる。
【0024】
図4に示す第4実施形態は、支持体2に、複数の反射体5を全体的に覆う、金属製のかご状の防護体11を設けている。その他の構成は、上記第1実施形態と同じである。
この実施形態の防護体11は、上記反射体5の上部であって支持体2に固定するリング部材11aと、このリング部材11aの下方に水平に配置され、上記リング部材11aよりも直径が大きなリング部材11bとを備え、これらリング部材11a、11b間を上下方向に伸びる複数の線状部材11cで連結している。さらに、上記リング部材11aと11b間では、別のリング部材11d、11eを、上記線状部材11cに固定してかご状の防護体11を形成している。
そして、上記リング部材11d、11eと線状部材11cとの間に、反射体5を対応させて、そこを光通過部12としている。従って、防護体11が、反射体5からの反射光の光路を遮ることはない。
【0025】
また、上記リング部材11d、11eの直径を、上記複数の反射体5が連続して構成する円周の直径よりも大きくし、上記両リング部材11d、11eが、上記円周より外方へ位置するようにしている。
そのため、この第4実施形態においても、たるんだワイヤー4は、図示したように、防護体11に衝突しても反射体5に衝突することはなく、ワイヤー4が反射体5を破損したり、汚したりすることはない。
特に、この第4実施形態では、防護体11が、複数の反射体5を全体的に覆っているので、どのようなワイヤー4のたるみ量にも対応でき、ワイヤー4が反射体5に衝突することをより確実に防止できる。
なお、上記リング部材11a,11b,11d,11eをそれぞれ直径で二分割し、分割した部材をヒンジによって回動自在に連結するとともに、ヒンジと反対側に、開閉可能な連結部材を設ければ、上記防護体11を支持体2に対して着脱させることができる。
【0026】
上記第1〜第4実施形態では、パイプ状の支持体2を備えた装置について説明したが、この発明の防護体は、重錘によって捨石表面を均し、均し面の位置を測定するための反射体を有する水中基礎均し装置なら、支持体の構成や重錘の形状などによらず適用可能である。
例えば、図5に示した第5実施形態は、重錘1を、枠状の支持体13で支持するものである。そして、この支持体13の上方外周には複数の反射体5を備え、さらにその上部には、図2に示す第2実施形態と同様の防護体9を備えている。
この第5実施形態においても、上記第2実施形態と同様に、たるんだワイヤー4は防護体9に衝突するが、そのときに、ワイヤー4が反射体5には衝突せず、反射体5が破損したり汚れたりすることを防止できる。
【符号の説明】
【0027】
1 重錘
2 支持体
4 ワイヤー
5 反射体
8 防護体
9 防護体
10 防護体
11 防護体
12 光通過部
a’ 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の基礎を構成する捨石の表面を均す重錘を支持する支持体の上部周囲に、均し面の位置を測定するための反射体を複数設け、上記支持体をワイヤーで吊り上げてから当該支持体を自重で落下させて基礎の表面を均す一方、上記反射体は、均し面の位置を検出するための受光手段に向かって光を反射させる構成にした水中基礎均し装置において、たるみを持った上記ワイヤーが反射体に当たるのを防止する防護体を設けるとともに、受光手段に向かって反射体から反射する光の光路に対応した位置に光通過部を設けた水中基礎均し装置。
【請求項2】
上記防護体は、上記反射体の上方に設けるとともに、その下方を上記光通過部とする一方、上記防護体は、複数の反射体が連続して形成する円周よりも外方に突出した外縁を備え、上記外縁は、たるんだワイヤーが当該外縁に当たったとき、ワイヤーが反射体に衝突しない関係位置を保持した請求項1記載の水中基礎均し装置。
【請求項3】
上記防護体をドーム状にした請求項1〜3のいずれかに記載の水中基礎均し装置。
【請求項4】
上記防護体は、反射体の上下に設けた一対の防護部材からなり、上記一対の防護部材間を上記光通過部とする一方、各防護部材は複数の反射体が連続して形成する円周よりも外方に突出した外縁を備え、上記外縁は、たるんだワイヤーが当該外縁に当たったとき、ワイヤーが反射体に衝突しない関係位置を保持した請求項1記載の水中基礎均し装置。
【請求項5】
上記防護体は、上記全ての反射体を囲うとともに、この防護体に上記光通過部を設けた請求項1に記載の水中基礎均し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−281064(P2010−281064A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133839(P2009−133839)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【特許番号】特許第4429376号(P4429376)
【特許公報発行日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000173164)
【Fターム(参考)】