説明

水中掘進装置及び水中掘進工法

【課題】 通常の潜水作業で止水扉の取外し及びシールド掘進機の分離が容易にでき、現地工事の期間及び費用の削減と安全性を確保する水中掘進装置及び掘進工法を提供する。
【解決手段】 それぞれ予め後端内部に第1、第2の止水扉が取付けられ、前端部がシールド掘進機の後端部に、後端部が推進管の前端部に着脱可能に連結される第1、第2の連結筒と、第1、第2の連結筒のそれぞれ後端部と前端部とを着脱自在に連結する連結部材と、を備え、第1、第2の止水扉には、各種連結配管及び配線類が挿通するための着脱可能な密閉蓋を備えた第1、第2の連結管挿通口が設けられ、発進立坑において順次シールド掘進機、第1、第2の連結筒及び推進管が一体に連結され、発進立坑からシールド掘進して汀線に近い水中到達位置に到達した後に、第1及び第2の連結筒の連結を解除してシールド掘進機が水中から回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸地から海中又は河川までの地下水路や貯水用等の水を通すトンネル、あるいは地下水が噴出する大深度トンネルなどを構築するための水中掘進装置及び水中掘進工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な二重矢板式締切工法、ケーソン式締切工法、盛土式締切工法などによりシールド掘進機の掘進到達位置である海や河川などの水中に到達立坑を設置する場合には、波浪、潮流、天候等に左右され易く施工期間が長引き、施工コストが高い上、生物の生態系に影響を及ぼすなどの環境保護上も好ましくないという問題点があった。
【0003】
近年、これらの問題点を改善する掘進工法として、次の二つの代表的な例が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1の水中へのトンネル貫通工法(図5参照)は、シールド発進位置に発進立坑(図示しない)を構築する工程と、発進立坑から汀線Tに近い位置までセグメント126を組み立てながらシールド掘進する工程と、汀線Tに近い位置のセグメント126内でシールド機124のテール部128に推進管130を連結しつつセグメント126内に配設した推進ジャッキ134により推進管130を推進させ、シールド機124を水中112に到達させる工程と、前記水中到達位置の推進管130に密閉蓋142を取り付けて止水する工程と、前記推進管130の密閉蓋142による密閉後、シールド機124を推進管130と切離して水中から取出す工程と、シールド機124の取出し後、水中より前記推進管130の密閉蓋130を取外す工程と、を有している。
【0005】
特許文献2の掘進機の回収方法(図6、7参照)は、陸上部に設けられた発進立坑(図示しない)から発進した掘進機216を、水中に設けられた到達立坑222に到達させた後に回収する掘進機216の回収方法において、前記到達立坑222内に水が収容された状態で、到達立坑222内に前記掘進機216を到達させた後に、構築した管路210の先端と掘進機216の後部との間に両端が連結された切断管218に止水壁227を形成して、前記管路210の先端側、又は前記掘進機216の後方側のいずれか一方もしくは双方を閉塞し、この後に、前記切断管218を切断して、前記管路210から掘進機216を分離させて引上げ撤去する工法である。
【特許文献1】特開平8−193489号公報
【特許文献2】特開2002−180779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の水中へのトンネル貫通工法は、推進管130を推進させ、シールド機124を水中に到達させた後、その水中到達位置において推進管130に密閉蓋142を取り付けて止水する工法で、密閉蓋142を水中到達位置において後付けするために水密状態に溶接などにより取り付ける熟練技術者による現地工事の期間及び費用が嵩むという問題点がある。
【0007】
また、密閉蓋142が1枚しかないため、熟練技術者の潜水夫が水中に潜りシールド機124の切り離し時に、シールド機124内に高圧水が急流入して潜水夫が吸い込まれる危険性があるなど安全上の問題点もある。
【0008】
特許文献2の掘進機の回収方法は、やはり水が収容された状態の到達立坑222において切断管218に止水壁227(1枚又は2枚)を後付けする工法で、止水壁227を切断管218に水密状態に溶接などにより取り付ける熟練技術者による現地工事の期間及び費用が嵩むという問題点がある。
【0009】
また、切断管218への止水壁227の取り付けが終了した後、潜水夫が水中に潜り切断管218の中央部に形成された切断線Cを切断して(図6参照)、セミシールド掘進機216を管路210の先頭推進管212から分離させるため、水中切断を行う熟練技術者による現地工事の期間及び費用がさらに嵩むなどの問題点がある。
【0010】
このように、特許文献1、2における工法においてはいずれも、水中到達位置において、排泥管や送水管などの各種連結管及び電装線類を切り離してから、シールド機と推進管との間の密閉蓋142(1枚)を推進管130に、あるいは止水壁227(1枚又は2枚)を切断管218に後付けし、さらにその後密閉蓋142あるいは止水壁227の除去及び切断管218の切断を行うための熟練技術者が必須であり、これによる現地工事及びそのコストが嵩むという問題点がある。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、熟練技術者の潜水作業による水中での止水扉の取付けや切断作業による取外し・分離等を省き、通常の潜水作業により止水扉の取外し及びシールド掘進機の分離が容易に素早くでき、現地工事の期間及び費用を大幅に削減するとともに安全性を確保することができる水中掘進装置及び掘進工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の水中掘進装置は、予め後端内部に水の浸入を防止するための第1の止水扉が取付けられ、前端部がシールド掘進機(又はセミシールド掘進機)の後端部に着脱可能に水密状態で連結される第1の連結筒と、予め後端内部に水の浸入を防止するための第2の止水扉が取付けられ、後端部が推進管の前端部に着脱可能に水密状態で連結される第2の連結筒と、前記第1の連結筒の後端部と第2の連結筒の前端部とを着脱可能に水密状態で連結する連結部材と、を備え、前記第1及び第2の止水扉には、それぞれシールド掘進機に連結する各種配管及び配線類が挿通するための開閉又は着脱可能な密閉蓋を備えた第1、第2の連結管挿通口が設けられ、陸上部に設けられた発進立坑で前記シールド掘進機、第1の連結筒、第2の連結筒及び推進管が順次連結され、発進立坑から順次推進管を連結しながらシールド掘進して汀線に近い水中到達位置又は地下水が充満する到達立杭に到達した後に、前記連結部材による第1及び第2の連結筒の連結を解除して、水中で分離されたシールド掘進機が回収されることを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載の水中掘進装置であって、第1及び第2の止水扉には、それぞれ作業員が出入りするための開閉又は着脱可能な密閉蓋を備えた第1、第2のアクセス口がさらに設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1記載の水中掘進装置であって、前記連結部材は、前端部が前記第1の連結筒の後端部に、外部締結部材により外部から又は内部締結部材により内部からのいずれかにより着脱可能に取り付けられることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1記載の水中掘進装置であって、前記第2の連結筒と推進管との連結は、第2の連結筒の後端内面部に前記推進管の前端外面部が水密状態で嵌入することにより行われることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1、請求項3又は請求項4のいずれか1項記載の水中掘進装置であって、前記第2の連結筒には、外部から水を充填するための開閉可能な注水弁又はプラグがさらに設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明の水中掘進工法は、陸上部に設けられた発進立坑から順次推進管を連結しながらシールド掘進して汀線に近い水中到達位置又は地下水が充満する到達立杭に到達した後にシールド掘進機(又はセミシールド掘進機)を回収する水中掘進工法であって、前記発進立坑で、予め後端内部に水の浸入を防止するための第1の止水扉が取付けられた第1の連結筒の前端部をシールド掘進機の後端部に着脱可能に水密状態で連結する第1の連結筒連結工程と、予め後端内部に水の浸入を防止するための第2の止水扉が取付けられた第2の連結筒の前端部を前記第1の連結筒の後端部に着脱可能な連結部材を介して水密状態で連結する第2の連結筒連結工程と、第2の連結筒の後端部に推進管の前端部を着脱可能に水密状態で連結してシールド掘進機、第1の連結筒、第2の連結筒及び推進管が順次連結された水中掘進装置を形成する水中掘進装置連結工程と、前記第1及び第2の止水扉にそれぞれ設けられた第1及び第2の連結管挿通口に各種配管及び配線類を挿通してシールド掘進機に連結する配管・配線連結工程と、発進立坑から水中到達位置又は到達立杭まで順次推進管を組立てながらシールド掘進するシールド掘進工程と、水中到達位置又は到達立杭において、シールド掘進機に連結された各種配管及び配線類を取外して第1及び第2の連結管挿通口をそれぞれ密閉蓋により密閉する配管・配線取外し工程と、水中の外部から第2の連結筒に設けられた注水弁又はプラグを開けて第2の連結筒内に水を充填して外部との水圧バランスさせる第2の連結筒内水圧バランス工程と、前記連結部材による第1及び第2の連結筒の連結を解除して、水中でシールド掘進機側を分離するシールド掘進機分離工程と、前記分離されたシールド掘進機側を水中から引上げ回収するシールド掘進機回収工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明は、請求項6記載の水中掘進工法であって、前記配管・配線連結工程あるいは配管・配線取外し工程においては、前記第1及び第2の止水扉にそれぞれ設けられた開閉又は着脱可能な密閉蓋を備えた第1及び第2のアクセス口から作業員が出入りして前記各種配管及び配線類の取付け・取外しを行い、それらの作業終了後に前記密閉蓋により第1及び第2のアクセス口を密閉することを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、請求項6又は請求項7記載の水中掘進工法であって、前記シールド掘進機回収工程の後、前記第2の連結筒が連結状態の推進管内に注水して外部との水圧バランスさせる推進管内水圧バランス工程と、前記第2の連結筒を推進管から分離して、第2の連結筒を水中から回収する第2の連結筒回収工程と、をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、発進立坑から発進する前又は発進後に順次シールド掘進機、第1の連結筒、第2の連結筒及び推進管が一体に連結されるとともに、連結管挿通口を備えた第1及び第2の止水扉がそれぞれ予め第1、第2の連結筒に取付けられた状態で、発進立坑からシールド掘進して水中到達位置又は到達立杭に到達した後に、連結部材による第1及び第2の連結筒の連結を容易に解除・分離可能な構成となっていることから、従来の特許文献1、2の工法のような水中到達位置において熟練技術者の潜水作業を要する密閉蓋あるいは止水壁の推進管あるいは切断管への後付けや切断管の切断などによる取外し・分離等を行う必要がないため、通常の潜水作業により第1及び第2の連結筒の連結を容易に素早く分離してシールド掘進機を回収することができる。また、第1及び第2の連結筒は、別の工事における水中掘進装置にも再使用することができる。これらにより、現地工事の期間及び費用を大幅に削減するとともに安全性を確保することができるという効果がある。
【0021】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様な効果を有するのに加えて、第1及び第2の止水扉にそれぞれ設けられた第1及び第2のアクセス口の密閉蓋を開けて作業員が出入りし、シールド掘進機の各種連結配管及び配線類の取付け・取外しを容易に行うことができる。このため、特に水中到達位置において、第1及び第2の連結筒を分離してシールド掘進機を回収する作業時間を短縮することができるという効果がある。
【0022】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様な効果を有するのに加えて、連結部材は、前端部が第1の連結筒の後端部に、外部締結部材により外部から又は内部締結部材により内部からのいずれかにより着脱可能に取り付けられる構成となっているので、前者による取付けの場合は通常の潜水作業により水中の外部から外部締結部材を解除して第2の連結筒側に取付け状態の連結部材と第1の連結筒との分離を容易に行うことも、あるいは後者による取付けの場合は水中掘進装置内を経由して作業員が前記第1及び第2のアクセス口から入って各種連結配管及び配線類を取り外すと同時に内部から内部締結部材を解除して第1の連結筒側に取付け状態の連結部材と第2の連結筒との分離を容易に行うこともできる。このため、特に水中到達位置において、第1及び第2の連結筒の分離作業の容易性及び安全性を確保するとともにシールド掘進機を回収する作業時間を短縮することができるという効果がある。
【0023】
請求項4の発明によれば、請求項1の発明と同様な効果を有するのに加えて、第2の連結筒の後端内面部に前記推進管の前端外面部が嵌入することにより第2の連結筒と推進管とが連結され構成となっているので、別途連結部材を必要とせず推進管に対する第2の連結筒の連結や通常の潜水作業による引き抜き・分離作業の容易性及び安全性を確保するとともにこれらの作業時間を短縮することができるという効果がある。
【0024】
請求項5の発明によれば、請求項1、請求項3又は請求項4のいずれか1項の発明と同様な効果を有するのに加えて、水中到達位置において第1及び第2の連結筒の分離に先立ち、通常の潜水作業により水中の外部から第2の連結筒に設けられた注水弁又はプラグを開けて第2の連結筒内に水を充填して外部との水圧バランスさせることが安全かつ容易にできるという効果がある。
【0025】
請求項6の発明によれば、発進立坑から発進する前又は発進後に順次シールド掘進機、第1の連結筒、第2の連結筒及び推進管を一体に連結するとともに、連結管挿通口を有する第1及び第2の止水扉をそれぞれ予め第1、第2の連結筒に取付けた状態で、発進立坑からシールド掘進して水中到達位置又は到達立杭に到達した後に、注水弁又はプラグを開けて第2の連結筒内に水を充填して外部と水圧バランスさせてから連結部材による第1及び第2の連結筒の連結を解除して、水中で分離したシールド掘進機側を回収する水中掘進工法であることから、上記請求項1又は請求項5の発明と全く同様の効果を有する。
【0026】
請求項7の発明によれば、請求項6の発明と同様な効果を有するのに加えて、第1及び第2の止水扉にそれぞれ設けられた第1及び第2のアクセス口の密閉蓋を開けて作業員が出入りし、シールド掘進機の各種連結配管及び配線類の取付け・取外しを行うことから、上記請求項2の発明と全く同様の効果を有する。
【0027】
請求項8の発明によれば、請求項6又は請求項7の発明と同様な効果を有するのに加えて、シールド掘進機回収工程の後、第2の連結筒が連結状態の推進管内に注水して外部と水圧バランスさせてから第2の連結筒を推進管から分離する水中掘進工法であることから、通常の潜水作業により第2の連結筒を推進管から容易に素早く分離して回収することができる。これにより、さらに現地工事の期間及び費用を削減するとともに安全性を確保することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の水中掘進装置を実施するための最良の形態の具体例を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
図1は本発明の一実施例の水中掘進装置の要部縦断面図、図2は図1のA−A線矢視図、図3は図1のB部(連結部材の要部)拡大図である。
【0030】
本発明の水中掘進装置は、シールド掘進機(又はセミシールド掘進機)10、第1の連結筒20、第2の連結筒30及び推進管40から概略構成され、これらが陸上部に設けられた図示しない発進立坑内において順次一体に連結され、推進管40を順次連結しながらシールド掘進して汀線に近い水中到達位置又はこの位置で地上に別途設けられた図示しない到達立杭まで掘進される。この水際の到達立杭内には、必然的に水が充満している。また、この水中掘進装置は、内陸地の大深度において到達立杭内に地下水が充満するような場合にも適用可能である。
【0031】
図1中の符号10t、20t、30tは、それぞれシールド掘進機10、第1の連結筒20、第2の連結筒30を吊り上げるための吊金具である。
【0032】
第1の連結筒20は、予め後端内部に水の浸入を防止するための第1の止水扉22が水密状態で取付けられており、前端部がシールド掘進機10の後端部にボルトなどの締結部材11により着脱可能に水密状態で連結される。
【0033】
第2の連結筒30は、予め後端内部に水の浸入を防止するための第2の止水扉32が水密状態で取付けられており、後端部が最前部の推進管40の前端部に着脱可能に水密状態で連結される。
【0034】
この場合、第2の連結筒30の後端内面部31に最前部の推進管40の前端外面部が着脱可能に水密状態で嵌入されるようになっており、シールド掘進中は推進管40が常に前方の第2の連結筒30の方向に押圧されているので、別途連結部材を用いなくても両者が分離することはない。
【0035】
なお、第1及び第2の止水扉22、32は、それぞれ第1、第2の連結筒20、30の後端部内に溶接付けされるか、又は図示しないボルトなどの締結部材により着脱可能に取り付けるようにしてもよい。
【0036】
そして、第1の連結筒20の後端部と第2の連結筒30の前端部とが後述する連結部材320を介して着脱可能に水密状態で連結されることにより、シールド掘進機10、第1の連結筒20、第2の連結筒30及び推進管40が一体に連結された水中掘進装置が形成される。また、第1及び第2の連結筒20、30は、別の工事における水中掘進装置にも再使用することができる。
【0037】
この場合、第1及び第2の止水扉22、32には、シールド掘進機10に連結する送水管12や排泥管13などの各種配管及び駆動制御用電装線等の配線類(図示しない)が挿通するための第1、第2の連結管挿通口24、34がそれぞれ設けられている。第1、第2の連結管挿通口24、34には、それぞれ開閉又は着脱可能な密閉蓋24a、34aが取り付けられるようになっている。密閉蓋24a、34aは、例えばいずれも図示しないロック式による開閉あるいはボルトによる着脱が可能である。
【0038】
このため、前記発進立坑内においてシールド掘進機10、第1の連結筒20、第2の連結筒30及び推進管40が一体に連結されて水中掘進装置が形成される際に、推進管40内を経由する前記各種配管及び配線類を第1、第2の連結管挿通口24、34に挿通してシールド掘進機10に連結することができる。すなわち、それぞれ第1、第2の連結管挿通口24、34を備えた第1、第2の止水扉22、32は、予め第1、第2の連結管内に取り付けられることが可能となっている。
【0039】
また、第1及び第2の止水扉22、32には、それぞれ作業員が出入りするための開閉又は着脱可能な密閉蓋23a、33aを備えた第1、第2のアクセス口23、33がさらに設けられている。密閉蓋23a、33aは、例えばいずれも図示しないロック式による開閉あるいはボルトによる着脱が可能である。
【0040】
このため、前記発進立坑内から水中掘進装置内に入った作業員が、第1及び第2のアクセス口23、33の密閉蓋23a、33aを開けて出入りし、シールド掘進機10の前記各種連結配管及び配線類の取付け・取外しを容易に行うことができる。これらの作業終了後に第1及び第2のアクセス口23、33は、密閉蓋23a、33aにより密閉される。
【0041】
連結部材320は、図3に示すように、第2の連結筒30の前端内面に後端部が挿入され固着された筒部322と筒部322の前端部に固着された前端フランジ部321とからなり、前端フランジ部321及び筒部322の前端部外周が第1の連結筒20の後端内面部20aにシール部材323を介して水密状態に挿入されるように構成されている。前端フランジ部321の外側寄りPCD(ピッチ円)にはねじ穴321aが、その内側寄りPCDにはボルト挿通孔321bがそれぞれ複数等配され穿設されている。そして、前端フランジ部321が第1の連結筒20の後端部に、第1の止水扉22に設けられたボルト挿通孔22aを経てねじ穴321aに外部から挿通されたボルトなどの外部締結部材21aによるか、又はボルト挿通孔321bを経て第1の止水扉22に設けられたねじ穴22bに第2の連結筒30の内部から挿通されたボルトなどの内部締結部材21bによるかのいずれかの方法により着脱可能に取り付けられる。また、前端フランジ部321と第1の止水扉22との間には、外部からの水をシールするシール部材324が嵌装されている。このようにして、第1の連結筒20の後端部と第2の連結筒30の前端部とは連結部材320を介して、外部締結部材21aにより外部から又は内部締結部材21bにより内部からのいずれかの方法により着脱可能に水密状態で連結される。
【0042】
このため、通常の潜水作業により水中の外部から外部締結部材21aを解除して第2の連結筒30側に取付け状態の連結部材320と第1の連結筒20との分離を容易に行うことも、あるいは水中掘進装置内を経由して作業員が第1及び第2のアクセス口23、33から入って各種連結配管及び配線類を取り外すと同時に内部から内部締結部材21bを取り外して第1の連結筒側に取付け状態の連結部材320と第2の連結筒30との分離を容易に行うこともできる。
【0043】
なお、前記外部締結部材21a又は内部締結部材21bは、通常は、水中でのシールド掘進機10の自重による沈下又は浮力による浮き上がり等を防止するために用いられるが、例えば水中の到達立坑であらかじめシールド掘進機10の沈下や浮き上がり等を防止するガイド(図示しない)を別に設けることができる場合は、これらの締結部材21a又は21bを省略することもできる。後者の場合、図3を参照して上述したように、第2の連結筒30の前端内面に固着された連結部材320の前端フランジ部321及び筒部322の前端部外周が第1の連結筒20の後端内面部20aに水密状態に挿入されるようになっており、シールド掘進中は推進管40を介して第2の連結筒30に固着された連結部材320が常に前方の第1の連結筒20の方向に押圧されているので、別途前記締結部材21a又は21bを用いなくても両者が分離することはないからである。従って、特に後者の場合は、前記締結部材21a又は21bを用いないため、第1及び第2の連結筒20、30の連結及びその連結をさらに一層容易に解除し分離することができる。
【0044】
また、第2の連結筒30には、外部から水を充填するための開閉可能な注水弁又はプラグ35がさらに設けられている。
【0045】
以上のような構成により、水中到達位置において、先ずシールド掘進機10の前記各種連結配管及び配線類を取外した後、通常の潜水作業により水中の外部から第2の連結筒30に設けられた注水弁又はプラグ35を開けて第2の連結筒30内に水を充填して外部と水圧バランスさせてから、連結部材320による第1及び第2の連結筒20、30の連結を容易に解除し分離することができる。このため、シールド掘進機10の分離及び回収作業を短時間で安全かつ容易に行うことができる。
【0046】
次に、本発明の上記水中掘進装置を用いて、例えば地下水路を構築するため陸地から海中までシールド掘進する水中掘進工法について説明する。
図4は、図1の第1及び第2連結管20、30を分離してシールド掘進機10を回収する状況の説明図である。
【0047】
この例では、順次以下の工程により、陸上部50に設けられた発進立坑(図示しない)から順次推進管40を連結しながらシールド掘進して汀線51に近い水中到達位置に到達した後にシールド掘進機(又はセミシールド掘進機)10を水中(海中)60から回収する。
【0048】
先ず前記発進立坑から発進する前に、予め後端内部に水の浸入を防止するための第1の止水扉22が取付けられた第1の連結筒20の前端部をシールド掘進機10の後端部にボルトなどの締結部材11により着脱可能に水密状態で連結する(第1の連結筒連結工程)。
【0049】
また、前記第1の連結筒20の後端部と第2の連結筒30の前端部とを外部又は内部から着脱可能な前記連結部材320(図3参照)を介して水密状態で連結する(第2の連結筒連結工程)。
【0050】
次いで、予め後端内部に水の浸入を防止するための第2の止水扉32が取付けられた第2の連結筒30の後端部を最前部の推進管40の前端部に着脱可能に水密状態で連結して、シールド掘進機10、第1の連結筒20、第2の連結筒30及び推進管40が一体に連結された水中掘進装置を形成する(水中掘進装置連結工程)。この場合、第2の連結筒30の後端内面部31に最前部の推進管40の前端外面部を着脱可能に水密状態で嵌入し、それ以降のシールド掘進中は推進管40が常に前方の第2の連結筒30の方向に押圧されることから両者が分離することはないので、別途ボルトなどの締結部材は不要である。
【0051】
なお、第1の連結筒連結工程、第2の連結筒連結工程及び水中掘進装置連結工程において、シールド掘進機10、第1の連結筒20、第2の連結筒30及び推進管40の連結の順序は任意に変更してもよい。
【0052】
そして、前記第1及び第2の止水扉22、32にそれぞれ設けられた第1及び第2の連結管挿通口24、34に推進管40内を経由する送水管12や排泥管13などの各種配管及び駆動制御用電装線等の配線類(図示しない)を挿通してシールド掘進機10に連結する(配管・配線連結工程)。
【0053】
その後、発進立坑から汀線51に近い水中到達位置まで推進管40を順次連結して(組立て)シールド掘進する(シールド掘進工程)。
【0054】
この水中到達位置において、シールド掘進機10に連結された各種配管及び配線類を取外して第1及び第2の連結管挿通口24、34をそれぞれ密閉蓋24a、34aにより水密状態で閉鎖する(配管・配線取外し工程)。
【0055】
なお、前記配管・配線連結工程及び配管・配線取外し工程においては、前記発進立坑内から水中掘進装置内に入った作業員が、第1及び第2のアクセス口23、33の密閉蓋23a、33aを開けて出入りし、シールド掘進機10の前記各種連結配管及び配線類の取付け・取外しを行う。これらの作業終了後に第1及び第2のアクセス口23、33をそれぞれ密閉蓋23a、33aにより水密状態で閉鎖する。
【0056】
引き続き、通常の潜水作業により水中の外部から第2の連結筒30に設けられた注水弁又はプラグ35を開けて第2の連結筒30内に水を充填して外部と水圧バランスさせる(第2の連結筒内水圧バランス工程)。
【0057】
第2の連結筒30内の水圧バランスが十分に行われたことを確認した後、通常の潜水作業により水中の外部から外部締結部材21aを取り外して連結部材320による第1及び第2の連結筒20、30の連結を解除してシールド掘進機10側を分離する(シールド掘進機分離工程)。
【0058】
あるいは、このシールド掘進機分離工程においては、水中掘進装置内を経由して作業員が第1及び第2のアクセス口23、33から入って各種連結配管及び配線類を取り外す配管・配線取外し工程に引き続き、第2の連結筒30内の水圧バランスが十分に行われたこと(第2の連結筒内水圧バランス工程)を確認した後、内部から内部締結部材21bを取り外して第1の連結筒20と第2の連結筒30側に固着された連結部材320との分離を容易に行うこともできる。
【0059】
そして、前記分離されたシールド掘進機10側を図示しない回収船などによりワイヤロープ70で吊金具10t部を吊り引上げて回収する(シールド掘進機回収工程)。
【0060】
前記シールド掘進機回収工程の後、前記第2の連結筒30が連結状態の推進管40内に注水して外部と水圧バランスさせる(推進管内水圧バランス工程)。この場合、前記発進立坑側から推進管40内に注水する方法、あるいは水中到達位置側の第2の連結筒30の第2の止水扉32に設けられた図示しない注水弁又はプラグを水中の外部から開けて推進管40内に注水する方法がある。
【0061】
推進管40内の水圧バランスが十分に行われたことを確認した後、通常の潜水作業により第2の連結筒30を推進管40から分離して、第2の連結筒30を水中から回収する(第2の連結筒回収工程)。
【0062】
このように、本発明の水中掘進装置を用いた掘進工法によれば、発進立坑において順次シールド掘進機10、第1の連結筒20、第2の連結筒30及び推進管40が一体に連結されるとともに、第1、第2の連結管挿通口24、34を備えた第1、第2の止水扉22、32がそれぞれ予め第1、第2の連結筒20、30に取付けられた状態で、発進立坑からシールド掘進して水中到達位置又は到達立杭に到達した後に、熟練技術者の潜水作業を必要とせず、通常の潜水作業により水中の外部又は水中掘進装置の内部から連結部材320による第1及び第2の連結筒20、30の連結を容易に素早く分離してシールド掘進機を回収するとともに、第2の連結筒30と推進管40との連結を容易に素早く解除し分離して第2の連結筒30を回収することができる。これにより、現地工事の期間及び費用を大幅に削減するとともに安全性を確保することができる。
【0063】
また、この水中掘進工法は、内陸地の大深度において到達立杭内に地下水が充満するような場合にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施例の水中掘進装置の要部縦断面図である。
【図2】図1のA−A線矢視図である。
【図3】図1のB部(連結部材の要部)拡大図である。
【図4】図1の第1及び第2連結管を分離してシールド掘進機を回収する状況の説明図である。
【図5】従来(特許文献1)の水中へのトンネル貫通工法における掘進装置の縦断面図である。
【図6】従来(特許文献2)の掘進機の回収方法における掘進装置の縦断面図である。
【図7】図6の要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 シールド掘進機(又はセミシールド掘進機)
11 締結部材(ボルト)
12 送水管
13 排泥管
20 第1の連結筒
20a、31 後端内面部
21a 外部締結部材(ボルト)
21b 内部締結部材(ボルト)
22 第1の止水扉
22a、321b ボルト挿通孔
22b、321a ねじ穴
23 第1のアクセス口
23a、24a、33a、34a 密閉蓋
24 第1の連結管挿通口
30 第2の連結筒
32 第2の止水扉
33 第2のアクセス口
34 第2の連結管挿通口
35 注水弁又はプラグ
40 推進管
320 連結部材
321 前端フランジ部
322 筒部
323、324 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め後端内部に水の浸入を防止するための第1の止水扉が取付けられ、前端部がシールド掘進機(又はセミシールド掘進機)の後端部に着脱可能に水密状態で連結される第1の連結筒と、
予め後端内部に水の浸入を防止するための第2の止水扉が取付けられ、後端部が推進管の前端部に着脱可能に水密状態で連結される第2の連結筒と、
前記第1の連結筒の後端部と第2の連結筒の前端部とを着脱可能に水密状態で連結する連結部材と、を備え、
前記第1及び第2の止水扉には、それぞれシールド掘進機に連結する各種配管及び配線類が挿通するための開閉又は着脱可能な密閉蓋を備えた第1、第2の連結管挿通口が設けられ、
陸上部に設けられた発進立坑で前記シールド掘進機、第1の連結筒、第2の連結筒及び推進管が順次連結され、発進立坑から順次推進管を連結しながらシールド掘進して汀線に近い水中到達位置又は地下水が充満する到達立杭に到達した後に、前記連結部材による第1及び第2の連結筒の連結を解除して、水中で分離されたシールド掘進機が回収されることを特徴とする水中掘進装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の止水扉には、それぞれ作業員が出入りするための開閉又は着脱可能な密閉蓋を備えた第1、第2のアクセス口がさらに設けられていることを特徴とする請求項1記載の水中掘進装置。
【請求項3】
前記連結部材は、前端部が前記第1の連結筒の後端部に、外部締結部材により外部から又は内部締結部材により内部からのいずれかにより着脱可能に取り付けられることができることを特徴とする請求項1記載の水中掘進装置。
【請求項4】
前記第2の連結筒と推進管との連結は、第2の連結筒の後端内面部に前記推進管の前端外面部が水密状態で嵌入することにより行われることを特徴とする請求項1記載の水中掘進装置。
【請求項5】
前記第2の連結筒には、外部から水を充填するための開閉可能な注水弁又はプラグがさらに設けられていることを特徴とする請求項1、請求項3又は請求項4のいずれか1項記載の水中掘進装置。
【請求項6】
陸上部に設けられた発進立坑から順次推進管を連結しながらシールド掘進して汀線に近い水中到達位置又は地下水が充満する到達立杭に到達した後にシールド掘進機(又はセミシールド掘進機)を回収する水中掘進工法であって、
前記発進立坑で、予め後端内部に水の浸入を防止するための第1の止水扉が取付けられた第1の連結筒の前端部をシールド掘進機の後端部に着脱可能に水密状態で連結する第1の連結筒連結工程と、
予め後端内部に水の浸入を防止するための第2の止水扉が取付けられた第2の連結筒の前端部を前記第1の連結筒の後端部に着脱可能な連結部材を介して水密状態で連結する第2の連結筒連結工程と、
第2の連結筒の後端部に推進管の前端部を着脱可能に水密状態で連結してシールド掘進機、第1の連結筒、第2の連結筒及び推進管が順次連結された水中掘進装置を形成する水中掘進装置連結工程と、
前記第1及び第2の止水扉にそれぞれ設けられた第1及び第2の連結管挿通口に各種配管及び配線類を挿通してシールド掘進機に連結する配管・配線連結工程と、
発進立坑から水中到達位置又は到達立杭まで順次推進管を組立てながらシールド掘進するシールド掘進工程と、
水中到達位置又は到達立杭において、シールド掘進機に連結された各種配管及び配線類を取外して第1及び第2の連結管挿通口をそれぞれ密閉蓋により密閉する配管・配線取外し工程と、
水中の外部から第2の連結筒に設けられた注水弁又はプラグを開けて第2の連結筒内に水を充填して外部との水圧バランスさせる第2の連結筒内水圧バランス工程と、
前記連結部材による第1及び第2の連結筒の連結を解除して、水中でシールド掘進機側を分離するシールド掘進機分離工程と、
前記分離されたシールド掘進機側を水中から引上げ回収するシールド掘進機回収工程と、を有することを特徴とする水中掘進工法。
【請求項7】
前記配管・配線連結工程あるいは配管・配線取外し工程においては、前記第1及び第2の止水扉にそれぞれ設けられた開閉又は着脱可能な密閉蓋を備えた第1及び第2のアクセス口から作業員が出入りして前記各種配管及び配線類の取付け・取外しを行い、それらの作業終了後に前記密閉蓋により第1及び第2のアクセス口を密閉することを特徴とする請求項6記載の水中掘進工法。
【請求項8】
前記シールド掘進機回収工程の後、前記第2の連結筒が連結状態の推進管内に注水して外部との水圧バランスさせる推進管内水圧バランス工程と、
前記第2の連結筒を推進管から分離して、第2の連結筒を水中から回収する第2の連結筒回収工程と、をさらに有することを特徴とする請求項6又は請求項7記載の水中掘進工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−274614(P2008−274614A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118225(P2007−118225)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000115500)ラサ工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】