説明

水中構造物の切断方法及び切断装置

【課題】河川や海上における橋梁やその他大型建築物の基礎として水中に存在する大型口径杭やコンクリート構造物を効率よく安全に切断可能な水中構造物の切断方法及び切断装置を提供する。
【解決手段】水中杭3内を予めコア抜きし、内部に切断部7を挿入する。切断部7は回転装置23により杭内部で回転する。切断部7にはアブレイシブジェット切断用のノズルが設けられ、杭内部で回転しながら水中杭3を切断する。杭内部5の圧力は、切断位置における外部の静水圧以上の圧力に保たれる。切断部には水中カメラが設けられ、切断状況を把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や海上における橋梁やその他大型建築物の基礎として水中に存在する場所打ち杭やコンクリート杭、鋼管杭等に対し、特に、大型口径杭やコンクリート構造物を効率よく安全に切断可能な水中構造物の切断方法及び切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路等の基礎として使用してきた基礎杭等は、新規に築造した基礎に受け変えた後に切断撤去する必要がある。この際、特に河川や海上にある杭は、川床よりも低い位置で切断することが要求される。このような場合には、杭周辺の土留後に掘削し、潜水夫がワイヤーソー等によって水中にて当該杭の切断作業を行う必要がある。しかし、このような作業は危険を伴い、また作業に多くの工数を要する。また、杭頭制限があり、杭打ち機が杭周辺に近づくことが出来ない場合や、杭周辺が地盤改良されており、又は障害物が埋設されており、必要深さまで土留めが設置できない場合もある。
【0003】
このような問題に鑑み、最近では、既設の杭を切断する方法として、対象となる杭をコア抜きし、切断装置自体を杭内の切断位置に設置して、杭の内側から切断する方法が採用されている。
【0004】
既設の杭を切断する方法としては、例えば(1)コア抜きした内部にカッターディスクを設置して内部より切断する方法がある。また、(2)既設の鋼管杭を切断する装置として、プラズマトーチによる切断機をコア抜きした杭内で回転させて切断する切断装置がある(特許文献1)。
【0005】
一方、水中以外の大型構造物の切断としては、例えば(3)アブレイシブジェットを用いた切断方法がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平7−100654号公報
【特許文献2】特開2000−2089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、(1)の切断方法では、カッターディスクの径とコア抜き径により、切断厚さに制限があるため、大口径の杭の切断は困難であり、また、切断が確実に終了したかどうかを確認するのが困難であるという問題がある。また、(2)による切断装置では、鋼管杭には適用可能であるが、コンクリート杭等については適用できず、また、切断が確実に終了したか確認するのが困難であるという問題がある。更に(3)の切断方法は、水中又は水流中では切断能力が著しく悪化し、厚肉の構造物の切断には適用できないという問題がある。よって、いずれの方法でも、水中の大型口径杭やコンクリート構造物を確実に切断することは困難である。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、河川や海上における橋梁やその他大型建築物の基礎として水中に存在する場所打ち杭やコンクリート杭、鋼管杭等に対し、特に、大型口径杭やコンクリート構造物を効率よく、かつ安全に切断可能な水中構造物の切断方法及び切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、水中の構造物を切断する方法であって、構造物の内部をコア抜きする工程(a)と、切断機を前記構造物へ設置する工程(b)と、前記構造物の内部を所定の圧力に保つ工程(c)と、前記切断機で前記構造物を切断する工程(d)と、を具備することを特徴とする水中構造物の切断方法である。構造物としては、例えば場所打ち杭、コンクリート杭、鋼管杭がある。
【0009】
前記切断機はアブレイシブジェットを用いてもよい。
【0010】
前記工程(a)におけるコア抜きの深さは、前記構造物内部の切断部位下部に、前記アブレイシブジェットにより噴射された研磨材の溜り部が形成される深さであってもよい。
【0011】
前記工程(c)において、前記構造物の内部の圧力を、前記構造物の切断部位が外部から受ける水圧以上に保ってもよい。
【0012】
前記工程(d)の後に、前記構造物の切断が終了したことを確認する工程(e)を更に具備してもよい。前記工程(e)において、前記構造物の切断終了の確認を、前記構造物の高さ変化の確認により行ってもよく、水中カメラにより行ってもよい。
【0013】
第1の発明によれば、河川や海上における橋梁やその他大型建築物の基礎として水中に存在する場所打ち杭やコンクリート杭、鋼管杭等の構造物に対し、コア抜きを終えた構造物内部の圧力を、切断位置における周囲の水圧以上の圧力に保つことで、切断位置から構造物内部への水の流入を防ぎ、このためアブレイシブジェットによる切断を高効率に行うことが出来、また構造物内下部に、アブレイシブジェットにより噴射された研磨材を溜めることができ、研磨材による排水ポンプの磨耗等が発生することがなく、更に、切断終了を、構造物の高さ変化又は水中カメラにより知ることが出来、効率よく安全に切断可能な水中構造物の切断方法を提供することができる。
【0014】
第2の発明は、水中の構造物を切断する装置であって、前記構造物の内部の圧力を一定に保持する圧力調整手段と、前記構造物を切断する切断機と、前記構造物内部の水及び/又は土砂を排出可能な排出手段と、を具備することを特徴とする水中構造物切断装置である。
【0015】
前記切断機はアブレイシブジェットを用いてもよく、また、水中カメラを更に具備し、切断部位の観察が可能であってもよい。
【0016】
第2の発明によれば、河川や海上における橋梁やその他大型建築物の基礎として水中に存在する場所打ち杭やコンクリート杭、鋼管杭等の構造物に対し、コア抜きを終えた構造物内部の圧力を、切断位置における周囲の水圧以上の圧力に保つことで、切断位置から構造物内部への水の流入を防ぎ、このためアブレイシブジェットによる切断を高効率に行うことが出来、又、構造物内部へ流入した土砂や水を排水ポンプで排出することができ、更に、切断終了を、水中カメラにより知ることが出来、効率よく安全に切断可能な水中構造物の切断装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、河川や海上における橋梁やその他大型建築物の基礎として水中に存在する場所打ち杭やコンクリート杭、鋼管杭等に対し、特に、大型口径杭やコンクリート構造物を効率よく安全に切断可能な水中構造物の切断方法及び切断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態にかかる切断機1の外観を示す概略図である。
【0019】
切断機1は、主に切断部7、排水ポンプ9、回転軸21、フランジ27、気密蓋25、回転装置23等から構成される。フランジ27は水中杭3と気密蓋25とを接続し、予めコア抜きされた杭内部5を気密に保つことが出来る。回転軸21は、杭内部5を気密状態に保ちつつ気密蓋25を貫通する。回転軸21の端部は気密蓋25上の架台26に設けられた回転装置23と接続される。杭内部5内に伸びる回転軸21のもう一方の端部には切断部7が接続される。また、回転軸21内には排水管13が設けられ、端部は排水ポンプとしてのサンドポンプ9に接続される。
【0020】
フランジ27には、送気配管15と排気管17が設けられ、杭内部5と接続される。排気管17には排気弁19が設けられる。送気配管15は、後述する圧力調整装置40と接続されており、フランジ27、気密蓋25により気密に保たれた杭内部5の圧力を調整することが出来る。なお、フランジ27及び気密蓋25には、パッキンやロータリーシール等によって、各種のシールが施されており、配管類や回転軸が貫通し又は接続された部位からの漏気を防いでいる。
【0021】
高圧水ホース9、研磨材供給ホース11は、気密蓋25を貫通し、切断部7に接続され、それぞれ、高圧水および研磨材を切断部7に供給する。なお、高圧水ホース9、研磨材供給ホース11は特定しないが、例えば通常の耐圧ホースが使用できる。切断部7は回転装置23によって、回転軸21を介して杭内部5で回転可能である。切断部7については、詳細を後述する。
【0022】
切断機1は、上部を予め切断され、コア抜きされた水中杭3に設置される。切断機1による水中杭3の切断は、地面31よりも深い位置で行われる。よって、切断機1の切断部7は、地面31よりも深い切断位置に設置される。切断部7下にはサンドポンプ9が設けられる。切断位置には、水面29からの深さに応じた水圧がかかるため、後述する圧力調整装置40を用いて、杭内部5の圧力を水圧以上に保ったとしても、切断時に外部からわずかに土砂や水が流入する恐れがある。よって、サンドポンプ9は杭内部5に流入した土砂や水を排水管13を介して杭外部に排出することができる。
【0023】
切断部7の構造を図2に示す。図2(a)は側方から見た図であり、図2(b)は下部より見た図である。切断部7は、ノズルガイド33、切断ノズル35、水中カメラ37、ガイドロール39から構成される。
【0024】
ノズルガイド33は略直方体であり、上面中央には回転軸21が接続される。回転軸21内には、排水管13が貫通しており、図示を省略したサンドポンプ9と接続される。ノズルガイド33の両側面には、一対の切断ノズル35がそれぞれノズルを反対側の外方に向けて設置される。切断ノズル35には、それぞれ高圧水ホース9と研磨材供給ホース11が接続される。
【0025】
ノズルガイド33の上面には、切断ノズル35と同方向に外方に向けて一対のガイドロール39が設置される。また、ノズルガイド33の底面には、切断ノズル35と同方向にむけて一対の水中カメラ37が設置される。
【0026】
ノズルガイド33は、回転軸21により回転する。切断ノズル35に高圧水ホース9及び研磨材供給ホース11により、高圧水および研磨材を供給することで、ノズル先端より研磨材及び水を高圧で噴射することができる。これら研磨材及び高圧水により対象部の切断を行う。研磨材は特定しないが、例えばガーネットが使用できる。
【0027】
また、ガイドロール39は杭内部5の内面と接触し、切断ノズル35先端と杭内部5内面との距離を一定に保ち、切断距離を適正に保つ役割を果たす。よって、ノズルガイド33のサイズは、コア抜き径よりもやや小さく、また、ガイドロール39により切断距離を保つことが出来るようなサイズであることが望ましい。また、ノズルガイド33の材質は特定しないが、例えば鋼材、アルミニウム合金等が使用できる。
【0028】
水中カメラ37は、図示しないケーブルにて外部に設けられたモニターに接続され、切断部をリアルタイムで監視することが出来る。よって、切断状態を、外部にて把握することが出来る。
【0029】
図3は、切断機1に接続された圧力調整装置40を示す概略図である。圧力調整装置40は、主にコンプレッサ41、リザーバタンク42、圧力調整器43から構成され、切断機1とは、送気配管15、杭内圧接続ホース49により接続される。
【0030】
圧力調整器43は送気弁45を具備し、送気配管15、杭内圧接続ホース49、元圧接続ホース47、リザーバタンク42と接続される。杭内圧接続ホース49は、杭内部5の圧力を送気弁45へフィードバックし、杭内部5の圧力が所定の圧力(例えば、切断位置における水圧)以下となると、送気弁45が開き、送気配管15を介して杭内部5に送気を行う。なお、切断が進行すると、水中杭3の切断位置からの漏気量が増すため、杭内部5の圧力を一定に保つためには、漏気量に応じた送気を行う必要がある。よって、コンプレッサ41、リザーバタンク42の容量は、予め漏気量の最大量を想定し、これよりも大きな送気量を得ることが出来るだけの容量が必要である。また、杭内部5の圧力が所定値以上となると、排気弁19が開き、杭内部5の圧力が高くなりすぎることを防ぐことが出来る。
【0031】
次に、水中構造物の切断工程について説明する。図4は、切断工程を示すフローチャートである。なお、本実施の形態においては、水中構造物として水中杭3の切断を行うものとする。
【0032】
まず、水中杭3の水上部を切断する(ステップ101)。図5(a)は、水中杭3の水面29上部を切断した状態を示す。なお、水上部における切断であるので、切断方法は、通常のワイヤーソーやカッターディスク、その他ウォータージェット等による方法が使用できる。
【0033】
次に、水中杭3のコア抜きを行う(ステップ102)。図5(b)に示すように水中杭3にコア抜きを行い、杭内部5が形成される。ここで、コア抜き深さは、地面31下の切断位置よりも更に深くし、後述する研磨材溜り部が形成される深さとする。また、コア抜きの径は、アブレイシブジェットによる構造物の切断可能厚さを考慮して決定される。
【0034】
次に、水中杭3に切断機1を設置する(ステップ103)。図5(c)は、切断機1を設置した状態を示す図である。切断機1の設置に伴い、切断機1と接続される圧力調整装置40も設置される。なお、切断部7が切断深さに設置されるように、予め回転軸21や架台26等の長さが調整される。
【0035】
次に、杭内部5の圧力を圧力調整装置40にて調整し、所定の圧力とする。圧力は、切断位置に作用する外部からの水圧以上である必要がある。また、切断部から漏気するため、漏気量に応じた送気を行い、杭内部5の圧力を一定範囲内に調整する。杭内部の圧力範囲としては、例えば切断深さに応じた切断位置における静水圧以上であり、また、当該静水圧の1.2倍程度までの範囲とすればよい。杭内部5の圧力が規定値内に入ったことが確認できたら切断機1の動作を開始する(ステップ104〜106)。
【0036】
図6は、切断機1が動作を開始した状態を示す図であり、図7は、切断部7近傍の詳細を示す図である。回転装置23が回転すると、回転軸21を介して切断部7が杭内部5で回転する。切断部7に設けられた切断ノズル35からは、研磨材と高圧水が噴射され、杭内部5から水中杭3を切断する。杭内部5は、切断位置の水圧よりも高圧に保たれているが、切断位置からは杭内部5の空気が漏気すると共に、切断位置の周囲の土砂や水からなる浸入土砂水55がわずかに杭内部5に流入する。また、切断ノズル35から噴射された研磨材と水の混合物である噴射研磨材混合水57も杭内部5に溜まる。
【0037】
前述の通り、コア抜きは、研磨材溜まり53が形成される深さまで行われる。よって、噴射研磨材混合水57に含まれる比重の大きな研磨材は研磨材溜まり部53に沈殿し堆積する。一方、浸入土砂水55や噴射研磨材混合水57に含まれる水の混合水である土砂混合水61は、サンドポンプ9により排出される。
【0038】
なお、切断の際に、アブレイシブジェット切断によって熱が発生し、杭内部5の温度が上昇する恐れがある。この場合に、サンドポンプ9がサーマルトリップにより停止し、又は、杭内部5の水の蒸発によって、後述する水中カメラ37による内部確認の妨げとなる恐れがある。このため、必要に応じて、杭内部5に冷却用に別途水を補給することもできる。
【0039】
切断部7は、回転しながら杭内部5より水中杭3の切断を行い、切断ノズル35が反対方向に一対設置されている場合は、切断部7が180度回転した状態で、水中杭3全周の切断が終了する。この際、切断が確実に終了し、切断残りなどがないかを知るためには、水中カメラ37による切断位置の確認が行われる。水中カメラ37による映像は、切断時においても確認することができ、切断残りがないかを確実に知ることが出来る。
【0040】
また、水中カメラ37による確認に代えて、又は併用可能な切断確認方法としては、水中杭の高さ変化による方法がある。図8は、切断終了時の水中杭3の高さ変化を示す図であり、図8(a)は、切断が終了した状態を示す図、図8(b)は、図8(a)のA部拡大図である。
【0041】
水中杭3の全周が切断されると、切断厚63に応じた高さだけ、水中杭3の切断上部の高さが下がる。よって、水上において、水中杭3の高さ変化を確認することで、水中杭3の切断が終了したことを確実に知ることができる。
【0042】
水中杭3の切断が完了すると、切断機1を撤去する。図9(a)は切断機1が撤去された状態を示す図である。切断機1の撤去の際に、杭内部5に残圧がある場合は、排気弁19をゆっくりと開き、残圧を抜くことで安全に切断機1を撤去することが出来る。
【0043】
最後に、切断杭を撤去し、地面31を埋め戻すことで、水中杭3の切断が終了する。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態にかかる切断方法によれば、水中の構造物を安全かつ確実に切断することができる。
【0045】
特に、切断ノズル35としてアブレイシブジェットを用いれば、大口径の杭や大型コンクリート構造物などの切断厚さのある構造物を簡易に切断することができる。また、このため、事前に行うコア抜き径を必要以上に大きくする必要がない。
【0046】
また、圧力調整装置40を用い、杭内部5の圧力を切断深さに応じた水圧以上に保つため、切断位置からの浸入土砂水55の流入を抑えることができ、アブレイシブジェットの切断能力が妨げられることがなく、高い切断能力を維持することができる。また、杭内にわずかに流入した浸入土砂水55やノズルから噴射された水は、ポンプによって排出することができるため、切断に悪影響を及ぼすことがない。
【0047】
更にアブレイシブジェットにより噴射された研磨材は、そのまま排水ポンプ等で排出すると、ポンプ内のインペラ等の磨耗を引き起こし、ポンプ能力の低下やポンプ破損のおそれがあるが、研磨材溜まり部53を形成することで、研磨材がポンプによって排出されることがなく、ポンプ能力を維持することができる。
【0048】
また、水中カメラ37によって水中杭3の切断終了の確認を行うことができる。更に、切断後の水中杭3の高さ変化によっても、切断終了を確認することができる。よって、切断残りなどがなく切断が終了したことを確実に知ることができ、切断残りなどにより手戻り工程などが生じず、効率よく切断作業を行うことができる。
【0049】
次に、第2の実施の形態に係る切断部70について説明する。なお、以下の切断部70の説明において、切断部7と同一の機能を果たす構成要素には、図2と同一の番号を付し、重複した説明を避ける。
【0050】
切断部70は、切断部7と同様に切断機1において使用される。図10は切断部70を示した図であり、図10(a)は、切断部70を下方より見た図、図10(b)は、図10(a)の矢視A方向よりみた切断部70の側面図である。切断部70は、ノズルガイド71、切断ノズル35、水中カメラ37等から構成される。ノズルガイド71は、三つの略直方体の部材が、互いに略120度間隔で三ツ又状に中心で合わさった形状である。ノズルガイド71の上面中央には回転軸21が接続される。回転軸21内には、排水管13が貫通しており、図示を省略したサンドポンプ9と接続される。
【0051】
ノズルガイド71の3方向に伸びた部分のそれぞれの側面部には、切断ノズル35がノズルをそれぞれ3方向外方へ向けて3個設けられる。ノズルガイド71の底面には、水中カメラ37が、それぞれノズル方向と同一の方向に向けて設置される。ノズルガイド71上面には、切断部7と同一の方向にガイドロール39が設けられ、また、切断ノズル35には、高圧水ホース9と研磨材供給ホース11が接続される。
【0052】
ノズルガイド71は、回転軸21により回転する。切断ノズル35に高圧水ホース9及び研磨材供給ホース11により、高圧水および研磨材を供給することで、ノズル先端より研磨材及び水を高圧で噴射することができる。これら研磨材及び高圧水により対象部の切断を行う。研磨材は特定しないが、例えばガーネットが使用できる。
【0053】
また、ガイドロール39は杭内部5の内面と接触し、切断ノズル35先端と杭内部5内面との距離を一定に保ち、切断距離を適正に保つ役割を果たす。よって、ノズルガイド33のサイズは、コア抜き径よりもやや小さく、また、ガイドロール39により切断距離を保つことが出来るようなサイズであることが望ましい。また、ノズルガイド33の材質は特定しないが、例えば鋼材、アルミニウム合金が使用できる。
【0054】
水中カメラ37は、図示しないケーブルにて外部に設けられたモニターに接続され、切断部をリアルタイムで監視することが出来る。よって、切断不良や切断が完了した状態を、外部にて把握することが出来る。
【0055】
第2の発明に係る切断部70を用いた切断機1によれば、切断部7を用いた切断機1と同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、切断ノズル35が略120度間隔で設置されるため、切断時において回転軸21が略120度回転すれば、杭全周にわたり切断することができ、このため、短時間で切断を終了することができる。
【0057】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
例えば、本発明における切断ノズル35は、ノズルガイドの形状によって、1個であっても良く、また、4個以上設置してもよい。また、切断においては、アブレイシブジェット切断ではなく、研磨材を使用しないウォータージェット切断を使用することもできる。また、実施例においてはサンドポンプ9を用いたが、通常の排水ポンプでも良く、また、浸入土砂水55や噴射研磨材混合水57の量によっては、ポンプによる排出がなくても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施の形態にかかる切断機1を示す概略図。
【図2】切断部7を示す図であり、(a)はノズルガイド33を側方より見た図、(b)はノズルガイド33を下方より見た図。
【図3】切断機1及び圧力調整装置40を示す概略図。
【図4】切断機1を使用した、水中杭の切断工程を示すフローチャート。
【図5】水中杭3の切断工程を示した図で、(a)は水中杭3の上部を切断した図、(b)は水中杭3をコア抜きした図、(c)は水中杭3に切断機1を設置した状態を示す図。
【図6】切断部7を回転させて、水中杭3を切断する状態を示す図。
【図7】切断時における、切断部7近傍の詳細を示す図。
【図8】切断終了時の水中杭3の高さ変化を示す図。
【図9】水中杭3の切断工程を示した図で、(a)は切断機1を撤去した状態を示す図、(b)は切断部を撤去した状態を示す図。
【図10】第2の実施の形態にかかる切断部70を示す図であり、(a)はノズルガイド71を下方より見た図、(b)は(a)の矢視Aより見たノズルガイド71の側面図。
【符号の説明】
【0060】
1………切断装置
3………水中杭
5………杭内部
7、70………切断部
9………サンドポンプ
11………高圧水ホース
13………研磨材供給ホース
15………送気配管
17………排気管
19………排気バルブ
21………回転軸
23………回転装置
25………気密蓋
26………架台
27………フランジ
29………水面
31………地面
33………ノズルガイド
35………切断ノズル
37………水中カメラ
39………ガイドロール
40………圧力調整装置
41………コンプレッサ
42………リザーバタンク
43………圧力調整器
45………送気バルブ
47………元圧接続ホース
49………杭内圧接続ホース
51………排気バルブ接続ホース
53………研磨材溜り部
55………浸入土砂水
57………噴射研磨材混合水
59………研磨材
61………土砂混合水
63………切断厚
71………ノズルガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の構造物を切断する方法であって、
構造物の内部をコア抜きする工程(a)と、
切断機を前記構造物へ設置する工程(b)と、
前記構造物の内部を所定の圧力に保つ工程(c)と、
前記切断機で前記構造物を切断する工程(d)と、
を具備することを特徴とする水中構造物の切断方法。
【請求項2】
前記切断機はアブレイシブジェットを用いることを特徴とする請求項1記載の水中構造物の切断方法。
【請求項3】
前記工程(a)におけるコア抜きの深さは、前記構造物内部の切断部位下部に、前記アブレイシブジェットにより噴射された研磨材の溜り部が形成される深さであることを特徴とする請求項2記載の水中構造物の切断方法。
【請求項4】
前記工程(c)において、前記構造物の内部の圧力を、前記構造物の切断部位が外部から受ける水圧以上に保つことを特徴とする請求項1記載の水中構造物の切断方法。
【請求項5】
前記工程(d)の後に、
前記構造物の切断が終了したことを確認する工程(e)を更に具備することを特徴とする請求項1記載の水中構造物の切断方法。
【請求項6】
前記工程(e)において、前記構造物の切断終了の確認を、前記構造物の高さ変化の確認により行うことを特徴とする請求項5記載の水中構造物の切断方法。
【請求項7】
前記工程(e)において、前記構造物の切断終了の確認を、水中カメラにより行うことを特徴とする請求項5記載の水中構造物の切断方法。
【請求項8】
水中の構造物を切断する装置であって、
前記構造物の内部の圧力を一定に保持する圧力調整手段と、
前記構造物を切断する切断機と、
前記構造物内部の水及び/又は土砂を排出可能な排出手段と、
を具備することを特徴とする水中構造物切断装置。
【請求項9】
前記切断機はアブレイシブジェットを用いることを特徴とする請求項8記載の水中構造物切断装置。
【請求項10】
水中カメラを更に具備し、切断部位の観察が可能であることを特徴とする請求項8記載の水中構造物切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−303680(P2008−303680A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153987(P2007−153987)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】