説明

水中燃焼式気化装置

【課題】水中燃焼式気化装置1の起動時間を短縮する。
【解決手段】水中燃焼式気化装置1は、水中燃焼バーナー2と、熱交換器12と、水中燃焼バーナーの火花点火装置4と、水中燃焼バーナーの燃焼室25内に供給する燃焼用の1次空気と、燃焼室内に供給しない非燃焼用の2次空気との流量割合を変更する分配弁5と、少なくとも火花点火装置及び分配弁の制御を行うように構成された制御器6と、を備える。火花点火装置は、燃焼室内において垂直方向に延びるように配設されており、水中燃焼バーナーの点火前には、ブロワー14の駆動によって水中に空気だけを噴出させるパージ動作を、予め設定された所定時間だけ行う。制御器は、パージ動作の最中には、1次空気の流量が所定の大流量となるように分配弁の開度を調整すると共に、パージ動作の終了後に水中燃焼バーナーを点火する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、水中燃焼式気化装置に関し、特にその起動時の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガスといった低温液化ガスの気化装置の一つとして、水中燃焼式気化装置(Submerged Combustion Vaporizer)が知られている(例えば特許文献1参照)。この水中燃焼式気化装置は、水槽内に浸漬されたダウンカマーに設けられかつ、ブロワーから供給された空気及び燃料供給源から供給された燃料を燃焼室内で燃焼させて、その燃焼ガスをスパージパイプを介して水中に噴出するよう構成された水中燃焼バーナーと、前記水槽内に浸漬配置された伝熱管束を有する熱交換器と、を備えており、水中に気泡として噴出された燃焼ガスが水槽内の水を撹拌しつつ、伝熱管束内を通過する低温液化ガスを加熱することによって、その低温液化ガスを気化させるように構成されている。このような水中燃焼式気化装置は、急激な需要増加をカバーするためのエマージェンシー用としても使用されており、急速起動が要求される。一方で、水中燃焼式気化装置に用いられる水中燃焼バーナーは、水槽中に浸漬されたダウンカマーに配設されているため、内部の湿度が極めて高く、水中燃焼式気化装置の停止中には、水中燃焼バーナーの火花点火装置にも結露が生じやすい。尚、ここでいう火花点火装置は、より正確には、水中燃焼バーナーのメインバーナーは熱容量が極めて大きいため、水中燃焼バーナーはメインバーナーの他にパイロットバーナーを備えることが一般的であるが、そのパイロットバーナーに点火するための火花点火装置である。結露は、火花点火装置の絶縁不良を引き起こし着火ミスの原因となる。そこで、こうした水中燃焼式気化装置では、水中燃焼バーナーの火花点火装置に乾燥した計装空気を常時供給することによって、結露を防止する対策が施されている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、上側に配置された穀物貯留部と、その下側に配置された乾燥部との間で穀物を循環搬送させながら、乾燥部に配設された燃焼バーナーから水平方向に吹き出される熱風により、穀物を乾燥させる穀物乾燥機において、燃焼バーナーの燃焼炎の有無を検出するフレームロッドの結露を解消するために、燃焼バーナーの着火前に、排風ファンによる通風運転を所定期間だけ行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−75599号公報
【特許文献2】特開2010−145056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、水中燃焼式気化装置における水中燃焼バーナーの火花点火装置においては、乾燥した計装空気を常時供給することによって結露を防止する対策が施されているものの、本願発明者は、外気温が極めて低いとき等には、そうした対策を施していても着火ミスが発生し、水中燃焼バーナーの起動時間、ひいては水中燃焼式気化装置の起動時間が長くなってしまう場合があることを確認した。
【0006】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水中燃焼式気化装置の起動時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者が検討した結果、低外気温時には結露の量が大量になることで、計装空気を常時供給するという結露対策を施していても、火花点火装置の絶縁不良が生じて着火ミスが発生し、水中燃焼式気化装置の起動時間が長くなってしまうことが判明した。具体的に、本願発明者の検討対象である水中燃焼式気化装置の水中燃焼バーナーは、その燃焼室内に、ほぼ垂直方向に延びるように配設されたスパークロッドと、スパークロッドの下端部を除く中間部を収容するロッド保持管と、を有する火花点火装置を備え、ロッド保持管から下方に突出するスパークロッドの下端に放電電極が設けられている。
【0008】
この構成の水中燃焼バーナーにおいて、ロッド保持管内には、その上端から乾燥した計装空気が常時供給されており、計装空気はロッド保持管の下端開口から外に吐き出されるように構成されている。通常であれば、この計装空気によってスパークロッド及び放電電極の周囲が乾燥するため、絶縁状態が維持されて着火ミスは生じないものの、水中燃焼バーナーが停止している間に、外気温が極めて低いときには、ロッド保持管の外周面に大量の結露が付着する結果、その結露が、重力によって垂直方向に延びるように配設されたロッド保持管を伝ってその下端に移動し、ロッド保持管の下端部に、次第に大量の水が溜まるようになる。このように、ロッド保持管の下端部に大量の水が溜まっている結果、ロッド保持管から下方に突出しているスパークロッドの下端部付近において絶縁不良が生じるようになり、このことが、着火ミスを引き起こしていたのである。
【0009】
このことに関し、例えば特許文献2に記載されているように、水中燃焼バーナーの点火前に、火花点火装置の周囲に空気を流して、これを乾燥させる乾燥期間を設けることが考えられる。このことにより着火ミスは低減するものの、乾燥期間を別途設けることから、水中燃焼式気化装置の起動時間は延びる。
【0010】
そこで、本願発明者は、水中燃焼式気化装置の起動時には、水中燃焼バーナーが設けられるダウンカマーや、それに接続されるスパージパイプ内の水を排出するためのパージ動作が必要であることに着目し、パージ動作のために水中燃焼バーナーを通じてダウンカマー及びスパージパイプに流される空気を、その水中燃焼バーナーの燃焼室内に大量に導入することによって、特に火花点火装置の下端部に溜まる大量の水を、パージ空気によって吹き飛ばすようにして、パージ動作を行いながら火花点火装置の下端部付近を乾燥させ、その上で、水中燃焼バーナーの点火を行うようにした。
【0011】
具体的に、ここに開示する技術は、水槽内に浸漬されたダウンカマーに設けられかつ、ブロワーから供給された空気及び燃料供給源から供給された燃料を燃焼室内で燃焼させて、その燃焼ガスをスパージパイプを介して水中に噴出するよう構成された水中燃焼バーナーと、前記水槽内に浸漬配置された伝熱管束を有しかつ、当該伝熱管束内を通過する低温液化ガスを気化するように構成された熱交換器と、を備えた水中燃焼式気化装置に係る。
【0012】
この水中燃焼式気化装置は、所定電圧が印加されることにより火花放電をして、前記水中燃焼バーナーを点火させる火花点火装置と、前記ブロワーと前記水中燃焼バーナーとの間に介設されかつ、当該水中燃焼バーナーの燃焼室内に供給する燃焼用の1次空気と、前記燃焼室内に供給せずに前記水中燃焼バーナーを素通りさせる非燃焼用の2次空気との流量割合を変更する分配弁と、少なくとも前記火花点火装置及び前記分配弁の制御を行うように構成された制御器と、をさらに備える。
【0013】
そうして、前記水中燃焼バーナーは、前記分配弁を通じて供給された前記1次空気を前記燃焼室内において上から下に向かって流しながら、前記燃焼ガスを下向きに噴出するように構成されており、前記火花点火装置は、前記燃焼室内において、垂直方向に延びるように配設されて、その下端部に放電電極が設けられており、前記水中燃焼バーナーを起動する際には、前記水中燃焼バーナーの点火前に、前記ブロワーの駆動によって、前記水中燃焼バーナー、前記ダウンカマー及び前記スパージパイプを通じて前記水中に空気だけを噴出させるパージ動作を、予め設定された所定時間だけ行い、前記制御器は、前記パージ動作の最中には、前記1次空気の流量が所定の大流量(第1流量)となるように、前記分配弁の開度を調整すると共に、前記パージ動作の終了後に、前記火花点火装置の駆動によって前記水中燃焼バーナーを点火する。
【0014】
ここで、「垂直方向に延びるように配設される」とは、火花点火装置が、垂直方向に配設されること、及び、垂直方向に対し若干傾いて配設されることの双方を含む。より具体的には、火花点火装置に付着した結露が、重力によって下方に移動し得る限度において、火花点火装置を傾けて配設する場合を含む。
【0015】
また、「所定の大流量」とは、詳しくは後述するが、火花点火装置の、特に下端部に付着している水を吹き飛ばして、ここを乾燥させることが可能な程度の流量とすればよく、例えば1次空気の流量が2次空気の流量よりも大きくなる範囲で、適宜設定すればよい。尚、このパージ動作時の1次空気は、その流量が多ければ多いほど着火ミスの低減効果は高くなるため、できるだけ大流量であることが好ましく、最大流量に設定することが最も好ましい。そのように1次空気の流量を大流量に設定するために、制御器は、パージ動作を開始する際に、分配弁の1次側の開度を増大する場合がある。
【0016】
この構成によると、火花点火装置は燃焼室内において垂直方向に延びるように配設されているため、前述したように、例えば外気温が極めて低いときのように火花点火装置に大量の結露が付着した場合は、その結露は、重力によって火花点火装置を伝ってその長手方向の下方に移動する。その結果、放電電極が配置されている火花点火装置の下端部に、大量の水が溜まるようになる。
【0017】
一方、水中燃焼バーナーを起動する際には、その点火前に、ブロワーの駆動によるパージ動作を予め設定された所定時間だけ行う。これは、水中燃焼式気化装置に特有の、起動時に必要となる動作であり、ブロワーから送られてきた空気を水中燃焼バーナーからダウンカマー及びスパージパイプを通じて水中に噴出させることによって、ダウンカマー及びスパージパイプ内の水を排出する。
【0018】
このパージ動作の最中に、制御器は、水中燃焼バーナーの燃焼室に供給される1次空気の流量が所定の大流量となるように、分配弁の開度を調整する。このことにより、水中燃焼バーナーの燃焼室内には、パージ用の、比較的大流量の空気が、上から下向きに流れるようになる。前述のように火花点火装置に付着している水分は、火花点火装置が燃焼室内において垂直方向に延びるように配設されているため、重力によって下向きに流れやすく、その結果、火花点火装置の下部には、その上部よりも大量の水が付着している。燃焼室内に導入した空気は、燃焼室内において垂直方向に延びるように配設された火花点火装置に沿うように流れる結果、火花点火装置に付着している結露を下方に吹き飛ばす。火花点火装置の下端部に溜まっている水は特に、下向きに、効果的に吹き飛ばされる。こうして、火花点火装置の、放電電極が設けられている下端部の近傍の、絶縁不良を回復させることが可能になる。そして、パージ動作が終了した後に火花点火装置を駆動させることで、火花点火装置の上側に付着している結露が、重力によって下向きに流れてその下端部に再び集まる前に、水中燃焼バーナーを点火することが可能になり、その結果として、水中燃焼バーナーを確実に点火することができる。従って、制御器は、火花点火装置の駆動による水中燃焼バーナーの点火を、パージ動作の完了後、直ちに行うことが好ましい。より正確には、火花点火装置の駆動を、燃焼室内への大流量の1次空気の供給を停止した直後に行うことが好ましい。尚、ここでいう「直後」は、時間を空けずに直ちに行うことの他にも、多少の時間(例えば動作の切り替えに必要不可避な程度の短時間)を空けることは含まれる。つまり、ここでいう「直後」とは、意図的に長い時間間隔を設けることなく、大流量の1次空気の供給停止後に、火花点火装置の駆動を行うこと意味である。
【0019】
ここで、水中燃焼式気化装置では、水槽内の撹拌のために、ブロワーから水中燃焼バーナーに供給する空気の総量を一定にしつつ、燃焼室内に供給する1次空気の流量を、水中燃焼バーナーに供給する燃料量に対応するように調整して燃焼状態を良好にするために分配弁を用いている。従来においては、パージ動作の最中には1次空気の流量を最小に設定していた。これは、パージ動作終了後の水中燃焼バーナーの点火の際に、安全上、燃料流量を最小とする必要があり、この最小燃料流量に合わせて1次空気の流量も最小にするためである。これに対し、前記の構成では、パージ動作の最中には、1次空気の流量を大流量にすることが、従来と大きく相違する。
【0020】
この制御は、前述の通り、従来の水中燃焼式気化装置においても実行されていたパージ動作の最中に行われるため、火花点火装置の乾燥のために別途、乾燥時間を設ける必要がない。また、パージ動作は、水中燃焼バーナーの点火の直前に実行される動作であり、火花点火装置の乾燥動作を兼用するパージ動作の完了後に、水中燃焼バーナーの点火を行うことは、そのパージ動作の完了後でかつ、付着している水分が下方に流れて落ちて火花点火装置の絶縁状態が再び悪化してしまう前に、水中燃焼バーナーを確実に点火することを実現にする。従って、パージ動作中に火花点火装置の乾燥を行うことは、水中燃焼バーナーの点火を前提としたときに効率的でもある。そうして、別途の乾燥時間を不要にすることと、火花点火装置の着火ミスが回避乃至防止されて水中燃焼バーナーが早期にかつ確実に点火することと、が組み合わさって、水中燃焼式気化装置の起動時間が、従来よりも短くなる。
【0021】
前記制御器は、前記パージ動作の終了後に、前記1次空気の流量が前記所定の大流量(第1流量)よりも低い第2流量に低下するように前記分配弁の開度を調整した上で、前記火花点火装置の駆動によって前記水中燃焼バーナーを点火する、としてもよい。
【0022】
こうすることで、火花点火装置の乾燥後でもあるパージ動作の終了後には、1次空気の流量を第2流量に低下させることによって、種火がより安定し、水中燃焼バーナーを確実にかつ早期に点火することが可能になる。その結果、水中燃焼式気化装置の起動時間をより一層短縮する上で有利になる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、前述した水中燃焼式気化装置によると、パージ動作を利用して、燃焼室内に1次空気を流すことにより、火花点火装置に付着した結露等を吹き飛ばして乾燥させることが可能になり、着火ミスを防止して確実に水中燃焼バーナーを点火することができる結果、その起動時間が短縮する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】水中燃焼式気化装置の構成を示す概略図である。
【図2】水中燃焼バーナーの構成を示す断面図である。
【図3】パイロットバーナーの構成を示す断面図である。
【図4】制御器が実行する水中燃焼式気化装置の起動時の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、水中燃焼式気化装置の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は例示である。図1は、水中燃焼式気化装置1の概略を示している。この水中燃焼式気化装置1は、液化天然ガス(LNG)の気化装置であって、水槽11中に浸漬されると共に、LNGの流路となる多数の伝熱管が多段に曲げ成形されて構成された熱交換器12と、水槽11内に浸漬して配設されたダウンカマー13に設けられると共に、図外の燃料ガス供給源から燃料供給管60を介して供給された燃料ガスと、ブロワー14を通じて供給された空気とを、水面よりも下側となる位置で燃焼させる水中燃焼バーナー2と、水槽11の底部に配設されてダウンカマー13の下端に連通すると共に、水中燃焼バーナー2の燃焼ガスが噴出する多数の小孔が形成されたスパージパイプ15と、水槽11の上部に配設されかつ、燃焼排ガスを排気するスタック16と、を備えて構成されている。水中燃焼式気化装置1は、水中燃焼バーナー2の燃焼ガスをスパージパイプ15の小孔を通じて水槽11内に気泡として噴出させることによって、水槽11内の水を撹拌しつつ、熱交換器12内を通過するLNGを加熱する。このことによって、LNGを気化させて天然ガス(NG)とし、これを熱交換器12の出口から送り出すように構成されている。水中燃焼式気化装置1は、燃焼ガスを気泡として水槽11内に噴出して水槽11内の水を撹拌すること、及び、スタック16から排出する燃焼排ガスの温度を低くすることが可能であることから熱効率が極めて高いという特徴がある。
【0026】
図2は、水中燃焼バーナー2の全体構成を示している。水中燃焼バーナー2は、外筒21と内筒22とを備えた二重管構造を有している。外筒21は、その上端が閉塞していると共に、その下端が開口しており、外筒21の外側面には、ブロワー14から水中燃焼バーナー2に空気を供給するための供給口23が、外側方に向かって開口するように設けられている。外筒21内には、この外筒21内を上下に2分割する区画壁24が設けられており、この区画壁24によって、空気供給口23もまた、上下に2分割されている。2分割された空気供給口23の内の上側の開口231は、後述する燃焼室25に供給されかつ燃料ガスと共に燃焼されるための1次空気が流入する1次空気用の開口231であるのに対し(同図の実線の矢印参照)、下側の開口232は、燃焼室25内には供給されずに水中燃焼バーナー2の下端から、燃焼ガスと共に噴出されてスパージパイプ15に導入される2次空気用の開口232である(同図の一点鎖線の矢印参照)。
【0027】
内筒22は、外筒21と同軸となるように、外筒21の内部に配設されており、内筒22と外筒21との間には、水中燃焼バーナー2の下端において下向きに開口する環状の空間28が区画形成されている。前述した1次空気用の開口231は、内筒22の上端開口に連通しており、これにより1次空気は、内筒22内に構成される燃焼室25に供給される。一方、2次空気用の開口232は、環状の空間28に連通しており、これにより2次空気は、この環状の空間28を通じて水中燃焼バーナー2から噴出される。
【0028】
水中燃焼バーナー2の供給口23には、1次空気と2次空気との流量割合を調整する分配弁5が接続されている。これにより分配弁5は、図1に示すように、ブロワー14と水中燃焼バーナー2との間に介設されることになる。分配弁5は、上下方向に絞られてその流路断面が縮小された絞り流路51と、その基端部がステムに支持されることによって揺動する弁体52とを有する片持ちバタフライバルブである。この分配弁5は、図2では図示を省略するアクチュエータ53(図1参照)によって、弁体52の先端が絞り流路51の最小断面付近の上壁に当接する位置から、下壁に当接する位置まで揺動することにより、水中燃焼バーナーに供給される1次空気と2次空気との流量割合を、0:100〜100:0の範囲で変更可能に構成されている。
【0029】
内筒22の内部に構成される燃焼室25には、メインバーナー26が配設されている。メインバーナー26は、複数本の燃料ガスノズル261を備えており、ガスノズル261は、内筒22の中心位置に配設された燃料ガス供給管262の下端部を取り囲むように、周方向に互いに等間隔を空けて配設されている。各ガスノズル261の下端は、図示を省略するノズルが下向きに開口するように配設されているのに対し、その上端部は径方向の内方に向かって屈曲しており、その屈曲端が燃料ガス供給管262に接続されている。燃料ガス供給管262は、閉塞された外筒21の上端部を貫通して、その外部にまで延びており、燃料ガス供給管262の端部は、図外の燃料ガス供給源に接続されている。
【0030】
この水中燃焼バーナー2には、前述したメインバーナー26の他に、パイロットバーナー3を備えている。パイロットバーナー3は、水中燃焼バーナー2において、閉塞した外筒21の上端部を貫通して燃焼室25内に挿入されるように、水中燃焼バーナー2の中心からずれた位置でかつ、垂直方向に対し若干傾いた姿勢で、この水中燃焼バーナー2に取り付けられている。パイロットバーナー3の下端に設けられたバーナーチップ33は、図2では明示されていないが、メインバーナー26における複数本の燃料ガスノズル261の内の、隣り合う特定の2本の燃料ガスノズル261の間に配置されている。
【0031】
図3は、パイロットバーナー3の構成を示す断面図である。パイロットバーナー3は、バーナー本体31と、火花点火装置4とを備えている。この内、バーナー本体31は、その上端部が屈曲していると共に、実質的に垂直方向に延びて配設されるパイプ32を有しており、このパイプ32の上端開口は、図外の燃料ガス供給源に接続されて燃料ガスが流入する供給口321に構成されている。一方、パイプ32の下端には、バーナーチップ33が取り付けられている。バーナーチップ33は、パイプ32の下端に外挿される挿入部331と、円筒状のフード部332と、挿入部331とフード部332との間で両者を隔てる隔壁であるチップ部333と、を備えている。
【0032】
火花点火装置4は、スパークロッド41とロッド保持管42とを備えている。ロッド保持管42は、バーナー本体31のパイプ32に対し並行になるように、実質的に垂直方向に延びて配設されており、その上端部は、ケーシング45内に収容されている。このケーシング45は、水中燃焼バーナー2の上部に取り付け固定されるものであり、バーナー本体31の一部分もまた、このケーシング45内に収容されている。尚、ロッド保持管42及びスパークロッド41は、図3では垂直方向に延びるように描かれているが、水中燃焼バーナー2に対して取り付けた状態では、図2に示すように垂直方向に対して若干傾く。
【0033】
スパークロッド41は、その中間部がロッド保持管42に内挿されており、スパークロッド41の上端部及び下端部はそれぞれ、ロッド保持管42の上端及び下端から突出している。スパークロッド41は、ロッド保持管42の上端開口部に対しては、ブッシング421により支持され、ロッド保持管42の下端開口部に対しては、インシュレータ43によって支持されている。こうして、スパークロッド41は、ロッド保持管42に対し、絶縁状態で支持されている。
【0034】
スパークロッド41の上端部は、前述の通り、ケーシング45内に配設されており、この上端部には、ケーブル(図示省略)が接続されるコネクタ411が取り付けられている。一方、ロッド保持管42の下端開口から突出して配設されたスパークロッド41の下端部は概略L字状に折り曲げられ、その折曲先端は、バーナー本体31におけるバーナーチップ33のフード部332に貫通形成された所定形状の貫通孔335内に配設されている。このスパークロッド41の折曲先端とバーナーチップ33の貫通孔335とによって放電電極46が構成され、前記コネクタ411を通じてスパークロッド41に高電圧を印加したときには、スパークロッド41の折曲先端とフード部332の貫通孔335の縁部との間で火花放電が生じて、パイロットバーナー3が着火するようになる。
【0035】
ロッド保持管42の下端部においてスパークロッド41を支持するインシュレータ43は、例えばポリテトラフルオロエチレン(商品名:テフロン(登録商標))製であり、スパークロッド41が内挿される挿入孔431を有している。インシュレータ43は、概略円筒状のインシュレータサポート44に内嵌されており、このインシュレータサポート44がロッド保持管42の下端に取り付け固定されることによって、インシュレータ43は、ロッド保持管42の下端部に配設されることになる。尚、以下の説明では、ロッド保持管42とインシュレータサポート44とが一体化されていることから、便宜上、「ロッド保持管42の下端部」や「ロッド保持管42の下端開口」と言う場合には、その部分が、実際はインシュレータサポート44に相当する場合がある。インシュレータ43の下端面432は、ロッド保持管42の下端開口を通じて下向きに露出している。
【0036】
前述したケーシング45には、図3に示すように、スパークロッド41を乾燥させる計装空気の導入口451が形成されていると共に、このケーシング45内に配設されている、ロッド保持管42の上端部には、このロッド保持管42内に計装空気が流入するための流入孔426が貫通形成されている。ここで、インシュレータ43の挿入孔431は、スパークロッド41との間に若干の隙間が設けられるように、スパークロッド41の外径よりも大径に形成されており、これによって、ケーシング45内に導入された計装空気は、図3に矢印で示すように、流入孔426を通ってロッド保持管42内に流入すると共に、ロッド保持管42内を下向きに流れ、インシュレータ43の挿入孔431を通じて、ロッド保持管42の外部に流出する。この計装空気は、ロッド保持管42内を常時流れるように構成されており、これによってスパークロッド41の周囲を常時乾燥させて、高湿度環境下においても、スパークロッド41の絶縁状態を良好に保つようにしている。
【0037】
図1に示すように、水中燃焼式気化装置1を制御する制御器6には、燃料供給管60上に介設されたオリフィス流量計61から出力される、水中燃焼バーナー2に供給される燃料ガス流量の情報と、ブロワー14から水中燃焼バーナー2に供給される空気量の補正に必要な外気温の情報とがそれぞれ入力される。制御器6は、水中燃焼式気化装置1の通常運転時には、これらの情報に基づいて、水中燃焼式気化装置1の負荷に対応する燃料ガス流量に見合う1次空気量(理論空燃比となるような空気量)となるように、1次空気と2次空気との流量割合を設定し、その流量割合に対応する弁開度となるように分配弁5のアクチュエータ53に対して動作信号を出力する。こうして、1次空気と2次空気との流量割合を調整することにより、特に水中燃焼バーナー2に供給する燃焼ガス量が減ったときに、過剰な空気による冷却を回避して燃焼状態を良好にする一方で、ブロワー14から水中燃焼バーナー2に供給する空気の総量は一定にすることにより、水槽11内の撹拌を十分に行って、水中燃焼式気化装置1の熱効率を低下させないことが実現する。
【0038】
一方、水中燃焼式気化装置1のバーナー起動時には、水中燃焼バーナー2の点火前に、ブロワー14のみを運転し、水中燃焼バーナー2を通じてダウンカマー13及びスパージパイプ15内に空気のみを送り込む。これによって、これらダウンカマー13及びスパージパイプ15内に貯留している水や残留燃料を排出する(つまり、パージ動作)。そうして、ダウンカマー13及びスパージパイプ15の容積に応じて予め設定された所定量の空気を送り込んだ後に、水中燃焼バーナー2のパイロットバーナー3に燃料ガスを供給すると共に、スパークロッド41に高電圧を印加する。これによって、前述したように、スパークロッド41の折曲先端とフード部332の貫通孔335の縁部との間で火花放電が生じ、パイロットバーナー3が点火する。その後、パイロットバーナー3によってメインバーナー26が点火して、水中燃焼式気化装置1のバーナー起動が完了する。
【0039】
ここで、この水中燃焼式気化装置1では、前述したパージ動作の最中に火花点火装置4を乾燥させて、スパークロッド41の絶縁状態を回復させるべく、分配弁5の制御を組み合わせている点が特徴である。以下、この特徴的な制御について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。図4は、制御器6が実行する、水中燃焼式気化装置1の起動時の制御手順を示している。先ず、水中燃焼式気化装置1の起動が指示されたスタート後のステップS1では、1次空気が大流量となるように分配弁5の開度を設定する(第1流量に対応する)。1次空気を、例えば最大流量にしてもよい。続くステップS2では、ブロワー14を起動し、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS3)。この所定時間は、パージ動作を実行する時間に相当し、所定時間が経過してないとき(NOのとき)には、ステップS3を繰り返し、所定時間が経過したとき(YESのとき)には、ステップS4に移行する。従ってこの制御では、パージ動作の実行中は、1次空気の流量が大流量に設定され、それによって、大量の1次空気が、水中燃焼バーナー2の燃焼室25内に供給されるようになる。尚、パージ動作の制御は、経過時間に基づいて行う代わりに、ブロワー14から水中燃焼バーナー2に供給される空気流量に基づいて行ってもよい。
【0040】
パージ動作の終了後のステップS4では、1次空気が所定流量となるように、分配弁5の開度が設定される。この所定流量は、メインバーナー着火時の安全上の最小燃料流量に相当する最小値に設定される(第2流量に対応する。第2流量<第1流量)。従って、水中燃焼バーナー2の燃焼室25内に供給される1次空気の流量は小さくなり、これは、続く水中燃焼バーナー2の点火の際に、種火を安定化する上で有利になる。
【0041】
ステップS5では、前述したように、パイロットバーナー3への点火を通じて、メインバーナー26を点火して、水中燃焼式気化装置1を起動させる。その後は、水中燃焼式気化装置1の負荷に対応する燃料ガス供給量に応じて、分配弁5の開度を調整し(ステップS6)、前述した通常制御へと移行することになる。
【0042】
水中燃焼式気化装置1の運転停止時には、水中燃焼バーナー2の内部は、高湿度の環境となるから、パイロットバーナー3の火花点火装置4に結露が付着しやすい。しかしながら、ロッド保持管42内に乾燥用の計装空気を常時流すことによって、このロッド保持管42に保持されているスパークロッド41の周囲が乾燥し、スパークロッド41の絶縁状態は良好に保たれる。このため、水中燃焼式気化装置1の起動時には火花点火装置の着火ミスを防止して、パイロットバーナーを確実に点火することができる。これは、水中燃焼式気化装置1の起動時間を短縮する。
【0043】
一方で、例えば外気温が極めて低いとき等には、ロッド保持管42の外周面に大量の結露が付着するようになる。ロッド保持管42は、図2に示すように、ほぼ垂直方向に延びるように配設されているため、ロッド保持管42の外周面に付着した結露は、重力によって下方に流れ落ち、ロッド保持管42の上側よりも下側の付着量が多くなる。その結果、ロッド保持管42の下端部に水が大量に溜まるようになり、インシュレータ43の挿入孔431の下端開口付近にも、水が付着するようになる。このことにより、計装空気を常時流して、挿入孔431の下端開口から計装空気を流出させていたとしても、スパークロッド41の絶縁不良を招く場合があった。
【0044】
ここで従来の水中燃焼式気化装置では、水中燃焼式気化装置1の起動の際のパージ動作の最中は燃焼室25内に供給される1次空気の流量が最小になるように分配弁5の開度を設定していた。これは、パージ動作の後の水中燃焼バーナー2の点火の際に、安全上燃料流量を最小とする必要があり、この燃料流量に合わせて1次空気の流量も最小にするためである。
【0045】
これに対し、前記の水中燃焼式気化装置1では、パージ動作の最中は、1次空気の流量が大流量になるように分配弁5の開度を設定している。このことにより、水中燃焼バーナー2の燃焼室25内では、上から下向きにパージ用の空気が大量に流れるようになる。このため、ロッド保持管42に沿って大量の空気が流れて、ロッド保持管42の外周面に付着した結露が、下方に吹き飛ばされる。特に、ロッド保持管42の下端部や、インシュレータ43の下端面に溜まった水は、効果的に下方に吹き飛ばされる。つまり、ここでいう大流量は、ロッド保持管42の下端部や、インシュレータ43の下端面に溜まった水を、効果的に下方に吹き飛ばすことが可能な流量である。こうして、パージ動作の終了時には、放電電極46を含む、スパークロッド41の下端部の付近が乾燥し、絶縁状態が回復するようになる。そうして、パージ動作終了後に水中燃焼バーナー2の点火動作を行うことによって、ロッド保持管42の上側に結露が残っていたとしても、その結露が下向きに流れ落ちて、下端部に水が再び溜まってしまう前に、点火が完了し、着火ミスを回避乃至抑制して、水中燃焼バーナー2を早期にかつ確実に点火することが可能になる。
【0046】
この構成では、水中燃焼式気化装置1の起動時に必ず行われるパージ動作の最中に火花点火装置4の乾燥をも行うため、火花点火装置4の乾燥のためだけに乾燥期間を別途設ける場合とは異なり、水中燃焼式気化装置1の起動時間を長くすることがなく、また、結露が大量となる環境下であっても、水中燃焼バーナー2を早期にかつ確実に点火することを可能にするから、水中燃焼式気化装置1の起動時間をさらに短縮することが可能になる。また、ロッド保持管42の下端部に溜まった水を吹き飛ばして、ここを乾燥させても、ロッド保持管42は、ほぼ垂直方向に延びるように配設されているため、そのままの状態で時間が経過すれば、ロッド保持管42の上側に付着した結露が下方に流れ落ちて、その下端部に水が再び溜まってしまう。このことにつき、パージ動作は、水中燃焼バーナー2の点火直前に実行される動作であるため、このパージ動作中に火花点火装置4の乾燥を行うことは、火花点火装置4による点火を確実にする上で、有効である。また、水中燃焼バーナー2の点火を確実にする上では、パージ動作の終了後、ロッド保持管42の上側に付着している結露が下向きに流れ落ちる前に、水中燃焼バーナー2の点火を完了することが好ましい。つまり、火花点火装置4は、1次空気の流量が最小値となるように分配弁5の開度が変更された直後に駆動することが好ましい。このことは、水中燃焼バーナー2の早期の点火に有利なだけでなく、待機時間をできるだけ無くして水中燃焼式気化装置1の起動時間をさらに短縮する上でも有効である。
【0047】
尚、例えば外気温に応じて、水中燃焼式気化装置1の起動時の制御を異ならせてもよい。つまり、外気温が所定温度よりも低くて、水中燃焼式気化装置1の起動時に結露が大量であることが予想されるときには、パージ動作の最中に、1次空気の流量が大流量となるように分配弁5の開度を設定する一方、外気温が所定温度以上で、水中燃焼式気化装置1の起動時の結露は大量ではないことが予想されるときには、パージ動作の最中の1次空気の流量を最小にして、パージ動作の終了後の分配弁5の開度調整を省略して(つまり、図4のフローのステップS4を省略)、そのまま水中燃焼バーナー2の点火を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、ここに開示した水中燃焼式気化装置は、大量の結露が生じた場合でも起動時間を短くすることができる点で有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 水中燃焼式気化装置
11 水槽
12 熱交換器
13 ダウンカマー
14 ブロワー
15 スパージパイプ
2 水中燃焼バーナー
4 火花点火装置
46 放電電極
5 分配弁
6 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内に浸漬されたダウンカマーに設けられかつ、ブロワーから供給された空気及び燃料供給源から供給された燃料を燃焼室内で燃焼させて、その燃焼ガスをスパージパイプを介して水中に噴出するよう構成された水中燃焼バーナーと、
前記水槽内に浸漬配置された伝熱管束を有しかつ、当該伝熱管束内を通過する低温液化ガスを気化するように構成された熱交換器と、を備えた水中燃焼式気化装置であって、
所定電圧が印加されることにより火花放電をして、前記水中燃焼バーナーを点火させる火花点火装置と、
前記ブロワーと前記水中燃焼バーナーとの間に介設されかつ、当該水中燃焼バーナーの燃焼室内に供給する燃焼用の1次空気と、前記燃焼室内に供給せずに前記水中燃焼バーナーを素通りさせる非燃焼用の2次空気との流量割合を変更する分配弁と、
少なくとも前記火花点火装置及び前記分配弁の制御を行うように構成された制御器と、をさらに備え、
前記水中燃焼バーナーは、前記分配弁を通じて供給された前記1次空気を前記燃焼室内において上から下に向かって流しながら、前記燃焼ガスを下向きに噴出するように構成されており、
前記火花点火装置は、前記燃焼室内において、垂直方向に延びるように配設されて、その下端部に放電電極が設けられており、
前記水中燃焼バーナーの点火前には、前記ブロワーの駆動によって、前記水中燃焼バーナー、前記ダウンカマー及び前記スパージパイプを通じて前記水中に空気だけを噴出させるパージ動作を、予め設定された所定時間だけ行い、
前記制御器は、前記パージ動作の最中には、前記1次空気の流量が所定の大流量となるように、前記分配弁の開度を調整すると共に、前記パージ動作の終了後に、前記火花点火装置の駆動によって前記水中燃焼バーナーを点火する水中燃焼式気化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水中燃焼式気化装置において、
前記制御器は、前記パージ動作の終了後に、前記1次空気の流量が前記所定の大流量よりも低い第2流量に低下するように前記分配弁の開度を調整した上で、前記火花点火装置の駆動によって前記水中燃焼バーナーを点火する水中燃焼式気化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−2734(P2013−2734A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134194(P2011−134194)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】