水中補修溶接方法
【課題】水中でレーザ光によって溶接補修を行なう場合に、残留した水分が噴出す際に溶接金属を吹き飛ばして溶接不良が発生する不具合を、抑制・防止する。
【解決手段】補修対象部を含む金属製構造物2の表面を養生板3によって覆うようにその養生板3を水中で構造物2に溶接する。溶接は、溶接部に不活性ガス10を供給しながら、養生板3の周囲を水中でレーザ溶接により溶接し、補修対象部を養生板3によって密封するものである。レーザ溶接におけるレーザ光7と同軸に溶接部に不活性ガス10を供給しながら溶接する。養生板3には溶接中に養生板3と構造物2との間に残留した水から発生する水蒸気を逃がすための開口があらかじめ設けられており、養生板3の周囲を構造物2に溶接した後に開口を封止する。
【解決手段】補修対象部を含む金属製構造物2の表面を養生板3によって覆うようにその養生板3を水中で構造物2に溶接する。溶接は、溶接部に不活性ガス10を供給しながら、養生板3の周囲を水中でレーザ溶接により溶接し、補修対象部を養生板3によって密封するものである。レーザ溶接におけるレーザ光7と同軸に溶接部に不活性ガス10を供給しながら溶接する。養生板3には溶接中に養生板3と構造物2との間に残留した水から発生する水蒸気を逃がすための開口があらかじめ設けられており、養生板3の周囲を構造物2に溶接した後に開口を封止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中において水を排出せずにレーザ光によって溶接補修を行なう水中補修溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中にある構造物をレーザ溶接する技術としては、溶接対象部位を気中環境とするために密閉性の高い覆い(チャンバ)を溶接対象部位へ押し当て、チャンバ内部の水を不活性ガスなどで押し出す方法(特許文献1)が知られている。しかしながら、上述の従来の水中レーザ溶接装置では、複雑且つ大型のドライ化装置が必要となるために構造が肥大化し、複雑な構造物内や狭隘箇所に対するアクセス性および操作性が悪いという不具合があった。
【0003】
このような課題に対し、レーザ溶接ヘッドノズルより不活性ガスを噴射し、その勢いで溶接部位のみ一時的に気中環境に維持して水中溶接を実現する技術(特許文献2、3)が知られている。しかしながらこの技術は、水中において溶接部位をチャンバなしでも一時的にガス中に保つためのノズル形状やガス流れの滞留に寄与する技術である。
【特許文献1】特開平05−031591号公報
【特許文献2】特許第3012175号公報
【特許文献3】特許第3619286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造物の表面を水中にてレーザ溶接する場合は上記のような溶接ヘッドを用いても十分に健全な施工が可能であるが、構造物の表面に養生板を当ててする場合には、上記のような方法では養生板と溶接部位間の水の排出が十分でなく、良質な溶接品質を保つことは困難で、溶接内部に滞留した水の蒸発により噴出し不良が発生することが多い。すなわち、既存の技術では、水中において養生板溶接を実施する場合の具体的なレーザ集光方法、養生板形状や、養生板の位置決め要領、溶接方法などが明確となっておらず、水中における養生板と補修面との溶接接合方法、特に、その両者の隙間に滞留した水が蒸発により噴出することが問題であった。
【0005】
また、養生板溶接では養生板と補修溶接部位の接合面を完全に一致させる必要があるが、水中下の遠隔作業でこれを保証するためにはかなり大掛かりな養生板保持装置が必要であり、もっと簡易な操作冶具で実現可能となるような改善が要求されていた。
【0006】
本発明は、上述の事情に対処してなされたものであり、水中において水を排出せずにレーザ光によって溶接補修を行なう場合に、残留した水が水蒸気となって噴出す際に溶接金属を吹き飛ばして溶接不良が発生する不具合を、抑制・防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る水中補修溶接方法は、補修対象部を含む金属製構造物の表面を養生板によって覆うようにその養生板を水中で構造物に溶接する水中補修溶接方法において、前記溶接は、溶接部に不活性ガスを供給しながら、前記養生板の周囲を水中でレーザ溶接により溶接し、前記補修対象部を前記養生板によって密封するものであって、前記レーザ溶接におけるレーザ光と同軸に溶接部に不活性ガスを供給しながら溶接するものであること、を特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の水中補修溶接方法は、欠陥を有する金属構造物の補修対象部をシールドカバーで覆いながら、その欠陥の下面から上面に向かって、レーザ光を照射しながらその欠陥部分の封止溶接を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水中において水を排出せずにレーザ光によって溶接補修を行なう場合に、残留した水が水蒸気となって噴出す際に溶接金属を吹き飛ばして溶接不良が発生する不具合を、抑制または防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る水中補修溶接方法の実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1および図2に示すように、本発明の第1の実施形態では、欠陥1を有する構造物2もしくは欠陥を発生する可能性を有する構造物2の欠陥部分を隔離するための養生板3と、養生板3と構造物2とを溶接するためのレーザ溶接ヘッド4とを用いる。溶接ヘッドは、発振器5から照射されファイバ6にて伝送されたレーザ光7を集光するための集光レンズ8と、レーザ光7と同軸に設置されたノズル9とで構成される。養生板3は、構造物2の欠陥部分とその周囲を被うように設置する。設置した養生板3の外周をノズル9から不活性ガス10を供給しながらレーザ光7を照射して溶接する。
【0012】
本実施形態によれば、欠陥1を有する構造物表面2を養生板3で被いその外周をノズル9から不活性ガス10を供給しながらレーザ光7にて溶接することにより、構造物2の欠陥1部分を隔離することができ、構造物2の欠陥1の更なる侵食を抑制・防止することがきる。
【0013】
[第2の実施形態]
図3(a)〜(i)それぞれに、溶接時に構造物2と養生板3との間の水から発生する水蒸気を逃がすためのスリット(開口)10が設けられている養生板3の例を示す。スリット12は、たとえば、幅0.1mmないし3mmとし、養生板側面の角部近傍に上下方向に0.3mm以上の長さで設け、養生板3の4辺いずれの辺に設置してもよい。また、スリット12は端面に貫通していてもよい。スリット12の形状は長方形の他にT字型やL字型でもよい。また、水平方向に上下に2本以上設けてもよい。
【0014】
図4に示すように、レーザ溶接による養生板3の外周溶接はスリット12の近傍の端面が最終溶接位置となるようにノズル9から不活性ガス10を供給しながら溶接を実施する。
【0015】
図5および図6に示すように、養生板3の外周溶接をする際にはキーホール溶接が実現できるように養生板3の表面にレーザ光7を集光して溶接を実施する。図6に示すように、シールドカバー13にて溶接部を被い不活性ガス10を供給しながら溶接してもよい。このとき、養生板3の外周溶接は1パス溶接でも、2パス溶接でもよい。
【0016】
図7に示すように外周の2パス溶接を行なう場合は、まず、図中で溶接ビード11aに示されるように養生板3の端面から1〜5mmの位置を先に溶接し、続いて図中で溶接ビード11bに示されるように端面から2mmの範囲を溶接する。外周溶接を実施する別の方法として熱伝導型の溶接で実施する場合は、図8または図9に示すようにレーザ光7を養生板3の端面部にビーム径1.0mm以上に設定して溶接を行なう。図10または図11に示すように、外周溶接は溶接部にフィラーワイヤ14を供給しながら溶接してもよい。
【0017】
図12に示すように、養生板3の端面形状は、フィラーワイヤ14を供給しない代わりに傾斜させてもよい。さらに、図13に示すように、養生板3の端面形状をリップ形状としてもよい。また、熱伝導型の溶接で外周溶接を行なう場合は、図14に示すように熱源としてTIGアーク(Tungsten Inert Gas Arc)15、あるいはMIGアーク(Metal Inert Gas Arc)、もしくはプラズマアークを用いてもよい。
【0018】
このように構成された本実施の形態において、スリット12位置をレーザ溶接の終端部とすることで、養生板3と構造物2との間に残留した水から溶接による発熱で発生する蒸気が溶接中に蒸気となって排出される。外周溶接する際にキーホール溶接で2パス溶接することにより、溶接ビード11表面形状を滑らかにすることができる。また、養生板3の端面に傾斜もしくはリップ部を設けることによっても、養生板3と構造物2とを接合する溶接ビード表面を滑らかにすることができる。フィラーワイヤ14を供給しながら溶接することでも同様の作用が得られる。
【0019】
[第3の実施形態]
図15(a)〜(f)それぞれに、溶接時に構造物2と養生板3との間の水から発生する水蒸気を逃がすための円形の貫通孔(開口)16が設けられている養生板3の例を示す。貫通孔16は、たとえば直径0.1mm以上で中心間距離が1mm以上で2つ以上が養生板3の端面近傍の角部に上下方向に開けられている。レーザ溶接による養生板3の外周溶接は貫通孔16近傍の端面を最終溶接位置となるように溶接を実施する。
【0020】
本実施の形態によれば、貫通孔16から養生板3と構造物2との間に残留した水が溶接中に蒸気となって排出される。このため、蒸気圧によって溶接金属が吹き飛ばされることなく、養生板3を構造物2に健全に溶接することができる。
【0021】
[第4の実施形態]
図16(a)〜(f)それぞれに、溶接時に構造物2と養生板3との間の水から発生する水蒸気を逃がすためのスリット12と円形の貫通孔16が設けられている養生板3の例を示す。スリット12および貫通孔16は養生板3の側面の角部近傍に設けられている。レーザ溶接による養生板3の外周溶接はスリット12もしくは貫通孔16近傍の端面を最終溶接位置となるように溶接を実施する。
【0022】
本実施の形態によれば、スリット12および貫通孔16から養生板3と構造物2との間に残留した水が溶接中に蒸気となって排出される。そのため、蒸気圧によって溶接金属が吹き飛ばされることなく、養生板3を構造物2に健全に溶接することができる。
【0023】
[第5の実施形態]
図17、図18に、養生板3の水蒸気を逃がすためのスリット12および貫通孔16の封止溶接方法を示す。図示のように、欠陥1を有する構造物2に対して、欠陥部分を隔離するための養生板3と、養生板3と構造物2とを溶接するためのレーザ溶接ヘッド4とが配置される。養生板3には水蒸気を逃がすためのスリット12もしくは円形の貫通孔16もしくはスリット12と貫通孔16の両方が開いている。溶接ヘッド4には水蒸気を逃がすためのスリット12および貫通孔16が開いている範囲全体を覆うようシールドカバー13が設置され、シールドカバー内には不活性ガス10が供給できるようになっている。また、レーザ光7が照射される位置にフィラーワイヤ14が供給される。
【0024】
レーザ光7は熱伝導型の溶接ができるようにビーム径が1.0mm以上となるよう設定しレーザ光7を照射する。スリット12および貫通孔16の溶接は、まずスリット12および貫通孔16を覆うシールドカバー内に不活性ガス10を供給し養生板3と構造物2の隙間に残った水を排出する。その後、図19、図20に矢印で方向を示すように、フィラーワイヤ14を供給しながらレーザ光7を照射しスリット12もしくは貫通孔16の下側から順に上側に溶接を行なう。溶接は上進溶接でもよい。
【0025】
図21、図22に示すように、レーザ光7は、キーホール溶接となるように、焦点を養生板3の表面としてもよい。また、図23に示すように熱伝導型の溶接の場合、熱源としてTIGアーク15、MIGアークもしくはプラズマアークを用いてもよい。
【0026】
このように構成された本実施の形態において、スリット12および貫通孔16をシールドカバー13で覆い不活性ガスにて養生板3と構造物2との間に残った水をスリット12および貫通孔16の下面まで排出することにより、スリット12および貫通孔16を溶接する際に養生板3と構造物2の間に残った水が蒸気となって溶接金属を吹き飛ばすことが防止できる。これにより、養生板溶接を健全に実施できる。
【0027】
[第6の実施形態]
図24に養生板の水蒸気を逃がすためのスリット12および貫通孔16の封止溶接方法を示す。図24に示すように、水蒸気を逃がすためのスリット12および貫通孔16が開いている範囲全体を覆うようシールドカバー13を設置し、シールドカバー内には不活性ガス10が供給できるようになっている。さらに、養生板3の表面を加熱するための高周波加熱源20を設置する。
【0028】
このように構成された本実施の形態において、スリット12および貫通孔2をシールドカバー13で覆い、不活性ガス10を供給するとともに高周波加熱源20にて養生板3の表面から加熱する。これにより、養生板3と構造物2との間に残った水をスリット12および貫通孔16の下面よりさらに下まで排出することがき、これによりスリット12および貫通孔16を溶接する際に養生板3と構造物2の間に残った水が蒸気となって溶接金属を吹き飛ばすことが防止できる。これにより、養生板溶接を健全に実施できる。
【0029】
[第7の実施形態]
図25に、養生板3に水蒸気を逃がすためのスリットおよび貫通孔が無い場合の養生板3の外周溶接方法を示す。図25に示すように、欠陥1を有する構造物2と欠陥部分を隔離するための養生板3と、養生板3と構造物2とを溶接するためのレーザ溶接ヘッド4とを用いる。溶接部にノズル9から不活性ガス10を供給しながら養生板3の外周のいずれかの位置に1mm以上の非溶接部30を残して外周の溶接を実施する。
【0030】
その後、図26、図27に示すように非溶接部をシールドカバー13で覆い不活性ガス10を供給して養生板3と構造物2の隙間の水を排出して非溶接部を下側から上側へ溶接する。図28に示すように、非溶接部を溶接する前に、シールドカバー13で非溶接部を覆い不活性ガス10を供給するとともに養生板3の表面を高周波加熱源20で加熱して養生板3と構造物2との隙間の水を排出してもよい。
【0031】
このように構成された本実施の形態において、養生板3の外周のいずれかの位置に非溶接部を残し、非溶接部をシールドカバー13で被い不活性ガス10を供給するか、もしくは非溶接部シールドカバー13で被い、養生板3の表面を高周波加熱源20で加熱することにより養生板3と構造物2との隙間の水を排出することができる。これにより、養生板溶接を健全に実施できる。
【0032】
[第8の実施形態]
養生板3の外周を溶接する際にノズル9、シールドカバー13に加えてサイドシールドノズル21を設置する例を図29、図30に示す。
【0033】
本実施形態によれば、欠陥1を有する構造物表面を養生板3で被い、養生板の端面を養生板3と構造物2の隙間に残った水をサイドシールドノズル21から不活性ガス10を供給しながら溶接する。この構成により、溶接部近傍に水が掛かることが防止され、蒸気による溶接金属の吹き飛ばしを防止することができ、養生板の構造物への溶接が健全に実施できる。
【0034】
[第9の実施形態]
図31、図32、図33に示すように、本発明に係る水中補修溶接方法の第11の実施形態では、欠陥1を有する炉内構造物22に対して、欠陥部分を溶接するためのレーザ溶接ヘッド4を配置する。溶接ヘッド4は発振器5から照射されファイバ6にて伝送されたレーザ光7を集光するための集光レンズ8とレーザ光と同軸に設置されたノズル9と欠陥部分を覆うためのシールドカバー13とを有する。欠陥部分をシールドカバー13で覆い、不活性ガス10を供給しながら、欠陥の下面から上面に向かってレーザ光7を照射して溶接する。
【0035】
このように構成された実施形態において、欠陥1を有する炉内構造物22の表面をシールドカバー13で覆い下面から順に上面に溶接することで、欠陥内部に残った水を排出することができる。これにより、欠陥表面を封止溶接する際に、水蒸気により溶接金属が吹き飛ばされることなく、健全に欠陥の補修溶接を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る水中補修溶接方法の第1の実施形態の状況を示す概略縦断面図。
【図2】本発明に係る水中補修溶接方法の第1の実施形態における溶接部を示す概略平面図。
【図3】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態における養生板のスリット位置を示す概略平面図であって、(a)〜(i)はそれぞれ異なる具体例を示す図。
【図4】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態における溶接部を示す概略平面図。
【図5】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態の状況を示す概略縦断面図。
【図6】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図7】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態における溶接ビードを示す概略縦断面図。
【図8】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態の他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図9】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態のさらに他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図10】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態のさらに他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図11】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態のさらに他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図12】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態のさらに他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図13】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態のさらに他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図14】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態のさらに他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図15】本発明に係る水中補修溶接方法の第3の実施形態における養生板の貫通孔位置を示す概略平面図であって、(a)〜(f)はそれぞれ異なる具体例を示す図。
【図16】本発明に係る水中補修溶接方法の第4の実施形態における養生板のスリットおよび貫通孔の配置を示す概略平面図であって、(a)〜(f)はそれぞれ異なる具体例を示す図。
【図17】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態の状況を示す概略縦断面図。
【図18】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態における溶接部を示す概略平面図。
【図19】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態における溶接方向の例を示す概略平面図。
【図20】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態における溶接方向の他の例を示す概略平面図。
【図21】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図22】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態の変形例における溶接部を示す概略平面図。
【図23】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態の他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図24】本発明に係る水中補修溶接方法の第6の実施形態の状況を示す概略平面図。
【図25】本発明に係る水中補修溶接方法の第7の実施形態の状況を示す概略平面図。
【図26】本発明に係る水中補修溶接方法の第7の実施形態の状況を示す概略縦断面図。
【図27】本発明に係る水中補修溶接方法の第7の実施形態の状況を示す概略平面図。
【図28】本発明に係る水中補修溶接方法の第7の実施形態の変形例の状況を示す概略平面図。
【図29】本発明に係る水中補修溶接方法の第8の実施形態の状況を示す概略縦断面図。
【図30】本発明に係る水中補修溶接方法の第8の実施形態の状況を示す概略平面図。
【図31】本発明に係る水中補修溶接方法の第9の実施形態を原子炉内に適用する状況を示す概略縦断面図。
【図32】図31の要部を拡大して示す概略縦断面図。
【図33】本発明に係る水中補修溶接方法の第9の実施形態の状況を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0037】
1…欠陥、2…構造物、3…養生板、4…レーザ溶接ヘッド、5…発振器、6…ファイバ、7…レーザ光、8…集光レンズ、9…ノズル、10…不活性ガス、11…溶接ビード、12…スリット(開口)、13…シールドカバー、14…フィラーワイヤ、15…TIGアーク、16…貫通孔(開口)、20…高周波加熱源、21…サイドシールドノズル、22…炉内構造物
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中において水を排出せずにレーザ光によって溶接補修を行なう水中補修溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中にある構造物をレーザ溶接する技術としては、溶接対象部位を気中環境とするために密閉性の高い覆い(チャンバ)を溶接対象部位へ押し当て、チャンバ内部の水を不活性ガスなどで押し出す方法(特許文献1)が知られている。しかしながら、上述の従来の水中レーザ溶接装置では、複雑且つ大型のドライ化装置が必要となるために構造が肥大化し、複雑な構造物内や狭隘箇所に対するアクセス性および操作性が悪いという不具合があった。
【0003】
このような課題に対し、レーザ溶接ヘッドノズルより不活性ガスを噴射し、その勢いで溶接部位のみ一時的に気中環境に維持して水中溶接を実現する技術(特許文献2、3)が知られている。しかしながらこの技術は、水中において溶接部位をチャンバなしでも一時的にガス中に保つためのノズル形状やガス流れの滞留に寄与する技術である。
【特許文献1】特開平05−031591号公報
【特許文献2】特許第3012175号公報
【特許文献3】特許第3619286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造物の表面を水中にてレーザ溶接する場合は上記のような溶接ヘッドを用いても十分に健全な施工が可能であるが、構造物の表面に養生板を当ててする場合には、上記のような方法では養生板と溶接部位間の水の排出が十分でなく、良質な溶接品質を保つことは困難で、溶接内部に滞留した水の蒸発により噴出し不良が発生することが多い。すなわち、既存の技術では、水中において養生板溶接を実施する場合の具体的なレーザ集光方法、養生板形状や、養生板の位置決め要領、溶接方法などが明確となっておらず、水中における養生板と補修面との溶接接合方法、特に、その両者の隙間に滞留した水が蒸発により噴出することが問題であった。
【0005】
また、養生板溶接では養生板と補修溶接部位の接合面を完全に一致させる必要があるが、水中下の遠隔作業でこれを保証するためにはかなり大掛かりな養生板保持装置が必要であり、もっと簡易な操作冶具で実現可能となるような改善が要求されていた。
【0006】
本発明は、上述の事情に対処してなされたものであり、水中において水を排出せずにレーザ光によって溶接補修を行なう場合に、残留した水が水蒸気となって噴出す際に溶接金属を吹き飛ばして溶接不良が発生する不具合を、抑制・防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る水中補修溶接方法は、補修対象部を含む金属製構造物の表面を養生板によって覆うようにその養生板を水中で構造物に溶接する水中補修溶接方法において、前記溶接は、溶接部に不活性ガスを供給しながら、前記養生板の周囲を水中でレーザ溶接により溶接し、前記補修対象部を前記養生板によって密封するものであって、前記レーザ溶接におけるレーザ光と同軸に溶接部に不活性ガスを供給しながら溶接するものであること、を特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の水中補修溶接方法は、欠陥を有する金属構造物の補修対象部をシールドカバーで覆いながら、その欠陥の下面から上面に向かって、レーザ光を照射しながらその欠陥部分の封止溶接を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水中において水を排出せずにレーザ光によって溶接補修を行なう場合に、残留した水が水蒸気となって噴出す際に溶接金属を吹き飛ばして溶接不良が発生する不具合を、抑制または防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る水中補修溶接方法の実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1および図2に示すように、本発明の第1の実施形態では、欠陥1を有する構造物2もしくは欠陥を発生する可能性を有する構造物2の欠陥部分を隔離するための養生板3と、養生板3と構造物2とを溶接するためのレーザ溶接ヘッド4とを用いる。溶接ヘッドは、発振器5から照射されファイバ6にて伝送されたレーザ光7を集光するための集光レンズ8と、レーザ光7と同軸に設置されたノズル9とで構成される。養生板3は、構造物2の欠陥部分とその周囲を被うように設置する。設置した養生板3の外周をノズル9から不活性ガス10を供給しながらレーザ光7を照射して溶接する。
【0012】
本実施形態によれば、欠陥1を有する構造物表面2を養生板3で被いその外周をノズル9から不活性ガス10を供給しながらレーザ光7にて溶接することにより、構造物2の欠陥1部分を隔離することができ、構造物2の欠陥1の更なる侵食を抑制・防止することがきる。
【0013】
[第2の実施形態]
図3(a)〜(i)それぞれに、溶接時に構造物2と養生板3との間の水から発生する水蒸気を逃がすためのスリット(開口)10が設けられている養生板3の例を示す。スリット12は、たとえば、幅0.1mmないし3mmとし、養生板側面の角部近傍に上下方向に0.3mm以上の長さで設け、養生板3の4辺いずれの辺に設置してもよい。また、スリット12は端面に貫通していてもよい。スリット12の形状は長方形の他にT字型やL字型でもよい。また、水平方向に上下に2本以上設けてもよい。
【0014】
図4に示すように、レーザ溶接による養生板3の外周溶接はスリット12の近傍の端面が最終溶接位置となるようにノズル9から不活性ガス10を供給しながら溶接を実施する。
【0015】
図5および図6に示すように、養生板3の外周溶接をする際にはキーホール溶接が実現できるように養生板3の表面にレーザ光7を集光して溶接を実施する。図6に示すように、シールドカバー13にて溶接部を被い不活性ガス10を供給しながら溶接してもよい。このとき、養生板3の外周溶接は1パス溶接でも、2パス溶接でもよい。
【0016】
図7に示すように外周の2パス溶接を行なう場合は、まず、図中で溶接ビード11aに示されるように養生板3の端面から1〜5mmの位置を先に溶接し、続いて図中で溶接ビード11bに示されるように端面から2mmの範囲を溶接する。外周溶接を実施する別の方法として熱伝導型の溶接で実施する場合は、図8または図9に示すようにレーザ光7を養生板3の端面部にビーム径1.0mm以上に設定して溶接を行なう。図10または図11に示すように、外周溶接は溶接部にフィラーワイヤ14を供給しながら溶接してもよい。
【0017】
図12に示すように、養生板3の端面形状は、フィラーワイヤ14を供給しない代わりに傾斜させてもよい。さらに、図13に示すように、養生板3の端面形状をリップ形状としてもよい。また、熱伝導型の溶接で外周溶接を行なう場合は、図14に示すように熱源としてTIGアーク(Tungsten Inert Gas Arc)15、あるいはMIGアーク(Metal Inert Gas Arc)、もしくはプラズマアークを用いてもよい。
【0018】
このように構成された本実施の形態において、スリット12位置をレーザ溶接の終端部とすることで、養生板3と構造物2との間に残留した水から溶接による発熱で発生する蒸気が溶接中に蒸気となって排出される。外周溶接する際にキーホール溶接で2パス溶接することにより、溶接ビード11表面形状を滑らかにすることができる。また、養生板3の端面に傾斜もしくはリップ部を設けることによっても、養生板3と構造物2とを接合する溶接ビード表面を滑らかにすることができる。フィラーワイヤ14を供給しながら溶接することでも同様の作用が得られる。
【0019】
[第3の実施形態]
図15(a)〜(f)それぞれに、溶接時に構造物2と養生板3との間の水から発生する水蒸気を逃がすための円形の貫通孔(開口)16が設けられている養生板3の例を示す。貫通孔16は、たとえば直径0.1mm以上で中心間距離が1mm以上で2つ以上が養生板3の端面近傍の角部に上下方向に開けられている。レーザ溶接による養生板3の外周溶接は貫通孔16近傍の端面を最終溶接位置となるように溶接を実施する。
【0020】
本実施の形態によれば、貫通孔16から養生板3と構造物2との間に残留した水が溶接中に蒸気となって排出される。このため、蒸気圧によって溶接金属が吹き飛ばされることなく、養生板3を構造物2に健全に溶接することができる。
【0021】
[第4の実施形態]
図16(a)〜(f)それぞれに、溶接時に構造物2と養生板3との間の水から発生する水蒸気を逃がすためのスリット12と円形の貫通孔16が設けられている養生板3の例を示す。スリット12および貫通孔16は養生板3の側面の角部近傍に設けられている。レーザ溶接による養生板3の外周溶接はスリット12もしくは貫通孔16近傍の端面を最終溶接位置となるように溶接を実施する。
【0022】
本実施の形態によれば、スリット12および貫通孔16から養生板3と構造物2との間に残留した水が溶接中に蒸気となって排出される。そのため、蒸気圧によって溶接金属が吹き飛ばされることなく、養生板3を構造物2に健全に溶接することができる。
【0023】
[第5の実施形態]
図17、図18に、養生板3の水蒸気を逃がすためのスリット12および貫通孔16の封止溶接方法を示す。図示のように、欠陥1を有する構造物2に対して、欠陥部分を隔離するための養生板3と、養生板3と構造物2とを溶接するためのレーザ溶接ヘッド4とが配置される。養生板3には水蒸気を逃がすためのスリット12もしくは円形の貫通孔16もしくはスリット12と貫通孔16の両方が開いている。溶接ヘッド4には水蒸気を逃がすためのスリット12および貫通孔16が開いている範囲全体を覆うようシールドカバー13が設置され、シールドカバー内には不活性ガス10が供給できるようになっている。また、レーザ光7が照射される位置にフィラーワイヤ14が供給される。
【0024】
レーザ光7は熱伝導型の溶接ができるようにビーム径が1.0mm以上となるよう設定しレーザ光7を照射する。スリット12および貫通孔16の溶接は、まずスリット12および貫通孔16を覆うシールドカバー内に不活性ガス10を供給し養生板3と構造物2の隙間に残った水を排出する。その後、図19、図20に矢印で方向を示すように、フィラーワイヤ14を供給しながらレーザ光7を照射しスリット12もしくは貫通孔16の下側から順に上側に溶接を行なう。溶接は上進溶接でもよい。
【0025】
図21、図22に示すように、レーザ光7は、キーホール溶接となるように、焦点を養生板3の表面としてもよい。また、図23に示すように熱伝導型の溶接の場合、熱源としてTIGアーク15、MIGアークもしくはプラズマアークを用いてもよい。
【0026】
このように構成された本実施の形態において、スリット12および貫通孔16をシールドカバー13で覆い不活性ガスにて養生板3と構造物2との間に残った水をスリット12および貫通孔16の下面まで排出することにより、スリット12および貫通孔16を溶接する際に養生板3と構造物2の間に残った水が蒸気となって溶接金属を吹き飛ばすことが防止できる。これにより、養生板溶接を健全に実施できる。
【0027】
[第6の実施形態]
図24に養生板の水蒸気を逃がすためのスリット12および貫通孔16の封止溶接方法を示す。図24に示すように、水蒸気を逃がすためのスリット12および貫通孔16が開いている範囲全体を覆うようシールドカバー13を設置し、シールドカバー内には不活性ガス10が供給できるようになっている。さらに、養生板3の表面を加熱するための高周波加熱源20を設置する。
【0028】
このように構成された本実施の形態において、スリット12および貫通孔2をシールドカバー13で覆い、不活性ガス10を供給するとともに高周波加熱源20にて養生板3の表面から加熱する。これにより、養生板3と構造物2との間に残った水をスリット12および貫通孔16の下面よりさらに下まで排出することがき、これによりスリット12および貫通孔16を溶接する際に養生板3と構造物2の間に残った水が蒸気となって溶接金属を吹き飛ばすことが防止できる。これにより、養生板溶接を健全に実施できる。
【0029】
[第7の実施形態]
図25に、養生板3に水蒸気を逃がすためのスリットおよび貫通孔が無い場合の養生板3の外周溶接方法を示す。図25に示すように、欠陥1を有する構造物2と欠陥部分を隔離するための養生板3と、養生板3と構造物2とを溶接するためのレーザ溶接ヘッド4とを用いる。溶接部にノズル9から不活性ガス10を供給しながら養生板3の外周のいずれかの位置に1mm以上の非溶接部30を残して外周の溶接を実施する。
【0030】
その後、図26、図27に示すように非溶接部をシールドカバー13で覆い不活性ガス10を供給して養生板3と構造物2の隙間の水を排出して非溶接部を下側から上側へ溶接する。図28に示すように、非溶接部を溶接する前に、シールドカバー13で非溶接部を覆い不活性ガス10を供給するとともに養生板3の表面を高周波加熱源20で加熱して養生板3と構造物2との隙間の水を排出してもよい。
【0031】
このように構成された本実施の形態において、養生板3の外周のいずれかの位置に非溶接部を残し、非溶接部をシールドカバー13で被い不活性ガス10を供給するか、もしくは非溶接部シールドカバー13で被い、養生板3の表面を高周波加熱源20で加熱することにより養生板3と構造物2との隙間の水を排出することができる。これにより、養生板溶接を健全に実施できる。
【0032】
[第8の実施形態]
養生板3の外周を溶接する際にノズル9、シールドカバー13に加えてサイドシールドノズル21を設置する例を図29、図30に示す。
【0033】
本実施形態によれば、欠陥1を有する構造物表面を養生板3で被い、養生板の端面を養生板3と構造物2の隙間に残った水をサイドシールドノズル21から不活性ガス10を供給しながら溶接する。この構成により、溶接部近傍に水が掛かることが防止され、蒸気による溶接金属の吹き飛ばしを防止することができ、養生板の構造物への溶接が健全に実施できる。
【0034】
[第9の実施形態]
図31、図32、図33に示すように、本発明に係る水中補修溶接方法の第11の実施形態では、欠陥1を有する炉内構造物22に対して、欠陥部分を溶接するためのレーザ溶接ヘッド4を配置する。溶接ヘッド4は発振器5から照射されファイバ6にて伝送されたレーザ光7を集光するための集光レンズ8とレーザ光と同軸に設置されたノズル9と欠陥部分を覆うためのシールドカバー13とを有する。欠陥部分をシールドカバー13で覆い、不活性ガス10を供給しながら、欠陥の下面から上面に向かってレーザ光7を照射して溶接する。
【0035】
このように構成された実施形態において、欠陥1を有する炉内構造物22の表面をシールドカバー13で覆い下面から順に上面に溶接することで、欠陥内部に残った水を排出することができる。これにより、欠陥表面を封止溶接する際に、水蒸気により溶接金属が吹き飛ばされることなく、健全に欠陥の補修溶接を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る水中補修溶接方法の第1の実施形態の状況を示す概略縦断面図。
【図2】本発明に係る水中補修溶接方法の第1の実施形態における溶接部を示す概略平面図。
【図3】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態における養生板のスリット位置を示す概略平面図であって、(a)〜(i)はそれぞれ異なる具体例を示す図。
【図4】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態における溶接部を示す概略平面図。
【図5】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態の状況を示す概略縦断面図。
【図6】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図7】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態における溶接ビードを示す概略縦断面図。
【図8】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態の他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図9】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態のさらに他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図10】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態のさらに他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図11】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態のさらに他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図12】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態のさらに他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図13】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態のさらに他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図14】本発明に係る水中補修溶接方法の第2の実施形態のさらに他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図15】本発明に係る水中補修溶接方法の第3の実施形態における養生板の貫通孔位置を示す概略平面図であって、(a)〜(f)はそれぞれ異なる具体例を示す図。
【図16】本発明に係る水中補修溶接方法の第4の実施形態における養生板のスリットおよび貫通孔の配置を示す概略平面図であって、(a)〜(f)はそれぞれ異なる具体例を示す図。
【図17】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態の状況を示す概略縦断面図。
【図18】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態における溶接部を示す概略平面図。
【図19】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態における溶接方向の例を示す概略平面図。
【図20】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態における溶接方向の他の例を示す概略平面図。
【図21】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図22】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態の変形例における溶接部を示す概略平面図。
【図23】本発明に係る水中補修溶接方法の第5の実施形態の他の変形例の状況を示す概略縦断面図。
【図24】本発明に係る水中補修溶接方法の第6の実施形態の状況を示す概略平面図。
【図25】本発明に係る水中補修溶接方法の第7の実施形態の状況を示す概略平面図。
【図26】本発明に係る水中補修溶接方法の第7の実施形態の状況を示す概略縦断面図。
【図27】本発明に係る水中補修溶接方法の第7の実施形態の状況を示す概略平面図。
【図28】本発明に係る水中補修溶接方法の第7の実施形態の変形例の状況を示す概略平面図。
【図29】本発明に係る水中補修溶接方法の第8の実施形態の状況を示す概略縦断面図。
【図30】本発明に係る水中補修溶接方法の第8の実施形態の状況を示す概略平面図。
【図31】本発明に係る水中補修溶接方法の第9の実施形態を原子炉内に適用する状況を示す概略縦断面図。
【図32】図31の要部を拡大して示す概略縦断面図。
【図33】本発明に係る水中補修溶接方法の第9の実施形態の状況を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0037】
1…欠陥、2…構造物、3…養生板、4…レーザ溶接ヘッド、5…発振器、6…ファイバ、7…レーザ光、8…集光レンズ、9…ノズル、10…不活性ガス、11…溶接ビード、12…スリット(開口)、13…シールドカバー、14…フィラーワイヤ、15…TIGアーク、16…貫通孔(開口)、20…高周波加熱源、21…サイドシールドノズル、22…炉内構造物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補修対象部を含む金属製構造物の表面を養生板によって覆うようにその養生板を水中で構造物に溶接する水中補修溶接方法において、
前記溶接は、溶接部に不活性ガスを供給しながら、前記養生板の周囲を水中でレーザ溶接により溶接し、前記補修対象部を前記養生板によって密封するものであって、前記レーザ溶接におけるレーザ光と同軸に溶接部に不活性ガスを供給しながら溶接するものであること、
を特徴とする水中補修溶接方法。
【請求項2】
前記養生板には溶接中に養生板と構造物との間に残留した水から発生する水蒸気を逃がすための開口があらかじめ設けられており、
前記養生板の周囲を前記構造物に溶接した後に前記開口を封止すること、
を特徴とする請求項1に記載の水中補修溶接方法。
【請求項3】
前記開口が前記養生板のいずれかの辺に隣接して設けられ、前記養生板の周囲を前記構造物に溶接する作業は前記養生板に隣接する辺の溶接を最後に行なうこと、を特徴とする請求項2に記載の水中補修溶接方法。
【請求項4】
前記開口の封止は、当該開口をシールドカバーで覆い、このシールドカバー内に不活性ガスを供給し、前記養生板と前記構造物の間の水を排出した後に、レーザ光を照射して下から上へ封止溶接を行なうこと、を特徴とする請求項2ないし請求項3のいずれか一項に記載の水中補修溶接方法。
【請求項5】
前記養生板と前記構造物の間の水を排出する際に、前記養生板の表面から加熱することを特徴とする請求項4に記載の水中補修溶接方法。
【請求項6】
前記養生板の周囲を溶接する工程は、
前記養生板の周囲の一部を残して溶接する第1の溶接工程と、
前記第1の溶接工程の後に、前記養生板と前記構造物の間に残留した水分を排出する水排出工程と、
前記水排出工程の後に、前記第1の溶接工程で残された前記養生板の周囲の一部を溶接する第2の溶接工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の水中補修溶接方法。
【請求項7】
前記養生板の周囲を溶接する工程は、前記養生板端面から内側を溶接する1パス目と、前記1パス目の後に端面近傍の溶接を行なう2パス目とを含むこと、を特徴とする請求項1に記載の水中補修溶接方法。
【請求項8】
前記溶接は、溶接部をシールドカバーで覆い、このシールドカバー内に不活性ガスを供給しながら行なうこと、を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の水中補修溶接方法。
【請求項9】
前記養生板の周囲を溶接する際に、溶接部をシールドカバーで覆い、このシールドカバー内に不活性ガスを供給するとともに、前記シールドカバーの中で、養生板と前記構造物との間に不活性ガスを供給するサイドシールドノズルを設け、このサイドシールドノズルに不活性ガスを供給すること、を特徴とする請求項8に記載の水中補修溶接方法。
【請求項10】
欠陥を有する金属構造物の補修対象部をシールドカバーで覆いながら、その欠陥の下面から上面に向かって、レーザ光を照射しながらその欠陥部分の封止溶接を行なうことを特徴とする水中補修溶接方法。
【請求項11】
前記封止溶接は、前記シールドカバー内で、レーザ光と同軸に封止溶接部に不活性ガスを供給しながら溶接するものであること、を特徴とする請求項10に記載の水中補修溶接方法。
【請求項12】
前記溶接は、キーホール型溶接、熱伝導型溶接、TIGアーク、MIGアーク、プラズマアークのいずれかを用いることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の水中補修溶接方法。
【請求項1】
補修対象部を含む金属製構造物の表面を養生板によって覆うようにその養生板を水中で構造物に溶接する水中補修溶接方法において、
前記溶接は、溶接部に不活性ガスを供給しながら、前記養生板の周囲を水中でレーザ溶接により溶接し、前記補修対象部を前記養生板によって密封するものであって、前記レーザ溶接におけるレーザ光と同軸に溶接部に不活性ガスを供給しながら溶接するものであること、
を特徴とする水中補修溶接方法。
【請求項2】
前記養生板には溶接中に養生板と構造物との間に残留した水から発生する水蒸気を逃がすための開口があらかじめ設けられており、
前記養生板の周囲を前記構造物に溶接した後に前記開口を封止すること、
を特徴とする請求項1に記載の水中補修溶接方法。
【請求項3】
前記開口が前記養生板のいずれかの辺に隣接して設けられ、前記養生板の周囲を前記構造物に溶接する作業は前記養生板に隣接する辺の溶接を最後に行なうこと、を特徴とする請求項2に記載の水中補修溶接方法。
【請求項4】
前記開口の封止は、当該開口をシールドカバーで覆い、このシールドカバー内に不活性ガスを供給し、前記養生板と前記構造物の間の水を排出した後に、レーザ光を照射して下から上へ封止溶接を行なうこと、を特徴とする請求項2ないし請求項3のいずれか一項に記載の水中補修溶接方法。
【請求項5】
前記養生板と前記構造物の間の水を排出する際に、前記養生板の表面から加熱することを特徴とする請求項4に記載の水中補修溶接方法。
【請求項6】
前記養生板の周囲を溶接する工程は、
前記養生板の周囲の一部を残して溶接する第1の溶接工程と、
前記第1の溶接工程の後に、前記養生板と前記構造物の間に残留した水分を排出する水排出工程と、
前記水排出工程の後に、前記第1の溶接工程で残された前記養生板の周囲の一部を溶接する第2の溶接工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の水中補修溶接方法。
【請求項7】
前記養生板の周囲を溶接する工程は、前記養生板端面から内側を溶接する1パス目と、前記1パス目の後に端面近傍の溶接を行なう2パス目とを含むこと、を特徴とする請求項1に記載の水中補修溶接方法。
【請求項8】
前記溶接は、溶接部をシールドカバーで覆い、このシールドカバー内に不活性ガスを供給しながら行なうこと、を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の水中補修溶接方法。
【請求項9】
前記養生板の周囲を溶接する際に、溶接部をシールドカバーで覆い、このシールドカバー内に不活性ガスを供給するとともに、前記シールドカバーの中で、養生板と前記構造物との間に不活性ガスを供給するサイドシールドノズルを設け、このサイドシールドノズルに不活性ガスを供給すること、を特徴とする請求項8に記載の水中補修溶接方法。
【請求項10】
欠陥を有する金属構造物の補修対象部をシールドカバーで覆いながら、その欠陥の下面から上面に向かって、レーザ光を照射しながらその欠陥部分の封止溶接を行なうことを特徴とする水中補修溶接方法。
【請求項11】
前記封止溶接は、前記シールドカバー内で、レーザ光と同軸に封止溶接部に不活性ガスを供給しながら溶接するものであること、を特徴とする請求項10に記載の水中補修溶接方法。
【請求項12】
前記溶接は、キーホール型溶接、熱伝導型溶接、TIGアーク、MIGアーク、プラズマアークのいずれかを用いることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の水中補修溶接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2007−229757(P2007−229757A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53748(P2006−53748)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]