説明

水処理システム及び処理液排出方法

【課題】分離膜モジュールにより被処理液をろ過する水処理システムにおいて、分離膜モジュールを洗浄した後に分離膜モジュールで処理液を製造する場合に、処理液を所定の洗浄液含有量以下に調整することが可能な水処理システム、処理液排出方法を提供すること。
【解決手段】流量調整槽10と、分離膜モジュール21が配置された膜分離槽20とを備え、前記膜分離槽20に流入した工場廃水L1を前記分離膜モジュール21によりろ過して排出する水処理システム1であって、前記分離膜モジュール21を洗浄した後に、工場廃水L1を前記分離膜モジュール21でろ過して製造された処理水L2を排出する場合に、処理水L2の洗浄液含有量を、設定値以下に調整する洗浄液含有量調整手段40を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、膜分離槽に設けられた分離膜モジュールを、洗浄液により洗浄した後に、被処理液を分離膜モジュールによりろ過して処理液を製造する場合に、処理液の洗浄液含有量を調整することが可能な処理液排出方法及び水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、工場廃水等の被処理液をろ過する場合、膜分離槽に流入させた被処理液に好気性微生物を浮遊滞留させて、曝気して処理し、処理液を製造する膜分離活性汚泥法(MBR)が広く用いられている。
膜分離活性汚泥法では、被処理液から活性汚泥を分離する際に、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等を素材とする限外ろ過膜、精密ろ過膜等の分離膜を用いた分離膜モジュールが用いられる。
【0003】
しかしながら、膜分離活性汚泥法で分離膜モジュールを用いると、被処理水をろ過するにしたがい、分離膜が次第に閉塞されて分離能が低下する。
そこで、分離膜モジュールの分離能を回復するために、分離膜モジュールを膜分離槽に浸漬したまま、二次側から一次側に洗浄液を流通させて、分離膜の閉塞を効率的に解消する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような分離膜モジュールの洗浄は、定期的(例えば、週1回)に、又は分離膜モジュールの膜圧差の状況によって、例えば、洗浄液として、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(濃度300〜500mg/L)が用いれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−300969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記分離膜モジュールを洗浄した場合、一定期間、処理水側に高濃度の塩素が残留する場合があるが、水質汚濁防止法に規定された排出基準には、塩素濃度についての規定がないため、特に管理は要求されない。
しかしながら、残留塩素濃度の高い処理水を河川、湖沼、海域に放流した場合、環境に影響を与える可能性があり、また、一時的ではあるが、残留塩素濃度の高い処理水を排出することにより、後段の処理装置等に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、分離膜モジュールにより被処理液をろ過する水処理システムにおいて、分離膜モジュールを洗浄した後に、分離膜モジュールで処理液を製造する場合に、処理液を所定の洗浄液含有量以下に調整することが可能な水処理システム、処理液排出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、流量調整槽と、前記流量調整槽の下流に接続され分離膜モジュールが配置された膜分離槽とを備え、前記膜分離槽に流入した被処理液を前記分離膜モジュールによりろ過して排出する水処理システムであって、前記分離膜モジュールの2次側から1次側に洗浄液を流通させて前記分離膜モジュールを洗浄した後に、被処理液を前記分離膜モジュールでろ過して製造された処理液を排出する場合に、処理液の洗浄液含有量を、設定値以下に調整する洗浄液含有量調整手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、流量調整槽と、前記流量調整槽の下流に接続され分離膜モジュールが配置された膜分離槽とを備え、前記膜分離槽に流入した被処理液を前記分離膜モジュールによりろ過して排出する水処理システムにおいて、前記分離膜モジュールの2次側から1次側に洗浄液を流通させて前記分離膜モジュールを洗浄した後に被処理液を前記分離膜モジュールでろ過して製造される処理液を、前記水処理システムから排出するための処理液排出方法であって、処理液の洗浄液含有量を設定値以下に調整してから排出することを特徴とする。
【0010】
この発明に係る水処理システム、処理液排出方法によれば、分離膜モジュールの2次側から1次側に洗浄液を流通させて分離膜モジュールを洗浄した後に、分離膜モジュールでろ過、製造した処理液の洗浄液含有量を、設定値以下に調整する。その結果、分離膜モジュールを洗浄した後においても、水処理システムから排出する処理液の洗浄液含有量を、設定値以下に抑制することができる。
【0011】
この明細書において、処理液の洗浄液含有量を設定値以下に調整するとは、洗浄液含有量に関して管理するべき特性の絶対値を、単純に低減することを意味するのではなく、管理基準の範囲(または、目標値)に近づけることをいい、例えば、管理特性が残留塩素濃度の場合には、設定した目標値(1mg/Lなど)に近づけることをいう。
また、設定値とは、例えば、水質汚濁防止法等に規定された物質を対象とする場合であっても、必ずしも水質汚濁防止法等に規定された基準値に限定されず、基準値以外の任意の数値を設定値としてもよいことはいうまでもない。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水処理システムであって、前記洗浄液含有量調整手段は、処理液の洗浄液含有量を測定する洗浄液含有量測定手段と、処理液返送手段とを備え、前記洗浄液含有量測定手段による測定値が設定値を超える場合に、前記処理液返送手段により処理液を前記流量調整槽と前記膜分離槽の少なくともいずれか一方に返送するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の処理液排出方法であって、処理液の洗浄液含有量を測定し、処理液の洗浄液含有量が設定値を超える場合は、処理液を前記流量調整槽と前記膜分離槽の少なくともいずれか一方に返送し、前記洗浄液含有量を設定値以下としてから処理液を排出することを特徴とする。
【0014】
この発明に係る水処理システム、処理液排出方法によれば、処理液の洗浄液含有量を測定し、洗浄液含有量測定手段による測定値が設定値を超える場合には、処理液を流量調整槽と膜分離槽の少なくともいずれか一方に返送するように構成されているので、洗浄液含有量が多い処理液の洗浄液含有量が設定値に近づくように処理(例えば、中和、酸化、還元等)することが可能とされる。
その結果、水処理システムから排出される処理液の洗浄含有量を、効率的に設定値以下に低減することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の水処理システムであって、前記洗浄液含有量調整手段は、処理液の洗浄液含有量を算出する洗浄液含有量算出手段と、調整剤付加手段とを備え、前記洗浄液含有量算出手段が算出した前記洗浄液含有量に基づいて、前記調整剤付加手段により前記洗浄液含有量を設定値以下とする量の調整剤を処理液に付加するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の処理液排出方法であって、処理液の洗浄液含有量を算出し、前記算出した前記洗浄液含有量に基づいて前記洗浄液含有量を設定値以下とする量の調整剤を付加し、前記洗浄液含有量を設定値以下としてから処理液を排出することを特徴とする。
【0017】
この発明に係る水処理システム、処理液排出方法によれば、処理液の洗浄液含有量を算出し、算出した洗浄液含有量に基づいて、洗浄液含有量を設定値以下とする量の調整剤を付加するように構成されているので、洗浄液含有量を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る水処理システム、処理液排出方法によれば、分離膜モジュールを洗浄した後に、分離膜モジュールで処理液を製造する場合に、処理液を所定の洗浄液含有量以下に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水処理システムの概略を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る水処理システムにおける洗浄液含有量調整の一例を説明するフロー図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る水処理システムの概略を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る水処理システムにおける洗浄液含有量調整の一例を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1、図2を参照し、この発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る水処理システムの第1の実施形態を示す図であり、符号1は水処理システムを示している。
【0021】
水処理システム1は、例えば、流量調整槽10と、膜分離槽20と、処理水槽30と、洗浄液含有量調整手段40とを備え、水処理システム1に流入する工場廃水(被処理液)L1を、膜分離活性汚泥法(MBR)によりろ過し、処理水(処理液)L2を製造し、水処理システム1の系外に排出するようになっている。
【0022】
流量調整槽10は、下流側が、配管15を介して膜分離槽20に接続され、水処理システム1の上流側から流入する工場廃水L1を、一時的に貯留するようになっている。貯留された工場廃水L1は、配管15に設けられた送液ポンプ16により、所定流量の工場廃水L1を膜分離槽20に移送するようになっている。
【0023】
膜分離槽20は、例えば、限外ろ過膜が設けられた分離膜モジュール21を備え、流量調整槽10から流入した工場廃水L1に好気性微生物を浮遊滞留させ、曝気することにより工場廃水L1を処理し、限外ろ過膜の一次側から二次側に通過、ろ過することで、活性汚泥を除去して処理水L2を製造するようになっている。
【0024】
また、膜分離槽20の下流側は、配管25を介して処理水槽30に接続され、処理水L2を、配管25に設けられたろ過ポンプ26により,膜分離槽20から処理水槽30に移送するようになっている。
分離膜モジュール21は、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を素材として構成されており、膜分離槽20に貯留された工場廃水L1に浸漬可能に設置されている。
【0025】
処理水槽30は、配管25を介して膜分離槽20から流入する処理水L2を貯留し、処理水L2は、例えば、オーバフローして配管35を介して水処理システム1の系外に排出されるようになっている。
【0026】
洗浄液含有量調整手段40は、例えば、残留塩素濃度測定器(洗浄液含有量測定手段)41と、処理液返送手段42とを備え、残留塩素濃度測定器41による処理水L2の塩素含有量が、設定値を超えた場合に、処理液返送手段42によって処理水L2を流量調整槽10に返送するようになっている。
【0027】
残留塩素濃度測定器41は、配管35に配置され、制御部43からの指示に基づき、配管35から排出される処理水L2の塩素含有量を一定周期で間欠測定するようになっている。なお、間欠測定に代えて、連続的に測定してもよい。
【0028】
処理液返送手段42は、制御部43と、処理水返送配管44と、返送ポンプ45と、モータバルブ46と、信号ケーブル47と、信号ケーブル48とを備えている。
制御部43は、信号ケーブル47を介して残留塩素濃度測定器41と接続され、残留塩素濃度測定器41が測定した塩素含有量を、信号ケーブル47を介して取得し、塩素含有量と設定値とを比較し、塩素含有量が設定値を超えている場合には異常と判断し、返送ポンプ45及びモータバルブ46に、信号ケーブル48を介して処理水返送信号を出力するようになっている。
【0029】
処理水返送配管44は、処理水槽30と流量調整槽10とを接続し、処理水返送配管44には、返送ポンプ45と、モータバルブ46が、処理水槽30からこの順に設けられている。
また、処理水返送配管44の返送ポンプ45とモータバルブ46の間には、処理水槽30と分離膜モジュール21の二次側を接続する洗浄液配管36の一端(洗浄液流れ方向上流)が接続され、洗浄液配管36の他端(洗浄液流れ方向下流)は、配管25の分離膜モジュール21とろ過ポンプ26の間に接続されている。また、洗浄液配管36には、モータバルブ37が設けられていて、洗浄液配管36での洗浄液の流れを制御するようになっている。
【0030】
分離膜モジュール21の洗浄は、図示しない制御手段により、モータバルブ37を開いてモータバルブ46を閉塞するとともにろ過ポンプ26を停止して、返送ポンプ45を駆動することにより、処理水槽30から分離膜モジュール21の二次側に洗浄液を圧送することにより行なわれる。洗浄液は、処理水槽30内の処理水L2に、例えば、次亜塩素酸ナトリウム等を溶解することにより製造されている。
【0031】
なお、分離膜モジュール21の洗浄は、定期的に、又は分離膜モジュール21の膜圧差の状況により、又は処理水L2の水質が悪化した場合に実施される。
また、処理水槽30から洗浄液を圧送するのに代えて、他の周知の洗浄手段(図示せず)を用いて分離膜モジュール21を洗浄してもよい。
【0032】
以下、図2を参照して、水処理システム1において、分離膜モジュール21を洗浄液により洗浄し、その後、工場廃水L1を活性汚泥で処理した後、分離膜モジュール21によりろ過した処理水L2を製造する場合に、処理水L2の洗浄液含有量を自動で調整するための手順の一例について説明する。
(1)残留塩素濃度測定器41により、処理水L2の塩素含有量を測定する。(S1)
(2)塩素含有量が、異常であるかどうかを判断する(S2)。
塩素含有量が、異常である場合にはS3に移行し、塩素含有量が正常である場合にはS5に移行する。
(3)返送ポンプ45を起動して、モータバルブ46を「開」にする(S3)。
(4)処理水槽30から流量調整槽10へ、処理水L2を返送する(S4)。
(5)塩素含有量が正常である場合には、処理水L2を水処理システム1の系外へ送液(排水)する(S5)。
上記(2)から(5)を繰り返して実行する。
【0033】
以上のように、制御部43が、処理水返送信号を出力して、返送ポンプ45が駆動するとともにモータバルブ46が開かれることにより、処理水L2が流量調整槽10に返送される。このとき、モータバルブ37は、閉塞されている。
【0034】
流量調整槽10に返送された処理水L2の残留塩素は、流量調整槽10に流入する工場廃水(被処理液)L1の有機成分により還元され、返送された処理水L2の残留塩素含有量は低下する。そして、処理水L2は膜分離槽20に移送され、好気性微生物が存在する環境下で、曝気して処理されることにより残留塩素が還元され、返送された処理水L2の残留塩素含有量がさらに低下し、再び、処理水槽30に移送される。
【0035】
その結果、水処理システム1によれば、水処理システム1から系外へ排出される処理水L2の塩素含有量を、効率的に設定値以下に調整することができる。
【0036】
次に、図3、図4を参照して、この発明の第2の実施形態について説明する。
図3は、第2の実施形態に係る水処理システム2を示す図である。
水処理システム2が、水処理システム1と異なるのは、水処理システム2が、洗浄液含有量調整手段40に代えて、調整剤付加手段50を備えている点であり、その他は、水処理システム1と同様であるので、同一の符号を付して説明を省略する。
なお、図3において、水処理システム2に、洗浄液配管36及びモータバルブ37は、図示していない。
【0037】
調整剤付加手段50は、残留塩素濃度測定器51と、制御部53(洗浄液含有量算出手段)と、調整剤添加装置(調整剤付加手段)54と、調整剤タンク54Tと、信号ケーブル55と、信号ケーブル56とを備えている。
なお、この実施形態では、残留塩素濃度測定器51の測定値は、調整剤添加量の算出には用いておらず、塩素含有量が設定値を超えているかどうかを判断するためのみに用いるようになっている。
【0038】
制御部53は、残留塩素濃度測定器51の塩素含有量の測定値を、信号ケーブル55を介して取得し、塩素含有量の測定値と設定値とを比較し、塩素含有量が設定値を超えている場合には、異常と判断して調整剤添加量を算出する。
制御部53における調整剤添加量の算出は、例えば、図示しないデータベースを参照して、分離膜モジュール21の洗浄に用いた洗浄液の種類、濃度、洗浄後の処理水製造量、洗浄後の経過時間等に基づいて、算出(予測)するようになっている。
制御部53は、調整剤添加量を算出したら、信号ケーブル56を介して、調整剤添加装置54に、調整剤添加信号を出力するようになっている。
【0039】
調整剤添加装置54は、調整剤添加信号に基づいて調整剤タンク54Tから所定量の調整剤を採取して、処理水槽30に調整剤を添加(薬注制御)するようになっている。
この実施形態では、調整剤として、例えば、重亜硫酸ナトリウムが用いられる。
【0040】
以下、図4を参照して、水処理システム2において、分離膜モジュール21を洗浄液により洗浄し、その後、工場廃水L1を活性汚泥で処理した後、分離膜モジュール21によりろ過した処理水L2を製造する場合に、処理水L2の洗浄液含有量を自動で調整するための手順の一例について説明する。
(1)残留塩素濃度測定器51により、処理水L2の洗浄液含有量を測定する。(S11)
(2)洗浄液含有量を設定値と比較して、洗浄液含有量が異常であるかどうかを判断する(S12)。
洗浄液含有量が、異常である場合にはS13に移行し、洗浄液含有量が正常である場合にはS15に移行する。
(3)制御部53において、調整剤添加量を算出する(S13)。
(4)制御部53は、信号ケーブル56を介して、調整剤添加装置54に調整剤添加信号を出力する。調整剤添加装置54は、制御部53からの調整剤添加信号に基づいて、指示された量の調整剤を調整剤タンク54Tから採取して、処理水槽30に添加する(S14)。
(5)洗浄液含有量が正常である場合には、処理水L2を水処理システム2の系外へ送液(排水)する(S15)。
上記(2)から(5)を繰り返して実行する。
【0041】
水処理システム2によれば、調整剤の添加量を予測、算出して付加するので、洗浄液含有量を、効率的に設定値以下に低減することができる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、水処理システム1において、処理水L2を流量調整槽10に返送する場合について説明したが、例えば、流量調整槽10に代えて膜分離槽20に、処理水L2を返送してもよいし、又は、流量調整槽10と膜分離槽20の双方に、処理水L2を返送してもよい。また、流量調整槽10と膜分離槽20の双方に返送する場合に、各槽への返送比率を、処理効率等に基づいた任意のロジックにより算出して返送してもよい。
また、流量調整槽10と膜分離槽20との間に曝気槽を1つ以上設け、これらの曝気槽へ処理水L2を返送してもよい。
【0043】
上記実施の形態においては、分離膜モジュール21が、限外ろ過膜からなる分離膜を用いる場合について説明したが、限外ろ過膜に代えて、精密ろ過膜等を用いてもよく、材質や形状については、特に限定されず、例えば、材質をPVDFに代えて、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリプロピレン、セラミックス、ポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレン等を用いてもよい。
【0044】
また、上記実施の形態においては、次塩素酸ナトリウムを溶解した処理水L2を洗浄液として用いる場合について説明したが、洗浄する分離膜モジュールの材質、ろ過の目的、閉塞状態等に応じて、任意のものを用いることができ、次亜塩素酸ナトリウムに代えて、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質、塩酸、硫酸、シュウ酸、クエン酸等の酸性物質、界面活性剤の水溶液、アルコール等を用いてもよい。
【0045】
また、処理水L2の洗浄液含有量を測定する場合に、残留塩素濃度以外を代用特性に用いてもよい。
また、上記実施の形態においては、被処理液が、工場廃水L1である場合について説明したが、アルカリ性液、酸性液、溶剤等他の被処理液を対象としてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態においては、水処理システム1が制御部43を備え、水処理システム2が制御部53を備える場合について説明したが、かかる制御部43、53によらず、手動により被処理液の洗浄液含有量を低減してもよい。
【0047】
また、上記実施の形態においては、処理水L2に添加する調整剤が、次亜塩素酸ナトリウムを還元するための重亜硫酸ナトリウムである場合について説明したが、洗浄剤の種類等により、他の適した薬剤を用いてもよい。
【0048】
また、水処理システム2において、残留塩素濃度測定器51が異常の検出のみに用いられる場合について説明したが、残留塩素濃度測定器51の測定値に基づいて、調整剤添加量を算出してもよいことはいうまでもない。
【0049】
また、例えば、データベース等により、分離膜モジュール21の洗浄に用いた洗浄液の種類、濃度、洗浄後の処理水製造量、洗浄後の経過時間等に基づいて、処理水L2の洗浄液含有量の異常を確実に検出可能な場合には、残留塩素濃度測定器51等の洗浄液含有量測定手段を設けない構成としてもよい。
また、図2、図4のフロー図に示した水処理システム1、2における処理手順に、いずれかの処理手順を付加してもよいことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
分離膜モジュールを用いた水処理システムにおいて、分離膜モジュールを洗浄した後に処理液を製造する場合に、処理液を所定の洗浄液含有量以下に調整することが可能であるので、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
L1 工場廃水(被処理液)
L2 処理水(処理液)
1、2 水処理システム
10 流量調整槽
20 膜分離槽
21 分離膜モジュール
30 処理水槽
40、50 洗浄液含有量調整手段
41 残留塩素濃度測定器(洗浄液含有量測定手段)
42 処理液返送手段
53 制御部(洗浄液含有量算出手段)
54 調整剤添加装置(調整剤付加手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量調整槽と、前記流量調整槽の下流に接続され分離膜モジュールが配置された膜分離槽とを備え、前記膜分離槽に流入した被処理液を前記分離膜モジュールによりろ過して排出する水処理システムであって、
前記分離膜モジュールの2次側から1次側に洗浄液を流通させて前記分離膜モジュールを洗浄した後に、被処理液を前記分離膜モジュールでろ過して製造された処理液を排出する場合に、処理液の洗浄液含有量を、設定値以下に調整する洗浄液含有量調整手段を備えることを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理システムであって、
前記洗浄液含有量調整手段は、
処理液の洗浄液含有量を測定する洗浄液含有量測定手段と、
処理液返送手段と、を備え、
前記洗浄液含有量測定手段による測定値が設定値を超える場合に、前記処理液返送手段により処理液を前記流量調整槽と前記膜分離槽の少なくともいずれか一方に返送するように構成されていることを特徴とする水処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の水処理システムであって、
前記洗浄液含有量調整手段は、
処理液の洗浄液含有量を算出する洗浄液含有量算出手段と、
調整剤付加手段と、を備え、
前記洗浄液含有量算出手段が算出した前記洗浄液含有量に基づいて、前記調整剤付加手段により前記洗浄液含有量を設定値以下とする量の調整剤を処理液に付加するように構成されていることを特徴とする水処理システム。
【請求項4】
流量調整槽と、前記流量調整槽の下流に接続され分離膜モジュールが配置された膜分離槽とを備え、前記膜分離槽に流入した被処理液を前記分離膜モジュールによりろ過して排出する水処理システムにおいて、前記分離膜モジュールの2次側から1次側に洗浄液を流通させて前記分離膜モジュールを洗浄した後に被処理液を前記分離膜モジュールでろ過して製造される処理液を、前記水処理システムから排出するための処理液排出方法であって、
処理液の洗浄液含有量を設定値以下に調整してから排出することを特徴とする処理液排出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の処理液排出方法であって、
処理液の洗浄液含有量を測定し、
処理液の洗浄液含有量が設定値を超える場合は、処理液を前記流量調整槽と前記膜分離槽の少なくともいずれか一方に返送し、前記洗浄液含有量を設定値以下としてから処理液を排出することを特徴とする処理液排出方法。
【請求項6】
請求項4に記載の処理液排出方法であって、
処理液の洗浄液含有量を算出し、
前記算出した前記洗浄液含有量に基づいて前記洗浄液含有量を設定値以下とする量の調整剤を付加し、前記洗浄液含有量を設定値以下としてから処理液を排出することを特徴とする処理液排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−177689(P2011−177689A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46828(P2010−46828)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】