説明

水処理システム

【課題】 集塵系Aから余剰水を極力転炉系外10へ排出させること無く、循環系Bから発生するSS濃度の高い排水を効率良く回収する水処理システムを提供すること。
【解決手段】 湿式集塵機(6)からの集塵排水に対して固液分離処理を行い、この処理水を湿式集塵機に供給する集塵系と、ろ過機(21)を有し、固形分を含む排水に対して固液分離処理を行う処理手段(15,21)と、ろ過機の洗浄水を集塵系に供給する供給手段とを有し、ろ過機は、浮上性ろ材を用いて固液分離処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄高炉、製鋼転炉、電気炉、キュポラ、ダスト溶解炉、非鉄金属精錬炉及びスクラップ溶解炉等の湿式集塵機を有するプロセスにおける排ガス集塵水を処理する系統において、効率良く排水を循環回収する水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、排ガスの湿式集塵機から発生する固形分濃度(以下、SS濃度と言う)の高い集塵水の処理系統(以下、集塵系と言う)は、図1に示すように、湿式集塵機1、集塵水処理設備であるシックナー2、処理水槽3及び集塵水ポンプ4で構成される。シックナーとは、排水(集塵戻水)中の固形分と上澄水とを固液分離処理する沈澱槽である。また、当該集塵系は、1つのクローズドされた水循環回収システムであるが、蒸発及び飛散によって失われる分(水量;γ1)を適宜補給することにより、水量バランスが組まれている。
【0003】
一方、汚水供給系6からSS濃度の高い排水(水量;α)をシックナー2に受け入れて処理する場合もある。この場合、前述したように、集塵系においては水量バランスが組まれているため、αがγ1よりも多い場合には、受け入れ後の処理水はそのまま当該系から余剰水として系外5へ排出させる必要が生じる。また、汚水供給系6では、蒸発及び飛散によって失われる分(水量;γ2)とは別にシックナー2へ受け入れた分を余分に補給しなければならない。つまり、集塵系ではαがγ1より大きければ、α−γ1の余剰水が常時発生し、汚水供給系6では引き抜かれたαを従来のγ2に加えて常時補給することになる。
【0004】
例えば、図2のように製鋼転炉の排水処理は、転炉湿式集塵機6、転炉シックナー7、処理水槽8、集塵水ポンプ9から構成される集塵系Aとブロワー及びポンプ類11、循環水処理設備である冷却塔12、処理水槽13及び冷却洗浄水ポンプ14より構成される転炉循環水系統Bがある。尚、転炉循環水系統(以下、循環系Bと言う)は、給水SS濃度と同等濃度の排水が戻ってくる排出系aと給水SS濃度より高い濃度の排水が戻ってくる排出系bを有する。よって、排出系aの排水はそのまま冷却塔12で冷却処理され、処理水槽13に回収することにより、冷却洗浄水ポンプ14を用いて再循環利用できるが、排出系bの排水は給水SS濃度以下まで固形分を除去しないと冷却塔12で冷却処理され、処理水槽13に回収することができない。
【0005】
これまで、排出系bから発生するSS濃度の高い排水は、集塵系Aにおける転炉シックナー7に送水し、固液分離処理していた。このため、集塵系Aはクローズドされた水循環システムであることから、排出系bからSS濃度の高い排水(水量;α)を受け入れた場合は、図1でも説明したように、その処理水がそのまま集塵系Aから余剰水(水量;α−γ1)として転炉系外10へ排出していた。また、循環系Bにおいては、循環回収できなかった排水の水量分(水量;γ2+α)を処理水槽13に余計に補給していた。
【0006】
以上より、図1及び図2のような設備システム構成からなる転炉各水処理系統においては、効率的な排水の循環回収ができていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2006−231115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の集塵系A及び循環系Bにおける効率的な排水の循環回収としては、図3に示すような循環回収方案が一般的であった。すなわち、まず、排出系bから発生するSS濃度の高い排水を回収するために、当該排水が原水槽16、沈澱槽17及び処理水槽18で構成される凝集沈殿設備15で1次沈澱処理される。次に、その沈澱処理水がろ過ポンプ19を用いて砂ろ過機20へ圧送、ろ過されて、冷却洗浄水として再利用可能なSS濃度の低い処理水にまで2次ろ過処理される方案があった。
【0009】
上記方案によれば、排出系bから発生するSS濃度の高い排水を処理水槽13へ回収することができ、集塵系A及び循環系Bにおける排水の循環回収ができる。
【0010】
ここで、図3をもとに本発明が解決しようとする課題について説明する。
【0011】
図3に示す水処理システムでは、循環系Bにおける余分な補給水(水量;α)の削減が図れるものの、2次ろ過処理として砂ろ過機20を採用しているため、多量の洗浄汚水が発生する。なぜなら、当該ろ過機20は、ろ材間に補足した固形分の詰り解消を目的に、転炉系外21を水源とした多量の水にて定期的にろ過機20内を洗浄しなければならないからである。その結果、砂ろ過機20からは凝集沈殿対象となるSS濃度の高い多量の洗浄汚水(水量;β1)が発生することとなる。
【0012】
結局、当該汚水は転炉シックナー7に受け入れられて処理され、その処理水(水量;β1)はそのまま集塵系Aから余剰水として転炉系外10へ排出されることになり、集塵系Aにおいて効率的な排水循環回収ができない問題が残る。
【0013】
つまり、図3に示す水処理システムでは、循環系Bにおける排出系bから集塵系Aにおける転炉シックナー7へ受け入れられて処理される汚水が無くなり(水量;α→0)、循環系Bにおける補給水量は本来所要の補給水量(蒸発等によって失われた水量を補足する量)にまで削減された(水量;γ2+α→γ2)。しかしながら、当該汚水のろ過処理過程で発生した多量の洗浄汚水(水量;β1)を集塵系Aにおける転炉シックナー7へ受け入れて処理するため、集塵系Aから多量の余剰水(水量;β1−γ1)が転炉系外10へ排出される問題は解消されない。
【0014】
また、砂ろ過機20を採用した場合には、ろ過機20を洗浄する水を貯留する洗浄水槽、洗浄するためのポンプ及びブロワー、洗浄排水を受入れる排水槽等付帯設備が必要となる。そのため、設備コストの増大のみならず、設備占有スペースも大きくなることから、狭隘な水処理場内に設置する際には、スペース的課題も抱えることになる。
【0015】
そこで、集塵系Aから余剰水を極力転炉系外10へ排出させること無く、循環系Bから発生するSS濃度の高い排水を回収する省スペースで安価な水処理設備が要望されていた。
【0016】
本発明である効率的で省スペースかつ安価な排水の循環回収システム(水処理システム)は、湿式集塵機を有する排ガス集塵水の処理系統における種々の問題に鑑み考案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その要旨とするところは、
(1) 湿式集塵機からの集塵排水に対して固液分離処理を行い、この処理水を前記湿式集塵機に供給する集塵系と、ろ過機を有し、固形分を含む排水に対して固液分離処理を行う処理手段と、前記ろ過機の洗浄水を前記集塵系に供給する供給手段とを有し、前記ろ過機は、浮上性ろ材を用いて固液分離処理を行うことを特徴とする水処理システム。
【0018】
(2) 前記集塵系は、前記集塵排水に対して固液分離処理を行うシックナーを有しており、前記供給手段は、前記ろ過機の洗浄水を前記シックナーに供給することを特徴とする上記(1)に記載の水処理システム。
【0019】
(3) 前記処理手段は、前記固形分を含む排水に対して第1の固液分離処理を行う凝集沈殿設備と、前記凝集沈殿設備からの排水に対して第2の固液分離処理を行う前記ろ過機とを有しており、前記凝集沈殿設備に供給される排水の固形分濃度が、700mg/L以上8000mg/L以下であり、前記ろ過機に供給される排水の固形分濃度が400mg/L以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の水処理システム。
【0020】
(4) 前記ろ過機に供給される排水の固形分濃度が、100mg/L〜400mg/Lであることを特徴とする上記(3)に記載の水処理システム。
【0021】
(5) 前記ろ材が、球状又は円柱状であることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の水処理システム。
【0022】
(6) 前記ろ材の比重が、1.0よりも小さいことを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかに記載の水処理システム。
【0023】
(7) 前記ろ材の大きさが、0.1mm〜1.5mmであることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の水処理システム。
【0024】
(8) 前記ろ過機に供給される排水が、pH6〜12であることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれかに記載の水処理システム。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、湿式集塵機を有する集塵系と、固形分を含む排水に対して固液分離処理を行うろ過機を含む処理手段とを有し、ろ過機の洗浄水を集塵系に供給する水処理システムにおいて、浮上性ろ材を用いたろ過機を採用することにより、より効率的で省スペースかつ安価な排水循環回収システムを提供でき、集塵系外への排出水及び集塵系への補給水の削減が効果的に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、まず、図4を用いて概略説明する。
【0027】
本実施形態の集塵系Aの主要な構成は、湿式集塵機1、シックナー2、処理水槽3及び集塵水ポンプ4を有している。ただし、湿式集塵機1を用いて排ガス集塵水を処理するものであれば、集塵系Aを構成する個別機器の型式及び形状は選ばない。また、集塵系A(シックナー2)に洗浄汚水を供給する汚水供給系6は、図2に示す転炉循環系Bのように、給水SS濃度と同等濃度の排水が戻ってくる排出系aと給水SS濃度より高い濃度の排水が戻ってくる排出系bを2系統有する必要はない。例えば、給水SS濃度より高い濃度の汚水が発生し、図4のように当該汚水はろ過機を含む処理設備7を用いて処理されなければ給水として再利用できない循環系であれば何れでも良い。
【0028】
ここで、ろ過機のろ材洗浄工程において、後述するように洗浄汚水量が少量となるろ過機を適用することにより、汚水供給系6(ろ過機)で発生するSS濃度の高い洗浄汚水(水量;β)を極力集塵系Aに持ち込ませないようにすれば、集塵系Aから系外5への余剰水を最大限に削減できる。
【0029】
つまり、βがγ1に近づけば余剰水をより削減できるし、βがγ1以下ならば、βは集塵系A(処理水槽3)における補給水の一部となり、系外5への余剰水は発生しない。
【0030】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、転炉集塵水処理を一例として図5に示す。ここでは、ろ材の洗浄汚水量が少量となるろ過機を適用したろ過処理システムについて詳細に説明する。
【0031】
まず、機器構成について説明する。転炉集塵系Aおよび循環系Bの水処理における機器構成は砂ろ過機を採用した図3に示す構成と変わらない。
【0032】
循環系Bは給水SS濃度と同等濃度の排水が戻ってくる排出系aと給水SS濃度より高い濃度の排水が戻ってくる排出系bを2系統有するが、排出系aの排水はそのまま冷却塔12で冷却処理し、処理水槽13へ回収することにより、冷却洗浄水として再循環利用する。また、排出系bの排水は、原水槽16に一旦貯留された後、沈澱槽17にて排水を固形分と上澄水とに分離する。ここで、分離された一次処理水は処理水槽18に貯められた後、ろ過ポンプ19を用いることにより浮上性ろ材が充填されたろ過機21へ圧送される。さらに、一次処理水中の固形分はろ過機21により補足され、冷却洗浄水として再利用できるSS濃度の低い処理水まで二次処理される。最後に、冷却塔12で冷却処理し、処理水槽13に回収することにより、冷却洗浄水として再循環利用する。
【0033】
ここで、循環系Bから発生するSS濃度の高い排水を二次ろ過処理するためのろ過機において、砂ろ過機を適用した場合は、洗浄汚水量(水量;β1)が多量になる。そこで、本発明は、発泡ポリスチレンのような浮上性ろ材を機内に充填したろ過機21を用いることにより、他の水源を必要とせずろ過機21内に流入される原水にて機内洗浄ができ、その洗浄汚水量(水量;β2)をろ過機を用いた場合に比べて大幅に低減できることに着目したものである。
【0034】
次に、浮上性ろ材を機内に充填したろ過機21を適用したろ過処理システムの転炉水処理システムにおける水量バランス効果ついて詳細に説明する。ここで、浮上性ろ材を用いたろ過機21は、ろ過槽内に浮上したろ過材でろ材層を形成し、原液を上向流でろ過層中を通過させる構造である。
【0035】
本発明者らは、砂ろ過機から発生する洗浄汚水が多量であることから、当該汚水量を低減できるろ過方式について探索・検討を行った。その結果、浮上性ろ材を用いたろ過機21を採用すれば、例えば、循環系Bにおける補給水量は砂ろ過機に比べて約5%増加するものの、洗浄汚水が転炉シックナー7に流入する水量を約96%低減できることを見出した。
【0036】
すなわち、β2がβ1の4%程度と極めて少量となるので(一例;β2=0.04×β1<<β1)、循環系Bへの補給は従来(図3)のγ2に加えてβ2の分だけ増加するが、その増加分は約5%程度と微少である(一例;β2=0.05×γ2)。また、β2とγ1との差が小さくなるため、集塵系Aから転炉系外10への余剰水は砂ろ過機に比べ、操業上及び設備設計上無視できる程、大幅に低減できる(β2−γ1<<β1−γ1)。さらに、浮上性ろ材の洗浄汚水がγ1以下ならば(β2−γ1<0)、当該汚水は集塵系Aにおける補給水の一部となり、転炉系外10への余剰水は発生しない。
【0037】
さらに、本ろ過処理システムの運用形態について詳細に説明する。
【0038】
ろ過機21に充填した浮上性ろ材は砂に比べて比重が小さいため、ろ過機21内に設置した攪拌機での機械的攪拌が可能となる。そして、従来の水流攪拌より強力な攪拌機の攪拌により浮上性ろ材に付着した固形分を良好に剥離できることから、浮上性ろ材の洗浄水量は砂ろ材に比べ少量で済む。その結果、砂ろ材はSS濃度10〜100mg/l程度の比較的低い洗浄水を使用する必要があるのに対し、浮上性ろ材はSS濃度100〜400mg/l程度の濁度の高いろ過機流入原水を洗浄水として使用できる。
【0039】
その結果、ろ過機21の洗浄工程から発生し、転炉シックナー7に供給される洗浄汚水の量が低減できる。つまり、集塵系Aから転炉系外10への余剰水を大幅に低減することができる。ここで、洗浄汚水量β2が集塵系Aにおける補給水量γ1以下となれば、集塵系Aから転炉系外10への余剰水は発生せず、より効率的な排水の循環回収が達成できる。
【0040】
次に、前記浮上性能を示すろ材の材質としては、発泡性のある高分子樹脂がよい。特に、発泡ポリウレタン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレンが好適である。
【0041】
ろ材の形状としては、球状(断面が円又は楕円を含む形状)または円柱状(長手方向と直交する断面が円又は楕円を含む形状)がよく、特に、球状が好適である。立方体のような突起状のものであれば、ろ過機内の衝突時の摩擦により攪拌効率が悪くなるため、角部を少なくした球状また円柱状が最適である。円柱の縦横比率としては、縦横比が1:1〜3が良く、特に1:1〜2が好適である。
【0042】
ろ材の比重としては、1.0未満が良く、0.01〜0.5がより好ましい。特に、かさ比重としては、0.05が好適である。比重が1.0以上であれば、ろ過機21内の目詰り解消を目的としたろ材の洗浄水量(すなわち、洗浄汚水量β2)が多くなり、ろ材の攪拌動力も大きくなる。また、比重が0.5よりも小さければ、ろ材の磨耗による寿命短縮と言った問題が生じる。
【0043】
ろ材の大きさ(球状の場合には最大径、円柱状の場合には最大長さ)としては、0.1mm〜2.0mmが良く、特に、1.0mm〜2.0mmが好適である。大きさが2.0mmよりも大きければ、ろ過機21内の目詰り解消を目的としたろ材の洗浄水量が多くなり、ろ材の攪拌動力も大きくなる。また、大きさが0.1mmよりも小さければ、ろ過機21の差圧が立ちやすいあるいは、ろ過機21外へのろ材の流出と言った問題が生じる。
【0044】
使用ろ材の適用pHとしては、6〜12がよく、特に、7〜9が好適である。pHが6以下の酸性、12以上のアルカリ性であれば、ろ材表面が溶損し、凹凸状態になり、固形分の捕捉効率や洗浄効率が低下すると言った問題が生じる。
【0045】
使用ろ材の適用SS濃度としては、400mg/l以下がよく、特に、100mg/l以下が好適である。SS濃度が400mg/l以上であれば、短時間で浮上性ろ材の目詰りが進行し、洗浄時間の増大に伴い固形分処理量が低下する、あるいはろ材の磨耗が進行すると言った問題が生じる。
【0046】
最後に、浮上性ろ材を充填したろ過機21は、砂ろ過方式と異なり、機内洗浄用の水源をろ過機21に流入する原水とし、機内に装備された攪拌機で攪拌洗浄しており、ろ過機逆洗ポンプ及び逆洗ブロワーといった逆洗設備を必要としない。また、浮上性ろ材は、砂に比べて比重が小さくろ過機21へ送水するポンプの動力を低減できることから、砂ろ過機を用いた場合に比べて設備費安価及び省スペース化となる。
【実施例】
【0047】
以下、図5に示す装置構成の水処理を行った本発明の効果を詳細に説明する。
【0048】
(実施例1)
転炉水処理系統において、図5の装置のように浮上性ろ材を充填したろ過機21を導入した場合の効果を一例として述べる。ここで、表1に示すように、循環系Bから発生する汚水量αは3.0m/min、水質はろ過前処理工程である凝集沈殿設備15の入り側でSS濃度800〜8,000mg/l及びpH10〜11、ろ過機21の入り側でSS濃度100〜400mg/l及びpH10〜11である。
【0049】
また、ろ過機21に充填される浮上性ろ材については、材質が発泡ポリスチレン、形状が円柱状、比重が0.05、大きさが1.1mmを有するものを採用した。
【0050】
なお、比較例については、循環系Bで発生する汚水の量α及び水質は、本実施例と同様とした。また、ろ過機20に充填されるろ材としては、材質が砂/アンスラ、形状が球状又は突起状、比重が1.2〜0.5、大きさが0.8〜1.6のものを使用した。
【0051】
上記ケースにおいて浮上性ろ材を充填したろ過機21を導入した場合、表2に示すように砂ろ過機20を採用した場合の比較例に対して、洗浄汚水量β2をβ1の96%程度低減することができた。その結果、本実施例における循環系Bでの補給水量γ(γ2+β2)は比較例(補給水量γ2)に対して5%程度増加するものの集塵系Aからの余剰水(β2−γ1)をほぼゼロにすることができた。ここで、表2において、集塵系Aからの余剰水の値(β2−γ1)がマイナスの場合には、「0」として示している。なお、上記値(β2−γ1)がマイナスの場合には、洗浄汚水β2が集塵系Aにおける補給水の一部となっている。
【0052】
また、砂ろ過機20用の逆洗ポンプ及びブロワ−といった洗浄設備が必要なく、浮上性ろ材が砂に比べて通水抵抗が小さくろ過機21へ送水するポンプの動力も低減できるため、設備費で30%、設置スペースで40%削減できる。
【0053】
(実施例2)
循環系Bから発生する汚水量及び水質条件は実施例1と同様である。また、表1に示すように、ろ過機21内に充填されるろ材については、材質、形状及び大きさは実施例1と同様であるが、比重が0.5を有するものを採用した。
【0054】
本実施例においても、実施例1と同様の効果が得られた。すなわち、ろ過機21の洗浄汚水量β2を大幅に低減でき、集塵系Aからの余剰水をほぼゼロにすることができた。
【0055】
(実施例3)
循環系Bから発生する汚水量及び水質条件は実施例1と同様である。また、表1に示すように、ろ過機21内に充填されるろ材については、材質、形状及び比重は実施例1と同様であるが、大きさが2.0mmを有するものを採用した。
【0056】
本実施例においても、実施例1と同様の効果が得られた。すなわち、ろ過機21の洗浄汚水量β2を大幅に低減でき、集塵系Aからの余剰水をほぼゼロにすることができた。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】湿式集塵系の水量バランスを示す概略図
【図2】転炉湿式集塵系の水量バランスを示す概略図
【図3】図2の転炉湿式集塵系に対する設備対策を示す概略図
【図4】湿式集塵系の水量バランス是正効果を示す概略図
【図5】図2の転炉湿式集塵系に対する設備対策を示す概略図
【符号の説明】
【0060】
A:集塵系
B:循環系
6:転炉湿式集塵機
7:シックナー
8:処理水槽
12:冷却塔
13:処理水槽
15:凝集沈殿設備
21:浮上性ろ材を用いたろ過機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式集塵機からの集塵排水に対して固液分離処理を行い、この処理水を前記湿式集塵機に供給する集塵系と、
ろ過機を有し、固形分を含む排水に対して固液分離処理を行う処理手段と、
前記ろ過機の洗浄水を前記集塵系に供給する供給手段とを有し、
前記ろ過機は、浮上性ろ材を用いて固液分離処理を行うことを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記集塵系は、前記集塵排水に対して固液分離処理を行うシックナーを有しており、
前記供給手段は、前記ろ過機の洗浄水を前記シックナーに供給することを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記処理手段は、前記固形分を含む排水に対して第1の固液分離処理を行う凝集沈殿設備と、前記凝集沈殿設備からの排水に対して第2の固液分離処理を行う前記ろ過機とを有しており、
前記凝集沈殿設備に供給される排水の固形分濃度が、700mg/L以上、8000mg/L以下であり、
前記ろ過機に供給される排水の固形分濃度が400mg/L以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記ろ過機に供給される排水の固形分濃度が、100mg/L〜400mg/Lであることを特徴とする請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記ろ材が、球状又は円柱状であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項6】
前記ろ材の比重が、1.0よりも小さいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項7】
前記ろ材の大きさが、0.1mm〜1.5mmであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項8】
前記ろ過機に供給される排水が、pH6〜12であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−238032(P2008−238032A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81415(P2007−81415)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】