説明

水処理システム

【課題】演算器が水質計器により測定された測定値等を基に、薬品注入ポンプを制御し供給原水に薬品を注入等する場合、演算器に設定する所定の設定値等を作業者の経験に頼ることなく設定することができ、しかも供給原水の水質が変わった場合にタイムリーに供給原水を注入することができる水処理システムを提供する。
【解決手段】供給原水の一部を薬品注入制御用水処理装置10で処理した処理水の測定値と設定値等を基に、演算器30が薬品注入ポンプ32を制御し選択された薬品を供給原水に薬品貯蔵槽31より適量注入し又は供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集剤・吸着剤・酸化剤・還元剤・酸剤・アルカリ剤等の薬品を供給原水に適量注入し、その後に本体水処理装置にて供給原水を処理する水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本体水処理装置単独では除去が困難な除去対象が降雨等の水質変動等により供給原水に含まれると、処理水に除去対象が混入することになる。これを防止するため供給原水又は処理水の水質を測定し、その測定値等を基に供給原水に含まれている除去対象を除去するために凝集剤・吸着剤・酸化剤・還元剤・酸剤・アルカリ剤等の薬品の内の最適な薬品を選択して供給原水に適量注入し、その後に本体水処理装置で薬品が注入されている供給原水を処理する水処理システムが知られている。
【0003】
従来1の水処理システムとして、図2に示すものが知られている。この水処理システム101は、供給原水を供給原水水質計器111にて測定し、その測定値を演算器121にて順次処理し得られた演算値が演算器121に設定されている所定の設定値を超えた場合、薬品注入ポンプ132を制御して薬品貯蔵槽131に貯蔵されている薬品を供給原水に適量注入し、しかる後にこの供給原水を本体水処理装置141で処理するものである(下記特許文献1参照)。
【0004】
この水処理システム101は、供給原水を測定しているので供給原水の水質が変動した場合、薬品の注入を開始する時及び注入を停止する時の判断を容易に行うことができる。しかし、供給原水の測定値を使用しているので、演算器121に設定する所定の設定値及び注入演算式を水質が異なる浄水場毎若しくは処理場毎に行う必要があり、この作業は経験に頼るところが大きく、作業者の確保が現在でも難しく、将来的には更に難しくなることが予想されるという不具合点があった。また、本体水処理装置141単独で除去することが可能な物質に対しても過剰に薬品が注入されてしまう場合、逆に本体水処理装置141単独では除去が困難であるにも拘らず本体水処理装置141単独での処理が可能と判断し薬品が注入されない若しくは注入量が不足してしまう場合等、演算器を設定する作業者が異なることで処理水の水質のバラツキや悪化、薬品の無駄等の不具合点があった。更に、除去対象や汚濁物質により供給原水水質計器111が汚れることで測定精度が悪化し、薬品注入を開始する時のズレや無注入が生じ、また薬品を適量注入するため演算器121にて行う注入量演算に誤差が生じるとの不具合点があり、この不具合点を防止するために供給原水水質計器111のメンテナンスを頻繁に行う必要があり、経費や労力が掛かるとの不具合点もあった。
【0005】
また、別の従来2の水処理システムとして、図3に示すものが知られている。この水処理システム201は、処理水を処理水水質計器211にて測定し、その測定値を演算器121にて順次処理し得られた演算値が演算器121に設定されている所定の設定値を超えた場合、薬品注入ポンプ132を制御して薬品貯蔵槽131に貯蔵されている薬品を供給原水に適量注入し又は供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更し、しかる後にこの供給原水を本体水処理装置141で処理するものである(下記特許文献2参照)。
【0006】
この水処理システム201は、処理水を測定しているので、供給原水の水質が悪化し本体水処理装置単独では除去対象を処理できない場合に、適正な薬品の注入開始を行うには適している。しかし、供給原水の水質が安定した後において、供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を減少させる時の判断が困難という不具合点があった。更に、本体水処理装置141で処理した処理水を測定した測定値を用いて供給原水に対し薬品を適量注入しているので、本体水処理装置141で処理している間に供給原水の水質が変わった場合、処理が不完全な処理水が処理水側へ混入する不具合点があった。
【0007】
また、別の従来3の水処理システムとして、図4に示すものが知られている。この水処理システム301は、供給原水を供給原水水質計器111にて測定すると共に処理水を処理水水質計器211にて測定し、その両測定値を演算器121にて順次処理し得られた演算値が演算器121に設定されている所定の設定値を超えた場合、薬品注入ポンプ132を制御し薬品貯蔵槽131に貯蔵されて薬品の内より最適な薬品を選択し供給原水に適量注入し、しかる後にこの供給原水を本体水処理装置141で処理するものである(下記特許文献3参照)。
【0008】
この水処理システム301は、薬品注入を開始する時と停止する時の判断を容易に行える。しかし、本体水処理装置141で供給原水を処理し処理水とするには一定時間を要するので、供給原水水質計器111と処理水水質計器211とで同一対象を測定しようとするとタイムラグが生じ、この間に本体水処理装置141単独では除去ができない除去対象が供給原水に混入した場合に、処理が不完全な処理水が処理水側へ混入する不具合点があった。また、供給原水水質計器111に異常が発生した場合,薬品注入を停止する時の判断を誤る不具合点があった。更に、除去対象や汚濁物質により供給原水水質計器111が汚れることで測定精度が悪化し、薬品注入を開始する時にズレや無注入が生じ、また薬品を適量注入するため演算器121にて行う注入量演算に誤差が生じるとの不具合点があり、この不具合点を防止するためには供給原水水質計器111のメンテナンスを頻繁に行う必要があり、経費や労力が掛かるとの不具合点もあった。更に、水質計器は、特に供給原水側の水質計器は、高価であるにも拘らず制御のために供給原水側と処理水側の両方に設置する必要があり、初期の設備投資費用が高くなると共に、水質計器の個数が増加するのでメンテナンスが煩雑となり、経費と労力が掛かるとの不具合もあった。
【0009】
更に、別の従来4の水処理システムとして、薬品を注入した供給原水の一部を本体水処理装置とは別の小型水処理装置にて測定し、その測定値を演算器にて順次処理し得られた演算値が演算器に設定されている所定の設定値を超えた場合、薬品注入ポンプを制御して薬品貯蔵槽に貯蔵されている薬品を供給原水に適量注入し、又は薬品注入ポンプを制御し供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更し、しかる後にこの供給原水を本体水処理装置で処理する水処理システムが知られている(下記特許文献4参照)。
【0010】
この水処理システムは、短いタイムラグで薬品の注入量を最適にコントロールし、本体水処理装置で処理している間に供給原水の水質が変わり、処理が不完全な処理水が処理水側へ混入する不具合点の解決を図ったものである。処理水の水質を測定するので処理水の水質が悪化した場合に適正な薬品の注入開始を行うには適している。しかし、薬品が注入されている処理水を測定するので、供給原水の水質が安定した後において供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更する時の判断が困難という不具合点があった。更に、薬品を注入した供給原水を小型水処理装置にて処理した処理水を測定しているので、薬品の使用量が多くなるとの不具合点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−98236
【特許文献2】特開平10−165934
【特許文献3】特開平07−299472
【特許文献4】特開平05−146608
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上述の不具合点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、演算器が、水質計器により測定された測定値及び演算器に設定されている所定の設定値等を基に、薬品注入ポンプを制御し供給原水に薬品を注入し又は供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更する場合、演算器に設定する所定の設定値等を作業者の経験に頼ることなく設定することができ、演算器に設定値等を設定する作業者が異なっても処理水の水質のバラツキを無くすことができ、薬品の無駄の防止と、確実で良好な処理水質を得ることができる水処理システムを提供することである。
【0013】
また、別の目的は、供給原水の水質が安定した後において、演算器が、処理水の測定値及び所定の設定値等を基に、薬品注入ポンプを制御し供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更することができ、供給原水に注入する薬品の使用量を減少することができる水処理システムを提供することである。
【0014】
また、別の目的は、演算器が、処理水の測定値及び所定の設定値等を基に、薬品注入ポンプを制御し供給原水に薬品をタイムリーに注入することができ、処理が不完全な処理水が処理水側に混入するのを防止することができる水処理システムを提供することである。
【0015】
また、別の目的は、水質計器の汚れによる測定精度の悪化を防止し、メンテナンス頻度が少なく、経費や労力を低減することができる水処理システムを提供することである。
【0016】
また、制御のための水質計器として高価な供給原水水質計器を省くことができ、初期の設備投資を抑制することができる水処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明に係る水処理システムは、供給原水の一部を処理して処理水とする薬品注入制御用水処理装置と、前記薬品注入制御用水処理装置にて処理された処理水を測定する処理水水質計器と、前記処理水水質計器にて測定された測定値及び所定の設定値等を基に、薬品注入ポンプを制御し選択された薬品を薬品貯蔵槽より供給原水に適量注入し又は供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更する演算器と、前記演算器により薬品が適量注入され又は注入されている薬品が注入停止され若しくは薬品の注入量が変更された供給原水を処理して処理水とする前記薬品注入制御用水処理装置と同一の処理方式の本体水処理装置とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る水処理システムは、前記薬品注入制御用水処理装置及び前記本体水処理装置は、膜ろ過装置又は砂ろ過装置又は繊維ろ過装置のいずれかであることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明に係る水処理システムは、前記薬品注入制御用水処理装置及び前記本体水処理装置は、前処理装置を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
上記構成を備えた本発明の水処理システムによれば、演算器が、薬品注入制御用水処理装置にて処理された処理水の測定値及び所定の設定値等を基に薬品注入ポンプを制御し、選択された薬品を貯蔵されている薬品貯蔵槽より供給原水に適量注入し又は供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更するので、演算器に設定する所定の設定値等は処理水についての設定値等となり、作業者は経験に頼ることなく処理水の設定値等を設定することができる。従って、設定値等を演算器に設定する作業者が異なっても本体水処理装置にて処理される処理水の水質のバラツキを無くすことができ、薬品の無駄の防止と確実で良好な処理水質を得ることができる。
【0021】
更に、本発明の水処理システムは、演算器が、薬品注入前の供給原水の一部を薬品注入制御用水処理装置にて処理した処理水の測定値等を基に薬品注入ポンプを制御し、供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更するので、供給原水の水質が安定した後において薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量の変更を容易に行うことができ、薬品の使用量の減少を図ることができる。
【0022】
更に、本発明の水処理システムは、演算器が、薬品注入制御用水処理装置にて処理した処理水を測定した測定値等を基に薬品注入ポンプを制御し、選択された薬品を貯蔵されている薬品貯蔵槽より供給原水に適量注入し又は供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更するので、本体水処理装置で処理した処理水を使用するよりタイムラグを短くすることができるので、供給原水の水質が悪化した場合に薬品の注入をタイムリーに行うことができ、処理が不完全な処理水が処理水側に混入するのを防止することができる。
【0023】
更に、本発明の水処理システムは、薬品注入制御用水処理装置にて処理した処理水を測定するので、水質計器の汚れによる測定精度の悪化を防止し、測定計器について汚れ除去のみを目的としたメンテナンスを不要とし、維持管理費の低減を図ることができる。
【0024】
更に、制御用の水質計器は、薬品注入制御用水処理装置にて処理された処理水を測定する処理水水質計器だけであり、供給原水側に設置する特に高価な供給原水水質計器を不要とし、初期の設備投資費用を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る水処理システムの概略説明図
【図2】従来1の水処理システムの概略説明図
【図3】従来2の水処理システムの概略説明図
【図4】従来3の水処理システムの概略説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を参照して、この発明の実施形態に係る水処理システムについて、例示して説明する。
【0027】
図1は、本発明に係る水処理システムの概略説明図である。本発明に係る水処理システム1は、薬品注入制御用水処理装置10と、処理水水質計器20と、演算器30と、本体水処理装置40、とを備えている。
【0028】
薬品注入制御用水処理装置10は、後述する本体水処理装置40と同一の処理方式で供給原水をろ過することができる小型の水処理装置である。従って、供給原水が同一であれば、薬品注入制御用水処理装置10で処理された処理水の水質と、本体水処理装置40で処理された処理水の水質とは同一となる。本実施形態では、本体水処理装置40がUF膜の膜ろ過単独装置であるので、薬品注入制御用水処理装置10もUF膜の膜ろ過単独装置である。尚、本体水処理装置40が砂ろ過単独装置であれば、薬品注入制御用水処理装置10も砂ろ過単独装置となり、本体水処理装置40が前処理装置を有する砂ろ過装置であれば、薬品注入制御用水処理装置10も前処理装置を有する砂ろ過装置となる。薬品注入制御用水処理装置10は、除去対象を除去するための薬品が注入される前の供給原水の一部を導入して処理し、処理水は全量が後述する処理水水質計器20に流入するようになっている。尚、供給原水とは、本発明の水処理システム1に供給される原水の称呼である。従って、雨水等の原水の他に、貯水槽にて沈殿等の前処理が行われた処理水も水処理システム1に導入されるときには供給原水となる。また、水処理装置と本発明の水処理システム1が連結した場合には、前段の水処理装置で処理された処理水でも、後段の水処理システム1に導入されるときには供給原水と称呼が変わる。尚、処理水とは、水処理システム1にて処理された処理水、即ち薬品注入制御処理装置10若しくは本体処理装置40で処理された処理水を言う。
【0029】
処理水水質計器20は、薬品注入制御用水処理装置10で処理した処理水の水質を測定する計器で、単数又は複数の計器で構成される。供給原水に、本体水処理装置40では処理することができない除去対象が含まれているか監視するための監視測定項目は、濁度・色度・紫外線吸光度・電気伝導率・酸化還元電位・pH値・STR(Suction Time Ratioの略で、吸引時間比の意である。)・微粒子等である。従って、処理水水質計器20は、上述の監視測定項目を測定することができるように複数の計器で通常は構成される。しかし、供給原水に含まれる除去対象が限定され、その除去対象を特定するための監視測定項目を測定できる計器が単数でよい場合には、処理水水質計器20は単数の計器で構成される。処理水水質計器20は、流入した処理水を連続して測定し、一定間隔で測定値を演算器に送るようになっている。
【0030】
演算器30は、処理水水質計器20より送られてきた測定値を順次処理して演算値に変換し、演算器30に事前に設定されている所定の設定値から外れているか否かを判断するようになっている。その結果、ある監視測定項目Aについての演算値が所定の設定値の範囲外である場合には、監視測定項目Aにより特定された除去対象Bを除去するのに最適な薬品Cが貯蔵されている薬品貯蔵槽31Cを選択し、演算器30に事前に設定されている注入演算式及び供給原水の流量等に基づき除去対象Bを除去することが可能な注入量の薬品Cを薬品注入ポンプ32を制御して供給原水に注入するようになっている。また、特定の薬品Dが貯蔵されている薬品貯蔵槽31Dより薬品Dが注入されている場合であって、演算値が所定の設定値の範囲内にある場合には、薬品注入ポンプ32を制御して供給原水への薬品Dを注入停止するようになっている。更に、特定の薬品Eが貯蔵されている薬品貯蔵槽31Eより薬品Eが注入されている場合であって、演算値が所定の設定値より範囲外であるが、所定の設定値との差が従前に測定した時より変更になっている場合には、注入演算式に基づき注入されている薬品Eの注入量を変更するようになっている。尚、薬品貯蔵槽31に貯蔵される薬品は、上述の監視測定項目により特定される除去対象を除去するための薬品で、凝集剤・粉末活性炭・次亜塩素酸ナトリウム・オゾン・重亜硫酸ナトリウム・チオ硫酸ナトリウム・硫酸等の酸剤・カセイソーダ等のアルカリ剤等々の薬品であり、それぞれ別々の薬品貯蔵槽31に貯蔵されているので、薬品貯蔵槽31は通常は複数で構成されている。しかし、処理水水質計器20が単数の計器で構成され、その計器が測定する監視測定項目で特定される除去対象が特定の単数で、その除去対象を除去する薬品が単数でよい場合には、薬品貯蔵槽31は単数で構成される。尚、凝集剤としては、硫酸アルミニウム・ポリ塩化アルミニウム・塩化第二鉄・ポリシリカ鉄等の無機凝集剤、アニオン系高分子凝集剤・カチオン系高分子凝集剤・ノニオン系高分子凝集剤等の有機凝集剤のいずれでも良く、これらの凝集剤を単独若しくは複数で用いても良い。
【0031】
本体水処理装置40は、UF膜の膜ろ過単独装置である。但し、本体水処理装置40は、供給原水や処理目標水質に対応して変更することができるようになっている。従って、MF膜若しくNF膜若しくはRO膜のいずれかの膜を使用した膜ろ過単独装置であっても良く、前処理装置を有するUF膜若しくはMF膜若しくNF膜若しくはRO膜のいずれかの膜を使用した膜ろ過装置であっても良い。更に、膜ろ過装置ではなく清澄ろ過若しくは粗ろ過の砂ろ過単独装置であっても良く、更に、前処理装置を有する清澄ろ過若しくは粗ろ過の砂ろ過装置であっても良い。尚、前処理装置とは、凝集単独装置・普通沈殿単独装置・凝集沈澱装置・砂ろ過装置・繊維ろ過装置等をいう。
【0032】
次に、上記構成からなる水処理システム1において、供給原水に薬品を適量注入し又は供給原水に注入している薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更するフローについて説明する。
【0033】
除去対象を除去するための薬品が注入されていない供給原水は、一部が供給原水本管50から分岐点51で分岐している供給原水支管52に流入し、供給原水支管52に設置されている薬品注入制御用水処理装置10を通過することで処理され処理水となる。処理水は、薬品注入制御用水処理装置10に後続している処理水管53に設置されている処理水水質計器20を通過することで、処理水の監視測定項目が連続して測定される。処理水水質計器20に後続する処理水管53は、分岐点51より本体水処理装置側の合流点54で供給原水本管50に接続しているので、処理水水質計器20を通過した処理水は、合流点54で供給原水本管50に流入し供給原水と合流するようになっている。尚、処理水水質計器20を通過した処理水は、図示されていない原水槽へ返送させるか、又は排水として処理しても良い。
【0034】
処理水水質計器20で連続して測定された各監視測定項目の測定値は、任意に設定することができる一定の間隔で演算器30に送付される。演算器30では、各監視測定項目の測定値を定められた所定の方式に基づき処理して演算値に変換し、演算器30に事前に設定されている所定の設定値と対比し、設定値の範囲内であるか否かが判断される。
【0035】
その結果、演算値が設定値の範囲内で、且つ本体水処理装置40で処理する供給原水に薬品が注入されていない場合には、供給原水には薬品貯蔵庫31からの薬品は注入されず、薬品の注入されない供給原水が、本体水処理装置40にて処理され処理水となる。
【0036】
また、演算値が設定値の範囲内ではあるが、薬品注入ポンプ32の制御で薬品貯蔵槽31より特定の薬品が注入されている場合には、薬品注入ポンプ32が制御され、薬品貯蔵槽31より注入されている薬品の注入が停止され、薬品の注入が停止された供給原水が、本体水処理装置40にて処理され処理水となる。
【0037】
逆に、演算値が設定値の範囲外で、且つ従前は供給原水に薬品が注入されていない場合には、範囲外の監視測定項目により特定された除去対象を除去するのに最適な薬品が貯蔵されている薬品貯蔵槽31を選択し、演算器30に事前に設定されている注入演算式に基づいた適量が、合流点54より本体水処理装置側の接続点55で供給原水本管50に接続している薬品導入管56を通して供給原水に注入され、この薬品が注入された供給原水が、本体水処理装置40にて処理され処理水となる。
【0038】
演算値が設定値の範囲外で、範囲外の監視測定項目により特定された除去対象を除去するための薬品が、従前は供給原水に注入ポンプ32の制御で薬品貯蔵槽31より注入されている場合には、演算器30に事前に設定されている注入演算式に基づいた適量が演算され、従前注入されている注入量と対比されて過不足が判断され、過不足が生じた場合には、供給原水本管50に接続している薬品導入管56を通して供給原水に注入されている薬品の注入量を変更し、この薬品の注入量が変更された供給原水が、本体水処理装置40にて処理され処理水となる。
【0039】
以上の通り、演算器30が、処理水水質計器20にて測定された処理水の測定値並びに演算器30に事前に設定されている所定の設定値及び注入演算式を基に薬品注入ポンプ32を制御し、選択された薬品を貯蔵されている薬品貯蔵槽31より供給原水に適量注入し又は供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更するので、演算器30に設定する所定の設定値及び注入演算式を処理水についての設定値及び注入演算式とすることができ、作業者の経験に頼ることなく設定することが可能となる。従って、演算器30に所定の設定値及び注入演算式を設定する作業者が異なっても処理水の水質のバラツキを無くすことができ、薬品の無駄の防止と確実で良好な処理水質を得ることが可能となる。
【0040】
また、除去対象を除去するための薬品が注入されていない供給原水を本体水処理装置40と同一の処理方式である薬品注入制御用水処理装置10で処理した処理水の測定値並びに所定の設定値及び注入演算式を基に薬品の注入を判断するので、本体水処理装置40単独では除去できない除去対象の存在を容易に判断することが可能となり、除去対象を除去するための適正な薬品の選択と組合せを容易に行うことが可能となる。
【0041】
更に、除去対象を除去するための薬品が注入されていない供給原水を薬品注入制御用水処理装置10で処理した処理水の測定値並びに所定の設定値及び注入演算式を基に演算器30が判断するので、供給原水に注入されている薬品を供給原水の水質が安定した後に注入停止し若しくは注入量を変更することが可能となり、従って、薬品の使用量を減少することが可能となる。更に、薬品が注入されていない供給原水の一部を薬品注入制御用水処理装置10で処理した処理水を測定した測定値を用いているので、薬品の使用量を減少することが可能となる。
【0042】
更に、供給原水の一部を薬品注入制御用水処理装置10にて処理した処理水を測定した測定値並びに所定の設定値及び演算注入式を基に、薬品注入ポンプ32を制御し供給原水に薬品を適量注入することを判断するので、本体水処理装置40の処理水を測定するよりタイムラグが短くなり、供給原水の水質が悪化した場合に薬品をタイムリーに注入することが可能となる。
【0043】
更に、制御用の水質計器は処理水水質計器20だけであるので、計器の汚れによる測定精度の悪化が防止され、汚れ除去を目的としたメンテナンスを不要とすることが可能となる。また高価である供給原水水質計器を制御用の水質計器として設置することが不要とするので、初期の設備投資費用を低く抑えることが可能となる。
【0044】
尚、本実施の形態(図1)では、処理水水質計器20は単数の計器で構成され、その処理水水質計器20により特定される除去対象は1種類で、その除去対象を除去する薬品は1種類とし、従って、薬品貯蔵槽31も単数で構成される場合について説明した。しかし、単数の計器で構成される処理水水質計器20で複数の除去対象を特定できる場合もあり、この場合には薬品貯蔵槽31は複数から構成される。また逆に、処理水水質計器20が複数で構成されていても特定される除去対象は1種類の場合もあり、この場合には薬品貯蔵槽は単数で構成されることもある。従って、処理水水質計器20及び薬品貯蔵槽31がそれぞれ単数で構成するか複数で構成するかは、使用条件等を種々検討して適宜決定するのが良い。
【符号の説明】
【0045】
1 水処理システム
10 薬品注入制御用水処理装置
20 処理水水質計器
30 演算器
31 薬品貯蔵槽
32 薬品注入ポンプ
40 本体水処理装置
50 供給原水本管
51 分岐点
52 供給原水支管
53 処理水管
54 合流点
55 接続点
56 薬品注入管



【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給原水の一部を処理して処理水とする薬品注入制御用水処理装置と、
前記薬品注入制御用水処理装置にて処理された処理水を測定する処理水水質計器と、
前記処理水水質計器にて測定された測定値及び所定の設定値等を基に、薬品注入ポンプを制御し選択された薬品を薬品貯蔵槽より供給原水に適量注入し又は供給原水に注入されている薬品を注入停止し若しくは薬品の注入量を変更する演算器と、
前記演算器により薬品が適量注入され又は注入されている薬品が注入停止され若しくは薬品の注入量が変更された供給原水を処理して処理水とする前記薬品注入制御用水処理装置と同一の処理方式の本体水処理装置とを備えることを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記薬品注入制御用水処理装置及び前記本体水処理装置は、膜ろ過装置であることを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記薬品注入制御用水処理装置及び前記本体水処理装置は、砂ろ過装置であることを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記薬品注入制御用水処理装置及び前記本体水処理装置は、繊維ろ過装置であることを特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記薬品注入制御用水処理装置及び前記本体水処理装置は、前処理装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の水処理システム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−192333(P2012−192333A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57721(P2011−57721)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000193508)水道機工株式会社 (50)
【Fターム(参考)】