水処理装置の上層洗浄装置および水処理装置濾材層の洗浄方法
【課題】水処理効率を向上させ濾過速度を高めるとともに、コンパクトで簡素化された機構の水処理装置とその洗浄方法を提供する。
【解決手段】 原水特殊混気ノズル(7)と、上層(2)と下層(3)の2層からなり、上層は下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層(4)を収容する濾過槽(5)と、濾過水を取出すとともに逆洗時には濾材層に逆洗水を供給する集水管(13)と、排水トラフ(12)と、上層洗浄装置(10)を備え、上層洗浄装置は、上層洗浄管支持部材(17)、上層洗浄水管(18)、表洗特殊混気ノズル(19)、空気吸入管(20)、水平空気管(31、32)を備え、原水特殊混気ノズル(7)は排水トラフ(12)の一部に設けられた原水流入槽に取り付けられる水処理装置。
【解決手段】 原水特殊混気ノズル(7)と、上層(2)と下層(3)の2層からなり、上層は下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層(4)を収容する濾過槽(5)と、濾過水を取出すとともに逆洗時には濾材層に逆洗水を供給する集水管(13)と、排水トラフ(12)と、上層洗浄装置(10)を備え、上層洗浄装置は、上層洗浄管支持部材(17)、上層洗浄水管(18)、表洗特殊混気ノズル(19)、空気吸入管(20)、水平空気管(31、32)を備え、原水特殊混気ノズル(7)は排水トラフ(12)の一部に設けられた原水流入槽に取り付けられる水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置の洗浄装置に関し、特に地下水等の中の鉄、マンガンその他の溶解性成分を、酸化剤や凝集剤等の化学品を使用することなく、簡単で小型の装置で酸化させ、不溶化することにより処理することができる水処理装置の上層洗浄装置およびその濾材層の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水は、水道水の原水として、また食品工業、清涼飲料、醸造、公衆浴場、染色業など水を大量に必要とする産業で利用されているが、現在地下水に含まれる鉄、マンガン成分が大きな問題となっている。鉄やマンガンは人体にとって必要な成分であるが、一定量を超えると水に金属味を与えたり、赤水や黒水の原因となり、飲用に不適となるばかりでなく、これらの産業において様々な問題が生じる。また、建設工事において地下水抜き取り工事は必要不可欠な工程であるが、地下水に大量の鉄、マンガンが含まれている場合は、そのまま下水道に放流することは法令で禁止されており、地下水中の鉄、マンガンを除去してから放流しなければならないという問題がある。
【0003】
現在もっとも普及している除鉄、除マンガン装置は、原水に次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤やポリ塩化アルミニウム(PAC)等の凝集剤を添加し、水中に溶け込んでいる鉄、マンガンを酸化させて不溶性の酸化鉄、酸化マンガンとし、これを濾過砂により濾過して取り除くものである。
【0004】
しかし、この酸化剤や凝集剤を注入する方式の水処理装置においては、比較的に多量の酸化剤、凝集剤を消費するのでこれらの購入コストが大きい。また酸化剤として使用される次亜塩素酸ナトリウムが鉄、マンガンを酸化させた後も処理後の浄水の中に残留するために、発癌物質であるトリハロメタンを生成し、その対策のためさらに水を活性炭層を通して処理しなければならず不経済である。また、経済的考慮から活性炭層の設置を見送るとすれば、過剰な酸化剤の注入によるトリハロメタンの発生を防止するため濾過後の水を耐えず分析して監視し、状況に応じて酸化剤の注入量を調整する必要があり、薬品購入コストに加えて維持管理費が嵩むという欠点がある。また、この薬品注入方式による水処理装置は、曝気槽、凝集槽、沈殿槽、砂濾過塔、除鉄、除マンガン塔および薬液タンクからなり、システムは複雑であり装置全体は大規模化して広大な設置スペースを必要とするため、市街地等設置スペースが限られた環境においては装置を設置することができない、という問題点がある。さらに、この薬品注入方式による水処理装置において、洗浄排水を処理する必要があるが、その場合砂が薬品を含有しているため産業廃棄物として処理しなければならず、その放棄場所も制限される等の不便がある。
【0005】
上記従来の薬品注入方式による水処理装置の欠点を除去し、地下水等の中の鉄、マンガンその他の溶解性成分を、酸化剤や凝集剤等の薬品を使用することなく、簡単で小型の装置で酸化させ不溶化することにより処理することができる水処理装置を提供することを目的として、特許文献1記載の水処理装置が提案されている。この水処理装置によれば、ジェットノズルにより原水をジェット水流とする一方ジェットノズル内に開口する空気口または気体導入管からジェットノズル内に空気を導入することにより、多数の気泡を含むジェット水流がジェットノズルの原水噴出口からその下方に配置された濾材層上の水面に叩きつけられ、水中および濾材表面において激しいエアレーションが起こることにより、水中の鉄、マンガン等の溶解性成分が酸化されて不溶性成分となり、濾材層を形成する濾過砂等の濾材粒子の表面で捕捉され、したがって、酸化剤や凝集剤等の薬品を一切使用することなく、簡単で小型の装置で原水中の鉄、マンガンその他の溶解性成分を不溶化し濾過することができる。
【0006】
また水処理装置の表面層を洗浄するための他のタイプの洗浄装置として、特許文献2記載の回転式洗浄装置が公知である。この回転式洗浄装置は、垂直回転軸の下端に取り付けた水平回転管の長手方向に設けられた複数の水噴射ノズルから水を斜め下方に噴射させて濾材層の表面に噴射水を叩きつけることによりその反動により水平回転管を回転させ、各水噴射ノズルから噴射される水により濾材の表面層を攪拌洗浄するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−126768公報
【特許文献2】米国特許第2769547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1記載の水処理装置その他同型の水処理装置においては、皮膜化された鉄は濾材層の上層部と下層部とで洗浄過多と洗浄不足が常に同居した状態にある。また一口に鉄、マンガンを除去するといっても、後述のように、鉄は濾材層の上層部において酸化作用により皮膜化する一方マンガンは濾材層の下層部において生物処理により濾材粒子の表面で捕捉されるが、原水中の鉄の濃度がマンガンの濃度に比べて顕著に大きい場合は、濾材層の上層部で捕捉された鉄を除去するために大量の洗浄水で濾材層全体を洗浄すれば下層部においてマンガン処理のために棲息している生物も洗い流されてしまってその後のマンガンの生物処理に支障を来たすことになる。
【0009】
一方水処理装置はその単位時間当たりの濾過速度を高速化すればするほど、装置の規模とスペースを削減することができるので有利である。特に水処理装置を設置するスペースが設置場所の関係で限られており、大規模な装置を設置することが不可能な場合は、狭い敷地に設置された小規模な装置により必要な量の原水を濾過処理しなければならず、濾過速度を高める必要に迫られる。
【0010】
水処理装置の濾過速度を上げるために必要な一つの重要な条件は、水処理装置の洗浄を効率よく行うことである。
【0011】
水処理装置においては、一般に濾過作用を継続すると時間がたつにつれて濾材層特にその表面に水酸化鉄等の酸化物のフロックやその他の異物で覆われた時は濾材の濾過機能が減少するので、濾過処理を一時停止して濾材層の洗浄を行わなければならない。したがって濾材層の洗浄を効率よく行わなければ濾過処理の高速化は実現できない。
【0012】
上記特許文献1記載の水処理装置においては、原水送水管を濾材層の表面と平行な面上に往復動させ、原水送水管から噴出す多数の気泡を含むジェット水流により閉塞した濾材層を閉塞状態から開放して濾過機能を回復させるようにしている。また、この水処理装置は、濾過砂からなる1層の濾材層の底部に濾材層を支持する板状スクリーンからなる濾材層受が配置されており、濾材層受の下方には濾材層を逆洗浄するための逆洗管が配置されている。濾材層の上部特に表面が酸化物のフロックやその他の異物で覆われた時は濾過槽への原水供給を一時停止し、逆洗管から逆洗水を濾材槽受を介して濾材層全般にわたって下方から上方へ流すことにより濾材層上部を覆う異物を濾材層から剥離するとともに濾材層内に捕捉された鉄、マンガン成分を洗い流し、逆洗水排出口から系外に排出するように構成されている。
【0013】
この水処理装置の濾過速度は60m/日〜120m/日であるが、より高速で濾過処理を行う必要がある場合は、濾材層の洗浄もより頻繁に行わなければならず、このため濾材層の下層部の生物処理に対する負荷量も一層増大するので、この水処理装置では濾材層の洗浄効率に限界があり、これ以上の高速化は不可能である。
【0014】
また上記水処理装置を含め、従来の水処理装置は、濾材層の上記洗浄のため濾過水量の約10%〜15%の水を消費しなければならず、このため水処理の効率を大きく低下させている。
【0015】
また上記水処理装置は、濾材層の表面を洗浄するために原水送水管を濾材層の表面と平行な面上に往復動させる機構を備えているが、この機構は原水供給管を電動モータで往復動させなければならないので表面洗浄のために多大の動力を必要とするばかりでなく、往復動のための機構が複雑となり、さらに原水送水管の移動用レールの磨耗、原水送水管に水を供給するホースの損耗等部品のメンテナンスの手間と費用が嵩むという問題点がある。また直線状に配列された一連の原水送水管を同時に移動させるために濾過槽の形状は矩形で無ければならずこのため装置が大きくなり、装置の設置場所が狭い場合でも装置のコンパクト化が不可能であるという問題点もある。
【0016】
また上記特許文献2記載の洗浄装置は、水平回転管の水噴射ノズルから噴射される水が濾材層表面に当たった時の反動により水平回転管が回転するので、特許文献1における電気モータ等の駆動装置を必要とせず、簡単な装置で表面層を洗浄することができるが、濾過槽が1層からなるものであるので、上記特許文献1記載の装置と同様の問題点があり、また水平回転管の取り付けられた水噴射ノズルは回転しながら洗浄水を噴射するので、固定式水噴射ノズルから洗浄水を噴射する場合に比べて濾材層を洗掘攪拌できる深度が浅く、濾材層の比較的上部において捕捉される鉄のみを洗浄除去するにしても十分な深さまで攪拌洗浄し得ないおそれがある。したがってこの回転式洗浄装置では濾過速度の向上に限界があり、最大120m/日の濾過速度しか得られない。
【0017】
また、従来の水処理装置においては、濾材層の洗浄時に発生する騒音が激しいものがあり、特に水処理装置の設置スペースが狭い場所に限られている場合騒音が問題となる場合があり、濾材層の洗浄時に騒音を発生しない水処理装置が望まれていた。
【0018】
本発明は、上記従来の水処理装置の問題点にかんがみなされたものであって、従来の水処理装置より高速での濾過処理を可能としかつ騒音の少ない新規な水処理装置の濾材層の洗浄装置およびこの洗浄装置を使用する濾材層の洗浄方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本出願人は、上記問題を解決するために鋭意研究と実験を重ねた結果、水処理装置によって捕捉されるべき鉄とマンガンの中で鉄はその大部分が濾材層の上層部に沈着し、マンガンは逆に大部分が濾材層の下層部に沈着する事実があるとともに、原水中の鉄とマンガンの濃度は一定ではなく、原水によっておおむね一定の濃度差があり、通常鉄の濃度はマンガンの濃度より大幅に高いことに着目し、これらの事実を洗浄に利用して逆洗水供給管から逆洗水を上層部洗浄速度で流入させて上層部の濾材を上向流により緩めながら複数の表洗特殊混気ノズルが設けられた回転型の上層洗浄装置により上層部を洗浄することにより、騒音を発生することなく、濾材層上層部において鉄を除去する洗浄効果を顕著に改善することに成功した。また本発明者は、原水中の鉄は濾材層の部分洗浄により除去し、マンガンは濾材層の全体洗浄により除去することにより洗浄効果を顕著に改善し、これによって従来実現できなかった高速濾過を可能とするとともに洗浄水を節約することに成功した。
【0020】
すなわち、本発明の目的を達成する第1の構成は
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混気ジェット水流として噴出する原水噴出口を供える1本または複数本の原水特殊混気ノズルと、上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する平面視円形の濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口と、該逆洗水供給管から逆洗水を上層洗浄速度で流入させて上層の濾材を上向流により緩めながら上層の洗浄を行う上層洗浄装置を備え、該原水特殊混気ノズルは、該原水噴出口と該濾材層の表面または該排水トラフの底面との間に所定の間隔をおいて該濾材層または該排水トラフの上方に配置されている水処理装置において、該上層洗浄装置は、
上層洗浄水送水管に連通し、濾材層の径方向上方に配置された上層洗浄管支持部材と、
該上層洗浄管支持部材に連通しかつ該支持部材に回転可能に装着され上下方向に延長する中心洗浄水管および該中心洗浄水管に連通するようにして該中心洗浄水管の下端部に連結され該連結部から半径方向両側に水平方向に延長する1対の水平洗浄水管とからなる上層洗浄水管と、
該1対の水平洗浄水管からそれぞれ噴出口を該濾過槽の周方向に向けて斜め下方に突出する複数の表洗浄特殊混気ノズルであって、一方の水平洗浄水管の該ノズルの噴出口の向きは他方の水平洗浄水管の該ノズルの噴出口の向きと反対方向である表洗特殊混気ノズルと、
該中心洗浄水管に固定され上下方向に延長する少なくとも1本の空気吸入管と、
該空気吸入管に連通するようにして該空気吸入管に連結されるとともに該水平洗浄水管に沿って水平方向に延長し、該水平洗浄水管に固定された1対の水平空気管とを備え、
該水平空気管は接続管により該表洗特殊混気ノズルのそれぞれに連通し、該空気吸入管の上端部は大気に開放されており、該排水トラフまたは排水口よりも上方に配置されていることを特徴とする水処理装置の上層洗浄装置である。
【0021】
本発明の第2の構成は、該上層洗浄水管の回転速度は、3周/分〜5周/分の範囲内にあることを特徴とする構成1の上層洗浄装置である。
【0022】
本発明の第3の構成は、送水圧力の上限値は0.2MPaであり、送水圧力0.2MPaにおける水平洗浄水管の軸心からの垂直面に対する表洗特殊混気ノズルの傾斜角度は18°〜22°の範囲内であることを特徴とする構成2の上層洗浄装置である。
【0023】
本発明の第4の構成は、該空気吸入管の上端部には、該空気吸入管に連通する開放孔を有し、該開放孔は上端部の開放端部に向けて次第に径が拡大し、細
孔付きの上蓋を有するテーパが形成されている騒音発生防止手段が設けられていることを特徴とする構成1〜4のいずれかの上層洗浄装置である。
【0024】
本発明の第5の構成は、
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混気ジェット水流として噴出する原水噴出口を備える1本または複数本の原水特殊混気ノズルと、上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口と、第1〜第4のいずれかの構成の上層洗浄装置を備え、該原水特殊混気ノズルは、該原水噴出口と該濾材層の表面または該排水トラフの底面との間に所定の間隔をおいて該濾材層または該排水トラフの上方に配置されている水処理装置の該濾材層を洗浄する方法であって、該濾材層の洗浄を、主として該上層の洗浄を行う部分洗浄と該上層および該下層の双方を洗浄する全体洗浄のいずれかを選択して行い、該部分洗浄工程は、
(イ)原水の供給を一時停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を上向流として上層洗浄速度で流入させながら構成1〜4のいずれかに記載の上層洗浄装置により洗浄することにより濾材表面を閉塞している水酸化鉄を濾材から剥離させて上向流により洗い流す上層洗浄工程
(ハ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備え、該全体洗浄工程は、
(イ)原水の供給を停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を該上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度よりも速い全体洗浄速度で流入させながら該上層洗浄装置を作動させ、該上層および該下層の濾材を洗浄する洗浄工程
(ハ)該上層および下層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下の速度で上向流の供給を継続しながら該上層および下層の濾材を沈降させる静置工程
(ニ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層および下層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備えることを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1の構成によれば、上端部が大気に開放された空気吸入管に連通するようにしてこの空気吸入管に連結されるとともに水平洗浄水管に沿って水平方向に延長し、回転式水平洗浄水管に固定された1対の水平空気管とを備え、水平空気管を接続管により複数の表洗特殊混気ノズルのそれぞれに連通するように構成することにより、洗浄ノズルの通過時のみ濾材が攪拌される従来の洗浄ノズル往復動方式および回転式洗浄方式に比べて単位時間当たり洗浄能率を飛躍的に向上させることができ、これによって高速濾過を促進することができる。
【0026】
また表洗特殊混気ノズルを使用することにより特許文献2記載の洗浄水のみを使用する洗浄装置に比べて洗掘攪拌できる濾材層の深度を20%以上深めることが可能となり、濾過効率を向上させ、濾過速度を増加させることができる。
【0027】
また洗浄ノズル往復動方式のように多大の動力と複雑な機構を必要としないので装置の製造コストを節約することができる上に濾過槽を平面視丸型に構成することができるので、コンパクトで簡素化された機構でメンテナンスも簡単な水処理装置を提供することができる。
【0028】
本発明の第2の構成によれば、洗浄水管の回転速度を3周/分〜5周/分の範囲内とすることにより、上層洗浄時において攪拌洗浄が下層にまで及びことがなく、攪拌洗浄できる濾材層を上層に限定しながら最高の洗浄効率を達成することができ、最高の濾過速度を達成することができる。
【0029】
本発明の第3の構成によれば、送水圧力の上限値は0.2MPaであり、送水圧力0.2MPaにおける水平洗浄水管の軸心からの垂直面に対する表洗特殊混気ノズルの傾斜角度は18°〜22°の範囲内であることにより、洗浄水の送水用の動力を最低に抑えながら最高の洗浄効果を達成することができる。
【0030】
本発明の第4の構成によれば、空気吸入管の上端部には、空気吸入管に連通する開放孔を有し、開放孔は上端部の開放端部に向けて次第に径が拡大し、細孔付きの上蓋を有するテーパが形成されている騒音発生防止手段が設けられていることにより、簡単な装置で濾材層の洗浄時に発生する騒音を減少させることができ、水処理装置の設置スペースが狭い場所においても騒音発生の問題を生じることなく装置を作動させることができる。
【0031】
本発明の第5の構成によれば、濾材層を上層と下層の2層構造とし、上層は下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材を使用して部分洗浄、全体洗浄を実施することにより、上層で捕捉された濃度の高い鉄は、上記構成の上層洗浄装置と比較的に緩やかな流速の上向流による洗浄の組み合わせによる部分洗浄により上層の洗浄を頻繁に行うことにより洗浄、除去される一方下層で捕捉された濃度が低いマンガンは上層の洗浄よりも少ない頻度で行う流速の速い上向流による全体洗浄で上層の鉄とともに洗浄、除去される。したがって、濃度が高く上層における蓄積量が多い鉄は頻繁な洗浄により充分に除去される一方濃度が低く下層における蓄積量が少ないマンガンは少ない頻度の全体洗浄により充分に除去され、頻繁な洗浄によって下層における生物の棲息が妨げられることがなく、上下濾材層全体としての洗浄効果を最高度に達成することができ、これによって必要とされる高速濾過を達成することができる。本発明によれば、特許文献1記載の水処理装置の濾過速度60m/日〜120m/日に比べて画期的な400〜500m/日の濾過速度を挙げることが可能である。また、上層の鉄の除去のため水量の多い逆洗水での全体洗浄を頻繁に行う必要がなく、その結果全体としての洗浄水の使用量が節約され、従来の薬品注入方式の水処理装置において濾過水量の約10〜15%使用されていた洗浄水の量を本発明によれば濾過水量の約3〜5%に減少させることができる。
【0032】
また本発明によれば、洗浄の頻度が高い上層は比重が比較的に小さく粒径が比較的に大きい濾材で構成されているので、上層洗浄時に濾材が攪拌されて大きく上方に舞い上がり濾材の洗浄効果を高め、同一洗浄効果を収めるための洗浄水の使用量を最小限にとどめることができる。一方下層は比重が比較的に大きく粒径が比較的に小さい(目の細かい)濾材で構成されているので単位容量に対する比表面積が大きく、生物処理効果が高い。また全体洗浄の際には上層の濾材も下層の濾材もともに攪拌されるが、下層の濾材は上層の濾材よりも比重が大きく沈降速度が大きいので、上層の濾材が沈降する前に沈降して下層に静置され、その上に上層の濾材が沈降して静置され元の上層、下層の状態に復元することができる。このように洗浄効果の高い上層の濾材と生物処理効果の高い下層の濾材を組み合わせることにより鉄、マンガンのほか原水に含まれる濁質を充分に捕捉しながら、最高の洗浄効率を挙げることができる。また上層は粒径が比較的に大きい濾材で構成されているので、水流に対する抵抗が小さく、したがって高速濾過を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る水処理装置上層洗浄装置の1実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【図2】実施形態を示す平面図である。
【図3】図1の上層洗浄装置のより具体的な1実施形態を示す側面図である。
【図4】図3の実施形態における水平洗浄水管と水平空気管の配置を示す平面図である。
【図5】表洗特殊混気ノズルを装着した上層洗浄装置の1例の構造を示す断面図である。
【図6】空気吸入管を中心洗浄水管に固定する固定金具の1例を示す図である。
【図7】図6の固定金具により1対の空気吸入管を中心洗浄水管に固定した状態を示す平面図である。
【図8】本発明の騒音発生防止手段を構成するねじ込みソケットを示す断面図である。
【図9】集水管の配置状態を示す平面図である。
【図10】上層洗浄装置の回転数と送水圧力の関係を示すグラフである。
【図11】上層洗浄装置の回転数と表洗特殊混気ノズル傾斜角度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明の洗浄装置は、上層と下層の2層構造からなる濾材層を有する水処理装置に限らず、1層構造の濾材層を有する水処理装置にも適用できるものであるが、以下の説明においては、好ましい実施形態として上層と下層の2層構造の濾材層を有する水処理装置に本発明を適用した場合を例にとって説明する。
【0035】
図1および図2は本発明に係る水処理装置の1実施形態を模式的に示す概略図である。
図1において、水処理装置1は、主たる構成要素として、上層2および下層3からなる濾材層4を収容した濾過槽5、原水送水管6、原水特殊混気ノズル7、上層洗浄装置10、排水トラフまたは排水口12、濾過水取出し管と逆洗水供給管を兼ねる集水管13を備える。濾過槽5は蓋68で覆われている。
【0036】
濾過槽5に濾過されるべき地下水を供給する鋼管等からなる原水送水管6は送水ポンプ(図示せず)に接続されており、この送水ポンプは、必要により受水槽(図示せず)を介して原水の水源から原水を供給され、所定の流速で原水送水管6に原水を供給する。
【0037】
原水送水管6は濾材層4の表面と平行な面上に延長するようにして濾過槽5の上方に配設されている。図示の実施形態においては、原水送水管6は、図2に示すように、排水トラフ12の一部を濾過槽の半径方向外側に拡張することによって形成された原水流入槽70の上方を通過するようにして配置され、原水流入槽70の両端部に取り付けられている。
【0038】
原水送水管6から垂直に分岐するようにして、1本ないし複数本(図示の実施形態においては3本)の原水特殊混気ノズル7が設けられている。各ジェットノズル7の上流側の端部は、内部が原水送水管6に連通するようにして原水送水管6に嵌め込まれており、下流側の端部には原水をジェット水流として噴出する原水噴出口7bが形成されている。原水特殊混気ノズル7の内径はたとえば3〜30mm程度が好適である。なお、原水特殊混気ノズルの位置はこれに限らず、原水噴出口7bと濾材層4の表面または排水トラフ12の底面との間に所定の間隔をおいて濾材層または排水トラフの上方に配置すればよい。
【0039】
原水特殊混気ノズル7には、それと同数(図示の実施形態においては3本)の空気口15が設けられている。各空気口15は大気に解放されている。空気口15の内径は、ノズル内径以上が好適である。
【0040】
濾過槽5内において、濾材層4の上層2に充填される濾材は下層3に充填され濾材よりも比重が小さく粒径が大きい材質のものであることが必要である。この条件を満たす上層の濾材としてはたとえばアンスラサイト等が好適であり、特にアンスラサイト(粒径約1.2mm)が好ましい。またこの条件を満たす下層の濾材として濾過砂(粒径約0.6mm)が好適である。濾過槽4はジェットノズルから供給されたジェット流として供給される原水中の酸化物フロックその他の異物を捕捉することにより原水を濾過する機能を果たすとともに鉄バクテリアその他の微生物が生息し原水中の鉄、マンガンを酸化して吸着する機能を果たすものである。オキシ水酸化鉄の自触媒作用により鉄は主として上層2の表面に皮膜化し(濾材層の表面から300mm程度の部分に最も多い)、マンガンは主として生物処理により下層3の濾過砂表面に皮膜化する(濾材層の表面から300〜1300mm程度の部分に最も多い)。
【0041】
濾材層4を支持砂利層17により支持する。支持砂利層17は上層から順に小粒径層、中粒径層、大粒径層の複数層からなるように構成することが好ましいがこれに限るものではない。
【0042】
濾過槽5の支持砂利層17の中心部には集水管13が水平方向に配置されている。本実施形態においては、集水管13は濾材層4により濾過された水を取り出すための濾過水取出し管と濾材層4に逆洗水を供給するための逆洗水供給管を兼用している。集水管13には図9に示すように複数本の支管14が集水管13に連通するようにして枝分かれして水平方向に延長するように取り付けられている。なお、濾過水取出し管と逆洗水供給管は上記の例に限らず、別個の濾過水取出し管と逆洗水供給管を設けるようにしてもよい。
【0043】
上層2の表面よりも上方の濾過槽5には、逆洗時にオーバーフローした水を排水するための排水トラフ12が設けられている。逆洗時にオーバーフローした水を排水するには排水トラフ12に限らず、他の形状の排水口を使用してもよい。なお、図2に示す実施態様においては、排水トラフ12は原水特殊混気ノズルから供給される原水を濾過槽に移動させる役割も果している。
【0044】
図1の実施形態において、上層洗浄装置10は、上層洗浄水送水管25に連通し、濾材層4の径方向上方に配置された上層洗浄管支持部材17と、上層洗浄管支持部材17に連通しかつスイベルジョイント29により同支持部材に回転可能に装着され上下方向に延長する中心洗浄水管26およびこの中心洗浄水管26に連通するようにしてその下端部に連結され半径方向両側に水平方向に延長する1対の水平洗浄水管27、28とからなる上層洗浄水管18と、これら1対の水平洗浄水管27、28からそれぞれ噴出口を濾過槽4の周方向に向けて斜め下方に突出する複数の表洗特殊混気ノズルであって、一方の水平洗浄水管27の該ノズルの噴出口の向きは他方の水平洗浄水管28の該ノズルの噴出口の向きと反対方向である表洗特殊混気ノズル19と、中心洗浄水管26に固定され上下方向に延長する少なくとも1本の空気吸入管20と、空気吸入管20に連通するようにしてこの空気吸入管20に連結されるとともに水平洗浄水管27、28に沿って水平方向に延長し、水平洗浄水管27、28に固定された1対の水平空気管31、32とを備え、水平空気管31、32は後述の接続管により気液特殊混気ノズル19のそれぞれに連通し、空気吸入管20の上端部は大気に開放されており、排水トラフ12よりも上方に配置されている。
【0045】
次に図3〜図8を参照して本発明の上層洗浄装置のより具体的な1実施態様について説明する。
図3において、上層洗浄装置10は、上層洗浄管支持部材17、上層洗浄水管18、表洗特殊混気ノズル19、空気吸入管20、水平空気管21を備える。
【0046】
上層洗浄管支持部材17は、水平方向に延長するように配置された1対の管部材17a、17bを3方向管継手22により結合してなり、その両端は円盤状のフランジ23、23により閉じられている。上層洗浄管支持部材17はその両端部の底壁に固定された1対の支柱24、24により排水トラフ12の外周フランジ部12aに固定されている。上層洗浄管支持部材17はその一端部において上層洗浄水送水管25に連通しており、上層洗浄水送水管25に接続する上層洗浄水供給源(図示せず)から上層洗浄水の供給を受けることができる。
【0047】
上層洗浄水管18は中心洗浄水管26と1対の水平洗浄水管27、28からなるものである。
【0048】
中心洗浄水管26は濾過槽5の中心位置において上下方向に延長する管体からなり、その上端部に設けられた円盤状のフランジ26aは中心洗浄水管26の上方に配置されたスイベルジョイント29の下端部の円盤状フランジ29aに溶接固定されている。スイベルジョイント29の上端部には円盤状フランジ29bが設けられており、このフランジ29bは管継手22の下部開口部に設けられた円盤状フランジ22aに溶接固定されている。円盤状フランジ26a、29a、29b、22aはいずれも中央部が開口しており、したがって、中心洗浄水管26は上層洗浄水管支持部材17に連通するとともに、支持部材17に回転可能に装着されている。
【0049】
1対の水平洗浄水管27、28は、3方向管継手30により相互に連結されるとともに中心洗浄水管26の下端部に連結されており、中心洗浄水管26に連通するとともに中心洗浄水管26の下端部から半径方向両側に水平方向に延長している。水平洗浄水管27、28の中心洗浄水管26との連結部の反対側の端部はキャップ43.44によって閉じられている。
【0050】
水平洗浄水管27、28には、それぞれ、噴出口を濾過槽5の周方向に向けて斜め下方に突出する複数(図示に例においては各5本)の表洗特殊混気ノズル19が取り付けられている。一方の水平洗浄水管27のノズル19の噴出口の向きは他方の水平洗浄水管28のノズル19の噴出口の向きと反対方向である。
【0051】
図3の実施態様においては、これらのノズル19の中水平洗浄水管27の図中左端のノズル19の噴出口は周方向から外れて濾過槽5の内壁側に向けられており、これによって上層の外周端部の濾材を攪拌洗浄することが容易にできるように配置されている。また水平洗浄水管28の図中左端のノズル19の噴出口は周方向から外れて濾過槽5の中心側に向けられており、これによって上層の中心部の濾材を攪拌洗浄することが容易にできるように配置されている。
【0052】
1対の空気吸入管20、20は大気に開放された上端部が排水トラフ12よりも上方に配置されるようにして上下方向に延長しており、固定金具33により中心洗浄水管26に固定されている。
【0053】
固定金具33は、図6に示すように、1対の金具部材33a、33bからなり、各金具部材33a、33bは、中央部の中心洗浄水管嵌合部33cとその両側の空気吸入管嵌合部33dを備えており、これら嵌合部33c、33dの両側にボルト孔33eが形成されている。また一方の金具部材33aの外側表面のボルト孔33eの上にはナット34が溶接されている。
【0054】
この金具部材33a、33bを、図7に示すように、中心洗浄水管嵌合部33cが中心洗浄水管26に嵌合し、空気吸入管嵌合部33dが空気吸入管20に嵌合するようにして取り付け、両金具部材33a、33bのボルト孔33eにボルトをねじ込んで両金具部材33a、33bを締結することにより、空気吸入管20、20を中心洗浄水管26に固定することができる。
【0055】
水平空気管31、32はそれぞれ管継手36、36を介して空気吸入管20、20に連通するようにして空気吸入管20、20に連結されている。水平空気管31、32はそれぞれ水平洗浄水管27、28と並行に水平方向に延長している。図5に示すように、水平空気管31、32と水平洗浄水管27、28の相互に対向する側には所定の間隔をおいてそれぞれ固定金具37、38(図4)が溶接されており、これらの固定金具37、38にはそれぞれボルト挿通孔〈図示せず〉が形成されている。水平空気管31、32と水平洗浄水管27、28とは図5に示すように固定金具37、38を重ね合わせ、そのボルト挿通孔にボルト39を挿入しナット40で締結することにより相互に固定することができる。水平空気管31、32の管継手36と反対側の端部はキャップ45.46によって閉じられている。
【0056】
表洗特殊混気ノズル19においては、図5に示すように、水平洗浄水管27,28からの洗浄水をジェット水流として噴出するジェット水噴射ノズル48の噴出口近辺に、水平空気管31、32と水平洗浄水管27、28に連通し水平空気管31、32と水平洗浄水管27、28を相互に接続するホース等からなる接続管50の先開口部50aが開口しており、ジェット水流の圧力により、大気に開放された空気吸入管20の上端部から空気を吸入してジェット水流と混合し、ノズル口19aから噴出する。
【0057】
各空気吸入管20、20の上端部にはねじ込みソケット34がねじ込まれており、このソケット34は、図8に示すように中央部が上下方向に開放されて開放孔34aが形成されており、取り付け位置において開放孔34aの下端部34bは空気吸入管20の中心孔20aと同径で該中心孔20aと合致するが、上端部の開放端部34cに向けて次第に径が拡大するテーパが設けられている。ソケット34の上端部は、細孔66付きの上蓋65によって覆われている。これによって、上層洗浄装置の作動時に、空気吸入管20の上端部から空気が吸入される時の騒音が顕著に減殺され、上層洗浄作業を非作動時と大差がなく水槽外部において騒音被害が実質的に生じない状態で行うことができる。
【0058】
送水圧力を0.2MPa、上層洗浄水管の回転数4回/分、表洗特殊混気ノズルの傾斜角度を20℃に設定して、上層洗浄装置により水面に直接ノズル噴射時および水没状態で噴射した時の騒音を測定したところ、次表1のとおりであった(単位はdB)。
【0059】
【表1】
【0060】
次に図1および図2を参照して、本発明に係る上層洗浄装置が適用される水処理装置の動作について説明する。
原水濾過時には、上層2の表面上の水の水深を所定の深さに維持しつつ送水ポンプから原水送水管6を介して原水特殊混気ノズル7に原水を供給し、ジェットノズル7における水の流量をたとえば5.8〜256リットル/分とすることにより原水をジェット水流とする一方ジェットノズル7内に開口する空気口15から原水特殊混気ノズル7内に空気量がたとえば水量の1.0〜1.5倍で流入し、これによってジェット水流が空気を巻き込み多数の小さい気泡とし、この多数の気泡を含む混気ジェット水流がジェットノズル7の原水噴出口7bから上層2の上の水中に放出されることにより、水中の溶存酸素は飽和状態に近くなっている。水中の鉄は溶存酸素と反応して濾材表面で水酸化鉄として捕捉される。こうして水中の鉄等の溶解性成分が酸化されて不溶性成分となり、鉄成分は主として上層2を形成するアンスラサイトの粒子の表面で捕捉され、マンガン成分は主として下層3を形成する濾過砂の粒子の表面で高濃度の溶存酸素により活性化されたバクテリアによりにより生物処理で捕捉される。これらの不溶性成分およびその他の異物が濾材層4により濾過された濾過水は濾過水取出し管として機能する集水管13から外部に取出される。
【0061】
上記の濾過作用を継続すると、時間が経つにつれて上層2の表面に酸化物のフロックその他の異物が蓄積し、上層2の表面部はフロックその他の異物で覆われ目詰まりを起こして閉塞するために濾材層4はその濾過機能が減少する。上層表面部の目詰まりが生じると上層表面上の水位が徐々に高まるので、水位がある一定のレベルに達したら次の部分洗浄工程と全体洗浄工程のいずれかを選択して実施することにより濾材層4の洗浄を行う。
【0062】
部分洗浄工程
(1)原水の供給を一時止める濾過処理中断工程を行う。
(2)逆洗時に逆洗水供給管として機能する集水管13から逆洗水を上層洗浄速度(たとえば30m/h)で流入させることにより上層を緩めながら上層洗浄装置10を作動させ、上層2の濾材を表洗特殊混気ノズル19から噴出する混気ジェット流により攪拌して濾材を擦り合わせることにより濾材表面を閉塞している水酸化鉄を濾材から剥離させ、逆洗水による上向流により洗い流す上層洗浄工程を行う。逆洗水を比較的低速の上層洗浄速度で供給することにより剥離されたスラッジを排水トラフへ排出する。
(3)集水管13から逆洗水を上層洗浄速度で流入させ下層3および上層2の濾材を上向流で洗浄することにより主として上層において捕捉された鉄成分を含む水を排水トラフ12から排水する濁水排水工程を行う。
【0063】
全体洗浄工程
(1)原水の供給を止め、上層の濾材の表面近傍まであるいは上層中の所定の高さまで水位が下がるまで濾過処理を行う濾過処理中断工程を行う。
(2)集水管13から逆洗水を上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度より速い全体洗浄速度(たとえば60m/h)で流入させ下層3および上層2の濾材を急速上向流で洗浄する洗浄工程を行う。
(3)上層および下層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下で速度で上向流の供給を行いながら上層および下層の濾材を沈降させる静置工程。
(4)上層洗浄速度で上向流の供給を継続して上層および下層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を排水トラフ12から排出する濁水排水工程。
【0064】
上記部分洗浄工程と全体洗浄工程のいずれを選択するかは、原水中の鉄とマンガンの濃度比および濾過処理速度等に応じて部分洗浄工程と全体洗浄工程のそれぞれの頻度を決定し、その頻度に応じていずれかの工程を選択し、以後この頻度で部分洗浄および全体洗浄を行えばよい。
【0065】
また、本発明の他の実施形態においては、濾過処理のための通常運転時の濾過槽5の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき部分洗浄工程を自動的に開始するように構成する。抵抗値を計測するには差圧計により濾過槽の差圧を計測してもよいし、水位計により計測した水位が所定値まで上がったらこの水位を所定の抵抗値とみなしてもよい。これによって、濾材層の上層において洗浄が必要な程度に目詰まりが生じたとき、自動的に部分洗浄工程が開始されるので、部分洗浄工程を予め決まった日程に従って行うよりも能率的に行うことができる。
【0066】
他の方法として、濾過槽の抵抗値が所定値に達したら部分洗浄を行うこととし(自動的でもよいし、所定値を随時計測してもよい)、部分洗浄後に抵抗値が所定値に達するまでの時間が所定時間以下になったら自動的に全体洗浄工程を行うようにしてもよい。
【実施例】
【0067】
以下図3〜5に示す上層洗浄装置を使用した実施例について説明する。
水処理装置の濾過槽は内径1800mmの平面視円形のもので、濾材層表面から上層の深さは700mm、下層の上部表面から深さは1800mmである。上層洗浄装置の中心洗浄水管の内径は50mm、水平洗浄水管の内径は32 mm、空気吸入管の内径は32mm、水平空気管の内径は20mm、表洗特殊混気ノズルの噴射口の内径は4.5mmである。
【0068】
この上層洗浄装置を使用して、水平洗浄水管の軸心からの垂直面に対する表洗浄特殊混気ノズルの傾斜角度および送水圧力を種々変更して水平洗浄水管の回転数と送水圧力との関係および水平洗浄水管の回転数とノズルの傾斜角度との関係を調査した。その結果得られた回転数と送水圧力の関係を図10に示し、回転数とノズルの傾斜角度との関係を図11に示す。
【0069】
また実験の結果、上層洗浄装置の水平洗浄水管を回転させる回転速度は3周/分〜5周/分の範囲内にあることが好ましいことがわかった。回転数が3周/分未満では洗浄効率が悪く、目標とする高速濾過が困難であり、一方回転数が5周/分を超えると、洗浄が目標とする上層のみでなく目標としない下層の上層部にまで及び、これによって下層に生息するマンガンの除去に必要な生物が洗い流されてしまう問題が生じることがわかったのである。
【0070】
そこでこの回転数3周/分〜5周/分の範囲を得ることができる圧力を図10から見ると、ノズル傾斜角25°の場合は約0.12〜0.165MPa、ノズル傾斜角20°の場合は約0.185〜0.26MPa、ノズル傾斜角15の場合は約0.24MPa以上の送水圧力が適当な範囲であることがわかる。
【0071】
またこの回転数3周/分〜5周/分の範囲を得ることができるノズル傾斜角度を図11から見ると、送水圧力が0.2MPaの場合は約18°〜22°、送水圧力0.15MPaの場合は約22°〜27°、送水圧力0.1MPaの場合は約30°以上であることがわかる。
【0072】
洗浄効果を高めるためには、送水圧力は高い方がよいが、送水圧力が0.2MPaを超えると消費する送水用動力の費用が嵩み好ましくないので、洗浄効果および送水用動力の観点から送水圧力の上限値を0.2MPaに設定すると、回転数3周/分〜5周/分の範囲を得られる水平洗浄水管の軸心からの垂直面に対する表洗特殊混気ノズルの傾斜角度は約18°〜22°の範囲内であることがわかる。
【0073】
また、この上層洗浄装置において、空気吸入管20の開口部を閉じ、洗浄水のみをノズル19から噴射して洗浄を行った場合(特許文献2の場合)と空気吸入管20から空気を吸入して混気ジェット水をノズル19から噴射して洗浄を行った場合(本発明の場合)の比較実験を行ったところ、洗浄水のみを噴射した場合の上層表面から攪拌できた濾材層の深度は28cmであるのに対し混気ジェット水を噴射した場合の攪拌深度は36cmであり、特殊混気ノズル19を使用することにより水のみを噴射する場合に比べて約20%強の深い範囲を攪拌することができることがわかった。
【符号の説明】
【0074】
1 水処理装置
2 上層
3 下層
4 濾材層
5 濾過槽
6 原水送水管
7 原水特殊混気ノズル
12 排水トラフまたは排水口
13 集水管
19 上層洗浄管支持部材
20 空気吸入管
26 中心洗浄水管
27、28 水平洗浄水管
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置の洗浄装置に関し、特に地下水等の中の鉄、マンガンその他の溶解性成分を、酸化剤や凝集剤等の化学品を使用することなく、簡単で小型の装置で酸化させ、不溶化することにより処理することができる水処理装置の上層洗浄装置およびその濾材層の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水は、水道水の原水として、また食品工業、清涼飲料、醸造、公衆浴場、染色業など水を大量に必要とする産業で利用されているが、現在地下水に含まれる鉄、マンガン成分が大きな問題となっている。鉄やマンガンは人体にとって必要な成分であるが、一定量を超えると水に金属味を与えたり、赤水や黒水の原因となり、飲用に不適となるばかりでなく、これらの産業において様々な問題が生じる。また、建設工事において地下水抜き取り工事は必要不可欠な工程であるが、地下水に大量の鉄、マンガンが含まれている場合は、そのまま下水道に放流することは法令で禁止されており、地下水中の鉄、マンガンを除去してから放流しなければならないという問題がある。
【0003】
現在もっとも普及している除鉄、除マンガン装置は、原水に次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤やポリ塩化アルミニウム(PAC)等の凝集剤を添加し、水中に溶け込んでいる鉄、マンガンを酸化させて不溶性の酸化鉄、酸化マンガンとし、これを濾過砂により濾過して取り除くものである。
【0004】
しかし、この酸化剤や凝集剤を注入する方式の水処理装置においては、比較的に多量の酸化剤、凝集剤を消費するのでこれらの購入コストが大きい。また酸化剤として使用される次亜塩素酸ナトリウムが鉄、マンガンを酸化させた後も処理後の浄水の中に残留するために、発癌物質であるトリハロメタンを生成し、その対策のためさらに水を活性炭層を通して処理しなければならず不経済である。また、経済的考慮から活性炭層の設置を見送るとすれば、過剰な酸化剤の注入によるトリハロメタンの発生を防止するため濾過後の水を耐えず分析して監視し、状況に応じて酸化剤の注入量を調整する必要があり、薬品購入コストに加えて維持管理費が嵩むという欠点がある。また、この薬品注入方式による水処理装置は、曝気槽、凝集槽、沈殿槽、砂濾過塔、除鉄、除マンガン塔および薬液タンクからなり、システムは複雑であり装置全体は大規模化して広大な設置スペースを必要とするため、市街地等設置スペースが限られた環境においては装置を設置することができない、という問題点がある。さらに、この薬品注入方式による水処理装置において、洗浄排水を処理する必要があるが、その場合砂が薬品を含有しているため産業廃棄物として処理しなければならず、その放棄場所も制限される等の不便がある。
【0005】
上記従来の薬品注入方式による水処理装置の欠点を除去し、地下水等の中の鉄、マンガンその他の溶解性成分を、酸化剤や凝集剤等の薬品を使用することなく、簡単で小型の装置で酸化させ不溶化することにより処理することができる水処理装置を提供することを目的として、特許文献1記載の水処理装置が提案されている。この水処理装置によれば、ジェットノズルにより原水をジェット水流とする一方ジェットノズル内に開口する空気口または気体導入管からジェットノズル内に空気を導入することにより、多数の気泡を含むジェット水流がジェットノズルの原水噴出口からその下方に配置された濾材層上の水面に叩きつけられ、水中および濾材表面において激しいエアレーションが起こることにより、水中の鉄、マンガン等の溶解性成分が酸化されて不溶性成分となり、濾材層を形成する濾過砂等の濾材粒子の表面で捕捉され、したがって、酸化剤や凝集剤等の薬品を一切使用することなく、簡単で小型の装置で原水中の鉄、マンガンその他の溶解性成分を不溶化し濾過することができる。
【0006】
また水処理装置の表面層を洗浄するための他のタイプの洗浄装置として、特許文献2記載の回転式洗浄装置が公知である。この回転式洗浄装置は、垂直回転軸の下端に取り付けた水平回転管の長手方向に設けられた複数の水噴射ノズルから水を斜め下方に噴射させて濾材層の表面に噴射水を叩きつけることによりその反動により水平回転管を回転させ、各水噴射ノズルから噴射される水により濾材の表面層を攪拌洗浄するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−126768公報
【特許文献2】米国特許第2769547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1記載の水処理装置その他同型の水処理装置においては、皮膜化された鉄は濾材層の上層部と下層部とで洗浄過多と洗浄不足が常に同居した状態にある。また一口に鉄、マンガンを除去するといっても、後述のように、鉄は濾材層の上層部において酸化作用により皮膜化する一方マンガンは濾材層の下層部において生物処理により濾材粒子の表面で捕捉されるが、原水中の鉄の濃度がマンガンの濃度に比べて顕著に大きい場合は、濾材層の上層部で捕捉された鉄を除去するために大量の洗浄水で濾材層全体を洗浄すれば下層部においてマンガン処理のために棲息している生物も洗い流されてしまってその後のマンガンの生物処理に支障を来たすことになる。
【0009】
一方水処理装置はその単位時間当たりの濾過速度を高速化すればするほど、装置の規模とスペースを削減することができるので有利である。特に水処理装置を設置するスペースが設置場所の関係で限られており、大規模な装置を設置することが不可能な場合は、狭い敷地に設置された小規模な装置により必要な量の原水を濾過処理しなければならず、濾過速度を高める必要に迫られる。
【0010】
水処理装置の濾過速度を上げるために必要な一つの重要な条件は、水処理装置の洗浄を効率よく行うことである。
【0011】
水処理装置においては、一般に濾過作用を継続すると時間がたつにつれて濾材層特にその表面に水酸化鉄等の酸化物のフロックやその他の異物で覆われた時は濾材の濾過機能が減少するので、濾過処理を一時停止して濾材層の洗浄を行わなければならない。したがって濾材層の洗浄を効率よく行わなければ濾過処理の高速化は実現できない。
【0012】
上記特許文献1記載の水処理装置においては、原水送水管を濾材層の表面と平行な面上に往復動させ、原水送水管から噴出す多数の気泡を含むジェット水流により閉塞した濾材層を閉塞状態から開放して濾過機能を回復させるようにしている。また、この水処理装置は、濾過砂からなる1層の濾材層の底部に濾材層を支持する板状スクリーンからなる濾材層受が配置されており、濾材層受の下方には濾材層を逆洗浄するための逆洗管が配置されている。濾材層の上部特に表面が酸化物のフロックやその他の異物で覆われた時は濾過槽への原水供給を一時停止し、逆洗管から逆洗水を濾材槽受を介して濾材層全般にわたって下方から上方へ流すことにより濾材層上部を覆う異物を濾材層から剥離するとともに濾材層内に捕捉された鉄、マンガン成分を洗い流し、逆洗水排出口から系外に排出するように構成されている。
【0013】
この水処理装置の濾過速度は60m/日〜120m/日であるが、より高速で濾過処理を行う必要がある場合は、濾材層の洗浄もより頻繁に行わなければならず、このため濾材層の下層部の生物処理に対する負荷量も一層増大するので、この水処理装置では濾材層の洗浄効率に限界があり、これ以上の高速化は不可能である。
【0014】
また上記水処理装置を含め、従来の水処理装置は、濾材層の上記洗浄のため濾過水量の約10%〜15%の水を消費しなければならず、このため水処理の効率を大きく低下させている。
【0015】
また上記水処理装置は、濾材層の表面を洗浄するために原水送水管を濾材層の表面と平行な面上に往復動させる機構を備えているが、この機構は原水供給管を電動モータで往復動させなければならないので表面洗浄のために多大の動力を必要とするばかりでなく、往復動のための機構が複雑となり、さらに原水送水管の移動用レールの磨耗、原水送水管に水を供給するホースの損耗等部品のメンテナンスの手間と費用が嵩むという問題点がある。また直線状に配列された一連の原水送水管を同時に移動させるために濾過槽の形状は矩形で無ければならずこのため装置が大きくなり、装置の設置場所が狭い場合でも装置のコンパクト化が不可能であるという問題点もある。
【0016】
また上記特許文献2記載の洗浄装置は、水平回転管の水噴射ノズルから噴射される水が濾材層表面に当たった時の反動により水平回転管が回転するので、特許文献1における電気モータ等の駆動装置を必要とせず、簡単な装置で表面層を洗浄することができるが、濾過槽が1層からなるものであるので、上記特許文献1記載の装置と同様の問題点があり、また水平回転管の取り付けられた水噴射ノズルは回転しながら洗浄水を噴射するので、固定式水噴射ノズルから洗浄水を噴射する場合に比べて濾材層を洗掘攪拌できる深度が浅く、濾材層の比較的上部において捕捉される鉄のみを洗浄除去するにしても十分な深さまで攪拌洗浄し得ないおそれがある。したがってこの回転式洗浄装置では濾過速度の向上に限界があり、最大120m/日の濾過速度しか得られない。
【0017】
また、従来の水処理装置においては、濾材層の洗浄時に発生する騒音が激しいものがあり、特に水処理装置の設置スペースが狭い場所に限られている場合騒音が問題となる場合があり、濾材層の洗浄時に騒音を発生しない水処理装置が望まれていた。
【0018】
本発明は、上記従来の水処理装置の問題点にかんがみなされたものであって、従来の水処理装置より高速での濾過処理を可能としかつ騒音の少ない新規な水処理装置の濾材層の洗浄装置およびこの洗浄装置を使用する濾材層の洗浄方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本出願人は、上記問題を解決するために鋭意研究と実験を重ねた結果、水処理装置によって捕捉されるべき鉄とマンガンの中で鉄はその大部分が濾材層の上層部に沈着し、マンガンは逆に大部分が濾材層の下層部に沈着する事実があるとともに、原水中の鉄とマンガンの濃度は一定ではなく、原水によっておおむね一定の濃度差があり、通常鉄の濃度はマンガンの濃度より大幅に高いことに着目し、これらの事実を洗浄に利用して逆洗水供給管から逆洗水を上層部洗浄速度で流入させて上層部の濾材を上向流により緩めながら複数の表洗特殊混気ノズルが設けられた回転型の上層洗浄装置により上層部を洗浄することにより、騒音を発生することなく、濾材層上層部において鉄を除去する洗浄効果を顕著に改善することに成功した。また本発明者は、原水中の鉄は濾材層の部分洗浄により除去し、マンガンは濾材層の全体洗浄により除去することにより洗浄効果を顕著に改善し、これによって従来実現できなかった高速濾過を可能とするとともに洗浄水を節約することに成功した。
【0020】
すなわち、本発明の目的を達成する第1の構成は
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混気ジェット水流として噴出する原水噴出口を供える1本または複数本の原水特殊混気ノズルと、上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する平面視円形の濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口と、該逆洗水供給管から逆洗水を上層洗浄速度で流入させて上層の濾材を上向流により緩めながら上層の洗浄を行う上層洗浄装置を備え、該原水特殊混気ノズルは、該原水噴出口と該濾材層の表面または該排水トラフの底面との間に所定の間隔をおいて該濾材層または該排水トラフの上方に配置されている水処理装置において、該上層洗浄装置は、
上層洗浄水送水管に連通し、濾材層の径方向上方に配置された上層洗浄管支持部材と、
該上層洗浄管支持部材に連通しかつ該支持部材に回転可能に装着され上下方向に延長する中心洗浄水管および該中心洗浄水管に連通するようにして該中心洗浄水管の下端部に連結され該連結部から半径方向両側に水平方向に延長する1対の水平洗浄水管とからなる上層洗浄水管と、
該1対の水平洗浄水管からそれぞれ噴出口を該濾過槽の周方向に向けて斜め下方に突出する複数の表洗浄特殊混気ノズルであって、一方の水平洗浄水管の該ノズルの噴出口の向きは他方の水平洗浄水管の該ノズルの噴出口の向きと反対方向である表洗特殊混気ノズルと、
該中心洗浄水管に固定され上下方向に延長する少なくとも1本の空気吸入管と、
該空気吸入管に連通するようにして該空気吸入管に連結されるとともに該水平洗浄水管に沿って水平方向に延長し、該水平洗浄水管に固定された1対の水平空気管とを備え、
該水平空気管は接続管により該表洗特殊混気ノズルのそれぞれに連通し、該空気吸入管の上端部は大気に開放されており、該排水トラフまたは排水口よりも上方に配置されていることを特徴とする水処理装置の上層洗浄装置である。
【0021】
本発明の第2の構成は、該上層洗浄水管の回転速度は、3周/分〜5周/分の範囲内にあることを特徴とする構成1の上層洗浄装置である。
【0022】
本発明の第3の構成は、送水圧力の上限値は0.2MPaであり、送水圧力0.2MPaにおける水平洗浄水管の軸心からの垂直面に対する表洗特殊混気ノズルの傾斜角度は18°〜22°の範囲内であることを特徴とする構成2の上層洗浄装置である。
【0023】
本発明の第4の構成は、該空気吸入管の上端部には、該空気吸入管に連通する開放孔を有し、該開放孔は上端部の開放端部に向けて次第に径が拡大し、細
孔付きの上蓋を有するテーパが形成されている騒音発生防止手段が設けられていることを特徴とする構成1〜4のいずれかの上層洗浄装置である。
【0024】
本発明の第5の構成は、
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混気ジェット水流として噴出する原水噴出口を備える1本または複数本の原水特殊混気ノズルと、上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口と、第1〜第4のいずれかの構成の上層洗浄装置を備え、該原水特殊混気ノズルは、該原水噴出口と該濾材層の表面または該排水トラフの底面との間に所定の間隔をおいて該濾材層または該排水トラフの上方に配置されている水処理装置の該濾材層を洗浄する方法であって、該濾材層の洗浄を、主として該上層の洗浄を行う部分洗浄と該上層および該下層の双方を洗浄する全体洗浄のいずれかを選択して行い、該部分洗浄工程は、
(イ)原水の供給を一時停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を上向流として上層洗浄速度で流入させながら構成1〜4のいずれかに記載の上層洗浄装置により洗浄することにより濾材表面を閉塞している水酸化鉄を濾材から剥離させて上向流により洗い流す上層洗浄工程
(ハ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備え、該全体洗浄工程は、
(イ)原水の供給を停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を該上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度よりも速い全体洗浄速度で流入させながら該上層洗浄装置を作動させ、該上層および該下層の濾材を洗浄する洗浄工程
(ハ)該上層および下層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下の速度で上向流の供給を継続しながら該上層および下層の濾材を沈降させる静置工程
(ニ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層および下層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備えることを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1の構成によれば、上端部が大気に開放された空気吸入管に連通するようにしてこの空気吸入管に連結されるとともに水平洗浄水管に沿って水平方向に延長し、回転式水平洗浄水管に固定された1対の水平空気管とを備え、水平空気管を接続管により複数の表洗特殊混気ノズルのそれぞれに連通するように構成することにより、洗浄ノズルの通過時のみ濾材が攪拌される従来の洗浄ノズル往復動方式および回転式洗浄方式に比べて単位時間当たり洗浄能率を飛躍的に向上させることができ、これによって高速濾過を促進することができる。
【0026】
また表洗特殊混気ノズルを使用することにより特許文献2記載の洗浄水のみを使用する洗浄装置に比べて洗掘攪拌できる濾材層の深度を20%以上深めることが可能となり、濾過効率を向上させ、濾過速度を増加させることができる。
【0027】
また洗浄ノズル往復動方式のように多大の動力と複雑な機構を必要としないので装置の製造コストを節約することができる上に濾過槽を平面視丸型に構成することができるので、コンパクトで簡素化された機構でメンテナンスも簡単な水処理装置を提供することができる。
【0028】
本発明の第2の構成によれば、洗浄水管の回転速度を3周/分〜5周/分の範囲内とすることにより、上層洗浄時において攪拌洗浄が下層にまで及びことがなく、攪拌洗浄できる濾材層を上層に限定しながら最高の洗浄効率を達成することができ、最高の濾過速度を達成することができる。
【0029】
本発明の第3の構成によれば、送水圧力の上限値は0.2MPaであり、送水圧力0.2MPaにおける水平洗浄水管の軸心からの垂直面に対する表洗特殊混気ノズルの傾斜角度は18°〜22°の範囲内であることにより、洗浄水の送水用の動力を最低に抑えながら最高の洗浄効果を達成することができる。
【0030】
本発明の第4の構成によれば、空気吸入管の上端部には、空気吸入管に連通する開放孔を有し、開放孔は上端部の開放端部に向けて次第に径が拡大し、細孔付きの上蓋を有するテーパが形成されている騒音発生防止手段が設けられていることにより、簡単な装置で濾材層の洗浄時に発生する騒音を減少させることができ、水処理装置の設置スペースが狭い場所においても騒音発生の問題を生じることなく装置を作動させることができる。
【0031】
本発明の第5の構成によれば、濾材層を上層と下層の2層構造とし、上層は下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材を使用して部分洗浄、全体洗浄を実施することにより、上層で捕捉された濃度の高い鉄は、上記構成の上層洗浄装置と比較的に緩やかな流速の上向流による洗浄の組み合わせによる部分洗浄により上層の洗浄を頻繁に行うことにより洗浄、除去される一方下層で捕捉された濃度が低いマンガンは上層の洗浄よりも少ない頻度で行う流速の速い上向流による全体洗浄で上層の鉄とともに洗浄、除去される。したがって、濃度が高く上層における蓄積量が多い鉄は頻繁な洗浄により充分に除去される一方濃度が低く下層における蓄積量が少ないマンガンは少ない頻度の全体洗浄により充分に除去され、頻繁な洗浄によって下層における生物の棲息が妨げられることがなく、上下濾材層全体としての洗浄効果を最高度に達成することができ、これによって必要とされる高速濾過を達成することができる。本発明によれば、特許文献1記載の水処理装置の濾過速度60m/日〜120m/日に比べて画期的な400〜500m/日の濾過速度を挙げることが可能である。また、上層の鉄の除去のため水量の多い逆洗水での全体洗浄を頻繁に行う必要がなく、その結果全体としての洗浄水の使用量が節約され、従来の薬品注入方式の水処理装置において濾過水量の約10〜15%使用されていた洗浄水の量を本発明によれば濾過水量の約3〜5%に減少させることができる。
【0032】
また本発明によれば、洗浄の頻度が高い上層は比重が比較的に小さく粒径が比較的に大きい濾材で構成されているので、上層洗浄時に濾材が攪拌されて大きく上方に舞い上がり濾材の洗浄効果を高め、同一洗浄効果を収めるための洗浄水の使用量を最小限にとどめることができる。一方下層は比重が比較的に大きく粒径が比較的に小さい(目の細かい)濾材で構成されているので単位容量に対する比表面積が大きく、生物処理効果が高い。また全体洗浄の際には上層の濾材も下層の濾材もともに攪拌されるが、下層の濾材は上層の濾材よりも比重が大きく沈降速度が大きいので、上層の濾材が沈降する前に沈降して下層に静置され、その上に上層の濾材が沈降して静置され元の上層、下層の状態に復元することができる。このように洗浄効果の高い上層の濾材と生物処理効果の高い下層の濾材を組み合わせることにより鉄、マンガンのほか原水に含まれる濁質を充分に捕捉しながら、最高の洗浄効率を挙げることができる。また上層は粒径が比較的に大きい濾材で構成されているので、水流に対する抵抗が小さく、したがって高速濾過を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る水処理装置上層洗浄装置の1実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【図2】実施形態を示す平面図である。
【図3】図1の上層洗浄装置のより具体的な1実施形態を示す側面図である。
【図4】図3の実施形態における水平洗浄水管と水平空気管の配置を示す平面図である。
【図5】表洗特殊混気ノズルを装着した上層洗浄装置の1例の構造を示す断面図である。
【図6】空気吸入管を中心洗浄水管に固定する固定金具の1例を示す図である。
【図7】図6の固定金具により1対の空気吸入管を中心洗浄水管に固定した状態を示す平面図である。
【図8】本発明の騒音発生防止手段を構成するねじ込みソケットを示す断面図である。
【図9】集水管の配置状態を示す平面図である。
【図10】上層洗浄装置の回転数と送水圧力の関係を示すグラフである。
【図11】上層洗浄装置の回転数と表洗特殊混気ノズル傾斜角度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明の洗浄装置は、上層と下層の2層構造からなる濾材層を有する水処理装置に限らず、1層構造の濾材層を有する水処理装置にも適用できるものであるが、以下の説明においては、好ましい実施形態として上層と下層の2層構造の濾材層を有する水処理装置に本発明を適用した場合を例にとって説明する。
【0035】
図1および図2は本発明に係る水処理装置の1実施形態を模式的に示す概略図である。
図1において、水処理装置1は、主たる構成要素として、上層2および下層3からなる濾材層4を収容した濾過槽5、原水送水管6、原水特殊混気ノズル7、上層洗浄装置10、排水トラフまたは排水口12、濾過水取出し管と逆洗水供給管を兼ねる集水管13を備える。濾過槽5は蓋68で覆われている。
【0036】
濾過槽5に濾過されるべき地下水を供給する鋼管等からなる原水送水管6は送水ポンプ(図示せず)に接続されており、この送水ポンプは、必要により受水槽(図示せず)を介して原水の水源から原水を供給され、所定の流速で原水送水管6に原水を供給する。
【0037】
原水送水管6は濾材層4の表面と平行な面上に延長するようにして濾過槽5の上方に配設されている。図示の実施形態においては、原水送水管6は、図2に示すように、排水トラフ12の一部を濾過槽の半径方向外側に拡張することによって形成された原水流入槽70の上方を通過するようにして配置され、原水流入槽70の両端部に取り付けられている。
【0038】
原水送水管6から垂直に分岐するようにして、1本ないし複数本(図示の実施形態においては3本)の原水特殊混気ノズル7が設けられている。各ジェットノズル7の上流側の端部は、内部が原水送水管6に連通するようにして原水送水管6に嵌め込まれており、下流側の端部には原水をジェット水流として噴出する原水噴出口7bが形成されている。原水特殊混気ノズル7の内径はたとえば3〜30mm程度が好適である。なお、原水特殊混気ノズルの位置はこれに限らず、原水噴出口7bと濾材層4の表面または排水トラフ12の底面との間に所定の間隔をおいて濾材層または排水トラフの上方に配置すればよい。
【0039】
原水特殊混気ノズル7には、それと同数(図示の実施形態においては3本)の空気口15が設けられている。各空気口15は大気に解放されている。空気口15の内径は、ノズル内径以上が好適である。
【0040】
濾過槽5内において、濾材層4の上層2に充填される濾材は下層3に充填され濾材よりも比重が小さく粒径が大きい材質のものであることが必要である。この条件を満たす上層の濾材としてはたとえばアンスラサイト等が好適であり、特にアンスラサイト(粒径約1.2mm)が好ましい。またこの条件を満たす下層の濾材として濾過砂(粒径約0.6mm)が好適である。濾過槽4はジェットノズルから供給されたジェット流として供給される原水中の酸化物フロックその他の異物を捕捉することにより原水を濾過する機能を果たすとともに鉄バクテリアその他の微生物が生息し原水中の鉄、マンガンを酸化して吸着する機能を果たすものである。オキシ水酸化鉄の自触媒作用により鉄は主として上層2の表面に皮膜化し(濾材層の表面から300mm程度の部分に最も多い)、マンガンは主として生物処理により下層3の濾過砂表面に皮膜化する(濾材層の表面から300〜1300mm程度の部分に最も多い)。
【0041】
濾材層4を支持砂利層17により支持する。支持砂利層17は上層から順に小粒径層、中粒径層、大粒径層の複数層からなるように構成することが好ましいがこれに限るものではない。
【0042】
濾過槽5の支持砂利層17の中心部には集水管13が水平方向に配置されている。本実施形態においては、集水管13は濾材層4により濾過された水を取り出すための濾過水取出し管と濾材層4に逆洗水を供給するための逆洗水供給管を兼用している。集水管13には図9に示すように複数本の支管14が集水管13に連通するようにして枝分かれして水平方向に延長するように取り付けられている。なお、濾過水取出し管と逆洗水供給管は上記の例に限らず、別個の濾過水取出し管と逆洗水供給管を設けるようにしてもよい。
【0043】
上層2の表面よりも上方の濾過槽5には、逆洗時にオーバーフローした水を排水するための排水トラフ12が設けられている。逆洗時にオーバーフローした水を排水するには排水トラフ12に限らず、他の形状の排水口を使用してもよい。なお、図2に示す実施態様においては、排水トラフ12は原水特殊混気ノズルから供給される原水を濾過槽に移動させる役割も果している。
【0044】
図1の実施形態において、上層洗浄装置10は、上層洗浄水送水管25に連通し、濾材層4の径方向上方に配置された上層洗浄管支持部材17と、上層洗浄管支持部材17に連通しかつスイベルジョイント29により同支持部材に回転可能に装着され上下方向に延長する中心洗浄水管26およびこの中心洗浄水管26に連通するようにしてその下端部に連結され半径方向両側に水平方向に延長する1対の水平洗浄水管27、28とからなる上層洗浄水管18と、これら1対の水平洗浄水管27、28からそれぞれ噴出口を濾過槽4の周方向に向けて斜め下方に突出する複数の表洗特殊混気ノズルであって、一方の水平洗浄水管27の該ノズルの噴出口の向きは他方の水平洗浄水管28の該ノズルの噴出口の向きと反対方向である表洗特殊混気ノズル19と、中心洗浄水管26に固定され上下方向に延長する少なくとも1本の空気吸入管20と、空気吸入管20に連通するようにしてこの空気吸入管20に連結されるとともに水平洗浄水管27、28に沿って水平方向に延長し、水平洗浄水管27、28に固定された1対の水平空気管31、32とを備え、水平空気管31、32は後述の接続管により気液特殊混気ノズル19のそれぞれに連通し、空気吸入管20の上端部は大気に開放されており、排水トラフ12よりも上方に配置されている。
【0045】
次に図3〜図8を参照して本発明の上層洗浄装置のより具体的な1実施態様について説明する。
図3において、上層洗浄装置10は、上層洗浄管支持部材17、上層洗浄水管18、表洗特殊混気ノズル19、空気吸入管20、水平空気管21を備える。
【0046】
上層洗浄管支持部材17は、水平方向に延長するように配置された1対の管部材17a、17bを3方向管継手22により結合してなり、その両端は円盤状のフランジ23、23により閉じられている。上層洗浄管支持部材17はその両端部の底壁に固定された1対の支柱24、24により排水トラフ12の外周フランジ部12aに固定されている。上層洗浄管支持部材17はその一端部において上層洗浄水送水管25に連通しており、上層洗浄水送水管25に接続する上層洗浄水供給源(図示せず)から上層洗浄水の供給を受けることができる。
【0047】
上層洗浄水管18は中心洗浄水管26と1対の水平洗浄水管27、28からなるものである。
【0048】
中心洗浄水管26は濾過槽5の中心位置において上下方向に延長する管体からなり、その上端部に設けられた円盤状のフランジ26aは中心洗浄水管26の上方に配置されたスイベルジョイント29の下端部の円盤状フランジ29aに溶接固定されている。スイベルジョイント29の上端部には円盤状フランジ29bが設けられており、このフランジ29bは管継手22の下部開口部に設けられた円盤状フランジ22aに溶接固定されている。円盤状フランジ26a、29a、29b、22aはいずれも中央部が開口しており、したがって、中心洗浄水管26は上層洗浄水管支持部材17に連通するとともに、支持部材17に回転可能に装着されている。
【0049】
1対の水平洗浄水管27、28は、3方向管継手30により相互に連結されるとともに中心洗浄水管26の下端部に連結されており、中心洗浄水管26に連通するとともに中心洗浄水管26の下端部から半径方向両側に水平方向に延長している。水平洗浄水管27、28の中心洗浄水管26との連結部の反対側の端部はキャップ43.44によって閉じられている。
【0050】
水平洗浄水管27、28には、それぞれ、噴出口を濾過槽5の周方向に向けて斜め下方に突出する複数(図示に例においては各5本)の表洗特殊混気ノズル19が取り付けられている。一方の水平洗浄水管27のノズル19の噴出口の向きは他方の水平洗浄水管28のノズル19の噴出口の向きと反対方向である。
【0051】
図3の実施態様においては、これらのノズル19の中水平洗浄水管27の図中左端のノズル19の噴出口は周方向から外れて濾過槽5の内壁側に向けられており、これによって上層の外周端部の濾材を攪拌洗浄することが容易にできるように配置されている。また水平洗浄水管28の図中左端のノズル19の噴出口は周方向から外れて濾過槽5の中心側に向けられており、これによって上層の中心部の濾材を攪拌洗浄することが容易にできるように配置されている。
【0052】
1対の空気吸入管20、20は大気に開放された上端部が排水トラフ12よりも上方に配置されるようにして上下方向に延長しており、固定金具33により中心洗浄水管26に固定されている。
【0053】
固定金具33は、図6に示すように、1対の金具部材33a、33bからなり、各金具部材33a、33bは、中央部の中心洗浄水管嵌合部33cとその両側の空気吸入管嵌合部33dを備えており、これら嵌合部33c、33dの両側にボルト孔33eが形成されている。また一方の金具部材33aの外側表面のボルト孔33eの上にはナット34が溶接されている。
【0054】
この金具部材33a、33bを、図7に示すように、中心洗浄水管嵌合部33cが中心洗浄水管26に嵌合し、空気吸入管嵌合部33dが空気吸入管20に嵌合するようにして取り付け、両金具部材33a、33bのボルト孔33eにボルトをねじ込んで両金具部材33a、33bを締結することにより、空気吸入管20、20を中心洗浄水管26に固定することができる。
【0055】
水平空気管31、32はそれぞれ管継手36、36を介して空気吸入管20、20に連通するようにして空気吸入管20、20に連結されている。水平空気管31、32はそれぞれ水平洗浄水管27、28と並行に水平方向に延長している。図5に示すように、水平空気管31、32と水平洗浄水管27、28の相互に対向する側には所定の間隔をおいてそれぞれ固定金具37、38(図4)が溶接されており、これらの固定金具37、38にはそれぞれボルト挿通孔〈図示せず〉が形成されている。水平空気管31、32と水平洗浄水管27、28とは図5に示すように固定金具37、38を重ね合わせ、そのボルト挿通孔にボルト39を挿入しナット40で締結することにより相互に固定することができる。水平空気管31、32の管継手36と反対側の端部はキャップ45.46によって閉じられている。
【0056】
表洗特殊混気ノズル19においては、図5に示すように、水平洗浄水管27,28からの洗浄水をジェット水流として噴出するジェット水噴射ノズル48の噴出口近辺に、水平空気管31、32と水平洗浄水管27、28に連通し水平空気管31、32と水平洗浄水管27、28を相互に接続するホース等からなる接続管50の先開口部50aが開口しており、ジェット水流の圧力により、大気に開放された空気吸入管20の上端部から空気を吸入してジェット水流と混合し、ノズル口19aから噴出する。
【0057】
各空気吸入管20、20の上端部にはねじ込みソケット34がねじ込まれており、このソケット34は、図8に示すように中央部が上下方向に開放されて開放孔34aが形成されており、取り付け位置において開放孔34aの下端部34bは空気吸入管20の中心孔20aと同径で該中心孔20aと合致するが、上端部の開放端部34cに向けて次第に径が拡大するテーパが設けられている。ソケット34の上端部は、細孔66付きの上蓋65によって覆われている。これによって、上層洗浄装置の作動時に、空気吸入管20の上端部から空気が吸入される時の騒音が顕著に減殺され、上層洗浄作業を非作動時と大差がなく水槽外部において騒音被害が実質的に生じない状態で行うことができる。
【0058】
送水圧力を0.2MPa、上層洗浄水管の回転数4回/分、表洗特殊混気ノズルの傾斜角度を20℃に設定して、上層洗浄装置により水面に直接ノズル噴射時および水没状態で噴射した時の騒音を測定したところ、次表1のとおりであった(単位はdB)。
【0059】
【表1】
【0060】
次に図1および図2を参照して、本発明に係る上層洗浄装置が適用される水処理装置の動作について説明する。
原水濾過時には、上層2の表面上の水の水深を所定の深さに維持しつつ送水ポンプから原水送水管6を介して原水特殊混気ノズル7に原水を供給し、ジェットノズル7における水の流量をたとえば5.8〜256リットル/分とすることにより原水をジェット水流とする一方ジェットノズル7内に開口する空気口15から原水特殊混気ノズル7内に空気量がたとえば水量の1.0〜1.5倍で流入し、これによってジェット水流が空気を巻き込み多数の小さい気泡とし、この多数の気泡を含む混気ジェット水流がジェットノズル7の原水噴出口7bから上層2の上の水中に放出されることにより、水中の溶存酸素は飽和状態に近くなっている。水中の鉄は溶存酸素と反応して濾材表面で水酸化鉄として捕捉される。こうして水中の鉄等の溶解性成分が酸化されて不溶性成分となり、鉄成分は主として上層2を形成するアンスラサイトの粒子の表面で捕捉され、マンガン成分は主として下層3を形成する濾過砂の粒子の表面で高濃度の溶存酸素により活性化されたバクテリアによりにより生物処理で捕捉される。これらの不溶性成分およびその他の異物が濾材層4により濾過された濾過水は濾過水取出し管として機能する集水管13から外部に取出される。
【0061】
上記の濾過作用を継続すると、時間が経つにつれて上層2の表面に酸化物のフロックその他の異物が蓄積し、上層2の表面部はフロックその他の異物で覆われ目詰まりを起こして閉塞するために濾材層4はその濾過機能が減少する。上層表面部の目詰まりが生じると上層表面上の水位が徐々に高まるので、水位がある一定のレベルに達したら次の部分洗浄工程と全体洗浄工程のいずれかを選択して実施することにより濾材層4の洗浄を行う。
【0062】
部分洗浄工程
(1)原水の供給を一時止める濾過処理中断工程を行う。
(2)逆洗時に逆洗水供給管として機能する集水管13から逆洗水を上層洗浄速度(たとえば30m/h)で流入させることにより上層を緩めながら上層洗浄装置10を作動させ、上層2の濾材を表洗特殊混気ノズル19から噴出する混気ジェット流により攪拌して濾材を擦り合わせることにより濾材表面を閉塞している水酸化鉄を濾材から剥離させ、逆洗水による上向流により洗い流す上層洗浄工程を行う。逆洗水を比較的低速の上層洗浄速度で供給することにより剥離されたスラッジを排水トラフへ排出する。
(3)集水管13から逆洗水を上層洗浄速度で流入させ下層3および上層2の濾材を上向流で洗浄することにより主として上層において捕捉された鉄成分を含む水を排水トラフ12から排水する濁水排水工程を行う。
【0063】
全体洗浄工程
(1)原水の供給を止め、上層の濾材の表面近傍まであるいは上層中の所定の高さまで水位が下がるまで濾過処理を行う濾過処理中断工程を行う。
(2)集水管13から逆洗水を上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度より速い全体洗浄速度(たとえば60m/h)で流入させ下層3および上層2の濾材を急速上向流で洗浄する洗浄工程を行う。
(3)上層および下層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下で速度で上向流の供給を行いながら上層および下層の濾材を沈降させる静置工程。
(4)上層洗浄速度で上向流の供給を継続して上層および下層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を排水トラフ12から排出する濁水排水工程。
【0064】
上記部分洗浄工程と全体洗浄工程のいずれを選択するかは、原水中の鉄とマンガンの濃度比および濾過処理速度等に応じて部分洗浄工程と全体洗浄工程のそれぞれの頻度を決定し、その頻度に応じていずれかの工程を選択し、以後この頻度で部分洗浄および全体洗浄を行えばよい。
【0065】
また、本発明の他の実施形態においては、濾過処理のための通常運転時の濾過槽5の抵抗値を計測し、この抵抗値が所定値以上になったとき部分洗浄工程を自動的に開始するように構成する。抵抗値を計測するには差圧計により濾過槽の差圧を計測してもよいし、水位計により計測した水位が所定値まで上がったらこの水位を所定の抵抗値とみなしてもよい。これによって、濾材層の上層において洗浄が必要な程度に目詰まりが生じたとき、自動的に部分洗浄工程が開始されるので、部分洗浄工程を予め決まった日程に従って行うよりも能率的に行うことができる。
【0066】
他の方法として、濾過槽の抵抗値が所定値に達したら部分洗浄を行うこととし(自動的でもよいし、所定値を随時計測してもよい)、部分洗浄後に抵抗値が所定値に達するまでの時間が所定時間以下になったら自動的に全体洗浄工程を行うようにしてもよい。
【実施例】
【0067】
以下図3〜5に示す上層洗浄装置を使用した実施例について説明する。
水処理装置の濾過槽は内径1800mmの平面視円形のもので、濾材層表面から上層の深さは700mm、下層の上部表面から深さは1800mmである。上層洗浄装置の中心洗浄水管の内径は50mm、水平洗浄水管の内径は32 mm、空気吸入管の内径は32mm、水平空気管の内径は20mm、表洗特殊混気ノズルの噴射口の内径は4.5mmである。
【0068】
この上層洗浄装置を使用して、水平洗浄水管の軸心からの垂直面に対する表洗浄特殊混気ノズルの傾斜角度および送水圧力を種々変更して水平洗浄水管の回転数と送水圧力との関係および水平洗浄水管の回転数とノズルの傾斜角度との関係を調査した。その結果得られた回転数と送水圧力の関係を図10に示し、回転数とノズルの傾斜角度との関係を図11に示す。
【0069】
また実験の結果、上層洗浄装置の水平洗浄水管を回転させる回転速度は3周/分〜5周/分の範囲内にあることが好ましいことがわかった。回転数が3周/分未満では洗浄効率が悪く、目標とする高速濾過が困難であり、一方回転数が5周/分を超えると、洗浄が目標とする上層のみでなく目標としない下層の上層部にまで及び、これによって下層に生息するマンガンの除去に必要な生物が洗い流されてしまう問題が生じることがわかったのである。
【0070】
そこでこの回転数3周/分〜5周/分の範囲を得ることができる圧力を図10から見ると、ノズル傾斜角25°の場合は約0.12〜0.165MPa、ノズル傾斜角20°の場合は約0.185〜0.26MPa、ノズル傾斜角15の場合は約0.24MPa以上の送水圧力が適当な範囲であることがわかる。
【0071】
またこの回転数3周/分〜5周/分の範囲を得ることができるノズル傾斜角度を図11から見ると、送水圧力が0.2MPaの場合は約18°〜22°、送水圧力0.15MPaの場合は約22°〜27°、送水圧力0.1MPaの場合は約30°以上であることがわかる。
【0072】
洗浄効果を高めるためには、送水圧力は高い方がよいが、送水圧力が0.2MPaを超えると消費する送水用動力の費用が嵩み好ましくないので、洗浄効果および送水用動力の観点から送水圧力の上限値を0.2MPaに設定すると、回転数3周/分〜5周/分の範囲を得られる水平洗浄水管の軸心からの垂直面に対する表洗特殊混気ノズルの傾斜角度は約18°〜22°の範囲内であることがわかる。
【0073】
また、この上層洗浄装置において、空気吸入管20の開口部を閉じ、洗浄水のみをノズル19から噴射して洗浄を行った場合(特許文献2の場合)と空気吸入管20から空気を吸入して混気ジェット水をノズル19から噴射して洗浄を行った場合(本発明の場合)の比較実験を行ったところ、洗浄水のみを噴射した場合の上層表面から攪拌できた濾材層の深度は28cmであるのに対し混気ジェット水を噴射した場合の攪拌深度は36cmであり、特殊混気ノズル19を使用することにより水のみを噴射する場合に比べて約20%強の深い範囲を攪拌することができることがわかった。
【符号の説明】
【0074】
1 水処理装置
2 上層
3 下層
4 濾材層
5 濾過槽
6 原水送水管
7 原水特殊混気ノズル
12 排水トラフまたは排水口
13 集水管
19 上層洗浄管支持部材
20 空気吸入管
26 中心洗浄水管
27、28 水平洗浄水管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混気ジェット水流として噴出する原水噴出口を供える1本または複数本の原水特殊混気ノズルと、上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する平面視円形の濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口と、該逆洗水供給管から逆洗水を上層洗浄速度で流入させて上層の濾材を上向流により緩めながら上層の洗浄を行う上層洗浄装置を備え、該原水特殊混気ノズルは、該原水噴出口と該濾材層の表面または該排水トラフの底面との間に所定の間隔をおいて該濾材層または該排水トラフの上方に配置されている水処理装置において、該上層洗浄装置は、
上層洗浄水送水管に連通し、濾材層の径方向上方に配置された上層洗浄管支持部材と、
該上層洗浄管支持部材に連通しかつ該支持部材に回転可能に装着され上下方向に延長する中心洗浄水管および該中心洗浄水管に連通するようにして該中心洗浄水管の下端部に連結され該連結部から半径方向両側に水平方向に延長する1対の水平洗浄水管とからなる上層洗浄水管と、
該1対の水平洗浄水管からそれぞれ噴出口を該濾過槽の周方向に向けて斜め下方に突出する複数の表洗特殊混気ノズルであって、一方の水平洗浄水管の該ノズルの噴出口の向きは他方の水平洗浄水管の該ノズルの噴出口の向きと反対方向である表洗特殊混気ノズルと、
該中心洗浄水管に固定され上下方向に延長する少なくとも1本の空気吸入管と、
該空気吸入管に連通するようにして該空気吸入管に連結されるとともに該水平洗浄水管に沿って水平方向に延長し、該水平洗浄水管に固定された1対の水平空気管とを備え、
該水平空気管は接続管により該表洗特殊混気ノズルのそれぞれに連通し、該空気吸入管の上端部は大気に開放されており、該排水トラフまたは排水口よりも上方に配置されていることを特徴とする水処理装置の上層洗浄装置。
【請求項2】
該上層洗浄水管の回転速度は、3周/分〜5周/分の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の上層洗浄装置。
【請求項3】
送水圧力の上限値は0.2MPaであり、送水圧力0.2MPaにおける水平洗浄水管の軸心からの垂直面に対する表洗特殊混気ノズルの傾斜角度は18°〜22°の範囲内であることを特徴とする請求項2記載の上層洗浄装置。
【請求項4】
該空気吸入管の上端部には、該空気吸入管に連通する開放孔を有し、該開放孔は上端部の開放端部に向けて次第に径が拡大し、細孔付きの上蓋を有するテーパが形成されている騒音発生防止手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の上層洗浄装置。
【請求項5】
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混気ジェット水流として噴出する原水噴出口を備える1本または複数本の原水特殊混気ノズルと、上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口と、請求項1〜4のいずれかに記載の上層洗浄装置を備え、該原水特殊混気ノズルは、該原水噴出口と該濾材層の表面または該排水トラフの底面との間に所定の間隔をおいて該濾材層または該排水トラフの上方に配置されている水処理装置の該濾材層を洗浄する方法であって、該濾材層の洗浄を、主として該上層の洗浄を行う部分洗浄と該上層および該下層の双方を洗浄する全体洗浄のいずれかを選択して行い、該部分洗浄工程は、
(イ)原水の供給を一時停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を上向流として上層洗浄速度で流入させながら該上層を請求項1〜4のいずれかに記載の上層洗浄装置により洗浄することにより濾材表面を閉塞している水酸化鉄を濾材から剥離させて上向流により洗い流す上層洗浄工程
(ハ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備え、該全体洗浄工程は、
(イ)原水の供給を停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を該上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度よりも速い全体洗浄速度で流入させながら該上層洗浄装置を作動させ、該上層および該下層の濾材を洗浄する洗浄工程
(ハ)該上層および下層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下の速度で上向流の供給を継続しながら該上層および下層の濾材を沈降させる静置工程
(ニ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層および下層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備えることを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法。
【請求項1】
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混気ジェット水流として噴出する原水噴出口を供える1本または複数本の原水特殊混気ノズルと、上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する平面視円形の濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口と、該逆洗水供給管から逆洗水を上層洗浄速度で流入させて上層の濾材を上向流により緩めながら上層の洗浄を行う上層洗浄装置を備え、該原水特殊混気ノズルは、該原水噴出口と該濾材層の表面または該排水トラフの底面との間に所定の間隔をおいて該濾材層または該排水トラフの上方に配置されている水処理装置において、該上層洗浄装置は、
上層洗浄水送水管に連通し、濾材層の径方向上方に配置された上層洗浄管支持部材と、
該上層洗浄管支持部材に連通しかつ該支持部材に回転可能に装着され上下方向に延長する中心洗浄水管および該中心洗浄水管に連通するようにして該中心洗浄水管の下端部に連結され該連結部から半径方向両側に水平方向に延長する1対の水平洗浄水管とからなる上層洗浄水管と、
該1対の水平洗浄水管からそれぞれ噴出口を該濾過槽の周方向に向けて斜め下方に突出する複数の表洗特殊混気ノズルであって、一方の水平洗浄水管の該ノズルの噴出口の向きは他方の水平洗浄水管の該ノズルの噴出口の向きと反対方向である表洗特殊混気ノズルと、
該中心洗浄水管に固定され上下方向に延長する少なくとも1本の空気吸入管と、
該空気吸入管に連通するようにして該空気吸入管に連結されるとともに該水平洗浄水管に沿って水平方向に延長し、該水平洗浄水管に固定された1対の水平空気管とを備え、
該水平空気管は接続管により該表洗特殊混気ノズルのそれぞれに連通し、該空気吸入管の上端部は大気に開放されており、該排水トラフまたは排水口よりも上方に配置されていることを特徴とする水処理装置の上層洗浄装置。
【請求項2】
該上層洗浄水管の回転速度は、3周/分〜5周/分の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の上層洗浄装置。
【請求項3】
送水圧力の上限値は0.2MPaであり、送水圧力0.2MPaにおける水平洗浄水管の軸心からの垂直面に対する表洗特殊混気ノズルの傾斜角度は18°〜22°の範囲内であることを特徴とする請求項2記載の上層洗浄装置。
【請求項4】
該空気吸入管の上端部には、該空気吸入管に連通する開放孔を有し、該開放孔は上端部の開放端部に向けて次第に径が拡大し、細孔付きの上蓋を有するテーパが形成されている騒音発生防止手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の上層洗浄装置。
【請求項5】
原水送水管と、該原水送水管に一端部が連通し、他端部には原水を原水と空気の混気ジェット水流として噴出する原水噴出口を備える1本または複数本の原水特殊混気ノズルと、上層と下層の2層からなり、該上層は該下層の濾材よりも比重が小さく粒径が大きい濾材からなる濾材層を収容する濾過槽と、該濾材層によって濾過された水を取り出すために該濾過槽に設けられた濾過水取出し管と、該濾材層に逆洗水を供給するために該濾過槽に設けられた逆洗水供給管と、該濾材層の上方において濾過槽に設けられた排水トラフまたは排水口と、請求項1〜4のいずれかに記載の上層洗浄装置を備え、該原水特殊混気ノズルは、該原水噴出口と該濾材層の表面または該排水トラフの底面との間に所定の間隔をおいて該濾材層または該排水トラフの上方に配置されている水処理装置の該濾材層を洗浄する方法であって、該濾材層の洗浄を、主として該上層の洗浄を行う部分洗浄と該上層および該下層の双方を洗浄する全体洗浄のいずれかを選択して行い、該部分洗浄工程は、
(イ)原水の供給を一時停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を上向流として上層洗浄速度で流入させながら該上層を請求項1〜4のいずれかに記載の上層洗浄装置により洗浄することにより濾材表面を閉塞している水酸化鉄を濾材から剥離させて上向流により洗い流す上層洗浄工程
(ハ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備え、該全体洗浄工程は、
(イ)原水の供給を停止する濾過処理中断工程
(ロ)該逆洗水供給管から逆洗水を該上層洗浄速度よりも大きくかつ濾材の沈降速度よりも速い全体洗浄速度で流入させながら該上層洗浄装置を作動させ、該上層および該下層の濾材を洗浄する洗浄工程
(ハ)該上層および下層の濾材の洗浄を終了した後濾材の沈降速度以下の速度で上向流の供給を継続しながら該上層および下層の濾材を沈降させる静置工程
(ニ)該上層洗浄速度で上向流の供給を継続して該上層および下層の濾材から分離した濁質成分を含む濁水を該排水トラフまたは排水口から排出する濁水排水工程
を備えることを特徴とする水処理装置濾材層の洗浄方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−22550(P2013−22550A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161980(P2011−161980)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(305011053)株式会社ナガオカ (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(305011053)株式会社ナガオカ (8)
【Fターム(参考)】
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