説明

水処理装置

【課題】槽本体の全体にエアーレーションが拡散して汚水浄化作用の向上が図れる水処理装置を提供する。
【解決手段】汚水等の処理対象水が流入・排出されるとともに微生物が混在する処理槽の槽本体1と水平方向に回転自在に設けられる攪拌回転体8と回転駆動させる駆動手段とを有し、攪拌回転体は円環状で水平方向に対向する側面カバーリング10と給排口13を配備され、その上部が処理対象水の上に一部を現出させた状態で水中に没しながら一定方向に回転するものとされており、持ち回し部は処理対象水の上のエアーを取り込んで処理対象水の中の下回りの下端まで持ち回す間に該エアーを給排口を通じてエアーレーションとして順次処理対象水の中に放出することで好気処理ゾーンを形成する一方、下回りの下端から上回りに至る間には処理対象水を取り込んで水上に放出し攪拌することにより無酸素処理ゾーン・嫌気処理ゾーンを形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水などを対象とする水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、汚水浄化設備においては、反応タンク(槽)が設置され、同タンクに汚水を流入して微生物の混在する中でエアーレーションを施すことにより汚水の浄化が促進され、その浄化処理後の汚水を沈澱池に導入したり消毒したりして河川に放流処理されるようになっている。ところで、これまでの反応タンクでは、底部から噴出されるエアーによりタンク内全体が専ら好気処理ゾーンを構成するものとなっていたため、種々微生物が適正な環境下で活発に活動できない状況となって、浄化処理が今一つ効果的になされなかった。
そのことから本出願人は、特開2006−35199号において種々微生物に対しそれぞれに見合った適正環境を提供することによりSS処理、脱窒処理、リン吸着処理などの浄化処理がより一層効果的になされる水処理装置の技術を開示した。
該水処理装置は、同公報に開示されるように、反応タンク(槽)の槽本体内に通した水平軸である回転軸に回転フォークを介して攪拌回転体を取付けて水平軸回りに回転駆動自在とすることでその回転してくる上端一部分が常に水面上に現出するようにされるとともに、前記攪拌回転体は、左右一対の円環状の側面カバーリングと外周カバーリングをコの字断面となるように形成し、その内部の周方向に攪拌ボックスを一定間隔を置いて配備することにより、該攪拌ボックスが、水中に没する前に水上のエアーを取り込んで下回り下端に至る間においてボックス間の連通口である給排口を通じてエアーレーションを発生させ、そのあとの半周りで攪拌ボックス内に持ち込んだ汚水を持上げて攪拌するように構成されている。こうした回転サイクルを繰り返すことにより、攪拌回転体の内域では、その縦半分の域が好気処理ゾーンとなる一方残る半分の域が無酸素および嫌気処理ゾーンになることから、微生物の性質に適応した生育環境を提供できて汚水処理効率を上げることができるという点で優れたものとされた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記した開示技術は実施してみたところ次のような問題点が出てきた。
即ち、攪拌回転体が回転して攪拌ボックスが深く下がってゆくとエアーレーションが発生するが、そのエアーレーションは攪拌回転体の内域を直上してゆくのみであったためそれ以外の槽内域にエアーレーションが行き渡り難く、その結果、特に好気処理ゾーンでの汚水浄化作用が想定通り得られなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、汚水等の処理対象水が流入・排出されるとともに微生物が混在する処理槽の槽本体と、同槽本体内で水平方向の中心線回りに回転自在に設けられる攪拌回転体と、同回転体を回転駆動させる駆動手段とを有し、前記攪拌回転体は、円環状で前記水平方向に対向状をなす一対の側面カバーリングと、これらの側面カバーリング間に周方向に間隔を置きかつ内周側において給排口を存して配備され回転する方向に前記給排口に連通する開口を向けた保留凹所を有する複数の持ち回し部とを備えて、その上部が処理対象水の上に一部を現出させた状態で水中に没しながら一定方向に回転するものとされており、前記持ち回し部は、処理対象水の上のエアーを取り込んで同処理対象水の中の下回りの下端まで持ち回す間に該エアーを前記給排口を通じてエアーレーションとして順次処理対象水の中に放出することで好気処理ゾーンを形成する一方前記下回りの下端から上回りに至る間には処理対象水を取り込んで水上に放出し攪拌することにより無酸素処理ゾーン・嫌気処理ゾーンを形成するようになっている水処理装置であって、前記槽本体内には、前記エアーレーションを攪拌回転体の内域以外に分散可能な分散促進手段が設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のものにおいて、分散促進手段は、攪拌回転体の内域におけるエアーレーションが上昇してくる位置に設けられ対向間と対向間以外に振り分けるようにした対向振分ガイド板でなる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のものにおいて、分散促進手段は、持ち回し部の外周および/または側面に明けられた吐出口でなる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、上記のように槽本体内には、エアーレーションを攪拌回転体の内域以外に分散可能な分散促進手段が設けられていることを特徴とするので、槽本体の全体にエアーレーションが拡散して汚水浄化作用の向上が図れる水処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態・実施例】
【0006】
図1は水(汚水)処理装置Aを含むフローシートを示し、同図に示すように、水処理装置Aは反応処理槽の構造に係るもので、図1の左側がその反応処理槽Aの縦断正面図で同図上欄に取り出した図がその平面概要図である。水処理装置Aには矢印aのように汚水が導入され、同装置A内で浄化処理された汚水は矢印bのように次の円形(あるいは矩形)の沈澱池Bに導入される。沈澱池Bの底部での沈澱物は、矢印cのようにポンプCにより返送汚泥として水処理装置A内に導かれてその活性微生物が再投入されることになる一方、矢印dのようにポンプDにより余剰汚泥として脱水などの次の処理設備に導かれる。円形沈澱池Bからの清澄水は、矢印eのように次の消毒槽Eに導かれてそこで消毒処理されたあと放流処理される。
【0007】
水処理装置Aの槽本体1は、左右の側壁2,2と端壁3,3および底壁4を備え上面を開口した(閉止してもよい)矩形の処理槽体となっている。汚水5は、一方の端壁2から矢印aのように導入される。
【0008】
図1の水処理装置AをIII−III線において切断して拡大したものが図3で、図3のII−II線で切断したものが図2となっている。また、図2の図2のIV−IV線で切断したものが図4になっている。
これらの図に示すように、Oは水平な回転中心線で、この中心線Oの周りには、攪拌回転体8が設けられている。この攪拌回転体8は、円環板状をした側面カバーリング10,10の一対と、その外周に設けられた一定幅をした円環筒状をした外周カバーリング(持ち回し部の一部となる)11とを備え、内周が溝開口となったコの字形断面のリング体とされている。この攪拌回転体8の内部には、湾曲状をした多数の持ち回し片12…が一定の間隔を置いて配列され、この持ち回し片12…はその凹み側が回転方向Xを向くとともに、その内周側一端は回転方向Xに先行し他端は後行する位置関係になっている。持ち回し片12の内周側の端部間に形成された開口が給排口13になっているとともに、持ち回し片12とその外周側に対応する外周カバーリング11とが持ち回し部となっているとともに、持ち回し片12とその外周側に対応する外周カバーリング11の形成する空間が保留凹所14となっている。この攪拌回転体8は、中央の回転軸および回転フォークをもたずローラー16…で3点支持されるとともに、これらローラー16…のうちの1つ(下側の一方)が駆動ローラーとなっている。17は駆動手段で、図示しない駆動源とチェーン、スプロケットおよび前記駆動ローラー16などで構成されている。
【0009】
攪拌回転体8は、汚水5に対しその上回りの上部のみが現出した状態でローラー16で支持されて図1の上欄に示すように複数平行に設けられた中心線O上にそれぞれ複数のものが一定の間隔を置いて並列に配備されている。これらの個数は限定されない。
【0010】
こうした装置Aにおいて、攪拌回転体8内の中央には、中心線Oを通るようにして仕切り板20が槽の幅に亘るようにして固定して設けられている。この仕切り板20は、図2の右側のエアーレーションが左側に行かないようにするためのものである。ここでは、仕切り板20は多孔板になっているが、孔なしの板にしたり通水性の濾材にしてもよい。
【0011】
仕切り板20のエアーレーション側の一側には図4に示すようなくの字形に曲がった対向振分ガイド板21がエアーレーションの分散手段として一定の間隔を置いて相対向状に取り付けられている。この対向振分ガイド板21は、攪拌回転体8の中心側から攪拌回転体8のエアーレーション側の中段高さへと伸びるようにして設けられるとともに、その先端には、各攪拌回転体8の内周に微小の隙間を置いて添う円弧状のエアーレーション一時抑制部材22が持ち回し部により持ちまわされた保留エアーが中段付近で排出されないようにする。
【0012】
尚、対向振分ガイド板21は、図5に示すように湾曲する形状にしてもよい。
また、図2に示すように、分散手段は、外周カバーリング11の周位置に複数明けた吐出口23で構成してもよい。この吐出口23は、図2の右下欄に示すように、保留凹所14に面する側面カバーリング10の面に設けてもよい。この吐出口23は、外周、側面の両カバーリング10,11の面に明けてもよい。前記持ち回し片12には、図2の右下欄に示すように、微細エアーを噴出させるための微細孔27を設けてもよい。この微細孔27に代えて持ち回し片12の先端縁を図2の右下欄のように鋸歯28あるいは波形などに形成して微細エアー化するようにしてもよい。この鋸歯などの微細化のための手段は、前記吐出口23とは独立してあるいは組み合わせて構成することができる。
さらに、図6に示すように、攪拌回転体8は、槽本体1の長手方向に並列に配置してもよい。
また、持ち回し片12は図2の右上欄に示すようにL字形に折れ曲がったものにしてもよい。
さらに、この実施形態では、攪拌回転体8を3点のローラー16で支持したが4点やそれ以上の点数のローラー16で支持してもよく、一方、前記実施形態では攪拌回転体8はローラー16で支持したが、図2に仮想線で示すように中央の回転軸25まわりに回転フォーク26を介して回転自在に支持するようにしてもよい。この場合、回転フォーク26は、図4の対向振分ガイド板21,21間を通過できるものとするとともに、仕切り板20を設ける場合にはこの仕切り板20の切り離し間を通過できるようにする。
また、回転フォーク26を設ける場合は、図2の左上欄のように、回転する方向に丸く突出する半円筒(あるいは全円筒)形にすればエアーレーションが攪拌回転体8の外部にまで拡散させることができる。この場合、エアーレーションを矢印のようにさらに広げるため拡散促進片26aを付加してもよい。さらに、回転フォーク26は図2の左下欄のように、回転する方向に角稜部を向けた三角筒形のものにしてエアーレーションが広がるようにしてもよい。上記いずれの場合も、単独で発明が成立するものとする。即ち、前記で説明したエアーレーション拡散用の対向振分ガイド板21や吐出口23などを構成しない装置Aにおいて図2の左欄の回転フォーク26のみで拡散を達成する場合もある一方、対向振分ガイド板21や吐出口23と前記回転フォーク26とを組み合わせることもできる。
【0013】
本実施形態における汚水5は微生物を含むものであって、図1ないし図4に示すように槽本体1内に流入して一定レベルに貯留される。そして、図1に示すように、返送汚泥により矢印cの経路で活性微生物が追加される。
前記攪拌回転体8は、汚水5に没した状態で上部一部のみが水面上に現出させた状態で一定方向Xに10〜30rpmで連続回転され、図1において全て同じ方向Xに回転するものとされ、この回転により前記持ち回し片12などで構成される持ち回し部は、上回りでエアーを持ち込み、X方向への回転につれて持ち回し片12の向きが変動してくる関係でその内部に保留のエアーを順次排出してゆくことになるが、ここではエアーレーション一時抑制部材22が給排口13に対向しているため直ぐには排出されず、中断以降の一定角度経過後にはじめて排出されることになる。この抑制により保留されたエアーは攪拌回転体8の内周に添って直ぐに上昇せず水面に戻されることがなくなり、下回りまで持ちまわされることにより汚水中に混入可能な最も有効な形でエアーレーションとなる。
【0014】
図2のようにエアーレーションLとなったものは、図4に示すように対向振分ガイド板21,21がその上昇経路上に存することにより矢印L,Lのように中央を通るものと左右に振分られるものとに分けられ、これにより、エアーレーションLは攪拌回転体8の内域だけでなくそれ以外の槽内へと拡散してゆくことになり、好気処理ゾーンPがこれまでより数倍広く拡張したものとなって好気性微生物による汚水浄化活動が活発化する。また、攪拌回転体8の内部には仕切り板20が設けられているので、拡散したエアーレーションが他方域である無酸素処理ゾーンQや嫌気処理ゾーンRの側に持ち込まれることがなく、それぞれの領域がより有効に機能するゾーンとなる。なお、持ち回し部は、下回りから上回りにゆくにつれてその内部である保留凹所14内に汚水を持ち込んで上昇し図2の矢印のように攪拌運動をする。
【0015】
前記実施形態では、汚水を対象にしたが、あおこの発生する水を対象にしたり、その他広範囲の水を対象に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の水処理装置を含むフローシート。
【図2】図3のII−II線断面図。
【図3】図1のIII−II線拡大断面図。
【図4】図3のIV−IV線断面図。
【図5】他の実施形態を示す斜視図。
【図6】他の実施形態を示す平面図。
【符号の説明】
【0017】
A 水処理装置
1…槽本体
5…汚水
8…攪拌回転体
10…側面カバーリング
11…外周カバーリング
12…持ち回し片
13…給排口
14…保留凹所
17…駆動手段
21…対向振分ガイド板
22…エアーレーション一時抑制部材
23…吐出口
P 好気処理ゾーン
Q 無酸素処理ゾーン
R 嫌気処理ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水等の処理対象水が流入・排出されるとともに微生物が混在する処理槽の槽本体と、同槽本体内で水平方向の中心線回りに回転自在に設けられる攪拌回転体と、同回転体を回転駆動させる駆動手段とを有し、前記攪拌回転体は、円環状で前記水平方向に対向状をなす一対の側面カバーリングと、これらの側面カバーリング間に周方向に間隔を置きかつ内周側において給排口を存して配備され回転する方向に前記給排口に連通する開口を向けた保留凹所を有する複数の持ち回し部とを備えて、その上部が処理対象水の上に一部を現出させた状態で水中に没しながら一定方向に回転するものとされており、前記持ち回し部は、処理対象水の上のエアーを取り込んで同処理対象水の中の下回りの下端まで持ち回す間に該エアーを前記給排口を通じてエアーレーションとして順次処理対象水の中に放出することで好気処理ゾーンを形成する一方前記下回りの下端から上回りに至る間には処理対象水を取り込んで水上に放出し攪拌することにより無酸素処理ゾーン・嫌気処理ゾーンを形成するようになっている水処理装置であって、前記槽本体内には、前記エアーレーションを攪拌回転体の内域以外に分散可能な分散促進手段が設けられていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、分散促進手段は、攪拌回転体の内域におけるエアーレーションが上昇してくる位置に設けられ対向間と対向間以外に振り分けるようにした対向振分ガイド板でなる水処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のものにおいて、分散促進手段は、持ち回し部の外周および/または側面に明けられた吐出口でなる水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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