説明

水処理装置

【課題】水の連続浄化を実現し、基本的には吸着材の交換が必要なく、エタノール等をはじめとする水溶性でかつ分子径の小さい有機物質を大量に高効率かつ安定に除去することができる処理装置を提供することを課題とするものである。
【解決手段】水溶性で分子径の小さい有機物質を含有する水を、全酸性基量0.05meq/g以下、細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積が0.02cm/g以上である活性炭素繊維を含む吸着素子に通流させて該吸着素子に有機物質を吸着させる吸着工程と、該吸着素子に高温の加熱ガスを通気させて該吸着素子に吸着された有機物質を脱着する脱着工程とを、交互に行うことを特徴とする水処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物質を含有する水から有機物質を除去して浄化する装置に関し、特に各種工場、研究施設等から排出される有機溶剤等の有機物質を含有した産業排水の浄化に用いられる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機物質を水から除去して浄化する装置としては、活性炭等の吸着材を用いた交換式吸着装置が広く用いられている。すなわち、活性炭等の吸着材を充填した槽に有機物質を含有した水を通流させ、吸着材により水中の有機物質を効率的に除去することができるシンプルな処理装置である。
【0003】
しかしながら、交換式吸着装置は有機物質を一定時間吸着し続け、吸着材の吸着能力が飽和に達すれば、新品への交換、もしくは一度装置から吸着材を取り出して再生が必要となって連続浄化ができず、更に、水の浄化は、空気の浄化と異なり、微生物の繁殖が不可避であり、吸着材の寿命を縮めることもあって、交換および再生への労力、コスト増大が問題であった。
また、従来の浄化装置では、吸着材使用開始時と使用終了前(吸着材取替え直前)では有機物質吸着性能が変化しており、安定に浄化処理することができないという問題点も有していた。
【0004】
このような問題点を克服するため、吸着工程と脱着工程を交互に行うことで高効率かつ安定的に除去できる水処理装置が検討されている(例えば、特許文献1参照)。このような水処理装置の場合、脱着工程による再生の頻度が多いと、再生エネルギーの増大、コスト増大、装置の大型化が問題となる。よって、目的の有機物質に応じた吸着材の選定が大変重要になる。
【0005】
上記の有機物質のうち、エタノール等をはじめとする水溶性で、分子径の小さい有機物質は活性炭に対する吸着能力が非常に低いことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。その原因は、水分子と類似した物性であるためであり、著しく水分子に吸着を阻害されるためと考えられている。そのような有機物質を含む水を連続的に浄化する場合には吸着材の重量を増大せざるを得なくなり、装置の大型化、コスト増大が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−188493号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】D.M.Giusti,R.A Conway,C.T.Lawson,J.Water Pollution Control Fedration,46、947(1974)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の課題を背景になされたもので、有機物質を含有する水の連続浄化を実現し、基本的には吸着材の交換が必要なく、エタノール等をはじめとする水溶性でかつ分子径の小さい有機物質を、大量に高効率かつ安定に除去することができる処理装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の構成からなる。
【0010】
1.有機物質を含有する水を、全酸性基量0.05meq/g以下、細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積が0.02cm/g以上である活性炭素繊維を含む吸着素子に通流させて該吸着素子に有機物質を吸着させる吸着工程と、該吸着素子に高温の加熱ガスを通気させて該吸着素子に吸着された有機物質を脱着する脱着工程とを、交互に行うことを特徴とする水処理装置。
【0011】
2.上記1に記載の活性炭素繊維が、窒素ガス、または窒素と水素の混合ガス雰囲気下で、400℃〜1100℃で加熱処理させる方法で得られるものである水処理装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明による水処理装置は、水環境下において活性炭に対する吸着能の低いエタノール等をはじめとする水溶性でかつ分子径の小さい有機物質を、高い効率で連続的に除去することができ、基本的に吸着材の交換の必要が無いため、低コストで、安定に、高い能力で水中の有機物質を除去することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好ましい一形態の例である、円柱型のハニカム構造状の吸着素子を用いた場合の水処理装置。
【図2】本発明の好ましい一形態の例である、ダンパー切替方式の水処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる水処理装置は、有機物質を含有する水を吸着素子に通流させて該吸着素子に有機物質を吸着させる吸着工程設備と、該吸着素子に高温の空気や水蒸気等の加熱ガスを通流させて該吸着素子に吸着された有機物質を脱着する脱着工程設備を備え、かかる工程を交互に行う水処理装置であることが好ましい。かかる構造を採用することにより、処理を連続的に行うことができるからである。
【0015】
より好ましい装置の構造としては、吸着素子が幾つかに分割されており、それらの吸着工程と脱着工程をダンパー等にて切替操作を行い、吸着と脱着を連続的に行う水処理装置、または、吸着素子が回転することができ、吸着工程で有機物質を吸着した吸着素子の部位が、吸着素子の回転により、脱着工程へ移動する構造を有する水処理装置である。
【0016】
本発明の水処理装置は、有機物質吸着工程後に吸着素子表面に残存する水滴を、ガスの通流により除去するパージ工程を有することが好ましい。水滴を気流で除去することにより、脱着工程において加熱による有機物質の脱着が容易になるからである。除去した水滴は、戻りラインより装置入口の有機物質を含有する原水に戻すことが好ましい。かかる方法によれば、工程数を省略でき、効率的だからである。
【0017】
本発明の吸着素子は回転し、パージ工程の後工程で脱着領域にて加熱ガスにより吸着素子を加熱することで吸着した有機物質を脱着して、再度吸着が行える状態に再生される脱着工程を有することが好ましい。加熱により有機物質を脱着した後、連続的に吸着工程に移動することができるからである。脱着工程により発生した有機物質を含有したガスは、直接燃焼装置や触媒燃焼装置、蓄熱式燃焼装置等の燃焼装置や活性炭素繊維を使用した溶剤回収装置等の一般的に用いられるガス処理装置にて処理することができる。
【0018】
本発明の吸着素子としては、粒状、粉体状、ハニカム状、繊維状の活性炭やゼオライト等があげられるが、本発明に用いる吸着素子は、特に性能面から活性炭素繊維である。つまり、活性炭素繊維は表面にミクロ孔を有し、繊維状構造であるため、水との接触効率が高く、特に水中の有機物質の吸着速度が速くなり、他の構造に比べて極めて高い除去効率を発現できるからである。
【0019】
活性炭素繊維としては、フェノール系、ピッチ系、PAN系などの原料は特に限定しないが、表面に存在するカルボキシル基や水酸基といった酸性官能基量の指標となる全酸性基量が0.05meq/g以下のものである。表面酸性基が存在すると、表面酸性基が選択的に水分子と結合し、クラスターを形成することで細孔を塞ぐために、水中での有機物の吸着能が低下すると考えられており、全酸性基量が0.05meq/gを超えると、エタノールをはじめとする水溶性で、分子径の小さい物質の吸着能力が低下するためである。
【0020】
本発明で用いる活性炭素繊維は、細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積が0.02cm/g以上であることが好ましい。細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積が0.02cm/g未満であると、分子径の小さい物質の吸着能力が低下するためである。細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積の上限は特に限定されないが、現状製造が可能と考えられる上限である0.60cm/g以下が上限である。
【0021】
また、活性炭素繊維は、BET比表面積が800〜1300m/g、全細孔容積が0.4〜0.9cm/g、平均細孔経が10〜15Åのものが好ましい。BET比表面積が800m/g未満、全細孔容積が0.4cm/g未満、平均細孔径が10Å未満では、有機物質の吸着量が低くなり、BET比表面積が1300m/gを超え、全細孔容積が0.9cm/gを超え、平均細孔径が15Åを超えると、細孔径が大きくなるため、分子径の小さい有機物質の吸着能力が低下するだけでなく、強度が弱くなり、さらには素材のコストが高くなり経済的では無くなるからである。
【0022】
本発明で用いる活性炭素繊維の製造方法は、炭化、賦活後の活性炭素繊維を焼成炉に移して密閉した後、真空ポンプ等を用いて炉内を減圧状態にした後、窒素または窒素と水素の混合ガスを送り込むことで窒素または窒素と水素の混合ガス雰囲気にし、400〜1100℃で加熱処理された方法とする。不活性ガスまたは水素ガス雰囲気下で焼成することにより活性炭表面の酸性官能基を除去されるが、400℃未満の焼成温度では十分な全酸性基量の低減は困難であり、一方1100℃を越える焼成温度ではミクロ孔の消失から有機物の吸着量が低くなるだけでなく、強度の低下、重量の減少、また素材のコストが高くなり経済的ではなくなるからである。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。実施例中に示した特性は以下の方法で測定した。
【0024】
(全酸性基量)
活性炭素繊維の表面酸性基量は、Boehmの滴定法により測定した。活性炭素繊維試料約2gに対し0.01mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を60ml加え、25℃で2時間振とうさせた。活性炭素繊維試料と溶液をろ別し、ろ液を25ml採取した。指示薬としてフェノールフタレインを数滴加え、残留塩基性成分を0.01mol/lの塩酸で滴定し、以下の式で全酸性基量を算出した。
全酸性基量(meq/g)=(D×60×K)/(W×25)
D:吸着塩基性量(ml)
K:塩酸濃度(mol/l)
W:活性炭素繊維試料重量(g)
【0025】
(BET比表面積)
BET比表面積は、液体窒素の沸点(−195.8℃)雰囲気下、相対圧力0.0〜0.15の範囲で上昇させたときの試料への窒素吸着量を数点測定し、BETプロットにより試料単位質量あたりの表面積(m/g)を求めた。
【0026】
(細孔容積)
細孔容積は、相対圧0.95における窒素ガスの気体吸着法により測定した。
【0027】
(平均細孔径)
平均細孔径は、以下の式で求めた。
dp=40000Vp/S(ただし、dp:平均細孔径(Å))
Vp:細孔容積(cc/g)
S:BET比表面積(m/g)
【0028】
(平衡吸着量)
平衡吸着量(q*)は、50%破過時間を測定し、以下の式で求めた。
q*(g/g)=溶剤供給量×50%破過時間/吸着材重量
【0029】
(吸着帯厚み)
吸着帯厚み(10%Za)は、10%破過する破過時間を測定し、以下の式で求めた。
10%Za=(50%破過時間−10%破過時間)×2/(50%破過時間)
【0030】
(有機物質除去効果)
500mg/lの濃度のエタノールを含有する原水を温度15℃の水を空間速度(SV)5で流し、10時間後と100時間運転後の各水処理装置出口のエタノール濃度を測定した。
また、エタノール、酢酸、酢酸エチルの混合溶剤の含有する原水を温度15℃の水を空間速度(SV)2で流し、10時間後と100時間運転後の各水処理装置出口のBODを測定した。
【0031】
(溶剤濃度評価)
入口・出口の水濃度をガスクロマトグラフ法により分析し測定した。
【0032】
(BOD測定方法)
各排水中のBOD測定に関してはJIS K 0400−21−10に準じた。
【0033】
(全酸性基量の低減方法)
活性炭素繊維を焼成炉に移して密閉した後、真空ポンプ等を用いて炉内を0.3Torr以下に減圧した後、窒素または窒素と水素の混合ガスを送り込み、300℃/hrで所定温度まで昇温し、3hr加熱処理した。
【0034】
[実施例1]
全酸性基量が0.1meq/g、細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積が0.07cm/g、平均細孔径が13Å、BET比表面積が1100m/g、全細孔容積が0.50cm/gの活性炭素繊維を、窒素ガス雰囲気下で1000℃で加熱処理する方法で全酸性基量のみを0.01meq/gまで低減させた活性炭素繊維を作製した。吸着材としてこの活性炭素繊維を使用し、40mmφで、厚み150mmの重量20gの吸着素子を2個作成し、図2のダンパー切替方式の水処理装置に設置して500mg/lのエタノールを含む原水を導入した。その際の出口濃度の経時変化を確認した結果、表1に示すように吸着帯厚み(Za10%)が22mmであり、平衡吸着量(q*)が0.025g/gと良好な吸着速度と破過時間であった。
【0035】
次に、水処理装置の脱着工程における加熱ガスとして130℃の空気を使用し、脱着の風速を50cm/secとした。吸着工程における吸着時間は30min、脱着工程における脱着時間は30minとして切替サイクルとした。その際の出口のエタノール濃度は5mg/lであり、表1に示すように除去率は99%であった。
【0036】
[実施例2]
全酸性基量が0.1meq/g、細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積が0.07cm/g、平均細孔径が13Å、BET比表面積が1100m/g、全細孔容積が0.50cm/gの活性炭素繊維を、窒素ガス雰囲気下で500℃で加熱処理する方法で全酸性基量のみを0.04meq/gまで低減させた活性炭素繊維を作製した。吸着材としてこの活性炭素繊維を使用し、40mmφで、厚み150mmの重量20gの吸着素子を2個作成し、図2のダンパー切替方式の水処理装置に設置して500mg/lのエタノールを含む原水を導入した。その際の出口濃度の経時変化を確認した結果、表1に示すように吸着帯厚み(Za10%)が28mmであり、平衡吸着量(q*)が0.022g/gと良好な吸着速度と破過時間であった。
【0037】
次に、水処理装置の脱着工程における加熱ガスとして130℃の空気を使用し、脱着の風速を50cm/secとした。吸着工程における吸着時間は30min、脱着工程における脱着時間は30minとして切替サイクルとした。その際の出口のエタノール濃度は25mg/lであり、表1に示すように除去率は95%であった。
【0038】
[実施例3]
全酸性基量が0.1meq/g、細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積が0.07cm/g、平均細孔径が13Å、BET比表面積が1100m/g、全細孔容積が0.50cm/gの活性炭素繊維を、窒素ガス雰囲気下で1000℃で加熱処理する方法で全酸性基量のみを0.01meq/gまで低減させた活性炭素繊維を作製した。吸着材としてこの活性炭素繊維を使用し、40mmφで、厚み150mmの重量20gの吸着素子を2個作成し、図2のダンパー切替方式の水処理装置に設置して600mg/lの酢酸を含む原水を導入した。
【0039】
次に、水処理装置の脱着工程における加熱ガスとして130℃の空気を使用し、脱着の風速を50cm/secとした。吸着工程における吸着時間は30min、脱着工程における脱着時間は30minとして切替サイクルとした。その際の出口の酢酸濃度は5mg/lであり、表1に示すように除去率は99%であった。
【0040】
[比較例1]
吸着材として全酸性基量が0.1meq/g、細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積が0.07cm/g、平均細孔径が13Å、BET比表面積が1100m/g、全細孔容積0.50cm/gの活性炭素繊維を使用し、40mmφで、厚み150mmの重量20gの吸着素子を2個作成し、図2のダンパー切替方式の水処理装置に設置して500mg/lのエタノールを含む原水を導入した。その際の出口濃度の経時変化を確認した結果、表1に示すように吸着帯厚み(Za10%)が60mmであり、平衡吸着量(q*)が0.020g/gと実施例に比べて吸着速度が遅く、破過時間が短くなる結果となった。
【0041】
次に、水処理装置の脱着工程における加熱ガスとして130℃の空気を使用し、脱着の風速を50cm/secとした。吸着工程における吸着時間は30min、脱着工程における脱着時間は30minとして切替サイクルとした。その際の出口のエタノール濃度は80mg/lであり、表1に示すように除去率は84%と実施例に比べて初期除去効率が低い結果となった。
【0042】
[比較例2]
吸着材として全酸性基量が0.01meq/g、細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積が0.01cm/g、平均細孔径が14Å、BET比表面積が1700m/g、全細孔容積が0.65cm/gの活性炭素繊維を使用し、40mmφで、厚み150mmの重量20gの吸着素子を2個作成し、図2のダンパー切替方式の水処理装置に設置して500mg/lのエタノールを含む原水を導入した。その際の出口濃度の経時変化を確認した結果、表1に示すように吸着帯厚み(Za10%)が43mmであり、平衡吸着量(q*)が0.019g/gと実施例に比べて吸着速度が遅く、破過時間が短くなる結果となった。
【0043】
次に、水処理装置の脱着工程における加熱ガスとして130℃の空気を使用し、脱着の風速を50cm/secとした。吸着工程における吸着時間は30min、脱着工程における脱着時間は30minとして切替サイクルとした。その際の出口のエタノール濃度は120mg/lであり、表1に示すように除去率は76%と実施例に比べて初期除去効率が低い結果となった。
【0044】
[比較例3]
全酸性基量が0.1meq/g、細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積が0.07cm/g、平均細孔径が13Å、BET比表面積が1100m/g、全細孔容積が0.50cm/gの活性炭素繊維を、窒素ガス雰囲気下で1500℃で加熱処理する方法で全酸性基量を低減させた活性炭素繊維を作製した。得られた活性炭素繊維の全酸性基量、細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積、平均細孔径、BET比表面積、全細孔容積を測定したところ、全酸性基量が0.01meq/gに低減されたが、細孔径が6Å以下細孔の細孔容積が0.01cm/g、平均細孔径が18Å、BET比表面積が570m/g、全細孔容積が0.25cm/gであった。
【0045】
吸着材として得られた活性炭素繊維を使用し、使用した40mmφで、厚み150mmの重量20gの吸着素子を2個作成し、図2のダンパー切替方式の水処理装置に設置して500mg/lのエタノールを含む原水を導入した。その際の出口濃度の経時変化を確認した結果、表1に示すように吸着帯厚み(Za10%)が169mmであり、平衡吸着量(q*)が0.002g/gと実施例に比べて著しく吸着速度が遅く、破過時間が短くなる結果となった。
【0046】
次に、水処理装置の脱着工程における加熱ガスとして130℃の空気を使用し、脱着の風速を50cm/secとした。吸着工程における吸着時間は30min、脱着工程における脱着時間は30minとして切替サイクルとした。その際の出口のエタノール濃度は475mg/lであり、表1に示すように除去率は5%と実施例に比べて初期除去効率が非常に低い結果となった。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の水処理装置は、一般的に活性炭による吸着能の低いエタノールや酢酸といった高い水溶性でかつ分子径の小さい有害有機物質を含む水の連続浄化を実現し、基本的に吸着材の交換が必要なく、多量の上記有害有機物質を高効率かつ安定に除去することができる処理装置であるため、設備増大を必要とせずに、吸着材交換作業を省略でき、コスト低減、有害物質安定除去でき、特に研究所や工場等の幅広い分野に利用することができ、産業界に寄与することが大である。
【符号の説明】
【0049】
11 原水導入ライン
12 吸着素子
13 吸着領域
14 パージ領域
15 戻りライン
16 脱着領域
21 原水
22 処理出口水
23 脱着空気
24 濃縮ガス
25 吸着素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物質を含有する水を、全酸性基量0.05meq/g以下、細孔径が6Å以下の細孔の細孔容積が0.02cm/g以上である活性炭素繊維を含む吸着素子に通流させて該吸着素子に有機物質を吸着させる吸着工程と、該吸着素子に高温の加熱ガスを通気させて該吸着素子に吸着された有機物質を脱着する脱着工程とを、交互に行うことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の活性炭素繊維が、窒素ガス、または窒素と水素の混合ガス雰囲気下で、400℃〜1100℃で加熱処理させる方法で得られるものである水処理装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−11163(P2011−11163A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158665(P2009−158665)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】