説明

水分検知センサ

【課題】 製造に手間がかからないこと。
【解決手段】 この水分検知センサ100は、ハンドル9を有するベース体1の先端に絶縁体からなる長尺のセンサ部位12を有し、このセンサ部位12は、プラス接点となる導電コイル4とマイナス接点となる導電コイル5を非接触かつ所定間隔をもって同軸上に噛み合わせ配置し、且つ、各導電コイル4,5がベース体1の厚さ方向に湾曲部分を有するものである。導電コイル4,5を重ねることで実質的にセンサ部位12にプラスの接点とマイナスの接点を簡単に多数形成できるため、製造が簡単である。また、センサ部位12がベース体1の厚さ方向に湾曲部分を有するので水分検知センサ100の角度を変えても検出精度が低下することはない。更に、センサ部位12を長手方向に円弧状にすることで、検出対象物への適合性が向上し、検出精度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の座面等に浸み込んだ水分を簡単に検知する水分検知センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から水分検知センサとして、特許文献1に記載されているような技術が知られている。当該特許文献1に係る接触式水分検知器は、装置本体の一端を三角形とし、その底辺に対応する面に4本のプラス接点とマイナス接点を交互に配置した構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−222601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の接触式水分検知器では、プラス接点とマイナス接点とを個別に前記底辺に対応する面に設ける必要があり、製造に手間がかかるという問題点があった。また、上記特許文献1では各4本のプラス接点とマイナス接点とを設けているが、この程度の本数では水分の検知に不十分であるところ、当該プラス接点とマイナス接点との数を増やすことになれば、より製造に手間がかかるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水分検知センサは、ハンドルを有するベース体の先端に絶縁体からなる長尺のセンサ部位を有し、このセンサ部位は、コイル状または櫛歯状の第一の接点と第二の接点とを非接触かつ所定間隔をもって同軸上に噛み合わせ配置し、且つ、各接点がベース体の厚さ方向に湾曲部分を有するものであることを特徴とする。
【0006】
次に、本発明の水分検知センサは、上記発明において、前記センサ部位は、長手方向に円弧状となることを特徴とする。
【0007】
次に、本発明の水分検知センサは、上記発明において、更に、前記接点は、前記センサ部位に設けた穴または溝に対して位置決めされていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる水分検知センサを示す構成図である。
【図2】図1に示した水分検知センサの導電コイルを示す平面図である。
【図3】導電コイルの正面図である。
【図4】この発明の水分検知センサの使用態様の一例を示す説明図である。
【図5】この発明の水分検知センサの使用態様の一例を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る水分検知センサを示す平面図である。
【図7】この発明の実施の形態3にかかる水分検知センサを示す平面図である。
【図8】この発明の実施の形態4にかかる水分検知センサを示す平面図である。
【図9】ベース体の先端部分の径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1にかかる水分検知センサを示す構成図である。図2は、図1に示した水分検知センサの導電コイルを示す平面図である。図3は、当該導電コイルの正面図である。この水分検知センサ100は、絶縁体からなる扇形の板状体で構成したベース体1と、このベース体1の先端側の円弧状部2に複数設けた取付孔3と、この取付孔3に通すことで取り付けた第一の接点となる第一の導電コイル4及び第二の接点となる第二の導電コイル5と、ベース体1上に設けられ且つ前記導電コイル4,5が接続した電気回路6と、電気回路6に電力を供給する二次電池からなる電源7と、ベース体1に取り付けた絶縁体のカバー8(図中一点鎖線で示す)と、当該ベース体1の扇形の根元に設けたハンドル9とを有する。
【0010】
ベース体1は樹脂製であり、全体として所定の剛性を確保できるだけの厚さを有する。前記導電コイル4,5は、図2及び図3に示すように、所定巻数を有しその一端部は直線部10として延出し、他端部は開放端16となる。第一の導電コイル4は、ベース体1の端から奇数番目の取付孔3に回転させられながら順に通される。また直線部10はベース体1の径方向に沿って配置される。同様に、第二の導電コイル5は、ベース体1の端から偶数番目の取付孔3に回転させられながら順に通される。また、前記直線状に延出された直線部10は同様にベース対1の径方向に沿って配置される。この状態で、ベース体1の先端側の円弧状部2に対して第一の導電コイル4と第二の導電コイル5とが非接触で略同軸上に所定間隔をもって配置され、全体として長尺のセンサ部位12を形成する。
【0011】
第一の導電コイル4がプラス接点であり、第二の導電コイル5がマイナス接点であれば、上記配置によってプラス接点とマイナス接点が交互に配置されることになる。換言すれば、第一の導電コイル4と第二の導電コイル5とは互いに噛み合うように重ねられた結果、その軸方向に第一の接点と第二の接点とを交互に生じさせる。また、導電コイル4,5を用いているので、外側はベース体1の厚さ方向に湾曲部分を持つことになる。
【0012】
ベース体1には前記直線部10を保持すると共に第一の導電コイル4と第二の導電コイル5とが短絡しないようにする遮蔽壁11が形成される。具体的には、第一の導電コイルの直線部10は第一の遮蔽壁11、12に沿って固定され、第二の導電コイル5の直線部10は前記第一の遮蔽壁12に平行に形成した第二の遮蔽壁13に固定される。よって、第一の導電コイル4と第二の導電コイル5とは当該遮蔽壁11〜13により短絡することがなく、扇形の径方向の辺に沿って固定される。
【0013】
第一の導電コイル4及び第二の導電コイル5は、電気回路6に接続されている。この電気回路6は、第一の導電コイル4と第二の導電コイル5との間の抵抗値を検出する検出部14と、検出部14の検出結果をユーザに対して報知する報知部15とからなる。検出部14は、第一の導電コイル4と第二の導電コイル5との間の抵抗値を監視し、両導電コイル4,5の間の抵抗値が水分に起因して一定値以下になると報知部15に信号を送る。報知部15は、例えば発光ダイオードやブザーであり、ユーザに対して当該所定の抵抗値以下となったことを知らせる。ユーザは、これをもって座面等の検知対象物が濡れているか否かを判断する。
【0014】
図4及び図5は、この発明の水分検知センサの使用態様の一例を示す説明図である。ユーザがハンドル9を手に持ってセンサ部位12を車両の座面S等に軽く押し当て、前後左右に撫でるように移動させる。座面Sに水等がこぼれていると、座面Sの水分により第一の導電コイル4と第二の導電コイル5との間の抵抗値が低くなる。検出部14は、第一の導電コイル4と第二の導電コイル5との間の抵抗値が所定の抵抗値以下になると水等がこぼれていると判断し、報知部15に信号を送る。報知部15は、この信号に基づいてブザーを鳴らし又は発光ダイオードを点灯させる。
【0015】
ここで、座面Sの全ての面の水分を検出する場合、座面Sを万遍なく撫でるようにする必要があり、また、座面Sと背もたれBとの間や座面Sと壁(図示省略)との間に対して挿し込むようにして作業を行う必要がある。この水分検知センサ100は、導電コイル4、5の先端が湾曲しているので、図5に示すように、座面Sに対する角度を変えても当該導電コイル4,5の接地性が変わらない。また、座面S内部のクッション材等により、座面Sには緩やかな凹凸があるところ、水分検知センサ100のセンサ部位12は長手方向に円弧状となっているので、当該座面Sの凹面に適合しやすい。このため、検出精度を落とすことなく座面Sの全ての面を万遍なく確実に検査できる。
【0016】
以上、この水分検知センサ100は、導電コイル4,5を重ねることで実質的にセンサ部位12にプラスの接点とマイナスの接点を簡単に多数形成できる。このため、製造が簡単である。また、上記のようにセンサ部位12がベース体1の厚さ方向に湾曲部分を有するので水分検知センサ100の角度を変えても検出精度が低下することはない。更に、センサ部位12を長手方向に円弧状にすることで、検出対象物への適合性が向上し、検出精度を高めることができる。
【0017】
(実施の形態2)
図6は、この発明の実施の形態2に係る水分検知センサを示す平面図である。この水分検知センサ200は、上記実施の形態1の水分検知センサ100と略同じ構成であるが、取付孔3にスルーホール201を形成し、前記導電コイル4,5の直線部10ではなく、ベース板1に設けたプリント配線202,203を介して電気回路6に接続する点が異なる。その他の構成は実施の形態1と同様であるからその説明を省略する。ベース体1の左半分には、ベース体1の端から奇数番目の取付孔3に電気的に接合したプリント配線202が形成され、右半分にはベース体1の端から偶数番目の取付孔3に電気的に接合したプリント配線203が形成される。
【0018】
第一及び第二の導電コイル4,5は、その両端が開放端となる。導電コイル4,5は取付孔3のスルーホール201と接触して当該導電コイル4,5とプリント配線202,203とが電気的に接続される。各取付孔3にスルーホール201を形成することで、導電コイル4,5とスルーホール201との接触不良の発生が抑制される。複数の導電コイル4,5とスルーホール201とのいずれかが接触している可能性が高いためである。このようにすれば、導電コイル4,5は単純なコイル形状でよいし、ベース体1への配線をプリント配線202,203とスルーホール201で行うことができるので、製造し易い。
【0019】
(実施の形態3)
図7は、この発明の実施の形態3にかかる水分検知センサを示す平面図である。この水分検知センサ300は、実施の形態1の水分検知センサ100のセンサ部位12の構造が異なる。それ以外の構成は実施の形態1の水分検知センサ100と同じであるから説明を省略する。この水分検知センサ300のセンサ部位12は、絶縁性が高く且つ硬度が比較的高い樹脂(例えばシリコンゴム)の円柱部材301をベース体1の一部とする。この円柱部材301には、導電コイル4,5を巻きつけた際にガイドとなる溝302が形成してある。また、これらの第一の導電コイル4の溝302と第二の導電コイル5の溝302とは平行かつ螺旋状に形成される。
【0020】
ベース体1は扇形であり且つその径方向に両端縁から延出した支持部303を有する。前記導電コイル4,5は、円柱部材301に対して巻きつけられて溝302に固定される。当該円柱部材301は軸方向に湾曲され、その両端がベース体1の前記支持部303に固定される。これにより、センサ部位12が円弧状に形成される。なお、各導電コイル4,5の直線部10はベース体1の遮蔽壁11〜13に沿って配置される。このようにすれば、円柱部材301の弾力性をもって座面Sの凹凸に柔軟に対応でき、円柱部材301の変形により座面Sに対する接触面積が大きくなるので、より精度の高い検出が可能になる。
【0021】
(実施の形態4)
図8は、この発明の実施の形態4にかかる水分検知センサを示す平面図である。図9は、ベース体の先端部分の径方向断面図である。この水分検知センサ400は、第一の接点401と第二の接点402とが櫛歯状となり、櫛歯に相当する接点の先端がベース体1の厚さ方向に湾曲している点に特徴がある。それ以外の構成は実施の形態1の水分検知センサ100と同じであるから説明を省略する。
【0022】
ベース体1の円弧状部2の端縁には断面が略円形のリブが形成され且つ厚さ方向に複数の溝が所定間隔で設けられている。第一の接点401の櫛歯はその先端が半円状に湾曲成形され、当該櫛歯の湾曲部分の内側がベース体1の一面側(図8の正面側)から溝に嵌るようになる。この第一の接点が嵌る溝はベース体1の端から奇数番目の溝である。一方、第二の接点402の櫛歯は同じくその先端が半円状に湾曲成形され、当該櫛歯の湾曲部分の内側がベース体1の反対面側(図8の裏面側)から溝に嵌るようになる。この第二の接点402が嵌る溝はベース体1の端から偶数番目の溝である。
【0023】
第一の接点401がプラス接点であり、第二の接点402がマイナス接点であれば、上記配置によってプラス接点とマイナス接点が交互に配置されることになる。換言すれば、第一の接点401と第二の接点402とは互いに噛み合うように重ねられた結果、その軸方向に第一の接点401と第二の接点402とを交互に生じさせる。また、接点401,402は湾曲成形されているので、そのセンサ部位12はベース体1の厚さ方向に湾曲部分を持つことになる。
【0024】
各櫛歯形状の接点401,402の一端部には直線部404,405が設けられる。第一の接点401の直線部404は、ベース体1の一面側に沿って配置され、電気回路6に接続される。第二の接点402の直線部405はベース体1の反対面側に配置され、ベース体1の途中に設けた穴406を通って一面側に至り、電気回路6に接続される。
【0025】
この水分検知センサ400は、櫛歯状の接点401,402を重ねることで実質的にセンサ部位12にプラスの接点とマイナスの接点を簡単に多数形成できる。このため、製造が簡単である。また、上記のようにセンサ部位12がベース本体1の厚さ方向に湾曲部分を有するので水分検知センサ400の角度を変えても検出精度が低下することはない。更に、センサ部位12を長手方向に円弧状とすることで、検出対象への適合性が向上し、検出精度を高めることができる。
【0026】
なお、上記実施の形態1乃至3では、断面が円形の電線からなる導電コイル4,5を例に挙げたが、2本の平行に設けたプリント配線を有する長尺のフレキシブル基板を円筒部材に対してらせん状に巻きつけ、実質的に実施の形態1乃至3のセンサ部位と同一のものを構成することもできる。また、必ずしもセンサ部位は円弧状でなくても良い。
【符号の説明】
【0027】
100 水分検知センサ
1 ベース体
2 円弧状部
3 取付孔
4,5 導電コイル
6 電気回路
7 電源
8 カバー
9 ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルを有するベース体の先端に絶縁体からなる長尺のセンサ部位を有し、
このセンサ部位は、コイル状または櫛歯状の第一の接点と第二の接点とを非接触かつ所定間隔をもって同軸上に噛み合わせ配置し、且つ、各接点がベース体の厚さ方向に湾曲部分を有するものであることを特徴とする水分検知センサ。
【請求項2】
前記センサ部位は、長手方向に円弧状となることを特徴とする請求項1に記載の水分検知センサ。
【請求項3】
更に、前記接点は、前記センサ部位に設けた穴または溝に対して位置決めされていることを特徴とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の水分検知センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−145231(P2011−145231A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7611(P2010−7611)
【出願日】平成22年1月16日(2010.1.16)
【出願人】(507359568)株式会社三陽プレシジョン (2)
【Fターム(参考)】