説明

水分率検出装置および生ごみ処理装置

【課題】生ごみと菌床との混合物の水分率を非接触で正確に測定することができる水分率検出装置およびこれを備えた生ごみ処理装置を提供する。
【解決手段】生ごみ処理槽4内に投入された生ごみ2と菌床31との混合物を撮像する撮像装置35と、この撮像装置35によって撮像された画像データの輝度値から得られた代表値より前記混合物の水分率を算出する水分率算出手段36とで水分率検出装置34を構成する。制御部8は、水分率検出装置34からの検出信号に基づいて生ごみ処理槽4内の空気を装置外部に排出する排気ファンを制御し、混合物の水分率が最適水分率の範囲内になるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみの水分率を検出する水分率検出装置およびこれを備えた生ごみ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭、食堂、料理屋などから出る生ごみを処理する生ごみ処理装置は、その処理方式によって大別すると、加熱乾燥させる方式、高温加熱して炭化させる方式、焼却する方式、微生物の代謝能力を利用して分解処理(発酵)する方式、メタン発酵させて分解処理する方式等の種々の方式が知られている(例えば、特許文献1〜4等参照)。
【特許文献1】特開平8−215663号公報(加熱乾燥方式)
【特許文献2】特開平9−85214号公報 (加熱乾燥方式)
【特許文献3】特開平4−4084号公報 (微生物方式)
【特許文献4】特開平8−173943号公報(微生物方式)
【0003】
特に、微生物の代謝能力を利用して生ごみを処理する生ごみ処理装置は、微生物を発育させた菌床を用い、この菌床と生ごみとを撹拌、混合し、微生物の好気発酵によって生ごみ中の有機物を水分と炭酸ガスに分解することにより生ごみを減量化する装置である。因みに、生ごみに含まれている水分は70%程度であり、この水分の蒸発と微生物の好気発酵により生ごみから無機質成分を除く97%程度の水と有機物が減量される。
【0004】
このような生ごみ処理装置において、微生物の活性を増大させ好気発酵を促進させるための環境条件としては、以下の条件が要求される。
(1)生ごみと菌床との混合物の適正な温度
(2)生ごみと菌床との混合物の適正な水分率(または水分量)
(3)生ごみと菌床との混合物への適正な酸素供給
【0005】
上記した3つの条件は相互に密接に関係しており、いずれか1つでも不適正であると微生物の活動が低下して生ごみの処理効率が低下する。そこで、通常温度センサによって生ごみと菌床との混合物の温度を測定したり水分率センサによって生ごみと菌床との混合物の水分率(または水分量)を測定し、その検出信号に基づいてヒーターや排気ファンを制御することにより、混合物の温度、水分率および酸素量を微生物が最も活性化し易い値となるように制御している。なお、微生物が活性化し生ごみの分解を促進するために要求される環境条件は、生ごみと菌床との混合物の温度が40〜60℃、水分率が20〜50%(重量水分率)、酸素濃度が10%程度以上とされ、さらには微アルカリ性(pH6.0〜8.0)であることが要求される。
【0006】
水分率(水分)センサとしては、加熱型、誘電型、電気抵抗型、電磁波型、熱伝導型等の各種のセンサが提案され実用化されている(例えば、特許文献5〜10参照)。
【特許文献5】特開平8−122285号公報
【特許文献6】特開2001−343343号公報
【特許文献7】特開2002−195968号公報
【特許文献8】特開平8−173943号公報
【特許文献9】特開2001−183320号公報
【特許文献10】特開平9−85214号公報
【0007】
前記特許文献5〜9に開示された水分率センサの測定原理は、いずれも測定対象物に含まれる水分量による熱伝導率と熱容量の違いを利用して水分量を測定するものである。すなわち、測定対象物は水分率が高いと熱容量が大きく熱の伝わりが遅くなるので単位時間当たりの温度上昇は小さくなる。一方、水分率が低いと熱容量が小さく熱の伝わりが速くなるので単位時間当たりの温度上昇は大きくなる。したがって、水分率と温度上昇速度との間には相関関係があり、予め水分率が判明している測定対象物の水分率と温度上昇速度との相関関係を測定しておき、この相関関係と実際の水分率が不明な測定対象物を加熱して測定したときの温度上昇速度とを比較すると、実際の測定対象物の水分率が求められる。また、水分率が判れば実際の水分量も知ることができる。図11に水分率と温度上昇率の相関関係を示す。
【0008】
前記特許文献10に開示された水分率センサは、投入された生ごみと微生物担体(菌床)との混合物の重量を検出する重量センサと、混合物を加熱する加熱手段と、混合物の温度を検出する温度センサとを備え、前記重量センサと温度センサとが検出した検出量をそれぞれ予め設定された計算式に基づいて演算処理することにより単位体積当たりの水分量を求めるようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献5〜9に開示された従来の水分率センサは、生ごみに直接接触した状態で使用するため、水分率センサを撹拌羽根と接触しないように撹拌羽根から離して配設しなければならず、センサ周りの生ごみが撹拌羽根による撹拌対象から外れてしまう。この結果、水分率センサに付着した生ごみが固化するおそれがあり、正確な水分量の計測ができなくなるという問題があった。
【0010】
また、生ごみの処理中に発生した水分が生ごみの全体にゆきわたり、略一定の水分率になるまでには時間がかかるため、水分率センサの設置箇所によっては生ごみの投入後数時間たった後でないと正確に測定することができず、水分の変化に対して迅速に対応することができないという問題もあった。
【0011】
さらに、生ごみ中に金属等の異物が混入している場合、この異物が水分率センサに接触すると、正確に測定することができなくなるなど多くの問題があった。
【0012】
特許文献10に開示された水分率センサは、生ごみと微生物担体との混合物の重量と温度を検出する必要があるため、センサの数が増加し信号処理回路が複雑化するという問題があった。また、混合物の温度と水分との相関関係に加えて、混合物の重量と水分量との相関関係も予め求めて計算式を設定する必要がある。また、特許文献10の発明では家庭用生ごみ処理機で生ごみが所定の期間に一定量連続投入されているという条件のもと各期間での計算式が使われている。このため、不規則な投入には適していないと考えられる。
【0013】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、生ごみと菌床との混合物の水分率を非接触状態である広い範囲にわたり水分率を計測するため、従来のように処理槽内の投入口から離れた一点で計測する場合に比べて、生ごみの付着や異物の接触による計測精度の低下や、略一定の水分率になるまでの計測精度の低下が発生しないような水分率検出装置およびこれを備えた生ごみ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために第1の発明に係る水分率検出装置は、生ごみ処理槽内に投入された生ごみと菌床との混合物の水分率を検出する水分率検出装置において、前記混合物を撮像する撮像装置と、前記撮像装置によって撮像された画像データの輝度値から得られた代表値から前記混合物の水分率を算出する水分率算出手段とを備えたものである。
【0015】
第2の発明に係る生ごみ処理装置は、前記第1の発明に記載の水分率検出装置を備え、その検出信号に基づいて生ごみ処理槽の排気手段を制御するものである。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明においては、撮像装置が生ごみと菌床との混合物を撮像し、その画像データの輝度値を算出し、この輝度値から得られた代表値と、予め測定した水分率が判明している混合物の画像データの輝度値とを比較することにより、実際の混合物の水分率を非接触状態で求めることができる。「輝度値から得られた代表値」としては、輝度値の「平均値」や「最大値」が考えられる。
また、混合物を広い範囲にわたって撮像することができるので、特定のある一箇所の水分率を計測する従来タイプの水分率センサに比べて全体の水分の状態を正確に把握することができ、測定精度を向上させることができる。
【0017】
第2の発明においては、生ごみの処理中に水分率検出装置によって混合物の水分率を検出し、その検出信号に基づいて生ごみ処理槽の排気手段を制御することで、微生物の生息、活性化に適した環境条件とし生ごみの処理効率を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る水分率検出装置を備えた生ごみ処理装置の一実施の形態を示す外観斜視図、図2は同装置の側断面図、図3は同装置の内部を示す平面図、図4は微生物の発酵期間と温度の関係を示す図、図5は撮像装置によって撮像した水分率(重量水分率)が20%の混合物の濃淡画像を示す図、図6は撮像装置によって撮像した水分率(重量水分率)が40%の混合物の濃淡画像を示す図、図7は撮像装置によって撮像した水分率(重量水分率)が60%の混合物の濃淡画像を示す図、図8は混合物の濃淡画像から求めた輝度分布を示す図、図9は水分率検出のフローチャート、図10は輝度値の代表値と水分率の関係を示す図である。
【0019】
図1〜図3において、全体を符号1で示す生ごみ処理装置は、微生物の代謝能力を利用して生ごみ2中の有機物を水と炭酸ガスに発酵分解することにより、生ごみ2を減量化させる生ごみ処理装置で、床面上に設置されたキャスター付きの装置本体3を備えている。
【0020】
前記装置本体3は、外ケース3Aと内ケース3Bとによって横長箱型に形成され、さらに内ケース3Bの内部には生ごみ処理槽4が組み込まれている。外ケース3Aは、上板3A-1の中央に形成された生ごみ投入口5と、左側板に形成された吸気口6を有し、また上板3A-1の突出部表面には操作パネル7が設けられ、さらにその内部には装置全体を制御する制御部8が組み込まれている。前記投入口5は、開閉自在な投入口蓋9によって通常気密状態に閉塞されており、内部の臭いが外部に拡散しないようにしている。
【0021】
前記内ケース3Bは、水10を収納しており、この水10を生ごみ2の処理時にヒーター12によって加熱し所定の温度(例えば、40〜50℃)に保持することにより温水ジャケットとして用いられる。内ケース3Bの下部には、温水10の温度を検出する温度センサ13が取付けられている。なお、外ケース3Aと内ケース3Bとの間の空間は、グラスウール等の断熱材の充填によって断熱空間を形成している。
【0022】
前記生ごみ処理槽4は、前後方向と平行な断面形状が上方に開放するU字状を呈し、前記内ケース3B内に下部を水10に浸漬させた状態で収納されており、内部が前記投入口5および吸気口6を介して装置外部に連通している。また、生ごみ処理槽4は、後壁上部に開設された排気口14を有し、この排気口14は排気ダクト15を介して装置外部に連通している。
【0023】
前記排気ダクト15は、前記外ケース3Aの背面板と内ケース3Bの背面板との間に形成した断熱空間内に設けられており、一端が前記排気口14に接続され、他端が排気筒16に接続されている。また、排気ダクト15の途中には、排気ファン(排気手段)17と脱臭装置18が設けられている。
【0024】
前記排気ファン17は、通電によって作動することにより生ごみ処理槽4および排気ダクト15内の空気を排気筒16から装置外部に排出する。排気ファン17によって生ごみ処理槽4内の水分や炭酸ガスを含んだ空気を装置外部に排出すると、生ごみ処理槽4内は負圧になるので、装置外部の新鮮な空気が前記吸気口6より生ごみ処理槽4内に導かれる。
【0025】
前記脱臭装置18は、前記生ごみ処理槽4内の水分や炭酸ガスを含んだ空気中に含まれている生ごみ2の発酵分解過程において発生した臭気(硫黄系ガス、有機性ガス、アンモニア等)を除去(脱臭または消臭)するためのもので、白金触媒や活性炭、ゼオライト等の吸着材(脱臭剤)、光触媒等が用いられる。
【0026】
前記生ごみ処理槽4の内部下方には、撹拌用モータ21の駆動によって回転する撹拌羽根20が設けられている。撹拌羽根20は、両端部が生ごみ処理槽4の両側板によって回転自在に軸支された回転軸22と、この回転軸22に取付けられた複数枚の羽根23とを備えている。前記回転軸22は、一端が前記撹拌用モータ21の出力軸25にチェーン26とスプロケット27a,27bを介して連結されている。撹拌用モータ21は減速歯車機構付きのモータで、前記内ケース3Bの後方で外ケース3Aとの間の断熱空間に設置されており、生ごみ2の処理時に前記撹拌羽根20を間欠的に回転(2〜3rpm程度)させる。撹拌羽根20は、撹拌用モータ21の駆動によって回転することにより、生ごみ処理槽4内に投入された生ごみ2と菌床31を撹拌、混合すると同時に、これらの混合物に新鮮な空気を供給し、微生物の活動を活発化させる。なお、撹拌用モータ21としては、撹拌羽根20を一方向にのみ回転させるものに限らず、正逆回転して一定時間毎に回転方向を切り替えるものであってもよい。
【0027】
前記菌床31は、保水性のよい母材に生ごみ2中の有機物を発酵分解する好気性の微生物と種菌を発育させたものである。菌床31の母材は、生ごみ2の発酵に必要な酸素を供給する役割と、水分を調整する役割を有するもので、例えば、水質系のチップ、おが屑、籾殻、椰子殻等が用いられる。特に、椰子殻の中果皮から繊維束を分離して圧縮成形したもの(ココピート:商標)は、保水性、通気性に優れ、吸水時に元に復元し易く、また初期pHが高く(=6.5)、微生物の生育し易い環境を保持するための母材として好適である。
【0028】
好気性の微生物としては、20〜75℃の各温度で活性を示す複数種の菌類、具体的には中温(20〜40℃)、高温(55〜75℃)で増殖する糸状菌、放線菌、細菌等が用いられる。これらの菌類は、生ごみ2と菌床31との混合物の温度条件によって増殖時期が異なり、混合物の温度が低いと増殖が不活発となり生ごみの処理効率を低下させる。このため、前記制御部8は、内ケース3B内の温水10の温度を混合物中の微生物が増殖、活性化し易い最適な温度(例えば、約35〜45℃)となるように制御している。
【0029】
前記微生物による生ごみ2の分解過程は、大きく分けると図4に示すように処理開始初期の糖分解期と、中期の結合組織分解期および後期の繊維分解期の三期に分けることができる。このうち、糖分解期においては糸状菌が活発に増殖して生ごみ2中の糖を分解し、結合組織分解期においては放線菌が活発に増殖して生ごみ2中のセルロース等の高分子を分解し、繊維分解期においては細菌が繊維を分解する。なお、細菌は処理開始から終了までの全期間中において活発に増殖して生ごみ2を分解する。
【0030】
前記種菌は、糸状菌、放線菌および細菌の最初の増殖を促進させ、生ごみ2の安定した処理を速やかに開始させるために用いられる菌である。
【0031】
微生物による生ごみ2の分解を促進する環境条件は、生ごみ2と菌床31との混合物の温度が30〜60℃、水分率が20〜50%(重量水分率)、酸素濃度が10%程度、さらには微アルカリ性(pH6.0〜8.0)とされている。これらのパラメータはいずれも微生物の菌相、生育数に直接影響するものである。したがって、微生物の代謝能力を利用して生ごみ2を処理するこの種のごみ処理装置1においては、混合物の温度、水分の制御と必要酸素量の供給を的確に行う必要がある。このため、混合物の水分率を検出する水分率検出装置34を備え、この水分率検出装置34からの検出信号に基づいて制御部8が前記排気ファン17を制御することにより、微生物を増殖、活性化させ、混合物の水分率を最適水分率となるようにしている。
【0032】
混合物の水分率が20%を下回ると、乾燥気味になる。このため、菌が仮死状態(胞子)になり発酵が促進されない。一方、50%を越えると水分過多で酸素不足になり、嫌気菌が主菌となり、pHも4〜5に下がり、嫌気発酵となる。このため、発酵熱も上がらず生ごみの減量率が下がる。また、嫌気では悪臭も発生するため、極力このような状態を避ける必要がある。
【0033】
前記水分率検出装置34は、生ごみ2の処理工程中において前記生ごみ処理槽4内に投入された生ごみ2と菌床31との混合物の表面を撮像するCCD等の撮像装置35と、この撮像装置35によって撮像された画像データ(白黒の濃淡画像)の輝度値から得られた代表値(輝度値の平均値または最大値等)から前記混合物の水分率を算出する水分率算出手段36とを備えている。
【0034】
前記撮像装置35は、ケース37内に混合物を照明する光源38とともに収納されている。前記ケース37は、水蒸気等の浸入を防止するため密閉型のケースからなり、前記生ごみ処理槽4の内部上方に前記撹拌羽根20と干渉しないように撮像装置35を下に向けて固定されている。ケース37の下面は透明なアクリル板等によって形成されることにより、撮像装置35による混合物の撮像を可能にしている。
【0035】
混合物の水分率と、撮像装置35によって撮像される混合物の画像の輝度値との間には相関関係が存在し、水分率が0%のとき輝度値は最大で、水分率が高くなるほど低くなる。
【0036】
図5〜図7に撮像装置35によって撮像された混合物の濃淡画像を示す。図5は水分率(重量水分率)が20%の混合物の濃淡画像、図6は水分率が40%の混合物の濃淡画像、図7は水分率が60%の混合物の濃淡画像である。
【0037】
図8は図5〜図7に示す各々の混合物の濃淡画像の輝度分布(ヒストグラム)を示す図で、横軸は輝度、縦軸は画素数、曲線Iは水分率20%の輝度分布、曲線IIは水分率40%の輝度分布、曲線III は水分率60%の輝度分布である。この図からも判るように水分率の違いによりその輝度分布のピーク値が異なることが明らかである。
【0038】
前記水分率算出手段36は、前記制御部8内に設けられており、前記撮像装置35によって撮像された画像データが入力されると、その輝度分布の代表値(輝度値の平均値または輝度値の最大値等)より前記混合物の水分率を算出し前記制御部8に出力する。
【0039】
次に、生ごみの処理過程における水分率の制御を図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、ごみ処理の開始に際しては、処理すべき生ごみ2と菌床31との混合物の最適水分率の下限値と上限値を決定し、その値を制御部8に入力する(ステップ100)。
【0040】
混合物の最適水分率の下限と上限の輝度値の設定に際しては、例えば混合物の最適水分率を20〜50%と設定し、この範囲内で水分率を制御してごみ処理を行なう場合、予め生ごみ処理装置1によって処理される混合物と同一であって水分率が20%と50%の混合物を用意し、これらの混合物を撮像装置35によって撮像し、その画像データを水分率算出手段36に送出する。水分率算出手段36では、画像データから各画素の輝度値を求め、制御部8の記憶部に記憶する。
【0041】
また、生ごみ2と菌床31との混合物の水分率と輝度値から得られた代表値(輝度値の平均値または輝度値の最大値等)は、菌床を連続して使用した場合、母材の経年変化と密接な関係をもって変化し、母材が古くなると混合物の水分率と輝度値は低下することが判っているので、水分率をさらに高い精度で測定するためには予め生ごみを一定期間連続的に処理し、混合物の輝度値と水分率の関係を所定期間経過するたびに測定して制御部8の記憶部に記憶しておくとよい。
【0042】
図10は混合物の輝度値から得られた代表値と水分率の関係を示す図で、曲線1は処理開始初期の母材における混合物の輝度値から得られた代表値と水分率の関係を示し、曲線2はごみ処理を1箇月行ったときの混合物の輝度値から得られた代表値と水分率の関係を示し、曲線3はごみ処理を2箇月行ったときの混合物の輝度値から得られた代表値と水分率の関係を示す。
【0043】
ごみ処理の開始にあたっては現在使用している母材の使用期間をチェックし、その使用期間に応じた輝度値から得られた代表値と水分率の関係を制御部8に指定する。例えば、ごみ処理開始から一箇月以内は、処理開始初期の母材における混合物の輝度値から得られた代表値と水分率の関係を示す曲線1を指定する。また、一箇月経過した後さらに新たな生ごみを追加投入して処理するときは、前記曲線1に代えて一箇月経過した母材における混合物の輝度値から得られた代表値と水分率の関係を示す曲線2を指定する。
【0044】
ごみ処理の開始にともないヒーター12に通電して内ケース3B内の水10を加熱し、微生物の生育に最適な温度の温水(40℃程度)にする。このため、菌床31も温水10と同程度の温度に昇温される。さらに、生ごみ2を生ごみ処理槽4内に投入し、投入口蓋9を閉じる(ステップ101)。投入口蓋9を閉じるとリミットスイッチSWが生ごみ2の投入を検知し、その信号を制御部8に送る。制御部8は、リミットスイッチSWからの信号によって生ごみ2の処理を開始させる。これにより、撹拌用モータ21が駆動して撹拌羽根20を回転させ、生ごみ2と菌床31を撹拌、混合する。また、排気ファン17を作動させて生ごみ処理槽4内の空気を装置外部に排気する(ステップ102)。排気ファン17は、風量を「小」、「中」、「大」の三段に切り替えることができ、処理開始時は「中」に設定される。
【0045】
撹拌羽根20によって生ごみ2と菌床31を撹拌、混合すると、微生物が増殖、活性化して好気発酵が行われ、生ごみ2に含まれている有機質を水分と炭酸ガスに分解する。
【0046】
生ごみ2の発酵分解開始から一定時間(例えば、10分)経過すると(ステップ103)、撮像装置35によって混合物の表面を撮像し、その画像データを水分率算出手段36に取込む(ステップ104)。水分率算出手段36は、取り込んだ画像データの輝度分布より代表値(輝度値の平均値または最大値)を算出し(ステップ105)、その算出結果から水分率を換算する(ステップ106)。輝度値から得られた代表値から水分率への換算は、予め制御部8に記憶しておいた前記曲線1または曲線2の輝度値から得られた代表値と水分率との関係に基づいて行う。例えば、母材が一箇月経過している場合は、曲線2の輝度値から得られた代表値から水分率を換算する。
【0047】
制御部8では、混合物の撮像によって得られた水分率が予め記憶部に記憶しておいた最適水分率の範囲内であるか否かを判定する(ステップ107)。実際の水分率が最適水分率の下限値以下である場合は、混合物が乾燥気味で水分量が少ないことを意味する。したがって、この場合は排気ファン17の運転モードを風量「小」に切替えて混合物中の水分の乾燥を遅らせ、混合物の水分率が最適水分率内になるようにする(ステップ108)。
【0048】
反対に、混合物の撮像によって得られた水分率が予め記憶部に記憶しておいた最適水分率の上限値以上である場合は、混合物が水分過多であることを意味する(ステップ109)。したがって、この場合は排気ファン17の運転モードを風量「大」に切替えて混合物中の水分の乾燥を早め、混合物の水分率が最適水分率内になるようにする(ステップ110)。
【0049】
排気ファン17によるこのような水分率の制御は、混合物の発酵分解期間中、撮像装置35によって混合物を一定時間毎に撮像することにより行われる。また、連続運転する場合は、途中で新たな生ごみが投入されるので、同様に混合物の撮像が行われる。
【0050】
生ごみ2の発酵が終了すると、生ごみ2を発酵分解していた微生物は生ごみ2中の栄養源となる糖、脂肪、タンパク質、でんぷん質、セルロースなどが分解してなくなるため、増殖、活性化することができず休眠状態に入る。このため、混合物の温度は低下する。この混合物の温度を温度センサ40(図2)によって検出し、所定の温度にまで降下すると、生ごみの全ての処理を完了するか否かを決定する(ステップ111)。全ての処理を完了するときは処理完了とし(ステップ112)、装置の電源を切断する。
【0051】
全ての処理が完了した後さらに引き続いて新規な生ごみ2の処理を行う場合は(ステップ113)、投入口蓋9を開いて処理すべき生ごみを生ごみ処理槽4に投入し(ステップ101)、以下同様にステップ102〜110により水分制御を行う。
【0052】
生ごみ2の処理が完了していないとき、または新たに生ごみが投入されたときは、ステップ103〜110に戻り、全ての処理が終了するまで水分率を制御する。
【0053】
このように本発明に係る生ごみ処理装置1によれば、生ごみ2と菌床31との混合物を撮像装置35によって撮像し、その画像データの輝度値から得られた代表値から水分率を求めるようにしているので、従来の接触型の水分率センサに比べて混合物の水分率を広い範囲にわたって測定することができ、測定精度を高めることができる。
また、水分率検出装置34による検出信号に基づいて排気ファン17を制御するようにしているので、混合物の水分率を適正な水分率に保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、水分率検出装置を生ごみの処理装置に用いた例を示したが、これに限らず生ごみ以外の被測定物の水分率または水分量を検出する装置にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る生ごみ処理装置の一実施の形態を示す外観斜視図である。
【図2】同装置の側断面図である。
【図3】同装置の内部を示す平面図である。
【図4】微生物の発酵期間と温度の関係を示す図である。
【図5】撮像装置によって撮像した水分率(重量水分率)が20%の混合物の濃淡画像を示す図である。
【図6】撮像装置によって撮像した水分率(重量水分率)が40%の混合物の濃淡画像を示す図である。
【図7】撮像装置によって撮像した水分率(重量水分率)が60%の混合物の濃淡画像を示す図である。
【図8】混合物の濃淡画像から求めた輝度分布を示す図である。
【図9】水分率検出のフローチャートである。
【図10】輝度値の代表値と水分率の関係を示す図である。
【図11】水分率と温度上昇率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1…生ごみ処理装置、2…生ごみ、3…装置本体、4…生ごみ処理槽、17…排気ファン、31…菌床、34…水分率検出装置、35…撮像装置、36…水分率算出手段。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ごみ処理槽内に投入された生ごみと菌床との混合物の水分率を検出する水分率検出装置において、
前記混合物を撮像する撮像装置と、前記撮像装置によって撮像された画像データの輝度値から得られる代表値から前記混合物の水分率を算出する水分率算出手段とを備えたことを特徴とする水分率検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の水分率検出装置を備え、その検出信号に基づいて生ごみ処理槽の排気手段を制御することを特徴とする生ごみ処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−38622(P2006−38622A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218653(P2004−218653)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】