説明

水剤供給装置

【課題】水剤ボトルに収容された水剤を装置内で冷所保存できる、水剤供給装置を提供する。
【解決手段】水剤5を収容した水剤ボトル23から水剤5を投薬ボトル2に供給する水剤供給装置1は、筐体6と、筐体6の内部の一部空間91を取り囲むケーシング90と、ケーシング90の内部を冷却する冷却部93と、を備える。また、冷却部93が発生する熱を筐体6から排出するダクト95とファン99からなる排熱手段を備える。更に、ダクト95内に空気が流入する吸気口97とダクト95内から空気が流出する排気口99とは筐体6の外部に開口する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水剤供給装置に関し、特に、水剤を収容した水剤ボトルから水剤を投薬ボトルに供給するための水剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤を収容するための筐体の内部の温度をコントロールするための従来の技術は、たとえば、特開平9−192202号公報(特許文献1)、実開昭57−105201号公報(特許文献2)などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−192202号公報
【特許文献2】実開昭57−105201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献では、薬剤を収容するための筐体の内部に冷気を供給して、薬剤を冷却する技術が開示されている。しかし、完全に密閉されていない筐体を備える水剤供給装置において、上記特許文献に記載の技術を適用しても、筐体に形成された隙間から冷気が外部に漏れるので冷却効率が低く、その結果、水剤を十分に冷却できないという問題があった。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、水剤ボトルに収容された水剤を装置内で冷所保存できる、水剤供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水剤供給装置は、水剤を収容した水剤ボトルから水剤を投薬ボトルに供給する水剤供給装置であって、筐体と、筐体の内部の一部空間を取り囲むケーシングと、ケーシングの内部を冷却する冷却部と、を備える。
【0007】
上記水剤供給装置において好ましくは、冷却部が発生する熱を筐体の外部に排出する排熱手段を備える。
【0008】
上記水剤供給装置において好ましくは、排熱手段は、筐体の内部と外部とを連通するダクトと、ダクト内に通風するファンと、を含む。ダクト内に空気が流入する吸気口と、ダクト内から空気が流出する排気口とは、筐体の外部に開口する。冷却部は、熱を発生する発熱部を含み、発熱部はダクト内に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水剤供給装置によると、水剤ボトルに収容された水剤を装置内で冷所保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態の水剤供給装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す水剤供給装置の正面図である。
【図3】図2に示すIII−III線に沿う水剤供給装置の断面図である。
【図4】図2に示すIV−IV線に沿う水剤供給装置の断面図である。
【図5】図2に示すV−V線に沿う水剤供給装置の断面図である。
【図6】図2に示すVI−VI線に沿う水剤供給装置の断面図である。
【図7】図2に示すVII−VII線に沿う水剤供給装置の断面図である。
【図8】図2に示すVIII−VIII線に沿う水剤供給装置の断面図である。
【図9】筐体の内部の空気の流れを示す模式図である。
【図10】投薬ボトルを供給位置に移動させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態の水剤供給装置1の構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す水剤供給装置1の正面図である。図3は、図2に示すIII−III線に沿う水剤供給装置1の断面図である。図4は、図2に示すIV−IV線に沿う水剤供給装置1の断面図である。図5は、図2に示すV−V線に沿う水剤供給装置1の断面図である。本実施の形態の水剤供給装置1は、患者に対する処方箋に従って、液状の薬剤である水剤5を、水剤5を収容した水剤ボトル23から投薬ボトル2に供給し、調剤するために用いられる。
【0013】
水剤供給装置1は、水剤ボトル23から水剤5を投薬ボトル2に供給する水剤供給手段3と、投薬ボトル2に収容される水剤5の重量を検出する重量検出手段4とを備える。重量検出手段4により検出される水剤5の重量、および、水剤5の比重から、投薬ボトル2に供給された水剤5の体積が算出される。水剤供給手段3は、処方箋に従った所定の体積の水剤5が投薬ボトル2に供給されるように制御される。水剤供給手段3と重量検出手段4とは、筐体6に設けられる。筐体6は、直方体形状に形成され、起立した状態で水平な設置面に設置される。
【0014】
筐体6の内部には、支持フレーム8が設けられる。支持フレーム8は、筐体6の底板9と筐体6の天板10との間に配置され、詳しくは筐体6の天板10寄りに配置される。筐体6の内部空間は、支持フレーム8によって、支持フレーム8よりも上方の上部空間11と支持フレーム8よりも下方の下部空間12とに仕切られる。筐体6の前面部13には、タッチパネル14と、プリンタ17a,17bとが配置される。また前面部13には、下部空間12と筐体6の外部とを連通する下部開口15が形成される。
【0015】
下部開口15は、筐体6の前面部13における左右両側部16a,16bの間に形成される。左右両側部16a,16bの間の、下部開口15の上側には、下部空間12と筐体6の外部とを仕切る、湾曲した板状の前方カバー部18が配置されている。前方カバー部18は、下部空間12を筐体6の前方側の外部から視認可能なように、透明な材料により形成される。前方カバー部18は、左右両側部16a,16bの一方にヒンジを介して取り付けられ、当該ヒンジの軸周りに回動可能に設けられており、これにより、前方カバー部18は開閉可能とされている。
【0016】
水剤供給手段3は、下部空間12に配置され、支持フレーム8に対して鉛直な軸線(以下、「ドラム軸線」という)L1まわりに回転自在に設けられる回転体である回転ドラム21と、支持フレーム8の上面に載置され、支持フレーム8に対してドラム軸線L1まわりに回転ドラム21を回転させるドラム回転用モータ22と、を有する。水剤供給手段3はまた、回転ドラム21に設けられ、水剤5が収納された複数の水剤ボトル23から投薬ボトル2に水剤を移送する複数のポンプ24と、各ポンプ24を駆動するポンプ駆動ユニット25と、を有する。各ポンプ24は、チューブポンプであってもよい。
【0017】
回転ドラム21は、各ポンプ24を保持するポンプ保持体31と、各水剤ボトル23を開口部が上方向に開口するように起立した状態に保持する水剤ボトル保持体32と、を有する。水剤ボトル保持体32は、ポンプ保持体31の下方に設けられており、平面視環状の平板形状に形成されている。ポンプ保持体31には、各ポンプ24が、ドラム軸線L1を中心とする周方向(以下、「ドラム周方向」という)に間隔をあけて配置される。水剤ボトル保持体32には、各水剤ボトル23が、ドラム周方向に間隔をあけて配置される。
【0018】
本実施の形態で回転ドラム21に搭載される水剤ボトル23およびポンプ24の個数は、目的に応じて任意に変更できる。複数の水剤ボトル23の各々に異なる水剤5が収容されてもよく、複数の水剤ボトル23に処方頻度の高い同種の水剤5が収容されてもよく、一つまたは複数の水剤ボトル23に常水や単シロップなどの賦形剤が収容されてもよい。
【0019】
各ポンプ24の各々を選択的に駆動するためのポンプ駆動ユニット25は、支持フレーム8に固定される固定部37と、固定部37に対して前後方向(図4および図5中に示す両矢印A方向)に移動自在に設けられる移動部38と、固定部37に固定され、移動部38を固定部37に対して前後方向に移動させる移動用モータ39と、移動部38に固定され、ポンプ24を駆動させるポンプ駆動用モータ40と、を有する。ポンプ駆動用モータ40として、ステッピングモータが用いられてもよい。
【0020】
ポンプ駆動用モータ40によって回転駆動される駆動軸41の先端には、連結部材42が固定される。各ポンプ24のロータの回転軸43には、連結部材42と連結される被連結部材44が固定される。連結部材42と被連結部材44とが連結されることで、ポンプ駆動用モータ40の回転がポンプ24に伝達される。ポンプ24は、ドラム回転用モータ22の間欠駆動に連動して、各々のポンプ24毎に駆動されるよう構成されている。水剤5の投薬ボトル2への供給速度は、ポンプ駆動用モータ40の回転速度が高速になるほど、高速になる。
【0021】
移動用モータ39を駆動することによって、ポンプ駆動用モータ40は前後方向に移動する。このポンプ駆動用モータ40の移動により、ポンプ駆動用モータ40の連結部材42をポンプ24の被連結部材44に連結させる連結状態と、連結部材42が被連結部材44に連結していない連結解除状態と、を切り替えることができるようになっている。
【0022】
たとえば、移動用モータ39の駆動によって移動部38を前進させることで、連結部材42と被連結部材44とを連結することができる。また、移動用モータ39の駆動によって移動部38を後退させることで、連結部材42と被連結部材44との連結を解除することができる。回転ドラム21は、連結解除状態において、支持フレーム8に対して回転することができる。
【0023】
連結解除状態でドラム回転用モータ22を駆動することによって、水剤供給装置1に入力された処方箋情報に基づいて選択された特定のポンプ24の被連結部材44がポンプ駆動用モータ40の連結部材42に対面する位置まで回転ドラム21を回転させ、回転後において連結状態に切り替える。これにより、選択された特定のポンプ24を駆動して、所望の水剤ボトル23から供給される水剤5を投薬ボトル2に分注することができる。なお、連結部材42と被連結部材44とは、共にギヤで構成されているが、動力を伝達可能なものであれば、どのような構成であってもよい。
【0024】
回転ドラム21の上端部26には、ドラム軸線L1と同軸に水平に配置されたリング部材27が、ドラム軸線L1回りに回転可能に配置される。リング部材27の外周側には、リング部材27を支持する3つ以上の支持部材28が設けられる。各支持部材28は、ドラム周方向に、等しい間隔を空けて配置される。
【0025】
各支持部材28は、ドラム軸線L1に平行な軸線回りに、支持フレーム8に対して相対回転自在に設けられる。扁平円筒状の各支持部材28の外周面には、全周にわたって凹条29が形成される。リング部材27の外周部には、全周にわたって環状の凸条30が形成される。リング部材27の凸条30は、各支持部材28の凹条29に嵌り込む。リング部材27と支持部材28とは、互いに相対回転可能に設けられている。
【0026】
ドラム回転用モータ22は、支持フレーム8に固定される。ドラム回転用モータ22の回転軸には、原動歯車(図示せず)が固定される。回転ドラム21の上端部26には、原動歯車に噛合する従動歯車33が固定される。従動歯車33は、環状薄板状に形成され、リング部材27の下面に固定されている。ドラム回転用モータ22の回転は、原動歯車および従動歯車33を介してリング部材27に伝達され、これにより、リング部材27とリング部材が固定された回転ドラム21とが一体として回転する。このような構成によって、支持フレーム8に対して回転ドラム21を円滑に回転させることができる。
【0027】
ドラム回転用モータ22は、回転ドラム21に搭載された複数の水剤ボトル23と、複数の水剤ボトル23毎に対応して設けられたポンプ24および供給ノズル36と、一端が水剤ボトル23の内部に配置され他端が供給ノズル36に取り付けられた図示しないチューブと、を水平方向に一体に回動させる。
【0028】
供給ノズル36は、ポンプ保持体31の下端に設けられた環状の平板であるノズル取付板53の、外周部同一円周上に取り付けられている。各供給ノズル36は、ノズル取付板53上に、ドラム軸線L1を中心とする仮想円上でドラム周方向に等間隔をあけて配置される。供給ノズル36は、ドラム軸線L1に対して所定の角度で傾斜して、ノズル取付板53に取付けられている。ノズル取付板53は、水剤ボトル保持体32の上方に配置されている。ノズル取付板53と水剤ボトル保持体32とは互いに並行であり、回転ドラム21と共に水平面上でドラム軸線L1回りに回動可能に構成されている。
【0029】
重量検出手段4は、下部開口15に配置される。重量検出手段4は、電子天秤45と、電子天秤45を収容するケーシング46と、電子天秤45に載置されて固定され、投薬ボトル2を開口2Aが上方向に開口するように起立した状態に保持する投薬ボトル保持体47とを有する。電子天秤45は、投薬ボトル2に供給された水剤5の重量を検出する。水剤5の重量が所定値に到達することにより、水剤供給手段3はポンプ24の駆動を停止し、投薬ボトル2への水剤5の供給を停止する。電子天秤45は、音叉式、ロードセル式または電磁式などの任意の形式であってもよい。ケーシング46は、筐体6の前面部13における左右両側部16a,16b間の下部に設けられる。投薬ボトル保持体47は、投薬ボトル2が載置される載置台48と、載置台48の上側に設けられ投薬ボトル2を保持する保持具49と、を有する。
【0030】
重量検出手段4は、図5に示す駆動部としての昇降装置50により昇降されるようになっている。昇降装置50は、初期位置と供給位置との2位置に位置することができるように、重量検出手段4を上下方向に移動させ、これに伴い、重量検出手段4の載置台48上に載置された投薬ボトル2を移動させる。初期位置は、投薬ボトル2を水剤供給装置1の載置台48上に設置するための位置である。供給位置は、上記初期位置よりも投薬ボトル2と供給ノズル36とが接近して、投薬ボトル2に水剤5を供給するための位置である。昇降装置50によって、投薬ボトル2は、初期位置と供給位置とを往復するように、水剤供給装置1の筐体6の外部と内部とを往復移動する。
【0031】
水剤ボトル保持体32の下側には、回転力を発生させる回転駆動部61が配置される。回転駆動部61の発生する回転力は、図示しない軸部を介して、水剤ボトル保持体32の下側から水剤ボトル保持体32の上側へ伝達される。当該軸部には、水剤ボトル保持体32に軸部を貫通させるために形成された貫通孔の周囲を液密に封止する環状の押圧部材72、軸部を覆うカバー75などの種々の要素を介在させて、水剤ボトル23を保持するカップ78が固定される。
【0032】
回転駆動部61を駆動させると、カップ78と、カップ78に保持された水剤ボトル23とは回転する。この水剤ボトル23の回転に伴って、水剤ボトル23内に収容された水剤5は、水剤ボトル23の回転方向に沿って、水剤ボトル23の内部を、水剤ボトル23の円筒状の側部の周方向に流れる。水剤5の流れ中に発生する乱流および渦の作用によって、水剤5は水剤ボトル23内で攪拌される。
【0033】
複数の水剤ボトル23毎に図示しないチューブが設けられ、このチューブは、水剤ボトル23と供給ノズル36とを連結する。チューブの開口した一端部は、水剤ボトル23の開口部から底部にまで水剤ボトル23の内部に挿入され、水剤ボトル23内の水剤5に浸漬している。チューブの一端部と反対側の端部である他端部は、供給ノズル36に取り付けられている。
【0034】
水剤ボトル23の外部でチューブを固定するためのチューブ固定部86が、図3に示すように、ノズル取付板53の下面側に固定されている。チューブはさらに、ノズル取付板53に形成された切欠き部54(図5参照)に嵌め入れられることにより、ノズル取付板53に対して固定される。
【0035】
ポンプ24は、水剤ボトル23内の水剤5を供給ノズル36に向けて吸引する動力源として用いられる。ポンプ24の駆動により水剤ボトル23から投薬ボトル2へ水剤5を供給するとき、水剤ボトル23から流出した水剤5は、チューブの内部を通過して流れ、供給ノズル36の端部が開口した供給口36Aから投薬ボトル2の開口部2Aを介して投薬ボトル2内に流入する。このようにして、水剤5が投薬ボトル2へ供給される。
【0036】
水剤ボトル23の開口部には、ベース部材81が固定されている。ベース部材81上には、ベース部材81に対し非固定状態に、カバー83が載置されている。チューブをカバー83に取り付けることによって、水剤ボトル23に対してチューブが位置決めされる。
【0037】
図6は、図2に示すVI−VI線に沿う水剤供給装置1の断面図である。図7は、図2に示すVII−VII線に沿う水剤供給装置1の断面図である。図6および図7に明確に示されるように、本実施の形態の水剤供給装置1は、下部空間12内の水剤ボトル保持体32上に、開栓後に冷所での保存が必要とされる水剤5を筐体6内部で適切に保存するためのケーシングとしての、冷却ケース90を備える。冷却ケース90は、略直方体状に形成され、当該直方体形状が起立した状態で、水剤ボトル保持体32の上面に載置され固定されている。
【0038】
冷却ケース90は、筐体6の内部の一部空間である内部空間91を取り囲み、内部空間91を密閉する。冷却ケース90の、ドラム軸線L1から離れる側の面には、開閉自在な扉90aが配置されている。扉90aを開くことにより、冷却ケース90の内部空間91に水剤ボトル23を収容でき、または、内部空間91から水剤ボトル23を取り出すことができる。扉90aを閉じることにより、冷却ケース90は気密構造を形成し、内部空間91は密閉空間として形成される。冷却ケース90の壁面、天井面および床面の全体には、断熱材92が設けられる。断熱材92は、冷却ケース90の外部から内部空間91への熱伝達を抑制し、これにより、内部空間91は低温に維持される。
【0039】
冷却ケース90の内部空間91は、水剤ボトル23を配置するために必要な形状を有するように、形成されている。冷却ケース90は、水剤ボトル23を収容可能な最小の容積を有する。ポンプ24は、冷却ケース90の外部に配置されている。冷却ケース90の扉90aの上部には、水剤ボトル23から供給ノズル36へ向かって流れる水剤5の通路を形成するチューブを貫通させるための、図示しない切欠きが形成されている。
【0040】
冷却ケース90のドラム軸線L1に近接する側の面、すなわち扉90aと対向する背面には、冷却ケース90の内部を冷却する冷却部93が配置される。冷却部93として、内部空間91を冷却する機能を有する任意の機器が使用可能であるが、たとえば、小型化に有利なペルチェ素子が冷却部93に用いられてもよい。冷却部93がペルチェ素子である場合、または冷却部93がジュール熱を発生する場合など、冷却部93が熱を発生する発熱部94を含む場合、発熱部94は、冷却ケース90の背面側の外側、すなわち、冷却ケース90に対してドラム軸線L1に近接する側に配置される。発熱部94は、図6に示すように、ダクト95の内部に配置される。
【0041】
ダクト95は、上下方向に延びる吸気ダクト96と、吸気ダクト96に隣接して上下方向に延びる排気ダクト98と、吸気ダクト96と排気ダクト98とを連通する連通部97と、を有する。ダクト95は、筐体6の底板9を貫いて配置され、筐体6の内部と外部とを連通する。ダクト95の内部は、筐体6内の下部空間12には連通しない。吸気ダクト96内には、吸気口96aを経由して、空気が流入する。吸気口96aは、筐体6の下側に形成され、筐体6の外部に開口する。排気口98aを経由して、排気ダクト98から空気が流出する。排気口98aは、筐体6の下側に形成され、筐体6の外部に開口する。
【0042】
吸気口96aから吸気ダクト96に流入した空気は、吸気ダクト96内を、下方の吸気口96aから上方の連通部97へ向かって、上方向へ流れる。空気は連通部97を経由して、吸気ダクト96の内部から排気ダクト98の内部へと移動する。連通部97から排気ダクト98へ流入した空気はさらに、排気ダクト98内を、上方の連通部97から下方の排気口98aへ向かって下方向へ流れ、排気口98aから排出される。
【0043】
吸気口96aから吸気ダクト96、連通部97、排気ダクト98を順に経由して排気口98aへ至るように、ダクト95の内部を空気が流れる。この空気の流れを形成するために、排気ダクト98の内部の最上部に、ファン99が配置されている。ファン99は、ダクト95の内部に通風する。熱を発生する発熱部94は、ファン99が駆動することによりダクト95内を流れる空気に放熱することで、冷却される。ダクト95内を流れる空気と発熱部94とが熱交換することにより、発熱部94で発生した熱は、空気の流れとともに筐体6の外部に排出される。ダクト95とファン99とは、冷却部93の発熱部94が発生する熱を筐体6の外部に排出する、排熱手段を形成する。
【0044】
以上のような構成を有する本実施の形態の水剤供給装置1によると、冷却部93によって冷却された冷却ケース90の内部に水剤ボトル23を設置することで、水剤供給装置1の筐体6の内部において、水剤ボトル23を冷所保存することができる。そのため、冷所保存を必要とする水剤5を、本実施の形態の水剤供給装置1を使用して、短時間で効率的に調剤することができる。
【0045】
筐体6の内部の一部の、冷却ケース90によって取り囲まれた内部空間91のみが、冷却部93によって冷却される。つまり、筐体6内の下部空間12の一部である内部空間91のみが冷却され、筐体6の内部全体を冷却する必要はない。水剤供給装置1には、下部開口15に代表されるような、筐体6の内部と外部とを連通する経路が多く形成されており、筐体6の内部全体を冷却するのは効率が悪く、かつ、適切な温度制御が困難である。水剤供給装置1が冷却ケース90を備えることで、冷所保存を必要とする水剤5を冷却ケース90内において効率よく冷却できるので、水剤5の冷却のために必要なエネルギーを低減することができ、水剤5の冷却に係る制御性も向上できる。
【0046】
また、発熱部94がダクト95内に配置され、ファン99によってダクト95内に通風することで、ダクト95内を流通する空気に熱を放出して発熱部94が空冷される。冷却ケース90内を冷却するために発生した排熱は筐体6の内部に放熱されず、ダクト95を経由して筐体6の外部へ直接放熱される。これにより、筐体6内部の温度上昇原因となり得る発熱部94からの排熱が筐体6の内部へ放熱されることを抑制できるので、発熱部94の排熱により冷却ケース90外の他の水剤5が加熱され水剤5の温度が上昇することを抑制できる。ファン99はダクト95の内部に配置されているので、筐体6の外部に、他のファンなどの、通気のための機器を別途設ける必要はない。
【0047】
図6に示すように、吸気口96aは水剤供給装置1の背面側(図中右側)に開口しており、排気口98aは水剤供給装置1の前面側(図中左側)に開口している。吸気口96aと排気口98aとが開口している向きは、互いに反対方向である。吸気口96aと排気口98aとは、筐体6の外部に対して開口する向きがそれぞれ異なるように形成され、これにより、排気口98aから排出される空気の流れる方向を、吸気口96aへ吸い込まれる空気の流れる方向と異ならせる。このようにすれば、ダクト95から排気された空気が再度吸気口96aから吸気されることを抑制できるので、ダクト95により温度の低い外気を流通させることができる。したがって、発熱部94をより効率的に冷却することができる。
【0048】
図7に示すように、本実施の形態の水剤供給装置1は、2つの冷却ケース90を備える。各々の冷却ケース90の内部空間91に、それぞれ一本の水剤ボトル23を配置可能であり、合計二本の水剤ボトル23を水剤供給装置1の内部で冷所保存することができる。
【0049】
冷却ケース90には、内部空間91の温度を検出するための、図示しない温度センサが取り付けられる。温度センサとして、サーミスタが使用されてもよい。内部空間91の温度が所定の温度範囲(たとえば8℃〜12℃)に保たれるように、冷却部93はその運転を制御される。冷却部93は連続的に運転されてもよく、運転と停止とを繰り返し断続的に運転されてもよい。
【0050】
ダクト95の内部には、発熱部94の温度を検出するための、図示しない温度センサが取り付けられる。温度センサとして、サーミスタが使用されてもよい。発熱部94の温度が所定の温度(たとえば30℃)を上回らないように、ファン99が運転され、ダクト95内の空気の流れが制御される。ファン99は連続的に運転されてもよく、運転と停止とを繰り返し断続的に運転されてもよい。
【0051】
ダクト95は、ドラム軸線L1に沿って、回転ドラム21の中心部に配置されている。ノズル取付板53の下側に、上下方向にノズル取付板53から水剤ボトル保持体32まで至る中空角柱形状の部材が固定され、水剤ボトル保持体32に当該中空角柱形状に相当する形状の貫通孔が形成され、水剤ボトル保持体32の下側にさらに中空角柱形状の部材が固定されて、筐体6の底板9の下側にまで延びるダクト95が形成されている。ダクト95は、ドラム回転用モータ22の回転駆動力を受けて、回転ドラム21と一体で回転する。
【0052】
下部空間12内には、底板9に対向するように、平板状の清掃板59(図5、図7参照)が配置されている。清掃板59は、平面視した場合の外形が円形状に形成されている。上述したように、供給ノズル36はノズル取付板53の外周部において同一円周上に取り付けられる。清掃板59の外形を形成する円の直径は、図5に示すように、供給ノズル36が取り付けられる円の直径よりも大きい。そのため、供給ノズル36の供給口36Aからの液ダレが発生した場合、垂れた液滴は清掃板59の表面に落下する。
【0053】
ダクト95が回転ドラム21の中心の軸部分に上下方向に延びて形成されており、ダクト95との干渉を防ぐために、清掃板59は平面視円環形状に形成されている。清掃板59の中心部付近には清掃板59を貫通する円形状の貫通孔が形成され、この貫通孔を貫通するように、ダクト95が配置されている。円環板形状の清掃板59は、回転ドラム21に固定されておらず、清掃板59は回転ドラム21と一体に回転しない。一方清掃板59は、筐体6にも固定されていない。そのため、清掃板59は、手動でダクト95の回りに回転させることが可能とされている。
【0054】
水剤供給装置1を操作する操作者は、水剤供給装置1の前面側の下部開口15から下部空間12に手を差し入れることで、清掃板59にまで手を伸ばして、清掃板59の表面に落下した液滴を拭き取ることができる。後述する図10に示すように、載置台48を供給位置に移動させることで、清掃板59へのアクセス性が向上し、操作者が容易に清掃板59まで手を届かせることができる。このとき、清掃板59が手動で回転可能に設けられているために、操作者は、清掃板59を回転させながら清掃板59の全体を清掃することができる。清掃板59に落下した液滴を完全に拭き取り、筐体6内部に垂れた液滴を容易に除去できるので、衛生的であり、かつ、液滴を原因として錆が発生することを防止することができる。
【0055】
図8は、図2に示すVIII−VIII線に沿う水剤供給装置1の断面図である。図4,6および8に明確に図示されるように、本実施の形態の水剤供給装置1は、筐体6の内部に空気を供給するためのファン68と、筐体6の内部に流入する空気を濾過するエアフィルタ69と、を備える。筐体6の内部に空気を供給するための系統は、上述したダクト95に空気を供給する系統とは異なる、別の系統として設けられる。エアフィルタ69は、たとえばHEPAフィルタであってもよい。筐体6の天板10側には、ファン68を覆うように設けられ、ファン68へ流れる空気の流路を形成する、ファンカバー67が配置される。ファンカバー67は、ファン68が発生する運転音を低減し、当該運転音が水剤供給装置1の外部へ漏れることを抑制する、消音器の機能を有する。
【0056】
ファン68により、装置外部の空気が筐体6の内部に通風される。このとき空気はエアフィルタ69を通過するので、空気中に含まれる微粒子が除去され、空気の清浄度が向上する。ファン68を連続運転して空気を常時筐体6内へ移送し続けるようにすれば、筐体6の内部の気圧が筐体6の外部の気圧よりも高くなり、筐体6の内部が陽圧化するので、筐体6の内部から外部へ向かう空気の流れが発生する。
【0057】
これにより、水剤供給装置1の周辺の空気に含まれる浮遊菌が、たとえば下部開口15などから筐体6内へ侵入するのを防止できる。したがって、エアフィルタ69を通過させた空気を筐体6の内部に供給することにより、筐体6内部の空気清浄度を向上させ、筐体6の内部における雑菌およびウィルスの繁殖を抑制することができる。
【0058】
加えて、筐体6の内部から外部へ向かって空気が流れることにより、空気の流れに乗って塵埃が筐体6の外部から内部へ持ち込まれることを防止できる。筐体6内への塵埃の侵入を防止することができ、かつ、筐体6の内部に塵埃を留めずに空気の流れとともに塵埃を筐体6外へ排出することができるので、筐体の内部をより衛生的な環境に保つことができる。
【0059】
図9は、筐体6の内部の空気の流れを示す模式図である。図9には、水剤供給装置1の図4と同一の断面が図示されており、図9中の白抜き矢印が、筐体6内部の空気の流れを示している。図9に示すように、ファン68によって筐体6の上部空間11の内部へ流入した空気は、エアフィルタ69を通過して、回転ドラム21のポンプ保持体31の内側の空間へ流れる。空気はさらに、ポンプ保持体31に形成された吹出口70を経由して、ポンプ保持体31の外側の空間へ流れる。このようにして、エアフィルタ69を通過した清浄な空気が、筐体6の内部の下部空間12へ供給される。
【0060】
吹出口70から流出する空気は、回転ドラム21の径方向外側、すなわち、ドラム軸線L1から離れる方向へ流れ、供給ノズル36の周辺へ至る。その後空気の流れ方向が下向きに変わり、空気は、筐体6の内部における、供給ノズル36の先端の供給口36Aが配置されている領域を通過して流れる。
【0061】
水剤5は、水剤ボトル23から注出され、供給ノズル36へ流通し、供給口36Aから投薬ボトル2内へ供給される。投薬ボトル2への水剤5の供給が終了した後、供給口36Aに僅かに残存する水剤5に雑菌またはウィルスが繁殖しやすい。そのため、雑菌またはウィルスの繁殖し易い供給ノズル36の供給口36Aを清潔に保つ必要がある。本実施の形態では、供給ノズル36の近傍に、供給ノズル36へ向かって流れる空気の流れを形成するための吹出口70が形成される。この構成により、供給口36Aの周辺の領域にエアフィルタ69を経由した清浄な空気が供給されるので、供給口36Aの周辺の空気清浄度が高められる。したがって、筐体6の内部において特に雑菌またはウィルスの繁殖し易い供給口36Aにおいて雑菌またはウィルスが繁殖するのを、効果的に抑制することができる。
【0062】
供給口36Aの周辺の領域を通過して流れる空気はその後、ノズル取付板53の下方へ流れ、一部の空気は下部開口15から筐体6の外部へ流出する。また一部の空気は、ダクト95の表面に沿って流れる。
【0063】
上述したように、ダクト95の内部には発熱部94が配置され、発熱部94と熱交換して加熱された空気がダクト95内を流通する。発熱部94またはダクト95内を流通する空気から熱が伝達されることにより、ダクト95の表面が加熱されている場合がある。その場合、ダクト95の外面に沿う空気の流れが形成されていれば、この空気の流れによってダクト95からの放熱を筐体6の外部へ流出させることができ、ダクト95の表面が冷却されるので、ダクト95から下部空間12内への放熱を低減することができる。
【0064】
筐体6の内部に熱を発生する発熱部94が配置され、発熱部94が発生する熱をダクト95を経由させて筐体6の外部に排出する場合、ファン68によって筐体6の内部に供給される空気を当該ダクト95の表面に沿って流すことにより、ダクト95の表面を冷却できる。したがって、冷却ケース90に収容されていない水剤ボトル23、またはその他の水剤供給装置1の構成要素が、ダクト95からの放熱によって加熱されることを、抑制することができる。
【0065】
ダクト95の表面に沿って筐体6の底板9近傍まで流れた空気は、重量検出手段4を構成するケーシング46の下方の下部開口15を経由して、水剤供給装置1が設置される設置面と平行な方向へ流れ、水剤供給装置1の前方側の筐体6の外部へ流出する。ダクト95の表面を冷却して、ダクト95と熱交換して加熱された空気は、ダクト95への吸気口96aが開口する側へは流れない。そのため、加熱され温度が高くなった空気がダクト95内に流入することを防止できるので、発熱部94の冷却効率が低下することを抑制することができる。
【0066】
図10は、投薬ボトル2を供給位置に移動させた状態を示す断面図である。図10には、水剤供給装置1の図4と同一の断面が図示されており、上述した昇降装置50を使用して、載置台48に載置された投薬ボトル2を上昇させて、投薬ボトル2に水剤5を供給する供給位置に投薬ボトル2を移動させた状態を示す。
【0067】
図10に示すように、供給位置に配置されたとき、投薬ボトル2の開口部2Aは、前方カバー部18の後方に配置されており、筐体6の内部に位置する。一方、供給位置に配置されたとき、投薬ボトル2の載置台48に接触する底部側の一部は、筐体6の外部に位置する。投薬ボトル2内に水剤5を供給するために必要な投薬ボトル2の一部分のみを筐体6内へ配置し、投薬ボトル2の全体を筐体6の内部へ移動させないことにより、投薬ボトル2に付着した雑菌またはウィルスが筐体6内へ持ち込まれることを抑制できる。したがって、筐体の内部における雑菌またはウィルスの繁殖を、一層抑制することができる。
【0068】
このとき、上述したように、供給ノズル36の供給口36Aの周辺の領域に清浄な空気が流れ、この清浄な空気は、投薬ボトル2の開口部2Aの周辺にも流れる。空気中に含まれる浮遊菌が低減された雰囲気中で水剤5を投薬ボトル2へ供給できるので、供給口36Aから開口部2Aを経て投薬ボトル2へ流入する水剤5が、雑菌またはウィルスにより汚染されることを抑制することができる。
【0069】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 水剤供給装置、2 投薬ボトル、2A 開口部、5 水剤、6 筐体、12 下部空間、15 下部開口、18 前方カバー部、21 回転ドラム、23 水剤ボトル、36 供給ノズル、36A 供給口、48 載置台、50 昇降装置、67 ファンカバー、68 ファン、69 エアフィルタ、70 吹出口、90 冷却ケース、90a 扉、91 内部空間、92 断熱材、93 冷却部、94 発熱部、95 ダクト、96 吸気ダクト、96a 吸気口、97 連通部、98 排気ダクト、98a 排気口、99 ファン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水剤を収容した水剤ボトルから前記水剤を投薬ボトルに供給する、水剤供給装置であって、
筐体と、
前記筐体の内部の一部空間を取り囲むケーシングと、
前記ケーシングの内部を冷却する冷却部と、を備える、水剤供給装置。
【請求項2】
前記冷却部が発生する熱を前記筐体の外部に排出する排熱手段を備える、請求項1に記載の水剤供給装置。
【請求項3】
前記排熱手段は、前記筐体の内部と外部とを連通するダクトと、前記ダクト内に通風するファンと、を含み、前記ダクト内に空気が流入する吸気口と前記ダクト内から空気が流出する排気口とは前記筐体の外部に開口し、
前記冷却部は、熱を発生する発熱部を含み、前記発熱部は前記ダクト内に配置される、請求項2に記載の水剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−80955(P2012−80955A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227719(P2010−227719)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(510154420)高園テクノロジー株式会社 (29)
【Fターム(参考)】