説明

水力発電システム

【課題】建物の屋根から流れ落ちる水の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【解決手段】ロータ18を有するタービン16および縦樋20に配置される発電機19を備える。縦樋20は、屋根14から流れ落ちる水を樋28を介して受ける上端部22を有する。縦樋20は、上端部22からそれぞれの出口26a,26bへと延びる水路24a,24bを備える。それぞれの出口26a,26bは、水をロータ18に誘導して同じ方向に回転させる。水路24a,24bは、縦樋20に入った水がまず水路24aを通って流れそして出口26aから流れ出るように構成される。しかしながら、ひどい大雨のときには、水路24aは水路24bへオーバーフローできそして出口24bから流れ出てロータ18をさらに駆動する。調整貯水部32は縦樋20の上端部22に配置され、水路24aを通る水の定常的な流れをコントロールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根から流れ落ちる水の運動エネルギーを電気エネルギーへと変換する水力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
屋根から流れる雨水から電気を生成する水力発電システムを組み込むことが、以前から提案されている。例えば、そのようなシステムは特許出願DE29711026に記載されており、特許出願DE29711026では、屋根からの雨水を貯蔵する貯水部として機能する貯蔵タンクを有する、雨水を動力とする発電システムが開示されている。
【0003】
貯水部内の水位が所定の水位に達すると、バルブが自動的に開き、水が縦樋を通って流れ出ることが可能になり、これにより、タービンが駆動され、その結果、発電機が駆動されて電気が生成される。
【0004】
ここで従来技術の刊行物を引用する場合、それがどのようなものであっても、そのような引用は、その出版物がオーストラリアあるいは他の国においてその技術分野におけるよくある一般的な知識の一部を構成していることを認めているわけではないことは、理解されるべきである。
【発明の開示】
【0005】
本発明にかかる水力発電システムは、建物の屋根から流れ落ちる水の運動エネルギーを電気エネルギーへと変換する水力発電システムであって、タービンと、少なくとも1つの縦樋とを備える。タービンは、ロータを有している。少なくとも1つの縦樋は、水を受ける上端部を有している。縦樋は、少なくとも2つの水路をさらに備えている。各水路は、上端部からそれぞれの出口へ延びている。各出口は、ロータを同じ方向に回転させるために、水路に流れる水をロータへと誘導するように配置されている。水路は、少なくとも1つの水路が他の水路へオーバーフローすることができるように構成されている。
【0006】
それぞれ隣接する水路には次第に高さが増している上端が設けられており、これにより、水が一の水路の上端から隣接する水路へとオーバーフローする。
【0007】
水路の少なくとも2つは異なる水力径を有することができる。一の形態において、縦樋に入る水が最初に流れ込む第1の水路の水力径は、他の水路の水力径より小さい。
【0008】
一の形態においては、ロータは、水路からの水の流れ方向と平行な回転軸を有するアルキメデススクリューを備えている。
【0009】
水力発電システムは、1つあるいはそれ以上の樋と、1つあるいはそれ以上の屋根水路とをさらに備えることができる。1つあるいはそれ以上の樋は、屋根から流れ落ちる水を受けるように構成されており、水を1つのあるいは各縦樋へと誘導する。各屋根水路は、屋根に配置されるとともに、屋根の上部から樋へ斜めに延びている。
【0010】
システムは、1つあるいはそれ以上の水貯蔵タンクをさらに備えることができる。1つあるいはそれ以上の水貯蔵タンクは、その1つのあるいは各縦樋と流体連通状態にあり、縦樋を通る水を蓄積する。
【0011】
縦樋には、水路の少なくとも1つに対して水流調整貯水部をさらに設けることができる。貯水部は、その水路と流体連通状態にある出口を備えている。出口は、その水路の上端より下方の位置に形成されるとともに、その水路を下って貯水部に集められる水の流れを調整するよう寸法付けられている。各貯水部は、第1壁と第2壁との間に形成することができる。第1壁は、その水路の第1壁であって、その水路の上端を構成している。第2壁は、第1壁から間隔をあけて配置されている。第2壁は、第1壁の上端の下方に配置されている上端を有している。出口は、第2壁において第2壁の上端の下方に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
単なる具体例としての本発明の実施の態様を、添付の図面を参照して説明する。
【図1】図1は、本発明にかかる水力発電システムの実施形態の概略図である。
【図2】図2は、水力発電システムに組み込まれた縦樋の上面立面図である。
【図3】図3は、水力発電システムの側面立面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
添付図面には、建物14の屋根12から流れ落ちる水の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する、本発明にかかる水力発電システム10の実施形態を示す。システム10は、タービン16と、少なくとも1つの縦樋20とを備える。タービン18は、ロータ18と、ロータ20によって駆動される発電機19とを備える。少なくとも1つの縦樋20は、屋根12から流れ落ちる水を受ける上端部22を有する。縦樋20は、上端部24からそれぞれの出口26a,26b(以下、まとめて「出口26」という)へと延びる水路24a,24b(以下、まとめて「水路24」という)を備える。それぞれの出口26は、ロータ18を同じ方向に回転をさせるために、それぞれの出口26から流れてくる水をロータ18上に誘導するように配置される。本明細書において以下により詳細に説明するように、水路24は、さらに、水路24aが水路24bへとオーバーフローするように構成されている。
【0014】
上側および下側固定リング21a,21bは、ロータ18が回転するとき、タービン16を縦樋22内で所定位置に保持する。リングの一方あるいは両方は、発電機19とエネルギー管理システムあるいは蓄積装置(どちらも図示せず)との間のケーブル50が回転するよう用いることもできる。
【0015】
システム10は、屋根12から水を受けてその水を縦樋20に誘導する樋28をさらに備える。水路24a,24bは、縦樋20に入った水が、まず水路24aを通って流れそして出口26aから流れ出てロータ18へと流れて発電機19を駆動するように構成される。しかしながら、ひどい大雨のときには、水路24aは水路24bへとオーバーフローすることができる。その後、オーバーフローした水は、水路24bを通り出口26bを通って流れて、これにより、ロータ18を回し、その結果、発電機19をさらに駆動する。
【0016】
水路24aから水路24bへの水のオーバーフローは、次第に高さが増しているそれぞれの上端を有する水路24の形成により促進され、その結果、一方の水路の、例えば水路24aの上端からオーバーフローする水が、続いて隣接する水路24bに流れ込むことができる。この点に関して、水路24aが上端30aを有し、そして、水路24bが上端30aより高い上端30bを有することが図1からわかるであろう。こうして、水路24aが水で満たされてオーバーフローする場合、そのオーバーフローは上端30aを越えて流れ出て水路24bへと流れ込む。例えばさらに第3の水路を備える縦樋20の場合、水が第1水路24aの上端30aおよび第2水路24bの上端30bの両方からオーバーフローした後に、水は第3の水路に流れ込むことになろうことは理解されよう。
【0017】
水路24aを通る水の定常的な流れをコントロールするために、縦樋22の上端部20には水流調整貯水部32が設けられている。貯水部32は、水路24aの上端30aを含む垂直壁36と、下方へ傾斜する底板37と、壁36から間隔をあけて配置された第2垂直壁38とを備える。
【0018】
貯水部32には、水路24aへの2つの出口が設けられている。第1出口34は、壁38の底板37との接続部分近くに形成された開口あるいは一連の孔を備える。第1出口の上方に間隔をあけて配置される第2出口は、壁38の上端部の近くに形成される単なる開口40である。開口40は、要するに、水路24aへの余水路を構成する。このように、水が開口40よりも下の水位で貯水部に集められたとき、水は第1出口34を介して水路24aへ流れ込む。出口34は、水頭が貯水部32内に含まれている場合には、水路24aを下る水の流れが定常的に連続であるように寸法付けられる。雨水の量が十分に増加すれば、水はまず開口40を通って流れ、そして水路24aに流れ込み、タービン16を駆動するさらなる圧力を与えることになる。もし貯水部32における水の水位が出口34から流れ出て開口40を通って流れる流速よりも十分に大きく増加したとき、水は次いで上端30aからオーバーフローして第2水路24bを流れ下りることができる。
【0019】
水路24は、同じかあるいは異なる水力径を有することができる。しかしながら、好ましい実施形態において、水路24aは、水路24bより小さい水力径を有することができる。水路24aの水力径、開口部34のサイズ、および貯水部32の容量の選択は、水路24aを通る水の流れが一定であるように選択することができる。
【0020】
縦樋20を通りロータ18を通って流れる水は、縦樋20の末尾部42を介して水タンク44へと流れることができる。水タンク44は、地上あるいは地下のいずれかに配置することができる。タンク44に雨水を貯めて、その雨水を庭の散水、屋外エリアの洗浄、洗濯機および食器洗い機などの非飲用用途を含む種々の目的に用いることができ、あるいは適切なフィルタを配置することによって飲み水に用いることもできる。さらに、タンク44の水を、太陽熱システムを通して汲み上げてシャワーおよび洗濯機など、建物14内で用いる温水として提供することもできるし、あるいは加温する目的で放熱器を通して汲み上げることもできる。このような実施形態において、理想的には、タンク44からの水の汲み上げに、屋根12上の太陽電池によって生成された電気を動力として利用することができる。タンク44には、オーバーフローバルブ46を設けることができる。オーバーフローバルブ46は、タンク44に対する水の圧力が所定レベルより大きい場合、過剰な水をタンク44から流出させるように開くように構成される。なお、所定レベルとは、縦樋20全体が水でいっぱいになる前に超えるであろうレベルである。
【0021】
図2には、水路24aが要するに縦樋内にパイプを備えている場合の縦樋20の特定の構成を示す。樋28は、水路24aの入口または開口に水を直接供給する。水路24aは、水で完全にいっぱいになったとき、その水は水路24bへとオーバーフローすることができる。水路24bは、水路24aの外側と、縦樋20を形成する外側のパイプ46の内側との間に縦樋20の領域を構成している。
【0022】
図3を参照すれば、水力発電システム10は、また、屋根12の上部から樋28へ斜めに延びる1つあるいはそれ以上の屋根水路48を有することができることがさらにわかるであろう。屋根水路48は、屋根12を流れる雨水を樋28内の水の流れの方向に対して鋭角となる方向に流れるように誘導するように機能する。これにより、樋28内の水の運動量あるいは速度が向上し、これにより、水の運動エネルギーが増加する。貯水部32の状態および開口部34のサイズによっては、水に提供される運動エネルギーの増加により、タービンからの電気エネルギー出力をより大きくすることができる。
【0023】
タービン16によって生成された電気は、ケーブル50を介して、電気を蓄積する蓄電池を有することができる電力管理システムに供給することができる。そして、管理システムは、タービン16によって発生された電力を管理でき、これにより、建物14内の電気製品に電力を供給することができ、あるいは公共配電網本線に電力を送出することさえできる。
【0024】
ここまでに本発明の実施形態を詳細に説明したので、基本的な発明概念から逸脱することなく多くの変更・変形を行いうることは、該当する当業者には明らかであろう。例えば、システム10は、2つの水路24a,24bに分離されている縦樋を示している。しかしながら、先述したように、縦樋20を2つよりも多い水路に分離することもできる。さらに、アルキメデススクリュー形態のロータ18が非常に効率的な態様を構成すると考えられているが、ホイールあるいはプロペラを用いることもできる。また、開口40として上述し図示した貯水部32の第2出口は、他の態様をとることもできる。例えば、壁38を、単純に開口40の底部と等しい高さで形成することができ、これにより、壁38の最上端は水が超えて流れる堰堤壁として機能する。さらなる変形においては、開口40を、壁38において同じ高さにある複数の孔と置き換えることもできる。
【0025】
このようなあらゆる変更は、その内容が上記説明から決定されるべきである本発明の範囲内であるとみなされる。
【0026】
本願の特許請求の範囲および発明の説明において、明示された言葉あるいは言外の意味によってそれ以外となることが必要となる状況を除いて、「備える」、あるいは「備えている」などの変形は、包含的な意味で用いられている、つまり、記載された特徴が含まれることを特定しているのであって本発明の種々の態様にさらなる特徴が含まれることすなわち追加されることを排除するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根から流れ落ちる水の運動エネルギーを電気エネルギーへと変換する水力発電システムであって、
ロータを有するタービンと、
前記水を受ける上部端を有する少なくとも1つの縦樋であって、前記縦樋はさらに少なくとも2つの水路を備えており、各水路は前記上端部からそれぞれの出口へ延びており、各出口は前記ロータを同じ方向に回転させるために水路に流れる水をロータへと誘導するように配置されており、前記水路は少なくとも1つの水路が他の水路へオーバーフローすることができるように構成されている縦樋と、
を備える水力発電システム。
【請求項2】
隣接する水路には次第に高さが増している対応する上端が設けられており、これにより、水が一の水路の上端から隣接する水路へとオーバーフローする、
請求項1に記載の水力発電システム。
【請求項3】
前記水路は、異なる水力径を有している、
請求項1または2に記載の水力発電システム。
【請求項4】
前記縦樋に入る水が最初に流れ込む第1の水路の水力径は、他の水路の水力径より小さい、
請求項3に記載の水力発電システム。
【請求項5】
前記屋根から流れ落ちる水を受けるように構成され水を1つのあるいは各縦樋へと誘導する1つあるいはそれ以上の樋と、
1つあるいはそれ以上の屋根水路であって、各屋根水路は前記屋根に配置されるとともに前記屋根の上部から前記樋へ斜めに延びている屋根水路と、
をさらに備える請求項1から4のいずれかに記載の水力発電システム。
【請求項6】
前記水路の少なくとも1つに対して水流調整貯水部をさらに備え、
前記貯水部は、その水路と流体連通状態にある出口を備えており、
前記出口は、その水路の前記上端より下方の位置に形成されるとともにその水路を下って貯水部に集められる水の流れを調整するよう寸法付けられている、
請求項1から5のいずれかに記載の水力発電システム。
【請求項7】
各貯水部は、その水路の第1壁であってその水路の前記上側エッジを構成している第1壁と、前記第1壁から間隔をあけて配置される第2壁であって前記第1壁の前記上端の下方に位置する上端を有している第2壁との間に形成されており、
前記出口は、前記第2壁において前記第2壁の前記上端の下方に形成されている、
請求項6に記載の水力発電システム。
【請求項8】
前記ロータは、前記水路からの水の流れ方向と平行な回転軸を有するアルキメデススクリューを備えている、
請求項1から7のいずれかに記載の水力発電システム。
【請求項9】
その1つのあるいは各縦樋と流体連通状態にあり、その縦樋を通る水を蓄積する1つあるいはそれ以上の水貯蔵タンクをさらに備える、
請求項1から8のいずれかに記載の水力発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−92070(P2009−92070A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−261351(P2008−261351)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(508302877)ドラゴン エナジー プライベート リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】DRAGON ENERGY PTE.LTD.
【住所又は居所原語表記】Republic of Singapore,Singapore 048623,Singapore Land Tower,50 Raffles Place #17−01
【Fターム(参考)】