説明

水和鉄が作り出す酸化皮膜及びコロイドによる乾燥野菜及び果物の鮮度保持製造方法

【課題】乾燥パパイヤの長期にわたる鮮度保持を可能にした製造方法を提供する。
【解決手段】青パパイヤをカットし、pH(5.5〜7)の鉄(Fe)を主要構成成分とする水溶液に浸漬した後、乾燥する。この過程で、青パパイヤ表皮,表皮内に非晶質の鉄水和化合物の複合体が形成されると共に、表皮に非活性の酸化鉄皮膜が形成されることにより、酸化防止、嫌気性菌の繁殖抑制、及び酵素活性を抑える機能が付加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非晶質鉄水和化合物(5FeO・nHO)の複合体により、野菜・果物の外部と内部の鮮度保持を可能にした乾燥野菜・乾燥果物の製造方法に関するものである。
[考案の背景]
【0002】
このたび、国内に巻き起こった青パパイヤブームで、青い完熟前のパパイヤのみに、健康維持、ダイエットにも効果のあるパパイン酵素が含まれている事は周知のこととなりました。
しかし、青パパイヤは現段階沖縄産のものしか日本では、手に入れることができません。しかも沖縄産の青パパイヤも木から収穫して手元に届くまで時間がかかり含有するパパインの量も減少してしまい、せっかくの青パパイヤの価値が下がってしまいます。
そこで、私どもの開発したフェリハイドライト腐植複合体の製造過程にヒントを見出したのです。(再公表特許文献1参照)
二価鉄、三価鉄の水和イオンは、タンパク質、脂質の持っているカルボキシル基の酸素と配位結合して高分子のコロイドを形成します。このコロイドの利用方法に着目いたしました。
[再公表特許文献1] 国際公開番号 WO 2002/079483
[発明の開示]
[発明が解決しようとする課題]
【0003】
従来乾燥パパイヤはカットして、天日干し、遠赤外線や乾燥ドライヤーによるもので、カット面に皮膜を作る工程はありません。
したがって従来の乾燥青パパイヤは、空気に触れて酸化スピードを加速度を伴い上げてゆきます。しいては、水に戻した時のフレッシュさも、パパインの含有量も激減してしまいます。
本発明は、従来の乾燥パパイヤではなし得ない長期の乾燥パパイヤの鮮度保持を提供することを目的としています。
[課題を解決しようとする手段]
【0004】
本発明は堆積岩土壌の無機酸抽出物の水溶液(以後P液とする)中のFe(OH)とFe(OH)及び硫酸根(SO2−)の特性を利用したもので、P液の5,000倍希釈液(pH5.5〜6.0)にあらかじめカットしたパパイヤを約3分間浸漬することにより、鉄イオンFe(OH)とFe(OH)とFe(OH)2+はパパイヤの表皮組織細胞から内部に入り、表皮においては、表皮組織のタンパク質と脂質のカルボシキル基やカルボニル基と非晶質鉄水和化合物(5FeO・nHO)の複合体を形成する。しかし乾燥することにより表皮pHの低下が起こるためFe(OH)が酸素と化合して非活性の酸化皮膜となり、非晶質鉄水和化合物の複合体も存在する2重皮膜を形成する。
【0005】
酸化皮膜と非晶質鉄水和化合物の複合体の表面積は大きいため、酸化促進の原因となる酸素や酵素活性の原因になるエチレンガスの吸着がおこり酸化防止、嫌気性菌の繁殖抑制、抗菌、制菌、及び酵素活性をおさえることを可能にする。
内部に吸収された鉄イオンと硫酸根により表皮内において嫌気性菌の繁殖を抑え、病原菌・腐敗菌の滅菌の効果がある。さらに表皮内においても表皮と同様非晶質鉄水和化合物(5FeO・nHO)の複合体が形成され、悪臭及び酸化促進の原因ガスも除去効果もあります。
本発明には、パパイヤのpH調整や溶液のpH調整は行わなくても乾燥過程における水分変化によるpH変化が上記のような複数の鉄イオン反応を可能にするのも大きな特徴です。
【0006】
以上のように、本発明のポイントは、pH調整を水分変化で引き起こし、鉄イオンの複数の有効反応を引き起こすことを可能にしている所である。表皮の内部に、非晶質鉄水和化合物の複合体、表皮に非晶質鉄水和化合物の複合体の皮膜及び酸化鉄皮膜の形成により乾燥パパイヤの鮮度保持を可能にする。
本発明は、パパイヤの鮮度保持を目的で開発しましたが、パパイヤの鮮度保持に限定するものでなく、多種の乾燥野菜、乾燥果物の鮮度保持、肉類、魚類他乾燥食品の鮮度保持へ本発明の趣旨の範囲内で改変することができるものである。
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。
[発明の実施するための最良の形態]
【0007】
本実施形態は、青パパイヤをカットした後、ミネラル水溶液に浸漬し、乾燥することにより 表皮の内部に、非晶質鉄水和化合物の複合体、表皮に非晶質鉄水和化合物の複合体の皮膜及び酸化鉄皮膜を形成し鮮度保持をほどこした乾燥パパイヤを製造する方法である。作業の流れは、図1に示す。
本明細書では、非晶質鉄水和化合物(5FeO・nHO)の複合体とは、非晶質フェリハイドライト複合体と呼ぶこともできるキレート結合による非晶質鉄水和化合物と有機物の複合体である。フェリハイドライトは有機物のカルボキシル基やカルボニル基のOH端、O端と配位結合する性質があり凝集体を形成する。比表面積が約200(m/g)と大きく、有機物のOH端、O端との反応に供される場が広いため、触媒能が高く,凝集体を形成する能力が高いことがわかっている。
【0008】
本実施形態では、ミネラル液として、玄武岩、安山岩の堆積岩土壌に、無機酸を添加して抽出した天然由来のイオン化ミネラル濃縮液を用いる。
本明細書では、このイオン化ミネラル濃縮液を、ミネラル液と称する。
ミネラル液は、玄武岩、安山岩の堆積岩土壌(粘土)に、濃度10〜20重量%の硫酸水溶液を添加して酸可溶成分を抽出したものである。
本実施形態のミネラル液は、鉄(Fe)を主要構成成分とし、その他マンガン(Mn),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca)等のカチオンも含む。ただしマグネシウム量及びカルシウム量の和は、ミネラル液に含有される鉄の量の30重量%未満である。本実施形態のミネラル液は、鉄を7,000〜13,000(ppm)程度含み、pHは、約0.27である。また、本実施形態のミネラル液に含まれる高分子の径は、3〜5(nm)程度であり、パパイヤの表皮細胞内に吸収される。
【0009】
本実施形態のミネラル液に含まれる鉄は、pHによって異なる形態で存在する。PH3以下では、鉄はFe3+、pH3〜4では、Fe3+とFe(OH)、pH4〜5では、Fe3+Fe(OH)2+Fe(OH)、pH5より高い
pHでは、Fe(OH)2+とFe(OH)とFe(OH)として存在する。非晶質鉄水和化合物の複合体の材料となるのは、Fe(OH)であるためpHを5.5〜7のミネラル液に浸漬することで、表皮内、表皮に非晶質鉄水和化合物(5FeO・nHO)の複合体を形成できる。次にパパイヤを乾燥することで、水分量の急激な変化に伴いpHの低下と共に鉄イオンの反応が変化してゆく。イオンの価数変化に伴い結晶化が起こるが、水分も減少するため、非晶質の鉄水和化合物の複合体が残留することになり、
上記記載の乾燥パパイヤを製造することができる。
【0010】
なお、本実施形態で用いられるミネラル液の一例の組成を、図2に示す。また、本実施形態で用いられるミネラル液を硫酸で抽出した残渣の一例を、メスバウア分光分析法測定した結果を図3に示す。
なお乾燥方法は、遠赤外線やドライヤーを用いて約4時間の乾燥により水分量12%以下にしている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
[図1]乾燥パパイヤの製造工程図
[図2]ミネラル液の一例の組成
[図3]ミネラル液を硫酸で抽出した残渣の一例の測定結果
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥野菜及び果物の外部のフェリハイドライト様酸化皮膜による鮮度保持製造方法(酸素吸着による酸化防止、鮮度保持効果、嫌気性菌繁殖抑制による抗菌及び制菌効果)
【請求項2】
乾燥野菜及び果物の内部のフェリハイドライト様コロイドによる鮮度保持製造方法(鉄と硫酸根を含むイオン群による内部組織の鮮度保持)