説明

水平同期信号出力回路およびこれを含む映像再生装置

【課題】 マスク機能を持たないPLL用回路を使用する場合であっても、簡単な構成で、コピーガード信号に起因する再生映像の乱れが生じない水平同期信号出力回路、および、これを含む映像再生装置を提供する。
【解決手段】 水平同期信号出力回路は、映像信号が入力される同期分離回路と、同期分離回路から出力される複合同期信号が入力されるPLL回路と、PLL回路から出力されるPLL出力信号が入力される第1タイミング回路と、同期分離回路から出力される複合同期信号および垂直同期信号が入力される第2タイミング回路と、第1タイミング回路の出力信号および第2タイミング回路の出力信号が入力されて映像信号の水平同期信号を出力するゲート回路と、を備え、PLL回路が、発振素子回路と、PLL回路のPLL周波数を可変する周波数可変回路と、分周器と、を含み、分周器の出力信号をPLL出力信号とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号に含まれる水平同期信号を出力する水平同期信号出力回路およびこれを含むディスプレイ、プロジェクター、もしくは、ディスク再生装置等の映像再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映画等のコンテンツの著作権を保護することを目的にして、映像信号には、コピーガード信号が含まれる場合がある。コピーガード信号が付加されている映像信号は、ディスプレイ等の表示装置では正常に表示できる一方で、ビデオテープレコーダ等の記録装置では良好な画質を保って映像信号を記録できないようにすることができる。代表的には、アナログ映像信号のマクロビジョン信号があり、映像信号の垂直帰線期間(ブランク期間)に疑似同期パルスを重畳させるものがある。この場合、ビデオテープレコーダの自動利得制御回路で疑似同期パルスを正常な同期パルスと誤って判別させることにより、映像信号の記録が正常に行えないようにする。
【0003】
しかし、ディスプレイ等の表示装置に用いられる映像信号の同期分離IC(集積回路)においても、コピーガード信号が入った垂直同期信号後の垂直帰線期間に、水平同期信号を正確に出力できない場合がある。その結果、同期分離ICの後段に接続されたPLL(Phase Locked Loop;位相同期)回路が、供給すべきクロックを正確に生成できなくなって水平同期信号が乱れ、再生映像が乱れるという問題がある。
【0004】
従来には、垂直帰線期間において、画像処理用クロック生成PLL回路に位相比較器の出力を保持させる、いわゆるマスクをかけることにより、この期間にPLL処理を中断し、この問題に対応する水平同期信号出力回路がある(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−94825号公報 (第1図)
【0006】
しかしながら、多くのマスク機能を持たないPLL回路を水平同期信号出力回路に使用する場合には、従来技術の方法は実施が困難である。すなわち、PLL用回路の選定に際し、コピーガード信号に起因する再生映像の乱れの問題に対処するために、水平同期信号出力回路を構成する部品の選択肢が限定されてしまう、という問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、水平同期信号出力回路およびこれを含む映像再生装置に関し、マスク機能を持たないPLL用回路を使用する場合であっても、簡単な構成で、コピーガード信号に起因する再生映像の乱れが生じない水平同期信号出力回路、および、これを含む映像再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水平同期信号出力回路は、映像信号が入力される同期分離回路と、同期分離回路から出力される複合同期信号が入力されるPLL回路と、PLL回路からの出力信号が入力される第1タイミング回路と、同期分離回路から出力される複合同期信号および垂直同期信号が入力される第2タイミング回路と、第1タイミング回路の出力信号および第2タイミング回路の出力信号が入力されて映像信号の水平同期信号を出力するゲート回路と、を備え、PLL回路が、発振素子回路と、PLL回路のPLL周波数を可変する周波数可変回路と、分周器を含み、分周器の出力信号をPLL出力信号とする。
【0009】
好ましくは、本発明の水平同期信号出力回路は、PLL回路が、水晶発振子を含む発振素子回路と、バリアブルキャパシタを含む周波数可変回路と、を有するVCXO(電圧制御水晶発振器)を備える。
【0010】
好ましくは、本発明の水平同期信号出力回路は、PLL回路のPLL周波数の可変範囲が、水晶発振子の発振周波数の±1%の範囲に設定される。
【0011】
好ましくは、本発明の水平同期信号出力回路は、PLL回路が、位相検波器と、LPFと、を含む。
【0012】
好ましくは、本発明の水平同期信号出力回路は、第1タイミング回路が、入力されるPLL出力信号に基づいて、同期分離回路から出力される複合同期信号に含まれる水平同期信号のパルス幅よりもパルス幅が広いパルス信号を出力する。
【0013】
好ましくは、本発明の水平同期信号出力回路は、第1タイミング回路が、PLL出力信号として分周器からの複数のタイミングパルス信号を受けて水平同期信号のパルス幅2つ分の時間にほぼ等しいパルス幅をもつパルス信号を出力する論理回路を含む。
【0014】
また、本発明の水平同期信号出力回路は、第2タイミング回路が、同期分離回路から出力される複合同期信号に基づいて、複合同期信号に含まれる水平同期信号の周波数に等しいパルス成分を有し、かつ、映像信号の垂直帰線期間において極性が一致したパルス信号を出力する。
【0015】
好ましくは、本発明の水平同期信号出力回路は、第2タイミング回路が、複合同期信号に含まれる垂直同期信号部分を反転したパルス信号を出力する第1論理回路と、第1論理回路からのパルス信号を時間シフトする単安定マルチバイブレータと、複合同期信号の水平同期信号部分を除いたパルス信号を出力する第2論理回路と、を含む。
【0016】
好ましくは、本発明の水平同期信号出力回路は、第2タイミング回路が、単安定マルチバイブレータからの出力信号および第2論理回路からの出力信号を受けて複合同期信号に含まれる水平同期信号の周波数に等しいパルス成分を有し、かつ、映像信号の垂直帰線期間において極性が一致したパルス信号を出力する論理回路を含む。
【0017】
また、本発明の映像再生装置は、上記のいずれか水平同期信号出力回路を含む。
【0018】
以下、本発明の作用について説明する。
【0019】
本発明の水平同期信号出力回路は、同期分離回路と、PLL回路と、第1タイミング回路と、第2タイミング回路と、第1タイミング回路の出力信号および第2タイミング回路の出力信号が入力されるゲート回路と、を備える。映像信号が同期分離回路に入力されると、ゲート回路から映像信号の水平同期信号が出力される。本発明の映像再生装置は、この水平同期信号出力回路を含み、出力された水平同期信号に基づいて、映像信号を表示する。
【0020】
映像信号が入力された同期分離回路からは、複合同期信号および垂直同期信号が出力される。複合同期信号は、PLL回路と、第2タイミング回路とに入力される。また、垂直同期信号は第2タイミング回路に入力される。また、第1タイミング回路には、PLL出力信号として分周器からの複数のタイミングパルス信号が入力される。
【0021】
複合同期信号が入力されるPLL回路は、好ましくは、位相検波器と、LPFと、VCXO(電圧制御水晶発振器)と、分周器とを含み、分周器の出力信号をPLL出力信号とする。PLL回路は、水晶発振子を含む発振素子回路と、バリアブルキャパシタを含む周波数可変回路と、を有するVCXO(電圧制御水晶発振器)を備え、好ましくは、PLL回路のPLL周波数の可変範囲が、水晶発振子の発振周波数の±1%の範囲に設定される。したがって、PLL回路は、水平同期信号を含む狭い周波数範囲のみにロックするので、その結果、複合同期信号に含まれる垂直同期パルス、等価パルス、コピーガード信号を除去したPLL出力信号、つまり、ほぼ水平同期信号成分のみのパルス信号を出力することができる。
【0022】
PLL回路からのPLL出力信号は、ほぼ水平同期信号成分のみを含むパルス信号であるが、PLL回路に起因するジッターを含む。そこで、PLL出力信号は、後述する第2タイミング回路から出力されるパルス信号から水平同期信号を取り出すためのゲート信号として利用する。PLL出力信号が入力された第1タイミング回路は、PLL出力信号として分周器からの複数のタイミングパルス信号を受けて、複合同期信号に含まれる水平同期信号のパルス幅よりもパルス幅が広いパルス信号を出力し、ゲート回路に入力する。好ましくは、第1タイミング回路は、PLL出力信号として前記分周器からの複数のタイミングパルス信号を受けて水平同期信号のパルス幅2つ分の時間にほぼ等しいパルス幅をもつパルス信号を出力する論理回路を含んでいてもよい。
【0023】
また、第2タイミング回路は、複合同期信号に含まれる垂直同期信号部分を反転したパルス信号を出力する第1論理回路と、第1論理回路からのパルス信号を時間シフトする単安定マルチバイブレータと、複合同期信号の水平同期信号部分を除いたパルス信号を出力する第2論理回路と、単安定マルチバイブレータからの出力信号および第2論理回路からの出力信号を受けて複合水平同期信号を出力する論理回路と、を含み、同期分離回路から出力される複合同期信号に含まれる垂直同期信号部分を反転した信号を出力してゲート回路に入力する。つまり、第2タイミング回路は、垂直同期パルス期間の極性を反転して、複合同期信号に含まれる水平同期信号の周波数に等しいパルス成分を有し、かつ、映像信号の垂直帰線期間において極性が一致したパルス信号を、複合水平同期信号として出力する。その結果、出力される複合水平同期信号に含まれる水平同期信号は、極性を全体として一致させたパルス信号となる。したがって、第2タイミング回路から出力される複合水平同期信号は、コピーガード信号等が含まれているもののジッターのない正確な水平同期信号を含み、これがゲート回路に入力される。
【0024】
その結果、第1タイミング回路の出力信号および第2タイミング回路の出力信号が入力されるゲート回路からは、コピーガード信号等が除去された映像信号の水平同期信号が出力される。映像信号がコピーガード信号を含む場合であっても、安定した正確な水平同期信号が出力され、再生映像の乱れが生じない。また、垂直同期期間にマスクをかける必要がないので、水平同期信号出力回路を構成する部品の選択肢を広げることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の水平同期信号出力回路およびこれを含む映像再生装置は、コピーガード信号の影響を受けずに、安定した映像信号を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の水平同期信号出力回路およびこれを含む映像再生装置は、マスク機能を持たないPLL用回路を使用する場合であっても、簡単な構成で、コピーガード信号に起因する再生映像の乱れが生じない水平同期信号出力回路を提供するという目的を、映像信号が入力される同期分離回路と、同期分離回路から出力される複合同期信号が入力されるPLL回路と、PLL回路からの出力信号が入力される第1タイミング回路と、同期分離回路から出力される複合同期信号および垂直同期信号が入力される第2タイミング回路と、第1タイミング回路の出力信号および第2タイミング回路の出力信号が入力されて映像信号の水平同期信号を出力するゲート回路と、を備え、PLL回路が、発振素子回路と、PLL回路のPLL周波数を可変する周波数可変回路と、分周器とを含み、分周器の出力信号をPLL出力信号とすることにより、実現した。
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態による水平同期信号出力回路およびこれを含む映像再生装置について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の好ましい実施形態による水平同期信号出力回路1について説明する図である。水平同期信号出力回路1は、映像を再生するプロジェクター(図示しない)に含まれている。水平同期信号出力回路1は、映像信号が入力する入力端子2に接続する同期分離回路3と、PLL回路4と、第1タイミング回路5と、第2タイミング回路6と、出力端子8が接続するゲート回路7と、を備える。水平同期信号出力回路1は、入力端子2に映像信号S0が入力すると、その出力端子8から水平同期信号Hsyncを出力する。プロジェクターは、この水平同期信号Hsyncに基づいて水平同期をとり、映像信号S0を映写し、再生する。
【0029】
図2(a)は、映像信号S0を説明する概略図である。同期分離回路3は、入力端子2から映像信号S0が入力すると、映像信号S0から複合同期信号(Composite Sync)CSと、垂直同期信号Vsyncとを、それぞれ出力する。複合同期信号CSは、水平同期信号Hsyncと、前置等価パルス信号(図2(a)において省略)と、垂直同期信号Vsyncと、後置等価パルス信号GTと、コピーガード信号CGと、を含む映像信号S0を、同期分離して得た信号である。コピーガード信号CGは、垂直同期信号Vsyncに続く後置等価パルス信号GTの後の期間、つまり、図示する垂直帰線期間(ブランク期間)Vblankに重畳される疑似同期パルスであり、パルス幅約2μsecの4つのパルスが約7μsecの間隔で一つのブロックを構成して、8つ分の水平同期信号Hsyncに続いて重畳される。また、コピーガード信号CGは、水平同期信号Hsyncよりも高い周波数のパルス信号であり、図示した場合では、約111KHzである。なお、垂直同期信号Vsyncは、約31.5KHzのパルス信号であり、また、後置等価パルス信号GTは、約31.5KHzのパルス信号である。
【0030】
図2(b)は、複合同期信号CSに含まれる水平同期信号Hsyncを抜き出して説明した概略図であり、好ましくは、水平同期信号Hsyncは15.75KHzのパルス信号であって、パルス間隔が約63μsec、パルス幅が約5μsecである。映像信号S0を映写し、再生するために、水平同期信号出力回路1は、複合同期信号CSからコピーガード信号CGが除去された水平同期信号Hsyncを出力する。つまり、複合同期信号CSは、水平同期信号Hsyncに対して、前置等価パルスと、垂直同期信号Vsyncと、後置等価パルス信号GTと、コピーガード信号CGとが、順番にそれぞれの期間重畳して構成されている信号であるので、水平同期信号出力回路1は、この水平同期信号Hsyncのみを抽出して出力する。なお、水平同期信号Hsyncが映像信号S0に含まれるときは、垂直同期信号Vsyncが重畳している期間においては、水平同期信号Hsyncの極性は反転している。
【0031】
水平同期信号出力回路1のPLL回路4には、同期分離回路3から複合同期信号CSが入力される。PLL回路4は、位相検波器41と、LPF(ローパスフィルター)42と、PLL回路4のPLL周波数fpを可変するVCXO(電圧制御水晶発振器)の周波数可変回路43と、VCXOの発振素子回路44と、分周器45とを含む。なお、VCXOは、周波数可変回路43と、発振素子回路44とから構成される。位相検波器41には、複合同期信号CSと、分周器45の出力信号でありPLL回路4の出力信号であるPLL出力信号SPが入力され、PLLループが形成される。その結果、PLL回路4は、複合同期信号CSから、PLL周波数fpに位相がロックしたパルス信号を出力する。
【0032】
図3は、水平同期信号出力回路1の詳細を説明する図である。図3には、PLL回路4の一部分(VCXOの周波数可変回路43、VCXOの発振素子回路44、および分周器45)と、第1タイミング回路5と、第2タイミング回路6と、ゲート回路7と、出力端子8とが示されている。図4は、水平同期信号出力回路1におけるパルス信号波形を表す波形図であり、同期分離回路3が出力する複合同期信号CSと、垂直同期信号Vsyncと、第2タイミング回路6の出力信号S2と、図3の点a〜点eにおけるパルス信号波形と、第1タイミング回路5の出力信号S1と、水平同期信号Hsyncと、を示す。さらに、図5は、水平同期信号出力回路1におけるパルス信号波形を表す波形図であり、分周器45の点A〜Cにおけるパルス信号波形を示す。分周器45の点Bおよび点Cでのパルス信号は、第1タイミング回路5への入力信号となり、第1タイミング回路5からは出力信号S1が出力される。
【0033】
まず、水平同期信号出力回路1の第2タイミング回路6の構成と動作を説明する。複合同期信号CSは、映像信号S0を位相反転した同期パルス信号波形に近似したパルス信号であり、図4においては、コピーガード信号CGの2つ目のブロック以後は省略されている。第2タイミング回路6は、複合同期信号CSに含まれる垂直同期信号Vsyncの部分を反転したパルス信号を出力する第1論理回路と、第1論理回路からのパルス信号を時間シフトする単安定マルチバイブレータと、複合同期信号の水平同期信号部分を除いたパルス信号を抽出して出力する第2論理回路と、単安定マルチバイブレータからの出力信号および第2論理回路からの出力信号を受けて複合水平同期信号S2を出力する論理回路と、を含む。具体的には、第1論理回路は、複数の論理回路から構成され、複合同期信号CSおよび垂直同期信号Vsyncが入力されるAND回路61と、AND回路61の出力(点a)が入力されるNOT回路62と、NOT回路62の出力(点b)および垂直同期信号Vsyncが入力されるAND回路63と、を含む。また、第2論理回路は、垂直同期信号Vsyncが入力されるNOT回路64と、NOT回路64の出力および複合同期信号CSが入力されるAND回路65と、から構成される。また、複合水平同期信号S2を出力する論理回路は、OR回路67から構成される
【0034】
単安定マルチバイブレータ66には、第1論理回路のAND回路63の出力(点c)が入力され、パルスの立ち下がり時を開始点とする水平同期信号Hsyncのパルス幅にほぼ等しい時間シフトが加えられて、垂直同期信号Vsyncの期間にAND回路65の出力(点e)に欠落する水平同期信号を補完するパルス信号を出力(点d)する。OR回路67には、単安定マルチバイブレータ66の出力(点d)およびAND回路65の出力(点e)が入力されて、第2タイミング回路6の出力信号S2を出力する。その結果、第2タイミング回路6の出力信号(複合水平同期信号)S2は、前置等価パルスと、垂直同期信号Vsyncと、後置等価パルス信号GTと、コピーガード信号CGと、を含むパルス信号であるものの、複合同期信号CSに含まれる水平同期信号Hsyncの極性を全体として一致させたパルス信号として出力される。つまり、第2タイミング回路の出力信号(複合水平同期信号)S2は、複合同期信号に含まれる水平同期信号の周波数に等しいパルス成分を有し、かつ、映像信号の垂直帰線期間において極性が一致したパルス信号である。
【0035】
一方、複合同期信号CSは、PLL回路4において、LPF42を経てバリアブルキャパシタ43aを含むVCXOの周波数可変回路43に入力される。周波数可変回路43は、水晶発振子44aと、コイル44bと、トリマ44cとを備えるVCXOの発振素子回路44に接続し、水晶発振子44aを含む発振素子回路44の発振周波数fvを可変して調整できる。発振周波数fvのパルス信号は、分周器45で分周されて、PLL周波数fpのPLL出力信号SPを出力する。PLL出力信号SPは、分周器45からPLL回路4の位相検波器41へ出力される。したがって、周波数可変回路43によって発振周波数fvを可変し、PLL周波数fpを水平同期信号Hsyncの周波数である15.75KHzに設定することにより、PLL回路4の出力信号を、複合同期信号CSに含まれる水平同期信号Hsyncに位相がロックしたパルス信号とすることができる。
【0036】
好ましくは、PLL回路4のPLL周波数fpの可変範囲が、VCXOの発振素子回路44の発振周波数fvの±1%の範囲に設定される。水晶発振子44aを含む発振素子回路44の発振周波数fvの範囲が限定されているので、PLL回路4は、設定されたPLL周波数fp、すなわち、水平同期信号Hsyncを含む狭い周波数範囲のみで位相ロックする。したがって、PLL回路4からは、複合同期信号CSに含まれる垂直同期パルスVsyncと、後置等価パルス信号GTと、コピーガード信号CGに位相ロックすることなく、これらを除去した出力信号、つまり、ほぼ水平同期信号Hsyncのみに位相ロックしたPLL出力信号が得られる。
【0037】
例えば、VCXOの発振素子回路44が水晶発振子44aにより発振周波数fv=18.4275MHzで発振しているとすると、分周器45は、入力されたクリスタル発振子によるパルス信号を1/1170分周して水平同期信号Hsyncの周波数である15.75KHzのパルス信号を出力する。具体的には、分周器45は、直列接続した1/9分周する分周器45aと、1/10分周する分周器45bと、1/13分周する分周器45cとから構成され、1/1170分周を実現する。観念的に説明すると、VCXOの発振素子回路44に直列に接続されたバリアブルキャパシタ43a、コイル44bならびにトリマ44cにより、発振周波数fvは18.4275MHzの±1%の範囲である18.4275MHz±184.275kHz(18.243225MHz〜18.611775MHz)の範囲に調整されていればよい。仮に、VCXOの発振素子回路44の発振周波数が少しずれて18.4300MHzであったとしても、VCXOの周波数可変回路43による発振周波数fvの調整可能な範囲であるので、正確なPLL周波数fpである15.75KHzを設定できる。より好ましくは、複合同期信号CSに含まれるコピーガード信号CG等の影響をより避けるために、発振周波数fvの可変範囲をより範囲を狭くして限定するようにバリアブルキャパシタ43aおよびトリマ44cを設定し、例えば、可変範囲を±10kHzにしてもよい。つまり、発振周波数fvが18.4275MHzの場合には、±0.54%以下の範囲である18.4175MHz〜18.4375MHzの範囲に限定してもよい。
【0038】
PLL回路4の分周器45からは、複数のタイミングパルスQBおよびQCが、第1タイミング回路5へ入力される。ここで、第1タイミング回路5は、タイミングパルスQBおよびQCが入力される論理回路としてのNOR回路であり、水平同期信号Hsyncのパルス幅よりもパルス幅が広いパルス信号である出力信号S1を出力する。PLL回路4で位相ロックされたPLL出力信号は、上述の通りほぼ水平同期信号Hsyncの成分のみのパルス信号であるが、PLL回路4に起因するジッターを含む。そこで、水平同期信号出力回路1において、第1タイミング回路5の出力信号S1は、前述の第2タイミング回路6からの出力信号S2から水平同期信号Hsyncを取り出すためのゲート信号として利用する。ここで、PLL回路4に起因するジッターに対応するために、第1タイミング回路5は、水平同期信号のパルス幅よりもパルス幅が広いパルス信号S1をゲート信号として生成する。好ましくは、パルス信号S1は、水平同期信号のパルス幅2つ分の時間にほぼ等しいパルス幅をもつ。
【0039】
具体的には、分周器45bの出力(点A)の204.75kHz(パルス間隔約4.9μsec)のパルス信号は、分周器45cに入力される。(点A)の204.75kHzのパルス信号は、VCXOの発振素子回路44の18.4275MHzを1/90分周したパルス信号である。分周器45cは、204.75kHzのパルス信号をさらに1/13分周して、水平同期信号Hsyncに周波数が等しい15.75KHzのパルス信号S1を出力する。ここで、分周器45cは、204.75kHzのパルス信号に基づいて、複数のパルス間隔に渡るタイミングパルスQB(点B)およびQC(点C)を出力する。図5の波形図に示されるように、タイミングパルスQBおよびQCが同極性を示すのは、204.75kHzのパルス信号の2つ分の間隔、つまり、約9.8μsecの間であるので、タイミングパルスQBおよびQCが入力された第1タイミング回路5のNOR回路は、周波数が15.75KHzで、パルス幅が約9.8μsecのパルス信号S1を出力する。なお、本実施例の場合には、水平同期信号Hsyncのパルス幅は約5μsecであるので、パルス信号S1は、複合同期信号CSに含まれる水平同期信号Hsyncのパルス幅よりもパルス幅が広くなっていて、水平同期信号Hsyncのパルス幅2つ分の時間にほぼ等しくなっている。
【0040】
一方で、第2タイミング回路6が出力するパルス信号(複合水平同期信号)S2は、複合同期信号CSについて垂直同期信号Vsyncの部分の極性を反転することにより、複合同期信号CSに含まれる水平同期信号Hsyncの極性を全体として一致させている。パルス信号S2に含まれる水平同期信号Hsync成分は、ジッターのない正確なパルス信号であり、かつ、極性が一致するので、これをゲート回路7に入力する。例えば、水平同期信号Hsyncが15.75KHzである場合には、第2タイミング回路から出力されるパルス信号S2は、ジッターのない正確な15.75KHzの水平同期信号と、コピーガード信号CG等とを含み、これがゲート回路7に入力される。
【0041】
ゲート回路7は、第1タイミング回路5からパルス信号S1をゲート信号として入力し、第2タイミング回路6からパルス信号S2をゲート処理対象とする信号として入力し、水平同期信号Hsyncを出力端子8に出力する。パルス信号S2は、複合同期信号CSに含まれる水平同期信号Hsyncの極性を全体として一致させられているのに加えて、PLL回路4が水平同期信号Hsyncを含む狭い周波数範囲のみで位相ロックするので、第1タイミング回路5によりパルス幅が広く設定されたパルス信号S1は、パルス信号S2に含まれる水平同期信号Hsyncのみを通過させるゲート信号として機能する。その結果、ゲート回路7からは、コピーガード信号CG等が除去された映像信号S0の水平同期信号Hsyncが出力される。
【0042】
したがって、水平同期信号出力回路1においては、入力される映像信号S0がコピーガード信号CGを含む場合であっても、安定した正確な水平同期信号Hsyncが出力され、再生映像の乱れが生じない。コピーガード信号CGが、上記説明とは別の周波数の異なるコピーガード信号の場合であっても、垂直帰線期間(ブランク期間)Vblankに重畳される疑似同期パルスであれば、PLL回路4が水平同期信号Hsyncを含む狭い周波数範囲のみで位相ロックするので、安定した水平同期信号Hsyncを出力することができる。
【0043】
また、垂直同期期間にマスクをかける必要がないので、水平同期信号出力回路1を構成する部品の選択肢を広げることができ、コスト低減が可能となる。その結果、この水平同期信号出力回路1を含むプロジェクターは、水平同期信号出力回路1を安価で構成でき、かつ、安定した水平同期信号Hsyncに基づいて水平同期をとり、映像信号S0を映写し、再生することができる。
【0044】
また、PLL回路4の分周器45および第1タイミング回路5は、上記実施例に限定されるものではない。PLL回路4が、分周器45および第1タイミング回路5を含む構成となっていてもよい。パルス信号S1が、パルス信号S2に含まれる水平同期信号Hsyncのみを通過させるゲート信号として機能するように、同期分離回路3から出力される複合同期信号CSに含まれる水平同期信号Hsyncのパルス幅よりもパルス幅が広いパルス信号S1を出力する構成であればよい。
【0045】
なお、パルス信号S1のパルス幅を、水平同期信号Hsyncのパルス幅よりも広くとりすぎると、水平同期信号Hsyncのパルスに隣接するコピーガード信号CGが除去されずに通過してしまう可能性があるので、パルス幅を適切に設定するのが好ましい。例えば、上記実施例のように、パルス幅が約5μsecである水平同期信号Hsyncのパルスと、隣接するコピーガード信号CGのパルスとの間隔が約4μsecである場合には、204.75kHzのパルス信号の3つ分の間隔、つまり、水平同期信号Hsyncのパルス幅2つ分(約9.8μsec)よりもパルス幅が広い約13.7μsecのパルス幅を設定すると、ゲート回路7からは、コピーガード信号CGの一部が通過するおそれがある。したがって、水平同期信号のパルス幅2つ分の時間にほぼ等しい程度のパルス幅となるように設定するのが好ましい。コピーガード信号CGを除去して安定した水平同期信号Hsyncを得ることができる。
【0046】
なお、本発明の水平同期信号出力回路およびこれを含む映像再生装置は、上記の構成に限定されるものではない。同期分離回路3は、複合同期信号CSと、垂直同期信号Vsyncとを、それぞれ出力する回路であればよく、また、PLL回路4は、PLL周波数fpの可変範囲が水平同期信号Hsyncの周波数を含む狭い範囲に制限されたものであればよい。また、第1タイミング回路5は、PLL回路4からのPLL出力信号SPをゲート回路7におけるゲート信号として機能する信号S1に変換する論理回路であればよく、また、第2タイミング回路6は、複合同期信号に含まれる水平同期信号の周波数に等しいパルス成分を有し、かつ、映像信号の垂直帰線期間において極性が一致したパルス信号を出力する論理回路であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の水平同期信号出力回路は、映像を映写するプロジェクターや、映像を表示する液晶モニターのような表示器を備える家庭に設置されるディスプレイのみならず、表示器を備えないディスク再生装置等の映像再生装置にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の好ましい実施形態による水平同期信号出力回路について説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態による水平同期信号出力回路の同期分離回路が出力する複合同期信号および水平同期信号を説明する概略図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態による水平同期信号出力回路の詳細を説明する図である。(実施例1)
【図4】本発明の好ましい実施形態による水平同期信号出力回路の第2タイミング回路におけるパルス信号波形を表す波形図である。(実施例1)
【図5】本発明の好ましい実施形態による水平同期信号出力回路の第2タイミング回路におけるパルス信号波形を表す波形図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0049】
1 水平同期信号出力回路
2 入力端子
3 同期分離回路
4 PLL回路
5 第1タイミング回路
6 第2タイミング回路
7 ゲート回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号が入力される同期分離回路と、
該同期分離回路から出力される複合同期信号が入力されるPLL回路と、
該PLL回路からの出力信号が入力される第1タイミング回路と、
該同期分離回路から出力される複合同期信号および垂直同期信号が入力される第2タイミング回路と、
該第1タイミング回路の出力信号および該第2タイミング回路の出力信号が入力されて映像信号の水平同期信号を出力するゲート回路と、を備え、
該PLL回路が、発振素子回路と、該PLL回路のPLL周波数を可変する周波数可変回路と、該PLL周波数のパルス信号を分周する分周器とを含み、該分周器の出力信号をPLL出力信号とする、
水平同期信号出力回路。
【請求項2】
前記PLL回路が、水晶発振子を含む前記発振素子回路と、バリアブルキャパシタを含む前記周波数可変回路と、を有するVCXOを備える、
請求項1に記載の水平同期信号出力回路。
【請求項3】
前記PLL回路のPLL周波数の可変範囲が、前記水晶発振子の発振周波数の±1%の範囲に設定される、
請求項2に記載の水平同期信号出力回路。
【請求項4】
前記PLL回路が、位相検波器と、LPFと、を含む、
請求項1から3のいずれかに記載の水平同期信号出力回路。
【請求項5】
前記第1タイミング回路が、入力される前記PLL出力信号に基づいて、前記同期分離回路から出力される複合同期信号に含まれる水平同期信号のパルス幅よりもパルス幅が広いパルス信号を出力する、
請求項1から4のいずれかに記載の水平同期信号出力回路。
【請求項6】
前記第1タイミング回路が、前記PLL出力信号として前記分周器からの複数のタイミングパルス信号を受けて前記水平同期信号のパルス幅2つ分の時間にほぼ等しいパルス幅をもつパルス信号を出力する論理回路を含む、
請求項5に記載の水平同期信号出力回路。
【請求項7】
前記第2タイミング回路が、前記同期分離回路から出力される複合同期信号に基づいて、該複合同期信号に含まれる水平同期信号の周波数に等しいパルス成分を有し、かつ、前記映像信号の垂直帰線期間において極性が一致したパルス信号を出力する、
請求項1から4のいずれかに記載の水平同期信号出力回路。
【請求項8】
前記第2タイミング回路が、複合同期信号に含まれる垂直同期信号部分を反転したパルス信号を出力する第1論理回路と、該第1論理回路からの該パルス信号を時間シフトする単安定マルチバイブレータと、前記複合同期信号の水平同期信号部分を除いたパルス信号を出力する第2論理回路と、を含む、
請求項7に記載の水平同期信号出力回路。
【請求項9】
前記第2タイミング回路が、前記単安定マルチバイブレータからの出力信号および前記第2論理回路からの出力信号を受けて前記複合同期信号に含まれる水平同期信号の周波数に等しいパルス成分を有し、かつ、前記映像信号の垂直帰線期間において極性が一致したパルス信号を出力する論理回路を含む、
請求項8に記載の水平同期信号出力回路。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の水平同期信号出力回路を含む映像再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−36320(P2007−36320A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212145(P2005−212145)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】