説明

水性インキ組成物

【目的】 インキ吐出のばらつきが少なく、安定したインキ出を可能にした水性インキ組成物を得ることを目的とする。
【構成】 水と、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル0.02〜20重量%と、0.01〜2.0重量%のジャスモン酸メチルまたはジヒドロジャスモン酸メチルと、2.0〜30重量%の着色剤を少なくとも含むことを特徴とする水性インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具に用いるインキ組成物に関し、更に詳しくは、ペン先のインキ吐出部におけるインキの流動がスムーズで、ばらつきの少ない安定した吐出量が得られる香り付き水性インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水性インキ組成物において油溶性の香料添加剤を溶解、分散させる為に様々な工夫がなされてきた。固体のマルトシルサイクロデキストリンに香料を包接させて水に溶解させる方法(特許文献1)や、マイクロカプセルに香料を封じ込めてインキ中に分散させる方法(特許文献2)や、界面活性剤を併用することによりインキ中に溶解させる方法(特許文献3)などが知られている。
【特許文献1】特開昭63−223078号公報
【特許文献2】特開平05−214283号公報
【特許文献3】特開2001−342393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、固体の物質に香料を包接させて水に溶解させる方法では経時で香料が分離したり、マイクロカプセルに香料を封じ込めてインキ中に分散させる方法では、ボールペンに使用した場合、目詰まりが発生したり、インキ吐出量のばらつきが大きくなり、かすれてしまう問題があった。また、界面活性剤を使用し、溶解しているように見えるインキでも微視的にはマイクロエマルジョンの様相を呈していることから、インキ流通路の小さな部分をインキが通過するときには、そのマイクロエマルジョンの大きさの違いにより吐出の大小にばらつきが生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、着色剤と、水と、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと、ジャスモン酸メチルまたはジヒドロジャスモン酸メチルとを少なくとも含有するインキ組成物を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明におけるジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチルは、非水溶性の物質であり、界面活性剤の添加により安定して水に溶解し存在し得る。特に、ジャスモン酸、ジヒドロジャスモン酸メチルは分子中にカルボニル基とエステル基を含むことから、界面活性剤との相溶性に優れる。微視的にはマイクロエマルジョンとして存在していると考えられるが、球状ミセルの様に異なった大きさのエマルジョンを形成するのではなく、分子同士が面で会合する形で可溶化するため、大きなエマルジョンを形成することがなく、インキ流通路におけるインキの流動抵抗を小さくすることができ、この事がインキ吐出にばらつきを生じさせない効果をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のインキ組成物に用いるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ジャスモン酸メチルやジヒドロジャスモン酸メチルを可溶化するために添加するものであり、その使用量はインキ組成物中で香料の添加量の2倍〜10倍程度が好ましい。具体的には、
TL−10(モノヤシ油脂肪酸POEソルビタン、日光ケミカルズ(株)製)、TP−10(モノパルミチン酸POEソルビタン、日光ケミカルズ(株)製)、TS−10、TS−106(以上、モノステアリン酸POEソルビタン、日光ケミカルズ(株)製)、TS−30(トリステアリン酸POEソルビタン、日光ケミカルズ(株)製)、TI−10(モノイソステアリン酸POEソルビタン、日光ケミカルズ(株)製)、TO−10、TO−10M、TO−106(モノオレイン酸POEソルビタン、日光ケミカルズ(株)製)、TO−30(トリオレイン酸POEソルビタン、日光ケミカルズ(株)製)
などが挙げられる。
また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル以外の界面活性剤を併用させる事も可能である。一例を挙げると、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸などが挙げられる。
【0007】
本発明のインキ組成物に用いる主溶剤は水であるが、従来公知の有機溶剤をペン先乾燥や筆跡乾燥のコントロールの為に用いることができる。
水性ボールペン用インキ組成物の溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどの多価アルコールが好ましく、複数種混合して、水と共に使用することができる。
【0008】
ジャスモン酸メチルやジヒドロジャスモン酸メチルは、キャップを外したままで放置した時に短時間でペン先が乾燥して筆記できなくなる事を防止する為に用いるものである。
なお、いづれもジャスミン様の配合香料の原料として用いられるものであるが、他の成分では同様の効果を有さず、本発明の成分特有の効果であると考えられる。なお、ジャスモン酸メチルは非常に高価であるため、利用の際にはジヒドロジャスモン酸メチルを用いる事が好ましい。
【0009】
ジャスモン酸メチルやジヒドロジャスモン酸メチルの添加量はインキ全量に対して0.01重量%以上2重量%以下が好ましい。0.01重量%より少ないと香りの効果が小さく、5重量%より多い場合、必要とする可溶化剤の量が大きくなりすぎて、にじみなどの不具合を発生させてしまう。
【0010】
本発明の水性インキ組成物は、香りの調整の為に他の香料成分を混合することも可能である。ただし、吐出の安定のためには、水溶性の官能基を多く持つ水に対して安定な種類を選び使用量を抑える必要がある。具体的には、ジャスミン油、バラ油、ネロリ油、ラベンダー油、イランイラン油、チュベローズ油、クラリセーズ油、クローブ油、ペパーミント油、ゼラニウム油、パッチェリー油、サンダルウッド油、シンナモン油、コリアンダー油、ナツメグ油、ペパー油、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、オポポナックス油、ベチバー油、オリス油、オークモス油等の植物性香料や、ムスク油、シベット油、カストリウム油、アンバーグリス油等の動物性香料等が挙げられる。合成香料は、天然香料からその含有成分を抽出、精留、晶析や簡単な化学処理よってえる単離香料と、有機合成反応により製造する純合成香料とがある。具体的には、ジャスミン系香料としては、ジヒドロジャスモン、ヒドロシンナムアルデヒド、ジャスミンアルデヒド、ジャスミンラクトン、cis−ジャスモン、trans−ジャスモンなどが挙げられ、その他香料として、リモネン、β−カリオレフィン等の炭化水素類香料、シス−3−ヘキサノール、リナロール、ファルネソール、β−フェニルエチルアルコール、ゲラニオール、シトロネロール、タービネオール、メントール、サンタロール、バクダノール、ブラマノール等のアルコール類香料、2,6−ノナジエール、シトラール、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、リラール、リリアール等のアルデヒド類香料、β−イオノン、l−カルボン、シクロペンタデカノン、ダマスコン、メチルイオノン、イロン、イソイースーパー、アセチルセドレン、ムスコン等のケトン類香料、リナニルアセテート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアセテート、プロピオン酸ベンジル、ギ酸ベンジル、酪酸ベンジル、アントラニル酸メチル等のエステル類香料、γ−ウンデカラクトン、シクロペンタデカノリッド、エチレンブラシレート等のラクトン類香料、オイゲノール等のフェノール類香料、ローズオキサイド、ガラクソリッド、アンプロキサン等のオキサイド類香料、インドール等の含窒素化合物類香料、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール等のアセタール類香料、オーランチオール等のシッフ塩基類香料等が挙げられる。またこれらの天然香料や合成香料はそのまま単独で使用することは少なく、多くの場合、これらの素材を目的に応じて組み合わせ調合された調合香料の形で用いられることもある。具体的には、ローズ、ジャスミン、ミューゲ、リラ、カーネーション、チュベローズ、ヒアシンス、オレンジフラワー、ネロリ、バシオレット、ヘリオトロープ、ガーデニア、ハニーサックル、ジョンキル、ナルシス、フリージア、イランイラン、ジンチョウゲ等の花の香りのフローラル類香料、ベチバー系、サンダルウッド系、パッチェリー系、セダーウッド系、パイン系等の木の香りのウッディ類香料、Coty社の香水Chypreが原型となっているシプレー類香料、ベルガモット、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、マッダリン等の柑橘系の香りのシトラス類香料、葉や、きゅうり、トマト、ピーマンなどに感じられる青くさい香りのグリーン類香料、Fougere Royaleの香水名の原型であるフゼア類香料、東洋からヨーロッパに輸入された香料の特徴から名づけられたオリエンタル類香料、ピーチ、ストロベリー、アップル、バナナ、メロン、パイナップル、ラズベリー等のフルーツの香りのフルーティ類香料、グローブ、シンナモン、タイム、ペパー、カルダモン、ナツメッグ等のスパイスの香りのスパイシー類香料、脂肪族アルデハイドに属する炭素数7から12までのもつアルデハイド類香料、ムスク、シベッド、カストリウム、アンバーグリス等の動物の臭いのアニマル類香料等が挙げられる。これらの香料は香りをつけられるものならば特に限定されず、単独もしくは複数混合して使用可能であり、これらの使用量はインキ組成物全量に対して0.01重量%以上至る2重量%以下であり、好ましくは0.05重量%以上至る1重量%以下である。
【0011】
着色剤は、従来公知の染料や顔料が単独若しくは混合して使用できる。
染料としては、ジャパノールファストブラックDコンク(C.I.ダイレクトブラック17)、ウォーターブラック100L(同19)、ウォーターブラックL−200(同19)、ダイレクトファストブラックB(同22)、ダイレクトファストブラックAB(同32)、ダイレクトディープブラックEX(同38)、ダイレクトファストブラックコンク(同51)、カヤラススプラグレイVGN(同71)、カヤラスダイレクトブリリアントエローG(C.I.ダイレクトエロー4)、ダイレクトファストエロー5GL(同26)、アイゼンプリムラエローGCLH(同44)、ダイレクトファストエローR(同50)、アイゼンダイレクトファストレッドFH(C.I.ダイレクトレッド1)、ニッポンファストスカーレットGSX(同4)、ダイレクトファストスカーレット4BS(同23)、アイゼンダイレクトローデュリンBH(同31)、ダイレクトスカーレットB(同37)、カヤクダイレクトスカーレット3B(同39)、アイゼンプリムラピンク2BLH(同75)、スミライトレッドF3B(同80)、アイゼンプリムラレッド4BH(同81)、カヤラススプラルビンBL(同83)、カヤラスライトレッドF5G(同225)、カヤラスライトレッドF5B(同226)、カヤラスライトローズFR(同227)、ダイレクトスカイブルー6B(C.I.ダイレクトブルー1)、ダイレクトスカイブルー5B(同15)、スミライトスプラブルーBRRコンク(同71)、ダイボーゲンターコイズブルーS(同86)、ウォーターブルー#3(同86)、カヤラスターコイズブルーGL(同86)、カヤラススプラブルーFF2GL(同106)、カヤラススプラターコイズブルーFBL(同199)、アシッドブルーブラック10B(C.I.アシッドブラック1)、ニグロシン(同2)、スミノールミリングブラック8BX(同24)、カヤノールミリングブラックVLG(同26)、スミノールファストブラックBRコンク(同31)、ミツイナイロンブラックGL(同52)、アイゼンオパールブラックWHエクストラコンク(同52)、スミランブラックWA(同52)、ラニルブラックBGエクストラコンク(同107)、カヤノールミリングブラックTLB(同109)、スミノールミリングブラックB(同109)、カヤノールミリングブラックTLR(同110)、アイゼンオパールブラックニューコンク(同119)、ウォーターブラック187−L(同154)、カヤクアシッドブリリアントフラビンFF(C.I.アシッドエロー7:1)、カヤシルエローGG(同17)、キシレンライトエロー2G140%(同17)、スミノールレベリングエローNR(同19)、ダイワタートラジン(同23)、カヤクタートラジン(同23)、スミノールファストエローR(同25)、ダイアシッドライトエロー2GP(同29)、スミノールミリングエローO(同38)、スミノールミリングエローMR(同42)、ウォーターエロー#6(同42)、カヤノールエローNFG(同49)、スミノールミリングエロー3G(同72)、スミノールファストエローG(同61)、スミノールミリングエローG(同78)、カヤノールエローN5G(同110)、スミノールミリングエロー4G200%(同141)、カヤノールエローNG(同135)、カヤノールミリングエロー5GW(同127)、カヤノールミリングエロー6GW(同142)、スミトモファストスカーレットA(C.I.アシッドレッド8)、カヤクシルクスカーレット(同9)、ソーラールビンエクストラ(同14)、ダイワニューコクシン(同18)、アイゼンボンソーRH(同26)、ダイワ赤色2号(同27)、スミノールレベリングブリリアントレッドS3B(同35)、カヤシルルビノール3GS(同37)、アイゼンエリスロシン(同51)、カヤクアシッドローダミンFB(同52)、スミノールレベリングルビノール3GP(同57)、ダイアシッドアリザリンルビノールF3G200%(同82)、アイゼンエオシンGH(同87)、ウォーターピンク#2(同92)、アイゼンアシッドフロキシンPB(同92)、ローズベンガル(同94)、カヤノールミリングスカーレットFGW(同111)、カヤノールミリングルビン3BW(同129)、スミノオールミリングブリリアントレッド3BNコンク(同131)、スミノールミリングブリリアントレッドBS(同138)、アイゼンオパールピンクBH(同186)、スミノールミリングブリリアントレッドBコンク(同249)、カヤクアシッドブリリアントレッド3BL(同254)、カヤクアシッドブリリドブリリアントレッドBL(同265)、カヤノールミリングレッドGW(同276)、ミツイアシッドバイオレット6BN(C.I.アシッドバイオレット15)、ミツイアシッドバイオレットBN(同17)、スミトモパテントピュアブルーVX(C.I.アシッドブルー1)、ウォーターブルー#106(同1)、パテントブルーAF(同7)、ウォーターブルー#9(同9)、ダイワ青色1号(同9)、スプラノールブルーB(同15)、オリエントソルブルブルーOBC(同22)、スミノールレベリングブルー4GL(同23)、ミツイナイロンファストブルーG(同25)、カヤシルブルーAGG(同40)、カヤシルブルーBR(同41)、ミツイアリザリンサフィロールSE(同43)、スミノールレベリングスカイブルーRエクストラコンク(同62)、ミツイナイロンファストスカイブルーB(同78)、スミトモブリリアントインドシアニン6Bh/c(同83)、サンドランシアニンN−6B350%(同90)、ウォーターブルー#115(同90)、オリエントソルブルブルーOBB(同93)、スミトモブリリアントブルー5G(同103)、カヤノールミリングウルトラスカイSE(同112)、カヤノールミリングシアニン5R(同113)、アイゼンオパールブルー2GLH(同158)、ダイワギニアグリーンB(C.I.アシッドグリーン3)、アシッドブリリアントミリンググリーンB(同9)、ダイワグリーン#70(同16)、カヤノールシアニングリーンG(同25)、スミノールミリンググリーンG(同27)等の水溶性染料が使用できる。
【0012】
顔料としては、SpecialBlack6、同S170、同S610、同5、同4、同4A、同550、同35、同250、同100、Printex150T、同U、同V、同140U、同140V、同95、同90、同85、同80、同75、同55、同45、同P、同XE2、同L6、同L、同300、同30、同3、同35、同25、同200、同A、同G(以上、デグサ・ジャパン(株)製)、#2400B、#2350、#2300、#2200B、#1000、#950、#900、#850、#MCF88、MA600、MA100、MA7、MA11、#50、#52、#45、#44、#40、#33、#32、#30、CF9、#20B、#4000B、(以上、三菱化成工業(株)製)、MONARCH1300、同100、同1000、同900、同880、同800、同700、MOGUL L、REGAL400R、同660R、同500R、同330R、同300R、同99R、ELFTEX8、同12、BLACK PEARLS2000(以上、米国、キャボットCorp.製)、Raven7000、同5750、同5250、同5000、同3500、同2000、同1500、同1255、同1250、同1200、同1170、同1060、同1040、同1035、同1020、同1000、同890H、同890、同850、同790、同780、同760、同500、同450、同430、同420、同410、同22、同16、同14、同H20、同C、Conductex975、同900、同SC(以上、コロンビヤン・カーボン日本(株)製)などのカーボンブラック、KA−10、同10P、同15、同20、同30、同35、同60、同80、同90、KR−310、同380、同460、同480(以上、チタン工業(株)製)、タイピュアR−900、同902、同960(以上、デュポン(株)製)、タイペークCR−50、同58、同60、同67、同80、同90、R−580、同670、同680、同780、同820、同930(以上、石原産業(株)製)、JR−300、同403、同600A、同800、同805(以上、テイカ(株)製)、P25(日本アエロジル(株)製)などの酸化チタン、BS−605、同607(以上、東洋アルミ(株)製)、ブロンズパウダーP−555、同P−777(以上、中島金属箔工業(株)製)、ブロンズパウダー3L5、同3L7(以上、福田金属箔工業(株)製)などの金属粉顔料、また、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロムなどの無機顔料、ハンザエロー−10G、同5G、同3G、同4、同GR、同A、ベンジジンエロー、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキ、キノリンエロー、スダーン1、パーマネントオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGN、パーマネントブラウンFG、パラブラウン、パーマネントレッド4R、ファイヤーレッド、ブリリアントカーミンBS、ピラゾロンレッド、レーキレッドC、キナクリドンレッド、ブリリアントカーミン6B、ボルドー5B、チオインジゴレッド、ファストバイオレットB、ジオキサジンバイオレット、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、インジゴ、アシッドグリーンレーキ、フタロシアニングリーンなどの有機顔料などが挙げられる。また、この他に硫化亜鉛、珪酸亜鉛、硫酸亜鉛カドミウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウムなどの無機蛍光顔料が挙げられる。
【0013】
また、顔料を水性媒体に分散した分散顔料の水性インキベースを用いることもできる。具体的には、Fuji SP Black8031、同8119、同8167、同8276、同8381、同8406、Fuji SP Red5096、同5111、同5193、同5220、同5543、同5544、Fuji SP Bordeaux5500、Fuji SP Blue6062、同6133、Fuji SP Green7051、Fuji SP Yellow4060、同4178、Fuji SP Violet9011、Fuji SP Pink9524、同9527、Fuji SP Orange534、Fuji SP Brown3074(以上、冨士色素(株)製)、Emacol BlackCN、Emacol BlueFBB、同FB、Emacol Green LXB、同Violet BL、同Brown3101、同Carmine FB、同RedBS、同OrangeR、同Yellow FD、Sandye Super Black K、同Black C、同Super Grey B、同Super Brown SB、同Super Navy Blue HRL、同Super Violet BL、同Super Bordeaux FR、同Super Pink FBL、同Super Rubine FR、同Super Carmine FB、同Super Red FFG、同Super Yellow D215、同Orange FL、(以上、山陽色素(株)製)、NKW−2101、同2102、同2103、同2104、同2105、同2106、同2107、同2108、同2117、同2127、同2137、同2167、同2101P、同2102P、同2103P、同2104P、同2105P、同2106P、同2107P、同2108P、同2117P、同2127P、同2137P、同2167P、同3002、同3003、同3004、同3005、同3007、同3077、同3008、同3402、同3404、同3405、同3407、同3408、同3477、同3602、同3603、同3604、同3605、同3607、同3677、同3608、同3702、同3703、同3704、同3705、同3777、同3708、同6013、同6038、同6559(以上、日本蛍光(株)製)、ポルックス ブルーPC5T−1020、同ブラックPC8T−135、同レッドIT−1030等のポルックスシリーズ(以上、住化カラー(株)製)などが挙げられる。
上記した着色剤は単独或いは複数混合して使用することが出来、使用量はインキ組成物全量に対して2.0重量%以上30.0重量%以下が好ましい。2.0重量%未満では濃度が低すぎて筆跡が確認し難いこともあり、30.0重量%を超えるとインキ組成物粘度が高くなり筆記具ペン先からのインキ吐出が不十分になることがある。
【0014】
筆跡の筆記面への定着性を付与するために樹脂を添加することもできる。
水性系インキ組成物用樹脂の具体例として、プライマルAC−22、同AC−33、同AC−55、同AC−64、同AC−261、同AC−382、同AC−388、同AC−417、同AC−490、同AC−507、同AC−630、同AC−707、同AC−3444、同EC−1685、同EC−1791、同EC−1895、同EC−2218、同MV−1、同MV−9、同MV−17)、同MV−23、同E−32、同E−358、同HA−8、同HA−12、同HA−24、同K−3、同K−87、同TR−520、同TR−934HS、エクスペリメンタルエマルジョンE−1345(以上、ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製)などのアクリル樹脂エマルジョン、セビアン−A 146、同150(以上、ダイセル(株)製)、ポリゾールPS−19、同PS−3HA(以上、昭和高分子(株)製)などの酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ポリゾールPS−120、同747L(以上、昭和高分子(株)製)などの酢酸ビニル・アクリル共重合体樹脂エマルジョン、ポリゾールAP−2678、同AP−2679、同AP−2694、AP−2697(以上、昭和高分子(株)製)などのスチレン・アクリル共重合体樹脂エマルジョン、ポリゾールEVA.P−3、同P−10(以上、昭和高分子(株)製)などのエチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョンなどが挙げられる。
樹脂エマルジョンを筆記面への定着性を付与するために添加する場合、その使用量は固形分でインキ組成物全量に対して0.5重量%以上15.0重量%以下が好ましい。0.5重量%未満では筆記面に対する筆跡の定着性が不十分となる場合があり、15.0重量%を超えるとインキの粘度が高くなりペン先からのインキ吐出が悪くなる不具合が発生する可能性がある。
【0015】
ペン先としてボールペンチップを備えたボールペン用のインキ組成物としては、インキ組成物の粘度を高い状態としてペン先部からのインキ漏れを防止するための増粘剤や、ボールペンを使用しない時はインキ組成物の粘度を高くしてペン先部からのインク漏れを防止し、使用時にはボールの回転によりインキ組成物にせん断力を与えて粘度を低くしてインキ組成物をボールペンチップから流出させるためのせん断減粘性付与剤を用いることが出来る。
具体例として、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子、グァーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体などの種子多糖類、キサンタンガム、ウェランガム等の微生物系多糖類、カラギーナン、アルギン酸及びその誘導体などの海藻多糖類、タラガントガムなどの樹脂多糖類、セルロース系樹脂などが挙げられる。
【0016】
以上の成分の他に更に必要に応じて、従来インキ組成物に使用されている防錆剤などの各種添加剤を適宜使用できる。防錆剤の一例を挙げると、ベンゾトリアゾール、シクロヘキシルアンモニウムクロライド、2−メルカプトベンゾトリアゾール、ベンゾイルアミノカプロン酸、硝酸カルシウムなどが挙げられる。
【0017】
本願発明のインキ組成物は、上記成分を従来知られている方法により得られる。染料を着色剤に使用する場合は、撹拌機を用いて撹拌混合して均一に溶解することによって得られる。顔料を着色剤として使用する場合は、分散剤などを用いて従来公知の分散機で分散させたものを使用するか、予め分散された市販の加工顔料を用いれば良い。この時、濾過や遠心処理でインキ組成物中の粗大顔料を取り除いても良い。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により更に詳細に説明する。
(実施例1)水性マーキングペン用インキ組成物
ウォーターブラックR−510(C.I.アシッドブラック2、オリエント化学工業(株)製) 7.0重量部
ウォーターイエロー2(C.I.フードイエロー3、オリエント化学工業(株)製)
2.0重量部
エチレングリコール 10.0重量部
TO−10(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、日光ケミカルズ(株)製)
2.0重量部
ジヒドロジャスモン酸メチル(東京化成工業(株)製) 0.5重量部
プロクセルGXL(S)(防腐剤、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製) 0.2重量部
イオン交換水 78.3重量部
上記配合にて室温で2時間攪拌して黒色のインキ組成物を得た。
【0019】
(実施例2)水性マーキングペン用インキ組成物
ウォーターレッド2(C.I.アシッドレッド87、オリエント化学工業(株)製)
2.0重量部
ウォーターピンク2(C.I.アシッドレッド92、オリエント化学工業(株)製)
3.0重量部
エチレングリコール 10.0重量部
尿素 10.0重量部
TS−10(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、日光ケミカルズ(株)製)
1.0重量部
ジヒドロジャスモン酸メチル(前述) 0.3重量部
プロクセルGXL(S)(前述) 0.2重量部
イオン交換水 73.5重量部
上記配合にて室温で2時間攪拌して赤色のインキ組成物を得た。
【0020】
(実施例3)水性マーキングペン用インキ組成物
ウォーターブルー9(C.I.アシッドブルー9、オリエント化学工業(株)製)
1.0重量部
ウォーターブルー116(C.I.アシッドブルー15、オリエント化学工業(株)製)
4.0重量部
エチレングリコール 12.0重量部
ジエチレングリコール 12.0重量部
レオドールTW−O120(ポリオキシエチレンモノオレエート、花王(株)製)
1.0重量部
ジヒドロジャスモン酸メチル 0.1重量部
プロクセルGXL(S) 0.2重量部
イオン交換水 69.7重量部
上記配合にて室温で2時間攪拌して青色のインキ組成物を得た。
【0021】
(実施例4):水性ボールペン用ゲルインキ組成物
エチレングリコール 10.0重量部
EM Black K−16(黒色分散顔料、東洋インキ製造(株)製)
16.0重量部
プロクセルGXL(S) 0.2重量部
イオン交換水 70.8重量部
TO−10(前述) 0.8重量部
ジヒドロジャスモン酸メチル 0.2重量部
ケルザンAR(粘度調節剤、キサンタンガム、三晶(株)製) 0.8重量部
ジョンクリル450(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー(株)製) 1.0重量部
YMA6509(消泡剤、シリコンエマルジョン、東芝シリコン(株)製)
0.2重量部
上記成分中、ケルザンARとイオン交換水とをホモミキサーにて10分間撹拌して得たケルザンAR水溶液中に、残りの上記成分を加え、更に30分間混合撹拌して黒色のインキ組成物を得た。
【0022】
(実施例5):水性ボールペン用ゲルインキ組成物
ウォーターピンク2(前述) 4.4重量部
グリセリン 10.0重量部
エチレングリコール 10.0重量部
ケルザンAR(前述) 0.6重量部
TO−10(前述) 1.0重量部
ジヒドロジャスモン酸メチル 0.2重量部
プロクセルGXL(S) 0.2重量部
2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールの25重量%水溶液(pH調整剤)
0.5重量部
イオン交換水 73.6重量部
上記成分中、ケルザンARとイオン交換水とをホモミキサーにて10分間撹拌して得たケルザンAR水溶液中に、残りの上記成分を加え、更に30分間混合撹拌して赤色のインキ組成物を得た。
【0023】
(実施例6)水性ボールペン用インキ組成物
Fuji SP Blue 6401(青色顔料水分散体、冨士色素(株)製)
26.0重量部
エチレングリコール 10.0重量部
グリセリン 10.0重量部
ケルザンAR(前述) 0.4重量部
トリエタノールアミン 0.6重量部
TO−10(前述) 2.5重量部
ジャスモン酸メチル(東京化成工業(株)製) 0.5重量部
上記成分中、ケルザンARとイオン交換水とをホモミキサーにて10分間撹拌して得たケルザンAR水溶液中に、残りの上記成分を加え、更に30分間混合撹拌して青色のインキ組成物を得た。
【0024】
(比較例1):水性マーキングペン用インキ組成物
実施例1において、ジヒドロジャスモン酸メチルに代えて、同量のcis−ジャスモンを添加した以外は、実施例1と同様になして黒色のインキ組成物を得た。
【0025】
(比較例2)水性マーキングペン用インキ組成物
実施例2において、ジヒドロジャスモン酸メチルを同量のジヒドロジャスモン(ジャスモン酸メチルの分子構造のうちエステル部分である酢酸メチルの官能基がない物質)に代えた以外は、実施例2と同様になして赤色のインキ組成物を得た。
【0026】
(比較例3):水性ボールペン用インキ組成物
実施例4において、ジヒドロジャスモン酸メチルに代えて、同量のジャスミンアルデヒド(α−アミルシンナムアルデヒド)を添加した以外は、実施例4と同様になして黒色のインキ組成物を得た。
【0027】
(比較例4):水性ボールペン用インキ組成物
実施例5において、ジヒドロジャスモン酸メチルに代えて、同量のギ酸ベンジルを添加した以外は、実施例5と同様になして赤色のインキ組成物を得た。
【0028】
上記、実施例1〜3、比較例1〜2で得た水性マーキングペン用インキ組成物を、アクリル繊維収束体からなるペン先を有し、軸体内部にポリエステル繊維からなるインキ吸蔵体を有する水性マーキングペンであるぺんてる(株)製サインペン(製品符号S520)に2.0g充填して試験用筆記具を得た。
【0029】
上記、実施例4〜6、比較例3〜4で得た水性ボールペン用インキ組成物を、先端にボールペンチップを取り付けたゲルインキボールペンであるぺんてる(株)製ハイブリッド(製品符号K105)のインキ組成物用リフィルパイプに1.0g充填し、後端界面部分にポリブテンを微粒子シリカとデキストリン脂肪酸エステルでゲル化した逆流防止体を注入し、遠心機を用いてインキ中の気泡を除き試験用筆記具を得た。
【0030】
吐出性能試験:水性マーキングペン用インキ組成物
実施例、及び比較例の製品形態毎に以下の条件で試験を行った。結果を表1に示す。
【0031】
実施例1〜3、比較例1〜2のインキ組成物にて作製した試験用筆記具を用いて、荷重50g、筆記角度70度、筆記速度7cm/秒の条件にて、試験用筆記具を自転させながら螺旋式筆記試験機を用いて200m筆記し、筆記前後の筆記具の重量差をインキ吐出量とした。同様の試験を各組成物毎にサンプル数50本試験を行い、測定結果の標準偏差sを計算した。
【0032】
吐出性能試験:水性ボールペン用インキ組成物
実施例、及び比較例の製品形態毎に以下の条件で試験を行った。
【0033】
実施例4〜6、比較例3〜4のインキ組成物にて作製した試験用筆記具を用いて、荷重150g、筆記角度70度、筆記速度7cm/秒の条件にて、試験用筆記具を自転させながら螺旋式筆記試験機を用いて200m筆記し、筆記前後の筆記具の重量差をインキ吐出量とした。同様の試験を各組成物毎にサンプル数50本試験を行い、測定結果の標準偏差sを計算した。
【0034】
速記性試験
実施例1〜6、比較例1〜4のインキ組成物にて作製した試験用筆記具を用いて、手書きで20cmの直線を7秒間で20本筆記し、インキが追従し筆跡濃度の低下のないものを○、筆跡の濃度低下が認められ、カスレていると判断されるものを×とした。各組成物毎にサンプル数50本試験を行い、×のサンプル発生数を数えた。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、水と、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと、ジャスモン酸メチル及び/またはジヒドロジャスモン酸メチルとを少なくとも含有する水性インキ組成物。

【公開番号】特開2010−18657(P2010−18657A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178512(P2008−178512)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】